【実施例1】
【0023】
図1はIPSタイプの液晶表示装置の画素部の平面図である。
図1において、走査線10が横方向に延在し、層間絶縁膜を挟んで映像信号線20が縦方向に延在している。走査線10と映像信号線20で囲まれた領域が画素となっている。画素にはTFT、画素電極111、対向電極109等が形成されている。
【0024】
図1において、半導体層103はコの字型に屈曲しており、ゲート絶縁膜104を挟んで走査線10が半導体層103を横切っている。走査線10がゲート電極を兼用している。走査線10と半導体層103が交差した部分がTFTのチャンネル部となっている。半導体層103の一端は映像信号線20と接続しており、映像信号線20がドレイン電極を兼用している。半導体層103の他の端はソース電極106と接続している。したがって、ドレイン電極とソース電極106との間には、チャンネルが2個直列に形成されている。
【0025】
図1おいて、無機パッシベーション膜107および第2層間絶縁膜110に形成されたスルーホール120を介して画素電極111とTFTのソース電極106が接続している。画素電極111は両端が閉じた帯状の電極である。有機パッシベーション膜108の上には、平面ベタで対向電極109が形成されている。対向電極109と画素電極111の間には第2層間絶縁膜110が形成されている。画素電極111に映像信号が印加されると、画素電極111と対向電極109との間に発生する電気力線によって液晶分子が回転し、液晶を透過する光を制御する。
【0026】
図2は
図1のA−A断面図であり、スルーホール120部分の断面図である。
図2において、ガラスで形成されたTFT基板100には、第1下地膜101と第2下地膜102が形成されている。第1下地膜101と第2下地膜102はガラス基板の中の不純物が析出して半導体層103を汚染することを防止するものである。
【0027】
第2下地膜102の上に半導体膜が形成されている。半導体膜は、
図1に示すTFTと連続して形成されているものであり、TFTのソース部となっている。半導体膜の上にはゲート絶縁膜104が形成されている。
図2には示していないTFTにおいて、ゲート絶縁膜104の上にはゲート電極が形成される。
図1においては、走査線10がゲート電極を兼ねている。
【0028】
ゲート絶縁膜104の上には、走査線10と映像信号線20を絶縁する第1層間絶縁膜105が形成されている。ゲート絶縁膜104と第1層間絶縁膜105に形成されたスルーホールを介してソース電極106と半導体で形成されたTFTのソース部が接続している。ソース電極106の上には、無機パッシベーション膜107が形成されている。無機パッシベーション膜107は図示しないTFTを保護するものである。
【0029】
無機パッシベーション膜107の上には有機パッシベーション膜108が形成されている。有機パッシベーション膜108は無機パッシベーション膜107とともに、TFTを保護する役割を有するが、同時に、平坦化膜としての役割を有する。したがって、有機パッシベーション膜108は2〜3μm程度と厚く形成される。その後、有機パッシベーション膜108にスルーホール120を形成する。このときのスルーホール120のテーパ角θが、ソース電極106と、後で形成される画素電極111との接続に対して重要な影響を与える。また、有機パッシベーション膜108のスルーホール120のテーパ角θが小さすぎると、スルーホール120の上径φhが大きくなり、画素の有効面積が小さくなり、画素の透過率を低下させる。
【0030】
有機パッシベーション膜108の上には、透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)によって、対向電極109が形成されている。対向電極109は、スルーホール120を避けて平面ベタで形成されている。対向電極109の上には第2層間絶縁膜110が形成されている。その後、第2層間絶縁膜110と無機パッシベーション膜107をエッチングしてスルーホール120を形成する。その後、ITOを被着し、パターニングして画素電極111を形成する。
【0031】
図2において、有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホール120のテーパ角θは液晶表示パネルの特性にとって重要である。すなわち、テーパ角θが小さすぎるとスルーホール120の径φhが大きくなる。スルーホール120が形成された部分は表示領域として使えないので、画素の透過率が低下し、画面の明るさを小さくする。一方、スルーホール120の径φhが大きすぎると画素電極111が断切れを起こして、接続不良となる。これらの問題を防止するには、テーパ角θを60±10度に制御する必要がある。このテーパ角θの制御については後述する。
【0032】
図3は有機パッシベーション膜形成のプロセスフローである。有機パッシベーション膜108は無機パッシベーション膜107の上に形成するが、無機パッシベーション膜107と有機パッシベーション膜108の密着性を向上させるために無機パッシベーション膜107に対してHDMS(ヘキサメチルシラザン)処理を行う。その後、有機パッシベーション膜108材料をスピン塗布、スリット塗布等によって無機パッシベーション膜107上に塗布する。有機パッシベーション膜108材料が塗布された基板を80〜110℃に熱したホットプレートに1〜3分載せてプリベークを行い、溶剤を飛散させ、固化する。
【0033】
その後、有機パッシベーション膜108にスルーホール120を形成するために、露光を行う。露光光源には、超高圧水銀灯による紫外線を用い、露光波長はghi線である。その後、0.2〜2.5%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドライド)水溶液で現像する。TMAHは残渣が残らないという特徴を有しているが、これに限らず、一般のアルカリ水溶液であれば現像は可能である。
【0034】
本材料のようなポジ型材料では、パドル現像と呼ぶ、現像液を基板上に盛って一定時間静置するという現像方式を用いている。なお、現像液の使用量は増えるが、シャワー現像を用いることも出来る。この後、純水リンスで現像液を洗い流してから基板をエアーナイフやスピンで乾燥させる。
【0035】
その後、ポスト露光を行う。従来のNQD型材料では、絶縁膜の透明性を上げるためにポスト露光工程が必須である。しかし、本発明の化学増幅型材料では、ポスト露光は必須ではない。その後、プリ焼成を行い、スルーホール120のテーパ角θを調整する。プリ焼成の内容は後述する。最後に220〜250℃のオーブンで30分から1時間加熱硬化させる本焼成を行って絶縁膜を完成させる。
【0036】
以下に本発明における化学増幅型材料と従来のNQD型材料を使用した場合のプロセス条件と有機パッシベーション膜108の透過率、材料の感度、テーパ角θとの関係を説明する。本実施例で用いた化学増幅型有機パッシベーション膜108材料の基材は、アセタール系保護基含有メタクリル酸エステルおよびエポキシ基含有メタクリル酸エステルを分子中に含むアクリル樹脂であり、これに感光材としてスルホン酸系の化学増幅型PAGを含有するものである。比較用に用いたNQD型有機パッシベーション膜108材料は、基材はメタクリル酸およびエポキシ基含有メタクリル酸エステルを分子中に含むアクリル樹脂であり、これに、感光材としてNQDを含有するものである。
【0037】
図4はPAGを2wt%含む化学増幅型材料と従来例であるNQDを25wt%含むNQD型材料のポスト露光量と透過率の関係を示す図である。
図4における横軸はポスト露光量であり、縦軸は、膜厚が2μmの場合の透過率である。縦軸は波長400nmの紫外線による透過率で評価しているが、この透過率での評価が黄色着色を最も発見しやすいからである。塗布膜に露光量を変化させてポスト露光を行い、温度を230℃、30分で焼成した後の膜の透過率を分光光度計で測定した。
【0038】
従来材料であるNQD材料では、透過率の低下を防ぐために、従来型では500mJ/cm
2以上のポスト露光が必要であったのに対し、化学増幅型ではポスト露光無しが最も透過率が高く、ポスト露光量500mJ/cm
2以上では従来型よりも透過率が低くなった。すなわち、化学増幅型材料では、ポスト露光を実施しないか、ポスト露光を実施する場合でも、露光量を小さくできるので、生産性を向上させることが出来る。
【0039】
図5はPAGを2wt%含む化学増幅型材料と従来例であるNQDを25wt%含むNQD型材料のポスト露光量と透過率の関係を示す図である。
図5における横軸は焼成温度であり、縦軸は、膜厚が2μmの場合の波長400nmの紫外線の透過率である。従来型のNQD材料はポスト露光500mJ/cm
2を行い、化学増幅型材料はポスト露光200mJ/cm
2を行い、それぞれ、オーブンによって30分焼成して有機パッシベーション膜108を作成し、透過率を分光光度計で測定した。
【0040】
従来型の焼成温度が230℃を超えると透過率が大きく低下したのに対し、化学増幅型では、250℃でも目標とする透過率90%以上を維持している。焼成は後工程のエージングを兼ねているので、有機パッシベーション膜108の焼成温度を上げることが出来ると、有機パッシベーション膜108形成後に行う、ITO被着、CVDによる層間絶縁膜の形成、配向膜の焼成等のプロセス温度も上げることが出来るので、製品の品質向上を図ることが出来る。
【0041】
図6はポスト露光量をパラメータとし、PAG量を変化させた場合の透過率の変化を示すグラフである。
図6における横軸は化学増幅型材料中のPAGの含有量(wt%)であり、縦軸は、膜厚が2μmの場合の波長400nmの紫外線の透過率である。
図6おいて、PAGを増やすと、後で説明する
図7に示すように感度は上がるが、膜の透過率が低下する。一方、また、化学増幅型では、ポスト露光量を上げると膜の透過率が低下する。目標とする透過率90%以上が得られたPAG量は、ポスト露光量無しのときは6wt%以下、ポスト露光量200mJ/cm
2のときは5wt%、ポスト露光量500mJ/cm
2のときは4wt%以下であった。なお、PAG量は実用的には1wt%以上である。
【0042】
図6から透過率を重視するとPAG量は少ないほうが良い。
図7は、PAG量(wt%)と露光量(mJ/cm
2)の関係を示す。
図7の横軸はPAG量のwt%であり、縦軸は、ghi線を使用した場合の露光量(mJ/cm
2)である。露光量が小さい程感度がよいということになる。
図7より、透過率を重視して、PAG量を1.5wt%に抑えた場合、必要露光量は110mJ/cm
2である。一方、従来のNQD型材料では、高感度仕様でも150mJ/cm
2を上回っている。したがって、化学増幅型材料では、透過率を重視してPAGを少なくしても、従来のNQD型材料よりも高感度を維持することが出来る。
【0043】
有機パッシベーション膜108の他の重要な特性は、スルーホール120の形状である。スルーホール120のテーパ角θは小さすぎると開口率の低下をきたし、大きすぎると、画素電極111の接続不良を生ずる。したがって、スルーホール120のテーパ角θは60±10度程度に制御する必要がある。化学増幅型材料の最大の問題はテーパ角θの制御である。化学増幅型は光の抜けが良いため、現像後のテーパは
図8に示すように直角になるか、あるいは、
図9に示すように逆テーパになる。逆テーパになる理由は、表面で発生する酸は、雰囲気中の酸素やアルカリの影響で失活しやすく、酸の失活により表面の現像溶解性が低下するためである。
【0044】
有機パッシベーション膜材料において、PAGを2wt%とし、基材の分子量を、ポスト露光量、焼成条件を変えてスルーホール120のテーパ角θを調べた結果を
図10における表1に示す。表1において、判定は、テーパ角θが50度〜70の範囲に入っている条件を○、この範囲に入らない場合を×とした。パラメータとして、樹脂分子量、ポスト露光量、プリ焼成条件をとった。本焼成温度は230℃で一定とした。テーパ角θは現像後のテーパ角θと本焼成後のテーパ角θを評価した。なお、現像後のテーパ角θは全て90度である。
【0045】
表1において、基材の分子量に着目すると、分子量が4000〜20000の範囲でテーパ角θを50度〜70の範囲とすることが出来る。一般には、分子量が大きいほどテーパ角θは大きくなる。分子量が4000よりも小さいとプロセス制御を加えてもテーパ角θを大きくすることができず、分子量が20000を超えるとプロセス制御を加えてもテーパ角θを小さくすることができなかった。
【0046】
ポスト露光量は大きいほどテーパ角θは大きくなる。しかし、ポスト露光量が500mJ/cm
2以下としても、他の条件を満たせば、テーパ角θを目標範囲内に設定することが出来る。また、表1において、ポスト露光量が1000mJ/cm
2の場合、基材分子量、プリ焼成条件を適正に選択することによって、テーパ角θを50度とすることができるが、この場合は、有機パッシベーション膜108の透過率が低下する。
【0047】
一般には、本焼成においては膜が流動化することによって、テーパ角θが小さくなる。ポスト露光の後にいきなり本焼成をおこなってもよいが、テーパ角θの制御が難しくなる。本焼成前にプリ焼成を行うと、テーパ角θの制御をより容易にすることが出来る。プリ焼成条件は、焼成時間は一定で30分とし、プリ焼成温度を変化させて評価した。プリ焼成温度が材料のガラス転移以下のときは、現像完のテーパ角θを保つ働きをし、ガラス転移点以上のときは、テーパを寝かせる働きをする。アクリル樹脂のガラス転移点は110〜130℃にある。
【0048】
表1とは独立して実験した結果では、プリ焼成温度100〜110℃では、プリ焼成工程後のテーパ角θが本焼成後においても維持された。しかし、プリ焼成温度が100℃未満においては、本焼成におけるテーパ角θの低下には影響をおよぼさなかった。つまり、100℃未満では、プリ焼成工程の効果は得られなかった。
【0049】
プリ焼成温度を130〜150℃とすると、プリ焼成工程において、テーパ角θを小さくすることが出来た。しかし、プリ焼成温度が150℃を超えた範囲では、プリ焼成工程におけるテーパ角θの変化はほぼ一定となった。
【0050】
表1において、樹脂分子量が3000の場合は、ポスト露光量500mJ/cm
2とし、プリ焼成を100℃としてもテーパ角θを50度よりも大きく出来なかった。また、樹脂分子量が4000であり、ポスト露光量を300mJ/cm
2あるいは3000mJ/cm
2としても、プリ焼成をおこなわない、あるいは100℃未満である90℃でプリ焼成した場合には、テーパ角θを50度以上にすることはできない。また、樹脂分子量を10000としても、ポスト露光をおこなわない場合ではプリ焼成温度を100℃としてもテーパ角θを50度以上にすることが出来ない。一方、樹脂分子量を10000として、ポスト露光を300mJ/cm
2とした場合、プリ焼成をおこなわない場合でもテーパ角θを60度とすることができる。また、表1より、プリ焼成を行わない場合であっても、樹脂分子量が6000以上、ポスト露光量が300mJ/cm
2とすることによってテーパ角θを規定の範囲内に設定することが出来る。
【0051】
表1における本焼成は230℃であるが、220℃〜250℃であっても同様な結果が得られた。また、表1におけるPAGの量は2wt%であるが、PAGの量が1〜6wt%の場合であっても、スルーホール120のテーパ角θについては同様な結果が得られた。なお、表1は、有機パッシベーション膜108に形成されたテーパ角θを主眼に評価をした結果であるが、この他、有機パッシベーション膜108の透過率、感光特性を評価して、プロセスに最適な条件を得ることが出来る。