(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トンネル等のコンクリート構造物は、表層部が劣化した場合に、当該表層部のコンクリートが脱落したり、鉄筋(コンクリート構造物の内部の鉄筋)の腐食によりかぶり部分から爆裂するという課題を有している。また、コンクリート構造物にトンネル内装パネルが固定されている場合、そのトンネル内装パネルは、前記表層部が劣化したり、前記かぶり部分から爆裂したりすると、それに伴い脱落するため、その補修に多大な費用と手間がかかっていた。
【0007】
また、
図12に示すように、トンネル内部に設けられている、手すり用の支柱(鋼管)3aが埋設されたトンネル監視員通路(監視員通路)1は、上記課題に加え、支柱3aの腐食により、クラック(コンクリートクラック)2が発生しやすいという課題を有している(
図12(b)参照)。尚、支柱3aは、コンクリートで形成された監視員通路1に設けた穴部に、その下端側が挿入され、前記穴部にモルタル5が充填されることにより、監視員通路1の側壁部1aに立設している。
【0008】
そして、
図12(b)、(c)に示すように、支柱3aの外面部近傍で発生するクラック2が進行することにより、支柱3aが埋設された部分(支柱3aの外面部)からコンクリートが剥がれ落ちることがある。そのため、支柱3aが埋設された監視員通路1は、トンネルの他の部分(例えば、トンネル覆工)と比べて、コンクリートが剥がれ落ちる虞が大きなものになっている。特に、寒冷地では、道路や監視員通路1に、凍結防止材(塩)をまくため、支柱3aの周辺部から凍結防止材(塩)が侵入し、それにより支柱3aが腐食しやすく(すなわち、クラック2が発生しやすく)なっていた。
尚、側壁部1aに内装パネル20が取付けられている場合には、上記クラック2が発生すると、そのクラック2に追従できない内装パネル20のタイルが剥離して脱落し、その後、クラック2が進行すると、内装パネル20と共にコンクリートも剥がれ落ちる現象が起こっている(
図13(a)〜(d)参照)。
【0009】
尚、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、いずれも、トンネルの内面が劣化した場合に、トンネルの内面を修復する技術であり、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を予防するものではない。また、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、トンネルの内周面全体にパネルを設置する方法を採用しているため、その費用及び手間が多大なものになるという課題を有している。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、多大な費用と手間をかけることなく、トンネルを構成するコンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止するトンネル内装パネルの取付け構造及び取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
コンクリートで形成されたトンネル監視員通路の側壁部に対するトンネル内装パネルの取付け構造であって、
前記トンネル監視員通路は、トンネル内の車道の一端側において該トンネルの軸方向に沿って立設された側壁部と、前記側壁部の上端から前記トンネルの一端側のトンネル覆工まで延設された通路部と、前記側壁部の上端に埋設された鋼製の支柱とを備えており、前記側壁部に定着されたコンクリートアンカーと、前記コンクリートアンカーの一端に接続された棒状の連結金具とを有し、前記トンネル内装パネルは、前記連結金具に固定されることにより、前記側壁部の一方面に取付けられており、前記コンクリートアンカーは、前記側壁部の一方面の表層部を基準にして、前記埋設された支柱の外面部よりも深い位置に定着されていることを特徴とする。
【0012】
このように、本発明では、コンクリート構造物のクラック発生原因となる(クラック発生ラインとなる)、コンクリート構造物の内部に設置された金属製構造物(例えば、鋼製の支柱や鉄筋等)の外面部よりも深い位置に、コンクリートアンカーを定着させ、そのコンクリートアンカーを利用してトンネル内装パネルを取付けるように構成されている。
そのため、本発明によれば、コンクリート構造物の内部に設置された金属製構造物の外面部近傍でクラックが発生し(
図11、
図12参照)、それにより、コンクリート構造物の表層部が劣化した場合であっても、コンクリート構造物の深部に定着されたコンクリートアンカーの引抜抵抗力により、トンネル内装パネルを保持することができる。
また、上記構成により、上述した図12に示すような支柱が埋設された監視員通路(クラックが発生しコンクリート片が剥落しやすい監視員通路)において、コンクリート片の剥落を効果的に防止することができる。
【0013】
また、本発明によれば、上記のように、コンクリート構造物の表層部が劣化しても、トンネル内装パネルが保持されるため、前記劣化の進行によりコンクリートに割れやクラックが発生しても、コンクリートアンカーの引抜抵抗力及びトンネル内装パネルにより、コンクリートの剥落が防止される。
また、本発明は、コンクリート構造物の深部に、コンクリートアンカーを定着させるという比較的簡単な作業により、トンネル内装パネルを取付けるように構成されているため、上述した特許文献1、2の技術のように、多大な費用及び手間がかかることがない。
【0014】
また、前記トンネル監視員通路の側壁部の表層部には、既設のトンネル内装板が取付けられており、前記トンネル内装パネルは、前記既設のトンネル内装板の前面に重ねられて前記側壁部に取付けられていることが望ましい。
【0015】
上記構成により、コンクリート構造物に取付けられた内装パネルにより、既設のトンネル内装板の脱落を防止することができる。すなわち、本発明は、既に、トンネル内装板が取付けられたトンネルにも適用することができ、トンネルのコンクリートの剥落防止に加えて、さらに、既設のトンネル内装板の脱落を効果的に防止できる。
【0016】
また、
前記連結金具は、前記コンクリート構造物に穿設された削孔に前記コンクリートアンカーと共に挿入されており、前記連結金具の外径が、前記削孔の径に比べて小さい大きさ寸法になっているとが望ましい。
上記の構成により、コンクリートアンカーに対して、コンクリート構造物で発生するクラックや割れによる荷重がコンクリートアンカーに伝達されることがない(コンクリートアンカーに摩擦力が伝達されない)。これにより、コンクリートアンカーに対する引抜力を軽減することができる。
【0017】
また、本発明は、コンクリートで形成されたトンネル監視員通路の側壁部に対するトンネル内装パネルの取付け構造であって、前記トンネル監視員通路は、トンネル内の車道の一端側において該トンネルの軸方向に沿って立設された側壁部と、前記側壁部の上端から前記トンネルの一端側のトンネル覆工まで延設された通路部と、前記側壁部の上端に埋設された鋼製の支柱とを備えており、前記側壁部に定着されたコンクリートアンカーを有し、前記コンクリートアンカーは、一方側にねじ部が形成され且つ他方側にテーパ部が形成されたテーパボルトと、該テーパボルトに巻き付けられた拡開片で構成されるウエッジとを有するウエッジ式アンカーボルトであって、前記ねじ部に螺合するナットが締め付けられることにより、前記ウエッジが開いて前
記側壁部に定着されており、前記トンネル内装パネルは、前記定着されているコンクリートアンカーの前記ねじ部に螺合するナットにより、該コンクリートアンカーに固定され、
前記コンクリートアンカーは、前記側壁部の一方面の表層部を基準にして、前記埋設された支柱の外面部よりも深い位置に定着されていることを特徴とする。
【0018】
また、前記トンネル内装パネルと、前記コンクリート構造物の表層部との間に、弾性材が配置されていることが望ましい。
上記構成により、コンクリート構造物の内部にクラックが発生した場合でも局所的な押出しを弾性材で吸収して、深部に定着されたコンクリートアンカーの引抜力を軽減させることができる。
【0019】
また、前記トンネル内装パネルは、前記コンクリート構造物との対向面に、クロスが貼り付けられていることが望ましい。
上記の構成により、トンネル内装パネルのじん性を高めることができ、その結果、トンネル内装パネルの耐剥落性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明は、
コンクリートで形成されたトンネル監視員通路の側壁部に対するトンネル内装パネルの取付け方法であって、
前記トンネル監視員通路は、トンネル内の車道の一端側において該トンネルの軸方向に沿って立設された側壁部と、前記側壁部の上端から前記トンネルの一端側のトンネル覆工まで延設された通路部と、前記側壁部の上端に埋設された鋼製の支柱とを備えており、コンクリートアンカーの後端部に連結金具を接続して、前記側壁部の深部に前記コンクリートアンカーを定着させる工程と、
前記側壁部の深部に定着されたコンクリートアンカーに接続された前記連結金具に前記トンネル内装パネルを固定することにより、前記側壁部の一方面に前記トンネル内装パネルを取付ける工程とを有し、
前記側壁部の深部とは、前記側壁部の一方面の表層部を基準にして、前記埋設された支柱の外面部よりも深い位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多大な費用と手間をかけることなく、トンネルを構成するコンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止するトンネル内装パネルの取付け構造及び取付方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。尚、本実施形態では、上述した
図12及び
図13において示したものと同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
【0026】
先ず、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造について、
図1〜
図6に基づいて説明する。尚、
図1は、本実施形態の設置対象となるトンネルの一例を示した模式図である。また、
図2は、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造を説明するための模式図である。また、
図3は、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造の主要部の断面図である。また、
図4は、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造を構成するトンネル内装パネル及び取付金具を正面からみた模式図である。また、
図5は、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造を構成する取付金具の模式図である。
図6は、本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造の断面図であり、コンクリートクラックが発生した状態におけるトンネル内装パネルの取付け構造を示している。
【0027】
本実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造は、トンネルWに設けられたトンネル監視員通路(監視員通路)1の側壁部1aの深部にコンクリートアンカー34を定着させ、そのコンクリートアンカー34を利用して、当該側壁部1aに取付けられた既設のトンネル内装パネル(以下、単に「内装パネル」という)20の前面にトンネル内装パネル(以下、単に「内装パネル」という)10を重ねて取付けることにより、側壁部1aのコンクリート(及び既設の内装パネル20)が剥落することを防止するものである。尚、側壁部1aの深部については後述する。
【0028】
また、本実施形態の設置対象となる監視員通路(コンクリート構造物)1は、例えば、
図1に示すように、トンネルW内の車道9の一端側においてトンネルWの軸方向に沿って立設された断面視矩形状の側壁部1aと、側壁部1aの上端からトンネルWの一端側のトンネル覆工8まで延設された通路部1b(車道9と略平行な通路部1b)とを備えている。また、側壁部1aの上端には、所定間隔で複数の支柱(鋼管)3aが埋設されている(
図2(b)参照)。なお、支柱3aは、コンクリートで形成された監視員通路1の側壁部1aの上端に設けた穴部に、その下端側が挿入され、前記穴部にモルタル等が充填されることにより、監視員通路1の側壁部1aの上端から立設している。また、隣接する支柱3aの上端同士には、手すり棒(鋼管)3bが架設され、これにより、手すり3が構成されている。
【0029】
また、本実施形態では、監視員通路1の側壁部1aの一方面(車道9側の壁面)に、内装パネル20が取付けられている場合について説明するが、あくまでも、これは一例に過ぎない。本発明は、内装パネル20が取付けられていない監視員通路1にも適用されるものである。尚、内装パネル20の構成は、特に限定されるものではないが、以下ではモルタルや接着剤等の接着層21を介して側壁部1a上に、陶磁器製等のタイル22を縦横に並べて直接貼着してなるものが用いられるものとする(
図2(a)参照)。
【0030】
そして、本実施形態では、
図2に示すように、内装パネル20が取付けられている側壁部1aの一方面(車道側の壁面)に、取付金具30を用いて、トンネル内装パネル10が取付けられている。これにより、既設の内装パネル20の一方面(タイル22が取付けられている面)が、内装パネル10に覆われる。
【0031】
ここで、内装パネル10には、所定の縦横寸法に形成された可撓性の平板状の基板11の片面上に、陶磁器製等のタイル12を縦横に複数個ずつ並べて固定してなる工場成型品が用いられる。
具体的には、
図2(b)及び
図4に示すように、内装パネル10の一方面(タイル12が取付けられている面)には、側壁部1aに取付けるための取付部として、基板露出部11a(
図4参照)が設けられている。すなわち、各タイルパネル12の上下辺部を除く複数箇所に、縦横それぞれに2枚ずつ隣接して並ぶ4枚のタイル12の隣接しあう各々のコーナー部に切欠部(面取り部)を設けることにより、基板露出部11aが形成されている。尚、
図4の例では、隣接する4つの正方形状のタイル12のコーナー部を、それぞれ対角線方向と平行な方向に斜めに切除してタイル12に切欠部を形成し、前記の隣接する4つのタイル12の隣接しあうコーナー部に各タイルの切欠部を配置することにより、略菱形の基板露出部11aが形成されている。また、基板露出部11aは、内装パネル10の複数箇所に設けられており(その数は適宜である)、複数箇所の基板露出部11aに、取付金具30が設置されるようになされている。
【0032】
また、
図3及び
図5(a)に示すように、取付金具30は、コンクリートアンカー34と、コンクリートアンカー34の後端部に接続される棒状のスペーサボルト(連結金具)33と、スペーサボルト33の一端部の内周部に螺合する六角ボルト31及び座金32とを備えている。尚、スペーサボルト33は、その先端部が、コンクリートアンカー34の後端部に形成されたボルト孔に、挿入され螺合するようになっている。また、六角ボルト31は、そのネジ部が、スペーサボルト33の後端部に形成されたボルト孔に、挿入され螺合するようになっている。尚、コンクリートアンカー34には、例えば、「M8×35」タイプのものを用いることができ、スペーサボルト33には、「φ11×110L(M8ねじ切り)」タイプのものを用いることができる。また、六角ボルト31には、例えば、「M8×40」タイプのものを用いることができる。
【0033】
また、本実施形態では、取付金具30のような一体型のものではなく、
図5(b)に示す取付金具30′のような組立て型のものを用いることもできる。
この取付金具30′は、コンクリートアンカー34と、コンクリートアンカー34の後端部に接続される棒状の全ネジボルト36(連結金具)と、全ネジボルト36に接続される長ナット35(連結金具)と、長ナット35の一端部の内周部に螺合する六角ボルト31及び座金32とにより構成されている。尚、全ネジボルト36は、例えば、「M8×35」タイプのものを用いることができ、長ナット35は、例えば、「φ11×110L(M8ねじ切り)」タイプのものを用いることができる。
【0034】
続いて、本実施形態の構成を詳細に説明する。
具体的には、本実施形態の内装パネルの取付け構造は、
図3及び
図4に示すように、「既設の内装パネル20」と「内装パネル10」との間に挟持され、且つ一方面にゴム等の弾性材で形成されたパッキン42が貼り付けられた敷目板41を備えている。
【0035】
上記敷目板41は、内装パネル20に、パッキン42が貼り付けられていない面を当接させた状態で配置されている。また、内装パネル10は、上記のように配置された敷目板41に貼り付けられたパッキン42に対して、その裏面(タイル12が固定されていない面)が押し当てられて配置されている。尚、パッキン42は、例えば、円板状に形成されており、その中心部に貫通孔(取付金具30を挿通させるための貫通孔)が形成されている。
【0036】
また、本実施形態の内装パネル取付構造は、上述したパッキン42が貼り付けられた敷目板41に加え、「内装パネル20、内装パネル10、敷目板41及びパッキン42」を貫通し且つ側壁部1aに形成された削孔13に挿入されたコンクリートアンカー34と、コンクリートアンカー34の一端に接続されたスペーサボルト33と、スペーサボルト33に螺合するボルト31及び座金32とを備えている。
【0037】
また、削孔13に挿入されたコンクリートアンカー34は、側壁部1aの深部に定着している。また、スペーサボルト33は、コンクリートアンカー34と同様、「内装パネル20、内装パネル10、敷目板41及びパッキン42」を貫通していると共に、側壁部1aに形成された削孔13に挿入されている。また、スペーサボルト33は、その後端部(
図3に示す下端部)が、内装パネル20の一方面の表層面(タイル外面)s3から突出するようになっている。また、スペーサボルト33の外径は、削孔13の径に比べて小さい大きさ寸法に形成されている。例えば、スペーサボルト33の外径が「φ11mm」である場合には、削孔13の径を「φ12.5mm」とする。
【0038】
また、
図3に示すように、コンクリートアンカー34が定着されている側壁部1aの深部とは、少なくとも、側壁部1aの一方面(車道側の壁面)の表層面(コンクリート外面)s2を基準にして、側壁部1aに埋設された支柱3aの外面s1(表層面s3と対向して配置されている外面s1)よりも深い位置をいう。尚、図示する例では、コンクリートアンカー34の後端部(
図3に示す下端部)が、支柱3aの外面s1よりも深い位置に配置された状態になっているが、特にこれに限定されるものではない。コンクリートアンカー34が、図示する例よりも、さらに深い位置に定着されていてもよい。
【0039】
より具体的には、側壁部1aの表層面s2から前記深部までの深さ寸法(長さ寸法)L1は、側壁部1aの表層面s2から支柱3aの外面s1までの深さ寸法L2より大きいものになっている(L1>L2)。尚、前記埋設された支柱3aの外面s1は、例えば、前記埋設された支柱3aの外面のうち、前記表層面s2までの深さ寸法が最短になる外面をいう。
【0040】
そして、上記の構成により、トンネル内装パネル10は、側壁部1aの深部に定着したコンクリートアンカー34に接続されているスペーサボルト33の後端部に挿入して螺合されるボルト31により、前記コンクリートアンカー34に接続されたスペーサボルト33及びボルト31(ボルトのネジ部が挿通された座金32)に挟持・固定され、側壁部1aの一方面に取付けられる。
【0041】
上記の構成を採用したのは、コンクリート構造物のクラック発生原因となる(クラック発生ラインとなる)、コンクリート構造物の内部に配置された金属製構造物(鋼製の支柱3aや鉄筋等)よりも深い位置にコンクリートアンカー34を定着させ、そのコンクリートアンカー34を利用して内装パネル10を取付けることにより、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を効果的に防止できるためである。
【0042】
具体的には、
図6に示すように、側壁部1aに埋設された支柱3aの外面s1近傍でクラック2が発生しても、支柱3aの外面s1よりも深い位置に定着させたコンクリートアンカー34の引抜抵抗力により、内装パネル10が保持される(内装パネル10は、側壁部1aに保持される)。
そのため、側壁部1aのコンクリートにクラック2が進行し、例えば、側壁部1aのコンクリートに割れが発生したり、既設の内装パネル20が破損したりしても、内装パネル10により、コンクリート片(及び既設の内装パネル20)の剥落が防止される。
【0043】
また、本実施形態では、取付金具30により固定されるトンネル内装パネル10と、取付金具30が固定されている側壁部1aの表層面(コンクリート外面)s2との間に、緩衝材(パッキン42が貼り付けられた敷目板41)が設置されている。
そのため、
図6に示すように、クラック2の発生による力を上記パッキン42の吸収機能により吸収させることができ(パッキン42が潰れることで力を吸収する)、それにより、側壁部1aの深部に定着されたコンクリートアンカー34の引抜力を軽減させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、スペーサボルト33の外径が、削孔13の径に比べて小さい寸法に形成されている。これにより、コンクリートアンカー34に対して、側壁部1aで発生するクラック2や割れによる荷重がコンクリートアンカー34に伝達されることがない(コンクリートアンカーに摩擦力が伝達されない)。その結果、コンクリートアンカー34に対する引抜力を軽減することができる。
【0045】
次に、本実施形態のトンネル内装パネルの施工手順について説明する。
【0046】
先ず、打込み棒を利用した施工手順について
図7に基づいて説明する。
具体的には、
図7(a)に示すように、既設の内装パネル20の前面に、パッキン42が貼り付けられた敷目板41を当接させ、パッキン42の一方面に、内装パネル10の裏面(タイル12が固定されてない面)を押し当てる。そして、内装パネル10の基板露出部11aに、ドリル50を押し当て、「内装パネル10、パッキン42が貼り付けられた敷目板41、既設の内装パネル20及び側壁部1a」に削孔13を穿設する。
【0047】
次に、コンクリートアンカー34の後端部にスペーサボルト33を螺合して接続する。そして、
図7(b)に示すように、穿設した削孔13に、コンクリートアンカー34の先端から、コンクリートアンカー34及びスペーサボルト33を挿入する。
【0048】
次に、
図7(c)に示すように、削孔13に挿入されたスペーサボルト33の後端部に、打込み棒51を押し当て、その打込み棒51の後端をハンマー等で叩き、側壁部1aの一方面の表層面s2から見て、側壁部1aに埋設された支柱3aの外面s1よりも深い位置(側壁部1aの深部)に、コンクリートアンカー34を定着させる。
【0049】
最後に、
図7(d)及び(e)に示すように、側壁部1aの深部に定着させたコンクリートアンカー34に接続されたスペーサボルト33の後端に形成されたボルト孔に、座金32を挿入した六角ボルト31のネジ部を挿入して締付ける。なお、本実施形態では、内装パネル10に設けられた複数箇所の基板露出部11aに取付金具30を取付けることにより、内装パネル10が、側壁部1aの一方面に取付けられるようになっている。
【0050】
次に、打ち込み棒を利用しないボルト叩きによる施工手順を
図8に基づいて説明する。
最初に、
図8(a)に示すように、上記と同様の手順により、ドリル50で削孔13を穿設する。
【0051】
次に、コンクリートアンカー34の後端部にスペーサボルト33を螺合して接続すると共に、スペーサボルト33の後端に形成されたボルト孔に、座金32を挿入した六角ボルト31のネジ部を挿入し取付ける。そして、
図8(b)示すように、穿設した削孔13に、コンクリートアンカー34の先端から、コンクリートアンカー34及びスペーサボルト33を挿入する(スペーサボルト33の後端には六角ボルト31が取付けられている)。
【0052】
また、
図8(c)に示すように、削孔13に挿入されたスペーサボルト33の後端部に取付けられた六角ボルト31の頭部をハンマー等で叩き、側壁部1aの一方面の表層面s2から見て、側壁部1aに埋設された支柱3aの外面s1よりも深い位置(側壁部1aの深部)に、コンクリートアンカー34を定着させる。そして、
図8(d)に示すように、上記同様の手順により、六角ボルト31を締付ける。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態によれば、コンクリートが剥がれ落ち易い構造となっている、支柱3aが埋設された監視員通路1の側壁部からのコンクリートの剥落を効果的に防止することが出来る。また、本実施形態は、凍結防止材(塩)がまかれて、支柱3aが腐食しやすい状態になる寒冷地の高速道路の監視員通路1に対して、特に有効である。
【0054】
また、本実施形態は、監視員通路1の側壁部1aの深部に、コンクリートアンカー34を定着させるという比較的簡単な作業により、内装パネル10を取付けるように構成されているため、上述した特許文献1、2の技術のように、費用及び手間がかかることがない。
【0055】
このように、本実施形態によれば、多大な費用と手間をかけることなく、トンネルを構成するコンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止するトンネル内装パネルの取付構造及び取付方法を提供することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなくその要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態のトンネル内装パネルの取付け構造は、既設の内装パネル20が取付けられた監視員通路1の側壁部1aに設けられていたが、特にこれに限定されるものではない。トンネル内装パネルの取付け構造は、既設の内装パネル20が取付けられていない側壁部1aに直接設けられてもよい。この場合、側壁部1aに、パッキン42が貼り付けられた敷目板41を当接させ、パッキン42の一方面に、内装パネル10の裏面(タイル12が固定されてない面)を押し当てて配置する。そして、上記実施形態と同様の手順により、側壁部1aの深部(
図3と同様の位置)にコンクリートアンカー34を定着させる。また、内装パネル10は、前記定着させたコンクリートアンカー34に接続されたスペーサボルト(連結金具)33に、六角ボルト31及び座金32を用いて固定する。これにより、内装パネル10は、側壁部1aの一方面(表層部)に取付けられる。
【0058】
また、上述した実施形態で示した緩衝材(パッキン42を貼付けた敷目板41)の構成は、あくまでも一例に過ぎない。
図9(a)〜(c)に示すように、前記緩衝材が、敷目板41を備えていない、ゴム製の弾性部材だけで構成されたパッキン43、44、45であってもよい。尚、その形状は適宜設計されるものである。例えば、パッキン43のように、平面視で円状に形成されており、一方面が平坦に形成され、他方面の外周部に環状の凸部が形成されていてもよい。また、パッキン44のように、中心部が貫通した環状であり、両面が共に平坦に形成されていてもよい。また、パッキン45のように、板状に形成され、その中心部に取付金具が挿入される貫通孔が形成され、且つ両面が共に平坦に形成されていてもよい。
【0059】
また、
図10(a)に示すように、緩衝材が、敷目板46及びパッキン47により形成されていてもよい。このパッキン47は、平面視で円状に形成されており、一方面(敷目板46に貼り付けられている面)が平坦に形成され、他方面の中心部が凸状になっている(円弧凸状になっている)。また、
図10(b)に示すように、緩衝材が、敷目板48及びパッキン49により形成されており、既設の内装パネル20側にパッキン49を対向配置させるようにしてもよい。
【0060】
また、内装パネル10は、その裏面側(タイル12が貼り付けられていない面)に、クロス(ビニール等の合成樹脂製のクロス)が貼り付けられていてもよい。
この構成により、内装パネル10のじん性を高めることができ、その結果、内装パネル10の耐剥落性を向上させることができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、取付金具30、30′によりトンネル内装パネル10が取付けられていたが特にこれに限定されるものではない。例えば、取付金具が、
図11に示すように、長尺なウエッジ式アンカー60で構成されていてもよい。尚、
図11では、上述した実施形態と異なる構成を説明し、同じ構成の説明を省略する。
【0062】
ここで、ウエッジ式アンカー60は、一方側(
図11に示す下方側)に雄ねじ部61aが形成され且つ他方側(
図11に示す上方側)にテーパ部61bが形成された長尺な棒状のテーパボルト61と、テーパボルト61に巻き付けられた拡開片(ウエッジ(楔))62とを備えている。また、雄ねじ部61aには、座金63が挿入されると共に、ナット64が螺合するようになっている。そして、ウエッジ式アンカー60は、ナット64を締めるとテーパ部61bがウエッジ62内に引き込まれて、ウエッジ62が開いて孔壁に押し付けられ定着する構造となっている。
【0063】
具体的には、
図11に示す変形例では、ウエッジ式アンカー60は、「内装パネル10、敷目板41及びパッキン42、内装パネル20」を貫通し且つ側壁部1aに形成された削孔13に挿入されている。また、ウエッジ式アンカー60は、ウエッジ62が側壁部1aの深部に定着している(ナット64を締めることによりテーパ部61bがウエッジ62内に引き込まれて、ウエッジ62が開いて削孔13の孔壁に押し付けられ定着している)。また、ウエッジ式アンカー60は、雄ねじ部61aの端部が内装パネル10の基板11から突出している。また、側壁部1aの深部に定着したウエッジ式アンカー60の一方側の雄ねじ部61aには、座金63及びナット64を挿入されている。尚、前記深部とは、上述した実施形態と同様、少なくとも、側壁部1aの一方面(車道側の壁面)の表層面(コンクリート外面)s2を基準にして、側壁部1aに埋設された支柱3aの外面s1(表層面s3と対向して配置されている外面s1)よりも深い位置をいう。
【0064】
そして、内装パネル10は、締付けられたナット64により、ウエッジ式アンカー60に固定されている(これにより、内装パネル10が側壁部1aの一方面に取付けられている)。このように、
図11に示す変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、支柱(鋼管)3aが埋設されたコンクリート構造物(監視員通路1)に対する内装パネル10の取付け構造を示したが、本発明は、支柱3aが埋設されていないコンクリート構造物に対しても有効である。
この場合は、支柱3aが埋設されていないコンクリート構造物に対して、少なくとも、かぶり厚よりも深い位置にコンクリートアンカー34を定着させて、そのコンクリートアンカー34を利用して、内装パネル10を取付けるようにすれば、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
また、上述した実施形態で示したコンクリートアンカー34は、あくまでも一例に過ぎない。コンクリートアンカー34の形状や種類は適宜設定されるものである。