(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をごみ処理設備に設置されるダンピングボックスの機能を持たせられる自走コンベア式作業機に適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略垂直方向に延びるものとして説明する。
【0011】
図1に示すように、自走コンベア式作業機11は、搬送物である収集物(ごみ)の点検作業時等に収集車から排出される収集物を受けてごみピット1へ搬送するベルト(コンベアベルト)30と、このベルト30を搬送する走行装置12とを備える。
【0012】
自走コンベア式作業機11には、左の走行装置12上に位置して図示しないエンジン、油圧ユニット等が搭載され、右の走行装置12上に位置して運転席23、操作盤24が搭載される。
【0013】
左右の走行装置12は、油圧ユニットから供給される作動油圧によって作動する油圧モータ(図示せず)によって駆動される。
【0014】
ベルト30は、前後のローラ31、32に渡って掛け回され、前のローラ31が油圧モータ(図示せず)によって回転駆動されることにより循環する。
【0015】
前後のローラ31、32と左右の走行装置12は、後述する本体フレーム50に支持される。
【0016】
ベルト30は、前後のローラ31、32にそれぞれ掛け回される前後端折り返し部30a、30bと、この前後のローラ31、32間で本体フレーム50の上方を循環する上方循環部30cと、前後のローラ31、32間で本体フレーム50の下方を循環する下方循環部30dとを備える。
【0017】
後のローラ32はプラットフォーム2等に干渉しない範囲でできるだけ低い位置に設けられ、ベルト30の搬送経路が低く抑えられる。一方、前のローラ31は後のローラ32より高い位置に設けられ、プラットフォーム2上に突出する突起物10等に干渉することなく、ベルト30の前端折り返し部30aがごみピット1上に臨むようになっている。
【0018】
ベルト30の下方循環部30dが循環する経路には、ベルト30の裏面に転接する複数のキャリアローラ36と、ベルト30の表面に転接する複数のキャリアローラ35が設けられ、ベルト30がプラットフォーム2等に干渉しないように案内される。
【0019】
ベルト30の上方循環部30cが循環する経路には、ベルト30の裏面に摺接する複数のガイドレールとベルト30の裏面に転接する複数のキャリアローラとがそれぞれ設けられる。ベルト30の裏面中央部に摺接するガイドレールは、ベルト30の中央部を案内する。ガイドレールとキャリアローラは、本体フレーム50に支持される。ベルト30の裏面両側部に転接するキャリアローラは、その回転軸が水平線に対して10°程度傾斜して設けられ、ベルト30の両端部を持ち上げるように案内する。これによりベルト30の両端部は内側に向けて傾斜しながら循環し、ベルト30によって搬送される収集物が左右に拡がらないようになっている。
【0020】
また、ベルト30上には、上方循環部30cの上面両側部に摺接する左右のサイドプレート(図示せず)を傾斜して設け、このサイドプレートによって搬送される収集物が左右に拡がらないようにしてもよい。
【0021】
収集物の点検作業等は次の手順で行われる。
・自走コンベア式作業機11をベルト30の前端部がごみピット1上に臨む所定位置に移動する。
・収集物を積載する収集車を後向きで自走コンベア式作業機11に近づけ、収集車の車輪がプラットフォーム2上に設けられたスロープ9に乗り上げた位置で停車させる。これにより、収集車のごみ排出部が自走コンベア式作業機11に干渉することなくベルト30上に臨む。
・収集車からベルト30上に収集物を落下させ、ベルト30上で収集物の点検作業等を行う。
・ベルト30を循環させることにより、収集物をごみピット1へと搬送する。
【0022】
上記点検作業が終了すると、自走コンベア式作業機11を自走させて撤去する。これにより、ゴミ投入扉の手前のスペースに収集車が乗り入れ、収集車からの収集物を直接ごみピット1に投入する通常の投入作業が行われる。この結果、従来のようにゴミ投入扉の手前にダンピングボックスを設ける必要がなく、ゴミ投入扉の稼働率を高められる。
【0023】
自走コンベア式作業機11は、ベルト30上のスペースが開放されているため、収集車から投下される収集物をベルト30上に直接受け、収集物の点検作業を効率良く行える。
【0024】
ところで、従来、このような自走コンベア式作業機にあっては、前後のローラ31、32を支持する本体フレームがベルトの循環経路の内側に配置され、本体フレームの前後端で前後のローラ31、32が支持される構造をしていたため、前後のローラ31、32の支持剛性を十分に確保することが難しいという問題点があった。
【0025】
本発明はこれに対処してなされたものであり、前後のローラ31、32を支持する本体フレーム50がベルト30の循環経路より外側に配置され、前後のローラ31、32の支持剛性が十分に確保される構成とする。
【0026】
図2の(a)は、本体フレーム50の概略構成を示す平面図であり、(b)は、本体フレーム50の概略構成を示す側面図である。以下、本体フレーム50の構成について説明する。
【0027】
本体フレーム50は、ベルト30の左右端に沿って前後方向(X軸方向)に延びる左右のサイドメンバ51と、このサイドメンバ51に直交する左右方向(Y軸方向)に延びて左右のサイドメンバ51に渡って掛け渡される前後のクロスメンバ55、57と、左右の走行装置12を支持する左右の走行フレーム52とを備える。
【0028】
左右のサイドメンバ51の前後端部に前後のローラ31、32を回転可能に支持するローラシャフト41、42がそれぞれ連結される。
【0029】
左右のサイドメンバ51は、ベルト30の左右端に略平行に並んで配置される。これにより、ベルト30は、左右のサイドメンバ51の間に配置され、左右のサイドメンバ51の上方に配置されないため、ベルト30の搬送経路が低く抑えられる。
【0030】
左右の走行フレーム52は、左右のサイドメンバ51から左右方向(Y軸方向)に突出し、それぞれの先端に左右の走行装置12が連結される。これにより、左右のサイドメンバ51が走行フレーム52の間に配置され、走行フレーム52の上方に配置されないため、ベルト30の搬送経路が低く抑えられる。
【0031】
左右のサイドメンバ51の前後端部には、前後のローラ31、32を支持するローラシャフト41、42の連結部より突出する方向(X軸方向)に延びるサイドメンバ延長部51a、51bが形成される。
【0032】
前のクロスメンバ55は、左右のサイドメンバ延長部51aの前端に渡って掛け渡され、前のローラ31の前方に配置される。
【0033】
左右のサイドメンバ51の前端部(サイドメンバ延長部51a)は、前のクロスメンバ55によって互いに連結されることにより、前のローラ31のローラシャフト41から受ける荷重に対する剛性が十分に確保される。
【0034】
前のクロスメンバ55は、ベルト30の循環経路より外側に設けられ、ベルト30の前端折り返し部30aの前方(X軸方向)に配置される。前のクロスメンバ55は、ベルト30の前端折り返し部30aから所定距離だけ離され、ベルト30の前端折り返し部30aとの間に排出空間45が画成される。これにより、ベルト30を循環させると、ベルト30上に積載された収集物が
図2の(a)(b)に矢印で示すように排出空間45を通って落下し、ごみピット1へと排出される。
【0035】
後のクロスメンバ57は、左右のサイドメンバ延長部51bの後端に渡って掛け渡される。後のクロスメンバ57は、ベルト30の後端折り返し部30bの後方(X軸方向)に配置され、ベルト30の循環経路より外側に設けられる。後のクロスメンバ57は、ベルト30の後端折り返し部30bから所定距離だけ離され、ベルト30に干渉しないようになっている。
【0036】
左右のサイドメンバ51の後端部(サイドメンバ延長部51b)は、後のクロスメンバ57によって互いに連結されることにより、後のローラ32のローラシャフト42から受ける荷重に対する剛性が十分に確保される。
【0037】
本体フレーム50は、前後のクロスメンバ55、57によって左右のサイドメンバ51の剛性が高められることにより、前後のローラ31、32の支持剛性が十分に確保される。
【0038】
これにより、自走コンベア式作業機11は、ベルト30上のスペースを開放することが可能となり、収集車から投下される収集物をベルト30上に直接受けて、搬送物の点検作業を行った後に、ベルト30を循環させて収集物をごみピット1へと搬送することが行われる、ごみ処理設備に設置されるダンピングボックスの機能を持たせられる。
【0039】
以下、本実施形態の要旨と作用、効果を説明する。
【0040】
本実施形態では、搬送物を搬送する自走コンベア式作業機11であって、搬送物を積載する無端状のベルト30と、このベルト30が掛け回されてその回転によりベルト30を循環させる前後のローラ31、32と、ベルト30及び前後のローラ31、32を搬送する走行装置12と、前後のローラ31、32及び走行装置12を支持する本体フレーム50と、で構成され、この本体フレーム50は、前後のローラ31、32の左右端にそれぞれ設けられて前後のローラ31、32を連結する左右のサイドメンバ51と、ベルト30の循環経路より外側に配置されて左右のサイドメンバ51の前後端どうしをそれぞれ連結する前後のクロスメンバ55、57と、を備える構成とする。
【0041】
本発明の自走コンベア式作業機11によれば、左右のサイドメンバ51が前後のクロスメンバ55、57によってそれぞれ連結され、前後のクロスメンバ55、57の間に前後のローラ31、32が配置されることにより、前後のローラ31、32を介してベルト30を支持する本体フレーム50の剛性が向上する。
【0042】
これにより、ベルト30を循環させるときに生じる前後のローラ31、32の振動や走行装置12からの振動を低減させることができる。この結果、自走コンベア式作業機11の寿命を延長することができる。
【0043】
本実施形態では、前のローラ31に掛け回されているベルト30の部分を前端折り返し部30aとしたときに、前端折り返し部30aと前のクロスメンバ55との間には、ベルト30に積載された搬送物を通過させる排出空間45が画成される構成とした。
【0044】
上記構成に基づき、ベルト30を循環させることにより、ベルト30上に投下された搬送物(収集物)を排出空間45を通してごみピット1へと排出することが可能となり、搬送物を前のクロスメンバ55に干渉することなく排出できる。
【0045】
また、排出空間45に面するサイドメンバ延長部51aに排出空間45を通るゴミの通過を検出する各種センサを取り付けてもよい。これにより、ゴミの排出の有無や、ゴミの排出量をカウントすることができる。
【0046】
以下、
図3〜5のそれぞれに示す他の実施形態
及び参考例を順に説明する。これらは
図1、2の実施形態と基本的に同じ構成を有し、相違する部分のみを説明する。なお、前記実施形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0047】
まず、
図3に示す他の実施形態を説明する。
図3の(a)は、本体フレーム50の概略構成を示す平面図であり、(b)は、本体フレーム50の概略構成を示す側面図である。
【0048】
自走コンベア式作業機11は、本体フレーム50上に連結される補強フレーム60を備える。この補強フレーム60は、ベルト30をまたぐようにして左右のサイドメンバ51に掛け渡され、本体フレーム50の剛性を高めるものである。
【0049】
やぐら型の補強フレーム60は、左右のサイドメンバ51上に立設される前後のポスト61、62と、前後のポスト61、62の間に略直交して掛け渡される左右のビーム63と、前のポスト61どうしの間に略直交して掛け渡される前のビーム67と、後のポスト62どうしの間に略直交して掛け渡される後のビーム66と、前後のポスト61、62とビーム63に渡って斜めに掛け渡されるステー64、65と、前後のポスト61、62とビーム67、66に渡って斜めに掛け渡されるステー(図示せず)とを備える。補強フレーム60は、これらのステー64、65等を介してその剛性が高められる。
【0050】
前後のポスト61、62は、略垂直方向(Z軸方向)に延び、左右のサイドメンバ51に対する連結部(下端)が走行フレーム52の前後に位置するように設けられる。
【0051】
本実施形態では、本体フレーム50は、左右のサイドメンバ51に掛け渡される補強フレーム60を備える構成とした。
【0052】
上記構成に基づき、本体フレーム50は、左右のサイドメンバ51に渡って補強フレーム60が連結されることにより、前後のローラ31及び走行装置12から受ける荷重に対する剛性が更に高められる。補強フレーム60が左右のサイドメンバ51に掛け渡されることにより、循環するベルト30によって搬送される搬送物に補強フレーム60が干渉しないようにすることと、ベルト30に対する支持剛性が十分に確保されることとが両立される。
【0053】
次に
図4に示す
参考例を説明する。
図4の(a)は、本体フレーム50の概略構成を示す平面図であり、(b)は、本体フレーム50の概略構成を示す側面図である。
【0054】
自走コンベア式作業機11は、本体フレーム50上に連結される滑り板70を備える。この滑り板70は、ベルト30によって運ばれる搬送物を滑らせてごみピット1へと落下させるものである。
【0055】
滑り板70は、略矩形の平板状に形成され、左右のサイドメンバ延長部51aと前のクロスメンバ55に渡って取り付けられる。なお、これに限らず、滑り板70は、前のクロスメンバ55に一体的に形成される構成としてもよい。
【0056】
滑り板70は、その後端部70bよりその前端部70aが低くなるように傾斜し、その後端部70bがベルト30の前端折り返し部30aにわずかな間隙をもって対峙している。
【0057】
これにより、ベルト30が循環してベルト30上の搬送物がベルト30の前端折り返し部30aへと運ばれると、その大部分が
図4の(a)(b)に矢印で示すように滑り板70上を滑ってベルト30の前方へと落下し、下方のごみピット1へと排出される。
【0058】
本参考例では、前のローラ31に掛け回されているベルト30の部分を前端折り返し部30aとしたときに、一端が前端折り返し部30aに隣接し、他端が前端折り返し部30aよりも下方に傾斜する滑り板70を備える構成とした。
【0059】
上記構成に基づき、ベルト30によって搬送される搬送物が滑り板70の上を滑って落下し、前のクロスメンバ55に干渉することなく排出される。これにより、前のクロスメンバ55をベルト30の前端折り返し部30aに近づけて配置することが可能となり、自走コンベア式作業機11の前後方向の長さを短縮するとともに、本体フレーム50の前のローラ31から受ける荷重に対する剛性を有効に高められる。
【0060】
次に
図5に示す
参考例を説明する。
図5の(a)は、本体フレーム80の概略構成を示す平面図であり、(b)は、本体フレーム80の概略構成を示す側面図である。
【0061】
本体フレーム80は、前記各実施形態と同様に、ベルト30の左右端に沿って前後方向(X軸方向)に延びる左右のサイドメンバ81と、このサイドメンバ81に直交する左右方向(Y軸方向)に延びて左右のサイドメンバ81に渡って掛け渡される前後のクロスメンバ85、87と、左右の走行装置12を支持する左右の走行フレーム82とを備える。
【0062】
自走コンベア式作業機11は、前のクロスメンバ85が前のローラ31の下方に配置され、ベルト30によって搬送される搬送物がベルト30の前端折り返し部30aから下方へと落下させるものである。
【0063】
左右のサイドメンバ81の前端部には、前のローラ31を支持するローラシャフト41の連結部より下方(Z軸方向)に曲折して延びるサイドメンバ延長部81aが形成される。
【0064】
前のクロスメンバ85は、左右のサイドメンバ延長部81aの下端に渡って掛け渡され、前のローラ31の下方に配置される。
【0065】
これにより、ベルト30が循環してベルト30上の搬送物がベルト30の前端折り返し部30aへと搬送されると、搬送物は
図5の(a)(b)に矢印で示すように前端折り返し部30aから前のクロスメンバ85の前方を通って落下し、下方のごみピットへと排出される。
【0066】
なお、これに限らず、自走コンベア式作業機11は、前のクロスメンバ85が前のローラ31の上方に配置される構成としてもよい。この場合には、左右のサイドメンバ81の前端部には、前のローラ31を支持するローラシャフト41の連結部より上方(Z軸方向)に曲折して延びるサイドメンバ延長部が形成される。前のクロスメンバ85は、ベルト30から上方に十分な高さを持って設けられ、ベルト30の搬送物の搬送の邪魔にならないようにする。
【0067】
本参考例では、左右のサイドメンバ81の前端部には、上方または下方に曲折して延びるサイドメンバ延長部(81a)が形成され、前のクロスメンバ85は左右のサイドメンバ延長部(81a)どうしを連結する構成とした。
【0068】
上記構成に基づき、ベルト30によって搬送される搬送物が前のクロスメンバ85に干渉することなく排出される。これにより、前のクロスメンバ85をベルト30の前端折り返し部30aに近づけて配置することが可能となり、自走コンベア式作業機11の前後方向の長さを短縮するとともに、本体フレーム80の前のローラ31から受ける荷重に対する剛性を有効に高められる。
【0069】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。