(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充填工程では、前記マッド材よりも前記閉塞栓の先端が前記出銑口の炉内側に位置するように前記マッド材の供給量が調節されることを特徴とする請求項1に記載の出銑口の閉塞方法。
【背景技術】
【0002】
製鉄設備の一つである高炉では、鉄鉱石に含まれる酸素を還元することで銑鉄が取り出される。高炉の炉底の湯溜まり部に溜まる溶銑(溶融した銑鉄)は、湯溜まり部横の炉壁に設けられた出銑口から取り出される。出銑口は、マッド材と呼ばれる粘土状の耐火物を充填して焼成させることによって閉塞される。溶銑の取り出しは、空圧式もしくは油圧式の開孔機を使用して、錐ロッドに前後進、打撃、回転の動作をさせることにより、出銑口に充填されている閉塞材を開孔することにより行われる。溶銑を湯溜まり部から取り出した後は、マッドガンを使用してマッド材を出銑口に充填して焼成させて出銑口を閉塞する。このように、出銑口の開孔と閉塞作業には、開孔機およびマッドガンというそれぞれ専用の装置を使用している。
【0003】
これらの装置による出銑口の開孔と閉塞作業は、自動化の試みもなされているが、特に開孔作業は開孔判定が難しいことから、開孔の最終的な判断は装置の使用者に委ねられている。これは、出銑口の炉内側のマッド材の形状が一定していないこと、出銑口内に充填されたマッド材の内部状態が不均一であることに起因する。出銑口に充填されるマッド材は、通常、炉内側に凸の状態で固結するが、前回の開孔作業によって削孔された出銑口の炉内側の状態や充填されるマッド材の量によってその形状は異なるため、出銑口の炉内側に付着したマッド材のうち最も炉内側の位置が一律にならない。このため、出銑口の削孔深さに基づいて開孔判定を行うことが困難になり、開孔判定が難しくなっている。
また、充填されたマッド材は、その内部に空隙ができることもあり、錐ロッドの前進負荷や回転負荷に基づいて開孔判定を行うと、空隙によって前進負荷や回転負荷が弱まることで出銑口が貫通したと誤判定してしまう恐れがある。
このように、出銑口の開孔判定を容易にするためには、出銑口の閉塞状態を常に一定に保つことが要求される。
【0004】
出銑口の閉塞技術の例としては、たとえば、特許文献1に記載された高炉出銑口の閉塞方法が知られている。この閉塞方法は、出銑口へマッド材を充填し、このマッド材の焼成中にマッド材の中途まで大口径の孔を掘り、この大口径孔に再びマッド材を充填する方法である。この閉塞方法によれば、後から充填するマッド材により出銑口におけるマッド材の充填密度を向上させることができるという。
【0005】
また、閉塞技術の他の例として、特許文献2に記載された高炉出銑口形成方法がある。この形成方法は、出銑口にマッド材を充填してマッド材が炉熱によって焼成された後、開孔用ビットで、溶銑の噴出を防ぐのに必要な厚さを残して削孔し、開孔内に流動性耐火物を適量注入して、予め形成固化した耐火物筒状体を開孔内に挿入して開孔内側と耐火物筒状体外側との隙間に前記流動性耐火物を充填させる方法である。
本形成方法によれば、耐火物筒状体の内部が空洞のため開孔に要する時間を短縮することができる。また、焼成したマッド材を開孔した後に耐火物筒状体を挿入させるため、小さな挿入力で済み、従来の出銑口開孔機のフィード力で挿入することができるとされる。
【0006】
出銑口を開孔させるのに要する削孔深さを一定にした方法として、特許文献3に記載された冶金炉用出湯口の開閉方法が知られている。この方法では、芯金棒の周囲に出銑口の断面形状より僅かに大きい断面形状で柱状に形成した固形マッド材を芯金棒とともに出銑口に打ち込んで閉塞し、芯金棒を引き抜いて開孔する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、以前に充填したマッド材が高炉内に溜まって出銑口の炉内側の開口に達しているため、出銑口を開孔させるために必要な削孔深さが一定にできないという問題がある。また、特許文献3に記載の方法では、出銑後の出銑口の径が想定より小さい場合、固形マッド材と芯金棒を無理やり打ち込むことになって出銑口が破損する恐れがある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、出銑口の破損を防止しつつ、後で出銑口を容易に開孔することができる
出銑口の閉塞構造および出銑口の閉塞方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の出銑口の閉塞方法は、高炉の炉壁を貫通する方向に延びるように形成された出銑口
を、マッド材
及び前記マッド材により炉内側に押し出される閉塞栓で閉塞する出銑口の閉塞方法であって、前記出銑口の内径より小さい外径に設定され略棒状に形成された
前記閉塞栓の少なくとも一部が前記マッド材の供給流路上に配置される配置工程と、供給量を調節した前記マッド材が前記出銑口内に供給され、前記閉塞栓の外周面と前記出銑口の内周面との間の全周にわたり前記マッド材が充填される充填工程と、を有
し、前記閉塞栓は、管状部材と、前記マッド材の焼成物よりも柔らかい材料で形成され、前記管状部材の内腔に配置されるとともに前記出銑口の開孔時に掘削される充填部材と、を有することを特徴としてい
る。
【0011】
この発明によれば、閉塞栓(出銑口用閉塞栓)の少なくとも一部をマッド材の供給流路上に配置した状態で、供給量を調節したマッド材を出銑口内に供給し、閉塞栓の外周面と出銑口の内周面との間の全周にわたりマッド材を充填する。
閉塞栓が出銑口内にあるときには、出銑口の断面の少なくとも一部が閉塞栓により塞がれる。閉塞栓がマッド材により炉内側に押し出されるときに、マッド材は出銑口と閉塞栓との間を炉内側に流れる。マッド材を閉塞栓とともに出銑口内に供給量を調節して供給することにより、マッド材のうち出銑口と閉塞栓との間を炉内側に流れて出銑口の炉内側から流れ出る量を低減させることができる。
【0012】
また、本発明の出銑口の閉塞構造は、高炉の炉壁を貫通する方向に延びるように形成された出銑口を閉塞する出銑口の閉塞構造であって、前記出銑口の内径より小さい外径に設定され略棒状に形成された閉塞栓の外周面と前記出銑口の内周面との間の全周にわたり充填されたマッド材を焼成してなり、前記閉塞栓は、管状部材と、前記マッド材の焼成物よりも柔らかい材料で形成され、前記管状部材の内腔に配置されるとともに前記出銑口の開孔時に掘削される充填部材と、を有することを特徴としている。
【0013】
また、上記の出銑口の閉塞方法において、前記充填部材は、前記閉塞栓を前記閉塞栓の軸線方向に貫通することがより好ましい。
また、上記の出銑口の閉塞構造において、前記充填部材は、前記閉塞栓を前記閉塞栓の軸線方向に貫通することがより好ましい。
【0014】
また、上記の出銑口の閉塞方法において、前記管状部材は、管状に形成された管状部本体と、前記管状部本体の外径より大きく形成された大径部と、を有し、前記大径部は、前記管状部本体の一端に配置され、前記一端から離間するほど拡径するように形成され、前記配置工程では、前記閉塞栓の前記大径部が前記管状部本体よりも前記出銑口の炉内側に位置するように配置され、前記充填工程では、前記大径部に沿って流れた前記マッド材が前記炉壁の内面に沿って流れることがより好ましい。
また、上記の出銑口の閉塞方法において、前記充填工程の後で、前記閉塞栓の前記管状部材の内腔に補助充填部材を充填することがより好ましい。
【0015】
また、上記の出銑口の閉塞方法において、前記充填工程では、前記マッド材よりも前記閉塞栓の先端が前記出銑口の炉内側に位置するように前記マッド材の供給量が調節されることがより好ましい。
この発明によれば、出銑口において閉塞栓またはマッド材で閉塞された部分のうちの炉内側の端部が閉塞栓の先端となる。
上記の出銑口の閉塞方法において、前記閉塞栓の長さは、前記出銑口が延びる延在方向における前記出銑口の長さ以上に設定されていることがより好ましい。
【0017】
また、上記の
出銑口の閉塞構造において、前記管状部材は、管状に形成された管状部本体と、前記管状部本体の外径より大きく形成され
、前記管状部本体よりも前記出銑口の炉内側に配置された大径部とを有することがより好ましい。
この発明によれば、出銑口と管状部本体との間を炉内側に流れるマッド材は、大径部に衝突しやすくなる。
また、上記の
出銑口の閉塞構造において、前記大径部は、前記管状部本体の一端に配置され、前記一端から離間するほど拡径するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の
出銑口の閉塞構造において、前記出銑口が延びる延在方向における前記出銑口の長さ以上に
前記閉塞栓の長さが設定されていることがより好ましい。
また、上記の
出銑口の閉塞構造において、前記充填部材は、前記管状部材の一端から一定距離離間した位置より前記管状部材の他端側のみに配置さ
れ、前記閉塞栓は、前記管状部材の一端が前記出銑口の炉外側となるように配置されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、請求項1に記載の出銑口の閉塞
方法および請求項7に記載の
出銑口の閉塞構造によれば、マッド材が高炉内に溜まって出銑口の炉内側の開口に達することが防止されて開孔に要する削孔深さが一定の値以下となり、後に出銑口を開孔するときに削孔深さが予め分かっているので、出銑口を容易に開孔することができる。また、従来の開閉方法のように、出銑口に出銑口より断面形状が大きい固形マッド材を無理やり打ち込むことなく、出銑口の内径より小さい外径を有する閉塞栓で出銑口を閉塞させるので、出銑口が破損するのを防止することができる。
また、マッド材の焼成物よりも柔らかい充填部材または焼成した充填部材を、たとえば開孔機などにより掘削することで、炉壁に出銑口をさらに容易に形成することができる。また、マッド材の焼成物は充填部材または焼成した充填部材より硬く侵食されにくいので、出銑口が溶銑により侵食されて大きくなるのを抑えることができる。
【0020】
請求項5に記載の出銑口の閉塞方法によれば、後に出銑口を開孔するときに閉塞栓の先端まで削孔すれば開孔することが分かっているので、出銑口をより容易に開孔することができる。
請求項6に記載の出銑口の閉塞方法、
請求項11に記載の
出銑口の閉塞構造によれば、閉塞栓を出銑口内に配置したときに、閉塞栓の先端の位置を容易に検知することができる。
【0022】
請求項9に記載の
出銑口の閉塞構造によれば、マッド材が流れる力を大径部でより確実に受け、閉塞栓をより容易に炉内側に押し出すことができる。また、マッド材が大径部に沿って流れることでマッド材が炉壁の炉内側の壁面に沿って流れやすくなり、このマッド材により出銑口を溶銑から効果的に保護することができる。
請求項10に記載の
出銑口の閉塞構造によれば、出銑口内で大径部を炉内側に配置することで、管状部材のうち炉内側に突出する部分の長さを短く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る出銑口用閉塞栓(以下、「閉塞栓」と称する。)、および該閉塞栓を取り付けて用いられる本発明に係るマッドガンの第1実施形態を、
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、本閉塞栓1は、高炉100の炉壁101を貫通する方向に延びるように形成された出銑口102をマッド材2とともに閉塞するためのものである。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の閉塞栓1は、棒状に形成された本体部3と、本体部3の先端側に設けられ、本体部3の外径より大きく形成されるとともに、出銑口102の内径より小さい外径に設定された拡径部4とを有して構成されている。
拡径部4は、本体部3の一方の端部に設けられている。拡径部4には、一方の端部から他方の端部に向かうにしたがって拡径する傾斜面4a、4bが形成されている。本体部3の長さは、出銑口102が延びる延在方向Eにおける出銑口102の長さM1(
図1参照)より短く設定されている。
閉塞栓1は、たとえば、アルミナ、ろう石、炭化珪素、耐火粘土などからなるマッド材を焼成した耐火物により形成されている。
出銑口102の内径は、
図3に示すように、開孔機などにより出銑口102を形成したときの切削状態、および、出銑口102を形成した後で出銑口102を炉内側D1から炉外側D2に流れ出る高炉100内の溶銑Lの流れ方などにより変化することがある。このため、出銑口102の内径に応じて大きさが異なる閉塞栓1を複数種類用意してもよい。
【0026】
本実施形態のマッドガン50は、
図4に示すように、マッド材2を収容する内腔51aが形成され、内腔51aに連通する開口51bが形成されたケーシング51と、ケーシング51の内腔51aに配置され、閉塞栓1を係止する閉塞栓充填管(係止部)52と、ケーシング51の内腔51a内のマッド材2を押し出すシリンダ53と、を備えている。なお、ケーシング51は、先端側に配置され開口51bが形成されたノズル54と、基端側に配置されノズル54に接続されたバレル55とを有している。
【0027】
ケーシング51は、開口51bを出銑口102に連通させることができるように構成されている。
閉塞栓充填管52は管状に形成されていて、その内径は閉塞栓1の本体部3の外径よりわずかに大きく設定されている。閉塞栓充填管52の基端側は、ケーシング51のバレル55の後端に貫通して開口していて、不図示の開閉栓により閉塞栓充填管52の基端側の開口を塞ぐことができる。
閉塞栓充填管52は、軸線がケーシング51の開口51bを通るようにケーシング51内に配置されている。
シリンダ53は、ケーシング51内を先端側および基端側に移動することができる。シリンダ53には、自身の軸線方向に貫通孔53aが形成されていて、閉塞栓充填管52は貫通孔53aを挿通している。シリンダ53には不図示のシール部材が設けられていて、シリンダ53と閉塞栓充填管52との間、シリンダ53およびとケーシング51との間を水密に保持している。
【0028】
次に、本実施形態の出銑口の閉塞方法を、本発明の閉塞栓1およびマッドガン50を用いる場合で説明する。なお、
図3に示すように高炉100の炉壁101に出銑口102を開孔する方法は、不図示の開孔機などを利用した公知の方法を用いることができる。また、開孔する出銑口102の内径により、前回以前に焼成したマッド材103が出銑口102の周囲に残る場合もある。
図5は、本実施形態の出銑口の閉塞方法を示すフローチャートである。本出銑口の閉塞方法は、閉塞栓1をマッドガン50の閉塞栓充填管52内に挿入する配置工程S1と、出銑口102内にマッド材2を充填させる充填工程S2とを備えている。
【0029】
まず、作業者は、配置工程S1において、
図4に示すように、閉塞栓充填管52の先端側の開口から閉塞栓1の本体部3を挿入して閉塞栓1を閉塞栓充填管52に係止するとともに、閉塞栓充填管52の基端側の開口を開閉栓で閉じておく。このとき、閉塞栓1の拡径部4が開口51bから突出した状態となる。
この状態で、マッドガン50を移動させ、出銑口102にケーシング51の開口51bを連通させる。開口51bから突出した閉塞栓1の拡径部4は、出銑口102内に配置される。
なお、閉塞栓充填管52を除くケーシング51の内腔51aおよび出銑口102内の空間が、本実施形態におけるマッド材2の供給流路となる。
【0030】
続いて、充填工程S2において、
図6に示すように、シリンダ53を前進させる(先端側に移動させる)ことで、マッド材2の供給量を後述するように調節して、マッド材2よりも閉塞栓1の先端が出銑口102の炉内側D1に位置するようにする。
閉塞栓1の周囲にマッド材2を供給すると、マッド材2は、拡径部4への衝突および本体部3との間の摩擦により閉塞栓1を炉内側D1に押し出すので、閉塞栓1が閉塞栓充填管52から外れる。
さらにマッド材2を供給すると、出銑口102内において、マッド材2が閉塞栓1を炉内側D1に押し出すとともに、マッド材2が出銑口102と閉塞栓1との間を炉内側D1に流れ、
図1に示すように、閉塞栓1の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材2が充填される。
なお、閉塞栓充填管52の開閉栓を開け、閉塞栓充填管52の基端側の開口から不図示の棒状部材を挿入して、閉塞栓1を炉内側D1に押し出してもよい。
【0031】
出銑口102内の容積の概略値は、出銑口102の内径、炉壁101の厚さおよび延在方向Eの傾きから求めることができる。出銑口102内に充填するマッド材2の供給量を、たとえば、出銑口102内の容積から閉塞栓1の体積を引いた値より一定量少なくすることで、マッド材2が出銑口102の炉内側D1から流れ出さないように調節することができる。
【0032】
また、
図4に示すように、配置工程S1において、延在方向Eの出銑口102の長さM1に対して、閉塞栓1の長さM2と、閉塞栓1の先端から出銑口102の炉外側D2の端部までの距離M3を適切に設定することにより、
図1に示すように、マッド材2よりも閉塞栓1の先端が出銑口102の炉内側D1に位置するように調節することができる。
なお、出銑口102にマッド材2が充填された状態で一定時間保持されることで、高炉100の熱によりマッド材2が焼成される。
また、閉塞栓充填管52内に侵入したマッド材2は、閉塞栓充填管52内に不図示の棒状部材を挿入することにより除去することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の閉塞栓1、マッドガン50および出銑口の閉塞方法によれば、閉塞栓1をケーシング51の内腔51aおよび出銑口102内の空間で構成される供給流路上に配置した状態で、供給量を調節したマッド材2を出銑口102内に供給し、閉塞栓1の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材2を充填する。
閉塞栓1が出銑口102内にあるときには、出銑口102の断面の一部が閉塞栓1により塞がれる。閉塞栓1がマッド材2により炉内側D1に押し出されるときに、マッド材2は出銑口102と閉塞栓1との間を炉内側D1に流れる。マッド材2を閉塞栓1とともに出銑口102内に供給量を調節して供給することにより、マッド材2のうち出銑口102と閉塞栓1との間を炉内側D1に流れて出銑口102の炉内側D1から流れ出る量を低減させることができる。
これにより、マッド材2が高炉100内に溜まり、溜まったマッド材2が出銑口102の炉内側D1の開口に達することが防止され、開孔に要する削孔深さが一定の値以下となる。したがって、後に出銑口102を開孔するときに削孔深さが予め分かっているので、出銑口102を容易に開孔することができる。
また、従来の開閉方法のように、出銑口102に出銑口102より断面形状が大きい固形マッド材を無理やり打ち込むことなく、出銑口102の内径より小さい外径を有する閉塞栓1で出銑口102を閉塞させるので、出銑口102が破損するのを防止することができる。そして、出銑口102を閉塞するのに必要なマッド材2の量を低減させることができる。
【0034】
さらに、充填工程S2では、マッド材2よりも閉塞栓1の先端が出銑口102の炉内側D1に位置するようにマッド材2の供給量を調節する。したがって、出銑口102において閉塞栓1またはマッド材2で閉塞された部分のうちの炉内側D1の端部が閉塞栓1の先端となる。
このため、後に出銑口102を開孔するときに閉塞栓1の先端まで削孔すれば開孔することが分かっているので、出銑口102をより容易に開孔することができる。
【0035】
また、閉塞栓1は、棒状に形成された本体部3と、本体部3の外径より大きく形成されるとともに、出銑口102の内径より小さい外径に設定された拡径部4とを有する。
出銑口102と本体部3との間を炉内側D1に流れるマッド材2は、本体部3の外径より大きく形成された拡径部4に衝突しやすくなる。これによりマッド材2が流れる力を拡径部4でより確実に受け、閉塞栓1をより容易に炉内側D1に押し出すことができる。
【0036】
なお、本実施形態では、閉塞栓1をマッドガン50の閉塞栓充填管52に取付けた状態で出銑口102にマッド材2を供給した。しかし、
図7に示すように、配置工程において閉塞栓1を出銑口102内に配置した状態で、充填工程でマッド材2を出銑口102に充填してもよい。
この変形例においても、配置工程において、延在方向Eの出銑口102の長さM1に対して、閉塞栓1の長さM2と、閉塞栓1の先端から出銑口102の炉外側D2の端部までの距離M3を適切に設定することにより、
図1に示すように、マッド材2よりも閉塞栓1の先端が出銑口102の炉内側D1に位置するように調節することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、拡径部4は、本体部3の一方の端部に設けられていたが、拡径部4は本体部3の中央部に設けられていてもよいし、本体部3の長さ方向に複数設けられていてもよい。
また、
図8に示す閉塞栓7のように、拡径部4に一方の端部から他方の端部に向かうにしたがって縮径する傾斜面4cを設けてもよいし、拡径部4に本体部3の長さ方向に直交する直交面4dを設けてもよい。傾斜面4c、直交面4dにより、マッド材2が流れる力をより確実に受けて閉塞栓7をより容易に押し出すことができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図9から
図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9に示すように、本実施形態の閉塞栓11は拡径部のない棒状に形成され、閉塞栓11の長さは、延在方向Eにおける出銑口102の長さM1(
図4参照)以上に設定されている。閉塞栓11は、閉塞栓1と同一の材料で形成されている。
【0039】
このように構成された閉塞栓11を用いた本実施形態の出銑口の閉塞方法について説明する。
まず、作業者は、配置工程S1において、
図10に示すように、閉塞栓11をマッドガン50の閉塞栓充填管52内に挿入する。そして、出銑口102にケーシング51の開口51bを連通させる。
【0040】
続いて、充填工程S2において、
図11に示すように、シリンダ53を前進させることで、供給するマッド材2の供給量を調節してマッド材2を充填する。
このとき、マッド材2が、出銑口102と閉塞栓11との間を炉内側D1に流れ、閉塞栓11の外周面に及ぼす摩擦などにより閉塞栓11を炉内側D1に押し出すとともに、閉塞栓11の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材2が充填される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の閉塞栓11および出銑口の閉塞方法によれば、出銑口102の破損を防止しつつ、後で出銑口102を容易に開孔することができる。
さらに、閉塞栓11を出銑口102内に配置したときに、閉塞栓11の先端の位置を容易に検知することができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図12から
図16、
図23および24を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12に示すように、本実施形態の閉塞栓15は、外径が出銑口102の内径より小さく設定されたパイプ(管状部材)16と、パイプ16の内腔に配置された充填部材17とを有している。
パイプ16の長さは、出銑口102の長さM1(
図1参照)以上に設定されている。パイプ16を形成する材料としては、たとえば、鉄鋼などの金属を用いることができる。
充填部材17は、マッド材2の焼成物よりも柔らかい、焼成した耐火物により形成されている。充填部材17としては、たとえば、アルミナ、ろう石、炭化珪素、耐火粘土などからなるマッド材を焼成した耐火物を用いることができるが、この耐火物は、前述のマッド材2の焼成物よりも柔らかくなるように調節されている。
【0043】
本実施形態の閉塞栓15が取り付けられる本実施形態のマッドガン60は、
図13に示すように、ケーシング61と、ケーシング61の内腔51aに配置された前述の閉塞栓充填管52と、棒状に形成され先端が内腔51aに配置された押し込みロッド(押し出し部材)63と、前述のシリンダ53とを備えている。
閉塞栓充填管52の内径は、閉塞栓15の外径および押し込みロッド63の外径よりわずかに大きく設定されている。閉塞栓充填管52の基端側は、ケーシング61の後端に貫通して開口している。
閉塞栓充填管52は、軸線がケーシング61の開口51bを通るように配置されている。
押し込みロッド63の先端は、ネジ嵌合や、溝などの凹凸形状による嵌合などにより、閉塞栓15の一端に着脱可能となっている。押し込みロッド63は、ケーシング61の後端の開口から閉塞栓充填管52に挿入された状態で、ケーシング61の開口51bに対して進退可能となっている。
なお、ケーシング61は、先端側に配置され開口51bが形成されたノズル64と、基端側に配置されノズル64に接続されたバレル65とを有している。
【0044】
次に、本実施形態の出銑口の閉塞方法を、本発明の閉塞栓15およびマッドガン60を用いる場合で説明する。
まず、作業者は、配置工程S1において、
図13に示すように、押し込みロッド63の先端に閉塞栓15の一端を接続した状態で、閉塞栓15を閉塞栓充填管52内に配置する。このとき、閉塞栓15の先端側が、閉塞栓充填管52から突出するように設定する。
そして、出銑口102にケーシング61の開口51bを連通させる。
【0045】
続いて、充填工程S2において、
図14に示すように、シリンダ53を前進させることで、マッド材2の供給量を調節してケーシング61内に供給することで、閉塞栓15はマッド材2との摩擦により押し込みロッド63とともに炉内側D1に押し出される。このとき、押し込みロッド63の炉内側D1への移動量を調節し、たとえば、押し込みロッド63の先端がケーシング61の開口51bまで移動するように調節する。
マッド材2は、出銑口102と閉塞栓15との間を炉内側D1に流れ、閉塞栓15の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材2が充填されるとともに、炉壁101の炉内側D1の面にも配置される。
一定時間経過して、マッド材2が高炉100および溶銑Lの熱により焼成されたら、押し込みロッド63を閉塞栓15から取り外す。
【0046】
このように閉塞された出銑口102の開孔は、以下のように行われる。
まず、
図15に示すように、開孔機110の錐ロッド111などにより、閉塞栓15の充填部材17を掘削する。
錐ロッド111を引き抜くと、
図16に示すように、パイプ16および焼成されたマッド材2内に出銑口106が形成されていて、出銑口106内に溶銑Lが流れ込む。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の閉塞栓15および出銑口の閉塞方法によれば、開孔機110などにより、マッド材2の焼成物よりも柔らかい充填部材17を掘削することで、炉壁101に出銑口106をさらに容易に形成することができる。また、マッド材2の焼成物は充填部材17より硬く侵食されにくいので、出銑口106が溶銑Lにより侵食されて大きくなるのを抑えることができる。
閉塞栓15はパイプ16を備えるので、充填部材17をマッド材2から確実に分離し、出銑口102を閉塞した部分における、比較的柔らかい部分である充填部材17と比較的硬い部分である焼成されたマッド材2とを明確に分けることができる。さらに、開孔機110などにより開孔するときにパイプ16が開孔する向きのガイドとなるので、新たに形成する出銑口106の内面に亀裂などが生じるのを防止することができる。
【0048】
また、本実施形態のマッドガン60は押し込みロッド63を備えるため、ケーシング61の開口51bを出銑口102に連通させた状態で押し込みロッド63を進退させることで、出銑口102に対して閉塞栓15を、出銑口102が延びる延在方向Eに容易に位置決めすることができる。
パイプ16の長さは、出銑口102の長さM1以上に設定されているため、閉塞栓15を出銑口102内に配置したときに、閉塞栓15の先端の位置を容易に検知することができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、閉塞栓15の充填部材17は、マッド材2の焼成物よりも柔らかい、焼成した耐火物により形成されているとした。しかし、充填部材17に代えて、焼成されることでマッド材2の焼成物よりも柔らかい耐火物となる材料により形成されている充填部材を備えてもよい。
この材料が、たとえばマッド材である場合には、マッド材を構成するタールや樹脂などの配合を調整することで、パイプ16内にこの充填部材を好適に配置することができる。
充填部材をこのように構成しても、出銑口102内に配置された閉塞栓が高炉100の熱により焼成されることで、本実施形態の閉塞栓15と同様の効果を奏することができる。
【0050】
また、前記実施形態では、閉塞栓15に代えて、
図23に示す閉塞栓18を用いてもよい。この閉塞栓18は、前述の閉塞栓15において、充填部材17が、パイプ16の一端16aから一定距離離間した位置Pよりパイプ16の他端16b側のみに配置されている。この一定距離は、開孔機110における錐ロッド111の先端の大きさなどに応じて設定される。
パイプ16の一端16a側の内周面に雌ネジ部を形成するとともに、前述の押し込みロッド63の先端の外周面に雄ネジ部を形成することで、押し込みロッド63の先端に閉塞栓18を着脱可能としてもよい。
このように構成された閉塞栓18を用いた出銑口の閉塞方法は、前述の第3実施形態における方法と同じ手順になるため、説明を省略する。ただし、
図24に示すように、パイプ16の一端16aが炉外側D2となるように、出銑口102内に閉塞栓18を配置する。
一方で、閉塞栓18を用いて閉塞された部分に出銑口102を開孔するときには、開孔機110の錐ロッド111の先端をパイプ16の一端16a内に挿入し、錐ロッド111を自身の軸線回りに回転させることで、閉塞栓18を掘削し出銑口102を形成する。
【0051】
本実施形態のように閉塞栓15を用いて閉塞された部分に出銑口102を開孔するときには、炉外側D2の充填部材17に凹みが形成されるまでの間、錐ロッド111の先端が回転ブレを起こすため、金棒などを使用して、作業者が錐ロッド111の先端の位置を拘束している。
これに対して、本変形例の閉塞栓18を用いることで、閉塞栓18に対して錐ロッド111を容易に位置決めし、錐ロッド111の回転ブレを抑えることができる。これにより、出銑口102を短時間で形成することができる。
【0052】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図17および
図18を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図17に示すように、本実施形態の閉塞栓20は、前記第3実施形態の閉塞栓15におけるパイプ16に代えてパイプ21を有している。
パイプ21は、管状に形成された管状部本体22と、管状部本体22の外径より大きく形成された大径部23とを有している。大径部23は、管状部本体22の一端22aに配置され、この一端22aから離間するほど拡径するように形成されている。
【0053】
前記閉塞栓20を用いた出銑口の閉塞方法では、充填工程S2において
図18に示すように、出銑口102から炉内側D1に閉塞栓20を大径部23の長さ程度突出させた状態で、マッド材2を出銑口102と閉塞栓20との間を炉内側D1に流す。これにより、閉塞栓20の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材2が充填されるとともに、大径部23に沿って流れたマッド材2が炉壁101側に流れの向きを変えられることで、前記閉塞栓15を用いた場合に比べて、マッド材2が炉壁101近傍に配置される。
【0054】
このように構成された本実施形態の閉塞栓20によれば、出銑口102の破損を防止しつつ、後で出銑口を容易に開孔することができる。
また、大径部23により、管状部本体22と出銑口102の隙間を保ち、閉塞栓20が傾いて、出銑口102の内壁に当たることをふせぐことができる。閉塞栓20が傾いて出銑口102の内壁に当たると、その部分にマッドが十分に充填されないために、閉塞状態を保てず、その部分を起点として開孔してしまう恐れがあり、大径部23にはこれを防ぐ機能がある。この機能は、第1実施形態の閉塞栓1の拡径部4についても同様である。
さらに、パイプ21は、管状部本体22と、管状部本体22の外径より大きく形成された大径部23とを有するため、マッド材2が流れる力を大径部23でより確実に受け、閉塞栓20をより容易に炉内側D1に押し出すことができる。また、マッド材2が大径部23に沿って流れることでマッド材2が炉壁101の炉内側D1の壁面に沿って流れやすくなり、このマッド材2により出銑口102の炉内側D1を溶銑Lから効果的に保護することができる。
大径部23は、管状部本体22の一端22aに配置され、この一端22aから離間するほど拡径するように形成されている。これにより、出銑口102内で大径部23を炉内側D1に配置することで、パイプ21のうち炉内側D1に突出する部分の長さを短く抑えることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、パイプ21において、大径部23は管状部本体22の一端22aに配置されているとしたが、大径部23は管状部本体22の中央部に形成されていてもよいし、大径部23は管状部本体22に複数形成されていてもよい。
【0056】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図19および
図20を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図19に示すように、本実施形態では、前記閉塞栓15、および閉塞栓15が装着されるマッドガン70が用いられる。マッドガン70は、マッドガン60の押し込みロッド63に代えて、筒状に形成された押し込みロッド71と、押し込みロッド71の内腔71aにマッド材(補助充填部材)72を充填する充填部73とを備えている。
押し込みロッド71の先端は、閉塞栓15の一端に着脱可能となっている。
マッド材72としては、たとえば、充填部材17が焼成される前のマッド材と同じ成分のものを用いることもできるし、このマッド材と異なる成分のものを用いることもでき、特に限定されない。
【0057】
このように構成された閉塞栓15およびマッドガン70を用いる出銑口の閉塞方法では、たとえば、
図20に示すように、一度閉塞栓15およびマッド材2により閉塞された出銑口102において、溶銑Lの圧力を受けて充填部材17が炉外側D2に押し出されたり、パイプ16から充填部材17が炉外側D2に抜け落ちてパイプ16が貫通したりする場合であっても、
図19に示すように、閉塞栓15の一端に押し込みロッド71の先端を取り付け、充填部73によりパイプ16の内腔にマッド材72を充填することで、閉塞栓15を補修することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、マッドガン70において、押し込みロッド71に代えて、中実の棒状に形成されるとともに、閉塞栓15の一端に着脱可能とされた押し込みロッドを備え、充填部73を備えないように構成してもよい。
マッドガンをこのように構成しても、充填部材17が炉外側D2に押し出された場合に、閉塞栓15の一端にこの押し込みロッドを取り付け、押し出される充填部材17や溶銑Lが焼成されたり冷えて固まるのを待つことにより、押し出される充填部材17を止めることができるからである。
【0059】
以上、本発明の第1実施形態から第5実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、
図21に示すように、閉塞栓1を出銑口102内に配置して、閉塞栓1の基端部とマッドガン50のケーシング51とを、閉塞栓1を細径にしたような固定部材30で接続してから出銑口102内にマッド材2を充填してもよい。閉塞栓1の延在方向Eの位置が固定されて閉塞栓1が出銑口102から脱落するのが防止されるので、出銑口102をより確実に閉塞させることができる。
【0060】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、閉塞栓の先端が出銑口102の炉内側D1の端部に位置した状態で出銑口102を閉塞栓で閉塞した。しかし、
図22に示すように、閉塞栓1が、自身の基端側の部分のみが出銑口102内に配置され、先端側が出銑口102から炉内側D1に突出した位置に配置された状態で出銑口102を閉塞するようにしてもよい。この場合においても、出銑口102の断面における一部を閉塞栓1で塞ぐことができるからである。
そして、マッド材2が出銑口102の炉内側D1から流れ出て高炉100内に溜まり、溜まったマッド材2が出銑口102の炉内側D1の開口に達しない限り、出銑口102の炉内側D1に形成されるマッド材2の付着物2aの延在方向Eの厚さM4は、マッド材2の粘性により一定の値以下になる。このため、出銑口102の炉内側D1の開口にマッド材2の付着物2aが形成されていても、開孔に要する削孔深さは、付着物2aの厚さM4と出銑口102の長さM1との和となり、出銑口102を容易に開孔することができる。したがって、充填工程では、マッド材2が出銑口102の炉内側D1から流れ出て高炉100内に溜まり出銑口102の炉内側D1の開口に達しない限り、マッド材2が出銑口102の炉内側D1から流れ出してもよい。
【0061】
また、上記第1実施形態から第5実施形態では、出銑口内にマッド材2を供給するのにマッドガンを用いたが、マッドガンに代えて、たとえば、歯車のかみ合わせやダイヤフラムなどを利用した容積ポンプを用いてもよい。
そして、上記第1実施形態から第5実施形態では、配置工程の前に、高炉100の炉壁101を保護するなどの目的のため、高炉100内に一定量のマッド材を供給する工程を備えてもよい。