(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
まず、
図1から
図5を用いて、実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の正面図である。
図2は、実施の形態1に係る扉前面板の構成を説明する
図1のA−A断面図である。
図3は、
図1のP部拡大図である。
図4は、
図1に示す扉のヒンジと反対側面の図である。
図5は、
図1に示す扉のA−A断面図である。
【0018】
図1において、1は冷蔵庫本体である。冷蔵庫本体1は、上から順に冷蔵室2,下段冷蔵室5、並びに野菜室5dを有している。冷蔵室2と下段冷凍室5との間には、上段冷凍室3が設けられて、上段冷凍室3の隣に製氷室4が設けられている。
【0019】
また、各貯蔵室の前方開口には、該前方開口を開閉する扉が設けられている。すなわち、冷蔵室2の前方開口には、左冷蔵室扉2a及び右冷蔵室扉2bが設けられ、下段冷凍室5,上段冷凍室3,製氷室4及び野菜室6の夫々の前方開口には、下段冷凍室扉5a,上段冷凍室扉3a,製氷室扉4a及び野菜室扉6aが夫々設けられている。
【0020】
左冷蔵室扉2a及び右冷蔵室扉2bは、夫々冷蔵庫本体1の上部に設けられた左ヒンジ2a1,右ヒンジ2b1によって、それぞれ回転自在に軸支されており、観音開き式に構成された、いわゆるフレンチドアを構成している。
【0021】
また、下段冷凍室扉5a,上段冷凍室扉3a,製氷室扉4a及び野菜室扉6aは、夫々引き出し式の扉であって、夫々の貯蔵室内の収納容器とともに引き出し自在である。
【0022】
そして、左冷蔵室扉2a及び右冷蔵室扉2b,下段冷凍室扉5a,上段冷凍室扉3a,製氷室扉4a並びに野菜室扉6aは、その外表面に光透過性の扉前面板7が設けられている。扉前面板7は、光を透過する性質のガラスや樹脂で形成することが可能であるが、本実施形態では特にガラス板7aの場合について説明する。
【0023】
扉の端部にはフレームが連結されている。左右両側面には、外観を形成する左側部フレーム50a、右側部フレーム50bがガラス板7aの左右両側にそれぞれ結合されて、上下面の外観を形成する上部フレーム50c、下部フレーム50dがガラス板7aの上下にそれぞれ結合されている。
【0024】
さらに
図1、
図5に示すように、扉前面板7、ドアライナー20、左側部フレーム50a、右側部フレーム50b上部フレーム50c、下部フレーム50dで形成された空間には、発泡断熱材8を充填発泡している。なお、発泡断熱材8と共に真空断熱材32(詳細は後述)を設ける構成であってもよい。
【0025】
扉前面板6であるガラス板7aの板厚は、本実施例では2mmから3.5mmである。
この板厚は、冷蔵庫組み立て時、冷蔵庫移送時、及び冷蔵庫使用時等に生じる衝撃によってガラス板7aが割れたり、亀裂が生じたりしない寸法である。
【0026】
また、さらに強度を確保する場合や板厚を薄くする場合等には、ガラス板7aに熱強化処理や化学強化処理等を施してもよい。なお、ガラス板7aは絶縁体である。
【0027】
次に、
図1及び
図3において、9は操作部である。操作部9は、使用者が外部から操作することで、冷蔵室2及び下段冷凍室5等の各貯蔵室の室温を設定したり、冷蔵室2や上段冷凍室3を急速に冷却したり、製氷室4での製氷の有無や氷の大きさを設定したりする。また、冷蔵室2内に設けられ、貯蔵空間を減圧或いは低酸素状態にして、貯蔵食品の鮮度維持や酸化劣化の抑制を図る貯蔵室(図示なし)の温度を調節したり、減圧或いは低酸素化の機能を切るように設定したりする。すなわち、操作部9を使用者が操作することで、冷蔵庫の諸機能の設定ができる。
【0028】
また、10は表示部である。表示部10は、操作部9からの入力結果を冷蔵庫本体1の外部に表示する。これにより、使用者が操作部9で行った操作を確認したり、先に設定されている諸機能の状態を確認したりすることができる。
【0029】
操作部9及び表示部10は、特別なパネルを取り付けたものではなく、ガラス板7a上に設けられている。すなわち、左冷蔵室扉2aに設けられたガラス板7aは、操作部9及び表示部10を含めて、該左冷蔵室扉2aの外表面全体に亘って平面になるように設けられている。
【0030】
換言すると、操作部9及び表示部10からなるディスプレイ部が、ガラス板7aである扉前面板6に直接設けられている。このため、従来の操作パネルは省略されている。
【0031】
なお、本実施形態では、操作部9及び表示部10が上下に分かれて横長に配置されているが、これに限定するものではない。例えば、表示部の左右上下のいずれかに操作部を配置する構成や、表示部を縦長に配置して、表示部の左右上下のいずれかに操作部を配置する構成であってもよい。また、タッチスクリーン式のディスプレイパネルや、液晶表示部を採用してもよい。
【0032】
次に、ガラス板7aの構成についてさらに説明する。
図2において、ガラス板7aの裏面には、光を反射させることができる金属蒸着層7bが設けられている。金属蒸着層7bは、表示部10の裏面を含めて設けられており、金属蒸着層7bの後面には、表示部10の後方投影位置を避けるように有色塗料層7cが設けられている。この有色塗料層7cは、ガラス板7aの前面から色合いが視認でき、ガラス板7aを透過することで深みのある色調と高級な質感を与える外観性の優れた扉となる。
【0033】
前述したように、金属蒸着層7bの物理的安定性及び化学的安定性を保つために、表示部10の裏面の金属蒸着層7bを覆うように透光性塗料層7dを設け、有色塗料層7cと透光性塗料層7dは重なり合うように印刷されている。すなわち、扉前面板7の裏面の金属蒸着層7bと、金属蒸着層7bの裏面であって表示部10の後方投影位置を避けるように設けた有色塗料層7cと、表示部10の裏面の金属蒸着層7bを覆うように設けた透光性塗料層7dとを備え、有色塗料層7cの表示部10周囲の端部を透光性塗料層7dで覆う。このように、各塗料を重なり合うように印刷することにで、金属蒸着層7bの表示部10周囲の端部を完全に覆い保護することができる。これにより物理的安定性、化学的安定性を保つことができる。なお、表示部10の後方投影位置に有色塗料層7cを設けないのは、表示部10の文字表示等を後方から照射して明示する際に、照射光が遮られないようにするためである。
【0034】
次に、
図3を参照しながら、操作部9及び表示部10についてさらに詳細に説明する。
【0035】
図3において、破線で囲まれた文字部分(冷凍,冷蔵,製氷,急冷、及び真空チルドの各文字)の表示は、ガラス板7aの裏面に直接印刷等により表わされたものである。一方、操作部9は、当該文字部分が印刷された裏面に対向する位置の前面(扉前面板6であるガラス板7aの前面)のことを称する。なお、ガラス板7aの裏面に操作用表示(上記文字部分)を設ける手段としては、印刷の他、エッチングや象嵌等が挙げられる。
【0036】
また、
図3において、実線で囲んだ部分は、上述の操作部9の操作による入力に伴い、諸機能の設定状態を示す表示部10である。そして、この文字表示(「強(低温),中,弱」,「強(チルド),中,弱」,「大きめ,標準,停止」,「急冷蔵,急冷凍」,「真空氷温,真空チルド,切(氷温)」)は、後述するフィルム表面に印刷等で表わされている。
【0037】
当該フィルムは、扉前面板であるガラス板7aの裏面に、密着或いは隙間がごく僅かとなるよう取り付けられている。そのため、ガラス板7aを透過して、左冷蔵室扉2aの正面から、明確にその文字表示を確認することができる。なぜなら表示部10の一のガラス板7a裏面は、金属蒸着層7b透光性塗料層7dで構成されており、有色塗料層7cを設けず。透過率が高くなるからである。なお、発明者らの実験により、表示部10の透過率は50%以上になるように調整されている。本実施例は、視認性が確保されたハーフミラー仕様のガラス板7aで、外表面が構成された仕様となっている。
【0038】
表示部10の文字表示は、後述する基板に接続した照明手段であるLED13a(発光ダイオード)等により照明されて、ガラス板7a前面まで投光して、複数の文字表示及び記号表示の内、所定の部分が浮き上がって見えるように構成されている。
【0039】
次に、
図4において、11は左冷蔵室扉2aの側面に設けられたカバー部材である。カバー部材11は、左冷蔵室扉2aのヒンジ2a1と反対側に設けられ、基板15が挿入される開口を覆う機能を有しており、隣り合う右冷蔵室扉2bとの間に設けられている。この構成において、左冷蔵室扉2a及び右冷蔵室扉2bが閉じている場合、カバー部材11は使用者から外観上、見えないようになっている。これにより、カバー部材11を外し、基板保持手段17を挿入・組付ける構造となっている。なお、右側部フレーム50bにカバー部材11の機能を兼用させてもよい。この場合、右側部フレーム50bを覆う形状の構成部品を一体又は別体に設けることが考えられる。また、必ずしもヒンジ2a1と反対側に開口及びカバー部材11を設けなければならないものではなく、上下左右の何れかのフレームに開口を形成して、その開口から基板15を挿入して、開口をカバー部材で覆う構成であればよい。また、基板15を扉に組み込んでから、ガラス板7aを扉に組み込む構成であれば、開口及びカバー部材は不要である。
【0040】
次に、
図5において、2aは左冷蔵室扉、7は扉前面板、8は発泡断熱材、20はドアライナー、12は基板組立部材である。基板組立部材12は、表示部10を照明するLED発光部13、静電容量の変化を検出する検出部14、判定部(図示せず)マイコンを含む自動制御部(図示せず)等を備えている基板15、表示文字や記号が印刷されたフィルム16、基板保持手段17等で構成されて、基板収納部材18に収納されている。
【0041】
扉前面板7の構成については、前述したように、ガラス板7aの裏面に光を反射させることができる金属蒸着層7bが設けられ、表示部10の後方投影位置を避けるように表示部10を縁取るようにして、金属蒸着層7bの後面に有色塗料層7cが設けられている。
この有色塗料によって反射性が保たれている。
【0042】
ここで、扉前面板7の裏面は発泡断熱材7により覆われた構成であれば、使用者が扉表面を水あるいは洗剤等で清掃する際に、水や洗剤が扉前面板7の端部と各フレームの隙間から裏面側に回り込む現象がある程度防止できる。
【0043】
しかし、基板収納部材18によって、発泡断熱材7から隔離した空間を形成して、発泡断熱材7の発泡充填後、基板組立部材12を基板収納部材18と扉前面板7との間の空間に挿入する構成としているので、当然ながら表示部10は発泡断熱材7で覆われた構造ではない。
【0044】
そこで、表示部10の裏面の金属蒸着層7bを覆うように透光性塗料層7dを設け、有色塗料層7cと透光性塗料層7dを重なり合うように印刷し、金属蒸着層7bを表示部10の裏面以外は有色塗料層7cで覆い、表示部10の後方投影位置は透光性塗料層7dで覆うことで、金属蒸着層7bは全面で保護されている。これらの構成により、使用者が扉表面を水あるいは洗剤等で清掃することに対して、金属蒸着層が浸食されることなく、信頼性のある構造となる。また、油や液状の食品が隙間に侵入に対しても、金属蒸着層7bが浸食されることを防止できる。
【0045】
基板15(検出部14を含む)は、基板15の表側の一面がフィルム16で覆われている。また、他の一面は基板保持手段17で覆う構成であっても、基板15を露出させる構成であってもよい。フィルム16は、検出部14に密着している。また、フィルム16は、LED発光部13の光を裏面から表面に透過して、ガラス板7a側に透過させる構成である。
【0046】
前述したように、表示部10の裏面の金属蒸着層7bを覆うように透光性塗料層7dを設け、有色塗料層7cと透光性塗料層7dは重なり合うように印刷し、金属蒸着層7bを有色塗料層7c及び/又は透光性塗料層7dにより完全に覆い保護しているので、冷蔵庫組立時にフィルム16が扉前面板7の裏面に接触しても、金属蒸着層7bに傷がつくことはない。
【0047】
検出部14は、左冷蔵室扉2aへの組込み時には操作部9と対をなすものである。すなわち、
図5に示すように、絶縁体であるガラス板7aと金属蒸着層7bの抵抗を100メガオーム以上になるように、蒸着膜の金属の種類、比率を調整しており、フィルム16を介して、操作部9が表側に検出部14が裏側に重なるように設けられる。
【0048】
これらの構成により、判定部(図示せず)は、基板15内において操作部9と検出部14との間の静電容量変化を検出できる。静電容量に変化がある場合、当該静電容量の変化に応じて発振,振幅が変化する発振回路を含んでいる。これにより、判定部が出力するスイッチ信号、オン/オフ信号を取り出した自動制御部は、負荷を駆動させる。なお、単に操作部9の前を使用者が通ったり、冷蔵庫前面(左冷蔵室扉2a)を使用者が掃除のために拭いたりする動作等によっては、判定部が出力するスイッチ信号、オン/オフ信号を出力しない構成としてある。
【0049】
すなわち、冷蔵庫の扉前面板7を構成するガラス板7aは絶縁体であり、表示部10については、ガラス板7aの裏面は金属蒸着層7bと投光性塗料層7dで構成されており、透過率が高い。そして、ガラス板7a前面を操作部9とすべく、ガラス板7aの操作部9の裏面に、印刷等で表わされた文字や記号で操作部9の操作内容が表示されている。
【0050】
操作部9に対向するガラス板7aの裏面には、基板15上に設けられて判定部に繋がる検出部14が、フィルム16を介して近接するように設ける。操作部9に併設して設けられる表示部10等の文字表示は、基板15の表面を覆うフィルム16の表面に印刷等で表わされている。
【0051】
そして、表示部10の文字・記号表示は、基板15上に設けられたLED発光部13により、裏面から照らされて明示される。更に、操作部9に使用者の手や指が触れると、基板15上の検出部14が、ガラス板7aとの間の静電容量の変化を感知して、基板15上の判定部に知らせる。そして、判定部が入力を検出すると、自動制御部を介して負荷を動作させる。
【0052】
ここで、自動制御部を介して動作される負荷とは、急冷の場合、冷凍サイクルの強制連続運転、冷気循環ファン(図示なし)の強制連続運転、若しくは冷気供給量を制御するダンパーの強制「開」制御等である。これらの負荷を制御することにより、冷蔵室2を急冷蔵としたり、上段冷凍室3を急冷凍したりする。
【0053】
基板15に静電容量の変化を検出する検出部14を設け、判定部が静電容量の変化を判定した際には、基板15に備えられたブザーが報知音や音声でのアナウンスを発したり、制御内容の変化に伴い報知音に音階をつけたり、音声パターンを変化させて区別させたりする。これにより、ハーフミラーに日光や室内照明が強く当たり、反射して表示の視認が困難な状況となった場合でも、音声で確実に使用者に認識させることができる。
【0054】
次に、
図5において、基板収納部材18は、基板15表面のフィルム16を、扉前面板7であるガラス板7aに密接若しくは近接するように、基板組立部材12を基板収納部材18内に保持する役目を果たす。
【0055】
19は保護フィルムである。保護フィルム19は、ガラス板7aに大きな衝撃が加えられてガラスが割れた場合や亀裂が入った場合であっても、周囲に飛び散らないよう保護している。
【0056】
また、基板組立部材12の短手方向と、ガラス板7aの短手方向は、交差するように配設されている。これは、ガラス板7aに熱処理を加えた場合、ガラス板7aの歪は長手方向に現れやすい性質に基づく。すなわち、この性質に鑑みて、基盤組立部材12を設置した場合における、ガラス板7aの歪の影響を抑制する構成としている。
【0057】
ここで、ガラス板7aの長手方向に、基板組品12の長手方向が沿うように組み込んだ場合、ガラス板7aの歪の影響を受け、ガラス板7aと基板15上の検出部14との間に隙間が生じやすくなる。これにより、操作部9からの入力内容が、検出部14にうまく伝わらない、という課題を生じる。特に、ハーフミラーとした場合、この歪によって、操作対象の検出部14の近傍の他の検出部まで静電容量の変化を誤検知する可能性が高くなる。
【0058】
そこで、本実施の形態では、基板組品12の長手方向はガラス板7aの長手方向に交差する方向に配設している。
【0059】
また、冷蔵庫の扉表面を1枚のガラス板7aとすることにより、製造原価を低減することができる。なお、ガラス板7aと検出部14との間の隙は、ガラス板7aの歪を含め0.2mm以下とする必要がある。0.2mm以上の隙間が生じた場合、操作部9からの入力内容が、検出部14にうまく伝わらない、という課題を生じることが、本発明者らの試験等によって判明している。
【0060】
また、基板組立部材12は、冷蔵庫本体1の最上部に設けられた冷蔵室2の扉、すなわち、左冷蔵室扉2aに設けられている。この高さ位置は、小さな子供の手が届かない位置である。また、使用者にとって見やすく操作し易い位置となる。
【0061】
さらに、本実施形態の場合、操作部9及び表示部10が従来の如く扉前面板7より突出していない。これにより、小さな子供は操作部9及び表示部10がそこにあること自体を認識し難い。すなわち、子供による悪戯操作を低減できる。
【0062】
以上より本実施形態は、貯蔵室2の開口を開閉する貯蔵室扉2aと、貯蔵室扉2aの前面の透光性を有する扉前面板7と、扉前面板7の後方に設置される基板15と、扉前面板7の前面の操作部9と、操作部9の後方且つ扉前面板7の後面に接触又は近接して設けられ静電容量の変化を検出する基板15に接続した検出部14と、操作部9の操作結果を表示する表示部10と、表示部10を後方から照射する照明手段13aと、検出部14の検出結果に基づき照明手段13aを制御する制御部と、扉前面板7の裏面の金属蒸着層7bと、金属蒸着層7bの裏面であって表示部10の後方投影位置を避けるように設けた有色塗料層7cと、表示部10の裏面の金属蒸着層7bを覆うように設けた透光性塗料層7dと、を備え、有色塗料層7cの表示部10周囲の端部を透光性塗料層7dで覆う。
【0063】
これにより、金属蒸着層7bの腐食を防止でき、冷蔵庫扉に対しても信頼性の高い意匠性に優れたハーフミラードアを実現することができる。
【0064】
(実施の形態2)
次に、
図6から
図8を用いて、実施の形態2について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫の正面図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係る扉前面板の構成を説明する
図6のB−B断面図である。
図8は、
図6に示す扉のB−B断面図である。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
実施の形態2では、実施の形態1と操作部9、表示部10における扉前面板7の塗装が異なる。表示部10は、操作部9からの入力結果を冷蔵庫本体1の外部に表示する。これにより、使用者が操作部9で行った操作を確認したり、先に設定されている諸機能の状態を確認したりすることができる。実施の形態1では、金属蒸着層7bを各々の冷蔵庫の扉2,3,4,5に適用しているが、実施の形態2では、操作部9、表示部10のみに適用した形態となっている。これは、金属層の蒸着工程が通常の塗料印刷工程に対して高い精度を有し、製造コストが高くなるためである。そこで、安価でありながら信頼性の高い構造とするために、部分的に投光性を有する板材に金属蒸着層を設けたハーフミラー及び静電容量式の操作部を設けたものである。
【0066】
ここで
図7において、ガラス板7aの構成について説明する。ガラス板7aの操作部9、表示部10以外の裏面に、有色塗料7cを設け、ガラス板7aの操作部9、表示部10の裏面に、光を反射させることができる金属蒸着層7bを設け、操作部9、表示部10の裏面の蒸着層面を覆うように透光性塗料層7dを設け、有色塗料層7cと透光性塗料層7dが重なり合う範囲に、金属蒸着層7bの端部を設けている。
【0067】
光を反射させることができる金属蒸着層6bが設けられることにより、反射性を有した表示部を備えた仕様となり、外観性の優れた扉となる。
【0068】
実施の形態1で前述した如く、金属蒸着層7bの物理的安定性、化学的安定性を保つために、操作部9、表示部10の裏面の蒸着層7bを覆うように透光性塗料層7dを設け、有色塗料層7cと透光性塗料層7dは重なり合うように印刷されている。各塗料を重なり合うように印刷することにより、金属蒸着層7bを完全に覆い、保護することができる。
これにより物理的安定性、化学的安定性を保つことができる。
【0069】
実施の形態2では、操作部と表示部が金属蒸着層上に配置したが、表示部のみを金属蒸着層上に配置する構成であってもよい。すなわち、扉前面板7の裏面であって表示部10の後方投影位置を避けるように設けた有色塗料層7cと、表示部10の裏面であって有色塗料層の表示部10周囲端部を含めて覆う金属蒸着層7bと、金属蒸着層7bを覆うように設けた透光性塗料層7dと、を備え、有色塗料層7c及び金属蒸着層7bの表示部10周囲の端部は透光性塗料層7dで覆う。
【0070】
これらの構成により、金属蒸着層が有色塗料層7cと透光性塗料層7dで保護されるので、扉の組み立て時に損傷することを防止でき、さらに水や洗剤、食品の油や液状食品等の浸食による劣化が防止できる。
【0071】
また、投光性を有する板材に金属製の蒸着膜を設けたハーフミラーを冷蔵庫の扉表面に適用することは、使用者あるいは使用環境が扉表面全体に映し出され、より外観意匠性を向上させた冷蔵庫を提供できる。
【0072】
なお、本実施例では左冷蔵室扉2aに操作部及び表示部を設ける例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、右冷蔵室扉2b、製氷室扉4a、上段冷凍室扉3a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aのいずれかに操作部及び表示部を設ける構成であってもよい。また、複数の扉に操作部及び表示部を設けてもよい。また、操作部と表示部を同一の扉に集約して設ける構成以外にも、操作部を設ける扉と表示部を設ける扉を分けてもよい。いずれの場合も、金属蒸着層、透光性塗料層及び有色塗料層の関係を、本実施の形態のように構成すれば、同様の効果を奏することができる。
【0073】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、
図9、
図10を用いて説明する。尚、実施の形態1と同じ構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、以下では左冷蔵室扉2aを用いて説明するが、他の扉に適用する場合であっても同様の構成となる。
【0074】
本実施の形態における冷蔵庫の扉は、外表面に透光性を有する扉前面板7であるガラス板7aを備えたものである。このガラス板7aの端部はフレーム50に連結している。実施の形態1と同様に左側部、右側部、下部及び上部は、左側部フレーム50a、右側部フレーム50b、上部フレーム50c及び下部フレーム50dとそれぞれ接続される。また、液体は重力により、下方に流れることから、特に扉の下部の隙間からガラス板7aの裏面に液体が回り込み易い。そこで、少なくともガラス板7aと下部フレーム50dとの関係を考慮する必要がある。また、表示部10は使用者が頻繁に目にする部分であることから、表示部10に有色塗料層7cを設けない構成の場合、表示部10の裏面に液体が回り込まない構成とすることが好ましい。
【0075】
以上のことから、各フレームは同様の構成とすることが好ましいが、以下では、代表して下部フレーム50dの構成を中心に説明する。
【0076】
下部フレーム50dは、前側フランジ50d1と、後側フランジ50d2と、前側フランジ50d1及び後側フランジ50d2を連結する連結部50d3とを有する。
図9、
図10に示すように、後側フランジ50d2、前側フランジ50d1及び連結部50d3で形成された凹部にガラス板7a下端が挟持されて支持される。
【0077】
ガラス板7aの裏面には、金属蒸着層7bが設けられ、金属蒸着層7bの裏面には有色塗料層7cが設けられる。有色塗料層7cは、ハーフミラーの抑えとしてガラス板7aを通して外部に色合いを表現するだけではなく、金属蒸着層7bの保護膜としても機能する。有色塗料層7cの裏面には、保護部材である保護フィルム19が貼り付けられている。
【0078】
また、保護フィルム19の裏面には真空断熱材32がホットメルトや接着剤等により貼り付けられている。鋼板製の扉の場合、真空断熱材32を鋼板の裏面に貼り付けると、発泡断熱材の充填発泡時の圧力によって、真空断熱材32の凹凸形状が鋼板の外観に現れやすい。また、鋼板製の扉の場合、真空断熱材32の外包材に含まれてガスバリヤ性を付加する金属層が、鋼板からの熱を伝えやすく、断熱性能が低下する原因となる。
【0079】
一方、ガラス板7aの場合、発泡断熱材の発泡圧力によっても外観が変形せず、真空断熱材32をガラス板7aの裏面に直接貼り付けることが可能である。また、鋼板に比べてガラスは熱伝導率が低いため、真空断熱材32の金属層を通じた熱伝導は低く抑えられる(一般的な各種材料の室温付近での熱伝導率[単位:W・m
-1・K
-1]は、鉄:84、ステンレス鋼:16.7〜20.9、ガラス:1)。
【0080】
金属蒸着層7bは、金属の有する光沢を利用することで、ガラス板7aに鏡面の機能を付加する目的で設けられている。
【0081】
ここで、一般的に金属は空気中の酸素による酸化やその他の化学物質との化学反応による腐食等により、金属光沢を失い変色する。また、金属蒸着層7bの膜厚はハーフミラーとしての特徴を持たせるため、ナノメートルオーダーとなっており、ガラス板7aとの密着性は高いものではなく、化学変化により容易に剥離が生じる。そのため、金属蒸着層7bが酸化や腐食を起こすと、その部分のみ色相の変化が生じ、ハーフミラーとしての機能や望む外観が失われることとなる。
【0082】
しかしながら、冷蔵庫の仕様として、使用者が濡れた手や指で操作する場合、扉表面を水あるいは洗剤等にて清掃する場合を想定しなければならない。さらには、ハーフミラーは扉表面の汚れ、指紋等が一般の扉表面よりも目立ちやすいため、使用者はより多い頻度で清掃をすることとなる。
【0083】
使用者が水あるいは洗剤等の化学物質により清掃した場合、その水あるいは洗剤等がガラス板7aと前側フランジ50d1の間より侵入し、下部フレーム50dの連結部50d3を経由してガラス板7aの裏面に接触する虞がある。ガラス板7aの裏面において、有色塗料層7cが金属蒸着層7bの端面より内側までしか塗布されていない場合、金属蒸着層7bは露出していることから、そこに水あるいは洗剤等が接触することで酸化や腐食が発生する。そして、酸化や腐食が前面フランジ50d1の上部まで進行すると、ハーフミラーの変色が外観として認識できる状態になる。
【0084】
そのため、信頼性の高いハーフミラーの扉を備えた冷蔵庫を製造するためには、金属蒸着層7bの端部を水あるいは洗剤等から保護することが必要となる。
【0085】
本実施形態では、
図10に示すように、有色塗料層7cの端部は金属蒸着層7bの端部より外側に設けられており、金属蒸着層7bが露出することを防止している。有色塗料層7cは、水あるいは洗剤等が直接、金属蒸着層7bに接触することを防止する保護膜として機能するため、防水性や耐薬品性を有することが望ましい。
【0086】
金属蒸着層7bの端部は、前側フランジ50d1の上端(本実施の形態において、例えば前側フランジ50d1の高さ寸法は8mm)よりも下部フレーム50dの連結部50d3側に低く、かつ扉の前方斜め上方から目視した場合に金属蒸着層7bの端部が見えないと共に、下部フレーム50dの連結部50d3と接しない高さ位置の範囲で施されている。ガラス板7aの厚さ寸法が3.0mmで前側フランジ50d1の高さ寸法が8mmの場合は、扉前面に近づいて斜め上方から目視して金属蒸着層7bの端部が見えないのは、ガラス板7aの下端部7a1から約2mm以内である。
【0087】
したがって、金属蒸着層7bの端部をガラス板7aの下端部7a1から約2mmの位置に設定し、有色塗料層7cの端部を金属蒸着層7bの端部より外側から下端部7a1の範囲に設定することで、扉前面に近づいて斜め上方から目視しても金属蒸着層7bの端部が見えず、扉の端部まで全体的に均一のハーフミラーの外観を形成できる。
【0088】
本実施形態は、冷蔵庫本体1に設けられた貯蔵室2と、貯蔵室2の開口を開閉する貯蔵室扉2aと、貯蔵室扉2aの前面の透光性を有する扉前面板7と、扉前面板7の端部に連結するフレーム(左側部フレーム50a、右側部フレーム50b、上部フレーム50c及び下部フレーム50dの少なくともいずれか)と、扉前面板7の裏面に設けた金属蒸着層7bと、フレームに対向する位置の金属蒸着層7bの裏面であって、金属蒸着層7bの端部よりも外側の範囲まで一部が塗布された有色塗料層7cと、を備える。これにより、金属蒸着層7bに水や洗剤、食品の油や液状物等が接触することを防止することが可能となる。
【0089】
また、ガラス板7aの表示部10裏面において、金属蒸着層7bを備えて有色塗料層7cは備えない構成の場合、表示部10の端部から液体がガラス板7a裏面に回り込み金属蒸着層7bを酸化又は腐食させる場合がある。そこで、表示部10の端部位置の金属蒸着層7bを覆うように有色塗料層7cを設ける。例えば、
図1に示すように、左側部フレーム50bと右側部フレーム50bに対向する位置の金属蒸着層7bのうち、少なくとも表示部10の高さ位置で有色塗料層7cを配置する。これにより、表示部10の金属蒸着層7bに水や洗剤、食品の油や液状物等が接触することを防止することが可能となる。
【0090】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について、
図11を用いて説明する。尚、実施の形態1と同じ構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0091】
本実施形態では、ガラス板7aの端部において保護部材である帯状部材42が端部を覆うよう貼付されている。保護部材である帯状部材42は、有色塗料層7c表面からガラス板7aの下端部7a1を経由しガラス板7aの前面にかけて貼りつけられている。ガラス板7aの前面においては前側フランジ50d1の高さよりも範囲で貼り付けられており、扉前面から目視した場合に帯状部材42が見えない構成となっている。
【0092】
帯状部材42は樹脂薄膜からなり、本実施例の形態においては、例えばポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等の合成樹脂のテープとする。帯状部材42の樹脂薄膜の厚さは概ね0.03mmから0.3mmの間であり、樹脂の種類により異なる。これらの樹脂薄膜からなる帯状部材42は防水性を有し、ガラス板7aと前側フランジ50d1との間から侵入した水が直接、金属蒸着層7bに接触することを防止できる。
【0093】
また、帯状部材42はガラス板7aの下端部7a1の補強の機能も有する。特にガラス板7aとして強化ガラスを採用した場合、強化ガラスは端部から亀裂が生じやすい性質がある。そこで、帯状部材42でガラス板7aの端部を覆うことにより、亀裂の発生を抑制することができる。
【0094】
本実施形態では、実施の形態3と同様に、金属蒸着層7bの端部をガラス板7aの下端部7a1から約2mmの位置に設定し、扉前面から金属蒸着層7bの端部が見えないようにしているが、有色塗料層7cの端部は必ずしも金属蒸着層7bの端部より外側の範囲まで設けられている必要はない。帯状部材42が有色塗料層7c及び金属蒸着層7bの端面を覆っているため、金属蒸着層7bの端部は帯状部材42に覆われて露出していないので、水、洗剤、油等の液状物が接触することを防止できる。
【0095】
なお、帯状部材42の有色塗料層7cと接する面を、有色塗料層7cと同一又は類似する色に着色することで、もし帯状部材42が下部フレーム50dから見える位置になったとしても、外観意匠性が損なわれることを防止できる。
【0096】
本実施形態は、冷蔵庫本体1に設けられた貯蔵室2と、貯蔵室2の開口を開閉する貯蔵室扉2aと、貯蔵室扉2aの前面の透光性を有する扉前面板7と、扉前面板7の端部に連結するフレーム(左側部フレーム50a、右側部フレーム50b、上部フレーム50c及び下部フレーム50dの少なくともいずれか)と、扉前面板7の裏面に設けた金属蒸着層7bと、金属蒸着層7bの裏面に設けた有色塗料層7cと、有色塗料層7cの背面からフレームに対向する扉前面板7の端部を覆う保護部材42と、を備える。これにより、扉前面板7とフレームとの間から侵入した水が直接、金属蒸着層7bに接触することを防止できる。
【0097】
また、ガラス板7aの表示部10裏面において、金属蒸着層7bを備えて有色塗料層7cは備えない構成の場合、表示部10の端部から液体がガラス板7a裏面に回り込み金属蒸着層7bを酸化又は腐食させる場合がある。そこで、表示部10の端部位置の金属蒸着層7bを覆うように保護部材42を設ける。例えば、
図1に示すように、左側部フレーム50bと右側部フレーム50bに対向する位置の金属蒸着層7bのうち、少なくとも表示部10の高さ位置で保護部材42を配置する。これにより、表示部10の金属蒸着層7bに水や洗剤、食品の油や液状物等が接触することを防止することが可能となる。
【0098】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について、
図12を用いて説明する。尚、実施の形態1と同じ構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
本実施形態では、実施の形態4と同様の金属蒸着層7b及び有色塗料層7cの構成となっている。実施の形態4と異なる点は、ガラス板7aの下端部7a1にシール部材43が設けた点である。下部フレーム50dの連結部50d3との間の空間33をシール部材43によって塞ぐことで、ガラス板7aと前側フランジ50d1との間から侵入した水がシール部材43より扉後側(後側フランジ50d2側)の空間に流入することを防止することができる。このことから、水、洗剤、油等の液状物が金属蒸着層7bに直接接触することを防止できる。
【0100】
シール部材43は弾性を有する樹脂からなり、本実施の形態においては、例えばシリコーンゴムやEPDM等のゴム又はポリウレタンフォームやポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム等の発泡樹脂からなっている。ガラス板7aと下部フレーム50dを組み立てる前のシール部材43の上下方向の厚みは、組み立てた後のガラス板7aの下端部7a1と下部フレーム50dの連結部50d3との間の寸法t1(本実施例において0mmから0.5mmの間の寸法)より厚く設定することで、シール部材43は圧縮されて、より確実に水の流入を防止することができる。
【0101】
本実施形態は、冷蔵庫本体1に設けられた貯蔵室2と、貯蔵室2の開口を開閉する貯蔵室扉2aと、貯蔵室扉2aの前面の透光性を有する扉前面板7と、扉前面板7の端部に連結するフレーム(左側部フレーム50a、右側部フレーム50b、上部フレーム50c及び下部フレーム50dの少なくともいずれか)と、扉前面板7の裏面に設けた金属蒸着層7bと、金属蒸着層7bの裏面に設けた有色塗料層7cと、フレームと扉前面板7の端部との間に設けた弾性を有する樹脂のシール部材43と、を備える。これにより、扉前面板7とフレームとの間から侵入した水がシール部材43より扉後側の空間に流入することを防止することができる。