特許第5771578号(P5771578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スギムラ化学工業株式会社の特許一覧

特許5771578高温塑性加工用水系潤滑剤組成物、及び、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771578
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】高温塑性加工用水系潤滑剤組成物、及び、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20150813BHJP
   C10M 177/00 20060101ALI20150813BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20150813BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20150813BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   C10M173/02
   C10M177/00
   C10M135/10
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N10:12
   C10N40:20
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-177439(P2012-177439)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34662(P2014-34662A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591019782
【氏名又は名称】スギムラ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明裕
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343948(JP,A)
【文献】 特開2010−065135(JP,A)
【文献】 特開昭61−163998(JP,A)
【文献】 特開2007−177167(JP,A)
【文献】 特開2000−271835(JP,A)
【文献】 特開平01−271487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物又は無機化合物を潤滑成分とする潤滑剤の少なくとも一種の潤滑剤と、前記潤滑剤の溶媒又は分散媒として機能する水を主要構成成分とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物であり、
当該高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、当該高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に混入した油分に起因する潤滑性能の低下を回復させる潤滑性能回復剤を含有し、
前記潤滑性能回復剤として、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムが採用されていることを特徴とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物であり、
前記潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムの当該高温塑性加工用水系潤滑剤組成物全体に対する含有量は、0.0001〜5.0重量%の範囲であることを特徴とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物。
【請求項3】
有機化合物又は無機化合物を潤滑成分とする潤滑剤の少なくとも一種の潤滑剤と、前記潤滑剤の溶媒又は分散媒として機能する水を主要構成成分とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させる潤滑性能回復方法であり、
混入した油分に起因して潤滑性能が低下した当該高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム、又は、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を添加することを特徴とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法。
【請求項4】
請求項3に記載の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法において、潤滑性能を回復させる対象である高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、前記潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しない高温塑性加工用水系潤滑剤組成物であることを特徴とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法。
【請求項5】
請求項3に記載の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法において、潤滑性能を回復させる対象である高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、前記潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しているが、混入した多量の油分に起因して潤滑性能が低下している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物であることを特徴とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物、及び、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法に関する。本発明で規定する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物における高温塑性加工とは、熱間鍛造や熱間圧延、温間鍛造や温間圧延等を包含する高温塑性加工を意味し、冷間鍛造や冷間圧延等の冷間加工を除外するものである。
又、本発明で規定する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物における水系潤滑剤とは、水に溶解する水溶性タイプの潤滑剤、水に分散する水分散タイプの潤滑剤、水にコロイドとして分散するエマルジョンタイプの潤滑剤等を意味し、基油に溶解する油性タイプの潤滑剤や、基油に分散する油分散タイプの油系潤滑剤を除外するものである。
【背景技術】
【0002】
金属素材を加工する方法には、切削、旋削、研削、圧延、鍛造、焼結、ダイカスト等があり、各加工方法では、それぞれに必要な特性に応じた潤滑剤組成物が使用される。例えば、鍛造の分野では、被加工材と金型との直接接触による摩耗や損傷を防止し、又、加工性能を向上させて規定寸法に仕上げる目的で、潤滑性能の高い潤滑剤組成物が使用されている。
【0003】
当該潤滑剤組成物には、黒鉛等の固体潤滑剤を水に分散させたものや、水に低分子カルボン酸等の界面活性剤を溶解させたもの等、所謂、水系タイプの潤滑剤組成物があり、又、黒鉛等の固体潤滑剤を基油に分散させたものや、難燃性の基油に極圧剤を溶解したもの等、所謂、油系タイプの潤滑剤組成物がある。これらのタイプの潤滑剤組成物のうち、近年の環境に対する意識の高まりや安全性の問題から、水系タイプの潤滑剤組成物が広く使用されるようになっている。本発明では、水系タイプの潤滑剤組成物を、単に水系潤滑剤組成物と称している。
【0004】
近年、潤滑剤組成物の使用形態として、潤滑剤組成物の無駄な使用を少なくする目的で、使い捨てではなく、潤滑剤組成物を循環使用することが主流になりつつあるが、潤滑剤組成物が水系タイプの潤滑剤組成物(水系潤滑剤組成物)である場合には、油系タイプの潤滑剤組成物に比較して、液安定性が悪いという問題から、水系潤滑剤組成物には、潤滑剤組成物の一次性能(潤滑性能)のみならず、耐腐敗性、耐起泡性、耐油分混入性等の二次性能をも要請される。
【0005】
温間鍛造や熱間鍛造等、高温塑性加工時の水系潤滑剤組成物の循環使用による性能低下を検討すると、金属素材の高温塑性加工時における潤滑剤と金属との密着性を向上すべく使用されている、所謂、バインダー成分(高分子化合物)の熱劣化や、加工時の当該水系潤滑剤組成物への油分混入による潤滑剤の金型等への付着性能の低下が主たる原因であるものと認められる。
【0006】
特に、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物への油分混入による加工性能の低下は顕著であって、混入する油をオイルスキマー等の設備で除去する対策を採っても、当該対策のみでは、当該水系潤滑剤組成物に混入している油分を完全に除去することは難しい。当該水系潤滑剤組成物へのわずかな油分の混入によっても、当該水系潤滑剤組成物の加工性能が低下し、不良品が発生し、又、金型等の損傷を惹起し易い。このため、循環使用している当該水系潤滑剤組成物に、当該水系潤滑剤組成物を多量に追加補充して、当該水系潤滑剤組成物を高濃度で使用することが想定されるが、この場合には、多量の水系潤滑剤組成物を使用することからコスト高となり、又、金型等への残渣の増加による欠肉状態が発生するという問題がある。
【0007】
従って、油分が混入した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を廃棄して、油分が混入していない新たな高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に更新する等の対策を採る必要があり、多量の当該水系潤滑剤組成物の使用によるコスト高や、大量に発生する廃液等の問題が新たに生じることになる。
【0008】
温間鍛造や熱間鍛造等の高温塑性加工の分野において、一般に使用されている高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、黒鉛を含有する黒鉛型の水系潤滑剤組成物と、黒鉛を含有しない非黒鉛型の水系潤滑剤組成物に大別される。これらの水系潤滑剤組成物においては、循環使用によるバインダーの熱劣化や、プレス機等に用いられる機械油の混入を完全に防ぐことは難しい。このため、生産現場では、高温塑性加工用の潤滑剤組成物を、黒鉛型の水系潤滑剤組成物から、非黒鉛型の水系潤滑剤組成物へ変更するニーズが高いにも拘わらず、これらの水系潤滑剤組成物への変更はなされていないのが現状である。
【0009】
特に、非黒鉛型の水系潤滑剤組成物においては、油分のわずかな量の混入でも、加工性能の低下が顕著に現れる。このため、非黒鉛型の水系潤滑剤組成物においては、初期の潤滑性能が満たされていて、作業環境の改善面での効果が現れている場合においても、当該水系潤滑剤組成物の更新頻度が高くてコスト上問題があり、継続的に使用するまでには至らない場合が多くみられる。当該水系潤滑剤組成物においては、これを高濃度で使用する必要があることからも、黒鉛型の水系潤滑剤組成物から非黒鉛型の水系潤滑剤組成物への変換による環境への負荷が大きくなることが考えられる。
【0010】
高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の循環使用による上記した加工性能の低下を防ぐため、特定の高分子カチオン化合物を含有する「水溶性油剤組成物」が提案されている(特許文献1を参照)。当該水溶性油剤組成物は、使用している水溶性油剤(希釈油剤)への他油の混入による腐敗、加工性能の劣化、ベタツキによる作業環境の悪化等を防いで、長期間安定して使用することを意図している。
【0011】
又、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、水に分散する固体潤滑剤中に陽イオン界面活性剤を含有させた「塑性加工用水系潤滑剤」が提案されている(特許文献2を参照)。当該水系潤滑剤は、使用している水溶性油剤(希釈油剤)への他油の混入による濡れ性の低下を防止することによって、被加工用素材や塑性加工用工具の表面に優れた潤滑皮膜を形成させることを意図している。
【0012】
又、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、固体潤滑剤中に濡れ性改善剤を含有させた「アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤」が提案されている(特許文献3を参照)。当該潤滑離型剤は、高温時における水系潤滑剤の分散媒である水に起因する、金型への潤滑成分の付着効率の低下を防止することを意図したものである。当該潤滑離型剤においては、濡れ改善剤として、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム、及び、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウムの1又は複数を採用している。
【0013】
高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、固体潤滑剤の分散媒が水であることから、熱間鍛造加工時等、100℃を越える高温時に当該水系潤滑剤組成物を金型に噴霧すると、分散媒である水の水滴が沸騰膜を形成して、潤滑成分を含有する水滴は金型から弾き飛ばされて、金型への潤滑成分の付着効率が大きく損なわれることになる。上記した「アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤」は、濡れ改善剤として、上記した特定の化合物を選択することにより、高温時の濡れ性を向上させて、水滴が金型に対して薄く塗れ広がって付着するようにして、水滴が弾き飛ばされるのを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−324887号公報
【特許文献2】特開2008−231160号公報
【特許文献3】特開2010−65135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、「水溶性油剤組成物(特許文献1を参照)」、及び、「塑性加工用水系潤滑剤(特許文献2を参照)」においては、加工性能の劣化を抑制するために陽イオン性化合物を採用している。当該陽イオン性化合物は、水系潤滑剤組成物の成分である潤滑剤、分散剤、可溶化剤、レベリング剤等として一般に用いられている陰イオン性化合物との相性が悪く、液性状態を維持することができず、一時的には潤滑性能を満足し得るとしても、油分混入に対してはその効果を継続的に維持することはできない。又、当該陽イオン性化合物においては、油水分離性能が不足していて、油分混入時の潤滑性能を持続させることが困難である。
【0016】
一方、「アルミニウム熱間鍛造用潤滑離型剤(特許文献3を参照)」においては、濡れ性改善剤として、上記した特定のスルホコハク酸塩又はスルホカルボン酸塩等を採用している。当該潤滑離型剤によれば、高温時の濡れ性を向上させて、水滴が金型に対して薄く塗れ広がって付着すると主張しているが、油分の混入に対する改善効果については何等の評価もなく、当該潤滑離型剤には、油分混入に対する改善効果は存在しないものと推測される。
【0017】
いずれにしても、従来の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、油分の混入が生じた場合には、潤滑性能を回復させることは難しく、当該水系潤滑剤組成物に、油分の混入していない新たな水系潤滑剤組成物を追加するか、また、使用済みの水系潤滑剤組成物(廃液)を廃棄して、新たな水系潤滑剤組成物に更新しなければならない。このような対応では、当該水系潤滑剤組成物の使用量を必要以上に増やすことになり、又、大量の廃液が発生することになるという問題がある。
【0018】
本発明は、このような問題に対処すべくなされたもので、その目的とするところは、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物における油水分離性能を向上させて、油分の混入した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を循環使用等再使用する際の、油分混入による潤滑成分の被加工材や加工用工具等に対する付着性能の低下に起因する加工性能の劣化を防止し、又、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物への油分の混入後においても、当該水系潤滑剤組成物に採用している特定の成分(潤滑性能回復剤)を、油分混入後の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に添加することによって、加工性能の低下した水系潤滑剤組成物の潤滑性能の回復を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物、及び、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法に関する。
【0020】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、有機化合物又は無機化合物を潤滑成分とする潤滑剤の少なくとも一種の潤滑剤と、前記潤滑剤の溶媒又は分散媒として機能する水を主要構成成分とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物である。
【0021】
しかして、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、当該水系潤滑剤組成物に混入した油分に起因する潤滑性能の低下を回復させる潤滑性能回復剤を含有するもので、前記潤滑性能回復剤として、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを採用していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、前記潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムの当該水系潤滑剤組成物全体に対する含有量は、0.0001〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
又、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法は、有機化合物又は無機化合物を潤滑成分とする潤滑剤の少なくとも一種の潤滑剤と、前記潤滑剤の溶媒又は分散媒として機能する水を主要構成成分とする高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させる方法である。
【0024】
しかして、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法においては、混入した油分に起因して潤滑性能が低下した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム、又は、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を添加することを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法においては、潤滑性能を回復させる対象である高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しない高温塑性加工用水系潤滑剤組成物とすることができる。
【0026】
又、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法においては、潤滑性能を回復させる対象である高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しているが、混入した多量の油分に起因して潤滑性能が低下している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を構成する潤滑性能回復剤は、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムである。ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムは、構造上、陰イオン性化合物であって、水系潤滑剤組成物の他の構成成分との相性がよく、当該水系潤滑剤組成物の一構成成分として広く適用することができる利点がある。
【0028】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、潤滑性能回復剤として、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しているため、当該水系潤滑剤組成物へ混入した油分の油水分離性能が高く、かつ、高温加工時における高温の金型、加工工具等、及び/又は、被加工材の表面での油分混入に起因する弾きの発生が抑制され、潤滑成分がこれらの表面に良好に付着する。
【0029】
又、本発明で採用するジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを、混入した油分が油水分離できない状態の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に添加すれば、油水分離性能を向上させることができるとともに、潤滑成分を高温の金型、加工工具等、及び/又は、被加工材の表面に良好に付着させることができる。換言すれば、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを、混入した油分の油水分離できない状態の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に添加することにより、当該水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させることができる。
【0030】
このため、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法を採れば、油分の混入した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を循環使用等再使用する場合の、当該水系潤滑剤組成物の潤滑性能を好適に回復させることができる。
【0031】
ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムによるこのような作用効果は、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムの油性成分に対する親和性と、水性成分に対する親和性のバランスが油水分離性能を改善するのに適正に作用するものと認められ、当該水系潤滑剤組成物へ油分が混入した後でも、高温の金型、加工工具等、及び/又は、被加工材の表面に対する潤滑成分の良好な付着性能を維持することができる。
【0032】
このように、本発明で規定するジイソデシルスルコハク酸アンモニウムは、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の一構成成分として機能するのみならず、例えば、すでに加工現場で使用されて油分が混入し、加工性能(潤滑性能)が低下している各種の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に対して、補助的に添加することにより、低下した潤滑性能を回復(改善)させることができる。この場合には、潤滑性能が低下した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に対して、ジイソデシルスルコハク酸アンモニウムを単独で添加する態様を採ることができるとともに、他の成分や溶媒を含有するジイソデシルスルコハク酸アンモニウムを添加する態様を採ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物、及び、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させる潤滑性能回復方法に関する。
【0034】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物における高温塑性加工とは、熱間鍛造や熱間圧延、温間鍛造や温間圧延等の高温塑性加工を含み、又、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物における水系潤滑剤とは、水に溶解する水溶性タイプの潤滑剤、水に分散する水分散タイプの潤滑剤、水にコロイドとして分散するコロイドタイプやエマルジョンタイプの潤滑剤を含む。
【0035】
本発明が適用対象とする水溶性タイプの潤滑剤としては、低分子カルボン酸のアルカリ金属塩、及び/又は、アルカリで中和した成分を含有する有機化合物を水に完全に溶解させた潤滑剤や、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等を含有する無機化合物を水に完全に溶解させた潤滑剤を挙げることができる。
【0036】
又、本発明が適用対象とする水分散タイプの潤滑剤としては、水に難溶性の有機や無機の潤滑剤(固体潤滑剤)を水に分散させたもので、黒鉛、二硫化モリブデン、水酸化カルシウム、メラミン−イソシアヌル酸付加体(MCA)等を水に分散させた潤滑剤を挙げることができる。
【0037】
又、本発明が適用対象とするコロイドタイプの潤滑剤としては、高分子カルボン酸のアルカリ金属を水にコロイド状に分散させた潤滑剤を挙げることができる。又、エマルジョンタイプの潤滑剤としては、金属石鹸、基油、油性シリコン等を水中に乳化分散させた潤滑剤等、油性成分、界面活性剤、固体潤滑剤等を構成成分とする水を含有しない油性系組成物を水で希釈してエマルジョン化した潤滑剤を挙げることができる。
【0038】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、これらの潤滑剤を主たる潤滑成分とし、当該潤滑成分に、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有させたものである。本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、水を含有しない状態の上記した各構成成分を、加工現場において、水を溶媒及び/又は分散媒として希釈して使用する態様をも包含する。
【0039】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の構成成分であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムは、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の油水分離性能を向上させるべく機能するもので、油分の混入した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を循環使用等再使用する場合、潤滑成分の被加工材や加工用工具等に対する付着性能の低下に起因する加工性能の低下を防止する。
【0040】
又、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムは、油分が混入して潤滑性能が低下している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復すべく機能するもので、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを、潤滑性能が低下している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に添加することによって、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能を効果的に回復させることができる。
【0041】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムの含有量は、当該水系潤滑剤組成物の全体に対して0.0001〜5.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0042】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、上記した各潤滑剤の少なくとも一種とジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有することを必須不可欠とするが、当該水系潤滑剤組成物には、必要により、防錆剤、バインダー、消泡剤、起泡剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、耐ブロッキング剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、ミスト防止剤、防腐剤、酸化防止剤、有機アミン添加剤等、潤滑剤組成物の構成成分として慣用されている各種の成分を含有させることができる。
【0043】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物が使用される分野は、被加工材である金属を再結晶温度以下に加熱して加工を行う温間塑性加工の分野、及び、被加工材である金属を再結晶温度以上に加熱して加工を行う熱間塑性加工の分野であり、当該加工分野では、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を、金型や、その他の加工工具にスプレー塗布する方法や、刷毛塗りで塗布する方法等が採られる。本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物が適用される被加工材は、金属であれば特に限定されないが、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、マグネシウム、銅等に対して有効に適用される。当該水系潤滑剤組成物を鋼に適用する場合には、例えば、金型や加工工具の温度を50〜500℃の範囲に、被加工材の温度を100〜1300℃の範囲にすることができる。
【0044】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を構成する溶媒又は分散媒は水であって、水道水、地下水、工業用水、純水、蒸留水、イオン交換水等を採用することができるが、水と混和するアルコール系溶媒を水と併せて採用することができる。
【0045】
高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の使用態様には、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を、高温塑性加工中の金型や加工工具、被加工材に噴射して塗布(スプレー塗布)し、塗布した当該水系潤滑剤組成物をピットに回収し、回収した当該水系潤滑剤組成物を再使用することを一連とする、所謂、循環使用する方法があり、又、刷毛塗りで塗布した当該水系潤滑剤組成物を一旦容器に回収して、回収した当該水系潤滑剤組成物を再度刷毛塗りに再使用する方法がある。
【0046】
高温塑性加工用水系潤滑剤組成物のこれらの使用態様では、高温塑性加工用水系潤滑剤組成物への塑性加工に起因する油分の混入は避けられず、混入した油分は高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の加工性能(潤滑性能)を低下させる。
【0047】
本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を構成する潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムは、当該水系潤滑剤組成物の油分混入に起因する潤滑性能の低下を防止すべく機能する。
【0048】
又、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を循環使用等再使用する態様では、繰り返し使用することにより、多量の油分が混入して潤滑性能の低下を防止し得ない状態となることがある。この場合には、循環使用する当該水系潤滑剤組成物に対しては、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを単独で添加すれば、又、油分を混入していない当該水系潤滑剤組成物を新たに添加すれば、当該水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させることができる。
【0049】
一方、一般の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有していないことから、油分が混入した場合には潤滑性能を維持することが困難であるが、油分が混入した当該水系潤滑剤組成物に、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを単独で添加すれば、又、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を添加すれば、当該水系潤滑剤組成物の潤滑性能を回復させることができる。
【0050】
このように、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物は、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを構成成分とするものであり、又、本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性能回復方法は、潤滑性能回復剤としてジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを採用するものである。
【0051】
潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムは、構造上、陰イオン性化合物であって、水系潤滑剤組成物の他の構成成分との相性がよく、当該水系潤滑剤組成物の一構成成分として広く適用することができ、当該水系潤滑剤組成物に混入した油分を効率よく油水分離し、かつ、高温塑性加工時における高温の金型・加工工具及び/又は被加工材の表面での油分混入に起因する弾きを抑制して、潤滑成分をこれらの表面に効率よく付着させることができる。
【0052】
又、本発明で採用するジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを、油分が混入して油水分離できない状態の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物(本発明に係る高温塑性加工用水系潤滑滑剤組成物、及び、一般の高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を含む)に添加すれば、油水分離性能を復活させることができて、高温の金型・加工工具及び/又は被加工材の表面での油分混入に起因する弾きを抑制して、潤滑成分をこれらの表面に効率よく付着させることができる。
【0053】
ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムによるこのような作用効果は、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムの油性成分に対する親和性と、水性成分に対する親和性のバランスが油水分離性能を回復させるのに適正に作用するもので、当該水系潤滑剤組成物へ油分が混入した後でも、潤滑成分の高温の金型・加工工具及び/又は被加工材の表面に対する良好な付着性能を維持することができる。
【実施例及び比較例】
【0054】
本発明の実施例及び比較例では、潤滑性能回復剤であるジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物と、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウムを含有しない高温塑性加工用水系潤滑剤を多種類調製した。又、これらの水系潤滑剤組成物については、潤滑性能試験、付着性能試験、及び、油水分離性能試験に供した。
【0055】
(高温塑性加工用水系潤滑剤組成物):本発明の実施例に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の調製には、組成成分として、(A):ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム、(B):黒鉛(潤滑成分)の他、潤滑成分として、(C):二硫化モリブデン、(D):窒化ホウ素、(E):硫酸ナトリウム、(F):硫酸カリウム、(G):水酸化カリウム、(H):四ホウ酸カリウム、(I):四ホウ酸ナトリウム、(J)、メラミン−イソシアヌル酸付加体、(K):ヘキサヒドロフタル酸ナトリウム、(L):フタル酸二ナトリウム、(M):トリメリット酸ナトリウム、(N):ピロメリット酸ナトリウム、(O):イソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム(MW8〜9万)、(P):イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム(MW10万)、(Q):アクリル酸ホモポリマーナトリウム(MW10万)、(R):アクリル酸ホモポリマーアンモニウム(MW10万)、(S):スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム(MW1.1万)、(T):スチレン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム(MW1.1万)を適宜採用している。
【0056】
一方、比較例に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の調製には、組成成分として、ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム(A)を採用せず、上記した各組成成分の他、潤滑性能回復剤に対応する改善剤である(U):2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、(V):2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウムを適宜採用している。
【0057】
調製した高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の組成については、本発明の実施例に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を下記の各表(表1A〜表5A)に示し、比較例に係る高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を下記の各表(表6A〜表11A)に示している。
【0058】
(潤滑性能試験,油分非添加):当該潤滑性能試験には、通称スパイクテスト法(特開平5−7969号公報を参照)を採用し、各高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を試験サンプルとして、各試験サンプルの潤滑性能の評価を行った。当該潤滑性能試験には、クランクプレスを使用し、表12に示す試験条件で行った。
【0059】
各試験サンプルについては、表1A〜表11Aに示す各高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を純水にて10倍に希釈して調製し、これらを潤滑性能試験に供した。各試験サンプルについて、潤滑性能試験を繰り返し3回行った。潤滑性能の評価方法には、押し込み時の最大成形荷重(tonf)、スパイク高さ(mm)を採用し、繰り返し3回行った潤滑性能試験の結果の平均値にて評価した。
【0060】
(潤滑性能試験,油分添加):当該潤滑性能試験には、油分非添加の潤滑性能試験で採用したと同様の試験サンプルにマシン油を0.02wt%添加した高温塑性加工用潤滑剤組成物を試験サンプルとして採用して、油分非添加の潤滑性能試験と同じ試験条件で潤滑性能試験を行い、同じ方法で潤滑性能の評価を行った。但し、当該潤滑性能試験での潤滑性能の評価には、最大成形荷重変化率(%)…最大成形荷重変化率=〔(油分添加後の最大成形荷重−油分非添加の最大成形荷重)/油分非添加の最大成形荷重〕×100…を追加した。
【0061】
当該最大成形荷重変化率の評価では、最大成形荷重の増加(+)が2.0%未満を○、2.0%以上3.5%未満の範囲に増加したものを△、3.5%以上増加したものを×とした。但し、本実施例及び比較例では、2.0%以上3.5%未満の範囲に増加したもの(△)は認められなかった。
【0062】
(付着性能試験,油分非添加):予めアルカリ脱脂したSUS304の試験片(0.8×50×75mm)をホットプレート上に載置し、表面温度が200℃になるまで加温し、当該試験片に、潤滑性能試験に供した油分非添加の各試験サンプルと同じ試験サンプルを表12に示す塗布条件(スプレー条件)にてスプレーし、スプレー塗布時に、弾きの発生や塗布斑の発生の有無を目視にて確認した。弾きの発生や塗布斑の発生がなかったものを○、弾きの発生や塗布斑の発生があったものを×として評価した。当該付着性能試験では、試験を繰り返し3回行った。
【0063】
(付着性能試験,油分添加):当該付着性能試験には、油分非添加の潤滑性能試験で採用したと同様の試験サンプルにマシン油を0.02wt%添加した高温塑性加工用潤滑剤組成物を試験サンプルとして採用して、油分非添加の付着性能試験と同じ試験条件で付着性能試験を行い、同じ方法で付着性能の評価を行った。
【0064】
(油水分離性能試験):メスシリンダー(容量100mL)に、表1A〜表11Aに示す各高温塑性加工用水系潤滑剤組成物を純水にて10倍に希釈した液を80mL投入し、当該メスシリンダーにマシン油を20mL投入し、上下に10回振とうし、1分間静置した。静置後の液を目視にて観察し、油水分離性能が良好なものを○、乳化状態となって油層と水層の分離が遅いものを×として評価した。
【0065】
(試験結果):潤滑性能(油分非添加)試験、潤滑性能(油分添加)試験、付着性能試験(油分非添加)、付着性能試験(油分添加)、油水分離性能試験の結果については、下記の表1B〜表11Bに示す。表1B〜表11Bに示す試験結果は、表1A〜表11Aに示す各高温塑性加工用水系潤滑剤組成物に対応する高温塑性加工用水系潤滑剤組成物の評価である。
【0066】
表1B〜表11Bに示す結果を参照すると、本発明の実施例で採用している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物(ジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム含有)においては、油分非添加及び油分添加のもの共に、潤滑性能試験、付着性能試験、油水分離性能試験の結果には大きな差はなく、油分が混入した状態でも、良好な潤滑性能(加工性能)を示すことが認められる。
【0067】
一方、本発明の実施例に対する比較例で採用している高温塑性加工用水系潤滑剤組成物においては、油分非添加のものでは、実施例と同程度の潤滑性能及び付着性能が認められるが、油分添加のものでは、潤滑性能及び付着性能共に大きく低下していることが認められる。
【0068】
濡れ剤等として周知の界面活性剤である2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(U)や、2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム(V)を採用した比較例においては、油分非添加のものでは、良好な付着性能を示すものの、油分添加のものでは付着性能が大きく低下し、実施例で採用しているジイソデシルスルホコハク酸アンモニウム(潤滑性能回復剤)に比較して、潤滑性能及び付着性能が大きく低下していることが認められる。
【表1A】
【表1B】
【表2A】
【表2B】
【表3A】
【表3B】
【表4A】
【表4B】
【表5A】
【表5B】
【表6A】
【表6B】
【表7A】
【表7B】
【表8A】
【表8B】
【表9A】
【表9B】
【表10A】

【表10B】
【表11A】
【表11B】
【表12】