【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本願発明をよりよく示すために提供されるのであって、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及される程度に応じて、それは、例示目的であるに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。当業者は、創作能力の発揮なくしてかつ本発明の範囲から逸脱することなくして、等価な手段もしくは反応物を発展させ得る。
【0038】
(実施例1:結果)
(ADマウス網膜におけるAβ沈着物は、クルクミンを使用して視覚化され得る)
ヒトAPPsweおよびPS1dE9導入遺伝子を有するAD−Tgマウスを使用して、眼においてAβ斑を検出するための非侵襲的ツールを開発する可能性を評価した。本発明者らは、クルクミンが、AD−Tgマウスの海馬において、ヒトAβに特異的な抗体によって検出された同じ斑に対して親和性を有することを初めて確認した(
図1a;別個のチャネル
図1bおよび1c)。より高倍率では、画像は、各手順後に得られる特定の染色パターンを示す(
図1dおよび1e)。ヒトAβ斑は、非Tg同腹仔野生型(野生型(wt))マウスの脳において検出できなかった(
図1f)。次いで、本発明者らは、AD−Tgマウスの眼におけるAβ斑がまた、クルクミンを結合し得るか否かを試験した。高解像度での試験は、AD−Tgマウスの網膜においてクルクミンおよび抗ヒトAβ抗体の両方によって標識されたAβ斑の存在を明らかにした(
図1g〜1i、網膜全マウント;
図1k〜1m,断片(cross section))が、非Tg(野生型)マウスの網膜においては存在しなかった(
図1jおよび1n)。代表的画像は、内網状層(IPL;
図1g)、内顆粒層(INL)/外網状層(OPL;
図1h)、および外顆粒層(ONL;
図1i)を含むように、種々の深さにおいて網膜全マウントにおけるAβ斑の位置を示す(80μm深度の焦点面において連続収集)。断片の分析から、OPL層を介した神経節細胞層(GCL)およびIPLにおける見かけの優勢を伴う、深網膜層および脈絡膜におけるAβ斑沈着をさらに確認した(
図1k〜1m)。ヒトAβ斑は、上記非Tg(野生型)同腹仔においては存在しなかった(
図1jおよび1n)のに対して、時折の小さなクルクミン陽性斑が検出された。野生型マウスにおいてクルクミン染色によって検出されたこれら小さなかつまばらな斑の性質を決定するために、本発明者らは、10ヶ月齢の野生型マウスの全マウント網膜において、クルクミンおよびマウスAβに対して特異的な抗体を使用して、二重染色実験を行った。事実、上記野生型網膜においてクルクミンによって検出された小さな斑は、上記抗マウスAβ抗体で同時標識されたことが分かったので、内因的に形成されたマウスAβ沈着物としてそれらの正体(identity)を確認した(
図8a〜8d)。
【0039】
(実施例2:結果)
(Aβ斑は、AD患者の網膜において形成され、クルクミンによって視覚化され得た)
本発明者らは、次に、ADの確定診断を有する患者(n=9;48〜94歳の年齢範囲;種々の疾患重篤度、彼らの神経病理報告に基づいて分類)の死後の眼において、および年齢を合わせた通常のコントロール(n=4;66〜92歳;ヒトドナーの眼の記録を参照のこと(表1を参照のこと))の死後の眼においてAβ斑の存在を試験した。360〜710nmの範囲の励起下で観察され、リポフスチン/脂質沈着物および/もしくはホルマリンでの長期の固定と関連した固定されたヒトの眼の自己蛍光および非特異的シグナル[21,22]を、スダンブラックB染色によって除去した(
図2)。クルクミン染色については、本発明者らは、ヒト全マウント網膜をスダンブラックBとともに最初に浸漬し(
図2aおよび2c;斑は認められなかった)、続いて、クルクミンに曝した(
図2bおよび2d;それぞれの画像は、同じ組織位置内の斑を示す)。クルクミンによって検出された斑(1〜10μmの範囲(代表的には、約5μm))は、上記GCL網膜層、IPL網膜層およびINL網膜層に対応する種々の焦点深度において、および上記脳において報告された斑病理に対する明らかな相関とともに、試験した全てのAD患者の眼において見いだされた(
図2aおよび2g)。本発明者らはまた、ヒトAβに対して向けられる抗体を用いて上記ヒト網膜を分析した。本発明者らは、AD患者においてAβ斑を同定し、それらの構造が、上記マウスの網膜および脳において見いだされたものに類似であることを見出した[
図2hおよび2iは、最内網膜層(すなわち、GCL)を表し、ここで上記斑は、容易に検出され;
図2iは、上記網膜Aβ斑構造のより高倍率の画像であり;
図2jは、より深い連続焦点面(すなわち、IPL)を表す]。上記斑は、2次抗体のみを使用した場合には検出できなかった(データは示さず)。Aβに対する免疫標識の後にヒト網膜をクルクミンへ曝露したところ、それらの同時局在が確認された(
図2k〜2m)。非ADヒトの眼において、Aβ斑は検出されなかった(
図2n)。
【0040】
【表1】
(実施例3:結果)
(ADマウスにおける、クルクミンによってインビボで染色されたAβ斑は、脳におけるよりも前に網膜において検出され、疾患進行の間に蓄積する)
上記網膜における斑を画像化するためのクルクミンの使用を確立するために、本発明者らは、全身投与した場合の、その眼へのバイオアベイラビリティーを試験した。この目的のために、マウスに、クルクミンを静脈内注射した。クルクミン投与後の標識された斑は、AD−Tgマウスの網膜および脳において検出できたが、上記非Tg(野生型)コントロールにおいては検出できなかった(
図3)。これら所見により、クルクミンが血液脳関門を通過することを確認した。このことは、クルクミンが血液網膜関門を通過し、かつインビボでAβ斑に対して高い親和性を有することを示唆する。重要なことには、クルクミン標識した斑は、単一のクルクミン注射後もしくは複数回の注射の後に、検出できた。2.5ヶ月齢、5ヶ月齢、9ヶ月齢および17ヶ月齢のAD−Tgマウスの網膜および脳の海馬の代表的なz軸投影ならびに皮質画像は、網膜と脳における斑沈着の間の年齢依存性の相関、および疾患進行の経過にわたる蓄積の増加を実証する(
図3a〜n)。重要なことには、インビボでのクルクミン投与後のAD−Tgマウスにおいて2.5ヶ月齢程度の早期に、斑を網膜において検出した(
図3aおよび3b)が、脳においては検出しなかった(
図3cおよび3d)。このことは、上記網膜におけるAβ斑が、脳病理より先に起こることを示唆する。本発明者らは、これらクルクミン標識した斑が、抗ヒトAβ抗体染色によりエキソビボで同時局在することをさらに確認した(
図3bおよび3f)。Aβ斑は、AD−Tgマウスのこの系統において疾患の始まりおよび進行の以前の説明と一致して[23]、5ヶ月齢の脳において最初に検出可能であった(
図3gおよび3h)。野生型マウスにおいて、Aβ斑は、9ヶ月齢程度では網膜(
図3o)および脳(
図3pおよび3q)の両方において検出できなかった。
【0041】
(実施例4:結果)
(Aβ斑負荷は、ワクチン接種治療後の網膜において減少する)
本発明者らは、AD−Tgマウスにおいて認められた網膜の斑の運命が、同じ処置に対して応答した脳のAβ斑のものに類似であるか否かをさらに調査した。ミエリン由来ペプチドもしくはミエリン由来ペプチドの弱いアゴニストは、神経保護を効率的に誘導し、斑形成を低下させることを示した[24〜26]。自己免疫性脳脊髄炎を誘発するリスクなしにワクチン接種の有益な効果を確認するために、本発明者らは、キャリアおよびアジュバントとして樹状細胞(DC)を用いて、AD−Tgマウスに、改変したミエリン由来ペプチド(MOG45D(MOG 35−5527,28に由来する))をワクチン接種することを選択した。MOG45D負荷DCもしくはPBSのいずれかを注射した10ヶ月齢のAD−Tgマウスおよび野生型同腹仔(1群あたり4マウス/8網膜)の全マウントした網膜を、クルクミンおよび抗Aβ抗体の両方を使用して、Aβ斑についてエキソビボで標識した(
図4)。代表的な軸(z積み重ね)投影画像は、PBS処置コントロールと比較して、ワクチン接種したAD−TgマウスにおけるAβ斑の数の実質的な低下を実証した(それぞれ、
図4a〜4c 対
図4dおよび4f;
図4bおよび4c、ならびに
図4eおよび4fにおいて別個のチャネル)。野生型マウスにおいては、Aβ斑(クルクミンおよび抗ヒトAβ抗体で二重染色)は検出されなかった(
図4g)。高解像度画像において、本発明者らは、小さな網膜の斑(大部分は直径が<1μm)をときおり検出した。上記斑は、内因性マウスAPP遺伝子から生じることが分かった(
図8)。これら小さな斑は、クルクミンによって染色されたが、全ての3つの実験群において抗ヒトAβ抗体によって染色されなかった(
図4a、4dおよび4g)。本発明者らは、視神経乳頭の周りの12個の領域(合計約0.45mm
2)を記録することによって、斑の数および大きさをさらに定量化し、各領域において60μm走査深度にわたって斑を定量化した(
図4h;各領域は、矩形1〜12で示される)。クルクミン染色によって検出される斑の数の有意な低下は、PBS処置コントロールと比較して、ワクチン接種したAD−Tgマウスの網膜において見出された(
図4i;P=0.0028)。実質的な減少はまた、PBS処置AD−Tgマウスに対するワクチン接種したAD−Tgマウスにおける網膜の斑によって示される(covered)平均面積において認められた(
図3j;P=0.0002)。顕著なことには、合計の斑面積において、PBS処置マウスに対して有意な減少が、また、同じワクチン接種したマウスの脳由来の海馬および皮質において認められた(
図4k;P=0.0085)。
【0042】
(実施例5:結果)
(全身注射したクルクミンを使用する、眼におけるAβ斑のインビボ画像化)
生きている被験体の眼においてクルクミンによってAβ斑を視覚化する潜在力をさらに調査するために、本発明者らは、眼の摘出前には灌流していないマウスの全マウント網膜(より生理学的な状況)において、Aβ斑を同定する本発明者らのものの能力を最初に試験した。代表的な軸投影画像は、毛細管内の赤血球に由来するバックグラウンドシグナルを含んでいたこれら条件下ですら、クルクミンを前もってi.v.注射したAD−Tgマウスの網膜において、斑が同定できたことを実証した(
図5a)。重要なことには、クルクミンの非存在下では、斑は、PBSをi.v.注射したAD−Tgマウスにおいて検出できなかった(
図5b)。このことは、これら画像化様式を使用する場合、斑は、それらの自己蛍光シグナルによってのみ、網膜においてわずかに検出可能であることを示唆する。予測されるように、クルクミンを注射した非Tg(野生型)マウスにおいて、斑はやはり検出されなかった(
図5c)。抗ヒトAβ抗体を用いたエキソビボでの斑のさらなる標識から、クルクミン染色のAβ特異性が確認された(データは示さず)。抗Aβ抗体で標識したADTgマウスの全マウント網膜におけるAβ斑は、血管内部およびそれらの実質付近で見いだされた(
図5d;共焦点仮想断片)。本発明者らは、血管から生じるバックグラウンドシグナルを減少させる一方で、Aβ斑を検出し得るか否かをさらに評価した。この目的のために、本発明者らは、音響光学式波長可変フィルタ(AOTF)でのスペクトル画像化[29]およびゲート制御カメラを使用する蛍光寿命画像化からなる、マルチスペクトル画像化技術を含む蛍光顕微鏡(Nikon TE2000)を使用して特定の光学的サインをモニターした;画像収集に続いて、本発明者らが以前に開発したソフトウェア[30]を使用して、分析後画像セグメント化および分類を行った。単一波長チャネルにおけるAOTFを装備した顕微鏡を使用して画像化されたクルクミン標識した斑は、AD−Tgマウス網膜において認められた(
図5e)。上記AOTFベースの画像化を適用して、クルクミン標識した斑のスペクトルサインを記録し、カラー分類したデジタル画像へ変換した後、本発明者らは、血管によって発生した自己蛍光ノイズを除去する一方で、「真の」シグナルとしてAβ斑の特異的光学サインを同定することができた(
図5f)。非侵襲的斑検出のための本発明者らのアプローチの実施可能性を調査するために、本発明者らは、波長制御光源およびデジタルカメラ付きの改変立体顕微鏡(Leica S6E)を使用して、生きているマウスにおける網膜のインビボ画像化を行った。画像化の2時間前にクルクミン(7.5mg/kg)を1回の注射した後に、クルクミン標識された斑は、励起波長546/15nmにおいてAD−Tgマウスの網膜において特異的に視覚化された(
図5g〜5j)。斑は、視神経乳頭近辺の領域において大部分が検出された。平均の斑の大きさは、全マウント網膜(エキソビボ)において観察されたものと適合していた。クルクミンをi.v.注射した非Tg(野生型)マウス(
図5k)において、またはクルクミン注射を受けなかったAD−Tgマウスにおいて(データは示さず)、斑は検出されなかった。改変した立体顕微鏡によって記録されたシグナルが上記斑から発生したことを確かめるために、マウスを安楽死させ、上記クルクミン標識された斑の存在を、全マウント網膜で確認した(データは示さず)。
【0043】
(実施例6:マウス)
キメラマウス/ヒトAPP(APPswe)遺伝子および変異ヒトプレセニリン1(エキソン9が欠失−PSEN1rE9)遺伝子を有する二重トランスジェニックマウス(雌性および雄性とも同数)、ならびにそれらの年齢を合わせた非Tg同腹仔を、Jackson Laboratories(Bar Harbour,ME,系統#4462)から購入し、繁殖させ、Cedars−Sinai Medical Center(Los Angeles,CA)の比較医学の動物センターにおいて維持した。全ての実験を、Cedars−Sinai Institutional Animal Care and Use Committeeによって作られた規則に従って承認され、行われた。
【0044】
(実施例7:遺伝子型決定)
ゲノムDNAを、製造業者のプロトコルに従って、DNA抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して、尾の先端0.5cmから抽出した。この研究において使用したマウスを、以前に記載された(Jankowsky,2004,Ref.#120)ように、PCRによって、導入遺伝子の存在について遺伝子型決定を行なった。
【0045】
(実施例8:ワクチン接種調製物)
改変ミエリン由来ペプチド(MOG45D)を、脳炎誘発性ペプチドMOG
(35−55)から得た(Koehler,2002,Ref.#285;Shao,2002,Ref.#283;Zhong,2002,Ref.#284;Hauben,2001,Ref.#28;およびHauben,2001,Ref.#35)。ワクチン接種のために、MOG45D(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、非Tg同腹仔ドナーマウスからの骨髄由来樹状細胞に添加した。ワクチン接種のための樹状細胞の調製は、以前に記載されたとおりであった(Hauben,2003,Ref.#34)。
【0046】
(実施例9:ワクチン接種の実験的レジメン)
7ヶ月齢のAD−Tgマウスに、DC−MOG45(1×PBS/動物において0.5×10
6細胞/200ml)を、3ヶ月にわたって1ヶ月に1回注射した。7ヶ月齢のAD−Tgマウスのコントロール群に、対応するレジメンに従って、1×PBSを注射した。上記研究の最後に、全てのマウスを、麻酔下で、2.5% パラホルムアルデヒド(「PFA」)(Sigma)後に1×PBSを用いて灌流し、当該マウスの脳および眼を、さらなる分析のために集めた。
【0047】
(実施例10:動物組織)
マウスに麻酔をかけ、4% 氷冷緩衝化PFAで灌流し、あるマウス群は、灌流しなかった。それらのマウスの眼を摘出し、直ぐに4% 新鮮PFA中で一晩固定した。全マウント網膜のために、上記眼を解剖し、前部を除去した。眼杯を、10分間にわたってヒアルロニダーゼ(タイプI−S)(0.07mg/ml)(Sigma)中に浸漬して液化し、硝子体残渣を除去し、次いで、PBS中で、10分間、3回洗浄し、上記全マウント網膜を集めた。全眼の薄片作製のために、上記眼を、4% PFA中30% スクロースに2時間置き、次いで、PBS中、15分間、3回洗浄した。上記眼を、O.C.T中に包埋し、ドライアイス上でゆっくりと凍結させ、次いで、クリオスタットで矢状方向に切片化した(7μm)。脳を集め、直ぐに4% 新鮮PFA中で一晩固定した。上記脳を、30% スクロース(4% PFA中)勾配中に置いた。脳を、PBS中、15分間、3回洗浄し、次に、O.C.T中に包埋し、ドライアイス上でゆっくりと凍結させ、次いで、クリオスタットで冠状面に切片化した(30μm)。
【0048】
(実施例11:ヒトの剖検眼)
アルツハイマー患者からの剖検眼を、Alzheimer’s Disease Research Center,Department of Pathology,University of Southern California(Los Angeles,CA)から、IRBプロトコル99491および3201の下で入手した。健康なドナーの眼を、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から購入した。NDRIは、管理委員会(managerial committee)によって承認され、National Institutes of Health監督下にあるヒト組織収集プロトコルを有する。病気の眼および正常な眼を固定し、10% 中性緩衝化ホルマリン中に貯蔵した。さらに、本発明者らは、固定せずに凍結した2つの健康な眼を使用し、−80℃において貯蔵した。全マウント網膜を、上記眼から調製し、免疫組織化学によってさらに研究した。
【0049】
(実施例12:クルクミンの尾静脈注射)
インビボでのAβ斑画像化のために、AD−Tgマウスおよび非Tg野生型マウスの尾静脈に、PBS中のクルクミン(7連続日にわたって7.5mg/kg/日)もしくはPBSを静脈内注射した。その後、脳および眼を、凍結切片化するかまたは全マウント網膜用に調製した。代替の実施形態において、クルクミンを、患者に経口投与した。
【0050】
(実施例13:免疫組織化学)
脳凍結切片(30μm厚)、網膜切片(凍結切片)(7μm厚)および全マウント網膜を、20% ウマ血清(Invitrogen)および0.01〜0.1% Triton X−100(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を含む透過化/ブロッキング溶液で処理した。切片を、4℃において一晩、10% ブロッキング溶液を含むPBS中の以下の1次Ab(マウス抗Aβ[ヒトアミノ酸残基1−17;クローン6E10(1:100;Milipore,Temecula,CA)])の特定の組み合わせを用いて染色した。上記切片を、1時間にわたって室温において2次Abとともにインキュベートし、次いで、1×PBSで3回洗浄し、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、ジヒドロクロリド(DAPI,Vector Laboratories,Peterborough,UK)を含むかもしくは含まないVectorshieldを用いてマウントした。1×PBS中の2次Ab溶液には、Cy−5結合体化ロバ抗マウス抗体(1:200;Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)を含めた。陰性コントロールを、1次抗体を省いて同じプロトコルで処理して、非特異的標識を評価した。顕微鏡分析のために、本発明者らは、Zeiss ApoTome蛍光を使用した。
【0051】
(実施例14:クルクミン染色)
クルクミン(Sigma−Aldrich)を0.5M NaOH,pH=7.9中に溶解し、1×PBS中に直ぐに希釈して、0.1mg/mlのクルクミン溶液を調製した。脳および網膜の組織凍結切片(それぞれ、30μm厚および7μm厚)ならびに全マウント網膜を、室温においてクルクミン溶液で10分間にわたって染色し、次いで、1×PBSを用いてそれぞれ15分にわたって3回すすいだ。上記サンプルを、GVAマウント媒体(Zymed)で覆った。
【0052】
インビボでアミロイド斑を染色/標識し得るさらなる化合物は、当該分野で公知であり、上記化合物としては、チオフラビンSおよびチオフラビンT、ならびにいくつかの誘導体、コンゴーレッドおよび誘導体、メトキシ−X04、Pittsburgh Compound−B(PiB)、DDNP、クリサミン−Gおよび他いくつかが挙げられる。しかし、クルクミンおよびその誘導体は、以下の利点があるため、動物モデルおよびヒトにおけるアミロイド斑のインビボでの光学的画像化のために非常に力がある。クルクミンは、一般に使用される光学的スペクトルで特異的かつ非常に明るいシグナルを発生し、市販され、例外的に低コストである。クルクミンに関連する安全性の問題は最小限であり(高用量ですら)、抗酸化剤として患者の健康に有益であるとすら考えられ得る。クルクミンは、Aβに対して非常に良好なインビトロ結合特性およびインビボ結合特性を有する有効なリガンドであり、良好な初期の脳取り込み率および脳からの洗い出し率を提供する(インビボ画像化剤に関する重要な特性)。
【0053】
(実施例15:定量化)
染色した組織の顕微鏡写真を、AxioCam MRmモノクロームカメラver.3.0(1388×1040ピクセルの解像度、6.45μm×6.45μmピクセルサイズ、ダイナミックレンジ>1:2200(ペルチエ冷却センサに起因して低ノイズ画像を伝える)で)付きのAxio Imager Z1 ApoTome装備顕微鏡(電動化Z−ドライブ付き)で得た。Aβ斑の数および面積(βm2)の定量分析を、マウス1匹あたり2つの全マウントした網膜から行った(n=4マウス/群)。各画像は、0.28 βmの解像度を有する40×対物レンズで捕捉し、0.04mm
2の面積、および60μmの走査深度内で視神経乳頭周りの合計12個の矩形の領域(電動化走査ステージを使用した、連続焦点面において複数の仮想切片画像)を含んだ。平均の斑半径(クルクミン染色後)の測定を各動物群について完了し、続いて、各動物群において平均の斑面積の計算を完了した。収集のために、本発明者らは、類似の曝露時間(約75分)および全ての画像について同じゲイン値(0)を使用した。画像の後処理は行わなかった。クルクミンで染色したAβ斑の発光シグナルを、網膜組織におけるバックグラウンドシグナルと比較して、シグナル 対 バックグラウンド比を決定した。上記画像から計算したシグナル−対−バックグラウンドノイズ比は高くかつ3:1〜10:1の範囲内であった。脳におけるAβ斑の数および面積(βm2)の定量分析は、海馬および皮質領域を覆う面積にわたって、450μm間隔で、マウス1匹あたり3つの冠状面切片(各々2つの半球)から決定した。上記標本の各領域からの光学的切片を、NIH Image Jプログラム(National Institutes of Health)へインポートした。グレースケールへの変換を行って、免疫反応性の領域とバックグラウンドの領域とを区別した。免疫反応性の総面積および定量レベルを、標準化したカスタムヒストグラムベースの閾値技術を使用して決定し、次いで、粒子分析に供した。
【0054】
(実施例16:スペクトル画像化およびマルチスペクトル画像化)
スペクトル画像化は、あらゆるピクセルにおいて正確な光学的サインを発生する、多数の一連の波長において、物体のデジタル画像を提供する。クルクミンを用いてインビボで標識したAβ斑の蛍光スペクトルサインを、以下の装置を用いて本発明者らのスペクトル画像化システムによって記録した:Nikon蛍光顕微鏡(E800およびTE2000)、水銀アークランプおよびキセノンアークランプ、CCDカメラ、AOTF(音響光学式波長可変フィルタ)ベースのスペクトル画像収集システム(ChromoDynamics,Inc)[29]および本発明者らのMinimally Invasive Surgical Technologies Instituteが開発した分析後画像化ソフトウェア[30]。最終的な画像は、分析した物体の大きさおよび位置を表す、生の画像から抽出したスペクトルサインの視覚的な疑似カラー描写を提供した。マルチスペクトル画像化において、パルス化レーザーおよびLaVision PicoStar HRゲート制御カメラで行った蛍光寿命画像化は、上記スペクトル収集を補っていた。
【0055】
図6は、本発明の一実施形態に従った、Aβ斑をインビボで診断、予後予測、および分析するためのスペクトル画像化システム100のフロー図を示す。上記主題の網膜110を、蛍光マーカーを用いて染色して、Aβ斑を標識する。その直後に、上記染色した網膜110を、高解像度で蛍光および散乱シグナルを視覚化するように調整された画像化デバイス120によって画像化する。上記画像化デバイス120に、Polychrome V可変式スペクトル光源130を取り付け得る。さらなる実施形態において、上記スペクトル画像化システム100は、カラーデジタルカメラ140(例えば、MicroFire)および1種以上の拡大レンズを組み込んで、拡大および画像詳細を改善し得る。画像収集170は、画像化ソフトウェア160を使用して、分析後画像セグメント化および分類によって達成される。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態に従った、Aβ斑を診断、予後予測、および分析するためのスペクトル画像化システム200のフロー図を示す。上記主題の網膜210を、蛍光マーカーを用いて染色し、Aβ斑を標識する。その直後に、上記染色した網膜210を、画像化デバイス220を用いて画像化する。上記画像化デバイス220に、音響光学式波長可変フィルタ(AOTF)230でのスペクトル画像化およびデジタルカメラ240を使用する蛍光寿命画像化から構成されるマルチスペクトル画像化技術を取り付け得る。画像収集260は、画像化ソフトウェア250を使用する分析後画像セグメント化および分類によって達成される。
【0057】
(実施例17:マウス網膜のインビボ画像化)
AD−Tgマウスおよび野生型マウスの網膜を、クルクミン静脈内注射の2時間後に画像化した。ケタミン100mg/ml/kgおよびキシラジン20mg/ml/kgでマウスを麻酔した。マウスの瞳孔を、0.5% トロピカミド眼用溶液(Mydral;Bausch & Lomb)と組み合わせた0.5% フェニレフリンヒドロクロリド眼用溶液(Bausch & Lomb)を用いて、約2mm直径に拡張させた。画像化プロセスの間に、上記マウスを立体顕微鏡のステージに配置し、その眼を、カルシウムおよびマグネシウム(これらは、眼の表面と上記画像化レンズとの間の光学連結媒体として働く)を補充したPBSの液滴で覆った。高解像度で蛍光および散乱シグナルを視覚化するように調整された改変した立体顕微鏡(Leica S6E)を使用して、画像を記録した(ゲイン4で露出時間750ms)。上記改変した立体顕微鏡を組み立てて、Polychrome V(Till Photonics)可変式波長光源、MicroFire カラーデジタルカメラ(Optronics)、およびさらなる6×(両凸)拡大レンズ(焦点長10cm)を含めた。画像を、より大きな領域を視覚化し、非特異的反射シグナルを除去するために、いくつかの異なる角度で反復して収集した。
【0058】
(実施例18:統計的分析)
結果を、2群比較のp値について、片側不対スチューデントt検定によって分析した。結果を、平均±SDとして表わす。
【0059】
本発明の主題の種々の実施形態が、詳細な説明において上記に記載される。これら説明は、上記実施形態を直接記載しているが、当業者が、本明細書に示されかつ記載される特定の実施形態に対して改変および/もしくはバリエーションを想起し得ることが理解される。この説明の範囲内に入る任意のこのような改変もしくはバリエーションは、同様にそこに含められることが意図される。別段示されなければ、本明細書および特許請求の範囲における単語および語句が、適用可能な分野の当業者に通常のおよび慣例的な意味を与えることは、本発明者らの意図である。
【0060】
本願出願時に本出願人に知られていた本発明の主題の種々の実施形態の前述の説明が提示されており、例示および説明目的で記載されている。この説明は、網羅的であることを意図するものではなく、上記主題を開示される正確な形態に限定するものでもなく、多くの改変およびバリエーションは、上記の教示に鑑みて可能である。記載される実施形態は、本発明の主題およびその正確な適用の原理を説明し、当業者が上記主題を種々の実施形態においてかつ意図される特定の使用に適合するように種々の改変を加えて利用することを可能にするように働く。従って、本発明の主題は、上記主題を実施するために開示される特定の実施形態に限定されないことが意図される。
【0061】
本発明の主題の特定の実施形態が示されかつ記載されてきたが、本明細書中の教示に基づいて、変更および改変がこの主題およびそのより広い局面から逸脱することなく行われ得、従って、添付の特許請求の範囲が、それらの範囲内に、この主題の真の趣旨および範囲内に入るように、全てのこのような変更および改変を包含するべきであることは、当業者に明らかである。一般に、本明細書で使用される用語は、一般に、「開放系」の用語(例えば、用語「含む」は、「〜が挙げられるが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む」は、「〜を含むが、それらに限定されない」と解釈されるべきであること、など)として意図されることは、当業者によって理解される。
【0062】
【数1】
【0063】
【数2】
【0064】
【数3】
【0065】
【数4】
【0066】
【数5】