【実施例】
【0030】
本発明の実施例に係る集電体用アルミニウム箔について、以下に説明する。
(実施例
2、3、5、6
、参考例1、4)
実施例
2、3、5、6に係る集電体用アルミニウム箔は、両箔表面ともに、箔表面とN−メチルピロリドンとの接触角が
47°超60°以下の範囲内にある。実施例
2、3、5、6
、参考例1、4に係る集電体用アルミニウム箔は、以下の手順で作製した。
【0031】
<箔圧延>
JIS 1085の組成を有するアルミニウム合金を半連続鋳造により造塊し、得られた鋳塊を面削して表面の不均一層を除去した。次いで、この鋳塊を35℃/hrの昇温速度で450℃の温度に加熱し、3時間保持する均質化処理を行った。次いで、この鋳塊を、開始温度440℃、終了温度225℃にて熱間圧延し、板厚3mmのアルミニウム板とした。次いで、このアルミニウム板を厚み600μmまで冷間圧延し、その後、連続焼鈍炉を用いて、昇温速度100℃/秒、保持温度400℃、保持時間0秒、冷却速度150℃/秒の条件で中間焼鈍を行った。次いで、この中間焼鈍後のアルミニウム板に対して冷間圧延を繰り返し行い、厚み15μmの各アルミニウム箔を作製した。
【0032】
なお、上記アルミニウム箔の作製では、最終箔圧延の際に、通常粗度の圧延ロールを用いることにより、アルミニウム箔(1)を作製するとともに、ショットブラストにより表面を粗した圧延ロールを用いることにより、アルミニウム箔(2)を作製した。アルミニウム箔(1)の箔表面のRa値は0.22μm、Rz値は1.60μmであった。一方、アルミニウム箔(2)の箔表面のRa値は0.47μm、Rz値は3.92μmであった。
【0033】
また、上記箔圧延時には、圧延油として、基油に鉱油を用い、油性剤として多価高級アルコールおよび脂肪酸を合計1質量%含有したもの(但し、圧延油全体を100質量%とする。)を用いた。
【0034】
次いで、上記箔圧延後の各アルミニウム箔について、洗浄強弱の異なるアルカリ洗浄を行い、箔表面に着いている残留圧延油の量を種々調整した。つまり、本実施例では、箔圧延後の箔表面に着いている残留圧延油の量を種々調整することにより、箔表面とNMPとの接触角を調整した。
【0035】
<接触角の測定>
上記各アルミニウム箔について、接触角の測定を行った。具体的には、測定温度25℃において、各アルミニウム箔表面に2μlのNMPを滴下して、各アルミニウム箔とNMPとの接触状態を測定し、接触角を算出した。なお、上記測定には、(株)エルマ製ゴニオメータ式接触角測定器G−1型を用いた。
【0036】
<箔表面に着いている残留圧延油の量の測定>
上記箔表面に着いている残留圧延油の量を調整した各アルミニウム箔から試験片(表裏面の総表面積800cm
2)を採取した。採取した試験片を短冊状に切断し、得られた短冊状サンプルの全てを250mlのメスフラスコに入れた。上記メスフラスコにヘキサン70mlを加え、メスフラスコを撹拌し、70℃のホットプレート上で20分間加熱した。その後、このメスフラスコをよく撹拌した。これによる抽出液を抽出液Aという。
【0037】
次いで、ヘキサンにより抽出した後の上記短冊状サンプルの全てに蒸留水90ml、ヘキサン30mlおよび6N塩酸30mlを加え、アルミニウムの分解反応がおさまるまで放置した。その後、さらに6N塩酸10mlを加え、短冊状サンプルの表面が完全に分解するまで放置し、メスフラスコを撹拌することで、ヘキサン中に残留油を抽出した。その後、ガラス製のスポイトで表層に分離しているヘキサン抽出液を100mlビーカーに移し入れた。次いで、この抽出液が約20mlになるまで加熱蒸発させ、さらに、室温で約5mlまで蒸発させた。その後、吸引デシケーターで減圧濃縮し、ヘキサンを完全に蒸発させた。これによる抽出液を抽出液Bという。
【0038】
次いで、上記抽出液Aおよび抽出液Bをヘキサン100μlで溶解し、そのうちの4μlをガスクロマトグラフに注入して分析し、ヘキサン100μlに換算して、かつ総表面積で割ることにより、単位面積当たりの残留圧延油の量(μg/m
2)を測定した。
なお、上記ガスクロマトグラフ分析は、以下の通りとした。
・分析装備:(株)島津製作所製、GC−14B
・カラム:Gカラム G−205 40m
・検出器:FID
・検出器温度:320℃
・キャリヤガス:窒素ガス30ml/min
【0039】
以上により、後述する表1に示すように、両箔表面ともに、箔表面とN−メチルピロリドンとの接触角が
47°超60°以下の範囲内にある、実施例
2、3、5、6に係る集電体用アルミニウム箔を得た。
また、併せて、参考例1、4に係る集電体用アルミニウム箔を得た。
【0040】
(比較例)
上記実施例
2、3、5、6に係る集電体用アルミニウム箔の作製において、アルカリ洗浄の強弱を各実施例と異ならしめることにより、箔表面に着いている残留圧延油の量を各実施例と異ならしめた以外は同様にして、比較例1、2に係る集電体用アルミニウム箔を得た。比較例1に係る集電体用アルミニウム箔は、後述の表1に示すように、両箔表面ともに、箔表面とNMPとの接触角が45°以下の範囲内にある。一方、比較例2に係る集電体用アルミニウム箔は、後述の表1に示すように、両箔表面ともに、箔表面とNMPとの接触角が60°超の範囲内にある。
【0041】
<集電体用アルミニウム箔の密着性評価>
作製した各集電体用アルミニウム箔の密着性評価は、集電体用アルミニウム箔と電極活物質含有層との剥離強度を測定することにより行った。なお、ここでは、作製した集電体用アルミニウム箔をリチウムイオン電池の集電体に適用することを想定した。
【0042】
具体的には、正極活物質として汎用のLiCoO
2粉末:60質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック:5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン:5質量部と、有機溶媒としてのN−メチルピロリドン:30質量部とを混合し、ペーストを調製した。ロールコータを用いて、各試験片の片面(粗面化された面)に厚さ20μmで上記調製したペーストを塗布し、90℃×5分の条件で乾燥させた。これにより、各アルミニウム箔における一方の箔表面(上述したJIS B 0601:2001に準拠して測定した算術平均高さRa、最大高さRz、油分の量に調整されている)に正極活物質含有層を形成した各試料を作製した。
【0043】
次いで、得られた各試料を用いてJIS K 6854−2:1999 「第2部:180度はく離」に準拠して180度剥離強度を測定した。この際、上記規格中の剛性被着材には厚み3mmの硬質塩化ビニル板を用いた。また、上記アルミニウム板材の表面に各試料の正極活物質含有層の表面を接着するための接着剤として両面テープ(ニチバン社製、「NW−25」)を用いた。また、上記規格中のつかみによる試料の引張速度は100mm/分とした。なお、各試料の剥離強度(N/25mm)は、各試料につき5回測定を行い、得られた5回の測定値の平均値とした。剥離強度は、1.3N/25mm以上を合格とした。
【0044】
表1に、作製した各集電体用アルミニウム箔の構成と評価結果を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1を相対比較すると以下のことが分かる。すなわち、比較例1に係る集電体用アルミニウム箔は、箔表面とNMPとの接触角が45°以下である。そのため、集電体と正極活物質含有層との間の密着性が不十分となり、正極活物質含有層の剥離が生じやすい。
【0047】
また、比較例2に係る集電体用アルミニウム箔は、箔表面とNMPとの接触角が60°超である。そのため、集電体と正極活物質含有層との間の密着性が不十分となり、正極活物質含有層の剥離が生じやすい。
【0048】
これらに対し、実施例
2、3、5、6に係る集電体用アルミニウム箔は、いずれも、箔表面とNMPとの接触角が
47°超60°以下の範囲内にある。そのため、集電体と正極活物質含有層との間の密着性が向上し、剥離強度に優れることがわかる。したがって、本実施例によれば、正極活物質含有層の剥離が生じ難い集電体用アルミニウム箔が得られることが確認できた。
【0049】
また、実施例どうしを比較した場合、表面を粗した圧延ロールを用い、箔表面の粗度を大きくしたアルミニウム箔(2)を用いた実施例
5、6は、通常粗度の圧延ロールを用い、箔表面の粗度が小さいアルミニウム箔(1)を用いた実施例
2、3に比較して、剥離強度に優れることがわかる。これは、表面凹凸によるアンカー効果により、電極活物質含有層の密着性が向上したためである。
【0050】
また、箔表面に油分が着いている場合、油分の量、具体的には、残留圧延油の量が、
100〜1000μg/m
2の範囲内にある場合には、NMPと箔表面との接触角が
47°超60°以下の範囲になりやすいことがわかる。
【0051】
したがって、上記実施例
2、3、5、6に係る集電体用アルミニウム箔を、例えばリチウムイオン電池の集電体として用いた場合には、電池の充放電サイクルにおけるリチウムのドープ、脱ドープによって生じる正極活物質の体積変化に起因する正極活物質含有層の剥離や、電極製造工程での剥離を抑制しやすくなり、電池のサイクル特性の向上に寄与することが可能になるといえる。
【0052】
以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変形を行うことができる。
【0053】
例えば、上記実施例においては、作製した集電体用アルミニウム箔にリチウムイオン電池の正極に適した材料による正極活物質含有層を形成したが、他にも、作製した集電体用アルミニウム箔に電気二重層コンデンサの電極に適した材料による電極活物質含有層を形成することが可能なものであり、この場合にも、上記と同様に剥離強度の向上効果を得ることができる。