特許第5771601号(P5771601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771601
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】粒子状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/14 20060101AFI20150813BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150813BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20150813BHJP
   A61J 3/07 20060101ALI20150813BHJP
   A23L 1/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   A61K47/14
   A61K9/16
   A61K9/50
   A61J3/07 M
   A23L1/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-508084(P2012-508084)
(86)(22)【出願日】2011年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2011001848
(87)【国際公開番号】WO2011121989
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-247766(P2010-247766)
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-75256(P2010-75256)
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 健登
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真幸
(72)【発明者】
【氏名】榊 晃生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡生
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/059592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/14
A23L 1/00
A61J 3/07
A61K 9/16
A61K 9/50
B01J 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆用油脂組成物のマトリクス中に親水性物質が多分散している、粒子状組成物であって、
前記被覆用油脂組成物が、構成脂肪酸として少なくとも炭素数6〜12の飽和脂肪酸と炭素数14以上の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドを45重量%以上含有し、且つ、全油脂の構成脂肪酸中の炭素数14以上の飽和脂肪酸の割合が50重量%を超えるものである、粒子状組成物。
【請求項2】
被覆用油脂組成物が、エステル交換反応によって得られる、請求項1記載の粒子状組成物。
【請求項3】
エステル交換反応において、酵素または微生物を用いる、請求項2記載の粒子状組成物。
【請求項4】
被覆用油脂組成物の25℃における固体脂含量が58%以上であり、かつ、被覆用油脂組成物の37℃における固体脂含量が90%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項5】
被覆用油脂組成物の37℃における固体脂含量が50%以上である、請求項記載の粒子状組成物。
【請求項6】
被覆用油脂組成物において、構成脂肪酸として少なくとも炭素数8〜12の飽和脂肪酸と炭素数16または18の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドの含有量が50〜90重量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項7】
親水性物質と被覆用油脂組成物の重量比が0.01/99.99〜70/30の範囲内である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項8】
さらに疎水性成分を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項9】
腸内崩壊試験における親水性物質の放出率が40%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物のマトリクス中に親水性物質が多分散している粒子状組成物、及び、室温で固形状の被覆用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
S/O型またはW/O型のマイクロカプセルは、主として固体状の油相中に有用な成分(芯物質)を内包させることにより、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬品、化粧品、飼料、農薬等の様々な用途に応用することができる。これらの用途に使用されるマイクロカプセルに対しては、収率の向上、芯物質の高含量化、カプセル粒子径の幅広い選択範囲だけでなく、DDSの観点から、芯物質の放出パターンのコントロール等の要望もある。
【0003】
一方、これまで知られているS/O型のマイクロカプセルには、例えば、液中乾燥法で製造したマイクロカプセルがある(特許文献1)。このマイクロカプセルの製造過程では、ハロゲン化炭化水素類やエーテル類等の人体に有害な有機溶媒が使用されるため、食品用途への適用が困難である。また、液中乾燥法により製造されたマイクロカプセルは、徐放性マイクロカプセルとして利用できる反面、カプセル皮膜に物理的な細孔が生じやすく、芯物質が膜外に漏洩しやすい等の問題がある。
【0004】
シェル材に固体脂を利用して、膜乳化により、微細なW/O/Wエマルションを調製し、その後凍結乾燥して製造したS/O型マイクロカプセル(特許文献2)が提案されているが、芯物質の高含量化が困難であり、さらに膜乳化時の圧力損失や目詰まり、膜の耐久性等の問題がある。
【0005】
また、親水性生理活性物質をトリパルミチンにより被覆したW/O型またはS/O型のマイクロカプセルとその噴霧乾燥による製造法が知られている(特許文献3)。本文献では、このマイクロカプセルをリパーゼが含有された人工腸液に浸漬し、内包物質の放出特性を明らかにしている。しかしながら、噴霧乾燥で製造された微細粒子であるにもかかわらず、内包物の放出率は十分でない。
【0006】
さらにこの方法では、使用するトリパルミチンの融点が高いために、内包物を油脂中に分散させる際、70℃以上の高温で溶融したトリパルミチンと内包物を接触させる操作が必要となる。そのため、内包物に耐熱性の低い素材を使用する場合では、内包物の変質または損傷を招き、期待される生理活性効果が十分に発揮されないという問題があった。
【0007】
ところで、被覆用油脂は、上記のように生理活性物質を内包するマイクロカプセルの基材として利用される他、食品のコーティング等にも利用されている。一方、従来、食品のコーティングでは、例えば、スナック類などのコーティングを目的として半固形状の油脂が使用されているが(特許文献4)、保存時の被覆用油脂の変形や、被覆用油脂同士の結合などの問題があった。
【0008】
さらに腸溶性に関しては、経口摂取時に、胃の中では崩壊せず、腸内到達後に速やかに内包物を放出する特性が求められるが、従来の被覆用油脂では、その点において充分とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−252751号公報
【特許文献2】特許第4038585号公報
【特許文献3】特開2004−143084号公報
【特許文献4】特開2003−61576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、室温で固形状であって、酸化安定性に優れ、親水性物質等の内包物が高含量で封入され、内包物を被覆する際に熱による内包物の損傷が少なくて済み、かつ腸内到達後に被覆した内包物を速やかに放出できる腸溶特性を有する、食品や医薬品をはじめとし幅広い用途に適用することのできる微細な粒子状組成物、及び、当該粒子状組成物に用いることが可能な油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記本発明の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の固体脂含量を有する油脂組成物をマトリクスとして用いる粒子状組成物は、親水性物質を高含量で封入できるだけでなく、内包した親水性物質の腸管内放出をコントロールできる事を見出し、第一の本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち第一の本発明は、25℃における固体脂含量が58%以上であり、かつ、37℃における固体脂含量が90%以下である油脂組成物のマトリクス中に親水性物質が多分散している粒子状組成物に関する。その好ましい実施態様としては、前記油脂組成物が、高融点油脂95〜60重量%および低融点油脂5〜40重量%からなる粒子状組成物に関する。
【0013】
また、本発明者らは第二の本発明の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、構成脂肪酸として特定の飽和脂肪酸組成を有する油脂組成物が、融点はあまり高くないために低い温度で加工ができるにもかかわらず、室温では固形状を保つことができ、酸化安定性に優れ、更に該油脂組成物によって内包物を被覆することで優れた腸溶特性を示すことを見出し、第二の本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち第二の本発明は、構成脂肪酸として少なくとも炭素数6〜12の飽和脂肪酸と炭素数14以上の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドを45重量%以上含有し、且つ、全油脂の構成脂肪酸中の炭素数14以上の飽和脂肪酸の割合が50重量%を超える、被覆用油脂組成物に関する。当該被覆用油脂組成物は、第一の本発明における油脂組成物として使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、室温で固形状であって、酸化安定性に優れ、親水性物質等の内包物を高含量化できるだけでなく、従来の被覆用油脂では困難な、例えば60℃以下といった操作温度でも被覆加工を行うことが可能であるため、内包物を被覆する際に熱による内包物の損傷が少なくて済み、内包物が胃で分解されることなく、腸で効率よく放出することのできる、微細な粒子状組成物を提供することができる。また、本発明は、医薬品や農薬等の分野だけでなく、食品分野への適用も容易であるなど、幅広い分野への応用展開が可能である。
【0016】
さらに上記の粒子状組成物のマトリクス基材として用いることが可能な被覆用油脂組成物も提供することができる。当該被覆用油脂組成物は、食用油脂としても使用可能であるなど安全性が高く、DDSの観点からの医薬品への適用だけでなく、食品、機能性食品分野への適用も容易であり、幅広い分野への応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1で製造した粒子状組成物のSEM写真である。
図2】実施例1で行なった崩壊試験後の粒子状組成物のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
(第一の本発明)
第一の本発明の粒子状組成物は、25℃における固体脂含量が58%以上であり、かつ、37℃における固体脂含量が90%以下である油脂組成物のマトリクス中に親水性物質が多分散している事を特徴とする粒子状組成物である。
【0020】
固体脂含量(固体脂指数)とは、一般に、特定温度における油脂中で結晶固化している油脂成分が占める割合のことであり、本願においては、25℃における固体脂含量が58%以上であり、かつ、37℃における固体脂含量が90%以下の範囲にある油脂組成物を粒子状組成物のマトリクスとして使用する。本願において、固体脂含量は、対象となる油脂組成物をその融点以上に加温して完全に溶融させた後に、所定温度である25℃または37℃で1週間保持した後に、公知の方法で測定することにより求められる。固体脂含量を測定する公知の方法は特に限定されず、基準油脂分析試験法(日本油化学会編)などに記載された、膨張計を用いる方法やNMR法などいずれを用いても良いが、後述する実施例ではより測定の簡便なNMR法を採用している。
【0021】
本発明の粒子状組成物に用いられる油脂組成物は、上記のように25℃における固体脂含量が58%以上で37℃における固体脂含量が90%以下であれば特に限定されない。25℃における固体脂含量が58%未満の油脂組成物は、常温(通常25℃)で固形性を示すことができず、そのような油脂組成物を利用しても粒子状組成物を製造することができないか、または、たとえ製造できたとしても、得られる粒子状組成物は常温で半固形状の、ベタツキのある粒子となり、粒子同士の固着等が生じて取扱いが極めて困難となる。この観点から、油脂組成物の25℃における固体脂含量は60%以上がより好ましい。また、37℃における固体脂含量が90%を超えると、腸内での親水性物質の放出率が低く、十分な腸溶性を達成できない。製造の容易さより、37℃における固体脂含量が50%以上90%以下の油脂組成物が好ましく、60%以上80%以下の油脂組成物がより好ましい。また、腸溶性の面からは、37℃における固体脂含量が50%以上85%以下の油脂組成物が好ましく、50%以上75%以下の油脂組成物がより好ましく、50%以上70%以下の油脂組成物が特に好ましい。一方、取扱いの容易さの点では、37℃における固体脂含量が60%以上90%以下の油脂組成物が好ましい。本発明の粒子状組成物に使用される油脂組成物は上記固体脂含量を有する油脂組成物であり、上述したとおり、通常、常温で、固体の、あるいは固形性を示す油脂組成物である。
【0022】
本発明の粒子状組成物に用いられる油脂組成物は、上記固体脂含量を有するものであれば特に限定されない。例えば、天然に存在する油脂や工業生産された油脂をそのまま利用することもできるし、また、これら油脂を分別および/または硬化させたものでもよい。また、以上説明した油脂を2種類以上混合することで調製された油脂組成物であってもよい。さらに、エステル交換反応を利用して製造された油脂組成物であってもよい。腸溶性の観点から、エステル交換反応を利用して製造された油脂組成物が好ましい。
【0023】
上記固体脂含量を有する油脂組成物としては、第二の本発明における被覆用油脂組成物を用いることができる。これについては後述する。
【0024】
また、上記固体脂含量を有する油脂組成物は、融点が40℃以上の高融点油脂と、融点が35℃以下の低融点油脂とを所望の割合で混合して調製することができる。これによると、簡便な方法で油脂組成物における固体脂含量を自由にコントロールすることができると共に、その製造過程で有機溶媒を使用することなく本発明の油脂組成物を製造することも可能なため、食品用途への応用において望ましい。より好ましくは、高融点油脂として常温では固体状で崩壊しにくく硬質な形状である融点45℃以上の油脂と、低融点油脂として常温では液体状である融点25℃以下の液体状油脂との混合物であることが腸溶性の面から好ましい。ここでいう「高融点油脂」および「低融点油脂」とは、使用する油脂として複数の成分を組み合わせる場合は、その混合物全体としての性質を意味する。
【0025】
本発明で用いられる高融点油脂は融点が40℃以上の油脂であれば特に限定されない。このような油脂としては、例えば、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、豚脂、牛脂等の動植物油脂類;パーム硬化油、パーム極度硬化油、ナタネ硬化油、ナタネ極度硬化油、大豆硬化油、豚脂硬化油、魚油硬化油等の水素添加動植物油;動植物油脂類やその水素添加物の高融点画分を分別精製した、ヤシ分別油、パーム核油分別油、パーム分別油、カカオ脂分別油、シア脂分別油、豚脂分別油、大豆硬化油分別油、魚油硬化油分別油等の分別油;トリステアリン、トリパルミチン、トリラウリン等の飽和脂肪酸トリグリセリド類;これらのモノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸等の部分グリセリド類;ミツロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウ等の食用ワックス類を挙げることができる。また、本発明における高融点油脂としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。これら高融点油脂としては、入手しやすく、かつ溶融・冷却固化が容易に行えるという観点から、パーム分別油、パーム硬化油、ナタネ硬化油、トリステアリン、トリパルミチン等の、硬化油や、高融点画分の分別油の使用が好ましい。また、トランス脂肪酸を含まないという観点から、パーム極度硬化油、ナタネ極度硬化油、パーム分別油、トリステアリン、トリパルミチン等の使用が好ましい。以上の高融点油脂のうち、パーム分別油、パーム硬化油、パーム極度硬化油、ナタネ硬化油、ナタネ極度硬化油、トリステアリン及びトリパルミチンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0026】
本発明で用いられる低融点油脂は融点が35℃以下の油脂であれば特に限定されない。このような油脂としては、例えば、ナタネ油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、大豆油、シソ油、綿実油、ヒマワリ油、月見草油、ゴマ油、サフラワー油、ヤシ油、カカオ脂、パーム核油、魚油等の動植物油脂類;ワカメ油、コンブ油等の海藻由来油脂類;スピルリナ抽出油等の微細藻類由来油脂類;酵母抽出油、モルティエラ属抽出油等の微生物油脂類;これらの低融点画分を分別精製した、パーム低融点画分、魚油低融点画分、シア脂低融点画分等の分別油;トリカプリリン、トリカプリン等の中鎖脂肪酸トリグリセリド類;トリオレイン、トリリノール等の不飽和脂肪酸トリグリセリド類;これらのモノグリセリド、ジグリセリド等の部分グリセリド類;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂肪酸類を挙げることができる。また、本発明における低融点油脂としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。これら低融点油脂としては、入手しやすいという観点から、ナタネ油、米油、コーン油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、シソ油、パーム核油、ジグリセリド、オレイン酸、ヤシ油、魚油低融点画分、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の使用が好ましい。また、酸化安定性の観点から、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、魚油低融点画分、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の使用が好ましい。
【0027】
本発明の粒子状組成物に用いられる油脂組成物として、高融点油脂と低融点油脂の混合物を使用する場合、その混合割合は特に限定されない。しかし、高融点油脂95〜60重量%と低融点油脂5〜40重量%の混合物であることが好ましい。高融点油脂の含量が95重量%以上であると、得られる粒子は硬質であり取扱い性には優れるものの、腸内での親水性物質の放出が遅くなる傾向がある。一方、高融点油脂の含量が60重量%未満であると、得られる粒子は軟質となるため、粒子としての取扱いが困難になることがある。製造の容易さより高融点油脂85〜70重量%および低融点油脂15〜30重量%の混合物であることがより好ましく、腸溶性の面から高融点油脂80〜60重量%および低融点油脂20〜40重量%の混合物であることがさらに好ましい。また、取扱いの容易さにおいては、高融点油脂95〜70重量%および低融点油脂5〜30重量%の混合物であることがより好ましい。さらに、製造の容易さより、高融点油脂80〜70重量%および低融点油脂20〜30重量%の混合物であることが特に好ましく、腸溶性の面からは、高融点油脂70〜60重量%および低融点油脂30〜40重量%の混合物であることが特に好ましい。また、取扱いの容易さより高融点油脂90〜80重量%および低融点油脂10〜20重量%の混合物であることが特に好ましい。
【0028】
さらに、本発明の粒子状組成物は、マトリクスとして使用する油脂組成物と共に、上記油脂以外の疎水性成分を含有することもできる。該疎水性成分として、生理活性物質やその他有用な成分を使用することで、得られる粒子状組成物に親水性物質だけでなく、疎水性成分をも含有させることができ、好ましい。
【0029】
この場合に用いられる疎水性物質は、使用する油脂組成物に分散あるいは溶解するものであれば、用途に応じて適宜選択することができる。上記疎水性物質としては、例えば、β−カロテン、α−カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチン等のカロテノイド類;ケルセチン、カテキン、クルクミン、クマリン等の疎水性フラボノイド類;ピペリン、ケルシトシン、ミリシトリン、ナリンギン等の水難溶性アントシアニン類;カプサイシン、カプシエイト、カフェイン、ベルベリン、ビンクリスチン等のアルカロイド類;ビタミンA、ビタミンD、α−トコフェロール、β−トコフェロール、ビタミンK等の疎水性ビタミン類;セサミン、セサモリン、セサミノール等の疎水性リグナン類;コエンザイムQ10等の疎水性補酵素類等が挙げられる。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を合わせて使用することもできる。
【0030】
本発明の粒子状組成物に内包される親水性物質は、水溶性のものであれば、用途に応じて適宜選択することができる。上記親水性物質としては、例えば、タンパク質類、ペプチド類、アミノ酸類、抗生物質類、核酸類、有機酸類、水溶性ビタミン類、水溶性ポリフェノール類、水溶性補酵素類、ミネラル類、糖類、テルペン配糖体類、生菌類等が挙げられる。また、以上の物質は、親水性である限り、誘導体や塩の形態で使用することもできる。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を合わせて使用することもできる。
【0031】
上記タンパク質類としては、例えば、酵素、抗体、抗原、ホルモン等を挙げることができる。具体的には、プロテアーゼ類、アミラーゼ類、セルラーゼ類、キナーゼ類、グルカナーゼ類、ペクチナーゼ類、イソメラーゼ類、リパーゼ類、ペクチナーゼ類、インターフェロン、インターロイキン、BMP、免疫グロブリン、血清アルブミン、乳タンパク質由来成分(例えば、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、ラクトパーオキシダーゼ等)等を挙げることができる。
【0032】
上記ペプチド類としては、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GH−RH)、プロラクチン、エリスロポエチン、副腎皮質ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリン、エンドルフィン、キョウトルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘導因子、モチリン、デイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキニン、グルタチオン、イミダゾールジペプチド類(カルノシン、アンセリン、ホモアンセリン、バレニン、アスパルテームなど)、心房性ナトリウム排泄増加因子、神経成長因子、細胞増殖因子、神経栄養因子、エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類などおよびその誘導体、さらにはこれらのフラグメントまたはフラグメントの誘導体等が挙げられる。
【0033】
上記アミノ酸類としては、具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。
【0034】
上記抗生物質類としては、例えば、β−ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリエンマクロライド系、グリコペプチド系、核酸系、ポリドンカルボン酸系等の抗生物質を挙げることができる。
【0035】
上記核酸類としては、具体的には、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸、ATP、GTP、DNA、RNA等を挙げることができる。
【0036】
上記有機酸類としては、具体的には、酢酸、酪酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸等を挙げることができる。
【0037】
上記水溶性ビタミン類としては、具体的には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リポ酸、ビオチン等を挙げることができる。
【0038】
上記水溶性ポリフェノール類としては、具体的には、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、テアフラビン、テアフラビンガレート等の茶フラボノイド類;ナスニン、シソニン、エニン等のアントシアニン類;ナリンギン、ヘスペリジン、ルチン等のフラボノイド類;セサミノールグルコシド、ピレジノール配糖体等の水溶性リグナン類;クロロゲン酸等を挙げることができる。
【0039】
上記水溶性補酵素類としては、チアミン二リン酸、NADH、NAD、NADP、NADPH、FMN、FAD、補酵素A、ピリドキサルリン酸、テトラヒドロ葉酸等を挙げることができる。
【0040】
上記ミネラル類としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、カリウム、ナトリウム、銅、バナジウム、マンガン、セレン、モリブデン、コバルト等、及びこれらのミネラルが結合した化合物等を挙げることができる。
【0041】
上記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール類、およびその他多糖類等が挙げられる。単糖類としては、具体的には、アラビノース、キシロース、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース等を挙げることができる。二糖類としては、具体的には、麦芽糖、セロビオース、トレハロース、乳糖、ショ糖等を挙げることができる。オリゴ糖としては、具体的には、マルトトリオース、ラフィノース糖、スタキオース等が挙げられる。糖アルコール類としては、具体的には、アラビトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等が挙げられる。その他多糖類としては、キチン、キトサン、アガロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、キシログルカン、デンプン、グリコーゲン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
【0042】
上記テルペン配糖体類としては、例えば、ステビオシド、グリチルリチン等が挙げられる。
【0043】
上記生菌類は哺乳動物にとって経口消費されるのに好適であるものが好ましく、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母、麹菌、酢酸菌、酪酸菌、プロピオン酸菌、糖化菌等が挙げられる。
【0044】
上記乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブリュック(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバチルス・フェルメンチイ(Lactobacillus fermrntii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) 、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri) 、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ライシュマニ(Lactobacillus leichmanii)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サーモフィルス(Lactobacillus thermophilus)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、 ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilacticii)、ペディオコッカス・セレビジア(Pediococcus cerevisiae)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メゼントロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・ブルガリカス(Streptococcus bulgaricus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等が挙げられる。
【0045】
上記ビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アンギュレイタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリ(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・カテニュレイタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス(Bifidobacterium denticolens)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリカ(Bifidobacterium gallicum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・イノピナータム(Bifidobacterium inopinatum)、ビフィドバクテリウム・ロンガ(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレイタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum) 等が挙げられる。
【0046】
上記酵母としては、例えば、サッカロマイセス・ボウラディ(Saccharomyces boulardi)、サッカロマイセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake) 等が挙げられる。
【0047】
上記麹菌としては、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) 、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae) 等が挙げられる。
【0048】
上記酢酸菌としては、例えば、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)等が挙げられる。上記酪酸菌としては、例えば、バチルス・トヨイ(Bacillus toyoi)、バチルス・リケニホルムス(Bacillus licheniformis)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum) 等が挙げられる。上記プロピオン酸菌としては、例えば、プロピオニバクテリウム・シェルマニー(Propionibacterium shermanii)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)等が挙げられる。また、上記糖化菌としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メッセンテリカス(Bacillus mesentericus)、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus) 等が挙げられる。
【0049】
その他、哺乳動物にとって経口消費されるのに好適であるものの例として、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)やバチルス・プミラス(Bacillus pumilus)等が挙げられる。これらの生菌類は単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用することもできる。
【0050】
本発明の粒子状組成物においては、親水性物質と油脂組成物の重量比は、0.01/99.99〜70/30の範囲内であることが好ましく、1/90〜40/60の範囲内であることがより好ましい。油脂組成物に対する親水性物質の重量比が低い場合、得られる粒子状組成物中の親水性物質量の含有量が低くなるため、例えば、所定量の親水性物質を経口投与する際に、多量の粒子状組成物を摂取することが必要となる。一方、油脂組成物に対する親水性物質の重量比が高すぎると、製造工程において親水性物質が外水相に漏洩するなど、親水性物質の封入収率が低下することになり好ましくない。
【0051】
本発明の粒子状組成物は、界面活性剤、増粘剤、親水性有機溶媒などをさらに含有していても良い。これらは、粒子状組成物の製造において使用されたものであってもよい。
【0052】
本発明の粒子状組成物は、上記特定の固体脂含量を有する油脂組成物中に、親水性物質が多分散している粒子状組成物であり、いわゆるS/O型あるいはW/O型マイクロカプセルである。
【0053】
本発明の粒子状組成物中の親水性物質の分散径は、特に限定されないが、0.01〜50μmの範囲であることが好ましく、0.01〜20μmの範囲がより好ましく、0.01〜10μmの範囲が最も好ましい。本発明の粒子状組成物は常温で粒子形状を示すものであり、当該粒子の平均粒子径は、1〜2000μmであることが好ましく、10〜1000μmの範囲であることがより好ましく、100〜500μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の粒子状組成物を製造する方法は特に限定されず、公知のS/O型マイクロカプセルまたはW/O型マイクロカプセルの製造方法を適宜採用することができる。例えば、マトリクス成分である油脂組成物を融点以上の温度に調整し、これに、固体状の、または水に溶解した親水性物質を混合、分散させたものを、気相中又は液相中で液滴分散させ、油脂組成物の融点未満に冷却することで、固体状の粒子状組成物を得ることができる。ここでいうS/O型マイクロカプセルとは、油脂組成物からなるマトリクス基材中に親水性の固体物質が多分散した固体粒子を意味するものであり、液体油相中に固体物質が分散したS/Oサスペンションや、水相中に該S/Oサスペンションが懸濁したS/O/Wエマルションとは異なる。
【0055】
マイクロカプセル中に分散させる親水性物質の分散径をより小さく、かつ、親水性物質をより高含量化させる処方としては、例えば、マトリクス成分である油脂組成物と、内包する親水性物質または親水性物質の水溶液との混合物を、油脂組成物の融点以上の温度で乳化分散してW/Oエマルションを調製した後に、油脂組成物の融点以上かつ沸点未満の温度で上記W/Oエマルション中の水分を除去してS/Oサスペンションとし、上記S/Oサスペンションを気相中又は水相中で液滴分散させた状態で油脂組成物の融点未満まで冷却することで油脂組成物を固化させて、S/O型の固形粒子とする方法が、好ましい例としてあげられる。また、マトリクス成分である油脂組成物中に、内包する親水性物質を直接、油脂組成物の融点以上の温度で分散させてS/Oサスペンションを調製し、上記S/Oサスペンションを気相中又は水相中で液滴分散させた状態で油脂組成物の融点未満まで冷却することで油脂組成物を固化させて、S/O型の固形粒子としても良いし、マトリクス成分である油脂組成物と、内包する親水性物質または親水性物質の水溶液との混合物を、油脂組成物の融点以上の温度で乳化分散してW/Oエマルションを調製した後に、水分を除去することなく、液滴分散させた状態で油脂組成物の融点未満まで冷却することで油脂組成物を固化させて、W/O型の固形粒子としてもよい。上記S/OサスペンションまたはW/Oエマルションを気相中で液滴分散させた状態で油脂組成物の融点未満まで冷却する方法としては、噴霧冷却法が挙げられる。上記S/OサスペンションまたはW/Oエマルションを水相中で液滴分散させた状態で油脂組成物の融点未満まで冷却する方法としては、S/OサスペンションまたはW/Oエマルションを、別途調製した水相(好ましくは、界面活性剤、増粘剤、親水性有機溶媒などを含有する水相)中に添加しS/O/WエマルションまたはW/O/Wエマルションを調製した後、得られたS/O/WエマルションまたはW/O/Wエマルションを油脂組成物の融点未満まで冷却する方法が挙げられる。
【0056】
本発明により、幅広い粒子径範囲を有し、親水性物質が高含有量で内包された、微細な粒子状組成物を提供することができる。本発明の粒子状組成物は、リパーゼによって分解されうる油脂成分を粒子状組成物のマトリクスとして使用することによって、腸溶性を有し、タンパク質、ペプチド、酵素等の胃で分解されやすい親水性物質を、胃では分解されず腸で効率よく吸収されうる製剤として使用することが可能である。さらに、本発明ではマトリクス成分として使用する油脂組成物の固体脂含量を所望の範囲に調整することで、体内、特に腸における油脂組成物の溶解性や崩壊性等をコントロールすることができるため、内包された親水性物質の粒子状組成物からの放出の程度や時期をも自由にコントロールすることが可能である。本発明の粒子状組成物の腸における崩壊性は、その目的に応じて適宜設定しうるが、例えば後述する腸内崩壊試験における親水性物質の放出率として、例えば37℃で1時間処理後の親水性物質の放出率が通常20%以上であり、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。上限はいうまでもなく100%であるが、95%程度でも通常の目的においては充分である。
【0057】
(第二の本発明)
第二の本発明の被覆用油脂組成物は、構成脂肪酸として少なくとも炭素数6〜12の飽和脂肪酸と炭素数14以上の飽和脂肪酸の両方を含有するトリグリセライドを主成分とする。トリグリセライドは3つの構成脂肪酸を有するが、本発明の被覆用油脂組成物の主成分であるトリグリセライドは、構成脂肪酸として、炭素数6〜12の飽和脂肪酸を少なくとも1つと、炭素数14以上の飽和脂肪酸を少なくとも1つ有していればよい。前記トリグリセライドにおける残りの1つの構成脂肪酸は限定されず、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよいし、炭素数も任意の範囲で選択できる。融点等の物理学的性質のコントロールの観点からは、構成脂肪酸として、炭素数6〜12の飽和脂肪酸と、炭素数14以上の飽和脂肪酸のみからなるトリグリセライド(すなわち、炭素数6〜12の飽和脂肪酸1つと炭素数14以上の飽和脂肪酸2つを構成脂肪酸とするトリグリセライド、または炭素数6〜12の飽和脂肪酸2つと炭素数14以上の飽和脂肪酸1つを構成脂肪酸とするトリグリセライド)を主成分とするのが好ましい。ここでいう「主成分」とは、油脂組成物中の含有量として、少なくとも45重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上を占めることを意味する。本発明の被覆用油脂組成物における前記トリグリセライドの含有量が45重量%未満であると、本発明の被覆用油脂組成物を用いて被覆した内包物が腸内で放出される際の速度が遅く、十分な腸溶性を達成できないこともある。
【0058】
さらに本発明の被覆用油脂組成物は、組成物中の全油脂中の構成脂肪酸比率として、炭素数14以上の飽和脂肪酸の占める割合が50重量%を超えることを特徴とする。前記割合が50重量%以下であると、被覆用油脂組成物が室温で液状や半固形状となり、粒子状組成物を形成できなかったり、得られる粒子状組成物が柔らかく取り扱いにくくなったり流動性が悪くなったりする傾向がある。
【0059】
すなわち、本発明の被覆用油脂組成物は、構成脂肪酸として少なくとも炭素数6〜12の飽和脂肪酸と炭素数14以上の飽和脂肪酸の両方を含有するトリグリセライドを45重量%以上含有し、且つ、全油脂の構成脂肪酸中の炭素数14以上の飽和脂肪酸の割合が50重量%を超える、被覆用の油脂組成物である。本発明の被覆用油脂組成物は、原料の入手のしやすさから、構成脂肪酸として、少なくとも炭素数8〜12の飽和脂肪酸と炭素数16以上の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドを主成分とするものが好ましく、構成脂肪酸として、少なくとも炭素数8〜12の飽和脂肪酸と炭素数16または18の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドを主成分とするものがより好ましい。本発明の被覆用油脂組成物中の、前記少なくとも炭素数8〜12の飽和脂肪酸と炭素数16または18の飽和脂肪酸を有するトリグリセライドの含有量は、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、腸溶性の観点からは90重量%以下が好ましい。
【0060】
本発明の被覆用油脂組成物は、上記構成脂肪酸組成を有するものであれば特に限定されず、天然に存在する油脂や工業生産された油脂を分別および/または硬化させたり、これら油脂を混合して上記構成脂肪酸組成となるように調整して得る事も出来るが、エステル交換反応を利用して製造するのが主成分となる特定のトリグリセライドを容易に得ることができるため好ましい。ここでいうエステル交換反応は、油脂、脂肪酸、脂肪酸エステルなどを原料として実施できる。具体的には、2種類以上の油脂同士のエステル交換、1種類以上の油脂と1種類以上の脂肪酸とのエステル交換、1種類以上の油脂と1種類以上の脂肪酸エステルのエステル交換反応、1種類以上の油脂と1種類以上の脂肪酸と1種類以上の脂肪酸エステルとのエステル交換反応等が挙げられるが、いずれでもよい。上記エステル交換反応の原料として用いられる油脂としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、サル脂、イリッペ脂、豚脂、牛脂、ナタネ油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、大豆油、シソ油、綿実油、ヒマワリ油、月見草油、ゴマ油、サフラワー油、パーム核油、魚油等の動植物油脂類;硬化パーム油、硬化ナタネ油、硬化大豆油、硬化豚脂、硬化魚油、パーム極度硬化油、ナタネ極度硬化油等の水素添加動植物油;これらを分別精製した、ヤシ分別油、パーム核油分別油、パーム分別油、カカオ脂分別油、シア脂分別油、豚脂分別油、硬化大豆油分別油、硬化魚油分別油等の分別油;トリステアリン、トリパルミチン、トリラウリン等の飽和脂肪酸トリグリセライド類;トリカプリリン、トリカプリン等の中鎖脂肪酸トリグリセライド類;トリオレイン、トリリノール等の不飽和脂肪酸トリグリセライド類や、これらのモノグリセライド、ジグリセライド等の部分グリセライド類等が挙げられる。また、上記エステル交換反応の原料として用いられる脂肪酸または脂肪酸エステルとしては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂肪酸類や、それらのメチルエステルまたはエチルエステルなどの脂肪酸エステル類等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0061】
本発明で実施可能なエステル交換は、アルカリ触媒等を用いた化学的エステル交換反応、酵素や微生物を用いた酵素的エステル交換のいずれでもよい。また、得られるエステル交換油脂の1位または3位の脂肪酸と2位の脂肪酸の組成に偏りがあってもよいし、無くともよい。
【0062】
本発明で化学的エステル交換反応を行う場合に使用できる触媒は、エステル交換反応触媒として一般に知られている触媒であれば特に限定されない。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、カドミウム、チタン、スズ、アンチモン、鉛、マンガン、コバルト、ニッケル等の金属や、それらの酢酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物、又はメチラート等のアルコラート等が挙げられる。本発明において、化学的エステル交換反応は、例えば、常法に従って、原料である油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル等を十分に乾燥させ、上記触媒を上記原料に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色および脱臭処理を施すことができる。
【0063】
本発明で酵素的エステル交換反応を行う場合に使用できる酵素や微生物は、エステル交換反応に利用できることが一般に知られている酵素であれば特に限定されないが、通常、リパーゼまたはリパーゼを産出する微生物が用いられる。使用するリパーゼは、リパーゼ溶液、リパーゼ粉末の他、リパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼのいずれも使用することができる。本発明において酵素的エステル交換反応に使用できるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイム(Lipozime)TLIM、リポザイム(Lipozime)RMIM等)等が挙げられる。 またこれらリパーゼの由来である微生物をそのまま乾燥菌体として、あるいは固定化菌体として酵素的エステル交換反応の触媒に利用できる。本発明において、酵素的エステル交換は、例えば、上記リパーゼ等の酵素を上記原料に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜85℃、好ましくは40〜80℃で、0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末や固定化リパーゼ等の酵素や菌体を除去し、反応後に脂肪酸や脂肪酸エステルが存在する場合にはそれらを必要に応じて除去した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色および脱臭処理を施すことができる。
【0064】
更に本発明においては、エステル交換反応後、構成脂肪酸組成や、融点や固体脂含量などの物性を調節するために、得られたエステル交換油脂をさらに分別または晶析したり、他の油脂や、ミツロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウ等の食用ワックス類油脂と混合することもできる。またこの場合に混合される他の油脂としては上述したような油脂類が使用できる。
【0065】
本発明の被覆用油脂組成物により被覆することができる内包物は、特に限定されず、生理活性物質やその他有用成分を直接内包することもできるし、生理活性物質や有用成分を含有する粉体や錠剤などを内包することもできる。また食品や食品素材を被覆することもできる。上記生理活性物質やその他有用成分としては、親水性物質または疎水性物質のいずれでもよいし、両方でもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0066】
第二の本発明の被覆用油脂組成物により被覆できる親水性物質および疎水性物質としては、第一の本発明に関して上述した親水性物質および疎水性物質が挙げられる。
【0067】
上記疎水性物質は、その他成分との混合物として被覆用油脂組成物とは完全に混合せず被覆用油脂組成物に内包される形態、又は、被覆用油脂組成物と完全にあるいは一部混合して共存する形態のいずれの形態としても添加することができる。例えば、上記疎水性物質を内包した粒子状組成物や錠剤等の表面を本発明の被覆用油脂組成物によりコーティングした形態でもよい。また、被覆用油脂組成物に予め上記疎水性物質を溶解させたものをマイクロカプセル用基材または被覆用油脂として使用することもできる。
【0068】
本発明において、上述したような内包物を本発明の被覆用油脂組成物で被覆する形態としては、特に限定されず、例えば、S/O型のマイクロカプセル、W/O型のマイクロカプセルの形態の他、コーティング粒子、コーティング錠剤等の形態が挙げられる。この中でも、本発明の被覆用油脂組成物は、上述したようなS/O型マイクロカプセルのマトリクス基材として非常に好適である。
【0069】
本発明において、本発明の被覆用油脂組成物を用いたS/O型マイクロカプセルの製造方法は特に限定されないが、好ましくは、上述したような方法、具体的には、被覆用油脂組成物の融点以上で、溶融した被覆用油脂組成物中に親水性物質が多分散したS/Oサスペンションを予め調製し、該サスペンションを水相に懸濁させ液滴化した後、そのまま被覆用油脂組成物の融点未満に冷却して固形粒子を得る液相法、及び、上記S/Oサスペンションを直接噴霧冷却することによって、S/Oサスペンション液滴を油脂組成物の融点未満まで冷却して油脂組成物を固化させる気相法による製造方法等が挙げられる。
【0070】
この場合において、S/Oサスペンションの調製方法は、溶融した被覆用油脂組成物中に均一に親水性物質を分散できる方法であれば特に限定されないが、例えば、溶融した被覆用油脂組成物中に親水性物質が溶解した水溶液と界面活性剤を混合し、ホモジナイザー等で乳化してW/Oエマルションを調製したうえで、高温、減圧状態にて水分のみを除去することで、S/Oサスペンションを得ることができる。一方、タンパク、ペプチド、生菌等、高温条件下で変質、死滅等が生じるような耐熱性の低い素材については、溶融した被覆用油脂組成物中に親水性物質と分散を補助する界面活性剤を直接添加し、撹拌機、ホモジナイザー等で十分に分散させることでS/Oサスペンションを得ることができる。
【0071】
本発明の被覆用油脂組成物を用い、S/O型マイクロカプセルを作製する場合、内包物である親水性物質と被覆用油脂組成物の重量比は、0.01/99.99〜70/30の範囲内であることが好ましく、1/90〜40/60の範囲内であることがより好ましい。被覆用油脂組成物に対する親水性物質の重量比が低い場合、得られるS/O型マイクロカプセル中の親水性物質量の含有量が低くなるため、例えば、所定量の親水性物質を経口投与する際に、多量のマイクロカプセルを摂取することが必要となる。一方、被覆用油脂組成物に対する親水性物質の重量比が高すぎると、球状で流動性に優れた粒子が得られ難いうえ、内包物質の被覆が不十分となり、経口摂取時にマイクロカプセルが腸に到達する前の胃内で大半の内包物質が放出され、腸溶効果を十分に発揮することができなくなる。例えば、胃酸耐性の低いタンパク、生菌等を内包物質に用いた場合、それらの変性、死滅を招くこととなり、期待した生理活性効果が発揮できないことがある。
【0072】
一方、本発明の被覆用油脂組成物を用いて粒子状組成物や錠剤の表面をコーティングしたコーティング粒子またはコーティング錠剤を得る場合、コーティング方法は特に限定されず、例えば、パンコーティング装置、流動層造粒、コーティング装置を用い、粒子状組成物や錠剤の表面に溶融した被覆用油脂組成物を噴霧させ、フィルム層を形成させることにより製造することができる。
【0073】
本発明の被覆用油脂組成物は、室温では固形状を保ち、被覆後の製剤等の取り扱いが容易であるにもかかわらず、優れた腸内崩壊性を有するため、本発明の被覆用油脂組成物を用いたS/O型マイクロカプセルやコーティング粒子、コーティング錠剤は、胃では内包物が胃酸から守られ、腸内到達後に内包物を速やかに放出しうる、腸溶性製剤として優れている。
【実施例】
【0074】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」はそれぞれ「重量部」「重量%」を意味する。
【0075】
(第一の本発明)
(固体脂含量測定)
対象となる油脂組成物をその融点以上に加温して完全に溶融させた後に、所定温度(25℃または37℃)で1週間保持し、その後、該所定温度における固体脂含量を、核磁気共鳴装置ミニスペックmq20(ブルカー・オプティクス株式会社製)を使用し、基準油脂分析試験法(日本油化学会編)2.2.9−2003に準拠して測定した。
【0076】
(腸内崩壊試験)
粒子状組成物の崩壊試験は、胆汁およびリパーゼを含む人工腸液を用いて評価した。pH6.8の崩壊試験第2液(関東化学株式会社製)に胆汁粉末(和光純薬工業株式会社製)とブタ膵臓由来リパーゼ(シグマ社製)をそれぞれ0.5重量%となるように溶解し、人工腸液を調製した。該人工腸液に、親水性物質として食用赤色102号(和光純薬工業株式会社製)を内包した粒子状組成物を添加し、37℃で1時間振とう後、50%トリクロロ酢酸(和光純薬工業株式会社製)水溶液を加え、37℃で12000rpm、5分間の遠心分離(MX−200、株式会社トミー精工製)を行なった。分光光度計(U−2000A形、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて遠心後の上清溶液中の510nmにおける吸収を測定することにより、上清中の親水性物質の濃度を算出した。粒子状組成物中に含有されている親水性物質が全て放出されたときの放出率を100%とし、37℃で1時間、人工腸液で処理した場合の親水性物質の放出率を算出した。
【0077】
(粒子状組成物の平均粒子径の測定)
粒子径測定装置(LA−950、堀場製作所製)を使用して測定した。
【0078】
(粒子状組成物中の親水性物質の含量)
得られた粒子状組成物を、使用した固体脂の融点以上の温度に加温して液状にした上で、水と混合し、粒子状組成物中に封入した親水性物質を水相中に抽出した。抽出した水相中の親水性物質濃度をHPLCにより測定し、粒子状組成物中の正味の親水性物質の含量を算出した。
【0079】
(粒子状組成物への親水性物質の封入収率)
製造過程で使用した親水性物質の重量と、上記方法により算出した粒子状組成物中の親水性物質の含量より、封入収率を算出した。
【0080】
(製造例1:魚油低融点画分の調製)
常法により脱酸脱色した魚油100部を40℃で溶解し、10℃まで緩やかに撹拌しながら冷却し、10℃で12時間保持して結晶を析出させた。次いで、得られた結晶を吸引濾過により濾別して、25℃で液状の魚油低融点画分を得た。
【0081】
(製造例2:パーム分別油の調製)
パーム硬質部100部にヘキサン200部を加え、45℃で完全に溶解後、20℃に20時間保持して高融点画分を析出させた。次いで、得られた高融点画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、250℃で水蒸気蒸留を行い、パーム分別油(融点52℃)を得た。
【0082】
(実施例1)
パーム極度硬化油(商品名「RHPL」、太陽油脂株式会社製、融点57℃)90gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製、融点−12℃)10gを加熱混合し、油脂組成物を得た。得られた油脂組成物の固体脂含量を上記の方法により測定した。
【0083】
あらかじめ温度70℃に加熱して、溶融させておいた油脂組成物20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン株式会社製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス株式会社製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度70℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ70℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン株式会社製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して粒子状組成物を得た。得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験を上記の方法により実施した。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0084】
また、得られた粒子状組成物の平均粒子径は351μmであり、本実施例における食用赤色102号の粒子状組成物への封入収率は93.5%であった。さらに、得られた粒子状組成物を走査型電子顕微鏡(S−4800、日立製作所製、以下SEM)で観察したところ、図1に示したような滑らかな表面構造を有する粒子形状が観察された。また、粒子状組成物の崩壊試験後の表面構造をSEMにより観察したところ、図2に示したような細孔が観察された。細孔を通じて内包物質である食用赤色102号が放出されたと考えられる。
【0085】
(実施例2)
油脂組成物として、製造例2で調製したパーム分別油70g、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、融点67℃)20gおよび中鎖脂肪酸含有トリグリセリド(商品名「アクターM1」、理研ビタミン株式会社製、融点−6℃)10gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0086】
(実施例3)
油脂組成物として、製造例2で調製したパーム分別油95gと、製造例1で調製した魚油低融点画分5gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0087】
(実施例4)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)80gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)20gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0088】
(実施例5)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)60gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)40gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0089】
(実施例6)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびオリーブ油(日清オイリオグループ株式会社製)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0090】
(実施例7)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびヒマワリ油(昭和産業株式会社製)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0091】
(実施例8)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびシソ油(太田油脂株式会社製)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0092】
(実施例9)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびジグリセリド(商品名「エコナ」、花王株式会社製)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0093】
(実施例10)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0094】
(実施例11)
油脂組成物として、トリラウリン(和光純薬工業株式会社製、融点45℃)85gおよびパーム核油(株式会社カネカ製、融点27℃)15gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0095】
(実施例12)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびナタネ油(株式会社カネカ製)15gを加熱混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0096】
(実施例13)
ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)85gおよびナタネ油(株式会社カネカ製)15gを加熱混合し、油脂組成物を得た。あらかじめ温度70℃に加熱して、溶融させておいた油脂組成物20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン株式会社製)1.0gからなる油性成分に、30重量%のアンセリン(焼津水産化学株式会社製)を含有する水溶液5mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス株式会社製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度70℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ70℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン株式会社製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して粒子状組成物を得た。得られた粒子状組成物の平均粒子径は285μmであり、本実施例におけるアンセリンの粒子状組成物への封入収率は89.0%であった。
【0097】
(実施例14)
油脂組成物として、製造例2で調製したパーム分別油90gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドを加熱混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0098】
(実施例15)
製造例2で調製したパーム分別油90gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)10gを加熱混合し、油脂組成物を得た。次に、エタノール200mL中に、ラクトフェリン(和光純薬工業株式会社製)5gとショ糖エルカ酸エステル(商品名「ER−290」、三菱化学フーズ株式会社製)1.5gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。該混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながらエタノールを除去し、ラクトフェリンとショ糖エルカ酸エステルの複合体を得た。ここで得た複合体を、あらかじめ温度55℃に加熱して溶融させておいた油脂組成物18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。次に該S/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)および0.01重量%デカグリセリンモノラウリン酸エステル(商品名「ML−750」、阪本薬品工業株式会社製)含有水溶液300mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガムおよび0.01重量%デカグリセリンモノラウリン酸エステル含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して粒子状組成物を得た。
【0099】
得られた粒子状組成物は、人工胃液に添加しても崩壊せず、添加して120分後に粒子状組成物を人工胃液から取り出して内包しているラクトフェリンを分析した結果、粒子状組成物中のラクトフェリンは分解されることなく存在していることが確認された。すなわち、本実施例の粒子状組成物中に多分散されたラクトフェリンは、胃内での消化酵素耐性が付与されたことが実証された。
【0100】
(実施例16)
油脂組成物として、製造例2で調製したパーム分別油18g、中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)2gおよびコエンザイムQ10(株式会社カネカ製)10gを加熱混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物を得た。使用した油脂組成物の固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0101】
(実施例17)
製造例2で調製したパーム分別油18g、中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)2gおよびコエンザイムQ10(株式会社カネカ製)10gを加熱混合し、油脂組成物を得た。次に、エタノール200mL中に、ラクトフェリン(和光純薬工業株式会社製)4.2gとショ糖エルカ酸エステル(商品名「ER−290」、三菱化学フーズ株式会社製)0.9gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。該混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながらエタノールを除去し、ラクトフェリンとショ糖エルカ酸エステルの複合体を得た。該複合体を、あらかじめ温度58℃に加熱して、溶融させておいた油脂組成物15gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。次に該S/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)および0.01重量%デカグリセリンモノラウリン酸エステル(商品名「ML−750」、阪本薬品工業株式会社製)含有水溶液300mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいた0.5重量部%アラビアガムおよび0.01重量%デカグリセリンモノラウリン酸エステル含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して粒子状組成物を得た。 得られた粒子状組成物の平均粒子径は374μmであり、本実施例におけるラクトフェリンの粒子状組成物への封入収率は94.8%であった。
【0102】
(比較例1)
あらかじめ温度80℃に加熱して、溶融させておいたトリパルミチン(和光純薬工業株式会社製)20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン株式会社製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号を含有する水溶液10mLを添加し、ホモジナイザーで乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度80℃、圧力13kPaの減圧条件で撹拌しながら水分除去を20分間行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ70℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、0.05重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液300mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションに調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ML−750」、阪本薬品工業株式会社製)含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して粒子状組成物を得た。トリパルミチンの固体脂含量と得られた粒子状組成物の腸内崩壊試験の結果を表1に示した。
【0103】
(比較例2)
油脂組成物として、ナタネ極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)50gおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)50gを加熱混合して調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして粒子状組成物の作製を試みた。しかしながら、S/O/Wエマルションを、5℃に冷却したアラビアガムとデカグリセリンモノオレイン酸エステルの水溶液に添加しても油相部分が固化せず、所望する粒子状組成物を得ることはできなかった。使用した油脂組成物の固体脂含量を表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より明らかなように、固体脂含量が50%以上90%以下の油脂組成物をマトリクスとして使用した実施例の粒子状組成物は、親水性物質が高含有量で封入された微細な粒子状組成物であり、かつ、人工腸液中での親水性物質の放出率が20%以上と、良好な腸溶性を示す粒子状組成物であることがわかる。
【0106】
(第二の本発明)
<構成脂肪酸組成の分析法>
分析対象の油脂50mgをイソオクタン5mlに溶解し、0.2mol/Lのナトリウムメチラート/メタノール溶液1mlを加えて70℃で15分間反応させることにより油脂中の構成脂肪酸をメチルエステル化し、酢酸により反応液を中和した後に適量の水を加え、得られた有機相中の脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフ(型番:6890N、Agilent製)により検出することで、分析対象油脂中の構成脂肪酸組成を分析した。
【0107】
<各トリグリセライド含量の測定>
分析対象油脂中の各トリグリセライド組成とそれぞれの含有量は、キャピラリーカラムを装備した水素炎イオン検出器付きのガスクロマトグラフィーにて分析し、得られたチャートのリテンションタイムおよびピークエリア比より求めた。測定条件は以下の通りである。
カラム:TAP−CB(ジーエルサイエンス株式会社製)、内径0.2mm、長さ25m
温度条件:開始温度100℃、昇温速度10℃/分で320℃まで上昇させた後、320℃で8分間保持
<崩壊試験法>
上述した方法と同様にして、37℃で20分、40分、1時間、3時間処理後の親水性物質の放出率を評価した。
【0108】
(実施例18)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)500gおよびナタネ極度硬化油(太陽油脂製)500gを80℃で加熱混合した。そこへ固定化リパーゼ(商品名「Lipozime TL IM」、ノボザイムズ製)10gを添加し、80℃で撹拌しながら24時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。その後、該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ過画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0109】
上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度35℃に加熱して、溶融させておいた中融点画分20gとテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度35℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ70℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルを用いて崩壊試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0110】
(実施例19)
ナタネ極度硬化油(太陽油脂製)900gにラウリン酸(和光純薬製)を400gとヘキサン(和光純薬製)2600gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM 」、ノボザイムズ製)15gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂を70℃まで加熱した後、撹拌しながら46℃まで冷却した。46℃で300分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去し、分別油脂を得た。得られた分別油脂のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0111】
上記エステル交換油脂の分別油脂をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた分別油脂20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、25%アンセリン水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度70℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ40℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してアンセリンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0112】
(実施例20)
ナタネ極度硬化油(太陽油脂製)450gにラウリン酸(和光純薬製)を500gとヘキサン(和光純薬製)1900gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM 」、ノボザイムズ製)15gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0113】
上記エステル交換油脂をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた分別油脂20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、25%アンセリン水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度40℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ40℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してアンセリンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0114】
(実施例21)
トリパルミチン(和光純薬製)900gにラウリン酸(和光純薬製)を400gとヘキサン(和光純薬製)2400gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM」、ノボザイムズ製)13gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。その後、該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ液画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0115】
上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた中融点画分20gおよびショ糖エルカ酸エステル(商品名「ER290」、三菱化学フーズ製)1.0gからなる油性成分に、ラクトフェリン1gを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス株式会製)で分散してS/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、2流体ノズル(空円錐スプレーノズル、株式会社いけうち製)に0.3MPaの圧力でポンプ送液し、10℃の冷却場に噴霧することでラクトフェリンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0116】
(実施例22)
トリパルミチン900gにカプリン酸(和光純薬製)を400gとヘキサン(和光純薬製)2400gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM 」、ノボザイムズ製)13gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した。その後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去した。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ過画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0117】
上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた分別油脂20gおよびショ糖エルカ酸エステル(商品名「ER290」、三菱化学フーズ製)1.0gからなる油性成分に、ラクトフェリン1gを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス株式会社製)で分散してS/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、2流体ノズル(空円錐スプレーノズル、株式会社いけうち製)に0.3MPaの圧力でポンプ送液し、10℃の冷却場に噴霧することでラクトフェリンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0118】
(実施例23)
中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)500gおよびナタネ極度硬化油(太陽油脂製)500gを混合し、90℃、真空度4.0kPaで加熱脱水後、ナトリウムメチラート1gを添加し、90℃、真空度4.0kPaで20分間エステル交換反応を行なった。反応後、十分な水を加え反応を停止させると同時に発生した石鹸分を取り除いた。その後、90℃、真空度4.0kPaで加熱脱水し、白土(水澤化学製)を20g加え、10分保持し、ろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用い、吸引濾過により白土を濾別してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ過画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0119】
上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度60℃に加熱して、溶融させておいた分別油脂20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、30%グルタチオン水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度35℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ35℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してグルタチオンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0120】
(実施例24)
ナタネ極度硬化油(太陽油脂製)900gにカプリン酸(和光純薬製)を400gとヘキサン(和光純薬製)2400gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM」、ノボザイムズ製)13gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した。その後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。その後、該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ過画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0121】
上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた分別油脂20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、30%グルタチオン水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度40℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ40℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してグルタチオンを内包するS/O型マイクロカプセルを得た。
【0122】
(実施例25)
ナタネ極度硬化油(太陽油脂製)450gにラウリン酸(和光純薬製)を500gとヘキサン(和光純薬製)1900gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM」、ノボザイムズ製)15gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した。その後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去し、エステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂20gに、中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)10gを40℃で添加混合し、混合油脂を調製した。得られた混合油脂のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0123】
上記エステル交換油脂の中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合油脂をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを、下記のようにして作成した。
【0124】
あらかじめ温度40℃に加熱して、溶融させておいた上記混合油脂にテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号を含有する水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度40℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ40℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。
【0125】
(実施例26)
中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)300gにステアリン酸(和光純薬製)を700gとヘキサン(和光純薬製)2000gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名Lipozyme RMIM (ノボザイムズ製))13gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した。その後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去した。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。その後、該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ液画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。得られた中融点画分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。上記エステル交換油脂の中融点画分をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度50℃に加熱して、溶融させておいた中融点画分20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号を含有する水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度50℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ50℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルを用いて崩壊試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0126】
(実施例27)
中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)300gにステアリン酸(和光純薬製)を700gとヘキサン(和光純薬製)2000gを加え55℃まで加熱した。そこへ固定化1,3位特異リパーゼ(商品名「Lipozyme RMIM」、ノボザイムズ製)13gを添加し、55℃で撹拌しながら8時間エステル交換反応を行なった。反応終了後、80℃でろ紙(アドバンテック東洋製;No.1)を用いて吸引濾過により固定化リパーゼを濾別除去した。その後、薄膜蒸留装置(柴田科学製)によって流速100mL/h、蒸留温度200℃、真空度6.7Paにてヘキサンと脂肪酸を除去した。得られたエステル交換油脂300gにn−ヘキサン900gを加え、45℃に加温し、エステル交換油脂を完全に溶解させた。その後、該エステル交換油脂のヘキサン溶液を撹拌しながら0.5℃/分の速度で20℃に冷却した。20℃で40分間保持後、吸引濾過により濾別して結晶画分を除去した。得られたろ過画分を35℃に加温し、10分間保持後、撹拌しながら0.5℃/分の速度で0℃に冷却した。0℃で30分間保持後、得られた結晶画分を吸引濾過により濾別して回収し、ヘキサンをエバポレーターで留去後、210℃で水蒸気蒸留を行い、中融点画分を得た。該中融点画分20gに液油として中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)2.0gを45℃で添加混合して混合油脂を作成した。得られた混合油脂のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0127】
上記エステル交換油脂の中融点画分と液油の混合油脂をマトリクスとするS/O型マイクロカプセルを下記のようにして作成した。あらかじめ温度45℃に加熱して、溶融させておいた上記混合油脂とテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号を含有する水溶液10mLを添加し、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ45℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルを用いて崩壊試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0128】
(実施例28)
錠剤コーティング結晶セルロース50g、ステアリン酸マグネシウム0.5g、ラクトフェリン50gを混合し、打錠機(WPM−5、岡田精工製)にて直径12.0mmの杵を用い、打錠圧0.5ton/cmで打錠し、錠剤を得た。次に実施例26にて作製したエステル交換油脂の中融点画分を55℃に加温して溶融し、コーティング用油脂とした。作製した錠剤を転動させながら、1流体ノズル(空円錐スプレーノズル、株式会社いけうち製)より該コーティング用油脂を噴霧して錠剤表面にコーティング処理を行ない、錠剤表面に厚さ約0.5mmの被覆用油脂層を有するコーティング錠剤を得た。
【0129】
(比較例3)
あらかじめ温度80℃に加熱して、溶融させておいたトリパルミチン(和光純薬製、トリパルミチン酸含量98.2重量%)20gおよびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gからなる油性成分に、10重量%食用赤色102号を含有する水溶液10mLを添加し、ホモジナイザーで乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度80℃、圧力13kPaの減圧条件で撹拌しながら水分除去を20分間行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションを、あらかじめ70℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム、0.05重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液300mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションに調製した以外は実施例18と同様にしてS/O型マイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルを用いて崩壊試験を行なった。その結果を表3に示す。
【0130】
(比較例4)
中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン製)20gとテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名「ポエムPR−100」、理研ビタミン製)1.0gに、45℃で温調しておいた実施例20の油脂30gを混合し、油性成分を調製した。得られた油性成分のトリグリセライド組成とそれぞれの含有量、及び、炭素数14以上の飽和脂肪酸割合を表2に示す。
【0131】
上記油性成分に、10重量%食用赤色102号水溶液10mLを添加し35℃で温調後、ホモジナイザー(T.K.ホモミキサー MARKII20型、プライミクス製)で乳化分散してW/Oエマルションを調製した。つづいて、該W/Oエマルションを、温度70℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながら水分除去を行い、S/Oサスペンションを得た。該S/Oサスペンションに、あらかじめ45℃に加熱しておいた0.5重量%アラビアガム(商品名「ガムアラビックSD」、三栄源エフ・エフ・アイ製)、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名「ポエムJ−0381V」、理研ビタミン製)含有水溶液200mLに添加し、ディスクタービン翼を用いて撹拌して、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ5℃に冷却しておいた0.5重量%アラビアガム、0.03重量%デカグリセリンモノオレイン酸エステル含有水溶液400mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルは非常に軟質で、ベタツキがあり、粒子同士が固着して取扱いができなかった。
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
上記結果より、構成脂肪酸として、少なくとも炭素数6〜12の飽和脂肪酸と炭素数14以上の飽和脂肪酸の両方を有するトリグリセライドを45重量%以上含有し、且つ全油脂の構成脂肪酸中の炭素数14以上の飽和脂肪酸の割合が50重量%を超える油脂組成物をマトリクス成分として使用したS/O型マイクロカプセル製剤は、良好な腸溶性を示すことがわかる。
図1
図2