【実施例】
【0039】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において含有量の単位を表わす「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
<比較例1>
(原料ホエイ液)
原料ホエイとしてチーズホエイパウダー(タンパク質12.1%、脂質1.1%、炭水化物77.2%、灰分7.8%、水分1.8%、)5.7kgを用い、これに水を加えて溶解して105kgの原料ホエイ液を得た。(ナノろ過による脱塩処理)
得られた原料ホエイ液をナノろ過膜(DL3840C−30D:GE Water&Process Technologies社製)で、リテンテート液を原液タンクに戻しながら、回分濃縮式で、透過液が66.6kgとなるまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(I)とする。
続いて、透過液量に等しい水量を原液タンクに加水することで、原液タンク内の液量を一定に保つ加水透析ろ過方式で、ナノろ過を継続し、透過液が33.3kg(脱塩処理開始からの合計99.9kg)となるまで脱塩処理を行った。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は31.0kgで固形分4.4kgを含む。
【0040】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表1に示し、固形分100gあたりのミネラル組成(単位:mmol/100g固形、以下同様。)を表2に示す。
原料ホエイ液、脱塩ホエイ液(I)および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのナトリウム(Na)含有量とカリウム(K)含有量の合計(以下、Na+Kと記載することがある)、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計(以下、Ca+Mgと記載することがある)、塩素含有量(以下、Clと記載することがある)、およびCl/(Na+K)比を、表3に示す。
【0041】
また、脱塩処理の開始から終了までの途中で、経時的に6回、透過液量を測定するとともに、前記測定時における原液タンク内の脱塩ホエイ液、ナノろ過膜を通過した後に原液タンクに戻される途中のリテンテート液、およびナノろ過膜の透過液を、同時に各40mL採取した。採取した液の、Na含有量、K含有量、塩素含有量(いずれも単位はmmol/100g固形)をそれぞれ測定し、原液タンク内の脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、前記式(3)で求める(Na+K)透過率、および前記式(2)で求める脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表4に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
表3および4に示されるように、原料ホエイ液、脱塩ホエイ液(I)および(II)のpHは6.8〜6.9でほとんど変化しない。脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量は低減しているものの、脱塩率は44.0%に止まった。固形分100gあたりのCa、Mg含有量はわずかに増加した。
表4に示されるように、原料ホエイ液をそのままナノろ過で脱塩処理した本例では、脱塩処理中に、ナノろ過に供される脱塩ホエイ液(被処理液)中のCl/(Na+K)比が経時的に低下し、最終的に得られた脱塩ホエイ液(II)では0.02となった。それに伴い(Na+K)の透過率も低下し、脱塩率が44%となった時点で、(Na+K)透過率は0.07と著しく低い値になった。
一般に、膜分離法を用いた脱塩処理において、脱塩量は、(透過液量)×(脱塩される塩の透過液中における濃度)で求まる。単位時間当たりの透過液量、脱塩される塩の原料液中における濃度が同じである場合は、透過率が2分の1になると、脱塩量も2分の1となるため、透過率が低下するということは単位透過液量あたりの脱塩量が低下することを意味する。
したがって、本例において、これ以上に脱塩率を高くしようとして脱塩を続けても、透過率が著しく低いため、実質的に脱塩が進まない。仮に脱塩が進んでも、脱塩が進むにつれて透過率がさらに低下するため、脱塩が進まなくなると考えられる。
【0047】
<比較例2>
本例が比較例1と大きく異なる点は、原料ホエイとして用いたチーズホエイパウダーが異なる点、およびナノろ過による脱塩処理において、加水透析ろ過方式でナノろ過を行った後に加水を停止してナノろ過を継続する点である。
原料ホエイとしてチーズホエイパウダー(タンパク質12.7%、脂質0.9%、炭水化物76.4%、灰分8.1%、水分2.0%、)5.8kgを用い、これに水を加えて溶解して105kgの原料ホエイ液を得た。
(ナノろ過による脱塩処理)
得られた原料ホエイ液を比較例1と同様にして、ナノろ過膜で透過液が52.4kgとなるまで脱塩処理した。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液(I)のpHは6.8であった。
続いて、比較例1と同様にして加水透析ろ過方式でナノろ過を継続し、透過液が38.6kgとなるまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液のpHは6.7であった。
その後は、加水を停止してナノろ過を継続し、透過液14.3kg(脱塩処理開始からの合計105.3kg)を得た。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は32.9kgで固形分4.6kgを含む。
【0048】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表5に示し、固形分100gあたりのミネラル組成を表6に示す。
原料ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、およびCl/(Na+K)比を表7に示す。
【0049】
また、脱塩処理の開始から終了までの途中で、経時的に5回、透過液量を測定するとともに、比較例1と同様にして各測定時における脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、(Na+K)透過率、および脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表8に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
【0054】
表7および8に示されるように、原料ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)のpHは6.6〜6.8でほとんど変化しない。
脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量は低減しているものの、脱塩率は44.1%に止まった。Ca、Mg含有量はわずかに減少した。
表7および8に示されるように、原料ホエイ液をそのままナノろ過で脱塩処理した本例では、脱塩処理開始直後(表8の透過液量1kg)のCl/(Na+K)比が0.5であり、最終的に0.03にまで低下した。(Na+K)透過率は、脱塩率が44.1%となった時点で0.09と著しく低い値になった。
【0055】
<実施例1>
本例が比較例2と大きく異なる点は、ナノろ過による脱塩処理を行う前に、塩素型陰イオン交換樹脂に原料ホエイ液を通液させた点である。
原料ホエイとして比較例2と同じチーズホエイパウダー6.8kgを用い、これに水を加えて溶解して95kgの原料ホエイ液を得た。
(イオン交換樹脂への通液)
得られた原料ホエイ液を、3Lの塩素型陰イオン交換樹脂カラム(ロームアンドハース社製、製品名:IRA402BL)に通液し、固形分6kgを含むイオン交換ホエイ液94kgを得た。通液条件は、流速6.4SV、通液温度5〜10℃とした。
【0056】
(ナノろ過による脱塩処理)
得られたイオン交換ホエイ液のうち、固形量5.6kgに相当する量の液を分取し、これに加水して全量を106.5kgとした。これを比較例2と同条件で、ナノろ過膜で透過液が52.4kgとなるまで脱塩処理した。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液(I)のpHは6.5であった。
続いて、比較例2と同条件で、加水透析ろ過方式でナノろ過を継続し、透過液が38.6kgとなるまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液のpHは6.6であった。
その後は、比較例2と同条件で、加水を停止してナノろ過を継続し、透過液14.3kg(脱塩処理開始からの合計105.3kg)を得た。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は34.5kgで固形分4.8kgを含む。
【0057】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表9に示し、固形分100gあたりのミネラル組成を表10に示す。
原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、および(Cl/(Na+K)比)を表11に示す。
【0058】
また、脱塩処理の開始から終了までの途中で、経時的に5回、透過液量を測定するとともに、比較例1と同様にして各測定時における脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、(Na+K)透過率、および脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表12に示す。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】
【表12】
【0063】
表11および12に示されるように、原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液、および脱塩ホエイ液(II)のpHは6.5〜6.8でほとんど変化しない。
脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量が大幅に低減し、脱塩率は67.8%と高い。
脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)含有量は、比較例1および2に比べると低いが、原料ホエイにおける(Ca+Mg)含有量に対する、脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)含有量の割合で表わされる(Ca+Mg)残存率は、表11の値から算出すると79.9%となり、良好である。
表11および12に示されるように、ナノろ過に供されるイオン交換ホエイ液の塩素イオン含有量が高いため、脱塩処理開始直後(表12の透過液量1kg)のCl/(Na+K)比が0.88と高く、最終的に0.37にまでしか低下しなかった。(Na+K)透過率は、脱塩率が67.8%に達した脱塩ホエイ液(II)においても、0.43と高かった。
【0064】
<実施例2>
本例が実施例1と大きく異なる点は、イオン交換樹脂への通液を行った後のナノろ過において、まず3倍濃縮液を得る条件で脱塩処理を行い、次いで加水透析ろ過方式で脱塩処理を行った点である。
原料ホエイとしてチーズホエイパウダー(タンパク質13.2%、脂質0.9%、炭水化物76.0%、灰分7.9%、水分2.1%、)13.2kgに水を加えて溶解して185.5kgの原料ホエイ液とした。(イオン交換樹脂への通液)
得られた原料ホエイ液を、10Lの塩素型陰イオン交換樹脂カラム(ロームアンドハース社製、製品名:IRA402BL)に通液し、カラムから流出するイオン交換ホエイ液を、流出順にNo.1〜No.3に分割して得た。通液条件は、流速6.0SV、通液温度5〜10℃とした。No.1〜No.3のイオン交換ホエイ液のpHは、いずれも6.5であった。各液の液量と固形量、および固形分100g当たりの塩素含有量を表13に示す。
【0065】
【表13】
【0066】
次に、比較例1と同じナノろ過膜に、No.1〜No.3のイオン交換ホエイ液を順次投入しながら、リテンテート液を原液タンクに戻すことなくワンウェイ方式で、濃縮倍率が3倍になるように操作しながら脱塩処理を行い、装置内の水が加算されて、固形分12.2kgを含む78.0kgのリテンテート液(脱塩ホエイ液)を得た。
投入の仕方は、原料タンク中のNo.1の液がなくなる直前にNo.2の液を投入し、同様にNo.2の液がなくなる直前にNo.3の液を投入した。原料タンク中のNo.3の液がなくなる直前に装置の運転を停止した。
濃縮倍率を3倍にする方法は、例えば、ナノろ過膜を備えた膜モジュールに原料ホエイ液を3L/minで供給する場合、リテンテート液(脱塩ホエイ液)を1L/minの速度で膜モジュールから抜き出し、かつ透過液を2L/minの速度で膜モジュールから抜き出す、というように、リテンテート液と透過液の排出速度を1:2の比率とすることによって実施できる。
こうして得られた3倍濃縮脱塩ホエイ液(リテンテート液)のpH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、およびCl/(Na+K)比を表17に示す。
【0067】
No.1を投入してから78.0kgのリテンテート液(脱塩ホエイ液)を得るまでの間に、経時的に3回、原液タンク内の原料ホエイ液、リテンテート液(脱塩ホエイ液)、透過液のそれぞれを40mL同時に採取した。1回目の採取は原料タンク中のNo.1の液がなくなる直前に、2回目の採取は原料タンク中のNo.2の液がなくなる直前に、3回目の採取は原料タンク中のNo.3の液を分離中であって、装置運転の停止直前にそれぞれ行った。
比較例1と同様にして、原液タンク内の原料ホエイ液(被処理液)中のCl/(Na+K)比、および(Na+K)透過率をそれぞれ算出した。結果を表14に示す。
比較例1と同様にして脱塩率を求めたところ55%であった。
【0068】
【表14】
【0069】
続いて、上記で得られた3倍濃縮脱塩ホエイ液を、同じナノろ過膜で、その後は、リテンテート液を原液タンクに戻しながら、かつ加水透析ろ過方式でナノろ過を行い、透過液77.6kgを得るまで脱塩処理を行った。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は71.1kgで固形分10.8kgを含む。
【0070】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表15に示し、固形分100gあたりのミネラル組成を表16に示す。
原料ホエイ液、前記3倍濃縮脱塩ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、およびCl/(Na+K)比を表17に示す。
【0071】
また、加水透析ろ過方式によるナノろ過の開始から終了までの途中で、経時的に4回、透過液量を測定するとともに、比較例1と同様にして各測定時における、原料タンク内の脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、(Na+K)透過率、および脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表18に示す。
【0072】
【表15】
【0073】
【表16】
【0074】
【表17】
【0075】
【表18】
【0076】
表17および18に示されるように、原料ホエイ液、No.1〜No.3のイオン交換ホエイ液、3倍濃縮脱塩ホエイ液、脱塩ホエイ液(II)のpHは6.3〜6.8でほとんど変化しない。
脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量が大幅に低減し、脱塩率は76.2%と、実施例1よりも高い。
表17の値から算出すると、脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)残存率は88.6%であり、良好である。
表17、18に示されるように、ナノろ過に供されるイオン交換ホエイ液の塩素イオン含有量が高いため、脱塩処理開始直後(表14の1回目)のCl/(Na+K)比が1.12と高く、最終的(表18の透過液量77.6kg)に0.56にまでしか低下しなかった。(Na+K)透過率は、脱塩率が76.2%に達した時点においても、0.5と高かった。
【0077】
<実施例3>
実施例1と同じ手順で脱塩ホエイ液を製造した。すなわちナノろ過による脱塩処理条件は比較例2と同じである。本例では、イオン交換樹脂の使用量を3Lから5Lに変更することによって、イオン交換ホエイ液中の塩素含有量が実施例1よりも多くなるようにした。
原料ホエイとして比較例2と同じチーズホエイパウダー6.75kgに水を加えて溶解して95kgの原料ホエイ液とした。
(イオン交換樹脂への通液)
得られた原料ホエイ液を、5Lの塩素型陰イオン交換樹脂カラム(ロームアンドハース社製、製品名:IRA402BL)に通液し、固形分5.74kgを含むイオン交換ホエイ液88.1kgを得た。通液条件は、流速6.4SV、通液温度6〜10℃とした。
【0078】
(ナノろ過による脱塩処理)
得られたイオン交換ホエイ液に加水して全量を105kgとした。これを比較例2と同条件で、ナノろ過膜で透過液が52.4kgとなるまで脱塩処理した。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液(I)のpHは6.4であった。
続いて、比較例2と同条件で加水透析ろ過方式でナノろ過を継続し、透過液が38.6kgとなるまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液のpHは6.5であった。
その後は、加水を停止してナノろ過を継続し、透過液14.3kg(脱塩処理開始からの合計105.3kg)を得た。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は33.1kgで固形分4.8kgを含む。
【0079】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表19に示し、固形分100gあたりのミネラル組成を表20に示す。
原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、および(Cl/(Na+K)比)を表21に示す。
【0080】
また、脱塩処理の開始から終了までの途中で、経時的に5回、透過液量を測定するとともに、比較例1と同様にして各測定時における脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、(Na+K)透過率、および脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表22に示す。
【0081】
【表19】
【0082】
【表20】
【0083】
【表21】
【0084】
【表22】
【0085】
表21および22に示されるように、原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液、および脱塩ホエイ液(II)のpHは6.4〜6.8でほとんど変化しない。
脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量が大幅に低減し、脱塩率は73.9%と実施例1より高い。
表21の値から算出すると、脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)残存率は69.5%であり、実施例1よりやや低いが良好である。
表21、22に示されるように、ナノろ過に供されるイオン交換ホエイ液の塩素イオン含有量が高いため、脱塩処理開始直後(表18の透過液量1kg)のCl/(Na+K)比が1.03と高く、最終的(表22の透過液量105.3kg)に0.56にまでしか低下しなかった。(Na+K)透過率は、脱塩率が73.9%に達した時点においても、0.53と高かった。
【0086】
<実施例3と比較例2との比較>
表23は、実施例3および比較例2で用いた原料ホエイと、各例でそれぞれ得られた脱塩ホエイ液についての、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、および(Cl/(Na+K)比)をまとめて示したものである。
図1は、実施例3と比較例2の結果から、積算透過液量と(Na+K)の脱塩率(%)との関係をグラフに示したものである。
【0087】
【表23】
【0088】
表23に示されるように、ナノろ過による脱塩処理の前に原料ホエイ液を塩素型陰イオン交換樹脂に通液させた実施例3の方が、比較例2に比べてCl/(Na+K)比が格段に大きく、(Na+K)含有量が小さい。
また
図1に示されるように、ナノろ過工程における積算透過液量が互いに同じであっても、実施例3の方が、比較例2に比べて(Na+K)の脱塩率が大きく、単位透過液量あたりの脱塩効率が大幅に向上した。
【0089】
<比較例3>
本例が、実施例3と大きく異なる点は、原料ホエイ液を塩素型陰イオン交換樹脂に通液することなく、その代わりに原料ホエイ液にCaCl
2・2H
2Oを添加した液をナノろ過に供した点である。ナノろ過による脱塩処理条件は比較例2と同じである。
【0090】
原料ホエイとして、チーズホエイパウダー(タンパク質12.3%、脂質1.1%、炭水化物76.4%、灰分7.4%、水分1.9%)5.83kgを用い、これに水を加えて溶解した原料ホエイ液に、さらに塩化カルシウム2水塩(CaCl
2・2H
2O)の200gを水に溶解した水溶液を添加混合して、105kgの塩化カルシウム添加ホエイ液を得た。
【0091】
(ナノろ過による脱塩処理)
得られた塩化カルシウム添加ホエイ液を比較例2と同条件で、ナノろ過膜で透過液が52.4kgとなるまで脱塩処理した。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液(I)のpHは6.2であった。
続いて、比較例2と同条件で加水透析ろ過方式でナノろ過を継続し、透過液が38.6kgとなるまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の脱塩ホエイ液のpHは6.2であった。
その後は、加水を停止してナノろ過を継続し、透過液14.3kg(脱塩処理開始からの合計105.3kg)を得た。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は33.0kgで固形分5.0kgを含む。
【0092】
原料ホエイおよび脱塩ホエイ液(II)について、固形分100gあたりの組成を表24に示し、固形分100gあたりのミネラル組成を表25に示す。
原料ホエイ液、塩化カルシウム添加ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、およびCl/(Na+K)比を表26に示す。
【0093】
また、脱塩処理の開始直後(透過液量1kg)の時点と終了時における脱塩ホエイ液中のCl/(Na+K)比、(Na+K)透過率、および脱塩率をそれぞれ算出した。その結果を表27に示す。
【0094】
【表24】
【0095】
【表25】
【0096】
【表26】
【0097】
【表27】
【0098】
<透過流束の測定>
実施例3および比較例3について、ナノろ過による脱塩処理を開始してから終了するまでの間の、単位膜モジュールあたりの透過流束(単位:L/min)の経時変化を調べた。その結果を
図2に示す。
図2の縦軸は膜モジュール1本(膜面積7.4m
2)当たりの透過流束(単位:L/分)を示し、横軸は透過液量の積算値を示す。
【0099】
表26および27に示されるように、比較例3は塩化カルシウムを添加したため、脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)の含有量は原料ホエイよりも大幅に増加している。また(Na+K)透過率、および脱塩率において実施例3よりやや劣る。
具体的に、比較例3では塩化カルシウムを添加したため、脱塩ホエイ液(II)におけるCa含有量は30.7mmol/100g固形と、原料ホエイの約3倍と大幅に増加した。カルシウムは重要な栄養素ではあるが、Ca含量の大きすぎる増加は常に受容されるとは言えない。例えば、ホエイを調製粉乳に利用する際に、Ca含量が高すぎると使用量を制限する必要がある。
【0100】
また、
図2に示されるように、実施例3と同じ条件でナノろ過を行ったにもかかわらず、塩化カルシウムを添加した比較例3は、単位膜モジュールあたりの透過流束が約1/2と格段に小さい。透過流束が半分になるということは、同じ面積で処理できる液量が半分になり、膜面積が同じであれば、同量の透過流量を得るのに必要な時間が2倍必要になることを意味する。
【0101】
<実施例4>
本例では、実施例1〜3とは異なるナノろ過膜を用いた。
チーズホエイパウダー(タンパク質12.1%、脂質1.1%、炭水化物77.2%、灰分7.8%、水分1.8%)6.1kgを水に溶解して85kgの原料ホエイ液とした。この原料ホエイ液を、6Lの塩素型陰イオン交換樹脂カラム(ロームアンドハース社製、製品名:IRA402BL)に通液し、固形分5.82kgを含むイオン交換ホエイ液95.1kgを得た。通液条件は、流速6.4SV、通液温度5〜10℃とした。
【0102】
このイオン交換ホエイ液に加水して全量を106kgとした。これをナノろ過膜(Duratherm Pro NF3840HR:GE Water&Process Technologies社製)で、リテンテート液を原液タンクに戻しながら、回分濃縮式で、透過液66.6kgを得るまで脱塩処理を行った。この時点での原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(I)とする。脱塩ホエイ液(I)のpHは6.6であった。
その後は、加水透析ろ過方式でナノろ過を継続し、透過液が33.3kg(脱塩処理開始からの合計99.9kg)となるまで脱塩処理を行った。こうして得られた原液タンク内の液を脱塩ホエイ液(II)とする。脱塩ホエイ液(II)の回収量は32.9kgで固形分4.7kgを含む。
原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液および脱塩ホエイ液(II)について、pH、固形分100gあたりのNa含有量とK含有量の合計、固形分100gあたりのCa含有量とMg含有量の合計、塩素含有量、およびCl/(Na+K)比を表28に示す。
【0103】
【表28】
【0104】
表28に示されるように、原料ホエイ液、イオン交換ホエイ液、および脱塩ホエイ液(II)のpHは6.4〜6.8でほとんど変化しない。
脱塩ホエイ液(II)は原料ホエイに比べて、(Na+K)含有量が大幅に低減し、脱塩率は75.9%と高い。
脱塩ホエイ液(II)における(Ca+Mg)残存率は、表28の値から算出すると78.8%となり、良好である。
ナノろ過に供されるイオン交換ホエイ液の塩素イオン含有量が高く、脱塩処理工程においてCl/(Na+K)比は1.01から0.94にまでしか低下しなかった。