(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771632
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】円筒体の輪郭形状を測定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/24 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-556377(P2012-556377)
(86)(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公表番号】特表2013-522580(P2013-522580A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】DE2011000117
(87)【国際公開番号】WO2011110144
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2013年5月21日
【審判番号】不服2014-20574(P2014-20574/J1)
【審判請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】102010011217.8
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510055862
【氏名又は名称】ザルツギッター マンネスマン ライン パイプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Salzgitter Mannesmann Line Pipe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】デッペ,ゲルト‐ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シェーナルツ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブラウアー,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンケルス,イェルン
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
清水 稔
【審判官】
堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−014698(JP,A)
【文献】
特開2006−153872(JP,A)
【文献】
特開平06−337209(JP,A)
【文献】
特開平04−248406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元光切断法を用いて、測定対象物(4)としての円筒体の輪郭形状を測定するための方法であって、
少なくとも1つのレーザー(1、1’)によって、扇状レーザーライン(2,2’)を前記円筒体の表面上に光切断線として結像し、
前記円筒体の表面から反射したビームを、少なくとも1つの面撮像カメラ(3)によって撮像し、
前記レーザー(1,1’)及び前記面撮像カメラ(3)を、前記円筒体の軸に沿って位置する法平面に三角測距の角度を成すように配置し、次いで、測定した値を、前記輪郭形状を表示するための評価ユニットに伝える方法において、
前記扇状レーザーライン(2,2’)を発する前記レーザー(1,1’)を、前記円筒体の表面に関する前記面撮像カメラの光学軸(6)を前記反射ビームの視射角の範囲内に位置させるように定められる前記法平面に関する前記角度を成して、前記円筒体の軸を中心として前記法平面から外れる範囲まで揺動させながら、前記測定対象物(4)の輪郭形状が、前記測定対象物の周方向に間隔を空けて配置された複数の前記レーザー(1,1’)を用いて測定され、
隣接する前記レーザー(1,1’)の扇状レーザーライン(2,2’)が、前記測定対象物(4)の表面上における1つの線上に位置し、かつ互いに部分的に重なり、
前記隣接するレーザー(1,1‘)の扇状レーザーライン(2,2’)を前記測定対象物(4)の表面上に光切断線として結像した後に前記測定対象物の表面から反射したレーザー放射線が、前記隣接するレーザー(1,1‘)間における前記法平面上に配置された前記少なくとも1つの面撮像カメラ(3)の内1つの面撮像カメラ(3)によって検出される、方法。
【請求項2】
前記測定対象物(4)の周方向測定のために、同数の前記レーザー(1,1’)及び前記面撮像カメラ(3)が用いられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法を実施するための装置であって、
前記扇状レーザーライン(2)を前記測定対象物(4)上に投影する前記複数のレーザー(1,1’)と、
前記測定対象物(4)の表面から反射したレーザー放射線を検出するために、前記レーザーに対して三角測距の角度を成すように配置された前記少なくとも1つの面撮像カメラ(3)と
を備え、
前記レーザー(1,1’)及び前記面撮像カメラ(3)が、前記円筒体の軸に沿って位置する法平面に配置され、かつ輪郭形状を表示するための前記評価ユニットに接続され、
前記扇状に拡がったレーザービーム(5)の軸が、前記法平面から外れるように揺動可能に構成され、
前記円筒体の表面領域に関する前記面撮像カメラ(3)の光学軸(6)が、前記反射レーザービームの視射角の範囲内に位置するように、前記測定対象物(4)の表面上における直交線から外れた角度を成して配向され、
前記測定対象物(4)の輪郭形状を測定するために、前記複数のレーザ(1,1’)が、前記測定対象物の周方向に間隔を空けて配置されており、
前記隣接するレーザー(1,1’)の扇状レーザライン(2,2’)が、前記測定対象物(4)の表面上における1つの線上に位置し、かつ互いに部分的に重なり、
前記少なくとも1つの面撮像カメラ(3)の内1つの面撮像カメラ(3)が、前記隣接するレーザー(1,1‘)の扇状レーザーライン(2,2’)を前記測定対象物の表面上に光切断線として結像した後に前記測定対象物(4)の表面から反射したレーザービームを検出するために、前記隣接するレーザー(1,1‘)間における前記法平面上に配置されている、装置。
【請求項4】
前記測定対象物(4)の周方向測定のために、同数の前記レーザー(1,1’)及び前記面撮像カメラ(3)が配置されている、請求項3に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の球状湾曲体、特に、円筒体の輪郭形状を測定するための方法、及び請求項3に記載の前記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
本発明は、特に、周知の二次元三角測距法としてのレーザー光切断法を用いて非接触式に行われる光学的な輪郭の測定に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでは、測定対象物、例えば、管の三次元的な「全体輪郭(overall profile)」は、二次元な「輪郭断片(profile sections)」を継ぎ合せることによって、描かれるようになっており、この二次元な「輪郭断片」は、センサ及び測定対象物が互いに相対的に移動する際に連続的に撮像されたものとなっている。
【0004】
本発明の記載において考慮されるような輪郭の測定が、周知の点三角測距に基づいて一次元的に行われる場合、レーザー及び直線位置敏感型検出器が三角測距のセンサを構成するものとして用いられる。レーザービーム軸及び検出器の光学軸は、以後「法平面(normal plane)」と呼ぶ面上に延在し、かつ三角測距の角度を成している。レーザービームの方向におけるセンサから測定対象物までの距離は、通常では測定変数を構成している。このような方法は、例えば、特許文献1から知られている。
【0005】
この点三角測距を二次元に拡張することが本特許出願の主題である。一般的に知られている光切断法では、点状レーザービームが扇状レーザービームに置き換えられ、かつ一次元的直線位置検出器が二次元的面検出器に置き換えられることとなる。
【0006】
周知の方法では、この拡張は、前述した法平面に対して直交する方向にて対称的に行われている。測定対象物上の各測定範囲は、対物レンズによって検出器上に結像されるようになっている。対物レンズ及び検出器は、二次元的に作動する面撮像カメラを構成している。
【0007】
扇状レーザービームは、典型的には、点状レーザービームの出射口前方に取り付けられた回折光学系によって生成され、これによって、「光切断線(光切断ライン、light section line)」と呼ばれる線が測定対象物上に生成されるようになっている。
【0008】
前述の方法を円筒状の測定対象物、例えば、必ずしも必要ではないが、管に適用するとき、光切断線は、典型的には管軸と直交するように配向される。管が長軸の方向に運ばれるとき又はセンサがしかるべく移動するとき、管形状の三次元的な輪郭が、前述したような連続測定によって撮像されることになる。
【0009】
前述した方法及び装置によって光切断測定を行う場合、その欠点が測定対象物の形状によって顕在化して、輪郭形状の正確な測定が一部できなくなるおそれがある。
【0010】
図1は、円筒管の従来の二次元的な光切断測定を概略的に示している。測定には、カメラ3として構成された検出器により撮像された測定対象物4の表面の画像が用いられる。この表面は、レーザー1から放射された扇状の投影レーザーライン2によって照射されるものである。
【0011】
図1の左側の図は縦断面を概略的に示しており、右側の図は測定対象物4の長軸に対する横断面を概略的に示している。レーザー1及びカメラ3によって構成される光切断装置は、測定対象物の長軸に沿って位置する法平面に配置されており、レーザー1の扇状レーザービーム5の軸とカメラ3の光学軸6との間における挟角が、縦断面における「三角測距の角度」となっている。
【0012】
このような装置の欠点としては、対象物表面から後方散乱するレーザービームエネルギーの比較的わずかな部分のみが評価用のカメラ3に到達するに過ぎないということがある。特に、動的な測定を行う場合には、露出時間当たりのエネルギーが関連することとなる。このことは、カメラ3と測定対象物4との間の迅速な相対運動が行われることに伴って必然的に露出時間が短くなる場合に、特に顕著になって、三次元的な輪郭の測定ができなくなるおそれがある。
【0013】
測定が円筒形状のものに適用される場合、このような周知の方法による測定の欠点は、レーザービーム2の扇状の拡がりによる角度の付いた状態に基づいて増幅されて、特に、測定範囲の縁領域、具体的には、表面の湾曲によって後方散乱したレーザーエネルギーのごくわずかしかカメラ3によって撮像されない領域に、影響を及ぼすことになる。
【0014】
結像された光切断線の縁領域において強度が低下することも、測定信号の評価における信号ノイズ比、ひいては、信号の測定精度に対して不利となる。
【0015】
一般的に、信号ノイズ比はレーザー出力の増加によって改善されるが、このことは、レーザーを複雑にし、かつレーザーの安全性を高めることを必要とするので、好ましくない。
【0016】
カメラの露出時間を増加させることもまた原理的には可能であるが、この露出時間の増加は、センサと測定対象物との間の相対運動が速い場合に移動ブレを大きくするので、適用することができなくなっている。
【0017】
原理的には、測定対象物の表面に典型的な散乱特性をもたらすようにカメラの視野角(すなわち、三角測距の角度)を狭くすることも考えられるが、このことは、特に、測定分解能の低下をもたらすことになる。
【0018】
前述の3つの対策では、画像取得中の不均一な強度分布の問題を解決することができず、縁強度を十分なものとした場合には、中心領域が露出過度になる危険性さえ生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許出願公開第4037383A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明は、二次元切断法を用いて、球体、特に、円筒体の測定対象物の輪郭形状を測定することを容易にする方法であって、前述の欠点を解消できる方法を提供することを目的とするものである。さらに他の目的は、対応する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、請求項1の特徴的な特性と関連する前文とによって解消されることになる。有利な改良は従属請求項の主題になっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
円筒管の従来の二次元的な光切断測定を説明するための概略縦断面図及び概略横断面図である。
【
図2】
本発明の測定を説明するための概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の示唆によれば、輪郭形状は、円筒軸を中心として法平面から離れるようにレーザーを揺動(回動)させることによって測定されるようになっており、法平面に対する角度は、面撮像カメラの光学軸が円筒の表面に対する反射ビームの視射角の範囲内に位置するように、調節されている。
【0024】
本発明は、測定対象物の特徴的な形状を考慮に入れた記録カメラと扇状レーザービームとの新規な空間的配置によって、従来の方法の前述した欠点を容易に解消するものである。
【0025】
以下、提案されている新規の手法を、一例として、円筒形状を有する測定対象物を用いて説明するが、当該手法は、他の球形状、例えば、側面輪郭についても同じように適用可能である。
【0026】
光切断法の従来の実施形態では、レーザー及びカメラは、円筒軸に沿って位置する前述の法平面に配置されているが、提案されている新規の手法によるレーザーは、意図的に、レーザーが表面を斜めに照射するように、円筒軸を中心としてこの法平面から外れるように揺動する。
【0027】
有利には、レーザー及びカメラは、円筒面に対する記録角度が扇状レーザービームの軸及び記録カメラの光学軸の配置に対する視射角の範囲内に配置されている。
【0028】
「視射角」は、一般的に、ある角度で高い光反射を示すような理想的な鏡面反射をもたらさない無光沢な表面にて光が反射(「glance」)する角度を表している。周知の測定技術と違って、ここでは、この効果を用いて、レーザーを法平面から外れるように意図的に揺動させることによって、測定対象物の限界的な縁領域からカメラへのレーザービームの反射が強化されるようになっている。
【0029】
測定範囲が法平面に対して対称的になっている典型的な用途では、有利には、対称的に配置された2つのレーザーが用いられている(
図2)。
【0030】
図2の断面図に示されるような新規に提案された配置によって、円筒の周囲における同一長さの光切断線に対して、より大きな取得領域、すなわち、より大きな輪郭の測定範囲が得られることになる。本発明によれば、レーザー1,1’は、(法平面上に投影された)三角測距の角度、従って、輪郭測定の距離分解能を維持しながら、円筒軸を中心として法平面から外れるように揺動するようになっている。
【0031】
測定対象物4の表面上に投射されたレーザーライン2’の2つの部分からの連続的な光切断線を組み合わせることによって、これらの2つの部分は、互いに真っ直ぐに並んだ線になり、表面から反射したビームは、レーザー1,1’間に配置されたカメラ3によって撮像され、ここでは示されていない評価ユニットに向かってさらに転送されることになる。
【0032】
カメラが位置する法平面の両側に2つのレーザーが配置されたこの構成は、円筒の全周を撮像することができる多チャンネル構成に拡張することができるという利点をもたらすので有利であることも分かっている。この場合、同数のカメラ及び扇状レーザービームが用いられることになる。必要なチャンネル数は、円筒面の反射率、レーザー出力、及び(必要な)露出時間の連携によって、個別に決定される。