(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォーマとその外周に設けられる超電導層と該超電導層の外周に形成される電気絶縁層とを有する超電導ケーブルであって、前記超電導層が複数本の超電導線材をフォーマの外周に螺旋状に巻き付けた構造であり、前記フォーマが抵抗皮膜で被覆された常電導材料からなる金属線を複数本撚り合わせた構造であり、前記抵抗皮膜の体積抵抗率の値が前記金属線の体積抵抗率の値の104倍以上であり、かつ、この抵抗皮膜の体積抵抗率値が109Ω・cm以下であることを特徴とする超電導ケーブル。
前記電気絶縁層の外周に設けられる超電導シールド層と、該超電導シールド層の外周に設けられる金属製のシールド層とを更に具備してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超電導ケーブルの横断面図。
【
図2】
図1に示す超電導ケーブルに組み込まれている酸化物超電導積層体の概略断面図。
【
図3】
図2に示す酸化物超電導積層体の層構造を詳細に示す構成図。
【
図4】
図1に示す超電導ケーブルに組み込まれているフォーマの撚線構造を示す横断面図。
【
図6】同フォーマとそれに作用する軸方向磁界の説明図。
【
図7】円柱状の導体からなるフォーマの場合の渦電流を説明するための説明図。
【
図8】絶縁被覆された撚線構造のフォーマの渦電流を示すための説明図であり、
図8(a)はフォーマ全体の説明図、
図9(b)はフォーマの撚線を構成する素線を流れる渦電流を示す説明図。
【
図9】抵抗皮膜撚線構造のフォーマを示す説明図であり、
図9(a)はフォーマ全体の説明図、
図9(b)はフォーマを構成する撚線の層に沿って配置された個々の素線を流れる渦電流を示す説明図、
図9(c)はフォーマの中心に配置された素線を流れる渦電流を示す説明図。
【
図10】円柱導体の場合の渦電流損計算モデルを説明するための断面図。
【
図11】抵抗皮膜を備えた金属線の撚線構造となるフォーマの渦電流について示す説明図であり、
図11(a)はフォーマ全体の説明図、
図11(b)はフォーマを構成する層に沿って配置された素線を流れる渦電流を示す説明図、
図11(c)はフォーマの中心に配置された素線を流れる渦電流を示す説明図。
【
図12】抵抗皮膜を備えた金属線の撚線構造となるフォーマの抵抗について示すための説明図であり、
図12(a)はフォーマの撚線構造を構成する素線の配列を示す横断面図、
図12(b)は
図12(a)に示す素線の部分拡大図、
図12(c)は同フォーマを構成する素線の抵抗皮膜部分の拡大図。
【
図13】抵抗皮膜を備えた金属線の撚線構造となるフォーマにおける等価抵抗Reの考え方を示す説明図。
【
図14】等価体積抵抗率と撚線金属の体積抵抗率と抵抗皮膜の体積抵抗率の関係を求めるための楕円関数の等角写像における原配置を示す説明図であり、
図14(a)は同楕円関数を求めるための原配置を示す説明図、
図14(b)は同フォーマの径方向に隣接する金属線の接触状態を示す説明図。
【
図15】等価体積抵抗率と撚線金属の体積抵抗率と抵抗皮膜の体積抵抗率の関係を求めるための楕円関数の等角写像を示す説明図であり、
図15(a)は同楕円関数を求めるための正規化した計算上の原座標のw面を示す説明図、
図15(b)はz面を示す説明図。
【
図16】等価体積抵抗率と撚線金属の体積抵抗率と抵抗皮膜の体積抵抗率の関係を求めるための楕円関数の等角写像を示す説明図であり、
図16(a)はZ面を示す説明図、
図16(b)はW面を示す説明図。
【
図17】隣接する素線の接触長の中心角が5゜の場合の絶縁被覆撚線と抵抗皮膜撚線における皮膜抵抗率の撚線金属線抵抗率に対する比率を示すグラフ。
【
図18】隣接する素線の接触長の中心角が10゜の場合の絶縁被覆撚線と抵抗皮膜撚線における皮膜抵抗率の撚線金属線抵抗率に対する比率を示すグラフ。
【
図19】隣接する素線の接触長の中心角が15゜の場合の絶縁被覆撚線と抵抗皮膜撚線における皮膜抵抗率の撚線金属線抵抗率に対する比率を示すグラフ。
【
図20】従来の超電導ケーブルの一例構造を示す部分断面略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る超電導ケーブルの第1実施形態について図面に基づいて説明するが、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
図1に示すように本実施形態の超電導ケーブルAは、中心部に配置された撚線構造のフォーマ1と、その外周側に順次被覆された高温超電導層(高温超電導線材)2と電気絶縁層3と超電導シールド層4と銅などの良導電性金属材料からなるシールド層5とを備えて構成されている。
本実施形態の超電導ケーブルAにおいて、フォーマ1は、銅などの良導電性金属材料からなる金属線6に対し抵抗皮膜として例えば酸化第二銅からなる抵抗皮膜7で被覆した構造の素線8を複数本、所定のピッチで撚線化した構造とされている。
本実施形態において適用される抵抗皮膜7は、体積抵抗率(ρf)が10
9Ω・cm以下、例えば10
4Ω・cm以上、10
6Ω・cm以下の半導電領域の範囲とされる。
ここで例示する酸化第二銅は、黒色を呈するので、エナメル被覆などのように銅色に近い色とは異なり、抵抗皮膜7が存在するか否かを識別しやすい特徴がある。
前記抵抗皮膜7が金属線6の酸化皮膜であるならば、エナメル被覆がその下地の金属との接着構造であるのに対し、抵抗皮膜7と金属線6との接合は金属結合となり強固で剥離し難く、素線8の曲げや膨張収縮時の機械的強度に優れる利点を有する。また、酸化第二銅は融点1148℃であり、酸化第二銅の抵抗皮膜7は耐熱性に優れており、フォーマ1の同径接続は溶接接続方式をそのまま適用できる。また、素線8の外径は0.5mm〜3.0mmの範囲を選択できる。
【0013】
酸化第二銅の抵抗皮膜7の膜厚は、0.5μm以上、1.5μm以下の範囲とする。
抵抗皮膜7の抵抗値が半導電領域であるので、フォーマ1とその上の高温超電導層2の間にそのまま適用できる効果があり、超電導ケーブルAのフォーマ1を構成する抵抗皮膜7として望ましい。以上説明の抵抗皮膜7は絶縁皮膜ではなく、抵抗値が半導電領域の皮膜であり、かつ、薄いので、以下の特長を有する。
例えば、フォーマ1のスリーブ圧縮接続時に抵抗皮膜7を除去すること無くそのままスリーブ接続を圧縮接続できる。また、撚線構造のフォーマの抵抗皮膜7を除去することを想定した場合、フォーマの素線間を大きく広げてサンドブラスト等の手法で抵抗皮膜7を除去する必要がある。この際、口出し端部の近傍に存在する高温超電導層2を構成する高温超電導線材に機械的損傷を与えるおそれがある。高温超電導層2を構成する高温超電導線材は機械的歪に非常に敏感である。更に、接続時のフォーマ1の口出し長が長くなる欠点がある。従って、抵抗皮膜7をそのままにしてスリーブ圧着ができるならば、これらの懸念を解消できる。なお、抵抗皮膜7の体積抵抗率が10
9Ω・cm以下、例えば10
4Ω・cm以上、10
6Ω・cm以下の半導電領域の範囲とされているので、超電導ケーブルAと他の常電導部品との接続の面には支障がない。
【0014】
前記フォーマ1の外周に螺旋状に巻回されているテープ状の高温超電導線材10により酸化物超電導層2が形成されている。
本実施形態では、このテープ状の高温超電導線材10の一つの例として、
図2に示す構造を適用することができる。
図2に示す高温超電導線材10は、RE123系酸化物超電導体(REBa
2Cu
3O
7−X:REはYを含む希土類元素)を適用した線材構造の一例であり、本実施形態ではこの例を元に以下に説明するが、高温超電導線材10の構造自体は後述する他の系の高温超電導体を用いた構造であっても良いのは勿論である。
図2に示す高温超電導線材10は、一例として、基材11の上に下地層12、配向性中間層15、キャップ層16、酸化物超電導層17、第一の安定化層18が積層され、それらの外周を絶縁被覆層20で被覆した構造とされている。なお、
図2に示す高温超電導線材10は厚みを誇張して示しているが、一般的なRE123系の高温超電導線材10の縦横比として、幅10mm程度、厚さ0.5mm程度であるので、フォーマ1の周囲に必要な巻数で巻き付けることで酸化物超電導層2を形成できる。
【0015】
本実施形態の高温超電導線材10に適用できる基材11は、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材11の厚さは、通常は、10〜500μmである。
下地層12は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。その厚さは例えば10〜200nmである。本発明において、基材11と下地層12との間に拡散防止層が介在された構造としても良い。その厚さは例えば10〜400nmである。基材11と下地層12との間に拡散防止層を介在させる場合の例としては、拡散防止層としてAl
2O
3、下地層12としてY
2O
3を例示できる。
【0016】
配向性中間層15は2軸配向する物質から選択される。配向性中間層15の好ましい材質として具体的には、Gd
2Zr
2O
7、MgO等の金属酸化物を例示できる。
この配向性中間層15をイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する酸化物超電導層17の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できるようにすることができる。
【0017】
配向性中間層15の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.005〜2μmの範囲とすることができる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層17やキャップ層16の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、下地の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、Gd
2Zr
2O
7、MgO又はZrO
2−Y
2O
3(YSZ)からなる中間層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできる。
【0018】
キャップ層16は、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層16は、前記金属酸化物層からなる配向性中間層15よりも高い面内配向度が得られる。キャップ層16の一例としてCeO
2を選択できる。一例として、PLD法によりキャップ層16としてCeO
2層を成膜するには、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
キャップ層16の膜厚は、50nm以上であればよいが、500〜1000nmとすることが好ましい。
【0019】
酸化物超電導層17は公知のもので良く、具体的には、REBa
2Cu
3O
7−x(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のものを例示できる。この酸化物超電導層17として、Y123(YBa
2Cu
3O
7−X)又はGd123(GdBa
2Cu
3O
7−X)などを例示できる。酸化物超電導層17の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。なお、酸化物超電導層17については後述する他の組成系の高温超電導層を用いても良い。
【0020】
キャップ層16上に酸化物超電導層17を形成すると、酸化物超電導層17を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材11の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材11の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向する。従って得られた酸化物超電導層17は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材11の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
【0021】
酸化物超電導層17の上に積層されている第一の安定化層18はAgあるいは貴金属などの良電導性かつ酸化物超電導層17と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる層として形成される。Agの安定化層18の厚さを1〜30μm程度に形成できる。第一の安定化層17の上には必要に応じて第二の安定化層19を
図3に示すように設けてもよい。
図3は
図2に示す酸化物超電導線材に対し、第二の安定化層19を設けた場合の積層構造の一例を示す図である。
この第二の安定化層19は、良導電性の金属材料からなることが好ましく、酸化物超電導層17が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、第一の安定化層18とともに、酸化物超電導層17の電流が転流するバイパスとして機能する。第二の安定化層19は、銅、黄銅(Cu−Zn合金)等の銅合金等の比較的安価なものを用いるのが好ましい。第二の安定化層19の厚さは10〜300μmとすることができる。
【0022】
以上構成のテープ状の高温超電導線材10の外周面は、一例として、エポキシ系樹脂などのプレプリグ層あるいはポリイミドテープやFRP(繊維強化プラスチック)テープなどからなる絶縁被覆層20で覆われている。
【0023】
ところで、これまで説明した構造においては、基材11の上方に配向性中間層15を介しREBa
2Cu
3O
7−xなる組成系の酸化物超電導層17を設けた構造の高温超電導線材10を用いた例について説明したが、本発明をビスマス系超電導線材(Bi
2Sr
2CaCu
2O
8+δ:Bi2212、Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10+δ:Bi2223)について適用できるのは勿論である。
ビスマス系超電導線材の構造はAgなどのテープ状の安定化材からなるシースの内部にビスマス系酸化物超電導層を内包した酸化物超電導線材が主体であるので、このテープ状のビスマス系の酸化物超電導線材を先の高温超電導線材10の代わりに用いることでビスマス系の酸化物超電導線材を用いた高温超電導ケーブルに本発明を適用することができる。
また、本発明で用いる高温超電導線材に適用される超電導層は、RE123系やビスマス系に限らず、他の高温超電導材料からなるものでも良い。例えば、タリウム系(Tl
2Ba
2Ca
2Cu
3O
x)酸化物超電導体あるいはMgB
2超電導体などを層構造として安定化層や基材に積層した構造であっても良い。
【0024】
次に本実施形態に係る抵抗皮膜7を備えた素線8の集合体であるフォーマ1の構造について検討する。
図4はフォーマ20の横断面モデル図であり、このフォーマ20においては1本の素線21を中心にその周囲に6本の素線21を等間隔で配置し、更にそれらの周囲に12本の素線21を等間隔で配置し、更にそれらの周囲に18本の素線21を配置した例として示している。
図4に示すフォーマ20においては、フォーマ20を構成する同一層位置にある素線21の隣接する素線21どうしの接触角度ψ
kを
図5のように仮定することができ、以下にフォーマの構造を種々考慮しつつ説明する。
【0025】
図6に示すように撚線構造のフォーマ22を想定した場合フォーマ22には軸方向(長さ方向)磁界がかかることになる。この磁界は、その上に螺旋状に巻き付けた超電導線材と超電導シールド層に流れる電流により発生する。この磁界はフォーマ22の半径方向に均一である(コイルの内部磁界と同様)。まず、
図7に示すようにフォーマ23が円柱導体と仮定すると、渦電流は
図7に示すように導体断面円周方向に流れる。また、
図8に示すようにフォーマ24が個々に絶縁被覆された素線25の集合体であると仮定すると、渦電流は各素線25の横断面円周方向に流れる。なお、
図7以降の各図に示す渦電流の流れを示す矢印は、説明の簡易化のために示した電流線のイメージである。
これらに対し、絶縁被覆された素線ではなく、
図9に示すように抵抗皮膜26により抵抗被覆された素線27の集合体であるフォーマ28の場合、中心の素線27に生じる渦電流とその他の各層の円周方向より線間を流れる電流とに分けて考えられる。
【0026】
「1」円柱導体の場合の渦電流損の計算
まず、基本となる円柱導体の渦電流損を計算する。
図10に円柱導体からなるフォーマ30の場合を考える。
図10のフォーマ30において単位長あたりの損失を考える。
図10において斜線部30aの円環領域の円周方向の抵抗dRは以下の(1)式で示される。
【0028】
円環領域のジュール損dWは以下の(2)式となる。
【0030】
円環領域に鎖交する磁束Φは以下の(3)式となる。
【0032】
軸方向磁界は以下の(4)式で示される。(4)式において、He
jωtは大きさHの交番磁界、μ
0は真空の透磁率を示す。
【0034】
よって、両者の微分の絶対値、|dΦ/dt|は以下の(5)式となる。(5)式において、rは円環領域30aの内径、ωは電場の振動数、μ
0は真空の透磁率を示し、Hは交番磁界の大きさを示す。
【0036】
(5)式から上述の(2)式は以下の(6)式となり、この(6)式から(7)式の関係を導出できる。Dは円柱導体としてのフォーマ30の直径を示す。
【0039】
「2」絶縁被覆撚線からなるフォーマの渦電流損計算
図8にモデル構造を示す絶縁被覆した素線25からなるフォーマ24の場合、絶縁被覆撚線を構成する素線25の1本当たりの渦電流損は、(7)式で直径D→d(素線1本の直径)に置き換えれば良い。撚線の総本数をn本とすれば、総渦電流損W
1は、以下の(8)式から求められる。また、(9)式の関係がある。
【0042】
「3」抵抗皮膜撚線構造のフォーマの渦電流損
図11に示すように抵抗皮膜を備えた素線33が撚線構造とされたフォーマ35の渦電流損については、中心の素線33と各層を構成する素線33のフォーマ円周方向の素線33間を流れる電流とに分けて考える。
フォーマ35の中心に配置されている素線33の1本(k=1層とする)の素線内渦電流損w
1は前述の(8)式、(9)式から、以下の(10)式の関係となる。
【0044】
図11に示すフォーマ35における各層の円周方向電流は、電流通路が隣接撚線(隣接素線)の接触部で制限され、かつ、抵抗皮膜による抵抗増加があるので、先の(7)式において、円柱導体の体積抵抗率ρcに代わって等価体積抵抗率ρ
ekを考えると、各層(第k層)の渦電流損w
kは以下の(11)式で示される。
【0046】
(10)式と(11)式より、フォーマ35全体の総渦電流損失W
2は、以下の(12)式で示される。(12)式において、素線33の径が各層全てdψのとき、即ち、
(13)式、(14)式、(15)式の時、以下の(16)式が成立する。
【0052】
次に、上述の(12)式、(16)式において最も重要なパラメータである各層の等価体積抵抗ρ
ekを求める。
図12(a)は
図4、
図5と同様に撚線を構成する素線21間の接触角度を想定するための図であり、この図を拡大して抵抗皮膜21aを描いて隣接する素線21間の電流の流れを模式化したものが
図12(b)であり、更に左右に隣接する素線21とその間の接触領域に介在する抵抗皮膜21a、21a間の抵抗の関係を
図12(c)に示す。
図12は素線21の集合体であるフォーマ20において、中心の素線21を除いてその外周に存在する周回りの素線21について接触抵抗等を想定する場合の模式図に相当する。
また、
図13に
図12(b)と同様にフォーマ20において中心の素線21を除いてその周回りに存在する素線21間の等価抵抗R
eの考え方を示す。
図12に示す関係において、(17)式、(18)式、(19)式、(20)式が成立する。
【0057】
ただし、各式において、R
e:抵抗皮膜21aを備えた素線21の単位長当たりの等価抵抗、R
c:素線21を構成する金属の単位長当たりの集中抵抗、R
f:素線21同士の接触部抵抗皮膜の単位長当たりの抵抗、R
s:抵抗皮膜同士の接触抵抗(この計算では略す)、ρ
c:素線21を構成する金属の体積抵抗率、ρ
f:抵抗皮膜の体積抵抗率、ρ
e:抵抗皮膜を備えた素線21の等価体積抵抗率、d:素線21の直径、t
f:抵抗皮膜の厚さ、l
f:素線の接触長(円周方向)(d/2×θπ/180)、θ:接触長の中心角、ψ
k:隣接素線の接触角度とする。
【0058】
次に、等価体積抵抗率ρ
eと素線を構成する金属の体積抵抗率ρ
c、抵抗皮膜の体積抵抗率ρ
fの関係式を求める。
抵抗皮膜同士の接触抵抗R
sは一律には決められないこと、および、R
s=0とした場合の方が渦電流損を真値より大きく見積もり、設計上は安全側であるから、この計算では無視した。素線21を構成する金属の単位長当たりの集中抵抗R
cについては、以下のように楕円関数(第1種完全楕円積分)を用いた等角写像により求めることができる。
これは、
図14(a)に示すモデルの下で理論的に正確に導出される。
その導出過程を
図14(a)〜(b)、
図15(a)〜(b)、
図16(a)〜(b)に示す。
図14(a)、(b)は正規化した電極と計算上の原座標設定を示し、
図15(a)はw−面(正規化した計算上の原座標)を示し、
図15(b)はz面を示す。
図14(a)は
図14(b)に示すように隣接した複数の素線21において、そのうちの1本の素線21を拡大した断面図に相当し、
図14(a)の左右下側に他の素線21との接触部21bを想定した場合、これら接触部21bを通して流れると想定される電流線21cを複数描いた図である。
図15(a)〜(b)は上半平面への写像、写像関数として、z={(1−w)/(1+w)}i、x=tan(θ/2)を採用する。これらの写像関数に
図15(a)の各点の座標を代入すると、
図15(b)の関係となる。この関係は電磁気学における等角写像による電界解析から導出できる一般式として知られている。
【0059】
図15(b)〜
図16(a)は写像関数は1次関数として、Z=(αz+β)/(γz+δ)を用いた。ただし、α、β、γ、δは定数である。
図16(a)はZ面を示し、
図16(b)はW面を示す。
図16(a)において、(21)式の関係が成立する。上述の写像関数に
図15(b)の座標と
図16(a)の座標を代入して、
図16(a)に示すA点の座標1/k
12を求めると(21)式となる。(21)式において、a、p、q、γは
図15(b)のA、P、Q、R点の座標を示す。
【0061】
図16(a)〜
図16(b)に示すように、(22)式と(23)式が成立する。
この関係において、写像関数:Legendre-Jacobiの第一種楕円積分として、(24)式を利用できる。なお、
図14〜
図16に示す関係の導出過程は、等角写像による二次元抵抗値計算の基本過程に準拠したものとなる。なお、等角写像による二次元抵抗値計算の基本過程は、一例として、電気学会論文誌B(2008年11月号:電力・エネルギー部門誌vol.128,No.11,2008:電子ジャーナル版論文誌公開中、http://www.2.iee.or.jp/ver2/honbu/11-magazine/index050.html参照)に、「楕円関数の電力分野への応用の現状と展望」と題してP1296の
図4に示されている等角写像による二次元抵抗値計算の基本過程を参照できる。
【0065】
第一種完全楕円積分は以下の(25)式、(26)式で示され、これらの式において、k
12:母数、k
1’:補母数として(27)式が成立する。なお、(22)式において、Rcは
図16(b)の長方形の2辺の長さの比を示し、(26)式は補母数k
1’に対する値、(27)式においてk
1:母数、k
1’は補母数を示す。
【0069】
先の(18)式及び(19)式と(23)式より、以下の(28)式と(29)式とが成立する。これらの式において、(30)式と(31)式とする。
【0074】
前述の(10)式と(16)式と(28)式より、導出結果をまとめると以下のように(32)式が成立する。(32)式において、K(k
1k)、K’(k
1k)は第一種完全楕円積分であり、以下の(33)式と(34)式の関係が成立する。
【0078】
また、k
1、k’
1は、それぞれ母数、補母数であるので、以下の(35)式と(36)式と(37)式と(38)式の関係がある。
【0083】
ただし、(35)式〜(38)式において、W
2>W
1の範囲で意味を持つ。
ここで、皮膜を施さない撚線からなるフォーマの場合、渦電流損(W
0:裸素線の場合)における絶縁皮膜を施した場合の渦電流損(W
1:素線絶縁)に対する比率(W
0/W
1)は、先の(32)式において、t
f=0あるいはρ
f=0とおいて、以下の(39)式となる。
【0085】
ここで、以下の絶縁皮膜(エナメル絶縁皮膜)を施した撚線構造のフォーマに対して(32)式から(W
2/W
1)の値を計算する。
フォーマの外径:D=19mm、撚線を構成する1本の素線の直径:d=2.8mm、撚線本数(素線本数):37本、n
1=1本、n
2=6本、n
3=12本、n
4=18本とする。また、t
f:抵抗皮膜の厚さ(1μm、2μm、5μm)、接触長の中心角(5゜、10゜、15゜)とする。正味の導体断面積は227mm
2であり、占積率は約80%となっている。
第k層 線径d(mm) 撚り本数(n
k)
1層目(中心k=1) 2.8 1(n
1)
2層目(中心k=2) 2.8 6(n
2)
3層目(中心k=3) 2.8 12(n
3)
4層目(中心k=4) 2.8 18(n
4) 合計37本
以上の条件において計算した渦電流損と皮膜抵抗率の関係を
図17、
図18、
図19に示す。
【0086】
図17〜
図19において、縦軸は、絶縁皮膜を備えた素線からなる撚線の渦電流損(W
1)に対する抵抗皮膜を備えた素線からなる撚線の渦電流損(W
2)の比率で表し、横軸は、皮膜抵抗率(ρ
f)の撚線金属抵抗率(ρ
c)に対する比率で表している。
図17は素線間の接触長の中心角θが5゜の場合、
図18は素線間の接触長の中心角θが10゜の場合、
図19は素線間の接触長の中心角θが15゜の場合をそれぞれ示している。また、
図17〜
図19に皮膜の厚さ1μm、2μm、5μmのそれぞれの計算結果を示す。
【0087】
一例として、ψ
k=2(90゜−(180゜/n
k))、θ=10゜の場合の計算は以下のようになる。
n
2=6、ψ
2=120゜、k
122=0.01013、K’(k
12)/K(k
12)=2.35、n
3=12、ψ
2=150゜、k
132=0.008142、K’(k
13)/K(k
13)=2.42、n
4=18、ψ
2=160゜、k
142=0.007832、K’(k
14)/K(k
14)=2.42となる。
【0088】
図17〜
図19における計算結果から、ρ
f/ρ
cの値が10
4以上であり、ρfが10
9Ω・cm以下の抵抗皮膜であっても、絶縁皮膜と同等の渦電流損の低減効果があることが分かる。
なお、素線を銅から構成し、素線外周に酸化第二銅の抵抗皮膜を形成した撚線構造のフォーマを用いる場合、ρ
c:0.2×10
−6Ω・cm(−196℃)、ρ
f:1×10
6Ω・cm(−196℃)とすると、ρ
f/ρ
c≧10
4に入ることがわかる。
【0089】
図17〜
図19に示す結果から、ρf/ρcが10
4以上で素線絶縁を施した場合のW
2/W
1=1に近い値となる。酸化第二銅の抵抗皮膜を用いた素線の撚線の場合は、この範囲に入ることが分かる。
なお、接触長の中心角θが5゜未満の場合、素線間の接触部の抵抗値は、接触長の中心角θ≧5゜の場合に比べて大きくなるので、渦電流損失の低減の面から見て有利と考えられる。しかし、実際にフォーマを撚線から構成する場合に撚線を製造する面から見て素線間に加わる力を小さく制御することが難しいため、接触長の中心角θを5゜未満とすることは非現実的である。一方、接触長の中心角θが30゜を超える範囲では、接触長の中心角θ≦30゜の範囲と比較して撚線間の接触部の抵抗値は小さくなるので、渦電流損は増大することになり不利となる。これらのことを考慮すると、接触長の中心角θは5゜以上、30゜以下の範囲とする必要がある。
なお、接触長の中心角については、フォーマを切断してその横断面を拡大観察することで計測することができる。