(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771521
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】PD−AU合金触媒を備えたリーンバーン内燃エンジンの排気システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20150813BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20150813BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20150813BHJP
B01J 23/66 20060101ALI20150813BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20150813BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20150813BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20150813BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
B01D53/92
B01D53/62
B01D53/72
B01J23/66 AZAB
F01N3/10 A
F01N3/28 301G
F01N3/28 301C
F01N3/02 321A
F01N3/28 301Q
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-507998(P2011-507998)
(86)(22)【出願日】2009年5月8日
(65)【公表番号】特表2011-519725(P2011-519725A)
(43)【公表日】2011年7月14日
(86)【国際出願番号】GB2009050485
(87)【国際公開番号】WO2009136206
(87)【国際公開日】20091112
【審査請求日】2012年4月9日
(31)【優先権主張番号】0808427.9
(32)【優先日】2008年5月9日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0809233.0
(32)【優先日】2008年5月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット、メアリー、フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ベンジャミン、グッドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、クリストファー、ハインド
(72)【発明者】
【氏名】アグネス、スガンヤ、ラジ
(72)【発明者】
【氏名】ラジ、ラオ、ラジャラム
(72)【発明者】
【氏名】エマ、ルース、ショフィールド
(72)【発明者】
【氏名】シルビー、セシル、ラローズ
【審査官】
近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−216518(JP,A)
【文献】
特開平08−103656(JP,A)
【文献】
特表2010−516445(JP,A)
【文献】
特開平07−204508(JP,A)
【文献】
特開2002−273239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34〜53/96
F01N 3/00〜3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーン内燃エンジンと排気システムを備えてなる装置であって、
前記排気システムが、一以上の触媒後処理構成材を備え、
前記一以上の触媒後処理構成材がハニカムフロースルー基質モノリス及び触媒組成物を備え、
前記触媒組成物は、
第一金属酸化物担体と、前記第一金属酸化物担体上に、パラジウムと金とからなる合金とを含んでなる第一触媒層と、
前記第一触媒層下に配置され、第二金属酸化物担体と、前記第二金属酸化物担体上に白金とを備える第二触媒層と、
を備え、触媒組成物におけるAu:Pdの原子比率が9:1〜1:9である、装置。
【請求項2】
前記触媒組成物におけるAu:Pdの原子比率が5:1〜1:5である、請求項1に記載された装置。
【請求項3】
前記触媒組成物においてAu:Pdの原子比率が2:1〜1:2である、請求項1又は2に記載された装置。
【請求項4】
前記触媒組成物に存在する貴金属の重量%が0.5〜10.0である、請求項1〜3の何れか一項に記載された装置。
【請求項5】
前記触媒組成物において存在する貴金属の重量%が1.0〜5.0である、請求項4に記載された装置。
【請求項6】
前記第一触媒層はパラジウムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載された装置。
【請求項7】
前記第一触媒層と前記第二触媒層とは、ゼオライトをも含む、請求項6に記載された装置。
【請求項8】
前記一以上の触媒後処理構成材の少なくとも一つが、酸化触媒、リーンNOx触媒又はNOx吸収材を備えてなる、請求項1から7の何れか一項に記載された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮点火(ディーゼル)エンジン又はリーンバーンガソリンエンジンのような、リーンバーン内燃エンジンを備えてなる装置、及び一(種)以上の触媒(的な)後処理構成材(component:構成、成分、部品)を備えてなる排気システム(装置)に関する。そのような装置は、例えば車両のような移動用途、又は例えば発電設備のような固定用途で使用される。
【0002】
白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の両方を含んでなる触媒後処理構成材を用いてリーンバーン内燃エンジンからの排ガスを処理することが知られている。例えば、WO2004/025096を参照されたい。
【0003】
共沈殿させた貴金属粒子と金属酸化物粒子、例えばAu/CeO
2を備えた触媒を使用して、リーンバーン排ガスとは対照的に化学量論的排ガスからの排ガス中にある一酸化炭素(CO)を酸化して二酸化炭素(CO
2)に酸化することが提案されている(EP602865を参照)。
【0004】
更に、複数の金属酸化物層を備えてなる層状の金属酸化物触媒を使用して、煙草のような喫煙具から排出されるCOを触媒的にCO
2に変換することが提案されている。この触媒は、外層は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム又はこれらの混合物のように一(種)以上の貴金属を含んでなる(EP0499402参照)。
【0005】
US4,048,096は、ビニルエステルを調製するために、触媒担体上に配置されたパラジウム―金の合金の使用を開示している。
【0006】
GB2444125Aは、第一担持触媒と第二担持触媒を含んでなるエンジン排気触媒を開示している。その第一担持触媒は、白金触媒、白金―パラジウム触媒又はビスマスと共に促進される白金触媒である。第二担持触媒は、パラジウムと金種を含んでなる。その第一担持触媒と第二担持触媒は、異なる層、領域又は基材モノリス上に被覆される。一つの態様において、第二担持触媒を含んでなる内層は、緩衝層による第一担持触媒を含んでなる外層から分離される。この文献は、Pd−Au合金について言及していない。更にPt−Pd−Auの不活性な三元合金の形成を避けるべきで、そのため緩衝層を使用することでPd−AuからPtを分離すると説明している。
【0007】
WO2008/088649は担持白金ベースの触媒と担持パラジウム―金の触媒を含んでなる排出抑制触媒を開示している。この二つの触媒が異なる層、領域又は基材モノリス上に被膜されているので、Pt系触媒は、パラジウム―金触媒の前で、排気流に遭遇する。GB2444125Aと同様に、この文献はPd−Au合金について言及していないが、Pt−Pd−Auの三元合金は避けるべきであると説明している。
【0008】
リーンバーン排ガスを処理する上で、有効で費用効果のある方法において、ユーロIV、V及びVIを含む世界中で、現在及び将来の排気ガス基準を満たす為に多くの問題が存在している。後者において、白金の価格が現在トロイオンス当たりUS$2000を越えていることが認識されている。多くの特別な問題は、燃焼していない炭化水素燃料をCO
2と水に酸化することにより「排気管」からの炭化水素に対する排ガス基準を満たすこと、そして燃料に含まれる硫黄の量を減らす動きが世界中でありながら(アメリカで市販されている超低硫黄ディーゼル燃料(ULSD)は最大15ppmの硫黄を含有してなるものとされ、並びに、現在ヨーロッパで義務付けられている50ppmの硫黄を含有するディーゼルは、2009年の1月から10ppmに減少されることとなっている)、とりわけ審議されていた診断法ベースの法律が導入されるように、後処理触媒の硫黄被毒が課題として残存することとなる。
【0009】
白金と組み合わせられるパラジウムの使用は触媒後処理構成材のコストを減少する一方で、白金と比べて大変酸化し易い(リーン)条件下では、その比較的低い反応性のために、ディーゼル酸化触媒におけるパラジウムの使用は幾分制限されることとなる。高いイオン化ポテンシャル及び低い酸化物安定性を有する白金と異なり、パラジウムは、COや炭化水素(アルケンや長鎖アルカン)の酸化に対する低い比活性度を有する酸化物としてほぼ存在する。更に、排ガスに存在する一酸化窒素の酸化から生じた、二酸化窒素中で、トラップされた粒子状物質を燃焼することによりフィルターの受動的な再生が望まれている場合(EP0341832で開示されている方法による)、パラジウムは、例えばディーゼルのようなリーンバーン排ガス特有の高O
2濃度条件下で、NO酸化に対してより低い比活性度を有する。
【0010】
パラジウムはまた、二酸化硫黄(SO
2)とすばやく反応して安定した硫酸塩を形成できることが知られている。リーン環境において硫酸パラジウムの分解は700℃を超える温度、又はリッチ排ガスにおける低温度(例えば500℃)を必要とするが、リッチ環境にするには燃料の点でペナルティを要する。
【0011】
我々は今、車両用のエンジンのような、リーンバーン内燃エンジンからの排ガスを処理するのに好適な触媒後処理構成材を見出した。その触媒後処理構成材はパラジウムだけの酸化触媒と比較して、炭化水素及び窒素酸化物の反応性と耐硫黄性を改善する。
【0012】
従って、本発明は、リーンバーン内燃エンジンを備えてなる装置及び一(種)以上の触媒後処理構成材を含んでなる排ガスシステムを提供する。それは、一(種)以上の触媒後処理構成材が、金属酸化物担体上にパラジウムと金から成る合金を含む触媒組成物を含んでなる。合金でないAu又はPd(PdOとして)も存在することが理解される。
【0013】
如何なる理論に拘泥することなく、我々は金とパラジウムを合金化することで、パラジウムの金属特性及び反応性が増すことを確信している。我々は、とりわけ、C
3H
6、n―C
8H
18及びNOの酸化に対して、パラジウムの反応性は、Auとの混合により著しく改善することを見出した。
【0014】
触媒組成物においてAu:Pdの原子比率は9:1から1:9で、例えば5:1〜1:5又は2:1〜1:2である。2:1〜1:2、特に2:1〜1:1の原子比率はより広範な比率より、PdとAuの両方の望ましい合金の増加した量を生成しやすいことが期待され、このことは、添付の実施例から理解される。我々はまた、増加するAuがそのAu−PdのNO酸化活性を改善することを見出した。
【0015】
実施態様において、触媒組成物において存在する貴金属の重量%は0.5〜10.0、例えば1.0〜5.0である。
【0016】
本発明の最も広範な態様による触媒組成物は、高温ですばやく再生可能であるにもかかわらず、供給ガスの二酸化硫黄に曝されて活性を失うことが認識されている。そのような問題を軽減する試みとして、パラジウムと金に加えて、その触媒組成物に白金を含むことを我々は検討している。なぜならPtは比較的にパラジウムより硫黄耐性があるためであり、かつ、その触媒組成物における白金の存在が触媒を全体として低温において、より効果的に硫黄を再生させることが可能なためである。しかしながら、我々の予備結果が示すのは(比較例1と2を参照)、Pt、PdとAuは同じ金属酸化物担体(そこでPt−Pd−Auは三元合金として存在しているか否か不明だが)に結合し、比較的高いPt含有量を含むことが、類似の硫酸化触媒より、HCとCOの酸化の点火温度(ライトオフ)がより低く、そのPtの一部はAuと差し替えられ、Pt−Pd−Au/金属酸化物担体触媒におけるPtのより高い量を含むコストに対して、Pt(例えば硫酸化した2Pt:1Pdの活性と比べて)を含むいかなる重要なメリットもないように見える。これにもかかわらず、我々は、以下に示すような手順で、選択的に例えば2Pt:1Pd(重量%)までPdと結合してPtを含むことは、結合したPd−Au合金構成材の硫酸化を減らす又は抑制できることを信じている。更に、その触媒組成物におけるPd−Au合金構成材とPt(及び任意のPd)を組み合わせないことにより、我々はPtが、とりわけ周知な炭化水素とCOの酸化活性を保持できることを信じている。
【0017】
これに関して、一つの態様において、その触媒組成物は白金を含んでなる。それは、この白金がパラジウムと金の合金から分離され、かつ区別された、金属酸化物担体上に配置される。好ましくは、この白金はまたパラジウムと結合し、白金の焼結抵抗を改善する。一つの態様において、その金とパラジウムの合金は第一金属酸化物担体(上)にあり、その白金は(及び任意のパラジウム)第二金属酸化物担体(上)にあり、両方が同じウオッシュコート層において配置(disposed:配列)される。他の実施態様において、第二金属酸化物担体(上)の白金(及び任意のパラジウム)が、第一金属酸化物担体(上)の金とパラジウムの合金を含んでなる領域の上流に、基材モノリスの領域に配置される。さらに他の実施態様において、第二金族酸化物担体(上)の白金(及び任意のパラジウム)が第一金属酸化物担体(上)のパラジウムと金の合金を含んでなる上層(オーバーレイヤ)の下で、層中に配置(disposed:配列)される。
【0018】
上層のPd:Au合金と下層のPt:Pdの配置は有益であり、特に、独占的にではなく、少なくとも二つの重要な理由のために、そこにはゼオライト構成材が両層に含まれている。まず初めに、我々は、この配置が逆の配置より炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)の酸化に対して驚くほど活発で、そこではPd:Auは下層である(結果は示されていない)ことを発見した。これは驚くべきことである。なぜなら、上層が下層へのHCの拡散を妨げるので、上層に配置されたより良いHC酸化触媒(Pt:Pd)がCOとHCの酸化全体に対してより活発であると予想していたためである。
【0019】
我々は、いかなる理論に捕らわれたくないが、この見解に対して二つの可能な理由がある。(i)過剰なO
2条件においてPt又はPt:Pd触媒によるHCとCOの酸化がCOにより著しく妨げられる。そのため、ガス流からのCOを取り除くことによりPt又はPt:Pd触媒の性能を強化することが可能である。Pd:Auの合金触媒は、より高いCOの濃度で比較的高い活性を有する。そのためそのPd:Au合金の上層は、Pt含有の下層と接触する前にガス流からのCOを取り除くという点でより有効である。また(ii)COの酸化は発熱反応であり、上層で発生するエネルギーがAu:Pd合金とPt含有層の両層でHCの酸化を促進する。その逆の配置は(それはPt含有の触媒が上層である)、Au:Pd合金触媒のCOの酸化に対するより高い活性からすぐに恩恵を受けるわけではない。
【0020】
次に、Pd:Au合金の上層、Pt又はPtPdの下層の配置は、処理が少なくて済み、そのため製造するのに少量のエネルギーしか消費しない。例えば
、基材モノリス上
に好適な金属塩及び金属酸化物担体を含むウオッシュコートをコーティング
し、コートされた部分を乾燥し次に焼成し、次に、
そのPt:Pdの下層を
、Pd:Au合金のウオッシュコート
上層で、ウオッシュ
コーティングすることにより、P
t:Pd触媒を準備
し得る;ここで、そのPd:Au合金
は、ウオッシュコートの適切な金属酸化物担体上に前もって固定され
ている。そのPd:Au合金
は、当業者によって理解されるように、正しい量で金属酸化物担体上に金成分(構成材)を配置する化学的性質のため、前もって固定される。
【0021】
しかし、その逆の配置はより労働集約的である。なぜなら前もって固定されたPd:Au合金成分(構成材)を、初めに担体の上へ覆う、しかしPt塩がPd:Au合金触媒と接触することを防ぐために、それにより触媒全体のHC酸化活性を減らしながら、Pt:Pd成分(構成材)はまた別々の手順で金属酸化物担体上に前もって固定されなければならない。即ち、金属酸化物と結合してPtとPdの金属塩を使用するシンプルなウオッシュコートの方法が使用できない。その為、望ましい配置はエネルギーをあまり消費しない。なぜなら金属酸化物担体上へPt:Pd成分(構成材)を前もって固定する追加の焼成手順が必要ないからである。
【0022】
その基材モノリスは、ハニカムフロースルーモノリスで、金属性又はセラミック又はフィルターのいずれかである。そのフィルターはフルフィルターで、例えばいわゆるウォールフローフィルター、又はEP1057519又はWO01/080978で開示されているような部分フィルターである。
【0023】
その触媒後処理構成材は、酸化触媒、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)又はリーンNO
x触媒(好適な炭化水素の還元剤の供給方法と共に)、又はNO酸化を必要とする装置用、NO
x吸収材(バリウム、セシウム又はポッタジウムのような塩基性金属を含んでなる)、触媒化煤フィルター又はCRTで使用するための酸化触媒である。(
図1で開示及びEP0341832で述べられているように)この明細書の目的のため、酸化触媒を含んでなるフィルター基材モノリスは触媒化煤フィルター又はCSFとして知られる。
【0024】
本発明による装置において、リーンバーン内燃エンジンは、例えばディーゼル燃料を使用して動力を供給される圧縮燃焼エンジン、又はリーンバーンガソリンエンジンになりうる。そのエンジン燃料はまた少なくとも一部バイオディーゼル、バイオエタノール、ジーティーエル(GTL)プロセスから抽出される成分、液化石油ガス(LPG)又は天然ガス(NG)を含む。
【0025】
本発明をより十分に理解するために、添付の図表について申し述べる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、移動車両用途の本発明による装置の模式図を示す。
【
図2】
図2は、本発明による熟成した触媒のH
2温度のプログラムによる減少に対する結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明による様々な熟成した触媒及びPdだけ、Auだけ及び1.7Pt−0.8Pd/Al
2O
3の参照触媒の温度に対するアルカン(n―C
8H
18)の変換を描いたグラフである。
【
図4】
図4は、
図3で示した触媒の温度に対する%NOの酸化を描くグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、ディーゼルエンジン12と排気システム14を備えてなる本発明による装置10を示す。排気システム14は、触媒後処理構成材同士すなわちそのエンジンの排気マニホルドの近く(いわゆる近接結合した位置)に配置された不活性金属フロースルー基材を覆う2Au−0.5Pd/Al
2O
3触媒を繋いでいる導管16を備えてなる。近接接合触媒18の下流は順に、白金族金属触媒化セラミックウォールフローフィルター20と更に遠い2Au−0.5Pd/Al
2O
3触媒22である。
【0028】
使用中、そのシステムは、キーを入れてすぐに活性温度に達する場所に配置されたそのAu−Pd合金触媒の低温点火活性から恩恵を受ける。更にその触媒が比較的高温に曝される場所に配置されると、比較的硫黄の無い状態を保つことができる。即ち、エンジンマニホルドで比較的高温であることが継続的にその触媒18における硫黄再生を促進する。触媒18はCOと炭化水素の酸化及びNOをNO
2への酸化も促進する。NO
2は下流触媒化フィルター20上で捕捉された粒子状物質を受動的に酸化するのに好適である。EP0341832で開示されている、NO
2におけるディーゼルエンジンの排気システムのフィルター上で捕捉された煤を燃焼する方法からも理解されよう。
【0029】
そのシステムは次のように設定されている。そのフィルターの不定期な強制的再生が一以上のエンジンシリンダーを通って追加の炭化水素燃料を注入することにより生じ、その燃料は触媒18とフィルター触媒上で燃焼され、それで発生する発熱がフィルター上のいかなる粒子状物質を燃焼し、そのフィルターを実質上「クリーン」な状態に戻す働きがある。そのフィルターの強制的再生の間、排ガスの中に取り込まれた炭化水素燃料は、フィルターを「滑る」ように進み、触媒22上で酸化される。
【0030】
次の実施例は実例としてだけ提供される。
【0031】
実施例
実施例1−準備
2.5重量%のほんの僅かな金属充填でAl
2O
3上に分散された一連のPd−Au触媒と、0:1〜1:0のPd:Auの原子組成が特徴付けられた。サンプルは次のように準備された。硝酸パラジウムと微粒子のアルミナ担体を含有するHAuCl
4の水性混合物に塩基が添加され、担体上で金をAu
0として加水分解し、沈殿させた。その懸濁液は適切な期間後、ろ過され、そのろ液は洗浄され、塩化物イオンを取り除き、その物質は乾燥され次に焼成された。この技術によって準備された触媒は本明細書で「フレッシュ」触媒と呼ばれる。
【0032】
上記の方法により準備された触媒は、表1に示される
【表1】
【0033】
標準
実施例1によって準備された触媒と同じように、水性白金とパラジウム塩の混合物と担体の含浸により準備、乾燥、焼成された1.7Pt−0.8Pd/Al
2O
3触媒が標準(物質)用として使用された。
【0034】
実施例2−熟成(時効)
実施例1の方法によって準備されたフレッシュ触媒と参照用のPt:Pd触媒は48時間空気中で650℃、750℃又は800℃で熟成された。
【0035】
実施例3−リーン水熱熟成
リーン水熱熟成(LHA)は750℃で4.5%水、残りは空気中で48時間行われた。
【0036】
実施例4−テスト条件
触媒は次の入口ガス混合物(1000ppm CO,900ppm HC(C
3H
6 又は C1としてn―C
8H
18)、200ppm NO、2ppm SO
2、12%O
2、4.5%CO
2、4.5%H
2O そして残りN
2)を使用して合成触媒活性テスト(SCAT)装置で試験した。
【0037】
実施例5−硫黄熟成
実施例2又は3によって準備した熟成された触媒の硫黄熟成が、触媒の15〜400mgS/g(2〜50g/Lに相当)をガス流中の100−150ppmのSO
2と共に300℃で実施例4のSCAT装置を使用して、望ましい暴露レベルまで行われた。硫黄熟成を施した触媒は500℃で20分間、実施例4で表されたそのフルガス混合物の中で再生された。
【0038】
実施例6−触媒特性
実施例2の方法によって得られた、熟成された触媒のサンプルは、下の表2に示された結果と共に、X線回折(XRD)により特徴づけられた。
【表2】
【0039】
完全な合金化がなされるのは、Pd:Auの原子比率が1:2(2重量%Auと0.5重量%Pd)及び1:1(1.7重量%Auと0.8重量%Pd)であることが表2で示される結果から理解できる。その1:1の値を超えるPd:Auの原子比率を増加することで、遊離したパラジウム酸化物(PdO)と共にAuの濃い合金の形成を引き起こす。
【0040】
実施例2によって準備されたAl
2O
3の担体上のフレッシュ2Au−0.5PdのAu/Pdの微粒子の特徴は、透過型電子顕微鏡(TEM)−エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、粒子が交わるようにして、Au/Pdの比率は、合金構造を示しながら、一定のままであることを示す。
【0041】
実施例1によって準備された触媒の配列の昇温還元(TPR)分析(その結果は
図2に示されている)はAu:Pdの比率を減少させることで、AuがPdOの希釈性を促進するが、遊離したPdOを発生させることを示す。
【0042】
実施例7−触媒テスト
表3は、実施例1によって準備され、750℃で実施例2によって熟成され(実施例6によって硫黄熟成を施された)及び実施例4によって試験された(炭化水素としてC
3H
6を使用して)触媒について行われた活性テストの結果を示している。T80とT50は、その触媒がCO又は炭化水素(HC)をそれぞれ80%又は50%の変換効率で酸化させる温度であることを理解できる。
【表3】
【0043】
750℃で熱熟成後、酸化反応性はPd−Au>Pd≫Auの順に増加する。Auだけの触媒は著しく活性が小さかった。PdとPd−Auの触媒は硫酸化後、同程度非活性化されるが、我々は500℃で硫酸化後、活性の回復の程度は触媒の組成によることを見出した。均質合金組成(2Au−0.5Pdと1.7Au−0.8Pd)を有する触媒は高温度暴露によりすぐに脱硫酸化できることも理解できる。
【0044】
実施例8−熟成温度の効果
表4は、実施例1によって準備されたフレッシュPdだけの触媒、実施例2、3、5によって準備された熟成された2Au−0.5Pd/Al
2O
3触媒の活性を比較した結果を示している。テストは実施例4に従って行われた(炭化水素としてC
3H
6を使用した)。
【表4】
【0045】
実施例2によって熟成されたフレッシュ触媒は合金特性を示すことが理解できる。熱熟成及びその雰囲気が2Au−0.5Pdを著しく非活性化しなく、脱硫酸化特性が、フレッシュ触媒に比べて熱熟成後、改善することが表4の結果から理解できる。
【0046】
実施例9−NO酸化とアルカンの酸化活性
図3と4は、実施例1と参照に従って準備され、実施例2によって750℃で熟成させた触媒と参照触媒に対して行われた実施例4(炭化水素としてn―C
8H
18を使用した)によるテスト方法の結果を示す。
図3から、1.7Pt−0.8Pd、2Au−0.5Pd及び1.7Au−0.8Pdの触媒に対するアルカンの変換活性は類似しているが、Pdだけの触媒は著しく活性が小さく、Auだけの触媒は更に活性が小さいことが理解できる。
【0047】
図4は、1.7Pt−0.8Pdと2Au−0.5PdのNO酸化活性は大変類似しているが、1.7Au−0.8Pdはほんの僅かに活性が小さいことを示す。対照的にPdだけ及びAuだけの触媒は実質上NO酸化活性がほぼ無いことを示す。
【0048】
比較例1−Pt−Pd−Au触媒の準備
実施例1によって準備されたPd−Au/Al
2O
3のサンプルを白金硝酸水溶液と共に湿式含浸し、望ましいPt充填を行った。その結果生じる物質を次に乾燥し、焼成した。
【0049】
比較例2−Pt−Pd−Au触媒のテスト
実施例10によって準備されたPt−Pd−Au/Al
2O
3の触媒を実施例2によって750℃で熟成し、実施例4と5に従って試験した。その結果は表5に示しており、その結果から全てのクリーンな触媒の活性は類似していることが理解される。しかし、硫黄暴露に続いて、0.5Pt−0.8Pd−1.2Auと0.2Pt−0.8Pd−1.5Auのサンプルは活性において大変類似した損失を示すが、0.9Pt−0.8Pd−0.8Auのサンプルは、前者の二つの触媒のいずれと比べても、約20℃、より良いCO
T80値と約10℃、より良いHC
T50値を有する。増加するAu含有量は硫黄再生活性を改善するが、耐硫黄性は減少する。試験される物質のいずれも合金であるかどうかは現時点では知られていない。しかし、Pd−AuにPtを大量に添加することの僅かな利点はあるように見えるが、著しいコスト対利点がないように見える。
【表5】
【0050】
要約すると、完全な合金化が形成される1:1と1:2のPd:Auの原子比率を有する触媒は、遊離したPdOを有する触媒又はPdだけ又はAuだけの触媒と大変異なる反応特性を示すことを総合的にその結果は表す。その触媒は脱硫酸化特性、及びPdだけの触媒に対してより高いアルケンとNOの酸化活性を改善した。この均質合金の形成はPd−Auシステムにおいて有利な特性を作り出すため望ましい。また、Au−Pdのシステムは僅かな費用でPt−Pdのシステムと類似した活性を示すことが理解される。
【0051】
いかなる疑問を避けるため、本明細書で引用されたいかなる及び全ての先行技術文献の全内容は本明細書で参照することにより組み込まれる。