(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で、本発明の一実施形態に係る測定器およびこれを用いた環境温度測定方法、液体試料測定方法について、図面を用いて詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態に係る測定器2について、
図1〜
図11に基づいて説明する。
ここでは、測定器2として、分析対象物としての血液を用いてグルコース濃度を測定する血糖値測定器を例として挙げて説明する。なお、
図1〜
図11は、本発明の一実施形態に過ぎず、発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
図1は、本実施形態によるバイオセンサ1を測定器2へ装着した後、測定対象物である検体の濃度を算出する場合の全体的なアルゴリズムを示すフローチャートである。また、
図2は、本実施形態による測定器2の構成の概要を示した図である。
【0012】
次に、本実施形態の測定器および方法の構成要素であるバイオセンサ1の詳細について説明する。
図3は、バイオセンサ1の分解斜視図である。
バイオセンサ1は、
図3に示すように、カバー12と、スペーサ13と、試薬層15と、絶縁性基板12aとを積層して構成されている。
カバー12は、その中央部に空気孔36を有している。スペーサ13は、略長方形状の試料供給路20を有している。試薬層15は、液体試料中の特定成分と酵素反応する試薬を担持している。絶縁性基板12aは、ポリエチレンテレフタレート等からなり、その表面には電極層が形成されている。この電極層は、レーザ等によって分割され、電極系14として、作用極14a、対極14b、および検知極(図示せず)が形成されている。
次に、本実施形態の主要な構成要素の1つである測定器2について説明する。
図4は、バイオセンサ1が測定器2に装着される部分の要部拡大図である。
図5は、バイオセンサ1を着脱自在に保持するセンサ保持部(バイオセンサ保持部)3に装着する前後の状態を示した斜視図である。
【0013】
本実施形態の測定器2は、
図2、
図4、
図5に示すように、バイオセンサ1を着脱自在に保持するセンサ保持部3を備えている。そして、その内部には、バイオセンサ1上の電極系14とともに電気的接点を形成するための、それぞれに対応した接続端子である測定用接続端子31が設置されている。言い換えれば、バイオセンサ1上の電極系14と測定用接続端子31とは、互いに接触する位置に配置されている。
測定用接続端子31の各端子(図示せず)は、例えば、液体試料である検体がキャビティ17に導入されたことを検知する検知極や分析対象物の濃度を測定するための電極、さらには各種補正項目を測定するための電極とそれぞれ接触する。そして、これらの電極間に対して電圧を印加する際には、切換回路4において印加電圧を印加する電極が切り換えられる。印加電圧は、DAC(Digital to Analog Converter)等から構成される電圧印加手段5から出力され、所定の電極間に印加される。
【0014】
各電極に印加された電圧による電気化学反応によって得られた電流(応答電流とも言う。)は、電流/電圧変換回路6において電圧に変換される。ここで得られた電圧値は、A/D変換回路(Analog to Digital Converter)7でデジタル信号へと変換される。そして、このデジタル信号に基づいて、演算手段10において検体濃度情報が演算される。
ここで、各種補正項目とは、例えば、ヘマトクリット値補正や妨害物質補正などである。当然ながら、電気化学的に測定が可能な補正項目については全てこの各種補正項目の中に含まれる。また、検体濃度測定時は、検体濃度の温度補正が行われるが、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等で構成される記憶手段8には予め環境温度に対する各種補正項目の算出用テーブルが格納されている。そして、サーミスタ等から構成される環境温度センサ9からの温度情報と各種補正項目の算出用テーブルを用いて、検体濃度演算時に温度補正が行われる。演算手段10によって演算された最終的な検体濃度は、表示部11に表示される。
【0015】
なお、測定器2には充電可能な二次電池(発熱材料)21が搭載され、充電を行うための充電回路33が備えられている。記憶手段8には、上述した各種補正項目の算出用テーブル等が格納されているが、充電動作時における測定器2内部で測定される環境温度から測定器2外の環境温度を算出する時に必要とされる環境温度用算出用テーブルがさらに格納されている。
また、測定器2には、濃度測定した日時および充電動作時間等(充電動作時間情報)を計測するための時計(動作時間計測部)19が搭載されている。
次に、本実施形態における測定器2の検体濃度測定過程について、
図1のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS1では、測定器2は、ユーザからの操作待ち、またはバイオセンサ挿入待ちの待機状態、あるいは充電動作中である。
【0016】
次に、ステップS2では、測定器2にバイオセンサ1が挿入される。
次に、ステップS3では、バイオセンサ1の挿入によって検体の点着待ち状態となり、切換回路4において印加電極の接続を設定して測定用接続端子31に対して点着検知用の電圧の印加を開始する。そして、A/D変換回路7において、電流の測定を開始する。
次に、ステップS4において検体の点着が検出されると、ステップS5,S6,S7において、切換回路4が電圧を印加する電極および印加電圧値を所定の設定に順次切り換えて、検体濃度,各種補正項目,環境温度を測定するための電圧を印加する。このとき、バイオセンサ1の所定の電極間あるいはサーミスタ(環境温度センサ9)に流れる電流を電圧に変換して、検体濃度、各種補正項目および環境温度がそれぞれ測定される。
次に、ステップS8では、測定器2が、検体濃度の算出に係る測定項目を測定後、検体点着時が充電動作開始後あるいは充電動作終了後、何分経過していたのかを時計19(
図2参照)を用いて確認する。
【0017】
なお、時計19による充電動作時間の計測工程については、上述した検体濃度の測定と並行して実施されてもよいし、充電動作時間が所定の範囲内にある場合にのみ、検体濃度の測定と並行して実施されてもよい。つまり、内環境温度を補正するタイミングについては、例えば、発熱材料が発熱するレベルやサーミスタ(環境温度センサ9)で測定した環境温度等に応じて、適宜、設定することができる。
次に、ステップS9では、検出された時間が予め設定した規定時間の範囲内であれば、ステップS10において測定した測定器2内の環境温度と測定器2外の実際の温度が乖離していると判断して環境温度の補正を行う。つまり、充電動作時間と環境温度センサ9で測定された内環境温度とに基づいて、記憶手段に格納されている外環境温度算出テーブルの情報を使用して、外環境温度を算出する。一方、規定時間の範囲外であれば、測定器2内の環境温度は測定器2外の環境温度と同等であると判断し、環境温度の補正は行わない。つまり、サーミスタ9で測定した内環境温度をそのまま外環境温度として使用する。
【0018】
その後、ステップS11において、決定した環境温度を用いて各種補正項目の温度補正処理を行い、ステップS12において検体濃度を算出し、ステップS13において表示部11に結果を表示する。
続いて、環境温度の補正処理について、
図6(a),
図6(b)、
図7及び
図8を用いて説明する。
図6(a)は、各種補正項目の温度補正時に使用する環境温度を算出する工程の流れを示した図である。
図6(b)は、補正工程である各種補正項目の温度補正工程の流れを示した図である。
図7は、測定器2外の環境温度を10℃,20℃,30℃に一定に保持した状態で、充電時間経過における測定器2内部の温度変化を実際に測定したデータである。
図8は、特に
図7の充電開始から10分経過までの温度変化データである。
ここで、測定器2外の温度変化が緩やかである場合、充電開始直後は測定器2内部で測定される環境温度も当然、測定器2外の温度と同等である。しかし、充電動作が開始すると、充電動作を制御するための充電IC,コンデンサ,コイル,抵抗器等の電気部品及び電池自身には400mA以上の充電電流が流れる。この時、それらの各電気部品の持つ抵抗成分と充電電流により、電力をP[W]、電流をI[A]、抵抗をR[Ω]とすると、
P=I×I×R
で求められる電力Pが消費され、各電気部品からは熱が放出される。
【0019】
ここで、二次電池の充電動作について、
図9に示す外気20℃時の充電プロファイルを用いて説明する。使用している電池はリチウムイオン電池であり、小型で高容量であるが、過充電、過放電になると電池が破損するおそれがある。このため、充電時は決められたプロファイルで行う必要がある。
まず、充電を開始すると電池の電圧を計測し、電池電圧が充電可能な範囲かどうかを判定する。充電可能範囲であれば予備充電モードに入り、少ない電流で充電を開始する。続いてA区間の定電流モードとなり、多量の定電流(
図9では430mA)で充電を進める。定電流モードでは大電流が流れ、部品の発熱量が多いため、測定器内部は急激に温度が上昇する。
図9では、電池残量があったため、充電開始直後に予備充電モードはパスして定電流モードに入っている。定電流モードでは徐々に電池電圧が上昇していき、開始後24分頃に電池電圧が4.215Vに達すると、B区間の定電圧モードとなり電池電圧を保持したまま充電を進める。定電圧モードでは徐々に充電電流は減少し、その動作に応じて測定器内部の温度も緩やかに下降する。そして、定電圧モード充電中に予め決められた充電完了電流(65mA)以下を判定すると開始後84分頃にC点で充電を終了し、以降D区間の待機状態となる。充電終了後は充電電流が0mAとなる。このため、部品は内部の熱を放熱し、測定器2内部の温度も急激に下降した後、測定器2外部の温度に落ち着く。
【0020】
次に、
図6(a)を用いて、環境温度算出工程の流れを説明する。
まず、充電動作が開始されると、温度情報演算工程05では、温度補正時の環境温度算出の動作が開始される。充電動作時間計測工程(発熱動作時間計測工程)02では、時計19から充電開始時の充電動作時間情報を取得し、その情報を充電動作開始時刻情報として、演算手段10に送信する。その後、センサ保持部3にバイオセンサ1が装着されて検体濃度測定が開始されると、環境温度測定工程(内環境温度算出工程)03では、サーミスタ(環境温度センサ9)で検出された内環境温度情報が演算手段10に送られる。また、充電動作時間計測工程02では、時計19から検体濃度測定開始を示す検体点着時の充電動作時間情報を取得し、その情報は、検体点着時時刻情報として、演算手段10に送られる。発熱時環境温度測定工程(外環境温度算出工程)04では、充電動作開始時刻情報と検体点着時の時刻情報とから、充電動作開始後、どのくらいの時間が経過したのかを計測し、この計測した充電動作時間と、サーミスタ(環境温度センサ9)で測定した内環境温度に基づいて算出する。この時、充電動作時間が一定以上であれば、サーミスタ9の温度をそのまま使用することができるため、算出するかそのままサーミスタ9の温度を使用するかも判断している。
【0021】
つまり、測定器2内部の温度は、
図7に示すように、充電開始後120分以降、充電開始時の環境温度とほぼ同等の温度に戻る。このため、サーミスタ(環境温度センサ9)で測定された測定器2内部の環境温度は、測定器2外部の環境温度とほぼ一致するものと判断する。また、測定器2内部の温度は、
図8に示すように、充電開始後60秒以内は充電開始時の環境温度と等しいため上記と同様の判断を行う。よって、点着時が充電開始後60秒以内または120分以降であれば、内環境温度補正工程(温度補正工程)06は、サーミスタ(環境温度センサ9)で測定した環境温度を各種補正項目の温度補正用温度として決定する。この温度補正用温度を使って、検体濃度測定工程01(
図6(a)における測定対象物濃度測定工程01に該当)で算出された測定対象物濃度情報に対して補正が行われる。
【0022】
発熱時環境温度測定工程04では、検体点着時の時刻が充電開始後60秒以降120分未満であると、サーミスタ(環境温度センサ9)で測定した測定器2内部の環境温度から補正した測定器2外部の環境温度を算出する。記憶手段8では、予め測定器2外の各環境温度における充電時間と測定器2内の環境温度の推移を示す
図7のデータ(外環境温度算出テーブル)を保持しており、点着時の時刻と測定器2内の環境温度から測定器2外の環境温度を算出することができる。
具体的には、
図10に示すように、点着時の時刻が充電開始後50分であり、そのときサーミスタ(環境温度センサ9)で測定した温度(測定器2の内部環境温度を示す内環境温度)が28℃であると、測定器2外部の外環境温度は20℃であることが得られる。外環境温度補正工程(温度補正工程)07では、このように求めた外環境温度20℃を各種補正項目の温度補正用温度として決定する。この温度補正用温度を使って、検体濃度測定工程01で算出された測定対象物濃度情報に対して補正が行われる。
【0023】
温度による補正工程である補正項目温度補正工程08(
図6(a)参照)では、各種補正項目の温度補正を行う。なお、
図10では、検体の点着時間での検出温度が温度算出用テーブル(環境温度算出用テーブル)としての
図7のデータ上にある場合を示しているが、データに無い場合は、
図7のデータを基にして算出すればよい。
図23は、
図10における外気温10℃、20℃、30℃の特性曲線について、外気温10℃のグラフを基準として重ねたものである。このグラフから分かるように、充電開始直後から所定時間経過後(15〜22min)には、3つの特性曲線の傾きはほぼ一致していることが分かる。よって、この時間帯においては、外環境温度補正工程07(
図6(a)参照)では、外気温度に関わらず、共通の温度算出用のテーブル(環境温度算出用テーブル、環境温度補正情報)を用いることができる。
【0024】
図24は、
図10における充電終了後における外気温10℃、20℃、30℃の特性曲線を拡大したものである。このグラフから分かるように、充電完了時間は各外気温度によって差があるものの、充電終了後においては、各外気温度に対応する特性曲線はほぼ一致していることが分かる。よって、充電終了後においても、外環境温度補正工程07では、外気温度に関わらず、共通の温度算出用のテーブルを用いることができる。つまり、温度算出用テーブルをその範囲においては共通化することで簡略化が図れる。
図25(a)〜
図25(c)は、
図10の充電終了時前後における外気温10℃、20℃、30℃の特性曲線をそれぞれ拡大したものである。このグラフから分かるように、各外気温度に対応する特性曲線を温度算出用のテーブル(環境温度補正情報)を記憶しておくことで、充電中あるいは充電後のタイミングにおいて、適切なテーブルを選択して外気温度を算出することができる。つまり、充電中の温度算出テーブルと充電後の温度算出テーブルとを切り替えて最適化を図る。もちろん、充電後は、上述のように共通化した温度算出テーブルを使用することもできる。
【0025】
なお、上述した温度補正用のテーブルを用いて外気温度を算出する際には、測定器2内にサーミスタ(環境温度センサ9)における測定結果と、各テーブルの温度データとを比較して、その差が所定値以上となっている場合には、エラーと判断して表示部11等において通知すればよい。これにより、例えば、外気温度が10℃未満、あるいは45℃以上である場合には、測定器2の使用環境温度条件が満たされていないと判断して、温度の算出を行わず、使用の中止を促すことができる。
さらに本実施形態では、充電開始時の温度を記憶することで、充電動作時間情報とその時の内環境温度情報とから、エラー判定を行うことができる。例えば、充電開始時の環境温度センサ(サーミスタ)9における測定結果が23度であって、点着時間(充電動作時間情報)が50分、その時の環境温度センサ9の温度が35度以上または20度未満であれば、
図10に示すグラフと比較すると大きく乖離していることが分かる。このため、この結果をおかしいと判断して、エラーと判定することができる。もちろん、この場合、再度、環境温度センサ9において温度を測定して判断してもよい。
【0026】
次に、外環境温度の求め方について、
図11を使用して具体的に説明する。
図11は、
図7のデータにおいて、充電開始後48分から52分までの温度のデータである。温度データは1分間隔で保持している。ここで、点着時間が充電開始後49.5分後であり、そのときの検出温度が25℃である場合の測定器2外の環境温度算出方法を説明する。温度データは前述の通り1分間隔で取っており、49.5分後のデータは保持していない。そのため、49.5分の前後直近のデータから一次式近似して温度を求める。
検出温度は25℃であるため、
図7のデータにおいては、外気温度10℃と20℃の間に測定器2外の予想環境温度が存在するはずである。10℃の49分後の温度データは18.8℃であり、50分後の温度データは18.6℃である。このため、一次式近似により49.5分後の温度は18.7℃となる。同様に外気温度20℃の時の49.5分後の温度は28.55℃である。以上、28.55と25と18.7の比から、充電開始後49.5分で検出温度25℃の時、測定器2外の環境温度は、16.4℃と算出される。
【0027】
続いて、
図6(b)を用いて、「内環境温度補正工程06」もしくは「外環境温度補正工程07」において算出された環境温度を用いた各種補正項目の温度補正工程の流れを説明する。
環境温度情報(内環境温度、外環境温度)により温度補正を受ける対象としては、検体濃度測定工程01(
図6(a)参照)で算出された測定対象物濃度情報以外にも、各種補正項目情報(
図6(b)参照)が挙げられる。すなわち、検体試料の濃度情報(測定対象物濃度情報)は、演算手段10において、環境温度情報(内環境温度、外環境温度)に応じて補正される(「内環境温度補正工程06」もしくは「外環境温度補正工程07」(
図6(a)参照))のであるが、その前後の適切なタイミングで各種補正項目による補正も行われる。当然ながら、この各種補正項目情報についても、温度の影響を受けるものに関しては、
図6(b)に示すように、環境温度情報や発熱時環境温度情報(充電時環境温度情報)により温度補正が行われることにより、よりその精度を高めることが可能である。
【0028】
より詳細に説明すると、補正項目温度補正工程08では、測定された各種補正項目情報に対して、環境温度情報や充電時環境温度情報により温度補正が行われ、各種補正項目の補正情報(各種補正項目情報)が決定される。この補正情報は、前述の方法で算出した環境温度(内環境温度、外環境温度)と、予め記憶手段8に保持されている各種補正項目の所定の温度における補正値のデータとから求めた、検体点着時の環境温度における補正値である。その後、演算手段10内では、補正項目温度補正工程08で求めた各種補正項目情報により、測定対象物濃度情報が補正される。そして、最終的に、温度を含む各種補正がなされた検体濃度(測定対象物濃度)が、表示部11に表示される。
なお、本実施形態では、10℃,20℃,30℃と10℃間隔のデータを記憶手段8において保持しているが、より細かい間隔の温度データ(例えば、1℃間隔)を保持することにより、さらに精度の高い温度算出を行うことが可能である。
【0029】
また、環境温度センサ9としては、例えば、サーミスタ、測温抵抗体、IC温度センサ、放射温度計などが考えられる。
以上のように、本実施形態による液体試料測定方法および測定器2では、バイオセンサ1を測定器2に装着してからバイオセンサ1に血液が点着された後、測定器2内に備えられた時計19と環境温度センサ9とを用いて、二次電池21の充電時間と充電時の内環境温度とを計測し、充電時の外環境温度を特定する。
これにより、充電時環境温度をリアルタイムで測定して環境温度(外環境温度)を特定し、この環境温度(外環境温度)に基づいて、バイオセンサ1に点着された血液中のグルコース濃度などの各種分析対象物を補正することができる。よって、二次電池21等の発熱材料による環境温度の温度上昇の影響を排除して、各種分析対象物の濃度等を高精度に測定することができる。この結果、例えば、グルコース濃度などの測定において、温度補正の精度が向上し、発熱材料の発熱時の場合でも高精度の測定結果を得ることができる。また、バイオセンサ1自体の温度を測定するための温度センサを新たに設けることなく、高精度の測定器2を低コストで提供することができる。
【0030】
また、本実施形態では、バイオセンサ1に点着された血液中のグルコース濃度の測定方法をより高精度なものに変化させる要因として、計測時間だけでなく、グルコース濃度、環境温度、ヘマトクリット値、妨害物質の補正値などを追加することにより、測定精度を飛躍的に向上させることができる。
また、本実施形態では、測定対象物質として血糖について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コレステロール、トリグリセリド、乳酸、尿酸、ビリルビン、アルコールなどの生体内サンプルや環境サンプル、食品サンプル等であっても同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、環境温度センサ9はセンサ保持部3の近傍、あるいは測定器2の開口部近傍に配置するのが望ましい。ただし、例えば、電気回路基板上に配置した場合には、発熱材料からの発熱の影響が空気中だけで無く、基板を介して伝播する。このため、その場合には、基板の特性(基材厚,銅箔厚,絶縁材厚等)バラつきによる測定データの誤差要因が大きくなってしまう。よって、可能であれば、環境温度センサ9は、基板からの伝導熱の影響を受けにくく、バイオセンサ1に近い、センサ保持部3内に設けるのが最も望ましい。
【0031】
(実施形態2)
以下に、本発明の他の実施形態について、
図3,9,12,13および
図14〜
図22に基づいて説明する。ここでは、上記実施形態1と同様に、分析対象物として血液を用いてグルコース濃度を測定する血糖センサの場合について説明する。なお、図面を用いて以下で説明する内容は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明はこれに限られるものではない。
図14は、本実施形態に係るバイオセンサ201を測定器202へ装着した後、検体濃度を算出する場合の全体的なアルゴリズムを示すフローチャートである。また、
図15は、本実施形態に係る測定器202の構成の概要を示した図である。
本実施形態の測定器202および方法の構成要素であるバイオセンサ201の詳細について説明する。バイオセンサ201の分解斜視図については、上記実施形態1で説明した
図3と同様の図面であるため、ここではその説明を省略する。
【0032】
次に、本実施形態の構成要素である測定器202について説明する。
図16は、バイオセンサ201が測定器202に装着される部分の要部拡大図である。
図17は、バイオセンサ201を着脱自在に保持するセンサ保持部203に装着する前後の状態を示した斜視図である。
図15、
図16、
図17に示すように、本実施形態の測定器202には、同じく本実施形態の構成要素であるバイオセンサ201を着脱自在に保持するセンサ保持部203を備えている。そして、その内部には、バイオセンサ201上の電極系214と電気的接点を形成するための、それぞれに対応した接続端子である測定用接続端子231が設置されている。言い換えれば、バイオセンサ201上の電極系214と測定器202側の測定用接続端子231とが互いに接触する位置に配置されている。
【0033】
測定用接続端子231の各端子(図示せず)は、例えば、検体がキャビティ17(
図3参照)に導入されたことを検知する検知極や分析対象物の濃度を測定するための電極間、さらには各種補正項目を測定するための電極とそれぞれ接触する、そして、これらの電極間に対して電圧を印加する際には、切換回路204において、印加電圧を印加する電極を切り換える。印加電圧は、DAC(Digital to Analog Converter)等から構成される電圧印加手段205から出力され、所定の電極間に電圧が印加される。
電気化学反応により得られた電流(応答電流とも言う。)は、電流/電圧変換回路206において電圧に変換され、得られた電圧値はA/D変換回路(Analog to Digital Converter)207でデジタル信号へと変換され、演算手段210で検体濃度情報が演算される。
【0034】
ここで、各種補正項目とは、例えば、ヘマトクリット値補正や妨害物質補正などである。当然ながら電気化学的に測定が可能である補正項目については全て含まれる。また、検体濃度測定時は検体濃度の温度補正が行われるが、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等で構成される記憶手段208は、予め環境温度に対する各種補正項目の算出用テーブルを格納している。そして、サーミスタ等から構成される環境温度センサ1(第1環境温度センサ)209a、環境温度センサ2(第2環境温度センサ)209bからの温度情報を用いて、検体濃度測定時に温度補正が行われる。演算手段210で求められた最終的な検体濃度は、表示部211に表示される。
なお、測定器202には、充電可能な二次電池221が搭載されており、充電を行うための充電回路233が備えられている。記憶手段208には、前述のとおり各種補正項目の算出用テーブルを保持しているが、さらに充電動作時における測定器内部で測定される環境温度から、実際に温度補正時に必要とされる測定器外の環境温度を算出するための温度用算出用テーブルを保持している。また、濃度測定した日時および充電動作時間等を計測するための時計(動作時間計測部)219が搭載されている。
【0035】
次に、本実施形態に係る測定器202の検体濃度測定過程について、
図14のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS21では、測定器202は、ユーザからの操作待ちまたはバイオセンサ201の挿入待ちの待機状態、あるいは充電動作中である。
次に、ユーザ操作による測定器202の起動、またはバイオセンサ201が挿入されると、ステップS22では、測定器202は充電動作開始後あるいは充電動作終了後、どのくらい時間が経過しているのかを確認し、規定時間経過後であれば検体の点着待ち状態となる。
ここで、規定時間経過していなければ、ステップS23を経由して、予め設定した待ち時間経過後に、ステップS24において、点着待ち状態となる。
【0036】
次に、ステップS24において、検体点着待ち状態になると、測定用接続端子231に点着検知用の電圧を印加するために切換回路204で印加電極の接続を設定し、電圧印加を開始し、A/D変換回路207では電流の測定を開始する。
次に、ステップS25において、検体の点着が検出されると、ステップS26、ステップS27において、切換回路204が、切換回路204および印加電圧値を所定の設定に順次切り換え、検体濃度、各種補正項目、環境温度を測定するための電圧を印加する。
次に、ステップS28では、バイオセンサ201の所定の電極間あるいはサーミスタ(環境温度センサ209a,209b)に流れる電流を電圧に変換して、環境温度を測定する。
次に、ステップS29では、測定器202は、検体濃度の算出に係る測定項目の測定後に環境温度の補正処理を行う。
【0037】
次に、ステップS30では、ステップS29で決定した環境温度を用いて各種補正項目の温度補正処理を行う。
次に、ステップS31では、上記補正後の環境温度、各種補正項目に基づいて検体濃度を算出し、ステップS32において、表示部211に結果を表示する。
続いて、環境温度の補正処理について、
図18(a)、
図18(b)、
図19(a)〜
図19(c)及び
図20(a)〜
図20(c)を用いて説明する。
図18(a)および
図18(b)は、各種補正項目の温度補正時に使用する温度を算出する工程の流れを示した図である。
図19(a),
図19(b),
図19(c)は、それぞれ測定器外の環境温度を10℃,20℃,30℃に一定に保持した状態で、充電時間経過における測定器202内部に設けた環境温度センサ209aの温度変化と、算出した補正後の外環境温度と実際に測定した外気温度との差を示すデータである。
図20(a),
図20(b),
図20(c)は、特に、
図19(a),
図19(b),
図19(c)の充電開始から10分経過までの部分を拡大して示した温度変化データである。
【0038】
測定器202外の温度変化が緩やかである場合、充電開始直後は測定器202内部で測定される環境温度も当然測定器202外の温度と同等である。しかし、充電動作が開始すると、充電動作を制御するための充電IC,コンデンサ,コイル,抵抗器等の電気部品及び電池自身には400mA以上の充電電流が流れる。この時、それらの各電気部品の持つ抵抗成分と充電電流により、電力をP[W]、電流をI[A]、抵抗をR[Ω]とすると、
P=I×I×R
で求められる電力が消費され、各電気部品からは熱が放出される。
ここで、二次電池の充電動作について、上述した実施形態1の
図9に示すグラフと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0039】
次に、
図18(a)で環境温度補正工程の流れを説明する。
まず、ユーザ操作により測定器202が起動、あるいはバイオセンサ201がセンサ保持部203に挿入されると、充電動作時間計測工程02は、そのときが充電動作後何分経過後なのか、あるいは充電動作終了後何分経過後なのかを確認する。
図19(a),
図19(b),
図19(c)及び
図20(a),
図20(b),
図20(c)では、点線によって環境温度センサ209a,209bによる検出温度を、実線によって補正した環境温度と外気温度との差、をそれぞれ表している。これらの図面からわかるように、充電動作開始後2〜6分程度経過後は、補正した環境温度と外気温度との差が約2度以上と大きいため正確な温度補正が困難である。よって、本実施形態における測定器202では、
図19(a),
図19(b),
図19(c)に示すように、充電開始後10分間は、検体濃度測定動作を行わない方が好ましい。しかし、この場合に関しても、別途後述する算出式、あるいは算出式の補正係数を上記時間領域において最適化することにより正確な温度補正が可能である。
【0040】
環境温度測定工程03では、センサ保持部203の近傍あるいはそれ以外の開口部近傍に設けた環境温度センサ209aと、発熱材料近傍に設けた環境温度センサ209bにより、測定器202内部の2箇所の環境温度を測定する。
発熱時環境温度測定工程04では、環境温度測定工程03で測定した2箇所の温度情報から外気温度に相当する補正した環境温度を算出するが、式1を用いて算出することが可能であることが見出された。
T=T1−α×(T2−T1) ・・・式1
T :補正した環境温度[℃]
T1:環境温度センサ209aで検出した温度[℃]
T2:環境温度センサ209bで検出した温度[℃]
α :補正係数
補正係数αは、測定器202内部の部品配置や外装形状に影響される係数であり、機種毎に係数は変化する。
図19(a)〜
図19(c)の測定データの補正係数は、0.4である。
【0041】
図19(a),
図19(b),
図19(c)では、センサ保持部203近傍に配置した環境温度センサ209aの温度が、実際の各外気温度10℃,20℃,30℃に対して、充電開始後10分間及び充電終了後10分間を除いては式1で算出した環境温度と外気温度の差が±1.5℃の精度で算出できることが明かである。
図22には、環境温度センサ209aで検出した温度(T1)と実際の外気温度との差が最大となる時間の各温度を示している。T1は、全ての外気温度に対して5℃程度乖離しているのに対して、式1で算出した環境温度は、外気温度との差が1℃以内に収まっていることが明白となった。
式1により補正した環境温度が算出されると、「外環境温度補正工程07」で検体濃度の温度補正を行い、同様に補正項目温度補正工程08で各種補正項目の温度補正を行う。
続いて、
図18(b)を用いて、「内環境温度補正工程06」もしくは「外環境温度補正工程07」において算出された環境温度を用いた各種補正項目の温度補正工程の流れを説明する。
【0042】
検体濃度測定工程01で算出された測定対象物濃度情報以外にも、環境温度情報(内環境温度、外環境温度)により温度補正を受けるものとして、各種補正項目情報(
図18(b)参照)があげられる。すなわち、試料の濃度情報(測定対象物濃度情報)は、演算手段210にて、環境温度情報(内環境温度、外環境温度)に応じて補正を受ける(内環境温度補正工程06」もしくは「外環境温度補正工程07)のであるが、その前後の適切なタイミングで各種補正項目による補正も行なわせる。当然ながら、この各種補正項目情報についても、温度の影響を受けるものに関しては、
図18(b)に示すように、環境温度情報や発熱時環境温度情報(充電時環境温度情報)により温度補正が行われることにより、よりその精度を高めることが可能である。
より詳細に説明すると、補正項目温度補正工程08では、測定された各種補正項目情報に対して、環境温度情報および充電時環境温度情報により温度補正が行われ、各種補正項目の補正情報(各種補正項目情報)が決定される。この補正情報は、上述の方法で算出した環境温度(内環境温度、外環境温度)と、予め記憶手段208に保持されている各種補正項目の所定の温度における補正値のデータとから求めた、検体点着時の環境温度における補正値である。その後、演算手段210内では、補正項目温度補正工程08で求めた各種補正項目情報によって測定対象物濃度情報が補正され、最終的に温度を含む各種補正がなされた試料濃度が、表示部211に表示される。
【0043】
なお、環境温度センサ209a,209bとしては、例えば、サーミスタ、測温抵抗体、IC温度センサ、放射温度計などが考えられる。
以上のように、本実施形態による液体試料測定方法および測定器202では、バイオセンサ201を測定器202に対して装着してから、バイオセンサ201に血液が点着された後、測定器202内に備えられた二次電池221と環境温度センサ209a,209bによって、二次電池221の充電時間と充電時の環境温度とを計測する。そして、充電時の環境温度を特定することにより、充電時環境温度をリアルタイムで測定して環境温度(外環境温度)を特定する。さらに、この環境温度(外環境温度)に基づいて、バイオセンサ201に点着された血液中のグルコース濃度などの各種分析対象物を補正することができる。
【0044】
これにより、二次電池221等の発熱材料による環境温度の温度上昇の影響をキャンセルすることができうる。その結果、グルコース濃度の温度補正の精度が高まり、発熱材料の発熱時の場合でも、高精度な測定結果を得られることが明白となった。また、バイオセンサ201自体の温度を測定するための温度センサを新たに設けることなく、高精度の測定器202を低コストで実現可能である。
また、本実施形態では、上記実施形態1と同様に、バイオセンサ201に点着された血液中のグルコース濃度の測定方法を変化させる要因として、計測時間だけでなく、グルコース濃度、環境温度、ヘマトクリット値、妨害物質の補正値などを追加することにより、測定精度を飛躍的に向上させることができる。
さらに、本実施形態では、上記実施形態1と同様に、測定対象物質として血糖について説明したが、これに限定されず、コレステロール、トリグリセリド、乳酸、尿酸、ビリルビン、アルコールなどの生体内サンプルや環境サンプル、食品サンプル等であっても同様の効果が得られる。
【0045】
また、本実施形態では、測定器202内の環境温度を2箇所測定し、その温度差を基に測定器202外の環境温度を算出している。このため、それぞれの温度センサの設置箇所については、それぞれが異なる温度変化を持つ特徴的な箇所が望まれる。本実施形態では、環境温度センサ209aの設置箇所は、外気の影響を受けやすいセンサ保持部203近傍、あるいは開口部近傍としている。そして、環境温度センサ209bの設置箇所は、環境温度センサ209bに対して発熱の影響を与える原因となっている二次電池(発熱材料)221の近傍としている。
本実施形態の充電時間経過に対する環境温度センサ209bと環境温度センサ209aの温度差の推移を
図21に示す。この図では、外気温度を10℃,20℃,30℃に一定にした状態でのグラフであるが、外気温度が変わっても各充電モードでの温度差はほぼ同じであることが分かる。
【0046】
具体的には、定電流モードでの温度差ピークは7〜8℃であり、充電動作終了時の温度差は2.5℃程度であり、充電動作終了後100分経過すると温度差は1℃未満となっている。つまり、充電動作の各モードは測定器自体で検知できるため、外気温度に関わらず充電モードでの温度差を確認することで、環境温度センサ209a,209bが正常に機能しているかどうかを確認することが可能である。さらに、もし充電回路233の故障および劣化した二次電池221の異常発熱が発生している場合などにおいても、上記温度差を算出することにより、環境温度(外環境温度)の検知が可能となることが判明した。
また、本実施形態では、前述のように環境温度センサ209aは、センサ保持部203近傍あるいは開口部近傍に配置するのが望ましい。ただし、電気回路基板上に配置した場合、二次電池221等の発熱材料からの発熱の影響が空気中だけで無く、基板を介して伝播する。このため、その場合、基板の特性(基材厚,銅箔厚,絶縁材厚等)バラつきによる測定データの誤差要因が大きくなる。よって、可能であれば、環境温度センサ209a,209bは、基板からの伝導熱の影響を受けにくく、バイオセンサ201に近い、センサ保持部203内に設けるのが最も望ましい。
【0047】
また、本実施形態では、式1を用いることで、充電開始後10分間及び充電終了後10分間以外において、補正した環境温度の算出が可能であることが明白となった。この式1からわかるように、T1とT2が等しい場合、つまり発熱材料が発熱していない場合は式1の右辺の第2項が0となり、T=T1の関係が導かれ、開口部近傍に配置された環境温度センサ209aで検出した温度がそのまま外気温度(外環境温度)となることが見出される。式1の右辺の第2項の部分{α×(T2−T1)}は、発熱材料の発熱による影響で環境温度センサ209a,209bで検出される温度が上昇するため、発熱材料から開口部に影響している温度(T2−T1)に機種の内部構造に影響する係数αを乗算したものを表している。よって、発熱の影響を受けているT1の温度から、α×(T2−T1)を差し引くことで外気温度が算出できる、という考えに基づいて式1が成立している。よって、同様な考えに基づいていれば、算出式は必ずしも式1に限られるものではない。
【0048】
また、本実施形態では、式1を用いることで、充電開始後10分間及び充電終了後10分間以外において、補正した環境温度の算出が可能であることが明白である。ただし、これは発熱材料の温度変化が緩やかであり、環境温度センサ209aで検出される温度変化が環境温度センサ209bで検出される温度変化に追従しているためである。しかし、充電開始後10分間及び充電終了後10分間では発熱材料の温度変化が急激であり、環境温度センサ209aで検出される温度変化が環境温度センサ209bで検出される温度変化に追従できていない。このため、式1のままでは算出するのは少し難しい。よって、発熱材料の著しい温度変化が発生する場合は、異なる算出式を用いることで補正した環境温度を算出することが可能である。
なお、上記式1については、上述したように、充電開始直後から10min経過時までの補正の精度が低下しているが、充電開始からの経過時間に応じて、以下のように補正値βを用いた式2を採用することで、より高精度に環境温度Tを算出することができる。
【0049】
T=T1−α×(T2−T1)+β ・・・式2
β:補正係数
例えば、充電開始後0〜10min経過までの範囲では、2℃程度の誤差が生じるため、補正係数β(≒2℃)を用いて、環境温度Tを算出すればよい。
また、充電開始後0〜10min経過までの範囲を0〜2min、2〜10minの2つに分けて、以下の式3,4を用いて環境温度Tを算出してもよい。
T=T1−α×(T2−T1)+γ ・・・式3
T=T1−α×(T2−T1)+δ ・・・式4
γ,δ:補正係数
これにより、
図19(a)〜
図19(c)および
図20(a)〜
図20(c)に示すように、充電開始後0〜10minの範囲内における環境温度Tの算出精度をさらに向上させることができる。
【0050】
<充電完了時刻の予測>
従来より、上述した測定器2に搭載されている充電部としての充電池(二次電池)の充電時間は、電池残量と充電方法(充電電流値の大きさ)に応じて変化することが知られている。
従って、充電完了の予測時間は、上記電池残量と充電方法とに基づいて算出していたが、実際の充電完了時間とは差異があり、あくまでも目安程度にしか使用されていない。
本実施形態では、上述した2つの要素(電池残量と充電方法(充電電流))に加えて、環境温度データおよび充電開始からの動作時間の2つの要素を加えた計4つのパラメータに基づいて、充電完了時間を予測する。
今回、環境温度により充電時間が変化することが分かり、その要素も考慮することによって、充電完了時間の予測精度をさらに向上させることができる。
【0051】
具体的には、
図2に示すように、測定器2には、発熱材料の一つである二次電池21と、充電回路33と、演算手段(電池残量測定部)10と、表示部11が搭載されている。充電回路33は、二次電池21を充電する。演算手段10は、二次電池21の電池残量を、充電回路33を経由して求める。表示部11は、濃度測定した日時および充電動作時間などを計測するための時計19および各種の測定情報、状況を表示する。
充電開始から完了までに要する時間は、上述したように、二次電池21の電池残量と充電回路33による充電方法とによって大きく変化する。充電回路33では、急速充電する場合は、充電電流を大きくして短時間で充電ができるようにし、通常の充電の場合は、充電電流を小さくして時間をかけて充電する。これは、急速充電を行うと二次電池21の劣化が早まって電池寿命が短くなるためである。また、ここで充電電流は、一定でなくてもよい(
図9および上段のその説明部分参照)。
【0052】
ここで、二次電池21には、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などが用いられている。
また、
図23は、測定器2の外環境温度を10℃,20℃,30℃に一定に保持した状態で、充電時間経過における測定器2内部の温度変化を示す実測データである。もちろん、この時の充電条件および充電方法は、それぞれ同一に設定されている。つまり、二次電池21の電池残量は0に合わせられており、充電電流など充電方法はそれぞれ同一である。
このような同一の充電条件の下、
図23からも判るように、外環境温度が30度の場合、充電完了時間が充電開始から約74分(
図25(a)参照)と一番短く、外環境温度が10度の場合は、充電完了時間が開始から約94分(
図25(c)参照)と一番長くなっている。
【0053】
従って、充電機能を有する測定器2おいて、二次電池21の電池残量、充電電流、充電動作時間および外環境温度をパラメータとして、充電完了時間を求めることができ、より精度の高い予測をすることが可能となる。
これにより、正確な充電完了時間、または充電完了までの残り時間をユーザに通知することができる。よって、ユーザは残り時間を確認して時間を有効に使うことができる。
また、充電完了までの予測時間の通知は、測定器2に備えられた表示部11を使用して、充電完了までの残り時間を表示する方法や、聴覚の不自由な人には、音声または振動を使用する方法を用いればよい。
以上のように、本実施形態の測定器2によれば、二次電池21の電池残量、充電電流、充電動作時間および外環境温度をパラメータとして、充電完了時間を求めることができ、より精度の高い予測をすることができる。よって、充電機能を有し、ハウジング内に温度センサを設けた環境温度を測定する機能を有する測定器等において利用可能である。特に、算出された充電時間を利用する携帯型の小型医療機器の分野において有用である。
【0054】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る測定器について、
図26を用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、上述の実施形態1および実施形態2においては、測定器2に設けられている環境温度センサ(サーミスタ)9等によって計測される情報に基づいて、ハウジング外の外環境温度を算出している。しかし、もし何らかの要因によって、この環境温度センサ9等が正常に動作しない場合には、外環境温度情報が正しく算出することができない。この結果、この外環境温度情報に基づいて補正された液体試料中の特定成分の濃度の値を正確に求めることができなくなって、測定器2の測定精度が悪くなるおそれがある。
この問題を解決するために、本実施形態では、
図26に示すような構成を採用している。上述の実施の形態1および2と共通の構成要素に関しては同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0055】
上記実施形態2では、ハウジング内に設けられている環境温度センサ209a,209bが、発熱材料の近傍の位置(第1の領域)と発熱材料の近傍とは異なる位置(第2の領域)にそれぞれ1個ずつ設けられている。これに対して、本実施形態では、この第1の領域および第2の領域に、それぞれ複数の環境温度センサ209aa,209abおよび209ba,209bbが設けられている点において、上記実施形態2とは異なっている。
第1の領域および第2の領域に、それぞれ複数の環境温度センサ209aa,209abおよび209ba,209bbを設けることにより、例えば、第1の領域では、第1の領域内に設けられた複数の環境温度センサ209ba,209bbにおいて測定された各内環境温度情報の検出結果の差を求める。そして、この求めた温度の差が所定の範囲を超えているか否かにより、環境温度センサ209ba,209bbが正常に動作しているかどうかを判定することができる。
【0056】
同様に、第2の領域においても、第2の領域内に設けられた複数の環境温度センサ209aa,209abにおいて測定された内環境温度情報の差を求める。そして、この求められた温度の差が所定の範囲を超えているか否かにより、環境温度センサ209aa,209abが正常に動作しているかどうかを確認することができる。
つまり、温度補正用温度による測定対象物濃度情報に対しての補正(内環境温度補正工程06や外環境温度補正工程07)が行われる前の段階で、各環境温度センサが正常に動作しているかどうかを事前に判定することができる。
このように、第1の領域および第2の領域に、それぞれ複数の環境温度センサ209aa,209abおよび209ba,209bbを設け、この環境温度センサ209aa,209abおよび209ba,209bbにおいて測定された内環境温度情報の差を求めることにより、各領域に設けられた環境温度センサ209aa,209abおよび209ba,209bbが正常に動作しない場合に生じる測定精度の悪化を未然に防止することができる。
【0057】
なお、この場合、上述した演算手段(判定部)210が、第1の領域内に設けられた複数の環境温度センサ209ba,209bbにおいて測定された内環境温度情報の差、または第2の領域内に設けられた複数の環境温度センサ209aa,209abにおいて測定された内環境温度情報の差のいずれか一方が所定の範囲を超えているか否かを判定し(判定工程)、その温度の差が所定の範囲を超えている場合には、上述の表示部211等のエラー通知部が、エラー表示(通知)を行う(エラー通知工程)。
また、液体試料中の特定成分の濃度を測定しない時や測定開始前においても、定期的に第1領域および第2領域のそれぞれ複数の環境温度センサの内環境温度情報を測定して、各環境温度センサ間の温度差データにより環境温度センサを相互監視すると共に、その温度差データの変化も監視することで、環境温度センサの異常を予知することも可能となり、より信頼性の高い測定器を提供することができる。