(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌中に存在する微生物を活性化させる土壌改質組成物に係り、さらに詳しくは、微生物の栄養素や過酸化カルシウムなどの酸素供給剤を生分解性や水溶性を有する材料で被覆した土壌改質組成物に関するものである。
【0002】
近年、工場やガソリンスタンドなどの跡地を再利用する際に、跡地の土壌が鉱物油やその他の化学物質などに汚染されている場合があり、これら汚染土壌への対策が必要になっている。
【0003】
従来から、これら汚染土壌に対する一般的な処理方法として、汚染土壌の掘削除去により土壌の入れ替えを行う方法(掘削除去法)、「フェントン法」や「ホットソイル法」などに代表される化学薬品を用いる方法(化学処理法)、汚染物質に対して効果のある微生物を用いる方法(微生物浄化法)などが用いられている。
ここで、「フェントン法」とは、汚染土壌に鉄系物質と過酸化水素などを混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を分解する方法であり、「ホットソイル法」とは、水と発熱反応を起こす生石灰などの物質と水を汚染土壌に混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を揮発する方法である。
【0004】
しかしながら、掘削除去法は迅速な対応はできるものの、汚染土壌の搬出、廃棄、非汚染土壌の搬入が必要であることからコストが高くなるという問題があり、さらに汚染土壌自体を改質するものではないという欠点がある。
また、化学処理法は汚染土壌自体を改質するという長所はあるものの、激しい発熱反応を伴うことから作業時の安全対策を厳重にする必要があり、また、掘削除去法のような土壌の入れ替え程ではないにせよ、相応のコストがかかるという欠点がある。
さらに、「ホットソイル法」は、反応熱を用いて汚染土壌中の汚染物質を揮発する方法であることから、揮発した物質の臭気による周辺地域などの環境への配慮が必要になるという欠点がある。
【0005】
そこで近年、特許文献1〜4に記載されているように、微生物が有する汚染物質に対する分解能に着目し、これら微生物を利用した土壌改質組成物が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の土壌改質組成物は、いずれも既に土壌中に存在している微生物に加えて、新たな微生物を土壌に添加するものである。
従って、特許文献1の[0008]にも記載されているように添加した微生物による二次汚染の恐れがあるという欠点を有している。
【0008】
また、特許文献1〜4に記載の土壌改質組成物は、既に土壌中に存在している微生物以外に新たに添加する微生物も汚染物質の分解を行うことから、土壌改質組成物を汚染土壌に投入する際に、汚染土壌中において投入量のばらつきがあった場合には改質効果の不十分な部分が発生するという不確実性の問題が発生するという欠点もある。
【0009】
さらに、特許文献1〜3に記載の土壌改質組成物は、微生物や微生物の栄養素を多孔性の物質に担持、すなわち微生物や微生物の栄養素を混合した培地などに多孔質物質を浸漬させることなどによって、多孔質表面に微生物や微生物の栄養素を吸着、保持させているものであり、土壌に適用した際に、微生物や微生物の栄養素が担体表面から離脱することによって土壌中に供給されるものである。
従って、対象とする汚染土壌に合わせて微生物や微生物の栄養素の供給速度、供給量が適正なものとなるように、微生物や微生物の栄養素および担体の組み合わせを選択する必要があり、このような適正な組み合わせが選択できない場合には、汚染土壌の改質が不十分になってしまうという欠点がある。
【0010】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、微生物の栄養素や酸素供給剤を汚染土壌の汚染度合に合わせて、適切な供給速度や供給量で供給することができ、新たな微生物を供給することによる二次汚染の心配がなく、安全に、かつ低コストで汚染土壌の改質をすることができる土壌改質組成物および土壌改質方法の提供を目的とするものである。
また、建造物などの基礎の下に存在するような、いわゆる嫌気状態にある汚染土壌に対しても簡便に長期的かつ継続的な改質を行うことができる土壌改質組成物および土壌改質方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌改質組成物は、土壌中に存在する微生物を活性化させるための土壌改質組成物であって、微生物の栄養素または/および酸素供給剤が、生分解性材料、水溶性材料、
メタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、キチン、キトサン、ツェイン、セラック、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、パラフィン、ワックスから選ばれる少なくとも1種以上の材料(分解性材料)を有する被覆材によって被覆されて
おり、さらに被覆材が、生分解性材料、水溶性材料、メタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、キチン、キトサン、ツェイン、セラック、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、パラフィン、ワックスから選ばれる少なくとも1種以上の材料と、非生分解性材料、非水溶性材料、非アルカリ溶解性材料、非酸溶解性材料、非熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料の混合比率を変化させた混合材料を、層状に配置したものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る土壌改質組成物は、被覆材の厚みが、1mm〜25mmであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項
3に係る土壌改質方法は、請求項1
または請求項2に記載土壌改質組成物を
嫌気状態の土壌に用いること特徴とする
【0016】
本発明の請求項
4に係る土壌改質方法は、請求項1
または請求項2に記載の土壌改質組成物を
嫌気状態の土壌に用いる土壌改質方法であって、地表面から深さ方向に進むにつれて、被覆材の厚みが厚い土壌改質組成物を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明に用いられる微生物の栄養素としては、LB培地、酵母エキス(、イーストエクストラクト)、ミネラルなどの栄養剤、窒素、燐、カリウムなどが含まれている有機系または無機系肥料などが挙げられ、本発明に用いられる酸素供給剤としては、過酸化カルシウムや過酸化マグネシウムなどの過酸化物が挙げられる。
ここで、微生物の栄養素や酸素供給剤については、単独で用いても併用してもよい。また、本発明に用いられる微生物の栄養素や酸素供給剤は形態を問わず、固体、液体、粉体、ゲル状体など各種の形態のものを使用することができる。なお、栄養素や酸素供給剤の内容量については汚染度合などに応じて適宜調節すればよい。
【0018】
本発明に用いられる被覆材としては、土壌中において所定の期間の後に被覆状態が解消されて、内容物である栄養素や酸素供給剤が土壌中に供給されるものであれば特に限定されないが、被覆材成分が土壌中に残存することによる土壌に対する二次汚染をより防止するという点から、生分解性材料、水溶性材料、アルカリ溶解性材料、酸溶解性材料、熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料を用いることが好ましい。
【0019】
ここで、生分解性材料としては、例えばデンプン、ポリ乳酸、脂肪族エステル、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジベートテレフタレート(PBAT)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアリルアミン(PAAm)などが挙げられる。
【0020】
水溶性材料としては、例えばポリエチレンイミンなどのアルキレンイミンポリマー、ポリリジン、ポリアルギニンなどのポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、プルラン、水溶性大豆多糖類、ゼラチンなどが挙げられる。
【0021】
アルカリ溶解性材料としては、例えばメタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0022】
酸溶解性材料としては、例えばキチン、キトサン、ツェイン、セラック、各種のセルロース誘導体、各種のポリビニル誘導体などが挙げられる。
【0023】
熱溶解性材料としては、例えばパラフィンやワックスなどの加温することによって液状となる常温で固体の硬化油などが挙げられる。
【0024】
なお、本発明に用いられる栄養素や酸素供給剤を被覆する方法としては、転動造粒法や流動層造粒法などの公知の造粒方法、栄養剤や酸素供給剤を被覆材となる物質を塗布することでコーティングする方法、栄養素や酸素供給剤を被覆材となる物質で作製したマイクロカプセルの中に充填する方法、栄養剤や酸素供給剤と被覆材となる物質とを混合した後に粒状やペレット状などに成形する方法などが挙げられる。
そして、上記のように栄養素や酸素供給剤を分解性材料で被覆することによって、所定の時間が経過した後、被覆材による被覆状態が解消し、内容物である栄養素や酸素供給剤が土壌中へ供給されるのである。
【0025】
本発明に用いられる被覆材の被覆の形態としては、所定の時間が経過した後に内容物である栄養素や酸素供給剤が汚染土壌中に供給されるものであれば特に限定されない。
このような被覆の形態としては、例えば
図1のように繋ぎ目のないシームレスタイプのようなものや、
図2のように凹型嵌合部を有する被覆材と凸型嵌合部を有する被覆材を作製し、かかるカプセル部材の中に内容物を入れて嵌合するカプセルタイプのようなものが挙げられる。
【0026】
ここで、分解性材料については単独で用いても併用してもよい。また、本発明の土壌改質組成物は汚染土壌中において被覆状態が解消される必要があることから、分解性材料と非分解性材料を併用する際については必ず分解性材料が混合されている必要があるが、分解性材料が混合されていればその混合比率は対象とする土壌に応じて調節すればよい。
具体的には、
図1のように被覆材の全部が分解性材料で形成されている形態、
図3のように分解性材料と非分解性材料の混合比率を変化させた混合材料によって被覆材の全部が形成されている形態、
図4のように分解性材料と非分解性材料の混合比率を変化させた混合材料を層状に配置した形態、
図5のように被覆材の一の部分が分解性材料で形成されており、他の部分が非分解性材料で形成されている形態、
図6のように
図5の一の部分に用いる分解性材料の代わりに、上記した混合材料を用いた形態などが挙げられる。
なお、
図3〜
図6については、図示しやすいように
図1に示すシームレスタイプによって模式したが、これに限定されず
図2のようなカプセルタイプにおいても採用することができる。
【0027】
被覆後の土壌改質組成物の粒径については特に限定されず、汚染土壌の状況に応じて適宜設定することができるが、対象土壌への適用のし易さや被覆材が汚染土壌中にて分解した際の内容物の効率的な拡散のためには、1μm〜10000μm程度の粒径とすることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる被覆材の厚みについては、内容物である栄養素や酸素供給剤を、土壌の質や深さ、汚染度合などに応じて適正な時期に土壌中に供給できる厚みであれば特に限定されないが、強度や改質効果の発現時期などを考慮すると1mm〜25mmであることが好ましい。
その理由は、被覆材の厚みがあまりにも薄すぎると取扱い時に被覆材が壊れてしまい、土壌に投入する前に土壌改質組成物の内容物が出てしまう恐れがあるからであり、逆にあまりにも厚すぎると改質効果が発現するまでに時間がかかりすぎ、改質効果が不十分になる恐れがあるからである。
【0029】
本発明の土壌改質方法としては、上記した土壌改質組成物を用いる方法であれば特に限定されないが、改質の対象となる土壌環境に応じて、内容物の量や被覆材の厚みなどを調整した各種の土壌改質組成物を使い分けることが好ましい。
例えば、建造物などが立っておらず、かつ地表面付近に存在する土壌については、地表面から酸素の供給が多く行われる、いわゆる好気的な土壌環境にあることから、内容物の量が少なく被覆材の厚みが薄い土壌改質組成物を用いることによって土壌中の微生物の活動を調節する方法が挙げられる。
一方、地表面上に建造物などが立っている土壌や深度が高い土壌については、地表面からの酸素の供給がほとんど行われない、いわゆる嫌気的な土壌環境にあることから、内容物の量が多く被覆材の厚みが厚い土壌改質組成物を用いることによって土壌中の微生物の活動を調節する方法が挙げられる。
また、このような嫌気的環境の土壌では、場合によっては継続的な改質を行う必要があることから、被覆材の厚みが段階的に異なる数種の土壌改質組成物を混合することによって、被覆材の被覆状態が解消される時期をずらして、内容物である栄養素や酸素供給剤が途切れることなく土壌中に供給されるようにして、土壌中の微生物の活動を維持する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る土壌改質組成物および土壌改質方法によれば、微生物の栄養素または/および酸素供給剤が、生分解性材料、水溶性材料、
メタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、キチン、キトサン、ツェイン、セラック、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、パラフィン、ワックスから選ばれる少なくとも1種以上の材料を有する被覆材によって被覆されて
おり、さらに被覆材が、生分解性材料、水溶性材料、メタクリル酸のコポリマー、ビスコースレーヨン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、キチン、キトサン、ツェイン、セラック、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、パラフィン、ワックスから選ばれる少なくとも1種以上の材料と、非生分解性材料、非水溶性材料、非アルカリ溶解性材料、非酸溶解性材料、非熱溶解性材料から選ばれる少なくとも1種以上の材料の混合比率を変化させた混合材料を、層状に配置したものであることを特徴としているので、微生物の栄養素や酸素供給剤を汚染土壌の汚染度合に合わせて、適切な供給速度や供給量で供給することができ、新たな微生物を供給することによる二次汚染の心配がなく、安全に、かつ低コストで汚染土壌の改質をすることができる。
また、基礎の下に存在するような、地表面上に建造物などが立っているいわゆる嫌気状態にある汚染土壌に対しても簡便に長期的かつ継続的な改質を行うことができる。
さらに、微生物の栄養素や酸素供給剤を汚染土壌の汚染度合に合わせて、より適切な供給速度で供給することができる。
【0031】
本発明に係る土壌改質組成物によれば、被覆材の厚みが1mm〜25mmであることを特徴としているので、被覆材が取扱い時に破壊されることなく、微生物の栄養素や酸素供給剤を土壌中に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の土壌改質組成物および土壌改質方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0036】
(土壌改質組成物)
まず、本発明に係る土壌改質組成物を説明する。
図1は本発明に係る土壌改質組成物の第1の実施形の断面を示す模式図であり、
図2は本発明に係る土壌改質組成物の第2の実施形態を示す模式図であり、
図3は本発明に係る土壌改質組成物の第3の実施形態の断面を示す模式図であり、
図4は本発明に係る土壌改質組成物の第4の実施形態の断面を示す模式図であり、
図5は本発明に係る土壌改質組成物の第5の実施形態の断面を示す模式図であり、
図6は本発明に係る土壌改質組成物の第6の実施形態の断面を示す模式図である。
【0037】
(土壌改質組成物の第1の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第1の実施形態の構成および作用を説明する。
図1に示す本発明の第1の実施形態である土壌改質組成物1aは、微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が被覆材3で被覆されており、被覆材3の全部が、分解性材料4で形成されることによって構成されている。なお、被覆材3の厚みは改質する土壌に合わせて、1mm〜25mmの間で調整される。
そして、土壌中に投入された後、時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
【0038】
(土壌改質組成物の第2の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第2の実施形態の構成および作用を説明する。
図2に示す本発明の第2の実施形態である土壌改質組成物1bは、被覆材3が
図2(a)に示すような凹型嵌合部5を有する被覆材3aと凸型嵌合部6を有する被覆材3bであり、かかる被覆材3の中に内容物2を入れて嵌合することによって、
図2(b)のように土壌改質組成物1bが形成されているものである。
そして、土壌中に投入された後、時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
【0039】
(土壌改質組成物の第3の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第3の実施形態の構成および作用を説明する。
図3に示す本発明の第3の実施形態である土壌改質組成物1cも内容物2が被覆材3によって被覆されているが、被覆材3の全部が、分解性材料4と非分解性材料7の混合比率を変化させた混合材料8で形成されている点において、第1の実施形態と異なっている。
ここで、分解性材料4と非分解性材料7の混合比率については、必ず分解性材料4が混合されていなければならないが、分解性材料4が混合されていればその混合比率は対象とする土壌に応じて調節されることになる。そして、例えば、分解性材料の混合比率が被覆材全体の90重量%の場合は1ヶ月後に被覆状態が解消され、分解性材料の混合比率が被覆材全体の50重量%の場合は3ヶ月後に被覆状態が解消され、分解性材料の混合比率が被覆材全体の10重量%の場合は6ヶ月後に被覆状態が解消されるなどのデータを予め把握しておくことによって、最適な時期に内容物の供給を土壌に行うことができる。なお、被覆材3の厚みは改質する土壌に合わせて、1mm〜25mmの間で調整される。
【0040】
そして、土壌中に投入されて時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
従って、本実施形態においては、第1の実施形態と比べると内容物2を土壌に供給したい時期をより細かく調節することができる。
【0041】
(土壌改質組成物の第4の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第4の実施形態の構成および作用を説明する。
図4に示す本発明の第4の実施形態である土壌改質組成物1dも内容物2が被覆材3によって被覆されているが、分解性材料4と非分解性材料7の混合比率を変化させた混合材料8aおよび8bを層状に配置して形成されている点において、第1の実施形態と異なっている。なお、被覆材3の厚みは改質する土壌に合わせて、1mm〜25mmの間で調整される。また、混合材料の層の数についても改質する土壌に合わせて調整される。
【0042】
そして、土壌中に投入された後、時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
従って、本実施形態においては、層状に配置された混合材料8aおよび8bの混合比率によって被覆状態の解消速度が異なることから、第1の実施形態や第3の実施形態と比べると内容物2を土壌に供給したい時期をさらに細かく調節することができる。
【0043】
(土壌改質組成物の第5の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第5の実施形態の構成および作用を説明する。
図5に示す本発明の第5の実施形態である土壌改質組成物1eも、内容物2が被覆材3によって被覆されているが、被覆材3の一の部分が分解性材料4で形成されており、他の部分が非分解性材料7で形成されている点において、第1の実施形態と異なっている。
ここで、分解性材料4については単独で用いても併用してもよく、土壌に応じて調節されることになる。また、
図5に示すように、分解性材料4で形成される被覆材3の一の部分の形態については、針状4aになっていても蓋状4bになっていてもよく、またこれらを併用してもよい。なお、本実施形態においても、被覆材3の厚みは改質する土壌に合わせて1mm〜25mmの間で調整される。
【0044】
そして、土壌中に投入された後、時間の経過とともに分解性材料4の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
従って、本実施形態においては、第1の実施形態のような内容物2がほぼ一度に供給される形態に比べ、内容物2が少しずつ土壌中に供給されることとなる。
【0045】
(土壌改質組成物の第6の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第6の実施形態の構成および作用を説明する。
図6に示す本発明の第6の実施形態である土壌改質組成物1fも、内容物2が被覆材3によって被覆されているが、被覆材3の一の部分が混合材料8で形成されており、他の部分が非分解性材料7で形成されている点において第5の実施形態と異なっている。
ここで、混合材料8の混合比率については、第3の実施形態と同様に必ず分解性材料が混合されていなければならないが、分解性材料4が混合されていればその混合比率は改質の対象となる土壌に応じて調節されることになる。そして、第3の実施形態と同様に、分解性材料の混合比率と被覆状態が解消される時間との関係を予め把握しておくことによって、最適な内容物の供給を土壌に行うことができる。なお、被覆材3の厚みは改質する土壌に合わせて1mm〜25mmの間で調整される。
【0046】
そして、土壌中に投入されて時間の経過とともに混合材料8の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給されることになる。
従って、本実施形態においては、被覆材3の一の部分が混合材料8で形成されていることから、第5の実施形態と比べ、内容物2がより少しずつ土壌中に供給されることとなる。
【0047】
(土壌改質方法)
次に、本発明に係る土壌改質方法を説明する。
図7は本発明に係る土壌改質方法の第1の実施形態を示す模式図であり、
図8は本発明に係る土壌改質方法の第2の実施形態を示す模式図であり、
図9は本発明に係る土壌改質方法の第3の実施形態を示す模式図であり、
図10は本発明に係る土壌改質方法の第4の実施形態を示す模式図である。
【0048】
なお、これら土壌改質方法の各実施形態においては第1の実施形態の土壌改質組成物1aを用いているが、これに限定されるものではなく、他の実施形態の土壌改質組成物を用いることもできる。
【0049】
さらに、前記の土壌改質組成物とこれら土壌改質方法の各実施形態を組み合わせることによって、汚染度合と土壌環境に適した、より細かい土壌改質を行うことができる。
【0050】
(土壌改質方法の第1の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質方法の第1の実施形態を説明する。ここで、
図7に示す本実施形態は、地表面上に建造物が立っていない土壌を対象とするものである。
【0051】
まず、改質したい範囲の土壌9を掘削する。
【0052】
次に、土壌9の汚染度合に応じて、必要となる栄養素や酸素供給剤の量を試算し、被覆材3の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物2の総量が改質に必要な量となるように、所定量の土壌改質組成物1aを土壌9に混合する。
この際、土壌改質組成物1aを混合した土壌9を元の場所に埋め戻した際に、表層部10となる土壌9については、地表面から酸素の供給がなされることから、中層部11、深層部12に混合される土壌改質組成物1aよりも内容物2の量が少ない土壌改質組成物1aが用いられる。また、被覆材3の厚みについても、表層部10から中層部11、深層部12になるにつれて被覆材が厚い土壌改質組成物1aが用いられる。
【0053】
そして、時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給され、土壌中の微生物の活動が調節されることになる。
【0054】
(土壌改質方法の第2の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質方法の第2の実施形態を説明する。ここで、
図8に示す本実施形態は、地表面上に建造物が立っていない土壌であり、かつ継続的な改質が必要な土壌を対象とするものである。
【0055】
まず、改質したい範囲の土壌9を掘削する。
【0056】
次に、土壌9の汚染度合に応じて、必要となる栄養素や酸素供給剤の量を試算し、被覆材3の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物2の総量が改質に必要な量となるように、所定量の土壌改質組成物1aを土壌9に混合する。
この際、土壌改質組成物1aを混合した土壌9を元の場所に埋め戻した際に、表層部10、中層部11、深層部12の各層の土壌9には、各層において複数の被覆材3の厚みを有する数種の土壌改質組成物1aが混合される。
【0057】
そして、時間の経過とともに、順次、被覆材3の厚みが薄い土壌改質組成物1aから内容物2の土壌中への供給がなされることになり、よって土壌中の微生物の活動が維持され、継続的な土壌改質が行われることになる。
【0058】
(土壌改質方法の第3の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質方法の第3の実施形態を説明する。ここで、
図9に示す本実施形態は、地表面上に建造物が立っている土壌を対象とするものである。
【0059】
まず、改質したい範囲の土壌9を掘削する。
【0060】
次に、土壌7の汚染度合に応じて、必要となる栄養素や酸素供給剤の量を試算し、被覆材3の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物2の総量が改質に必要な量となるように、所定量の土壌改質組成物1aを土壌9に混合する。
この際、土壌改質組成物1aを混合した土壌9を元の場所に埋め戻した際に、表層部10となる土壌9については、地表面からの酸素の供給がほとんどないことから、中層部11、深層部12に混合される土壌改質組成物1aと同程度の量の内容物2が被覆された土壌改質組成物1aが用いられる。また、被覆材3の厚みについても、各層においてほとんど変わらない厚みの土壌改質組成物1aが用いられる。
【0061】
そして、時間の経過とともに被覆材3の分解や溶解が進むことによって所定の時間が経過した後、被覆状態が解消されて微生物の栄養素や酸素供給剤である内容物2が土壌中に供給され、土壌中の微生物の活動が調節されることになる。
【0062】
(土壌改質方法の第4の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質方法の第4の実施形態を説明する。ここで、
図10に示す本実施形態は、地表面上に建造物が立っている土壌であり、かつ継続的な改質が必要な土壌を対象とするものである。
【0063】
まず、改質したい範囲の土壌9を掘削する。
【0064】
次に、土壌9の汚染度合に応じて、必要となる栄養素や酸素供給剤の量を試算し、被覆材3の被覆状態が解消した際に土壌に供給される内容物2の総量が改質に必要な量となるように、所定量の土壌改質組成物1aを土壌9に混合する。
この際、土壌改質組成物1aを混合した土壌9を元の場所に埋め戻した際に、表層部10となる土壌9については、地表面からの酸素の供給がほとんどないことから、中層部11、深層部12に混合される土壌改質組成物1aと同程度の量の内容物2が被覆された土壌改質組成物1aが用いられる。そして、表層部10、中層部11、深層部12の各層の土壌9には、各層において複数の被覆材3の厚みを有する数種の土壌改質組成物1aが混合される。
【0065】
そして、時間の経過とともに、順次、被覆材3の厚みが薄い土壌改質組成物1aの内容物2が土壌中に供給されることになることから土壌中の微生物の活動が維持され、継続的な土壌改質が行われることになる。
【0066】
次に、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
内容物として過酸化カルシウムを主成分とした粒状の酸素供給剤を用い、被覆材として生分解性を有する材料であるPVAを用いた。そして、撹拌装置付きの容器に過酸化カルシウム製剤0.04gを入れ、撹拌をしながら10重量%濃度のPVA水溶液を0.004gスプレーした。その後50℃において120分乾燥を行い、最後にふるいを用いて粒径が略5.1mmである実施例1の土壌改質組成物を得た。
【0068】
(実施例2)
内容物として栄養剤である粉末状のLB培地成分を用い、被覆材として生分解性を有する材料であるPVAを用いた。そして、撹拌装置付きの容器にLB培地成分0.314gを入れ、撹拌をしながら10重量%濃度のPVA水溶液を0.03gスプレーした。その後50℃において120分乾燥を行い、最後にふるいを用いて粒径が略10.2mmである実施例2の土壌改質組成物を得た。
【0069】
(実施例3)
内容物として過酸化カルシウムを主成分とした粒状の酸素供給剤を用い、被覆材として水溶性を有する材料であるポリエチレンイミンを用いた。そして、撹拌装置付きの容器に過酸化カルシウム製剤0.04gを入れ、撹拌をしながら10重量%濃度のポリエチレンイミン水溶液を0.004gスプレーした。その後50℃において120分乾燥を行い、最後にふるいを用いて粒径が略5.1mmである実施例3の土壌改質組成物を得た。
【0070】
(実施例4)
内容物として栄養剤である粉末状のLB培地成分を用い、被覆材として水溶性を有する材料であるポリエチレンイミンを用いた。そして、撹拌装置付きの容器にLB培地成分0.314gを入れ、撹拌をしながら10重量%濃度のポリエチレンイミン水溶液を0.03gスプレーした。その後50℃において120分乾燥を行い、最後にふるいを用いて粒径が略10.2mmである実施例4の土壌改質組成物を得た。
【0071】
(実施例5)
内容物として過酸化カルシウムを主成分とした粒状の酸素供給剤と栄養剤である粉末状のLB培地成分を併用し、被覆材として生分解性を有する材料であるPVAと水溶性を有する材料であるポリエチレンイミンを併用した。
そして、撹拌装置付きの容器に過酸化カルシウム0.02gとLB培地0.02gを入れ、撹拌をしながら10重量%濃度のPVA水溶液と10重量%濃度のポリエチレンイミン水溶液の混合溶液を0.004gスプレーした。その後50℃において120分乾燥を行い、最後にふるいを用いて粒径が略5.1mmである実施例5の土壌改質組成物を得た。