特許第5771463号(P5771463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5771463-モルタル塗り厚均一化部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771463
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】モルタル塗り厚均一化部材
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/04 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   E04F21/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-150883(P2011-150883)
(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公開番号】特開2013-19107(P2013-19107A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591078284
【氏名又は名称】有限会社西山鉄網製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100095326
【弁理士】
【氏名又は名称】畑中 芳実
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 房枝
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】西山 栄一
(72)【発明者】
【氏名】西山 明良
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174570(JP,A)
【文献】 特開2011−032668(JP,A)
【文献】 実開昭59−032049(JP,U)
【文献】 実開昭62−163545(JP,U)
【文献】 実公昭60−033156(JP,Y2)
【文献】 実開昭50−064320(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/04
E04F 13/02
E04F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が先細り状に形成された硬質材料からなる棒状の打込体と、中央に貫通孔を有する軟質材料からなるリング状の止水体とを具備し、前記止水体の貫通孔に前記打込体が挿入されているとともに、前記打込体の外周面と前記止水体の内周面とが耐水性接着剤により液密に接着され、表面に防水シートおよびラス網が配置された外壁下張材に前記打込体の先端側を打ち込み、前記防水シートに前記止水体の先端面を密着させるモルタル塗り厚均一化部材であって、前記止水体の前端面と前記打込体の後端面との間の距離をモルタル塗り厚より若干短くし、前記ラス網にモルタルを塗るときに、前記打込体の後端面をモルタル塗り厚の目印とすることを特徴とするモルタル塗り厚均一化部材。
【請求項2】
前記止水体の前端面と前記打込体の後端面との間の距離をモルタル塗り厚より0.5〜3mm短くしたことを特徴とする請求項1に記載のモルタル塗り厚均一化部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のモルタル外壁の施工時に外壁下張材に打ち込むことにより、モルタルの塗り厚を均一にすることができるモルタル塗り厚均一化部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のモルタル外壁の施工は、図3に示すように行われている。図3は、モルタル外壁の施工方法の一例を示す模式的水平断面図である。図3において、10は建物の室内側に存在する内壁(図示せず)に固定された柱材、12は柱材10に固定された外壁下張材、14は金属製ラス網16の片面に防水シート18を貼り合わせた防水シート付ラス網を示す。
【0003】
防水シート付ラス網14のラス網16としては、縦方向の所定間隔ごとに凸状リブ20を幅方向に沿って形成したラス網(リブラス)が使用されている。このリブラスは、凸状リブ20によって強度を向上させ、モルタルの塗布時にラス網16に加わる圧力によってラス網16が変形することを防止するものである。また、防水シート付ラス網14は、上記凸状リブ20の部分でラス留め具(ステープル)22によって外壁下張材12に固定されている。
【0004】
本例のモルタル外壁の施工方法では、防水シート付ラス網14を、防水シート18を内側にして外壁下張材12にラス留め具22によって固定した後、ラス網16にモルタル24を塗布してモルタル外壁26を施工する。
【0005】
なお、前述したラス網は、いわゆるエキスパンドメタルであり、薄い金属板に、必要な網目の大きさの切り込みを一方向に多数切り欠き、直交方向に引っ張って網目を作ったものである。また、前述した防水シートは、防水紙と不織布とが積層されたもので、ラス網と接触する面が不織布となるように接着剤により凸状リブの頂部に接着されているものである。
【0006】
上述したように、建物のモルタル外壁の施工においてラス網にモルタルを塗布する場合、モルタルを一定の厚さで塗ることが、モルタル外壁のクラック防止、美観向上等の点で重要である。
【0007】
そのため、従来、ラス網にモルタルを一定の厚さで塗るための用具として、例えば特許文献1のモルタル塗厚定規治具が提案されている。特許文献1の治具は、表面に防水シートが敷設されたモルタル下地面にラス網を介してモルタルを塗着する作業を行う際に、前記モルタル下地面に複数取り付けられてモルタルが所定の塗厚で塗着されるようにガイドするモルタル塗厚定規治具であって、前記防水シートに密着配置される密着ベース部と、該密着ベース部を挟んだ一方の側に突出する固定用針部と、前記密着ベース部を挟んだ他方の側に突出する厚さガイド部とからなり、前記固定用針部を前記モルタル下地面に前記防水シートを貫通させて押し込んで、前記密着ベース部を前記防水シートに密着させると共に、前記厚さガイド部の先端を、前記所定の塗厚で塗着されるモルタルの表面の高さ位置に配置するものである(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−32668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記特許文献1のモルタル塗厚定規治具は、下記(a)、(b)に示す欠点を有するものであった。
(a)密着ベース部、固定用針部および厚さガイド部が金属あるいは合成樹脂により一体に形成され、密着ベース部が硬質材料からなるため(0024〜0026)、密着ベース部を防水シートに密着させても、密着ベース部と防水シートとの間に隙間が生じ、この隙間を水が通過して止水性が損なわれることがある。これに対し、特許文献1の請求項2には、密着ベース部の固定用針部側の面に止水粘着材を塗着することが示されているが、このような構成にすると、治具の製造コストが高くなる。
(b)密着ベース部、固定用針部および厚さガイド部が一体に形成されているため(0025、0026)、目的とするモルタルの塗り厚が異なる毎に別々の治具を製造する必要があり、(a)と同様に治具の製造コストが高くなる。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、建物のモルタル外壁の施工時に外壁下張材に打ち込むことにより、モルタルの塗り厚を均一にすることができ、しかも止水性に優れているとともに、製造コストを低減することができるモルタル塗り厚均一化部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するため、先端が先細り状に形成された硬質材料からなる棒状の打込体と、中央に貫通孔を有する軟質材料からなるリング状の止水体とを具備し、前記止水体の貫通孔に前記打込体が挿入されているとともに、前記打込体の外周面と前記止水体の内周面とが耐水性接着剤により液密に接着され、表面に防水シートおよびラス網が配置された外壁下張材に前記打込体の先端側を打ち込み、前記防水シートに前記止水体の先端面を密着させるモルタル塗り厚均一化部材であって、前記止水体の前端面と前記打込体の後端面との間の距離をモルタル塗り厚より若干短くし、前記ラス網にモルタルを塗るときに、前記打込体の後端面をモルタル塗り厚の目印とすることを特徴とするモルタル塗り厚均一化部材を提供する。
【0012】
この場合、本発明では、止水体の前端面と打込体の後端面との間の距離をモルタル塗り厚より0.5〜3mm、特に1〜2mm短くすることが、ラス網にモルタルを塗るときに、打込体の後端面をモルタル塗り厚の目印にしやすくする点で好ましい。
【0013】
本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材は、止水体を軟質材料で形成したので、外壁下張材に打込体の先端側を打ち込み、止水体を防水シートに密着させたときに、止水体と防水シートとの間に隙間が生じず、そのため特許文献1の治具のように、密着ベース部と防水シートとの間の隙間を水が通過して止水性が損なわれることがない。したがって、本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材は、止水性に優れている。
【0014】
また、本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材は、打込体と止水体とを別体に形成し、打込体を止水体の貫通孔に挿入した後、打込体と止水体とを接着することにより製造する。したがって、打込体を止水体の貫通孔に挿入したときの止水体の前端面と打込体の後端面との間の距離を変化させることにより、上記距離を様々に変化させたモルタル塗り厚均一化部材を製造することができる。したがって、本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材は、種々の異なるモルタルの塗り厚に対応するために、少数種の打込体(通常は長さの異なる1、2種類)と少数種(通常は1種類)の止水体を製造すればよく、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材は、建物のモルタル外壁の施工時に外壁下張材に打ち込むことにより、モルタルの塗り厚を均一にすることができ、しかも止水性に優れているとともに、製造コストを低減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材の一実施形態を示す正面図である。
図2図1のモルタル塗り厚均一化部材を用いたモルタル外壁の施工手順を示す説明図である。
図3】従来のモルタル外壁の施工方法の一例を示す模式的水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は本発明に係るモルタル塗り厚均一化部材の一実施形態を示す正面図である。本例のモルタル塗り厚均一化部材50において、52は打込体、54は止水体を示す。
【0018】
打込体52は、先端56が先細り状(具体的には円錐状)に形成された棒状(具体的には円柱状)のものである。打込体52は、金属、硬質樹脂、セラミックス等の硬質材料からなる。打込体52の長さaは20〜30mm、外径bは2〜4mmとすることが適当である。
【0019】
止水体54は、中央に貫通孔58を有するリング状(具体的には円形リング状)のものである。止水体54は、ゴム、エラストマー、プラスチック等の軟質材料からなる。止水体54の厚さcは2〜4mm、外径dは5〜10mmとすることが適当である。また、止水体54の内径eは打込体52の外径bよりもやや小さくすることが好ましい。
【0020】
本例のモルタル塗り厚均一化部材50は、止水体54の貫通孔58に打込体52が挿入され、打込体52の外周面と止水体54の内周面とが耐水性接着剤により液密に接着されている。耐水性接着剤としては、公知のものを適宜用いることができる。
【0021】
本例のモルタル塗り厚均一化部材50では、止水体54の前端面と打込体52の後端面との間の距離c+fは、打込体52の後端面をモルタル塗り厚の目印にしやすくする点で、モルタル塗り厚よりも0.5〜3mm、特に1〜2mm短くすることが好ましい。また、止水体54の前端面と打込体52の前端面との間の距離gは、モルタル塗り厚均一化部材50を外壁下張材に打ち込みやすくする点で、8〜12mmとすることが適当である。
【0022】
本例のモルタル塗り厚均一化部材50を用いた建物のモルタル外壁の施工手順は、下記(1)〜(3)の通りである。
(1)図2(a)に示すように、防水シート付ラス網を、防水シート18を内側にして外壁下張材12にラス留め具によって固定する(ラス網およびラス留め具はいずれも図示省略)。この工程は、図3に示した従来の工程と同じである。なお、防水シート付ラス網については前述したとおりであるが、ラス網と防水シートは別々に施工してもよい。
(2)図2(a)に示すように、表面に防水シート18およびラス網が配置された外壁下張材12の適宜複数箇所に、防水シート18上から、複数のモルタル塗り厚均一化部材50の打込体52の先端56側を打ち込み、防水シート18に止水体54の先端面を密着させる。
(3)図2(b)に示すように、ラス網にモルタル24を塗布してモルタル外壁26を施工する。この場合、ラス網にモルタル24を塗るときに、打込体52の後端面をモルタル塗り厚hの目印とする。すなわち、打込体52の後端面がモルタル24で隠れて見えなくなる程度までモルタル24を塗布することにより、モルタル24の塗り厚hを均一にすることができる。
【0023】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、打込体は断面多角形の棒状でもよく、止水体は断面多角形のリング状でもよい。
【符号の説明】
【0024】
12 外壁下張材
16 ラス網
18 防水シート
24 モルタル
26 モルタル外壁
50 モルタル塗り厚均一化部材
52 打込体
54 止水体
56 先端
58 貫通孔
図1
図2
図3