(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建設地において前記浴室を完成させる工程で、前記仕上材を取り付ける前に前記下地壁と防水パンとの隙間を閉塞する水切部材を設けることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の浴室の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜11を参照しながら、本実施の形態の浴室用の建物ユニットおよび浴室の形成方法について説明する。
【0011】
図1にユニット建物を示す。なお、
図1では便宜的に浴室用の建物ユニット2のフレームのみを示している。
【0012】
ユニット建物1は、建設地で浴室用の建物ユニット2とその他の建物ユニットを互いに接合して構築されるものである。浴室用の建物ユニット2は、建設地においてタイル等の仕上材が取り付けていない状態で接合され、その後に仕上材が取り付けられて浴室4が完成される。
【0013】
浴室用の建物ユニット2は、他の建物ユニットと接合されることで安定性を増し、浴室用の建物ユニット2単体よりも変形しにくいものとなる。
【0014】
図2に工場から建設地へ搬送される段階の浴室用の建物ユニット2を示す。なお、
図2では、理解の便宜のために建設地で取り付けられる仕上材としてのタイル3が2点鎖線で示されている。
【0015】
浴室用の建物ユニット2は、主として天井梁2A、床梁2B及び柱2Cからなるフレームと、この床梁2Bの枠内を閉塞するように設けられた床板5と、形成すべき浴室4の壁の一部をなし天井梁2A、床梁2B又は柱2Cに固定される下地壁6と、浴室4の床をなす防水パン7と、下地壁6と防水パン7との境目の隙間12(
図7参照)からの水漏れを防止するための水切部材8A、8Bと、防水パン7の排水口7Cに取り付けられた排水用のトラップ11Aおよびエルボ11B(
図5参照)等とを有している。
【0016】
浴室用の建物ユニット2のフレームは、軽量鉄骨の天井梁2A、床梁2B及び柱2Cが互いに溶接され箱形に形成されている。この床梁2Bには床小梁2Baが横断方向に複数掛け渡されている(
図3、
図4参照)。
【0017】
床板5は床梁2Bの枠内に嵌合され、複数の床小梁2Baにより支持されている。この床板5は例えば脱衣所の床部となる。また、建設地へ搬送する前に床板5を取り付けるのは、浴室4の出入口4aや下地壁6を設けるために、床板5と防水パン7との接続部分4bを予め形成しておく必要があることによる(
図10参照)。
【0018】
下地壁6は、浴室用の仕上材が貼り付けられて浴室4の壁面を形成するものである。下地壁6は浴室用の建物ユニット2に柱2Cやその間柱2Caに固定される(
図11(a)参照)。なお、浴室4の出入口4aの部分には下地壁6が設けられない構成となっている(
図11(b)参照)。
【0019】
下地壁6の材質としては、セメントモルタル、セメント系珪酸カルシウム板、石膏ボード、パーティクルボード、合板、硝子繊維で強化した熱硬化性樹脂層等を単独、もしくは適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
そして、
図3および
図4、
図6に示すように、下地壁6により囲われた状態で、まず防水パン7が設けられる。防水パン7は、
図5に示すように、防水パン本体7Aと防水パン本体7Aを支える複数の脚部7Bとを有し、防水パン本体7Aには排水口7Cが設けられている。
【0021】
防水パン7の脚部7Bは、
図4に示すように、防水パン設置床板15を介して浴室用の建物ユニット2の床小梁2Baに対して固定されている。この防水パン設置用床板15自体も建物ユニット2の床梁2Bや柱2Cに固定されており、これにより防水パン7の脚部7Bの横方向の位置ズレが防止される。この脚部7Bの固定により防水パン7が浴室用の建物ユニット2に固定されることとなる。
【0022】
この状態で、防水パン本体7Aの床面7Aaは、床板5の表面5aの高さ位置より低いものとなる。またこの固定の際に、防水パン7の傾斜調整を行うことができる。
【0023】
図4に示すように、防水パン本体7Aの排水口7Cには、排水部材としての排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bが接続されている。また、防水パン設置用床板15に形成された切欠から排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bが露出している。
【0024】
また、この状態で、排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bは、浴室用の建物ユニット2の内側に収まった状態となっている。これにより、浴室用の建物ユニット2から排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bが突出せず、搬送の際に引っかけ等による破損を防止することができる。
【0025】
一般的な防水パン7としては、防水パン7の縁部に浴室用面材としての壁パネルをはめ込み接続するための断面凹字状の嵌合部をフランジのように有しているものが知られているが、本実施の形態の防水パン7はこの嵌合部を有していない。これは、壁パネルの代わりにタイル3等の仕上材を下地壁6に貼り付けて面材として用いるためである。
【0026】
そのため、防水パン7が設けられた状態で防水パン7と下地壁6との間に隙間12が形成される。この状態のままでは、この隙間12から漏水してしまうこととなるため、隙間12を埋めるための水密材8Cや水切部材8A,8Bが設けられる。
【0027】
水密材8Cは、
図7,
図9及び
図10に示すように、上記の隙間12に設けられる。水密材8Cとしては、エプトシーラー等を用いることができる。
【0028】
水切部材8A,8Bは、下地壁6と防水パン7との境目の隙間12をシールして漏水を防止するためのものである。
【0029】
水切部材は、
図7〜
図9に示すように、主としてL字形で複数の板部を有する水切部材8Bと、I字形で複数の板部を有する水切部材8Aにより構成される。水切部材8A,8Bは、長尺方向の縁部で互いに接続された複数の板部8Aa,8Ab,8Acを有している。
【0030】
水切部材8Aにより防水パン7の各辺部における下地壁6との隙間12からの漏水が防止され、水切部材8Bにより防水パン7の各角部における下地壁6との隙間12からの漏水が防止される。
【0031】
図7は、水切部材8A,8Bの下地壁6および防水パン7への取り付ける手順を示している。
【0032】
図7及び
図9に示すように、略板状の水切部材8A,・・・・により下地壁6と防水パン7と隙間12を覆うように両者に掛け渡して両者間の隙間12をシールする。
【0033】
次に、
図8に示すように、防水パン7の角部で交差するように突き合わされた水切部材8A,8Aの一方の端部と他方の端部を覆うようにL字形の水切部材8Bが設けられる。
【0034】
これにより、水切部材8A,8Aの端部において形成されるわずかな隙間がシールされることとなる。また、板部8Aaと板部8Abの接続部分や板部8Baと板部8Bbの接続部分の各角部が下地壁6に近接配置される。そして、釘10等の固定部材により略板状の水切部材8A,8Bを下地壁6と防水パン7とにそれぞれ固定される。
【0035】
一方、浴室4の出入口4aにおける取合構造については、
図10及び
図11に示すように、床板5の面や防水パン7の縁部の内面と面一となるように折戸13が設けられ、この部分の隙間12がシールされる。
【0036】
そして、この状態の浴室用の建物ユニット2が、包装されてトラック等の荷台に積み込みされて、建設地に搬送される。
【0037】
建設地に搬送された浴室用の建物ユニット2は、ユニット建物1の基礎コンクリート(図示省略)に固定され、他の建物ユニットと接合され、ユニット建物1が構築される(
図1参照)。
【0038】
次に、建設地において、
図2において2点鎖線で示すようにタイル3等の仕上材を貼り付けていく。
【0039】
具体的には、
図9において2点鎖線で示すように、水切部材8A,8Bの板部8Aa,8Baを下地壁6との間に挟み込むようにタイル3を配置した後、タイル3が下地壁6に対してセメントモルタルや接着剤等の固着剤14により接着する。
【0040】
このとき、水切部材8A,8Bの部分のうち、少なくとも一部が浴室4の内側に露出するようにタイル3が設けられる。タイル3の設置後、任意に別体のバスタブ等を防水パン7に対して設ける等、その他の部分を施工して浴室4を完成させる。
【0041】
以下、本発明に係る実施の形態の浴室用の建物ユニット2および浴室の形成方法の作用、効果を説明する。
(1)上述のような構成によれば、工場から建設地へ搬送した後に下地壁6に対して仕上材を取り付けるので、ユニット建物1における浴室の仕様について顧客の様々な趣向ニーズに個別具体的に対応することができる。一般の浴室用の建物ユニットにあるように規格化された浴室の仕様に拘泥されずに、顧客の意思に従って浴室壁面の形態を自由に変化させることができる。
【0042】
例えば、実際の浴室内への光の差し込み具合で仕上材の色彩がカタログ等で見た色合いと異なっても調整することができる。
(2)タイル3等の仕上材による仕上作業は時間を要し、また工場では建物ユニットを移動させながら作業することとなるため、工場での製造には適していない。この仕上作業を建設地で行うことにより、工場でこれらの仕上作業をする必要がなくなり、工場での作業効率が高まる。
(3)工場で予めタイル3等の仕上材を浴室用の建物ユニットに取り付けてしまうと、建物ユニットを建設地へ搬送している際の振動等により、タイル3等の仕上材やその接着部分に微細な亀裂等が生じて仕上材の取付状態がダメージを受けるおそれがある。
【0043】
これは、タイルの場合では後にタイル等が剥落する原因となり得る。またサイディングの場合には、シーリングの劣化につながる。本発明に係る実施の形態によれば、タイル3等の仕上材を浴室用の建設地で後に取り付けるので、このような問題が生じることはない。
(4)さらに、浴室4の仕上作業を浴室用の建物ユニット2をその他の建物ユニットに接合して構造的に安定させた状態で行うことから、浴室用の建物ユニット2単体の状態で仕上作業を行う場合のように歪みが生じにくく、これによっても、一度取り付けた仕上材の取付状態がダメージを受けにくいものとなる。
(5)一般的なバスコアユニットでは、壁パネルの端部が防水パンの縁部に設けられたパネル設置用の嵌合部に圧入されて、防水パンと略面一に連続した状態で壁パネルが取り付けられるが、本実施の形態では、タイル3等の仕上材を壁パネルの代わりに用いることから、仕上材と防水パン7との間に隙間12が形成されるため上記連続接続ができず、この隙間12からの漏水が問題となる。
【0044】
ここで、防水パン7と下地壁6との隙間12にエプトシーラー等の水密材8Cや水切部材8A,8Bを設けることで、漏水の防止がなされ、建物ユニットでもタイル3等の仕上材を用いることが可能となる上に、水切部材8A,8Bが仕上材の支持部材として機能する。
(6)また、一度設置した浴室4の模様替え等をする際には仕上材を剥がすこととなるが、仕上材がタイル3等のように、ある程度の硬さを有するものの場合、
図9に示すように、水切部材8Aの端部がタイル3の裏側の下地壁6とタイル3との間に配置された状態で取り付けられていることから、この水切部材8A,8Bを用いてテコの原理でタイル3を簡単に剥がすことができる。
(7)防水パン7に接続した排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bが浴室用の建物ユニット2の内側に収まった状態となっていることにより、浴室用の建物ユニット2から排水用のトラップ11Aおよびエルボ11Bが突出せず、包装や搬送の際に引っかけ等による破損を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の浴室用の建物ユニット2および浴室の形成方法を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これに限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0046】
例えば、タイル3の施工方法については、湿式でも乾式でもとちらでもよい。
【0047】
また、実施の形態では天井梁2A、床梁2B又は柱2Cを有している建物ユニットを用いたが、天井梁2A、床梁2B又は柱2Cを有していないものを用いてもよい。
【0048】
設置直後の防水パン7は略タイル厚の分だけ下地壁6の内側面から離間している必要があるため、防水パン7を設置する際には位置決めされている必要があるが、この位置決めに防水パン設置用床板を用いても良い。
【0049】
この場合、例えば、防水パン設置用床板に基点目印と脚部設置用目印を設け、基点目印を指標に防水パン設置用床板を床小梁の所定位置に固定するとともに、固定した防水パン設置用床板15に防水パンの脚部を固定する。