特許第5771577号(P5771577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771577
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20150813BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   F21S8/10 371
   F21Y101:02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-166168(P2012-166168)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-26829(P2014-26829A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 玉晃
(72)【発明者】
【氏名】滝 延浩
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康平
【審査官】 太田 良隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064500(JP,A)
【文献】 特開2012−048845(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050137(WO,A1)
【文献】 特開2006−080069(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19857561(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0225548(US,A1)
【文献】 特開平11−232918(JP,A)
【文献】 特開2002−131551(JP,A)
【文献】 特開2012−109104(JP,A)
【文献】 特開2005−321754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S8/10−8/12
F21V8/00
F21S2/00
G02B6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される灯具であって、
筐体と、
前記筺体に装着されて灯室を区画形成する透光カバーと、
前記灯室内に配置され、溝部が形成されたエクステンションと、
前記エクステンションに少なくとも一部が覆われる発光ダイオードと、
少なくとも一部が前記溝部内に配置された長尺状の導光部材と、
前記発光ダイオードから前記導光部材の第1の端部に入射した光の一部は、前記導光部材の車両内側を向く面に形成された複数のステップにより車両外側に向けて反射され、
前記導光部材の第2の端部は、車両外側より視認可能な位置に配置されており、
前記第2の端部には、光を下方へ反射する傾斜した端面が形成されており、
前記溝部内の前記端面に対向する部分は黒色を呈している、車両用灯具。
【請求項2】
前記溝部内全体が黒色を呈している、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記灯室内に配置され、少なくとも前記導光部材から出射された光が通過する位置に複数のステップが形成された透光部材をさらに備える、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
光源と長尺状の導光部材とを車両用前照灯の灯室内に配置した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。導光部材の長手方向一端部より入射された光源からの光は、導光部材の内部を全反射されながら反射面が形成された領域に導かれ、当該反射面により反射されることにより導光部材の外部に出射する。当該出射光は、前方車両や歩行者等に車両の存在を知らしめるために用いられる、クリアランスランプやデイタイムランニングランプ等の光源として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−64500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部反射を繰り返しながら導光部材の内部を進行する光の一部は、上記の反射面による反射に供されることなく導光部材の長手方向他端部に到達し、当該他端部に形成された端面により反射される。導光部材は、グレア抑制や見栄え向上の観点から一様に発光することが求められているにも関わらず、反射面による制御を受けない光が当該端面に集中して反射される結果、当該箇所が局所的に明るく発光する現象が発生する。
【0005】
よって本発明は、長尺状の導光部材を備える車両用灯具において、当該導光部材の長手方向端部が局所的に明るく発光する現象を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる一態様は、車両に搭載される灯具であって、
筐体と、
前記筺体に装着されて灯室を区画形成する透光カバーと、
前記灯室内に配置され、溝部が形成されたエクステンションと、
前記エクステンションに少なくとも一部が覆われる発光ダイオードと、
少なくとも一部が前記溝部内に配置された長尺状の導光部材と、
前記発光ダイオードから前記導光部材の第1の端部に入射した光の一部は、前記導光部材の車両内側を向く面に形成された複数のステップにより車両外側に向けて反射され、
前記導光部材の第2の端部は、車両外側より視認可能な位置に配置されており、
前記第2の端部には、光を下方へ反射する傾斜した端面が形成されており、
前記溝部内の前記端面に対向する部分は黒色を呈している。
【0007】
このような構成によれば、ステップによる反射に供されることなく第2の端部に到達した光を、傾斜端面によって積極的に下方へ反射させ、車両の外側を向かない導光部材の下面より出射させることができる。よって第2の端部に集中した光が車両の外側に反射されることにより当該箇所が局所的に明るく視認される現象を抑制することができる。また傾斜端面により反射された光は、黒色部分によって可及的に反射が抑制されるため、当該反射光が車両の外側において視認される可能性を極力抑制することができる。
【0008】
前記溝部内全体が黒色を呈している構成としてもよい。この場合、導光部材の断面形状が一様でない箇所において意図しない方向に光が出射することがあっても、そのような光が車両の外側へ反射されることを可及的に抑制することができる。
【0009】
前記灯室内に配置され、少なくとも前記導光部材から出射された光が通過する位置に複数のステップが形成された透光部材をさらに備える構成としてもよい。この場合、導光部材から出射された光は、透光部材のステップにより拡散される。したがって導光部材に若干の発光ムラ(明るさの不均一性)が存在しても、拡散効果により当該不均一性は抑制されるため、外部からは導光部材が高い一様性をもって発光しているように視認される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る前照灯の構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】上記前照灯の一部を構成するエクステンション、導光部材、透光部材、および透光カバーを分解して示す斜視図である。
図3】上記透光部材および導光部材を外側から見た外観を示す斜視図である。
図4】上記透光部材および導光部材を内側から見た外観を示す斜視図である。
図5】上記エクステンションに上記導光部材を装着した状態を示す斜視図である。
図6】上記導光部材の長手方向端部における導光を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用前照灯1の構成を模式的に示す縦断面図である。本発明の灯具としての前照灯1は車両の右側前端部に設置され、本発明の筐体としてのランプハウジング2の前部に透光カバー3が装着されて灯室4が区画形成されている。
【0013】
灯室4の内部には、ヘッドランプユニット5が収容されている。ヘッドランプユニット5は、光源5aから出射された光をリフレクタ5bで反射し、透光カバー2を通じて車両前方に所定の配光パターンを形成するものである。ヘッドランプユニット5は周知の構成を備えているため、詳細な説明は割愛する。
【0014】
灯室4内におけるヘッドランプユニット5の前方には、エクステンション6が配置されている。エクステンション6は、灯室4内の図示しない各種内部部品を前方から覆い隠し、見栄えを向上させるための部材である。エクステンション6には開口6aが形成されており、リフレクタ5bにより反射された光は、当該開口6aを通じて前方に照射される。
【0015】
エクステンション6における開口6aの上方に位置する領域には、溝部6bが形成されている。溝部6b内には、後に詳述する導光部材7が配置されている。また後に詳述する透光部材8が、溝部6bと導光部材7を前方から覆うようにエクステンション6に装着されている。
【0016】
エクステンション6の後方には、導光部材7を発光させるための光源としてLED(発光ダイオード)9が設けられている。
【0017】
図2は、上記の透光カバー2、エクステンション6、導光部材7、および透光部材8を分解して示す斜視図である。図3は、導光部材7と透光部材8を外側から見た外観を拡大して示す斜視図である。図4は、導光部材7と透光部材8を内側から見た外観を拡大して示す斜視図である。
【0018】
エクステンション6は、筺体2と透光カバー3により区画形成される灯室4の形状に合わせて大きく湾曲した形状を有している。溝部6bは当該湾曲形状に沿うように延びている。
【0019】
図2および図3に示すように、導光部材7は、溝部6bの形状に沿うように延びる長尺状の外観を呈しており、その少なくとも一部が溝部6b内に配置されるようにエクステンション6に装着される。図5はこの状態を示す斜視図である。
【0020】
導光部材7は、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等の樹脂からなる透明な本体部を有している。エクステンション6への装着時において車両外側を向く本体部の外側面7aは、平滑な面とされている。図3および図4に示すように、エクステンション6への装着時において車両内側を向く本体部の内側面7bからは、取付片7c、7d、7eが突出している。
【0021】
一方、エクステンション6における溝部6bの上端縁の一部には、取付孔6c、6d、6eが形成されている。導光部材7の取付片7c、7d、7eを、それぞれ取付孔6c、6d、6eに係合させることにより、導光部材7が溝部6bに装着される。
【0022】
エクステンション6における、溝部6bに装着された導光部材7の長手方向一端部7fに対向する領域には、LED収容部6fが形成されている。LED9は、その少なくとも一部がLED収容部6fに覆われている。
【0023】
図2および図3に示すように、透光部材8は、導光部材7の形状に沿うように延びる長尺状の外観を呈しており、導光部材7を前方から覆うようにエクステンション6に装着される。
【0024】
透光部材8は、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等の樹脂からなる透明な本体部を有している。図4に示すように、エクステンション6への装着時において車両内側を向く本体部の内側面8bからは、取付片8g、8h、8iが突出している。
【0025】
一方、エクステンション6における溝部6bの上端縁の一部には取付孔6gが、下端縁の一部には取付孔6h、6iが形成されている。透光部材8の取付片8g、8h、8iを、それぞれ取付孔6g、6h、6iに係合させることにより、透光部材8がエクステンション6に装着される。
【0026】
図3に示すように、LED9から出射された光は、本発明の第1の端部としての導光部材7の長手方向一端部7fに入射する。入射した光は、導光部材7の内部を全反射されながら進行する。
【0027】
図4に示すように、導光部材7の内側面7bには、微小なステップ7sが多数形成されており、導光部材7の延びる方向に沿って配列されている。各ステップ7sは傾斜面を有しており、導光部材7の延びる方向と交差する向きに延びる稜線と谷線を交互に形成している。
【0028】
図6は、導光部材7に入射した光の進む経路を模式的に示す図であり、LED9からの光が入射する端部7fとは反対側の長手方向端部7jを拡大して示している。図6の(a)は導光部材7を上方から見た場合を、(b)は導光部材7を前方(車両外側)から見た場合を示している。
【0029】
LED9から導光部材7の端部7fに入射して導光部材7の内部を進行する光の一部は、図6の(a)に示すように、導光部材7の内側面7bに形成されたステップ7sにより車両外側に向けて反射され、導光部材7の外側面7aより出射する。ステップ7sは、導光部材7の内側面7bのほぼ前面にわたって形成されているため、車両外側からは導光部材7が一様に発光しているように視認される。
【0030】
しかしながら導光部材7の内部を進行する光には、ステップ7sによる反射制御に供されないまま反対側の端部7jに到達するものが含まれる。このような光が当該端部7jに集中することにより、当該箇所が局所的に明るく発光する現象を生ずる。
【0031】
そこで本実施形態においては、図6の(b)に示すように、本発明の第2の端部としての導光部材7の長手方向端部7jに、光を下方へ反射する傾斜した端面7kが形成されている。さらにエクステンション6の溝部6b内における当該傾斜端面7kに対向する部分は、黒塗装6kが施されることにより、黒色を呈している。
【0032】
したがってステップ7sによる反射に供されることなく端部7jに到達した光を、傾斜端面7kによって積極的に下方へ反射させ、車両の外側を向かない導光部材7の下面7mより出射させることができる。よって端部7jに集中した光が車両の外側に反射されることにより当該箇所が局所的に明るく視認される現象を抑制することができる。また傾斜端面7kにより反射された光は、黒塗装6kによって可及的に反射が抑制されるため、当該反射光が車両の外側において視認される可能性を極力抑制することができる。
【0033】
LED9からの光が入射する側の端部7fと反対側の長手方向端部7jが局所的に明るく発光する現象を抑制できるため、当該箇所をエクステンション6の一部で覆い隠す等の処置が不要となる。本実施形態においては、傾斜端部7kが設けられた導光部材の端部7jは、車両の外側より視認可能な位置に配置されている。したがって部品コストの抑制や導光部材(発光させる部分)のレイアウト自由度の向上をもたらすことができる。
【0034】
さらに図4に示すように、透光部材8の内側面8bにおける、少なくとも導光部材7から出射された光が通過する位置には、微小なステップ8sが多数形成されて透光部材8の延びる方向に沿って配列されている。各ステップ8sは、シリンドリカルレンズを構成する形状とされている。ステップ8s同士の境界線は透光部材8の延びる方向と交差する向きに延びている。
【0035】
導光部材7の外側面7aから出射された光は、透光部材8の内側面8bに形成されたステップ8sにより拡散されつつ、透光部材8の外側面8aより出射される。導光部材7に若干の発光ムラ(明るさの不均一性)が存在しても、ステップ8sの拡散効果により当該不均一性は抑制されるため、外部からは導光部材7が高い一様性をもって発光しているように視認される。
【0036】
上記の説明においては、車両の右側前端部に装備される前照灯1について例示した。図示は省略するが、車両の左側前端部にも左右対象の構成を有する前照灯1が装備されている。
【0037】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0038】
本発明の車両用灯具は、前照灯の用途に限られるものではない。長尺状の導光部材を備える限りにおいて、標識灯などのあらゆる灯具に適用可能である。
【0039】
黒塗装6kは、導光部材7の傾斜端面7kに対向する部分のみならず、溝部6bの内側全体に施してもよい。上述のように、導光部材7の内側面7bには取付片7b、7c、7eが設けられている。断面形状が一様でないそのような箇所においては、意図しない方向に光が出射することがある。溝部6bの内側全体に黒塗装6kを施すことにより、そのような光が車両の外側へ反射されることを可及的に抑制することができる。
【0040】
導光部材7の傾斜端面7kに対向する部分は、必ずしも黒塗装6kを施すことにより黒色を呈するようにされることを要しない。例えば、少なくとも当該部分を含む溝部6bの内側の素地が黒色を呈している構成としてもよい。また上記の説明において「黒色」という表現は、傾斜端面7kにより反射された光の反射を抑制しうる限りにおいて、ガンメタル(黒鉄色)のように実質的に黒色とみなしうる色を含む意味である。
【0041】
透光部材8は、必要に応じて省略してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:前照灯、2:ランプハウジング、3:透光カバー、4:灯室、6:エクステンション、6b:溝部、6k:黒塗装、7:導光部材、7a:導光部材の外側面、7b:導光部材の内側面、7f、7j:導光部材の長手方向端部、7k:傾斜端面、7s:ステップ、8:透光部材、8s:ステップ、9:LED
図1
図2
図3
図4
図5
図6