(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1及び2に開示の潜熱熱交換器では、吸熱管820,920の上流端及び下流端は、一方側壁814,914のみと接続されているから、ケーシング内の他方側壁815,913側には、吸熱管820,920の円弧状折り返し部が配設される。そのため、他方側壁815,913の内面と他方側壁815,913側の円弧状折り返し部との間には一定の空間が形成されてしまう。特に、他方側壁815,913側の円弧状折り返し部はケーシングに固定されないため、給湯装置の運転時にケーシング内を通過する燃焼排気によって吸熱管820,920が振動する。それゆえ、円弧状折り返し部が他方側壁815,913の内面に当接するまで延設していると、吸熱管820,920がケーシングを振動させ騒音が発生しやすい。従って、上記のような潜熱熱交換器では、円弧状折り返し部が他方側壁815,913から一定の距離、離間するように、吸熱管820,920をケーシング内に配設する必要がある。このため、他方側壁815,913の内面と他方側壁815,913側の円弧状折り返し部との間の空間における燃焼排気の排気抵抗は、吸熱管820,920が配設されているケーシングの内方の領域のそれに比べて低くなり、ケーシング内で燃焼排気が該空間に流れやすくなる。その結果、燃焼排気の一部が熱交換に寄与することなくケーシング内を通過してしまい、熱効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高熱効率を有する潜熱熱交換器を提供すること、及び該潜熱熱交換器を用いた給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、内部に燃焼排気の流路を有するケーシングと、
前記ケーシング内に収容される吸熱管と、
前記吸熱管に被加熱流体を導入する流入ヘッダと、
前記吸熱管から被加熱流体を導出する流出ヘッダとを備え、
前記ケーシングは、背面壁と、正面壁と、ドレン排水口を有する底壁と、前記吸熱管の上流端が挿通される上流端挿通孔及び前記吸熱管の下流端が挿通される下流端挿通孔を有する一方側壁と、他方底壁と、天板とを有し、
前記吸熱管は、前記一方側壁と前記他方側壁との間で延在する直管部と、前記一方側壁側に位置する一方側円弧状折り返し部と、前記他方側壁側に位置する他方側円弧状折り返し部とが繰り返して連続する配管構造を有する潜熱熱交換器であって、
前記他方側壁の内面と前記他方側円弧状折り返し部との間に、前記燃焼排気の流路に沿って延在する平面部を備えた整流板が設けられ、
前記ケーシング内に、前記他方側円弧状折り返し部に隣接して、前記燃焼排気の流れを遮るように、
前記整流板の平面部から前記ケーシングの内方に向かって立設するとともに、前記天板と前記底壁とが対向する上下方向に延在する板状体が設けられ、
前記板状体は、その内方端が、前記背面壁と前記正面壁とが対向する前後方向から見て、前記他方側円弧状折り返し部と重なるように配設されている、潜熱熱交換器が提供される。
【0009】
上記潜熱熱交換器によれば、一方側壁と他方側壁との間で、直管部と、一方側円弧状折り返し部と、他方側円弧状折り返し部とが繰り返して連続する配管構造を有する吸熱管が用いられているため、ケーシング内に吸熱管を密に配設することができる。
【0010】
一方、吸熱管の上流端及び下流端はそれぞれ、一方側壁の上流端挿通孔及び下流端挿通孔に挿通されるから、ケーシング内の他方側壁側には吸熱管の他方側円弧状折り返し部が配設され、それによって他方側壁の内面と他方側円弧状折り返し部との間には一定の空間が形成される。しかしながら、上記潜熱熱交換器によれば、他方側円弧状折り返し部に隣接して、上下方向に延在する板状体が設けられているから、該板状体により上記空間を流れる燃焼排気が遮られる。そして、板状体は、その内方端が、前後方向から見て、他方側円弧状折り返し部と重なるように配設されているから、板状体で遮られた燃焼排気は吸熱管に接触しながら下流に流れる。これにより、他方側壁側で燃焼排気を吸熱管に効率的に接触させることができる。
さらに、上記潜熱熱交換器は、他方側壁の内面と他方側円弧状折り返し部との間に、燃焼排気の流路に沿って延在する平面部を備えた整流板を有するから、他方側壁の内面と他方側円弧状折り返し部の間の空間を整流板で埋めることができる。また、整流板が燃焼排気の流路に沿って延在する平面部を有するから、該整流板によって燃焼排気が吸熱管側に流れやすくなる。そして、板状体が整流板の平面部からケーシングの内方に向かって立設するように設けられるから、平面部に沿って流れてきた燃焼排気は、板状体によって他方側円弧状折り返し部に向かって流れる。これにより、燃焼排気を吸熱管により接触させることができる。
【0011】
上記潜熱熱交換器において、
前記吸熱管が、前記前後方向に複数の他方側円弧状折り返し部を有する場合、前記板状体は、好ましくは、前記燃焼排気の流路の最上流に位置する他方側円弧状折り返し部と、前記最上流に位置する他方側円弧状折り返し部に隣接する下流側の他方側円弧状折り返し部との間の上流側隙間に設けられる。
【0012】
ケーシング内に導入される燃焼排気は上流側ほど高温であるから、最上流に位置する他方側円弧状折り返し部と、これに隣接する他方側円弧状折り返し部との間の上流側隙間に板状体が配設されれば、最も高温の燃焼排気が板状体と最上流の他方側円弧状折り返し部との間を流れ、最上流の吸熱管に高温の燃焼排気をより効率的に接触させることができる。
【0013】
上記潜熱熱交換器において、前後方向に複数の他方側円弧状折り返し部が配設される場合、前記板状体は、前記燃焼排気の流路のさらに下流側で、前記前後方向で隣接する他方側円弧状折り返し部の間の下流側隙間に設けられてもよい。
【0014】
上記潜熱熱交換器によれば、燃焼排気の流路の上流側だけでなく、下流側でも、効率的に燃焼排気を吸熱管に接触させることができる。
【0017】
そして、本発明は、上記に記載の潜熱熱交換器を有する給湯装置である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、ケーシング内で燃焼排気を効率的に吸熱管に接触させることができるから、高熱効率を有する潜熱熱交換器及び給湯装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施の形態の潜熱熱交換器、及びこの潜熱熱交換器を有する給湯装置について具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る潜熱熱交換器の一例を示す概略斜視図、
図2は、
図1の概略分解斜視図、
図3は、天板が取り付けられていない潜熱熱交換器の概略上面図であり、
図4は、潜熱熱交換器の一方側壁側及び他方側壁側の内部構造を示す部分概略断面図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る潜熱熱交換器1のケーシング2は、上方開口部16を有する箱状のケーシング本体10と、ケーシング本体10の上方開口部16を閉塞する天板40とを有している。
【0023】
ケーシング本体10は、背面壁11、正面壁12、底壁13、一方側壁14、及び他方側壁15を有している。このケーシング本体10は、一枚の金属板を絞り加工することにより、上方開口部16を有する箱状に一体成形される。より詳細にこれを説明すると、一定方向に延びた平板状の底壁13の前後両側縁部から背面壁11及び正面壁12がそれぞれ起立し、これらの前後壁11及び12がコーナ部を介して底壁13と一体に繋がっている。また、底壁13の左右両側縁部から一方側壁14及び他方側壁15がそれぞれ起立し、これらの側壁14及び15がコーナ部を介して底壁13と一体に繋がっている。さらに、背面壁11及び正面壁12の左右両側縁部はそれぞれ、コーナ部を介して一方側壁14及び他方側壁15と一体に繋がっている。これにより、ケーシング本体10には、背面壁11、正面壁12、底壁13、及び両側壁14,15で囲まれた矩形状の上方開口部16を有する内部空間が形成される。また、本実施の形態では、背面壁11、正面壁12、及び両側壁14,15からなる周壁の上端には、上方開口部16を閉塞する天板40を載置するための各周壁11,12,14,15を外方に広がるように水平方向に屈曲させた載置部101が形成されている。
【0024】
なお、ケーシング本体10は、全ての構成壁11,12,13,14,15を上記のように絞り加工により形成する必要はなく、別部材の構成壁を溶接やロウ付けにより接合して形成してもよい。ただし、上記のように一枚の金属板を絞り加工することによりケーシング本体10を形成すれば、ケーシング本体10の製造にあたって、溶接作業やロウ付け作業を行なう必要がない。また、このケーシング本体10を有するケーシング2の下方には溶接やロウ付けによる接合部が形成されないから、ドレンが発生しても、該ケーシング2の下方におけるドレンの滞留を低減することができる。さらに、背面壁11、正面壁12、底壁13、一方側壁14、及び他方側壁15が絞り加工により一体成形されていれば、少ない部品点数で簡易にケーシング2を作製することができる。
【0025】
一方側壁14の背面壁11と正面壁12とが対向する前後方向の両端部(背面壁11側と正面壁12側の両端)にはそれぞれ、吸熱管50の上流端53が挿通される上流端挿通孔141及び吸熱管50の下流端54が挿通される下流端挿通孔142が吸熱管50の数だけバーリング加工により穿設される。本実施の形態においては、上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142はそれぞれ、2列で、且つ千鳥状に配列されている。これら挿通孔141,142の数及び配列は、吸熱管50の数に応じて適宜変更される。なお、本明細書では、便宜上、背面壁11と正面壁12とが対向する方向を前後方向、一方側壁14と他方側壁15とが対向する方向を左右方向、天板40と底壁13とが対向する方向を上下方向という。ただし、給湯装置への潜熱熱交換器1の取り付け態様によって、これらの方向は給湯装置におけるそれらと異なる場合がある。
【0026】
また、
図2及び
図3に示すように、一方側壁14は、好ましくは、上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142が形成される両端部の間に、絞り加工によって一方側壁14の一部が外方に向けて膨出するように形成された第1膨出部145を備える。これにより、絞り加工時の一方側壁14の内方への反りを低減できる。また、ケーシング2の内容積が膨出分だけ大きくなるから、それに応じてケーシング2内に配設される吸熱管50の長さを長くすることができる。
【0027】
他方側壁15は、上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142が形成されてない以外は、一方側壁14のそれと同様の構成を有する。他方側壁15は、好ましくは、一方側壁14と同様に、絞り加工によって他方側壁15の一部が外方に向かって膨出するように形成された第2膨出部155を前後方向の中央部に備える。このような第2膨出部155を形成することにより、第1膨出部145と同様に、絞り加工時の他方側壁15の内方への反りを低減でき、それによって後述する整流板45を、精度よく他方側壁15に固定することができる。
【0028】
背面壁11は、好ましくは、絞り加工によって背面壁11の少なくとも一部が外方に膨出するように形成された第3膨出部115を備える。本実施の形態の第3膨出部115は、背面壁11の全体を外方に膨出する上方視略円弧状の曲面部で構成することにより形成されている。このような第3膨出部115を背面壁11に設けることにより、絞り加工時の背面壁11の内方への反りを低減することができる。また、本実施の形態では、天板40に排気入口401が形成されているため、排気入口401から導入された燃焼排気は、背面壁11の内面と吸熱管50との間の隙間を通って下流側の排気出口121に流れる。そのため、絞り加工により背面壁11に内方に湾曲する反りが発生すると、上記間隙が狭くなって、通路断面積が小さくなる。その結果、排気抵抗が増加して、燃焼排気が円滑に流れない虞がある。これに対して、背面壁11の少なくとも一部に外方に膨出する第3膨出部115を形成すれば、吸熱管50がケーシング2内に配置されたとき、背面壁11と吸熱管50との間に所定の大きさの通路断面積を確保することができ、それによってケーシング2内に燃焼排気を円滑に流通させることができる。
【0029】
底壁13は、ドレン発生時にドレンを円滑にケーシング2の外部に排出させるため、正面壁12側から背面壁11側に向かって下方に傾斜している。また、その傾いた面の最下位の位置には、ドレンを排出するためのドレン排水口17が設けられる。このドレン排水口17は、図示しないドレン排出管を介して中和器と接続される。さらに、底壁13は、好ましくは、左右方向の両端(一方側壁14側と他方側壁15側の両端)に、ケーシング2の内方に向かって段状に張り出す第1固定部131,131と、左右方向の中央部に、ケーシング2の内方にリブ状に張り出す第2固定部132とを有する。これらの第1及び第2固定部131,132は、絞り加工により形成され、後述するように、最下段に位置する吸熱管50に当接する。
【0030】
正面壁12には、上下左右略中央部に、潜熱熱交換器1が給湯装置の器具本体に取り付けられた際に、燃焼排気をケーシング2外に導出する排気出口121が横長矩形状にバーリング加工により形成されている。なお、排気出口121の形状及び開口箇所は、給湯装置の使用形態に応じて適宜変更されてもよい。
【0031】
ケーシング2の上壁を構成する天板40は、平板状の天板本体部41と、天板本体部41の周縁を上方に屈曲させた起立片部42と、起立片部42を全周に渡って水平方向に折り返したフランジ部43とを有している。本実施の形態では、天板40は、ケーシング本体10と同様に、一枚の金属板を絞り加工することにより一体成形されている。ただし、複数の部材を接合して天板40が形成されてもよい。起立片部42は、ケーシング本体10の上方開口部16の内周縁に内嵌する大きさに形成される。また、フランジ部43は、ケーシング本体10の載置部101上に載置される大きさに形成される。
【0032】
天板本体部41の前後方向の中央部より背面壁11側は、フランジ部43に向かって上方に傾斜している。また、その傾斜面の前後左右方向の略中央部には、ケーシング2内に燃焼排気を導入する排気入口401がバーリング加工により横長矩形状に形成されている。従って、ケーシング本体10と天板40を接合すると、排気入口401からケーシング2内に導入された燃焼排気は、背面壁11側から正面壁12側に流れ、排気出口121からケーシング2外に導出される。これにより、ケーシング2内に、排気入口401と排気出口121とを連通する燃焼排気の通路が形成される。なお、排気入口401の形状及び開口箇所は、給湯装置の使用形態に応じて適宜変更されてもよい。
【0033】
さらに、天板40の下面の左右方向の両端(一方側壁14側と他方側壁15側の両端)にはそれぞれ、上下方向に弾性を有する第1及び第2弾性体181,182が設けられている。後述するように、これらの第1及び第2弾性体181,182は、最上段に位置する吸熱管50に当接する。なお、第1及び第2弾性体181,182としては、具体的には、例えば、金属バネや耐熱・耐食性ゴムを用いることができる。
【0034】
図2に示すように、ケーシング2内には、被加熱流体である水道水が流れる複数の吸熱管50(本実施の形態では、8本)が、燃焼排気が通過可能な程度の隙間を空けて蛇行状態で収容される。各吸熱管50は、ステンレスなどの耐食性を有する金属からなるコルゲート管(谷部と山部が軸線方向に交互に連続する外面形状を有する蛇腹管)の5箇所に曲げ加工が施されて形成されている(ただし、図中では、煩雑化を避けるため、直管部51の一部のみがコルゲート管で表わされている)。従って、各吸熱管50は、一方側壁14と他方側壁15との間で延在する直管部51と、他方側円弧状折り返し部52aと、一方側円弧状折り返し部52bとが連続して繰り返される配管構造を有する。また、本実施の形態では、5箇所に曲げ加工が施された吸熱管50が用いられているため、各吸熱管50がケーシング2内に収容されると、各吸熱管50は、前後方向で、3つの他方側円弧状折り返し部52aと、2つの一方側円弧状折り返し部52bとを有する。さらに、各吸熱管50の上流端53及び下流端54はそれぞれ、一方側壁14の上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142から一方側壁14の外部に導出される。
【0035】
図2及び
図4に示すように、両円弧状折り返し部52a,52bは、上下方向に扁平化された断面扁平形状を有している。また、各吸熱管50は、扁平に加工された両円弧状折り返し部52a,52bで重ね合わされている。さらに、重ね合わされる吸熱管50相互は屈曲する波形の波長方向に半ピッチだけずれている。すなわち、
図2において、上から奇数番目の吸熱管50に対して上から偶数番目の吸熱管50は燃焼排気の流路の下流側(排気出口121側)に半ピッチずれた位置に配置されている。上記構造により、上下方向で隣接する吸熱管50の距離を狭くすることができ、ケーシング2内で吸熱管50が密に配設される。その結果、潜熱熱交換器1を小型化できるとともに、燃焼排気を吸熱管50により効率的に接触させることができる。
【0036】
ケーシング2内の他方側壁15側には、重ね合わされた他方側円弧状折り返し部52aの全体の高さと略同一の高さで、上下方向に延在する板状体80が配設される。また、
図3に示すように、この板状体80は、他方側壁15側から、前後方向で隣接する他方側円弧状折り返し部52a,52aの間の隙間S1,S2に向かって突設している。さらに、
図3及び
図4に示すように、板状体80の内方端81は、前後方向から見て、他方側円弧状折り返し部52aと重なるように配設されている。
【0037】
既述したように、本実施の形態の吸熱管50の上流端53及び下流端54が一方側壁14のみから外部に導出される潜熱熱交換器1においては、ケーシング2内の他方側壁15側で、他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間に一定の空間が形成される。その結果、排気入口401から導入される燃焼排気が排気抵抗の少ない該空間に流れてしまい、燃焼排気が吸熱管50に効率的に接触せず、熱効率が低下する虞がある。しかしながら、本実施の形態の潜熱熱交換器1では、上記板状体80が、前後方向で隣接する他方側円弧状折り返し部52a,52aの間に設けられているから、他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間の空間を流れる燃焼排気は板状体80によって遮られる。また、板状体80は、その内方端81が、前後方向から見て、他方側円弧状折り返し部52aと重なるように配設されているから、板状体80によって遮られた燃焼排気は吸熱管50に接触しながら下流に流れる。これにより、効率的に燃焼排気を吸熱管50に接触させることができる。特に、絞り加工により成形されたケーシング本体10が用いられる場合、吸熱管50の上流端53及び下流端54をそれぞれ、一方側壁14の上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142に挿通すると、他方側壁15側の円弧状折り返し部52と他方側壁15の内面との間に形成される空間が大きくなるため、上記板状体80を設けることが好ましい。
【0038】
図3に示すように、各吸熱管50が前後方向に複数の他方側円弧状折り返し部52aを有する場合、板状体80は、好ましくは、燃焼排気の流路の最上流に位置する他方側円弧状折り返し部52aと、これに隣接する下流側の他方側円弧状折り返し部52aとの間の上流側隙間S1に設けられる。すなわち、ケーシング2内に導入される燃焼排気は上流側ほど高温であるから、最上流に位置する他方側円弧状折り返し部52aと、これに隣接する他方側円弧状折り返し部52aとの間の上流側隙間S1に板状体80が配設されれば、最も高温の燃焼排気が板状体80に遮られ、板状体80によって遮られた燃焼排気が最上流の他方側円弧状折り返し部52aに接触しながら下流に流れる。従って、最も高温の燃焼排気を最も低温の被加熱流体が流れる最上流の他方側円弧状折り返し部52aに効率的に接触させることができる。
【0039】
また、本実施の形態のように、吸熱管50が前後方向に3つ以上の他方側円弧状折り返し部52aが配設される配管構造を有する場合、板状体80は、燃焼排気の流路のさらに下流側で、前後方向で隣接する他方側円弧状折り返し部52a,52aの間の下流側隙間S2に配設されてもよい。これにより、下流の他方側円弧状折り返し部52aにも燃焼排気を効率的に接触させることができる。なお、上流側及び下流側に配設される板状体80は、同一であってもよいし異なっていてもよい。例えば、上流側の板状体80の内方端81は、下流側のそれより内方に設けられてもよい。また、板状体80は、燃焼排気の流れを遮るように配設されていれば、燃焼排気の流路の上流側に傾斜していてもよい。
【0040】
板状体80は、重ね合わされた他方側円弧状折り返し部52a全体に燃焼排気を接触させるため、好ましくは、上下方向において、他方側円弧状折り返し部52a全体の高さと略同一の高さを有する。また、ケーシング2の内方における板状体80の内方端81が、左右方向で、直管部51と重なる位置まで突設していると、ケーシング2の内方において直管部51への燃焼排気の接触が妨げられ、熱効率が低下する。従って、板状体80は、その内方端81が、前後方向から見たときに、好ましくは、直管部51と重ならず、他方側円弧状折り返し部52aのみと重なるように設けられる。
【0041】
本実施の形態において、他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間には、好ましくは整流板45が設けられる。この整流板45は、上下方向で他方側円弧状折り返し部52a全体に渡り、燃焼排気の流路に沿って延在する平面部451を備えている。そして、板状体80は、上記平面部451からケーシング2の内方に向かって突設するように整流板45に固定されている。板状体80は他方側壁15の内面に直接、形成されていてもよいが、このように他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間に燃焼排気の流れを遮る整流板45を設けることにより、他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間の空間を整流板45で埋めることができる。また、整流板45が燃焼排気の流路に沿って延在する平面部451を有するから、該整流板45によって燃焼排気が吸熱管50側に流れやすくなる。そして、板状体80は整流板45の平面部451からケーシング2の内方に向かって立設するから、整流板45の平面部451に沿って流れてきた燃焼排気は、板状体80によって他方側円弧状折り返し部52aに向かって流れる。これにより、より燃焼排気を吸熱管50と接触させることができる。なお、複数の板状体80を設ける場合、
図2に示すように、曲げ加工によって形成された複数の板状体80を有する金属板を平面部451に固定してもよい。また、板状体80は、整流板45と一体に形成されていてもよい。
【0042】
本実施の形態の整流板45は、平面部451と、平面部451の上下及び前後方向の周縁から他方側壁15側に折り曲げられた折り曲げ部452と、前後方向の折り曲げ部452がさらに平面部451が延在する方向と略平行に折り曲げられた取付け片部453とを有する。このように、平面部451の両端に折り曲げ部452を設けることにより、折り曲げ部452の突出分だけ他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間の燃焼排気の通路断面積を小さくすることができる。これらの平面部451及び折り曲げ部452は、吸熱管50に向かって傾斜する傾斜面を有していてもよい。また、平面部451は、特に限定されるものではないが、好ましくは前後方向で複数の他方側円弧状折り返し部52aに対向する長さを有する。さらに、整流板45は、他方側壁15に固定されていてもよいし、天板40あるいは底壁13に固定されていてもよい。なお、既述したように、第2膨出部155によって他方側壁15の前後方向の両端部を略平面に形成できる。それゆえ、整流板45を他方側壁15に固定するにあたって、他方側壁15の前後方向の両端部を整流板45の固定部として利用すれば、整流板45の取付箇所における他方側壁15の内面と整流板45との間の隙間を小さくすることができるとともに、ケーシング2の内部に整流板45を傾きの少ない状態で配置することができる。
【0043】
ケーシング2の外部に導出された吸熱管50の上流端53及び下流端54はそれぞれ、
図1に示すように、一方側壁14の外部に配置された流入ヘッダ60及び流出ヘッダ70と接続される。このように、各吸熱管50の上流端53及び下流端54はそれぞれ、流入ヘッダ60及び流出ヘッダ70と連結されて、全体として複数の吸熱管50が並列接続されている。これにより、吸熱管50が直列接続された場合に比べて通水抵抗の軽減が図られる。
【0044】
吸熱管50の上流端53及び下流端54がそれぞれ接続される流入ヘッダ60及び流出ヘッダ70は、ケーシング本体10の一方側壁14の外部に配置されている。
図2に示すように、これらの両ヘッダ60,70は、器状のヘッダ本体61,71と、ヘッダ本体61,71に内嵌する器状のヘッダ蓋体64,74とを有する。そして、両ヘッダ60,70は、ヘッダ本体61,71とヘッダ蓋体64,74の各開口部が対向する状態でロウ付けされて形成される。なお、本実施の形態の流出ヘッダ70は、流入ヘッダ60のヘッダ蓋体64を上下反転させたヘッダ蓋体74が用いられる以外は流入ヘッダ60と同様の構成を有する。このため、以下では、主として流入ヘッダ60を例に挙げて説明する。
【0045】
ヘッダ本体61は、吸熱管50の上流端53が接続される接続孔160が穿設された本体底板と、ヘッダ本体61とヘッダ蓋体64とが嵌合されたときに、本体底板の周縁からヘッダ蓋体64側に向かって立設し、ヘッダ蓋体64側に開放する本体周壁とを有する。
【0046】
ヘッダ本体61の本体周壁は、ヘッダ本体61にヘッダ蓋体64が嵌合されたときに、本体開放端の少なくとも一部が断面方向において蓋体底板の外周面以上の高さとなるように延設される。また、
図2に示すように、ヘッダ本体61の本体周壁は、一対の長辺部と一対の短辺部とを有する略矩形に形成される。
【0047】
また、ヘッダ本体61の対向する長辺部の本体開放端にはそれぞれ、ヘッダ本体61とヘッダ蓋体64とが嵌合されたときに、ヘッダ蓋体64側に折り曲げられる爪部67が形成される。これにより、ヘッダ蓋体64がヘッダ本体61に嵌合された後、ヘッダ蓋体64の外周面に当接する爪部67がヘッダ蓋体64の動きを抑え、ヘッダ蓋体64のずれが確実に防止される。
【0048】
ヘッダ本体61と接合されるヘッダ蓋体64は、蓋体底板と、ヘッダ本体61とヘッダ蓋体64とが嵌合されたときに、蓋体底板の周縁からヘッダ本体61側に向かって立設し、ヘッダ本体61側に開放する蓋体周壁とを有する。この蓋体周壁は、蓋体周壁の外面が本体周壁の内面に内嵌するように、ヘッダ本体61の本体周壁と同様に、一対の長辺部と一対の短辺部とを有する略矩形に形成される。
【0049】
図2に示すように、ヘッダ蓋体64,74にはそれぞれ、バーリング加工により流入口164及び流出口(図示せず)が形成される。これら流入口164または流出口には、給水管または顕熱熱交換器の管体の上流端に繋がる接続管を接続させるためのジョイント筒68,78が各装着される。これにより、流入ヘッダ60から流出ヘッダ70に複数の吸熱管50を介して被加熱流体が流れ、燃焼排気中の水蒸気が吸熱管50の外面で凝縮して、潜熱が回収される。
【0050】
次に、本実施の形態の潜熱熱交換器の作製方法の一例について具体的に説明する。
【0051】
本実施の形態の潜熱熱交換器1の作製にあたっては、まずケーシング本体10の一方側壁14の上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142に、吸熱管50の上流端53及び下流端54をそれぞれ挿通させ、一方側壁14から吸熱管50の上流端53及び下流端54を所定長さ導出させる。
【0052】
次いで、導出させた吸熱管50の外面と上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142との境界にロウ材(ペースト状のニッケルロウ材など)を塗布する。さらに、導出させた吸熱管50の上流端53及び下流端54をそれぞれ、ヘッダ本体61,71の接続孔160,170に挿通させ、上流端53及び下流端54の外面と接続孔160,170との境界にロウ材を塗布する。なお、ロウ材は、一方側壁14の上流端挿通孔141及び下流端挿通孔142の内面や、ヘッダ本体61,71の接続孔160,170の内面に塗布しておいてもよい。
【0053】
そして、ヘッダ本体61,71と、ヘッダ蓋体64,74とを、これらの開口部が対向するように配置し、押込み治具でヘッダ蓋体64,74をヘッダ本体61,71に圧入する。圧入後、爪部67,77をヘッダ蓋体64,74側にそれぞれ折り曲げ、さらにヘッダ本体61,71と、ヘッダ蓋体64,74との境界にロウ材を塗布する。
【0054】
上記のようにしてロウ材が塗布されたサブアセンブリが加熱炉に投入され、炉中でロウ付け処理が行なわれる。これによりロウ材が塗布された箇所で各部材がロウ付けされる。次いで、他方側壁15の内面と他方側円弧状折り返し部52aとの間に、平面部451上に板状体80が固定された整流板45が上方から差し込まれる。そして、整流板45の取付け片部453が他方側壁15の外面から接合されて、整流板45が他方側壁15に固定される。このとき、整流板45の平面部451上に取り付けられた板状体80,80はそれぞれ、上流側隙間S1と下流側隙間S2内に配置される。
【0055】
一方、排気入口401が形成された天板40の天板本体部41の下面には、第1及び第2弾性体181,182が溶接により接合される。さらに、フランジ部43の下面には枠状の耐熱・耐食性パッキング材(図示せず)が取付けられる。そして、ケーシング本体10の上方開口部16の周縁に設けられた載置部101上に耐熱・耐食性パッキング材を介して天板40のフランジ部43が載置されるように、ケーシング本体10上に天板40が配置される。
【0056】
次いで、天板40のフランジ部43及びケーシング本体10の載置部101に穿設されたビス留め孔に連続してビスを挿入し、これらをビス留めする。これにより、天板40がケーシング本体10に接合されて、潜熱熱交換器1が作製される。このとき、天板40に設けられた第1弾性体181は、最上段の一方側円弧状折り返し部52bに当接し、第2弾性体182は、最上段の他方側円弧状折り返し部52aに当接する。また、底壁13に設けられた第1固定部131は、最下段の両円弧状折り返し部52a,52bに当接し、第2固定部132は、最下段の直管部51に当接する。これにより、ケーシング2内で吸熱管50が安定に固定される。また、ウォータハンマー現象などによる吸熱管50の振動を抑制できる。さらに、吸熱管50を固定するために、燃焼排気の通路内に吸熱管50以外の別部材が配置されないため、燃焼排気を効率的に吸熱管50に接触させることができる。なお、ケーシング本体10と天板40との接合には、かしめ接合など他の接合方法が用いられてもよい。
【0057】
次に、本実施の形態の給湯装置の一例について具体的に説明する。
【0058】
図5は、本実施の形態の給湯装置を示す概略構成図である。器具本体(図示せず)内には、顕熱熱交換器3と上記潜熱熱交換器1とが備えられている。
【0059】
図5に示すように、顕熱熱交換器3は、潜熱熱交換器1の上方に配設されている。また、顕熱熱交換器3の上方には、ガス供給管から供給されるガスを燃焼させるガスバーナ4が配設されており、さらにガスバーナ4の側方には、ガスバーナ4に燃焼用空気を送風する送風ファン5が配設されている。従って、ガスバーナ4で生成された燃焼排気は、送風ファン5からの送風によって上方から順に、顕熱熱交換器3及び潜熱熱交換器1に送られる。
【0060】
顕熱熱交換器3は、並設された多数のフィン群332と、これらフィン群332を貫通する蛇行状の管体331とから構成されている。顕熱熱交換器3と潜熱熱交換器1とは、既述した排気入口401を介して連通している。顕熱熱交換器3から排気入口401を介して潜熱熱交換器1内に送られた燃焼排気は、潜熱熱交換器1内を通過した後、排気出口121から器具本体の外部に排出される。
【0061】
本実施の形態の給湯装置では、ガスバーナ4の燃焼により燃焼排気が生成され、この燃焼排気によって顕熱熱交換器3及び潜熱熱交換器1が加熱される。そして、顕熱熱交換器3によって燃焼排気の顕熱が吸収され、潜熱熱交換器1によって顕熱が吸収された後の燃焼排気から潜熱が吸収される。このとき、排気入口401からケーシング2内に導入された燃焼排気は、背面壁11と最上流の吸熱管50との間を通って下流側に流れるが、他方側壁15側では板状体80が設けられているから、効率的に燃焼排気を吸熱管50に接触させることができる。
【0062】
本発明者らの検討によれば、温度148℃の燃焼排気をガス流量9.98m
3/hrでケーシング2内に供給しながら、吸熱管50の表面温度が60℃となるように水道水を流通させた場合、本実施の形態の潜熱熱交換器1における他方側壁15と正面壁12との間の下流側のコーナ部の温度は、80℃であった。これに対して、板状体80が設けられていない潜熱熱交換器では、同箇所における温度は92℃であった。従って、本実施の形態の板状体80を設けることにより、燃焼排気がケーシング2内を通過するまでに、より高い熱効率で燃焼排気の潜熱が吸収できることが確認された。
【0063】
なお、流入ヘッダ60のジョイント筒68は、水道管などの給水源からの冷水を導く給水管と接続されており、流出ヘッダ70のジョイント筒78は、顕熱熱交換器3の管体331の上流端に連通する接続管と接続される。従って、給水管からの冷水は、潜熱熱交換器1及び顕熱熱交換器3を通過する間に加熱されて温水となり、該温水は顕熱熱交換器3の管体331の下流端が接続されている出湯管から、浴室や台所などの給湯端末へ送られる。
【0064】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、他方側壁側に燃焼排気の流れを遮る板状体が設けられているが、一方側壁側にも同様に、一方側円弧状折り返し部に隣接して、燃焼排気の流れを遮る他の板状体が設けられてもよい。この場合、一方側壁側の他の板状体は、燃焼排気と吸熱管の接触を考慮して、他方側壁側のそれと同様に、その内方端が、前後方向から見て、一方側円弧状折り返し部と重なるように配設される。上記潜熱熱交換器によれば、他の板状体により一方側円弧状折り返し部との間で燃焼排気の流れが遮られ、他の板状体で遮られた燃焼排気は吸熱管に接触しながら下流に流れる。これにより、一方側壁側で燃焼排気を吸熱管により効率的に接触させることができる。
【0065】
(2)上記実施の形態では、天板に排気入口が、正面壁に排気出口が設けられているが、これらを設ける位置は必ずしも限定されない。例えば、背面壁に排気入口が、排気出口が天板に設けられてもよい。すなわち、ケーシングを構成する、背面壁、正面壁、底壁、一方側壁、他方側壁、及び天板のいずれか1つに排気入口が、排気入口が設けられている位置と異なる位置に排気出口が設けられてもよい。
【0066】
(3)本実施の形態では、流入ヘッダ及び流出ヘッダはいずれも、一方側壁に近接して設けられているが、これらのヘッダは一方側壁から離間させて配置されてもよい。
【0067】
(4)上記実施の形態では、1つの加熱回路を有する給湯装置に用いられる潜熱熱交換器について説明したが、2つの加熱回路を有する給湯装置に用いられる潜熱熱交換器にも本発明を適用することができる。この場合、ケーシング内を仕切り壁により2つの領域に分割し、一方の領域に収容される吸熱管の円弧状折り返し部と仕切り壁との間に燃焼排気の流れを遮る板状体が配設される。