(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一態様に係る排ガス浄化システムを概略的に示す図である。
図2は、
図1に示す排ガス浄化システムにおいて使用可能なディーゼル酸化触媒の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すディーゼル酸化触媒の一部を拡大して示す断面図である。
図4は、
図1に示す排ガス浄化システムにおいて使用可能なディーゼルパーティキュレートフィルタの一例を示す断面図である。
図5は、
図1に示す排ガス浄化システムにおいて使用可能なアンモニアスリップ触媒の一例を示す斜視図である。
図6は、
図5に示すアンモニアスリップ触媒の一部を拡大して示す断面図である。なお、
図1において、白抜きの矢印は、排ガスが流れる向きを表している。
【0013】
図1に示す排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジン(図示せず)が排出した排ガスを浄化する排ガス浄化システムである。この排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジンとテールパイプ(図示せず)との間で直列に接続された触媒コンバータ20、30及び40を含んでいる。
【0014】
触媒コンバータ20は、
図1に示すように、コンバータボディ21とディーゼル酸化触媒22とを含んでいる。
【0015】
コンバータボディ21は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ21は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ21の吸気口は、パイプ10aと排気マニホルド(図示せず)とを介して、ディーゼルエンジンのピストン室に接続されている。コンバータボディ21の排気口は、パイプ10bの一端に接続されている。
【0016】
ディーゼル酸化触媒22は、
図2に示すように、ストレートフロータイプのモノリス触媒である。ディーゼル酸化触媒22は、パイプ10aから触媒コンバータ20へと供給された排ガスが、ディーゼル酸化触媒22に設けられた貫通孔を通過し、その後、パイプ10bへと排出されるように、コンバータボディ21内に収容されている。ディーゼル酸化触媒22は、排ガス中の一酸化炭素及び炭化水素の酸化を促進する。これにより、排ガス中のCO及びHCの濃度を低下させるとともに、高沸点の炭化水素や硫化物からなる粒子状物質の一部を排ガスから除去する。
【0017】
ディーゼル酸化触媒22は、
図3に示すように、モノリスハニカム基材221と触媒層222とを含んでいる。
【0018】
モノリスハニカム基材221は、例えば、一方の底面から他方の底面へと各々が延びた複数の貫通孔が設けられた柱体である。モノリスハニカム基材221は、例えば、コージェライト及び炭化珪素などのセラミックスからなる。
【0019】
触媒層222は、モノリスハニカム基材221の隔壁上に形成されている。触媒層222は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0020】
触媒層222は、例えば、第1貴金属元素と第1担体とを含んでいる。
第1貴金属元素は、例えば、白金及びパラジウムなどの白金族元素である。触媒層222は、第1貴金属元素として、単一の貴金属元素を含んでいてもよく、複数の貴金属元素を含んでいてもよい。
【0021】
第1担体は、第1貴金属元素を担持している。第1担体は、アルミナなどの耐熱性材料からなる粒子である。第1担体は、貴金属の表面積を増大させると共に、触媒反応による発熱を消散させて貴金属のシンタリングを抑制する役割を担っている。
【0022】
触媒コンバータ30は、
図1に示すように、コンバータボディ31とディーゼルパーティキュレートフィルタ32とを含んでいる。
【0023】
コンバータボディ31は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ31は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ31の吸気口は、パイプ10bを介して、コンバータボディ21の排気口に接続されている。コンバータボディ31の排気口は、パイプ10cの一端に接続されている。パイプ10bには、その中を流れる排ガスにアンモニア又はその前駆体、例えば尿素水溶液を注入するインジェクタ50が設けられている。
【0024】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、ウォールフロータイプのモノリス触媒である。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、パイプ10bから触媒コンバータ30へと供給された排ガスが、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32の隔壁を透過し、その後、パイプ10cへと排出されるように、コンバータボディ31内に収容されている。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、粒子状物質の残りを排ガスから除去する。
【0025】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、
図4に示すように、フィルタ基材321と活性成分(図示せず)とを含んでいる。
【0026】
フィルタ基材321は、ハニカム構造体3211と栓3212a及び3212bとを含んでいる。
【0027】
ハニカム構造体3211は、例えば、一方の底面から他方の底面へと各々が延びた複数の貫通孔が設けられた柱体である。ハニカム構造体3211は、多孔質隔壁を含んでいる。この多孔質隔壁は、排ガスが同伴している粒子状物質を殆ど透過させることなしに、排ガスを透過させる。
【0028】
ハニカム構造体3211の材料としては、例えば、コージェライト及び炭化珪素などのセラミックスを使用することができる。ハニカム構造体3211には、金属製の不織布が編み込まれていてもよい。
【0029】
栓3212aは、ハニカム構造体3211の孔の一部を下流側で塞いでいる。栓3212bは、ハニカム構造体3211の残りの孔を上流側で塞いでいる。なお、ここで使用する用語「上流側」は、ハニカム構造体3211の端面のうち排ガスが供給される端面を意味している。また、ここで使用する用語「下流側」は、ハニカム構造体3211の端面のうち排ガスを排出する端面を意味している。
【0030】
栓3212a及び3212bは、栓3212aが塞いでいる孔と栓3212bが塞いでいる孔とが多孔質隔壁を挟んで隣り合い、且つ、栓3212bが栓3212aに対して上流側に位置するように配置する。
図4では、栓3212aをハニカム構造体3211の下流側の端に配置しているが、栓3212aはハニカム構造体3211の下流側の端から離れた位置に配置してもよい。同様に、
図4では、栓3212bをハニカム構造体3211の上流側の端に配置しているが、栓3212bはハニカム構造体3211の上流側の端から離れた位置に配置してもよい。
【0031】
栓3212a及び3212bの材料としては、例えば、コージェライト及び炭化珪素などのセラミックスを使用することができる。
【0032】
栓3212a及び多孔質隔壁は、上流側で開口した上流セル3213aを形成している。栓3212b及び多孔質隔壁は、下流側で開口した下流セル3213bを形成している。上流セル3213aと下流セル3213bとは、多孔質隔壁を挟んで隣り合っている。
【0033】
活性成分は、フィルタ基材321、特にはハニカム構造体3211によって担持されている。この活性成分は、選択接触還元に対して触媒活性を示す成分、即ち、窒素酸化物とアンモニアとの反応を促進する成分である。なお、以下の式(1)は、アンモニア前駆体として使用可能な尿素と水との反応を示している。また、以下の式(2)及び(3)は、窒素酸化物とアンモニアとの反応の例である。
【0034】
(NH
2)
2CO+H
2O→2NH
3+CO
2 …(1)
4NH
3+4NO+O
2→4N
2+6H
2O …(2)
4NH
3+2NO
2+O
2→3N
2+6H
2O …(3)
この活性成分としては、選択接触還元において一般に使用されている活性成分を使用することができる。例えば、この活性成分として、金属元素のイオン、特にはナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属元素のイオンが鉄及び銅などの遷移金属元素のイオンで部分的に交換されたゼオライトを使用することができる。或いは、この活性成分として、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム又はセリウムを使用することもできる。なお、ゼオライト系の活性成分は、アンモニアを吸着する能力が高い。そのため、ゼオライト系の活性成分を使用した場合、例えば、吸着量及び温度などを監視してアンモニアの脱離を適切に制御することにより、アンモニアスリップを効果的に抑制することができる。
【0035】
ところで、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32には、不連続的に又は連続的に燃料を噴射して、これに堆積した粒子状物質を燃焼させることがある。即ち、上記の活性成分は、高温に曝される可能性がある。
【0036】
アルカリ金属イオンが遷移金属イオンで部分的に交換されたゼオライトを活性成分として使用する場合、高い触媒活性を達成するには、遷移金属イオンで交換するアルカリ金属イオンの割合を大きくする必要がある。しかしながら、この割合を大きくすると、ゼオライトの耐熱性が低下する。それ故、そのようなゼオライトを活性成分として使用した場合、その選択接触還元能及びアンモニア吸着能は、高温に曝されることによって大幅に低下する可能性がある。
【0037】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32の選択接触還元能が大幅に低下すると、窒素酸化物と反応するアンモニアの割合が小さくなる。その結果、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32のNO
x浄化能が低下する。
【0038】
また、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32のアンモニア吸着能が大幅に低下すると、アンモニアスリップが増加する。そのため、後で詳述するアンモニアスリップ42には、より高いアンモニア浄化能が要求される。
【0039】
ジルコニアを含んだ複合酸化物は、ゼオライトと比較すればアンモニア吸着能は低いものの、比較的高い耐熱性を有している。特に、ジルコニウムに加え、アルミニウム、珪素、チタン、セリウム及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を更に含んだ複合酸化物は、高い耐熱性を示すのに加え、選択接触還元に対して高い触媒活性を示す。例えば、ジルコニウムとセリウムとを含んだ複合酸化物、特には、ジルコニウムとセリウムとタングステンとを含み、任意に、珪素、チタン、ネオジム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を更に含んだ複合酸化物は、高い耐熱性を示すのに加え、選択接触還元に対して高い触媒活性を示す。従って、このような複合酸化物を活性成分として使用すると、高いNO
x浄化能を達成できるのに加え、高温に曝されることに伴う選択接触還元能及びアンモニア吸着能の低下を最小化することができる。
【0040】
この複合酸化物におけるジルコニウムのジルコニア換算での質量比は、例えば20質量%乃至70質量%の範囲内にあり、典型的には40質量%乃至70質量%の範囲内にある。また、この複合酸化物に占めるセリウムのセリア換算での質量比は、例えば5質量%乃至50質量%の範囲内にあり、典型的には10質量%乃至30質量%の範囲内にある。
【0041】
この複合酸化物にタングステンを含有させる場合、複合酸化物におけるタングステンの酸化タングステン(VI)換算での質量比は、例えば5質量%乃至20質量%の範囲内とし、典型的には8質量%乃至15質量%の範囲内とする。
【0042】
珪素は、活性成分の硫黄による被毒を抑制する。この複合酸化物に珪素を含有させる場合、複合酸化物における珪素のシリカ換算での質量比は、例えば1質量%乃至10質量%の範囲内とする。
【0043】
チタンは、活性成分の硫黄による被毒を抑制するため及び耐熱性のために使用する。この複合酸化物にチタンを含有させる場合、複合酸化物におけるチタンのチタニア換算での質量比は、例えば1質量%乃至5質量%の範囲内とする。
【0044】
ネオジム及びイットリウムは、ジルコニウムの安定性を向上させ、それ故、活性成分の耐久性を向上させる。この複合酸化物にネオジムを含有させる場合、複合酸化物におけるネオジムの酸化ネオジム換算での質量比は、例えば1質量%乃至5質量%の範囲内とする。また、この複合酸化物にイットリウムを含有させる場合、複合酸化物におけるイットリウムのイットリア換算での質量比は、例えば1質量%乃至5質量%の範囲内とする。
【0045】
なお、この複合酸化物に、珪素、チタン、ネオジム及びイットリウムの2つ以上を含有させる場合、複合酸化物の量に対するそれらの酸化物換算での合計量の比は、例えば1質量%乃至15質量%の範囲内とする。
【0046】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、アルミナを更に含むことができる。アルミナは、フィルタ基材321、特にはハニカム構造体3211に担持させる。
【0047】
アルミナは、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32の耐熱性を向上させる。上記の複合酸化物とアルミナとの合計量に占めるアルミナの量の割合は、例えば5質量%乃至30質量%の範囲内とし、典型的には10質量%乃至20質量%の範囲内とする。 触媒コンバータ40は、
図1に示すように、コンバータボディ41とアンモニアスリップ触媒42とを含んでいる。
【0048】
コンバータボディ41は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ41は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ41の吸気口は、パイプ10cを介して、コンバータボディ31の排気口に接続されている。コンバータボディ41の排気口は、パイプ10dの一端に接続されている。
【0049】
アンモニアスリップ触媒42は、
図5に示すように、ストレートフロータイプのモノリス触媒である。アンモニアスリップ触媒42は、パイプ10cから触媒コンバータ40へと供給された排ガスが、アンモニアスリップ触媒42に設けられた貫通孔を通過し、その後、パイプ10dへと排出されるように、コンバータボディ41内に収容されている。
【0050】
アンモニアスリップ触媒42は、酸化触媒であって、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32が排出した未反応のアンモニアの酸化を促進する。アンモニアの酸化によって窒素酸化物を生じるが、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32が排出する未反応のアンモニアの量は少ないので、アンモニアスリップ触媒42において生成する窒素酸化物の量も少ない。即ち、アンモニアスリップ触媒42は、排ガス中の窒素酸化物の濃度を大幅に上昇させることなく、排ガス中のアンモニアの濃度を低下させる。
【0051】
アンモニアスリップ触媒42は、
図6に示すように、モノリスハニカム基材421と触媒層422とを含んでいる。
【0052】
モノリスハニカム基材421は、例えば、一方の底面から他方の底面へと各々が延びた複数の貫通孔が設けられた柱体である。モノリスハニカム基材421は、例えば、コージェライト及び炭化珪素などのセラミックスからなる。基材421として、メタルハニカム基材を使用してもよい。
【0053】
触媒層422は、モノリスハニカム基材421の隔壁上に形成されている。触媒層422は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0054】
触媒層422は、例えば、第2貴金属元素と第2担体とを含んでいる。
第2貴金属元素は、例えば、白金及びパラジウムなどの白金族元素であり、典型的には白金を含んでいる。第2貴金属元素は、アンモニアの酸化を促進する。触媒層422は、第2貴金属元素として、単一の貴金属元素を含んでいてもよく、複数の貴金属元素を含んでいてもよい。例えば、触媒層422は、第2貴金属元素として、白金のみを含んでいてもよく、白金とパラジウムとを含んでいてもよい。但し、パラジウムを使用すると、アンモニアスリップ触媒42がアンモニアを酸化させる能力が低下する傾向にある。従って、第2貴金属元素に占めるパラジウムの割合は、例えば30質量%以下又は20質量%以下とし、典型的には10質量%以下とする。
【0055】
アンモニアスリップ触媒42の容積1L当りの第2貴金属元素の質量は、例えば、0.1g/L乃至2.0g/Lの範囲内にあり、典型的には0.3g/L乃至0.8g/Lの範囲内にある。なお、後述するゼオライトがアンモニアの酸化を十分に促進する場合には、第2貴金属元素は省略することができる。
【0056】
第2担体は、第2貴金属元素を担持している。第2担体は、アルミナなどの耐熱性材料からなる粒子である。第2担体は、貴金属の表面積を増大させると共に、触媒反応による発熱を消散させて貴金属のシンタリングを抑制する役割を担っている。第2担体は、省略することができる。
【0057】
触媒層422は、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属イオンが遷移金属イオンで部分的に交換されたゼオライトを更に含んでいる。
【0058】
ゼオライトは、例えば、BEA、MFI、FER、MOR、CHA及びZSM5ゼオライトの1つ以上である。典型的には、ゼオライトは、BEA及びMFIゼオライトの少なくとも一方であるか、又は、BEA、CHA及びZSM5ゼオライトの少なくとも1つである。
【0059】
遷移金属イオンは、例えば、鉄、銅、銀及び白金イオンの1つ以上であり、典型的には鉄及び銅イオンの少なくとも一方である。ゼオライトとしてCHAを使用する場合、遷移金属イオンとしては、例えば銅及び鉄の少なくとも一方を、好ましくは銅を使用する。ゼオライトとしてBEAを使用する場合、遷移金属イオンとしては、例えば、銅及び鉄の少なくとも一方を使用する。ゼオライトとしてZSM5を使用する場合、遷移金属イオンとしては、例えば、銅及び鉄の少なくとも一方を使用する。
【0060】
このようなゼオライトは、アンモニア吸着能が高く、窒素酸化物とアンモニアとの反応を促進する能力も高い。従って、排ガス中のアンモニア濃度がアンモニアスリップ触媒42の浄化能を上回ったとしても、余剰のアンモニアをゼオライトに吸着させることができる。また、ゼオライトが吸着したアンモニアの少なくとも一部は、窒素酸化物の浄化に利用され得る。
【0061】
それ故、触媒層422において先のゼオライトを使用した場合、アンモニアスリップ触媒42が排出する排ガスのアンモニア濃度を低減することができる。加えて、この場合、排ガス浄化システム1のNO
x浄化能が向上する。 上述したように、この排ガス浄化システム1では、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32は、一般的なディーゼルパーティキュレートフィルタの機能と選択接触還元触媒の機能とを有している。それ故、この排ガス浄化システム1は、比較的小さな空間に設置することができる。
【0062】
また、この排ガス浄化システム1では、アンモニア吸着能が高く且つ窒素酸化物とアンモニアとの反応を促進する能力が高いゼオライトを、触媒層422において使用している。そのようなゼオライトは一般に耐熱性が低いが、アンモニアスリップ触媒42は、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32ほど高温に曝されることはない。従って、この排ガス浄化システム1は、性能の低下を生じ難い。
【0063】
この排ガス浄化システム1では、アンモニアスリップ触媒42の容量に対するディーゼルパーティキュレートフィルタ32の容量の比は、例えば、1乃至5の範囲内とする。この比が小さい場合、排ガス中の窒素酸化物の濃度を十分に低くすることが難しい。この比が大きい場合、排ガス中のアンモニアの濃度を十分に低くすることが難しい。
【0064】
この排ガス浄化システム1では、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32における容積1L当りの活性成分の量は、例えば40g/L乃至210g/Lの範囲内とし、典型的には60g/L乃至150g/Lの範囲内とする。或いは、この排ガス浄化システム1では、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32における容積1L当りの活性成分の量は、例えば40g/L乃至180g/Lの範囲内とし、典型的には60g/L乃至100g/Lの範囲内とする。活性成分の量が少ない場合、高いNO
x浄化能を達成できない。活性成分の量が多い場合、コストが上昇するのに加え、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32の熱容量及び排ガスの圧力損失が増大する。その結果、システムの排気圧上昇を招き、燃費が悪化する。
【0065】
アンモニアスリップ触媒42における容積1L当りのゼオライトの量は、例えば10g/L乃至300g/Lの範囲内とし、典型的には120g/L乃至210g/Lの範囲内とする。ゼオライトとしてCHAを使用する場合、アンモニアスリップ触媒42の容積1L当りのCHAの質量は、例えば、60g/L乃至200g/Lの範囲内とし、典型的には80g/L乃至140g/Lの範囲内とする。ゼオライトとしてBEAを使用する場合、アンモニアスリップ触媒42の容積1L当りのBEAの質量は、例えば、80g/L乃至200g/Lの範囲内とし、典型的には100g/L乃至160g/Lの範囲内とする。ゼオライトとしてZSM5を使用する場合、アンモニアスリップ触媒42の容積1L当りのZSM−5の質量は、例えば、80g/L乃至200g/Lの範囲内とし、典型的には100g/L乃至160g/Lの範囲内とする。ゼオライトの量が少ない場合、排ガス中のアンモニア濃度を十分に低減することができない。ゼオライトの量が多い場合、コストが上昇するのに加え、アンモニアスリップ触媒42の熱容量が増大する。それ故、ゼオライト量が一定量を超えると、ゼオライト量を更に増やしても、性能の向上は殆ど見られない。
【0066】
アンモニアスリップ触媒42中のゼオライトに対するディーゼルパーティキュレートフィルタ32中のゼオライトの質量比は、例えば2以下とし、典型的にはゼロである。この比を小さくするほど、排ガス浄化システム1の耐久性が向上する。
【0067】
この排ガス浄化システム1には、様々な変形が可能である。
例えば、
図1には、3つの触媒コンバータ20、30及び40を描いているが、触媒コンバータ30及び40を単一の触媒コンバータとしてもよい。即ち、単一のコンバータボディ内に、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32とアンモニアスリップ触媒42とを配置してもよい。この場合、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32とアンモニアスリップ触媒42とは、互いから離間していてもよく、一体化されていてもよい。
【0068】
ディーゼル酸化触媒22の触媒層222は、白金及びパラジウムの代わりに、又は、白金及びパラジウムに加えて、白金及びパラジウム以外の白金族元素を含むことができる。触媒層222は、白金族元素の代わりに、又は、白金族元素に加えて、白金族元素以外の遷移金属元素を含んでいてもよい。例えば、触媒層222は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びコバルトの1つ以上を含むことができる。
【0069】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32のフィルタ基材321、特にハニカム構造体3211は、上述した活性成分以外の成分を更に担持していてもよい。例えば、フィルタ基材321、特にハニカム構造体3211は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びコバルトの1つ以上を更に担持していてもよい。
【0070】
アンモニアスリップ触媒42の触媒層422は、白金及びパラジウムの代わりに、又は、白金及びパラジウムに加えて、白金及びパラジウム以外の白金族元素を含むことができる。また、触媒層422は、白金族元素の代わりに、又は、白金族元素に加えて、白金族元素以外の遷移金属元素を含んでいてもよい。例えば、触媒層422は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びコバルトの1つ以上を含むことができる。
【0071】
以下、本発明の例について説明する。
<ディーゼル酸化触媒DOCの製造>
図1乃至
図3を参照しながら説明したディーゼル酸化触媒22を、以下の方法により製造した。
【0072】
まず、70gのアルミナ粉末と、100gのゼオライト粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、200gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。
【0073】
次に、このスラリーを、容積が1.4Lのモノリスハニカム基材221にコートした。この塗膜は、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0074】
その後、この基材221を、白金を含有した水溶液とパラジウムを含有した水溶液とに順次浸漬させた。これにより、基材221上のコート層に、2.8gの白金と1.4gのパラジウムとを担持させた。
更に、この構造体を、250℃で1時間に亘って熱処理した。
【0075】
以上のようにして、
図1乃至
図3を参照しながら説明したディーゼル酸化触媒22を完成した。以下、このようにして得られたディーゼル酸化触媒を、「触媒DOC」と呼ぶ。
【0076】
<ディーゼルパーティキュレートフィルタDPF1の製造>
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を、以下の方法により製造した。
【0077】
まず、ジルコニウムを含んだ90gの酸化物粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、300gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。ここでは、ジルコニウムを含んだ酸化物粉末として、ジルコニウムに加え、チタンと珪素とタングステンとセリウムとを更に含んだ酸化物粉末を使用した。この酸化物粉末において、ジルコニウムのジルコニア換算での質量比は51.0質量%であり、チタンのチタニア換算での質量比は3質量%であり、珪素のシリカ換算での質量比は2.3質量%であり、タングステンの酸化タングステン(VI)換算での質量比は8.5質量%であり、セリウムのセリア換算での質量比は16.3質量%であった。
【0078】
次に、このスラリーを、容積が3.0Lのコージェライト製フィルタ基材321にコートした。次いで、この塗膜を、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0079】
以上のようにして、
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を完成した。以下、このようにして得られたディーゼルパーティキュレートフィルタを、「フィルタDPF1」と呼ぶ。
【0080】
<ディーゼルパーティキュレートフィルタDPF2の製造>
ジルコニウムを含んだ酸化物粉末の代わりにFeZSM5粉末を使用したこと以外は、フィルタDPF1について説明したのと同様の方法により、
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を製造した。以下、このようにして得られたディーゼルパーティキュレートフィルタを、「フィルタDPF2」と呼ぶ。
【0081】
<ディーゼルパーティキュレートフィルタDPF3の製造>
ジルコニウムを含んだ酸化物粉末の代わりにCuCHA粉末を使用したこと以外は、フィルタDPF1について説明したのと同様の方法により、
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を製造した。以下、このようにして得られたディーゼルパーティキュレートフィルタを、「フィルタDPF3」と呼ぶ。
【0082】
<ディーゼルパーティキュレートフィルタDPF4の製造>
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を、以下の方法により製造した。
【0083】
まず、90gのアルミナ粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、300gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。
【0084】
次に、このスラリーを、容積が3.0Lのコージェライト製フィルタ基材321にコートした。次いで、この塗膜を、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0085】
その後、このフィルタ基材321を、白金を含有した水溶液に浸漬させた。続いて、このフィルタ基材321を、パラジウムを含有した水溶液に浸漬させた。これにより、フィルタ基材321上のコート層に、1.8gの白金と0.9gのパラジウムとを担持させた。
【0086】
以上のようにして、
図1及び
図4を参照しながら説明したディーゼルパーティキュレートフィルタ32を完成した。以下、このようにして得られたディーゼルパーティキュレートフィルタを、「フィルタDPF4」と呼ぶ。
【0087】
<選択接触還元触媒SCRの製造>
選択接触還元触媒を、以下の方法により製造した。
【0088】
まず、160gのゼオライトと、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、250gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。ここでは、ゼオライトとしてFeZSM5を使用した。
【0089】
このスラリーを、容積が3.0Lのモノリスハニカム基材にコートした。次いで、この塗膜を、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0090】
以上のようにして、選択接触還元触媒を完成した。以下、このようにして得られた選択接触還元触媒を、「触媒SCR」と呼ぶ。
【0091】
<アンモニアスリップ触媒ASC1の製造>
図1、
図5及び
図6を参照しながら説明したアンモニアスリップ触媒42を、以下の方法により製造した。
【0092】
まず、150gのゼオライトと、30gのアルミナ粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、250gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。ここでは、ゼオライトとしてFeZSM5を使用した。
【0093】
次に、このスラリーを、容積が1.0Lのモノリスハニカム基材421にコートした。この塗膜は、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0094】
その後、この基材421を、白金を含有した水溶液とパラジウムを含有した水溶液とに順次浸漬させた。これにより、基材421上のコート層に、0.6gの白金と0.3gのパラジウムとを担持させた。
更に、この構造体を、250℃で1時間に亘って熱処理した。
【0095】
以上のようにして、
図1、
図5及び
図6を参照しながら説明したアンモニアスリップ触媒42を完成した。以下、このようにして得られたアンモニアスリップ触媒を、「触媒ASC1」と呼ぶ。
【0096】
<アンモニアスリップ触媒ASC2の製造>
180gのアルミナ粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、250gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。このスラリーを用いてコート層を形成したこと以外は、触媒ASC1について説明したのと同様の方法により、アンモニアスリップ触媒を製造した。以下、このようにして得られたアンモニアスリップ触媒を、「触媒ASC2」と呼ぶ。
【0097】
<アンモニアスリップ触媒ASC3の製造>
図1、
図5及び
図6を参照しながら説明したアンモニアスリップ触媒42を、以下の方法により製造した。
【0098】
まず、150gのゼオライトと、30gのアルミナ粉末と、10質量%の濃度でアルミナを含んだ200gのアルミナゾルと、250gの脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。ここでは、ゼオライトとして、70gのCuCHAと、40gのFeBEAと、40gのFeZSM5との混合物を使用した。
【0099】
次に、このスラリーを、容積が1.0Lのモノリスハニカム基材421にコートした。この塗膜は、250℃で1時間に亘って乾燥させ、続いて、500℃で1時間に亘って熱処理した。
【0100】
その後、この基材421を、白金を含有した水溶液に浸漬させた。これにより、基材421上のコート層に、0.5gの白金を担持させた。
更に、この構造体を、250℃で1時間に亘って熱処理した。
【0101】
以上のようにして、
図1、
図5及び
図6を参照しながら説明したアンモニアスリップ触媒42を完成した。以下、このようにして得られたアンモニアスリップ触媒を、「触媒ASC3」と呼ぶ。
【0102】
<排ガス浄化システムPS1の組み立て>
図1に示す排ガス浄化システム1を組み立てた。具体的には、ディーゼル酸化触媒21として、触媒DOCを使用した。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32としては、フィルタDPF1を使用した。アンモニアスリップ触媒42としては、触媒ASC1を使用した。
以下、このようにして得られた排ガス浄化システムを、「浄化システムPS1」と呼ぶ。
【0103】
<排ガス浄化システムPS2の組み立て>
触媒ASC1の代わりに触媒ASC2を使用したこと以外は、浄化システムPS1と同様の排ガス浄化システムを組み立てた。以下、この排ガス浄化システムを、「浄化システムPS2」と呼ぶ。
【0104】
<排ガス浄化システムPS3の組み立て>
フィルタDPF1の代わりにフィルタDPF2を使用したこと以外は、浄化システムPS1と同様の排ガス浄化システムを組み立てた。以下、この排ガス浄化システムを、「浄化システムPS3」と呼ぶ。
【0105】
<排ガス浄化システムPS4の組み立て>
触媒ASC1の代わりに触媒ASC2を使用し、フィルタDPF1の代わりにフィルタDPF2を使用したこと以外は、浄化システムPS1と同様の排ガス浄化システムを組み立てた。以下、この排ガス浄化システムを、「浄化システムPS4」と呼ぶ。
【0106】
<排ガス浄化システムPS5の組み立て>
フィルタDPF1の代わりにフィルタDPF3を使用したこと以外は、浄化システムPS1と同様の排ガス浄化システムを組み立てた。以下、この排ガス浄化システムを、「浄化システムPS5」と呼ぶ。
【0107】
<排ガス浄化システムPS6の組み立て>
図9は、比較例に係る排ガス浄化システムを概略的に示す図である。
【0108】
図9に示す排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジン(図示せず)が排出した排ガスを浄化する排ガス浄化システムである。この排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジンとテールパイプ(図示せず)との間で直列に接続された触媒コンバータ20、30a、30b及び40’を含んでいる。
【0109】
触媒コンバータ30aは、コンバータボディ31aとディーゼルパーティキュレートフィルタ32aとを含んでいる。
【0110】
コンバータボディ31aは、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ31aは、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ31aの吸気口は、パイプ10bを介して、コンバータボディ21の排気口に接続されている。コンバータボディ31aの排気口は、パイプ10eの一端に接続されている。なお、排ガスにアンモニア又はその前駆体を注入するインジェクタ50は、パイプ10bではなく、パイプ10eに設けられている。
【0111】
ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aは、ウォールフロータイプのモノリス触媒である。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aは、パイプ10bから触媒コンバータ30aへと供給された排ガスが、ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aの隔壁を透過し、その後、パイプ10eへと排出されるように、コンバータボディ31a内に収容されている。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aは、
図4を参照しながら説明したのと同様のフィルタ基材を含んでいる。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aは、排ガスから粒子状物質を除去する。
【0112】
触媒コンバータ30bは、コンバータボディ31bと選択接触還元触媒32bとを含んでいる。
【0113】
コンバータボディ31bは、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ31bは、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ31bの吸気口は、パイプ10eを介して、コンバータボディ31aの排気口に接続されている。コンバータボディ31bの排気口は、パイプ10cの一端に接続されている。
【0114】
選択接触還元触媒32bは、ストレートフロータイプのモノリス触媒である。選択接触還元触媒32bは、パイプ10eから触媒コンバータ30bへと供給された排ガスが、選択接触還元触媒32bに設けられた貫通孔を通過し、その後、パイプ10cへと排出されるように、コンバータボディ31b内に収容されている。選択接触還元触媒32bは、モノリスハニカム基材と、その隔壁上に形成された触媒層とを含んでいる。選択接触還元触媒32bは、窒素酸化物とアンモニアとの反応を促進する。
【0115】
触媒コンバータ40’は、コンバータボディ41’とアンモニアスリップ触媒42’とを含んでいる。
【0116】
コンバータボディ41’は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ41’は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ41’の吸気口は、パイプ10cを介して、コンバータボディ31bの排気口に接続されている。コンバータボディ41’の排気口は、パイプ10dの一端に接続されている。
【0117】
アンモニアスリップ触媒42’は、ストレートフロータイプのモノリス触媒である。アンモニアスリップ触媒42’は、パイプ10cから触媒コンバータ40’へと供給された排ガスが、アンモニアスリップ触媒42’に設けられた貫通孔を通過し、その後、パイプ10dへと排出されるように、コンバータボディ41’内に収容されている。アンモニアスリップ触媒42’は、モノリスハニカム基材と、その隔壁上に形成された触媒層とを含んでいる。アンモニアスリップ触媒42’は、選択接触還元触媒32bが排出した未反応のアンモニアの酸化を促進する。
【0118】
この排ガス浄化システム1を組み立てた。具体的には、ディーゼル酸化触媒21として、触媒DOCを使用した。ディーゼルパーティキュレートフィルタ32aとしては、フィルタDPF4を使用した。選択接触還元触媒32bとしては、触媒SCRを使用した。そして、アンモニアスリップ触媒42としては、触媒ASC2を使用した。
以下、このようにして得られた排ガス浄化システムを、「浄化システムPS6」と呼ぶ。
【0119】
<排ガス浄化システムPS7の組み立て>
触媒ASC1の代わりに触媒ASC3を使用したこと以外は、浄化システムPS1と同様の排ガス浄化システムを組み立てた。以下、この排ガス浄化システムを、「浄化システムPS7」と呼ぶ。
【0120】
<試験>
浄化システムPS1乃至PS7の各々について、初期性能と耐久後の性能とを調べた。具体的には、浄化システムPS1乃至PS7の各々を、排気量が2.2Lのエンジンの排気系に設置し、エンジンの定常運転を行った。この定常運転においては、エンジンの回転数を2000rpm、トルクを170Nmとして、浄化システムへ供給する排ガスにおけるNO
xの濃度を250ppmに維持した。また、インジェクタ50による尿素水溶液の注入は、尿素の注入量が、浄化システムへ供給する排ガスが含んでいるNO
xの0.75倍(尿素換算)となるように行った。そして、各浄化システムの上流及び下流にガス分析計を設置し、排ガス中のNO
x濃度を測定した。
【0121】
図7は、耐久後の浄化システムPS1乃至PS7のNO
x浄化能及びアンモニア浄化能を示すグラフである。
図8は、浄化システムPS1及びPS4の初期及び耐久後におけるNO
x浄化能を示すグラフである。なお、
図7において、横軸は、排ガス浄化システムが排出した排ガスにおけるアンモニア濃度を示している。
【0122】
図7に示すように、浄化システムPS1は、浄化システムPS6と比較して、アンモニア浄化能は僅かに劣るものの、より高いNO
x浄化能を有していた。浄化システムPS2は、浄化システムPS6と比較して、NO
x浄化能は僅かに優れているものの、アンモニア浄化能が遥かに低かった。浄化システムPS3は、浄化システムPS6と比較して、NO
x浄化能は僅かに劣るものの、より高いアンモニア浄化能を有していた。浄化システムPS4は、浄化システムPS6と比較して、アンモニア浄化能が劣り、NO
x浄化能は遥かに低かった。浄化システムPS5は、浄化システムPS6と比較して、より高いNO
x浄化能及びより高いアンモニア浄化能を有していた。浄化システムPS7は、浄化システムPS6と比較して、アンモニア浄化能は僅かに劣るものの、より高いNO
x浄化能を有していた。
【0123】
以上から、浄化システムPS1、PS3、PS5及びPS7は、浄化システムPS6を置換可能であることが分かる。そして、浄化システムPS1、PS5及びPS7は、浄化システムPS6とほぼ同等又はそれ以上のアンモニア浄化能を達成しつつ、浄化システムPS6と比較してより高いNO
x浄化能を達成しており、特に優れた性能を発揮することが分かる。
【0124】
また、
図8に示すように、浄化システムPS1は、浄化システムPS4と比較して、性能の劣化が少ない。
図7及び
図8のデータを考慮すると、ディーゼルパーティキュレートフィルタにおけるゼオライトの量を少なくすると、耐久性が向上すると推定される。
【0125】
更なる利益及び変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定されるべきではない。従って、添付の請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の包括的概念の真意又は範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能である。
以下、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
ディーゼルエンジンが排出した排ガスを浄化する排ガス浄化システムであって、
前記排ガスが通過するディーゼル酸化触媒と、
フィルタ基材と、前記フィルタ基材に支持され、選択接触還元に対して触媒活性を示す活性成分とを含み、前記ディーゼル酸化触媒を通過した前記排ガスが透過するディーゼルパーティキュレートフィルタと、
アルカリ金属イオンが遷移金属イオンで部分的に交換されたゼオライトを含み、前記ディーゼルパーティキュレートフィルタを透過した前記排ガスが通過するアンモニアスリップ触媒と
を具備した排ガス浄化システム。
[2]
前記活性成分は、ジルコニウムを含んだ複合酸化物である[1]に記載の排ガス浄化システム。
[3]
前記複合酸化物は、アルミニウム、珪素、チタン、セリウム及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を更に含んだ[2]に記載の排ガス浄化システム。
[4]
前記アンモニアスリップ触媒は、白金族元素を更に含んだ[1]乃至[3]の何れか1項に記載の排ガス浄化システム。
[5]
前記ディーゼル酸化触媒と前記ディーゼルパーティキュレートフィルタとの間で前記排ガスにアンモニア又はその前駆体を注入するインジェクタを更に具備した[1]乃至[4]の何れか1項に記載の排ガス浄化システム。