特許第5771381号(P5771381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771381
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】乾燥酵母を含有する錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/064 20060101AFI20150806BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61K36/064
   A61K9/20
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-237058(P2010-237058)
(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公開番号】特開2012-87104(P2012-87104A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】397009004
【氏名又は名称】アサヒフードアンドヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 静男
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−250487(JP,A)
【文献】 特開2002−255833(JP,A)
【文献】 特開昭60−126223(JP,A)
【文献】 特表2005−526095(JP,A)
【文献】 特開2000−095673(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007659(WO,A1)
【文献】 特開平01−156914(JP,A)
【文献】 特公昭49−037026(JP,B1)
【文献】 Pharm Tech Japan,1995年,Vol.11, No.5,p.549-552
【文献】 薬学雑誌,1975年,Vol.95, No.7,p.769-773
【文献】 Pharm Tech Japan,2010年10月 1日,Vol.26, No.11,p.2059-2063
【文献】 Pharm Tech Japan,2010年 8月 1日,Vol.26, No.9,p.1663-1668
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/06
A61K 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び底面として異形球面状である圧縮面及びその間に円柱状である縁部を有する乾燥酵母を90質量%以上含有する錠剤であって、
該圧縮面は、中央部に曲率半径R1を有する球面及び周縁部にR1より小さい曲率半径R2を有する曲面を有し、
該中央部と該周縁部の境界は、圧縮面の外周と同心円を形成し、
該中央部の直径は、錠径の80〜85%であり、
R1が13〜20mmであり、かつ、R2が0.5〜2mmである、錠剤。
【請求項2】
R1が17〜20mmであり、かつ、R2が0.5〜1.5mmである請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
錠剤硬度が6kgf以上である請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
質量が200〜300mgである請求項1〜3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
錠径が6.0〜9.0mmであり、錠厚が4.0〜6.0mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥酵母を含有する錠剤に関し、更に詳しくは、乾燥酵母を高含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥酵母は、医薬品としては、局方乾燥酵母として単独で、あるいは種々の医薬品と混合された形で、胃腸薬の薬効成分として広く用いられている。また、現代の健康食品ブームの中にあって、栄養補給の目的や、さらには健康を維持増進させるさまざまな作用が期待されることから食品としても良く利用されている。
【0003】
乾燥酵母を摂取する際の剤形としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等がある。このうち錠剤は、取扱い及び服用が容易であり、利用者には望ましい剤形である。一方、錠剤は物流中に破損する可能性があり、一定以上の硬度を持たせる必要がある。
【0004】
一般に、錠剤は、機能性物質と賦形剤、結合剤さらに崩壊剤等(いずれもセルロースや合成もしくは天然由来の高分子添加物)の任意成分を配合した混合粉末に水および/または有機溶媒を加えて造粒し、造粒した顆粒をホッパー(造粒した顆粒が入った容器)からこれを打錠機の回転盤の上に定量的に流し、回転盤に形成されている穴(臼)に入った造粒した顆粒を上下2組の杵棒で圧縮することにより製造される。
【0005】
錠剤は一般的に形状が球に近いほど嚥下が容易になり、服用し易くなる。つまり、錠剤の嚥下性を向上させるためには、杵棒の圧縮面は平坦ではなく、錠剤が丸みを帯びるように、できるだけ曲率半径が小さい凹面になっていることが好ましい。他方、杵棒による圧縮効率は圧縮面が平坦であるほど高くなり、錠剤の硬度を高くするためには、曲率半径の大きい圧縮面が有利になる。
【0006】
乾燥酵母は結合力に劣り、適当な錠剤硬度を得るためには、高い圧力で圧縮する必要がある。それゆえ、乾燥酵母を含有する錠剤は、杵棒の圧縮面の曲率半径を一定以上の大きさにしなければならず、圧縮面の曲率半径を小さくする従来の手法では、乾燥酵母を含有する錠剤の嚥下性を向上させることはできなかった。
【0007】
尚、非特許文献1には、錠剤の直径、曲率半径及び錠厚等の形状因子が嚥下性に対してどのように影響するか、実験に基づく研究結果が報告されている。また、嚥下性マップとして、錠剤の形状(錠剤の直径、錠剤の厚み、曲率半径)と飲み込みやすさの関係が等高線図のように表されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】佐藤英明ら「嚥下性に優れた錠剤形状の研究」『日本感性工学会論文誌』9巻2号、2010年、137〜143頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、適当な硬度を有しながら改良された嚥下性を示す、乾燥酵母を含有する錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上面及び底面として異形球面状である圧縮面及びその間に円柱状である縁部を有する乾燥酵母を含有する錠剤であって、
該圧縮面は、中央部に曲率半径R1を有する球面及び周縁部にR1より小さい曲率半径R2を有する曲面を有し、
該中央部と該周縁部の境界は、圧縮面の外周と同心円を形成し、
該中央部の直径は、錠径の80〜85%である、錠剤を提供する。
【0011】
ある一形態においては、R1が13〜20mmであり、かつ、R2が0.5〜2mmである。
【0012】
ある一形態においては、R1が17〜20mmであり、かつ、R2が0.5〜1.5mmである。
【0013】
ある一形態においては、乾燥酵母は90質量%以上含有される。
【0014】
ある一形態においては、錠剤硬度が6kgf以上であり、かつ、嚥下性スコアが3.5以上である。
【0015】
ある一形態においては、質量が200〜300mgである。
【0016】
ある一形態においては、錠径が6.0〜9.0mmであり、錠厚が4.0〜6.0mmである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乾燥酵母を含有する錠剤は、圧縮面の中央部を平面に近い形状にすることで錠剤の硬度が実現され、圧縮面の周縁部の曲率を上げて丸みを帯びさせることで優れた嚥下性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である錠剤の形状を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
図2】錠剤の強度予測シミュレーションの工程1の操作を概念的に示した説明図である。
図3】錠剤の強度予測シミュレーションの工程2の操作を概念的に示した説明図である。
図4】錠剤の強度予測シミュレーションの工程3の操作を概念的に示した説明図である。
図5】嚥下性マップを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の錠剤には、機能性物質として乾燥酵母を含有させる。乾燥酵母は比較的多量に服用する必要があり、錠剤の結合力を有する範囲で錠剤に高濃度で含有させることが好ましい。例えば、錠剤中の乾燥酵母の含有量は90質量%以上、好ましくは92〜98質量%、より好ましくは94〜96質量%である。
【0020】
乾燥酵母は結合力に劣る粉体である。錠剤を成形する前の混合粉末(打錠末)は乾燥酵母を主成分として含有する。それゆえ、打錠末も結合力に劣り、印加される打錠荷重と得られる錠剤の密度はほぼ比例する。
【0021】
乾燥酵母の種類は特に限定されないが、例えばビール酵母、発泡酒酵母、雑酒等のビール様飲料用酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、その他の醸造用酵母、パン酵母等を挙げることができる。
【0022】
乾燥酵母を含む錠剤の場合、酵母の必要量及び錠剤を服用する際の利便性を考慮して、錠剤の質量は200〜300mg、好ましくは230〜270mgである。また、嚥下性を考慮して、錠剤の体積は一般に200〜220mmであり、錠剤の直径、すなわち、錠径は一般に6.0〜9.0mm、好ましくは7.0〜9.0mm、例えば8mmである。
【0023】
また、物流中に印加される衝撃及び外力に抵抗して、破損を防止するために、錠剤の硬度は6kgf以上、好ましくは6〜10kgf、より好ましくは6〜8kgfである。錠剤の硬度は高すぎると体内で崩壊し難くなる。
【0024】
図1は本発明の一実施形態である錠剤の形状を示す図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【0025】
図1(a)を参照して、錠剤は上面及び底面として圧縮面1を有し、その間に円柱状の縁部2を有している。圧縮面1は球面と曲面が組み合わされた異形球面の形状を有する。一般に、曲率半径が一定である球面形状が単純Rと称されるのに対し、かかる異形球面形状は曲率半径が2段階に変化し、二段Rと称される。
【0026】
すなわち、図1(b)を参照して、圧縮面1の中央部1’は曲率半径R1を有する球面であり、圧縮面1の周縁部1”はR1より小さい曲率半径R2を有するドーナツ状の曲面である。中央部1’と該周縁部1”の境界3は、圧縮面の外周4と同心円を形成している。
【0027】
圧縮面の曲率半径は、錠剤の硬度と嚥下性のバランスをとるために、R1が13〜20mmであり、その場合、R2が0.5〜2mmである。また、好ましくは、R1が17〜20mmであり、その場合、R2が0.5〜1.5mmである。また、同じ目的で、中央部1’の直径dは、錠径eの80〜85%、好ましくは83〜85%の値である。
【0028】
圧縮面の中央部の曲率半径R1、圧縮面の周縁部の曲率半径R2及び両者の境界の直径の値は、打錠末の特性、打錠量、打錠圧、錠径、錠厚、体積及び目的とする錠剤の硬度及び嚥下性を特定した上で、錠剤の強度予測シュミレーション及び嚥下性マップを用いて決定される。
【0029】
錠剤の強度予測シュミレーションとは、粉体を圧縮して錠剤を成形する工程の際、有限要素法FEMを活用して錠剤を成形する金型(打錠杵)の荷重分布を算出して錠剤の硬さとして捉え、その硬さからなる錠剤の破壊試験を再度FEMにて仮想実験し、破壊にいたるときの荷重を算出する手法である。
【0030】
錠剤の強度予測シミュレーションは、以下の3工程からなる。
(工程1)打錠杵の構造力学解析を行い、杵先に発生する反力解を得る。図2は工程1の操作を概念的に示した説明図である。
(工程2)工程1の結果より、錠剤のヤング率を算出し、錠剤の仮想強度試験を行う。図3は工程2の操作を概念的に示した説明図である。
(工程3)単純Rにおける、錠剤の仮想強度試験と実験値の相関関係より、二段Rの強度を予測する。図4は工程3の操作を概念的に示した説明図である。
【0031】
錠剤の強度予測シュミレーションの具体的な操作は当業者に知られている。
【0032】
図5は嚥下性マップを模式的に示した図である。嚥下性マップとして、錠剤の形状(錠剤の直径、錠剤の厚み、曲率半径)と飲み込みやすさの関係が等高線図のように表されている。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、嚥下性を考慮して、錠剤の厚み、すなわち、錠厚tは4.0〜6.0mm、好ましくは4.5〜5.0mmである。
【0034】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0035】
不純物を取り除いた生酵母を水とカセイソーダで洗浄し、ドラムドライヤーで乾燥して、乾燥酵母を作成した。次に、粉砕機等で粒度の大きさを揃えた該乾燥酵母と副原料を混合均一化して、打錠のための顆粒とした。
【0036】
得られた顆粒を打錠機(畑鉄工所製「HT−AP12SS−U」)を用いて打錠末を打錠加工し、錠径8mmの円形錠剤を得た。その際、打錠量は250mg、打錠圧は25kNとした。また、打錠器の杵棒は、形成される錠剤の形状に対応するように、圧縮面の曲率半径を調整したものを使用した。錠剤は、圧縮面が二段Rのものと単純Rのものを2種類調製した。各錠剤の寸法を表1に示す。
【0037】
富山産業株式会社製「錠剤破壊強度測定器TH−303MP」を用いて得られた錠剤の硬度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
また、30〜50代の男性14名女性15名を被験者として、得られた錠剤を5錠ずつ飲んでもらい、錠剤の嚥下性を5段階で評価した(5:最も飲み込みやすい 1:最も飲み込みにくい)。
【0039】
[表1]
1)R1=18mm、R2=1mm、中央部直径=6.72mm(錠径の84%)
2)R=15mm
【符号の説明】
【0040】
1…圧縮面、
1’…中央部、
1”…周縁部、
2…縁部、
3…中央部と周縁部の境界、
4…圧縮面の外周、
t…錠厚、
d…中央部の直径、
e…錠径。
図1
図2
図3
図4
図5