(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯板状に形成され、互いに幅方向に間隔をあけて平行に配された状態で互いに連結された一対のレール板部と、各レール板部からこれに相対する別のレール板部に向けて一体に張り出す複数の板状のリードとを備え、前記レール板部の板厚を前記リードよりも薄く設定したリードフレームを準備するフレーム準備工程と、
各半導体チップが前記一対のレール板部の間に位置するように、複数の半導体チップを前記レール板部の長手方向に間隔をあけて配列するチップ搭載工程と、
前記半導体チップと前記リードとを電気接続する接続工程と、
前記半導体チップ、及び、これに接続された前記リードの張出方向の先端部を封止するモールド樹脂を成形するモールド工程と、
前記一対のレール板部を切り落とすことで、複数の前記リードを互いに電気的に独立させる切断工程と、を順番に実施し、
これら複数の工程のうち隣り合う2つの工程間において、前工程の実施後に前記リードフレームをリールに巻回し、後工程を実施するための装置まで移送することを特徴とする半導体装置の製造方法。
前記フレーム準備工程においては、前記リードの張出方向の基端部が、前記レール板部の板厚と同一に設定された薄肉部と、当該薄肉部よりも板厚の厚い厚肉部とを前記張出方向に順番に配列するように構成されると共に、前記薄肉部と前記厚肉部との間に、前記リードの板厚方向に延びる段差面が形成される前記リードフレームを準備し、
前記切断工程においては、前記薄肉部を切断して前記一対のレール板部を切り落とすことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
前記切断工程においては、前記板厚方向に面する前記リードの基端部の上下面のうち前記段差面が形成されていない面側から前記薄肉部を切断することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
前記切断工程における前記薄肉部の切断位置は、前記リードの張出方向に沿って前記段差面から前記切断位置に至る距離が、前記リードの板厚方向に沿う前記段差面の高さ寸法以下となるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した帯状のリードフレームは、半導体装置の製造に際してコンパクトにまとめて製造用の装置間で移送できるように、リールに巻きつけることが考えられている。このようにリードフレームをリールに巻きつけるためには、リードフレームの板厚を薄く(例えば0.2mm以下)設定する必要がある。しかしながら、大電流(例えば1A以上)を流す半導体装置を製造する場合には、リードフレームの板厚を厚く(例えば0.2mmより大きく)に設定する必要があるため、リードフレーム(特にレール板部)に巻き癖がついてしまい、その結果として、半導体装置の製造に支障が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、リードの板厚を確保しながらも、巻き癖無くリールに巻きつけることが可能なリードフレーム
、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明のリードフレームは、多数の半導体装置を一列に連ねた状態で製造するためのリードフレームであって、前記半導体装置の配列方向に延びる帯板状に形成されると共に、互いに幅方向に間隔をあけて平行に配した状態で互いに連結された一対のレール板部と、各レール板部からこれに相対する別のレール板部に向けて一体に張り出す板状のリードとを備え、同一の前記レール板部から張り出す前記リードは、前記レール板部の長手方向に互いに間隔をあけて複数配列され、前記レール板部の板厚が、前記リードよりも薄く設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、帯板状に形成され、互いに幅方向に間隔をあけて平行に配された状態で互いに連結された一対のレール板部と、各レール板部からこれに相対する別のレール板部に向けて一体に張り出す複数の板状のリードとを備え、前記レール板部の板厚を前記リードよりも薄く設定したリードフレームを準備するフレーム準備工程と、各半導体チップが前記一対のレール板部の間に位置するように、複数の半導体チップを前記レール板部の長手方向に間隔をあけて配列するチップ搭載工程と、前記半導体チップと前記リードとを電気接続する接続工程と、前記半導体チップ、及び、これに接続された前記リードの張出方向の先端部を封止するモールド樹脂を成形するモールド工程と、前記一対のレール板部を切り落とすことで、複数の前記リードを互いに電気的に独立させる切断工程と、を順番に実施し、これら複数の工程のうち隣り合う2つの工程間において、前工程の実施後に前記リードフレームをリールに巻回し、後工程を実施するための装置まで移送することを特徴とする。
【0009】
前述のリードフレームでは、レール板部の板厚がリードよりも薄く形成されているため、リードの板厚が厚くてもレール板部を容易に弾性的に湾曲させることができる。したがって、上述した半導体装置の製造方法においてリードフレームをリールに巻きつけたとしても、レール板部には巻き癖がつき難くなり、リードフレームの巻き癖によって半導体装置の製造に支障が生じることを防止できる。
具体的に説明すれば、半導体装置の製造に際して所定の工程(前工程)を実施した後に、リードフレームをリールに巻回して後工程を実施するための装置まで移送した後、リールから繰り出すだけでリードフレームを直線状に延ばすことができるため、後工程の実施に不具合が生じることを容易に防止することができる。
また、上記リードフレームによれば、半導体装置の構成要素となるリードの板厚を厚く設定することができるため、大電流を流す半導体装置であってもリールを利用して製造することが可能となる。
【0010】
そして、前記リードフレームにおいては、前記リードの張出方向の基端部が、前記レール板部の板厚と同一に設定された薄肉部と、当該薄肉部よりも板厚の厚い厚肉部とを前記張出方向に順番に配列して構成され、前記薄肉部と前記厚肉部との間に、前記リードの板厚方向に延びる段差面が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記リードフレームを用いて半導体装置を製造する場合には、前記半導体装置の製造方法の前記フレーム準備工程において、前記リードの張出方向の基端部が、前記レール板部の板厚と同一に設定された薄肉部と、当該薄肉部よりも板厚の厚い厚肉部とを前記張出方向に順番に配列するように構成されると共に、前記薄肉部と前記厚肉部との間に、前記リードの板厚方向に延びる段差面が形成される前記リードフレームを準備し、前記切断工程においては、前記薄肉部を切断して前記一対のレール板部を切り落とすことが好ましい。
【0012】
なお、リードの薄肉部は、レール板部の板厚と同一に設定されることで、圧延加工(例えば熱間圧延)によって板厚の薄いレール板部と同時に成形できるため、リードフレームの製造が複雑になることはない。
また、切断工程よりも前に、リードに対する半田の濡れ性を向上させるためのめっきをリードフレームに施したとしても、切断工程後の状態において、モールド樹脂の外側に位置するリードの基端部をなす厚肉部及び薄肉部の上下面(リードの板厚方向に直交する面)及び段差面には、上記めっきが残ることになる。
【0014】
上記
のように製造された半導体装置を所定の回路基板の実装面に実装する場合には、
前記半導体装置の製造方法におけるリードの基端部でありモールド樹脂から突出するリードの突出部の上下面(リードの板厚方向に直交する面)のうち段差面が形成されている側の面(以下、下面と呼ぶ。)を回路基板の実装面に対向させた状態で、回路基板の実装面と突出部の下面(厚肉部及び薄肉部の下面)とを半田付けにより接合すればよい。
上記接合の際には、前述したようにリードフレームにめっきを施したとしても、モールド樹脂から突出するリードの突出部の薄肉部及び厚肉部の各上下面及び段差面にめっきを残すことができるため、リードの突出部の薄肉部及び厚肉部の各下面に加えて、段差面にも半田が濡れることになる。したがって、リードの突出部に段差面が形成されていない場合と比較して、半田の濡れ面積が増加し、回路基板に対する半導体装置の接合強度向上を図ることができる。
【0015】
さらに、前記半導体装置の製造方法では、前記切断工程において、前記板厚方向に面する前記リードの基端部の上下面のうち前記段差面が形成されていない面側から前記薄肉部を切断するするとよい。
上記製造方法のように、リードの基端部の上下面のうち段差面が形成されていない面(以下、上面と呼ぶ。)側から薄肉部が切断されると、この切断部分に生じるバリが、薄肉部の下面からリードの板厚方向に突出する突起部として形成されることになる。
【0017】
そして、前述した製造方法によれば、上記突起部が、厚肉部の下面よりも突出してしまうことを抑制することができる。したがって、前述したように製造された半導体装置を回路基板に実装する前に、突起部を削る等して除去しなくても、突起部が実装面に当接することを抑えて、半導体装置を回路基板の実装面に安定して実装することが可能となる。
また、突起部を削る等して除去する必要がないため、半導体装置の製造効率の向上も図ることができる。
【0018】
さらに、製造された半導体装置では、突起部が段差面との間に間隔をあけて対向配置されているため、前述したように半導体装置を回路基板に実装する際には、半田が段差面と突起部との間に挟み込まれることになる。したがって、回路基板に対する半導体装置の接合強度をさらに向上させることができる。
【0019】
また、前記半導体装置の製造方法では、前記切断工程において、前記薄肉部がパンチング加工によって切断されることがより好ましい。
この場合には、薄肉部が千切られるようにせん断加工されるため、前述の突起部(切断部分に生じるバリ)は、薄肉部が湾曲することで形成される。また、薄肉部における切断面が突起部の先端部分のみに形成されることになる。
【0021】
このようにパンチング加工を利用して製造された半導体装置では、薄肉部の切断面が突起部の先端部分のみに形成されるため、切断面の面積を小さく抑えることができる。したがって、切断加工よりも前にリードフレームにめっきを施したとしても、切断工程後の状態においては、切断面を除く突起部の表面全体にめっきを残すことができる。言い換えれば、モールド樹脂から突出するリードの突出部の表面に残るめっきの面積を拡大させて、リードの突出部に対する半田の濡れ性向上を図ることができる。
【0022】
また、薄肉部がパンチング加工によって切断される場合には、例えばダイシング加工によって切断される場合と比較して、突起部が肉厚に形成されてその剛性が高くなるため、半田付けにより半導体装置を回路基板に実装した状態においては、段差面と突起部との間において半田を強固に挟み込むことができる。
以上のことから、パンチング加工を利用して半導体装置を製造することで、回路基板に対する半導体装置の接合強度向上をさらに図ることができる。
【0023】
さらに、前記半導体装置の製造方法において、前記切断工程における前記薄肉部の切断位置は、前記リードの張出方向に沿って前記段差面から前記切断位置に至る距離が、前記リードの板厚方向に沿う前記段差面の高さ寸法以下となるように設定されていることが好ましい。
この製造方法によれば、パンチング加工によって生じるバリ(突起部)が、厚肉部の下面よりも突出してしまうことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、半導体装置におけるリードの板厚を確保しながらも、リードフレームに巻き癖がつかないようにリードフレームをリールに巻きつけることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、
図1〜8を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係るリードフレーム1は、多数の半導体装置10(
図4〜7参照)を一列に連ねた状態で製造するためのものであり、導電性板材にパンチング加工やエッチング加工等を施すことで製造されるものである。このリードフレーム1、帯板状に形成された一対のレール板部2A,2Bと、一対のレール板部2A,2Bを相互に連結する連結リード4と、各レール板部2A,2Bからこれに相対する別のレール板部2B,2Aに向けて一体に張り出す板状のリード3とを備えている。
一対のレール板部2A,2Bは、互いに間隔をあけて平行に配されており、この平行状態が連結リード4によって保持されている。
連結リード4は、レール板部2A,2Bの幅方向に延びる帯板状に形成されており、レール板部2A,2Bの長手方向に等間隔で複数配列されている。
【0027】
各リード3は、
図2,3に示すように、連結リード4の長手方向に平行するように、各レール板部2A,2Bから別のレール板部2B,2Aに向けて張り出しているが、連結リード4のように別のレール板部2B,2Aには接続されていない。例えば一方のレール板部2Aから張り出す第一リード3Aは、他方のレール板部2Bに向けて延びているが、第一リード3Aの張出方向の先端部32Aは、他方のレール板部2Bには到達していない。
本実施形態のリードフレーム1では、一方のレール板部2Aから張り出す第一リード3A及び他方のレール板部2Bから張り出す第二リード3B(以下、一対のリード3A,3Bとも呼ぶ。)が、一対のレール板部2A,2Bの長手方向の同一位置において、一対のレール板部2A,2Bから互いに近づく方向に張り出している。そして、一対のリード3A,3Bは、その先端部32A,32B同士が互いに間隔をあけて隣り合うようにリード3の長手方向に配列されている。
【0028】
そして、一方のレール板部2Aから張り出す第一リード3Aの先端部32Aは、基端部31Aよりも幅広に形成された部分を有しており、この幅広部分が半導体チップ11を搭載するためのダイパッドをなしている。なお、半導体チップ11は、ダイパッドにおいて第一リード3A(導電性板材)の板厚方向に直交する先端部32Aの一方の面36c(以下、上面36cと呼ぶ。)に搭載されるようになっている。
また、他方のレール板部2Bから張り出す第二リード3Bの先端部32Bは、基端部31Bよりも幅広に形成された部分を有するものの、この幅広部分は第一リード3Aの先端部32Aの幅広部分と比較してリード3の長手方向の寸法が短く設定されている。この第二リード3Bの先端部32Bの幅広部分は、第二リード3Bと半導体チップ11とを電気接続するための接続板(接続子)12(
図5,6参照)を接合する接続パッドをなしている。なお、接続板12は、接続パッドにおいて第二リード3Bの先端部32Bの上面37c(第一リード3Aの先端部32Aの上面36cと同じ方向に向く面)に接合されるようになっている。
なお、
図7に示す半導体装置10において、上述した各リード3の先端部32は、モールド樹脂13内部に埋設される部分に相当し、リード3の基端部31は、モールド樹脂13から外部に突出する部分(突出部41)に相当している。
【0029】
そして、一対のリード3A,3Bは、レール板部2A,2Bの長手方向に間隔をあけて複数組配列されている。そして、本実施形態のリードフレーム1では、一対三組のリード3A,3Bが、二つの連結リード4,4の間に配されている。言い換えれば、本実施形態のリードフレームでは、一対三組のリード3A,3Bと一つの連結リード4とが、レール板部2A,2Bの長手方向に順番に繰り返し配列されている。
【0030】
さらに、このリードフレーム1では、レール板部2及びリード3の一部の板厚が、リード3の残部の板厚よりも薄く設定されている。
ここで、板厚の薄いリード3の一部とは、リード3の張出方向の基端部31のうちレール板部2側に位置する薄肉部33のことを示している。薄肉部33の板厚は、レール板部2に連なるようにレール板部2の板厚と同一に設定されている。すなわち、薄肉部33はレール板部2と共に単一の平板を呈しており、薄肉部33とレール板部2との間に段差はない。
【0031】
また、リード3の残部とは、薄肉部33に隣り合うようにリード3の基端部31のうち先端部32側に位置して、板厚を薄肉部33よりも厚く設定した厚肉部34、及び、この厚肉部34と同一の板厚に設定されたリード3の先端部32全体とをあわせた部分のことを示している。すなわち、リード3の先端部32の板厚は、基端部31の厚肉部34と同一の板厚に設定されている。
言い換えれば、各リード3の張出方向の基端部31は、板厚の薄い薄肉部33と、薄肉部33よりも板厚の厚い厚肉部34とをリード3の張出方向に順番に配列して構成されている。
【0032】
レール板部2及びリード3の薄肉部33の薄い板厚は、レール板部2及び薄肉部33の下面2d,33dを厚肉部34の下面34dよりも低く位置させることで設定されており、レール板部2及び薄肉部33の上面2c,33cは、厚肉部34の上面34cと共に同一平面をなしている。これにより、薄肉部33の下面33dと厚肉部34の下面34dとの間には、リード3の板厚方向に延びる段差面35が形成されている。一方、リード3の厚肉部34の厚い板厚は、例えばリードフレーム1に成形される前の導電性板材の板厚に設定されている。
なお、図示はしていないが、本実施形態では、連結リード4にも、上記リード3の基端部31に対応する箇所に薄肉部33、厚肉部34及び段差面35が形成されている。したがって、本実施形態のリードフレーム1では、その幅方向の両端部分の板厚が、幅方向の中間部分の板厚よりも薄く設定されている。
【0033】
このように同一のリードフレーム1において板厚を異ならせる加工は、例えば、導電性板材をリードフレーム1に成形するパンチング加工やエッチング加工等の成形加工と同時あるいは加工後に行われてもよいし、例えば、リードフレーム1に成形される前の導電性板材に予め圧延加工(例えば熱間圧延)を施すことで行われてもよい。
【0034】
次に、このリードフレーム1を用いて
図7に示す半導体装置10を製造する方法(の一例)について説明する。
半導体装置10を製造する際には、はじめに、導電性板材に圧延加工やパンチング加工、エッチング加工等を適宜施すことで、
図1〜3に示す上記構成のリードフレーム1を用意する(フレーム準備工程)。また、このフレーム準備工程では、各リード3の張出方向の中途部分に折り曲げ加工を施すことで、
図5,6に示すように、各リード3の先端部32の下面36d,37dを厚肉部34の下面34dよりも高く位置させる(折曲工程)。
【0035】
フレーム準備工程後には、ダイパッドをなす第一リード3Aの先端部32Aの上面36cに板状の半導体チップ11を搭載する(搭載工程)。
ここで、半導体チップ11は、ダイオード等のように上面及び下面に電極を有するものである。そして、この搭載工程では、半導体チップ11の下面が、半田や銀ペースト等のように導電性を有する導電性接合剤(不図示)によって、ダイパッドをなす第一リード3Aの先端部32Aの上面36cに接合される。これにより、半導体チップ11が第一リード3Aに電気接続されることになる。すなわち、本実施形態の搭載工程には、半導体チップ11と第一リード3Aとを電気接続する接続工程が含まれている。
また、本実施形態のリードフレーム1では、複数の第一リード3Aのダイパッド部分がレール板部2の長手方向に間隔をあけて配列されているため、搭載工程では、複数の半導体チップ11もレール板部2の長手方向に間隔をあけて配列されることになる。
【0036】
上記搭載工程の後には、半田等の導電性接合剤(不図示)によって、導電性板材からなる接続板12の両端部を、接続パッドをなす第二リード3Bの先端部32Bの上面37c、及び、半導体チップ11の上面にそれぞれ接合して、半導体チップ11と第二リード3Bとを電気接続する接続工程を実施する。
この接続工程で用いる接続板12には、予め屈曲加工が施されており、これによって、板状に形成された接続板12の両端部を、互いに異なる高さに位置する第二リード3Bの先端部32Bの上面37c及び半導体チップ11の上面に、それぞれ重ねることができる。
【0037】
その後、半導体チップ11、リード3の先端部32、及び、接続板12を封止するモールド樹脂13を成形する(モールド工程)。
このモールド工程後の状態において、モールド樹脂13は略直方体形状の外観を呈しており、半導体チップ11、各リード3の先端部32及び接続板12がモールド樹脂13内に埋設されている。また、各リード3の基端部31は、モールド樹脂13の側面から突出しており、各リード3の基端部31の厚肉部34の下面34dがモールド樹脂13の下面13dと共に同一平面をなしている。さらに、一対のレール板部2A,2B及び連結リード4はモールド樹脂13の外側に位置している。
【0038】
そして、本実施形態では、連結リード4の間に配された一対三組のリード3A,3Bの先端部32が、同一のモールド樹脂13内に埋設されている。したがって、モールド工程後の状態においては、モールド樹脂13と連結リード4とがレール板部2の長手方向に順番に繰り返し配列されている。
また、一対三組のリード3A,3Bの先端部32、三つの半導体チップ11及び三つの接続板12を同一のモールド樹脂13に封止した構成が、一つの半導体装置10として構成されている。したがって、モールド工程後の状態においては、複数の半導体装置10がレール板部2によってその長手方向に一列に連ねて配列されている。
【0039】
最後に、レール板部2及び連結リード4を切り落とすことで、モールド樹脂13の外部において複数のリード3を互いに電気的に独立させる切断工程を実施することで、
図7,8に示す半導体装置10の製造が完了する。
この切断工程においては、段差面35及び薄肉部33の一部がモールド樹脂13から突出するリード3側に残るように、リード3の薄肉部33をその上面33c側あるいは下面33d側から切断する。そして、本実施形態の切断工程では、例えばダイシングブレード(不図示)を用いたダイシング加工によりリード3を切断し、さらに、リード3の切断面33eの周縁に生じるバリを削る等して除去する。なお、リード3の切断面33eは、段差面35と同様にリード3の板厚方向に延びるように形成されている。
【0040】
また、上記製造方法では、フレーム準備工程の後から上記切断工程の前までの間に、リードフレーム1に対する半田の濡れ性を向上させるためのめっきをリードフレーム1に施すめっき工程が実施される。
したがって、上記切断工程を経て得られる半導体装置10においては、モールド樹脂13の外部に位置する各リード3の基端部31のうち切断面33eを除く表面全体に、めっきが残ることになる。
【0041】
さらに、上記製造方法では、隣り合う二つの工程間において、前工程の実施後にリードフレーム1をリール9(
図1,4参照)に巻回し、後工程を実施するための装置まで移送することがある。
例えば、フレーム準備工程とチップ搭載工程との間において、前工程であるフレーム準備工程をパンチング装置やエッチング装置等において実施した後には、
図1に示すようにリードフレーム1をリール9に巻回し、後工程であるチップ搭載工程を実施するための装置まで移送する。
また、例えば、モールド工程と切断工程との間において、前工程であるモールド工程を成形装置等において実施した後には、
図4に示すように、リードフレーム1をリール9に巻回し、後工程である切断工程を実施するための切断装置等まで移送する。
【0042】
以上のようにして製造される半導体装置10は、
図7,8に示すように、半導体チップ11と、同一の半導体チップ11に電気接続される一対のリード3A,3Bと、これら半導体チップ11及びリード3を封止するモールド樹脂13とを備えている。なお、一対のリード3A,3Bのうち第一リード3Aは、半導体チップ11に直接電気接続され、第二リード3Bは、接続板12を介して半導体チップ11に電気接続されている。接続板12は半導体チップ11と同様にモールド樹脂13によって封止されている。
この半導体装置10において、モールド樹脂13の側面から突出するリード3の突出部41は、リードフレーム1におけるリード3の基端部31に対応している。したがって、突出部41は、板厚の厚い厚肉部34と、厚肉部34よりも板厚の薄い薄肉部33とを突出部41の突出方向に順番に配列して構成されている。
【0043】
そして、突出部41をなす厚肉部34の下面34dは、モールド樹脂13の下面13dと共に同一平面をなしている。一方、モールド樹脂13や厚肉部34の下面13d,34dと同じ側に向く薄肉部33の下面33dは、モールド樹脂13や厚肉部34の下面13d,34dよりも低く窪んで位置しており、薄肉部33の下面33dと厚肉部34の下面34dとの間には、リード3の板厚方向に延びる段差面35が形成されている。なお、薄肉部33の上面33cは、厚肉部34の上面34cと共に同一平面をなしている。すなわち、リード3の突出部41の上面には段差面が形成されていない。
【0044】
そして、
図7,8に示すように、上記半導体装置10を回路基板20の実装面20cに表面実装する場合には、モールド樹脂13の下面13dを回路基板20の実装面20cに対向させた状態で、回路基板20の実装面20cと突出部41とを半田21により接合すればよい。ここで、突出部41の薄肉部33及び厚肉部34の各下面33d,34d、並びに、段差面35にはめっきが残っているため、上記接合の際には、薄肉部33及び厚肉部34の各下面33d、34dに加え、段差面35にも半田21が濡れることになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のリードフレーム1によれば、レール板部2の板厚がリード3よりも薄く形成されているため、リード3の板厚が厚くてもレール板部2を容易に弾性的に湾曲させることができる。したがって、半導体装置10を製造する際にリードフレーム1をリール9に巻きつけたとしても、レール板部2には巻き癖がつき難くなり、リードフレーム1の巻き癖によって半導体装置10の製造に支障が生じることを防止できる。具体的に説明すれば、半導体装置10の製造に際して前工程を実施した後に、リードフレーム1をリール9に巻回して後工程を実施するための装置まで移送した後、リール9から繰り出すだけでリードフレーム1を直線状に延ばすことができるため、後工程の実施に不具合が生じることを容易に防止することができる。
また、本実施形態のリードフレーム1及び半導体装置10の製造方法によれば、半導体装置10の構成要素となるリード3の板厚を厚く設定することができるため、大電流を流す半導体装置10であってもリール9を利用して製造することが可能となる。言い換えれば、半導体装置10におけるリード3の板厚を確保しながらも、リードフレーム1に巻き癖がつかないようにリードフレーム1をリール9に巻きつけることができる。
【0046】
また、本実施形態の半導体装置10を回路基板20に実装する際には、リード3の突出部41の下面をなす薄肉部33及び厚肉部34の各下面33d,34dに加え、段差面35にも半田21が濡れるため、段差面35が形成されていない場合と比較して、半田21の濡れ面積が増加し、回路基板20に対する半導体装置10の接合強度向上を図ることができる。
さらに、本実施形態では、一対のリード3A,3Bの突出部41がモールド樹脂13から互いに逆向きに突出すると共に、一対のリード3A,3Bの段差面35が互いに逆に向いているため、半導体装置を回路基板に実装した状態では、一対のリード3A,3Bの突出方向への移動を特に防ぐことができる。
【0047】
また、本実施形態では、回路基板20に対する接合強度向上を図ることが可能な半導体装置10を製造するために、リードフレーム1に薄肉部33を形成しているが、この薄肉部33は、圧延加工によって板厚の薄いレール板部2と同時に成形することが可能であるため、リードフレーム1の製造が煩雑になることを防ぐことができる。言い換えれば、半導体装置10の製造効率の低下を防ぐことができる。
【0048】
〔第二実施形態〕
次に、
図9〜11を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態と比較して、半導体装置の製造方法及びこれによって製造される半導体装置の一部のみが異なっており、リードフレームについては第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態のリードフレーム及び半導体装置と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0049】
本実施形態の製造方法では、第一実施形態と同様のフレーム準備工程、チップ搭載工程、接続工程及びモールド工程を順番に実施する。そして、モールド工程後には、
図9に示すように、パンチング加工によってリード3の薄肉部33を切断して、レール板部2を切り落とす切断工程を実施することで、半導体装置50の製造が完了する。
この切断工程におけるパンチング加工では、上型61及び下型62を備えるパンチング用金型6を用いる。そして、リード3の基端部31(薄肉部33及び厚肉部34)の下面33d,34dが下型62の上面62cに対向するように、モールド工程後のリードフレーム1(
図6参照)を下型62の上面62cに配した状態で、リード3の基端部31(薄肉部33及び厚肉部34)の上面33c,34cに向けて上型61を移動させる。これにより、薄肉部33の一部がリード3の基端部31の上面33c,34c側から上型61によって打ち抜かれ、薄肉部33が切断されることになる。
【0050】
なお、このパンチング加工における薄肉部33の切断位置33gは、段差面35から所定距離だけ離間した位置に設定されている。具体的には、リード3の張出方向に沿って段差面35から切断位置33gに至る距離Xが、リード3の板厚方向に延びる段差面35の高さ寸法t以下となるように、切断位置33gが設定されている。これにより、段差面35及び薄肉部33の一部がモールド樹脂13から突出するリード3側に残ることになる。
【0051】
また、上述したように薄肉部33が切断されると、この切断部分に生じるバリが、薄肉部33の下面33dからリード3の板厚方向に突出する突起部39として形成されることになる。すなわち、上記切断工程を経て得られる半導体装置50では、薄肉部33が、その突出方向先端部からリード3の板厚方向に延出し、段差面35との間に間隔をあけて対向配置される突起部39を備えて構成されることになる。
さらに、パンチング加工で切断工程を実施する場合には、薄肉部33が千切られるようにせん断加工されるため、前述の突起部39は、薄肉部33の突出方向先端部が湾曲することで形成される。また、薄肉部33におけるリード3の切断面33fが、突起部39の先端部分のみに形成されることになる。
【0052】
なお、上述した本実施形態の製造方法では、第一実施形態の製造方法と同様に、フレーム準備工程の後から上記切断工程の前までの間に、リードフレーム1に対する半田の濡れ性を向上させるためのめっきをリードフレーム1に施すめっき工程が実施される。したがって、上記切断工程を経て得られる半導体装置50では、第一実施形態の場合と同様に、モールド樹脂13の外部に位置する各リード3の基端部31のうち切断面33fを除く表面全体に、めっきが残ることになる。特に、本実施形態では、切断面33fを除く突起部39の表面全体にめっきが残ることになる。
また、本実施形態の製造方法では、第一実施形態の場合と同様に、隣り合う二つの工程間において、前工程の実施後にリードフレーム1をリール9(
図1,4参照)に巻回し、後工程を実施するための装置まで移送することがある。
【0053】
以上のようにして製造される半導体装置50を、
図10に示すように、回路基板20の実装面20cに表面実装する場合には、第一実施形態と同様に、モールド樹脂13の下面13dを回路基板20の実装面20cに対向させた状態で、回路基板20の実装面20cと突出部41とを半田21により接合すればよい。
ここで、突出部41の薄肉部33及び厚肉部34の各下面33d,34d、段差面35、並びに、段差面35に対向する突起部39の内側面39dには、めっきが残っている。このため、上記接合の際には、薄肉部33及び厚肉部34の各下面33d,34d及び段差面35に加えて、突起部39の内側面39dにも半田21が濡れることになる。その結果、半田21が段差面35と突起部39の内側面39dとの間に挟み込まれることになる。
【0054】
本実施形態の製造方法及び半導体装置50によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、本実施形態の製造方法によれば、切断工程の際に、突起部39をなすバリが薄肉部33の下面33dから突出するように生じるため、厚肉部34の下面34dよりも突出してしまうことを抑制することができる。したがって、半導体装置50を回路基板20に実装する前に、突起部39を削る等して除去しなくても、突起部39が実装面20cに当接することを抑えて、半導体装置50を回路基板20の実装面20cに安定して実装することが可能となる。
特に、本実施形態では、段差面35から切断位置33gに至る距離Xが、段差面35の高さ寸法t以下となるように、切断位置33gが設定されているため、パンチング加工によって生じるバリ(突起部39)が、厚肉部34の下面34dよりも突出してしまうことを確実に防止することができる。
また、突起部39を削る等して除去する必要がないため、半導体装置50の製造効率の向上も図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態の半導体装置50を回路基板20に実装した状態では、半田21が段差面35と突起部39の内側面39dとの間に挟み込まれるため、第一実施形態の場合と比較して、回路基板20に対する半導体装置50の接合強度をさらに向上させることができる。
また、パンチング加工を利用して製造される本実施形態の半導体装置50では、薄肉部33の切断面33fが突起部39の先端部分のみに形成されるため、第一実施形態の切断面33eと比較して、切断面33fの面積が小さく抑えられ、切断面33fを除く突起部39の表面全体にめっきを残すことができる。言い換えれば、モールド樹脂13から突出するリード3の突出部41の表面に残るめっきの面積を拡大させることができ、リード3の突出部41に対する半田21の濡れ性をさらに向上させて、回路基板20に対する半導体装置50の接合強度向上をさらに図ることができる。
【0056】
さらに、本実施形態の半導体装置50では、薄肉部33の突出方向先端部が厚肉部34の上面33c側から下面33d側に向けて湾曲することによって突起部39が形成され、さらに、前述したように切断面33fを除く突起部39の表面全体にめっきを残すことができるため、半導体装置50を回路基板20に実装した状態では、例えば
図11に示すように、薄肉部33の上面33cによって画成される突起部39の外側面39cに対しても容易に半田21が濡れることになる。この場合には、突起部39を半田21によって包み込むことができるため、回路基板20に対する半導体装置50の接合強度をさらに向上させることができる。
【0057】
以上、上記実施形態により本発明の詳細を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記第二実施形態では、リード3の基端部31の上面33c,34c側から薄肉部33を切断する切断工程が、パンチング加工によって行われるとしたが、例えばダイシング加工等の他の切断手法によって行われてもよい。他の切断手法によって薄肉部33が切断されたとしても、切断部分に生じるバリが、上記第二実施形態の場合と同様に、薄肉部33の下面33dから突出し、段差面35との間に間隔をあけて対向配置される突起部39として形成されることになる。したがって、切断工程がパンチング加工以外の他の切断手法によって実施されても、第二実施形態と同様の効果を奏する。
ただし、パンチング加工によって形成される第二実施形態の突起部39の厚みは、ダイシング加工等によって形成される突起部よりも肉厚に形成されるため、突起部39の剛性は高くなる。このため、第二実施形態の半導体装置50を回路基板20に実装した状態では、段差面35と突起部39の内側面39dとの間において半田21をより強固に挟み込むことができ、回路基板20に対する半導体装置50の接合強度向上を特に図ることができる。
【0058】
また、上記二つの実施形態のリードフレーム1において、各レール板部2及び各リード3の薄肉部33の板厚は、その下面33dと厚肉部34の下面34dとの間に段差が生じることで、厚肉部34よりも薄く設定されているが、これに限ることは無い。各レール板部2及び各リード3の薄肉部33の板厚は、例えば薄肉部33の上面33cと厚肉部34の上面34cとの間に段差を生じさせたり、薄肉部33の上面33c及び下面33dと厚肉部34の上面34c及び下面34dとの間にそれぞれ段差を生じさせたりすることで、厚肉部34よりも薄く設定されてもよい。
【0059】
さらに、リードフレーム1におけるリード3の基端部31には、薄肉部33が形成されるとしたが、例えば、薄肉部33を形成せずにリード3の基端部31全体が先端部32の板厚と同一に設定されて、レール板部2のみがリード3の板厚よりも薄くなるように形成されてもよい。
このようなリードフレーム1であっても、上述した実施形態の場合と同様に、リード3の板厚が厚く設定されたとしても、レール板部2を容易に弾性的に湾曲させることは可能である。このため、半導体装置10,50を製造する際にリードフレーム1をリール9に巻きつけたとしても、レール板部2には巻き癖がつき難くなる。すなわち、大電流を流す半導体装置10,50であっても、半導体装置10,50におけるリード3の板厚を十分に確保しながらも、リール9を利用して効率よく製造することが可能となる。
【0060】
また、リードフレーム1に形成されるリード3や連結リード4の形状や数、及び、複数のリード3や連結リード4の配列は、上記実施形態のものに限らず、半導体チップ11の種類や数などの半導体装置10,50の仕様に応じて適宜設定されればよい。
さらに、モールド樹脂13内における半導体装置10,50の電気接続構造は、上記実施形態のものに限らず、例えば、同一のレール板部2の長手方向に隣り合うリード3同士を半導体チップ11や接続板12等で適宜電気接続した構造であってもよい。
また、上記実施形態では、リード3と半導体チップ11とが、直接あるいは接続板12を介して電気接続されているが、例えばボンディングワイヤ等の他の接続子を介して電気接続されてもよい。