(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)複数の通路を有するフロースルーモノリス基材であって、前記複数の通路のそれぞれは入口末端から出口末端に至る長さを有し、前記複数の通路の一部分は前記入口末端から第1の位置まで第1の三元触媒(TWC)組成物によって、及び、前記第1の位置から前記出口末端まで第2の三元触媒組成物によって被覆され、前記複数の通路の残部は入口末端から出口末端まで前記第2の三元触媒組成物によって被覆され、前記複数の通路の一部分内の前記第1の三元触媒組成物は、酸素貯蔵活性が無いか、前記複数の通路の前記残部上に被覆された前記第2の三元触媒組成物と比較して酸素貯蔵活性が低い、フロースルーモノリス基材と、
(b)前記第1の三元触媒組成物に被覆された前記複数の通路の一部分に接触した排気ガスにのみ接触するように、フロースルーモノリス基材の複数の通路の一部分内に配置された単一のラムダセンサー
を備える、火花点火式内燃機関用の排気機構。
複数の通路と外壁とを有するフロースルーモノリス基材であって、前記複数の通路のそれぞれは入口末端から出口末端に至る長さを有し、前記複数の通路の一部分は前記入口末端から第1の位置まで第1の三元触媒(TWC)組成物によって、及び、前記第1の位置から前記出口末端まで第2の三元触媒組成物によって被覆され、前記複数の通路の残部は前記入口末端から前記出口末端まで前記第2の三元触媒組成物によって被覆され、前記複数の通路の一部分内の前記第1の三元触媒組成物は、酸素貯蔵活性が無いか、前記複数の通路の前記残部上に被覆された前記第2の三元触媒組成物と比較して酸素貯蔵活性が低く、前記外壁は前記複数の通路の一部分に対応して設けられ、内部に単一のラムダセンサーを収容する穴を一部で規定する、フロースルーモノリス基材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式内燃機関用の、酸素貯蔵成分(OSC)を包含する三元触媒(TWC)組成物と、該TWC組成物がフロースルーモノリス基材上に塗布されており、該基材が複数の通路を備えてなり、各通路が入口末端から出口末端に伸びる長さを有し、及び単一のラムダセンサーとを備えてなる排気機構に関する。
【0002】
この分野で良く知られているように、ガソリン燃料が火花点火式内燃機関中で燃焼した時に放出される一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)の量は、燃焼シリンダー中の空燃比により主として影響される。化学量論的にバランスのとれた組成を有する排ガスは、酸化性ガス(NOx及びO
2)及び還元性ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に釣り合っている排ガスである。化学量論的にバランスのとれた排ガス組成物を生じる空燃比は、典型的には14.7:1として与えられる。
【0003】
理論的に、化学量論的にバランスのとれた排ガス組成物中で、O2、NOx、CO及びHCをCO
2、H
2O及びN
2に完全に転化することは可能であり、これが、いわゆる三元触媒の任務である。従って、理想的には、エンジンは、燃焼混合物の空燃比が、化学量論的にバランスのとれた排ガス組成物を生じるように操作すべきである。
【0004】
排ガスの酸化性ガスと還元性ガスとの間の組成バランスを決定するもう一つの様式は、等式(1)
実際のエンジン空燃比/化学量論的エンジン空燃比 (1)
として定義される、排ガスのラムダ(λ)値であり、ここで、式1のラムダ値は、化学量論的にバランスのとれた(化学量論的)排ガス組成物を代表し、>1であるラムダ値は、O2及びNOxの過剰を表し、この組成物は「リーン」と呼ばれ、<1のラムダ値は、HC及びCOの過剰を表し、この組成物は「リッチ」と呼ばれる。この分野では、空燃比が生じる排ガス組成物に応じて、エンジンが作動する空燃比を「化学量論的」、「リーン」または「リッチ」と呼ぶ、従って、化学量論的に作動するガソリンエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジン、と呼ぶことも一般的である。
【0005】
排ガス組成物が化学量論的にリーンである場合、TWCを使用してNOxをN
2に還元することは、あまり効率的ではない。同様に、排ガス組成物がリッチである場合、TWCはCOをHCに酸化し難い。従って、TWC中に流れ込む排ガス組成物をできるだけ化学量論的組成物に近い組成物に維持することが重要である。
【0006】
無論、エンジンが定常状態にある時、空燃比を確実に化学量論的にすることは比較的容易である。しかし、エンジンを車両加速に使用する時、必要とされる燃料の量は、運転者によりエンジンに課せられる負荷要求に応じて、過渡的に変化する。このため、三元転化のために化学量論的排ガスが発生されるように空燃比を制御することは、特に困難になる。実際には、空燃比は、排ガス組成物に関する情報を排ガス酸素(EGO)(またはラムダ)センサーから受け取る、いわゆる閉ループフィードバック方式の、エンジン管理装置により制御される。そのようなシステムの特徴は、空燃比の調節に関連する時間的な遅れがあるために、空燃比が、化学量論的に僅かにリッチな(または制御設定)地点と僅かにリーンな地点との間で振動(または動揺)することである。この動揺は、空燃比の振幅と応答周波数(Hz)により特徴付けられる。
【0007】
典型的なTWCにおける活性成分は、高表面積酸化物上に担持された白金及びパラジウムとロジウムの一方または両方を含んでなる。
【0008】
排ガス組成物が設定点の僅かにリッチである場合、未反応CO及びHCを消費する、即ち反応をより化学量論的にするために、少量の酸素を必要とする。反対に、排ガスが僅かにリーンに向かう場合、過剰の酸素を消費する必要がある。これは、動揺の際に酸素を放出または吸収する酸素貯蔵成分の開発により達成された。最新のTWCで最も一般的に使用される酸素貯蔵成分(OSC)は、酸化セリウム(CeO2)またはセリウムを含む混合酸化物、例えばCe/Zr混合酸化物、である。
【0009】
最新のTWCに使用する典型的なセンサー配置は、TWCの上流側で排ガスと接触させるための第一ラムダセンサー、及びTWCの下流側で排ガスと接触させる、即ちTWCを離れる排ガスと接触させるための第二ラムダセンサーを配置することである。第一センサーは、閉ループ制御を使用し、エンジン管理装置(ECU)にセンサーの読みを入力することにより、エンジンの空燃比を制御するのに使用される。第二センサーは、主として2つの目的、即ち第一ラムダセンサーの主目的であるエンジン空燃比の制御を「整える(trim)」こと、及び車乗診断における使用、に使用する。
【0010】
車乗診断システムは、車両の排ガス後処理装置、例えばTWC、を連続的に監視し、装置が予め規定された放出物標準に最早適合できなくなった時に、欠陥コードまたは警告信号を発するのに使用される。
【0011】
ラムダセンサーは、高価であり、最近、1個のラムダセンサーを取り去り、システムを、TWCの中またはすぐ下流に配置した単一のラムダセンサーで作動させることが提案されている(例えば、ここにその全文を参考として含める国際特許出願第WO2005/064139号明細書参照)。これによって、システム全体のコストを下げることができるのみならず、単一のラムダプローブをTWCに、より近づけて配置することにより、空燃比の調節に関連する時間的な遅れを小さくすること、排ガスのラムダ値をより精確に制御すること、及びそれによって、転化効率を高めることができると考えられる。高価な貴金属活性成分の含有量が低い、小型のTWCを使用することさえ可能である。
【0012】
ここで我々は、システムを全体として、排ガスのレドックス組成物における変化に、より迅速に反応させ、それによって、より精確なエンジン空燃比の閉ループフィードバック制御を可能にすることができる、単一ラムダセンサーを備えてなる、排気機構との関連で使用するTWC原理を開発した。
【0013】
一態様により、火花点火式内燃機関用の、
(a)酸素貯蔵成分を包含する三元触媒組成物と、及び
該TWC組成物がフロースルーモノリス基材上に塗布されており、該基材が複数の通路を備えてなり、各通路が、入口末端から出口末端に伸びる長さを有し、
(b)単一のラムダセンサーとを備えてなる排気機構であって、
該基材が、該複数の通路の一部分で、該入口末端から伸びる該通路の長さの少なくとも一部における該TWC組成物が、該基材の残りの部分における該TWCと比較して、酸素貯蔵活性が低いか、または酸素貯蔵活性が無く、該単一ラムダセンサーが、該酸素貯蔵活性が低いか、または酸素貯蔵活性が無いTWC組成物と最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように配置されている、排気機構を提供する。
【0014】
一実施態様では、該複数の通路の該部分は形状が輪状であるが、特別な実施態様では、該複数の通路の該部分は形状が区分けされている(添付の図面も参照)。フロースルー基材モノリスは、セラミック材料または金属から製造され、好適なセル密度、例えば1平方インチあたり200〜1200セル、を有することができる。そのような被覆の配置を得る装置及び方法は、例えば国際特許出願第WO99/47260号明細書から公知である。
【0015】
別の実施態様では、フロースルーモノリスの通路の一部が基材全体を通して伸びていないので、ラムダセンサーが、フロースルーモノリス基材の外壁により部分的に限定された(定められた)穴の中に配置される。しかし、外壁にドリル穴を開けたフロースルー基材をTWC組成物で被覆することは、加工上、比較的困難である。ラムダセンサーを受け容れるための穴をドリル加工する前に、基材を先ず被覆することにも、ドリル加工される基材から高価なPGM金属が粉塵として失われることがあるので、問題がある。さらに、PGM被覆された粉塵は、アレルゲンであり、工場作業員に健康及び安全上の危険性を及ぼす。
【0016】
従って、特別な実施態様では、複数の通路の該部分が基材の入口末端から出口末端に伸び、ラムダセンサーが出口末端のすぐ下流に配置され、排気機構が、複数の通路の該部分を流れる排ガス以外の排ガスがラムダセンサーと接触するのを実質的に阻止する手段を備えてなる。
【0017】
TWC基材の内側または下流に配置された単一のラムダセンサーを使用することには、1個のラムダセンサーをTWC基材の上流に配置し、別のラムダセンサーを下流に配置する先行技術の方式により与えられるのと同程度にエンジン空燃比を、どのように制御するかという問題がある。本発明は、単一ラムダセンサーに、OSCとあまり、または全く接触していない排ガスを「見させる」ことにより、この問題を解決する。従って、本排気機構は、単一のラムダセンサーが「通常の」TWC基材、即ちTWC組成物で均一に被覆された基材、の下流に配置された場合よりも急速に、排ガス組成物中でマクロ変動に反応することができる。これによって、制御レベルが向上し、当業者に与えられる設計の選択性が広くなる。
【0018】
排ガスと、TWCの下流に配置されたラムダセンサーとの接触を実質的に阻止する手段は、ラムダセンサーを受け容れ、取り囲むデフレクタを備えてなることができ、該デフレクタは、上流末端及び下流末端で開いている。デフレクタは、多くの形態を取ることができるが、一実施態様では、デフレクタは、基材を中に保持する缶の内側表面により支持された形状金属の細片を備えてなる。
【0019】
本発明で使用するTWC組成物は、典型的には2種類以上の白金族金属(PGM)、一般的にPt/Rh、Pd/RhまたはPt/Pd/Rh、を含んでなる。総PGM装填量は、約2 gft
−3〜300 gft
−3まで低くてよいが、Pt/Rh組成物における総PGMは、一般的に<100 gft
−3である。Pd/Rh系における総PGM装填量は、より高く、例えば<300 gft
−3でよい。OSC成分は、フロースルーモノリスを被覆するためのTWC組成物を含んでなるウォッシュコートの1000 gft
−3までのセリウムを含んでなることができる。PGM及び使用するすべての助触媒、例えばバリウム系化合物、は、OSC、例えばCe/Zr混合または複合酸化物と、高表面積酸化物、例えばアルミナ、の一方または両方により担持される。
【0020】
しかし、酸素貯蔵活性を下げたTWC組成物は、
(i)基材の残りの部分におけるTWC組成物よりも低い酸素貯蔵成分装填量、および/または
(ii)基材の残りの部分におけるTWC組成物よりも低い総PGM装填量
の一方または両方を有することができる。これは、PGMが、PGM表面上の活性箇所で排ガスから酸素を吸着し、次いで該吸着された酸素がOSCに移動することにより、OSCの活性に貢献すると考えられるためである。ある程度のOSC活性を維持することにより、単一のセンサーはOBDにも使用することができる。
【0021】
TWC組成物が酸素貯蔵活性を持たない場合、これは、酸素貯蔵成分および/またはPGMを包含しないことにより、行うことができる。
【0022】
別の態様では、火花点火式内燃機関及び本発明の排気機構を備えてなる装置を提供する。エンジンは、化学量論的に操作されるガソリンエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジン、例えばGDI(ガソリン直接噴射)またはDISIエンジンでよい。
【0023】
エンジン管理及び排ガス後処理における最近の進歩により、走行サイクルの大部分にわたって化学量論的にリーンで作動し得るエンジンが実現している。この利点は、車両製造業者が、COおよびHCに関する法的な放出物標準を容易に達成する車両を提供することができ、顧客は、燃費の改良により有益性が得られることである。しかし、上記のように、技術的な困難は、リーン排ガスにおけるNOxの処理方法を見出すことにある。
【0024】
解決策の一つは、リーンNOxトラップまたは単にNOxトラップと呼ばれる排気機構部品を使用することである。NOxトラップの組成物は、NOをNO2に酸化する触媒、典型的には白金、及び還元剤、例えばHC、の存在下でNOxからN
2への還元を促進する触媒、例えばロジウム、を含んでなる点で、TWC組成物の組成物と類似している。対照的に、NOxトラップは、一般的にOSCを含まない。しかし、TWC組成物とNOxトラップ組成物の重大な違いは、NOxトラップ組成物が、エンジンのリーン走行作動中にNOxを吸収するための、大量の塩基性金属、例えばバリウム、ストロンチウム、カリウム、を含むことである。この反応に関して説明されることが多い機構は、NOが、白金上の活性箇所に結合した酸素と接触してNO2を形成し、次いで、そのNO2が塩基性金属酸化物上に吸収されてNOxを形成し、硝酸塩として効果的に「貯蔵」されることである。例えばヨーロッパ特許第0560991号明細書(ここにその全文を参考として含める)参照。
【0025】
無論、NOxトラップの、NOxを吸収(または吸着)する能力は、組成物中に存在する塩基性金属化合物の量によって制限される。NOxを除去し、それによって、NOxトラップ組成物の、NOxを吸収する能力を「再生する」には、エンジン管理を定期的及び瞬間的に使用し、排ガスを未燃焼HCで濃縮する。塩基性金属硝酸塩は、還元性雰囲気中で不安定であり、NOxがそこから放出され、還元性雰囲気中でロジウム成分によりNOxに還元されると理解される。
【0026】
NOxトラップを取り付けたリーンバーンガソリンエンジンから来る排ガスを処理するための排気機構は、エンジンの近くに配置されたTWCを備えてなると理解される。TWCの任務は、NOxトラップ再生の際にNOxを処理すること、及びエンジンが化学量論点の近くで、または化学量論点で作動する時に、例えば冷間始動の際に排気機構部品を加熱するために、または高速自動車道路走行時に、排ガスを一般的に処理することである。誤解を避けるために、本発明の排気機構は、化学量論的に作動している火花点火式エンジン及びリーンバーン火花点火式エンジンから出る排ガスを処理するためのものであり、その際、排気機構はNOxトラップを包含することができる。
【0027】
別の態様により、本発明の装置を備えてなる車両を提供する。
【0028】
米国特許第5,352,646号明細書は、内燃機関から出る排ガスを触媒作用により転化するための担持された触媒であって、多孔質担体材料、例えばアルミナ球、を含んでなり、そのような多孔質担体材料は、その限定された周辺面表面層(外側の帯またはリング)の深さ全体にわたって均質に濃縮された、触媒的に有効な量の、少なくとも一種の非白金族の、触媒的に活性な元素、例えばセリウム、を有する。
【0029】
別の態様により、酸素貯蔵成分を包含する三元触媒組成物で被覆された複数の通路を含んでなり、各通路が、第一末端から第二末端に伸びる長さを有するフロースルーモノリス基材であって、該複数の通路の一部分で、該第一末端から伸びる通路の長さの少なくとも一部が、基材の残りの部分と比較して酸素貯蔵活性が低い少なくとも一種の白金族金属を含んでなる触媒組成物で被覆されている、フロースルーモノリス基材を提供する。
【0030】
一実施態様では、フロースルーモノリス基材は、該部分に関連する外壁を備えてなり、該壁が、一部で、単一ラムダセンサーを中に受け容れるための穴を限定する。
【0031】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら代表的な実施態様を説明する。
【0032】
図1に関して、本発明のTWC基材の2種類の実施態様を示すが、左側は、複数の通路の輪状部分がそれらの全長、即ち第一入口末端から第二出口末端、にわたって、OSCが無く、総PGM装填量が20 gft
−3であるTWC組成物で被覆されている実施態様を示す。基材の残りの部分(円筒形状のコア)は、OSC及び合計90 gft
−3のPGMを含んでなるTWC組成物で被覆されている。図中の黒点は、複数の通路の、OSCが無く、20 gft
−3総PGM装填量を有する部分に関連する基材の外壁により部分的に限定される穴を示す。この、ラムダセンサーを受け容れるための穴は、中央の写真から分かるように、第一入口末端と第二出口末端との間の基材通路の長さに沿って、約半分の所に位置する。
【0033】
図1の右側に示す実施態様は、その、第一入口末端から伸びる長さの半分まで、上記の実施態様、即ちOSCが無く、20 gft
−3総PGM装填量を有する輪状TWC組成物、及び中央の、90 gft
−3の円筒形コアと同様に、被覆されている。残りの半分(第二出口末端から伸びる)は、OSC及び60 gft
−3のPGMを含んでなるTWC組成物で被覆されている。実際には、この、20 gft
−3を有し、OSCが無い輪状TWC組成物を含んでなる基材の第一入口末端は、排気機構における上流側を向いている。
【0034】
図2に関して、左側に示す実施態様は、通路の全長にわたって、OSCを含まず、20 gft
−3総PGM装填量を有するTWC組成物で被覆された基材の区分けされた部分を示す。基材の残りの部分は、60 gft
−3総PGM装填量及びOSCを含んでなるTWC組成物で被覆されている。上記のように、区分け部分に関連する黒点は、ラムダセンサーを受け容れるための穴を示す。この実施態様は、「縞」実施態様と呼ばれる。
【0035】
右側に示す実施態様は、「半縞」実施態様であり、基材が、区分け部分における通路の長さの約半分まで、OSCを含まず、合計20 gft
−3のPGM装填量を有するTWC組成物で被覆されており、基材の残りの部分は、OSC及び60 gft
−3総PGMを含んでなるTWC組成物で被覆されている。使用の際、基材を排気機構中に、「半縞」末端が上流に面するように取り付ける。しかし、均質に被覆した基材と比較して、基材中の総OSC含有量を下げる影響を査定するために、以下に記載する代表的な例1及び2では、提案する「使用の際」の向きを、半縞末端が下流を向いている配置と比較する。
【0036】
下記の例は、例示のためにのみ、記載する。
【0037】
例1
OSC試験を
図3に示す装置で行った。使用したエンジンは、試験台に取り付けた2.0 TFSiエンジンである。4.66x5インチ(11.8x12.7 cm)、1平方インチあたり400セル(62セル cm−2)セラミック基材を使用した。供試TWC基材を、
図4に示す、基材の外壁にあるセンサー穴と整列させるラムダセンサーボスを有する脱離可能な触媒缶中に入れた。脱離可能な缶及び基材をエンジンの排気機構の中に挿入した。この機構は、通常の様式で、TWC基材の上流及び下流の両方に配置したラムダセンサーも備えてなる。センサー穴だけから得た読みに由来するOSCと、基材全体、即ち上流と下流のラムダセンサー間、に由来するOSCと比較するデータを集めた。
【0038】
OSC試験を、2000 rpm及び93 Nm負荷の定常状態で作動させるエンジンで行った。これによって、触媒入口温度が約580℃になった。エンジン管理装置は、ラムダ0.95と1.05の間でエンジンを切り換えるようにプログラム化した。ラムダセンサー切換間の時間差(デルタT)を使用し、式(2)からOSCを計算する。
OSC(mg)=デルタT(s)*排気物質流量(kg/h)*デルタラムダ(%)*0.64 (2)
【0039】
試験を4種類のTWC配置で行った。比較目的に、均質に被覆した(つまり通常の)TWC基材を使用した。本発明のTWC基材の2実施態様、即ち
図1、左側に示す輪状配置及び
図2、右側に示す半縞配置、を試験した。第四の試験は、半縞実施態様で、基材を、実際に意図する方向と反対(つまり反転)方向に取り付けて、行った。これは、半縞反転試験(「通常」TWC組成物で被覆)におけるラムダセンサーの上流にある通路に関するOSCの読みが、均質に被覆したTWC基材の読みと類似の読みを与えることを確認するためである。試験は、新触媒と、エージングした触媒の両方で行った。触媒は、O
22%、H
2O10%及び残部N
2からなるガス混合物中、1000℃で4時間エージングした。
【0040】
結果を
図5に示す。均質な触媒に関して、中間点センサーは、バルクセンサーにより測定された総OSCの約半分を記録し、半縞触媒触媒中間点センサーは、触媒の前に「OSCが無い」縞でほとんどゼロOSCを記録した。反転させた場合、半縞触媒で測定されたOSCは、均質触媒のOSCと統計的に類似していた。輪状触媒は、どちらの点でも低いOSCを測定した。輪状触媒実施態様で計算されたバルクOSCは均質なOSCの約1/3であった。
【0041】
これらの結果は、半縞実施態様が、基材全体としては類似のOSCを示すが、エンジン空燃比の閉ループ制御を単一のラムダセンサーで達成できることを示している。これは、基材がコーン形状のディフューザの下流に取り付けてあるにも関わらず、ガスの大部分が、基材の、入口と反対側の区域で、基材を通って流れるためであると考えられる。輪状実施態様は、通常のTWC基材と比較してバルクOSCが低減されるので、あまり好ましくはないが、有用な実施態様である。
【0042】
例2
簡単なO2装填試験を、例1で試験した触媒に対して、
図3に示す装置を使用し、エンジンを10秒間ラムダ=1.02、10秒間ラムダ=0.98の間の動揺サイクルで作動するように設定して行った。
【0043】
O2装填試験の目的は、触媒系のOSCをサイクル状に完全に空にし、完全に満たす時の、触媒系の放出性能を研究することである。O2装填試験は、下記の表に示すように、3種類の異なったエンジン条件で、各条件で3種類の異なったOSCを充填及び空にする速度で行った。OSCを充填及び空にする速度は、OSCを充填及び空にするのに使用したラムダ段階の振幅によって異なる。各遠心条件で使用した振幅は、±1%、±2%及び±3%であり、それぞれラムダ段階0.99〜1.01、0.98〜1.02及び0.95〜1.05を与えた。OSCを空にし、充填するための時間は、20秒間に、即ち10秒間リーンに続いて10秒間リッチに設定した。これは、エージング触媒系に対してOSCを完全に空にし、充填する筈である。これは、新触媒系を試験する場合には、増加する必要があろう。
【0044】
標準的なエンジン始動及び暖機運転手順に続いて、エンジンを第一条件に上げ、触媒温度を安定化させる時間をとった。所望のラムダ段階は、マップLRSMODMSを使用して設定した。時間間隔LRSTPZAは20秒間に設定した。触媒温度を安定化するためにさらに1分間置いてから、3分20秒のデータを記録した。この過程を全ての必要なラムダ段階及びエンジン条件に対して繰り返した。CO及びNOxに対する転化効率を、放出物データから計算する。平均転化効率を記録100秒間にわたって計算した(10秒間リーンに続いて10秒間リッチの5完全期間)。
【0045】
条件番号 1 2 3
エンジン速度(rpm) 3000 3000 3000
トルク(Nm) 30 72 135
排気物質流量(kg/h) 50 95 160
【0046】
NOx及びCOの転化効率を、集めた放出物データから計算し、結果を
図6及び7に示す。ここから分かるように、均質及び半縞触媒は、類似の性能を示し、半縞の向きは転化効率にほとんど影響を及ぼさない。例1と同様に、輪状触媒実施態様は、より低い性能を示す。