(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記旋回スクロール及び前記固定スクロールの外側に形成され、前記冷却ファンによって発生した冷却風を前記旋回スクロール及び前記固定スクロールに導風するファンダクト備える請求項2に記載のスクロール式流体機械。
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールと前記ケーシングと間の空間と前記ファンダクトとによって形成される冷却風通路を備える請求項3に記載のスクロール式流体機械。
前記側面側冷却風通路の前記固定スクロールの中心線よりも冷却風下流側であって、前記旋回スクロールの中心線よりも冷却風下流側に前記導通手段を配置することを特徴とする請求項5に記載のスクロール式流体機械。
前記ケーシングが前記固定スクロールに取り付けられるフランジ面よりも前記ファンダクトの下流側または、前記固定スクロール側冷却風通路に前記導通手段を配置することを特徴とする請求項5に記載のスクロール式流体機械。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本発明の実施例におけるスクロール式流体機械を
図1から
図13に基づき説明する。図中,圧縮機本体1は,スクロール式の空気圧縮機が用いられ,後述のケーシング2,固定スクロール3,旋回スクロール4,駆動軸8,クランク部9および自転防止機構15等より構成されている。
【0012】
圧縮機本体1の外殻を構成するケーシング2は,
図1に示す如く軸方向の一側が閉塞され,軸方向の他側が開口した有底筒状体として形成されている。即ち,ケーシング2は,軸方向の他側(後述の固定スクロール3側)が開口した筒部2Aと,該筒部2Aの軸方向一側に一体形成され径方向内向きに延びた環状の底部2Bと,該底部2Bの内周側から軸方向の両側に向けて突出した筒状の軸受取付部2Cとから大略構成されている。
【0013】
また,ケーシング2の筒部2A内には,後述の旋回スクロール4,クランク部9および自転防止機構15等が収容されている。また,ケーシング2の底部2B側には,後述する旋回スクロール4の鏡板4A側との間に複数の自転防止機構15(
図1中に1個のみ図示)が周方向に所定の間隔をもって配設されている。
【0014】
固定スクロール3はケーシング2(筒部2A)の開口端側のフランジ面(ケーシング2側)に固定して設けられた一のスクロール部材である。そして,該固定スクロール3は,円板状に形成された鏡板3Aと,該鏡板3Aの表面に立設された渦巻状のラップ部3Bと,該ラップ部3Bを径方向外側から取囲むように鏡板3Aの外周側に設けられ,複数のボルト(図示せず)等によりケーシング2(筒部2A)の開口端側のフランジ面(ケーシング2側)に固定されるフランジ面(固定スクロール3側)を有する板状の支持部3Cとにより大略構成されている。
【0015】
他のスクロール部材を構成する旋回スクロール4は,固定スクロール3と軸方向で対向してケーシング2内に旋回可能に設けられている。そして,旋回スクロール4は,円板状の鏡板4Aと,該鏡板4Aの表面に立設された渦巻状のラップ部4Bと,鏡板4Aの背面(ラップ部4Bと反対側の面)側に突設され,後述のクランク部9に旋回軸受11を介して取付けられる筒状のボス部4Cとにより大略構成されている。
【0016】
また,旋回スクロール4(鏡板4A)の背面外径側には,ケーシング2の底部2Bとの間に後述の自転防止機構15が旋回スクロール4の周方向に所定の間隔をもって配設されている。そして,旋回スクロール4のボス部4Cは,その中心が固定スクロール3の中心に対して予め決められた所定の寸法(旋回半径)分だけ径方向に偏心して配置されるものである。
【0017】
固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール4のラップ部4Bとの間に画成された複数の圧縮室5は,
図1中に示す如く旋回スクロール4のラップ部4Bを固定スクロール3のラップ部3Bと重なり合うように配置することにより,これらのラップ部3B,4B間に鏡板3A,4Aに挟まれてそれぞれ形成されるものである。
【0018】
固定スクロール3と旋回スクロール4は,いずれもアルマイト処理などの表面処理を行っており耐腐食性の向上を図っている。
【0019】
ラップ部3B,4Bそれぞれの先端に設けられた溝部3D,4Dに勘合されたチップシール22は,それぞれ鏡板4A,3Aと摺動して複数の圧縮室5間の相互の漏れを防止する。
【0020】
フェイスシール23は、固定スクロール3の支持部3Cのケーシング2との合わせ面で,圧縮室5の最外周部の外側に円環状に設けられた溝部3Eに勘合されている。フェイスシール23は固定スクロール3と旋回スクロール4との間に配置され、旋回スクロール4の鏡板4Aと摺動し,圧縮室5の内部へのダスト等の侵入を防ぐ。
【0021】
チップシール22とフェイスシール23には,いずれも耐熱性の樹脂が用いられている。
【0022】
固定スクロール3の外周側に設けられた吸入口6は,例えば吸気フィルタ6A等を介して外部から空気を吸込み,この空気は各圧縮室5内で旋回スクロール4の旋回動作に伴って連続的に圧縮される。
【0023】
固定スクロール3の中心側に設けられた吐出口7は,前記複数の圧縮室5のうち,最内径側の圧縮室5から圧縮空気を後述の貯留タンク(図示せず)側に向けて吐出するものである。即ち,旋回スクロール4は,電動モータ(図示せず)等により後述の駆動軸8とクランク部9とを介して駆動され,後述の自転防止機構15によって自転を規制された状態で固定スクロール3に対し旋回運動を行う。
【0024】
これにより,複数の圧縮室5のうち外径側の圧縮室5は,固定スクロール3の吸入口6から空気を吸込み,この空気は各圧縮室5内で連続的に圧縮される。そして,内径側の圧縮室5は,鏡板3Aの中心側に位置する吐出口7から圧縮空気を外部に向けて吐出する。
【0025】
ケーシング2の軸受取付部2Cに軸受29,30を介して回転可能に設けられた駆動軸8は,ケーシング2の外部に突出した基端側(軸方向の一側)が図示しない電動モータ等の駆動源に着脱可能に連結され,この電動モータによって回転駆動されるものである。また,駆動軸8の先端側(軸方向の他側)には,旋回スクロール4のボス部4Cが後述のクランク部9と旋回軸受11とを介して旋回可能に連結され、旋回スクロール4を回転駆動する。駆動軸8には,旋回スクロール4の旋回動作を安定させるためにバランスウェイト10が設けられ,圧縮機運転の場合には駆動軸8と一体で回転する。
【0026】
駆動軸8の先端側に一体化して設けられたクランク部9は,旋回スクロール4のボス部4Cに後述の旋回軸受11を介して連結されている。そして,クランク部9は駆動軸8と一体に回転され,このときの回転は旋回軸受11を介して旋回スクロール4の旋回動作に変換されるものである。
【0027】
ケーシング2の底部2Bと旋回スクロール4の背面側との間に設けられた複数の自転防止機構15(
図1中に1個のみ図示)は,例えば補助クランク機構により構成されている。そして,自転防止機構15は,旋回スクロール4の自転を防止すると共に,旋回スクロール4からのスラスト荷重をケーシング2の底部2B側で受承させるものである。なお,自転防止機構15としては,補助クランク機構に替えて,例えばボールカップリング機構またはオルダム継手等を用いて構成してもよい。
【0028】
固定スクロール3の吐出口7に接続して設けられた吐出配管16は,貯留タンク(図示せず)と吐出口7との間を連通させる吐出流路を構成するものである。
【0029】
旋回軸受11は旋回スクロール4のボス部4Cとクランク部9との間に配設されている。旋回軸受11の内輪11Aはシャフトに勘合され,コロ11Cと外輪11Cは組合された状態で,ボス部4Cに勘合されている。旋回軸受11は,旋回スクロール4のボス部4Cをクランク部9に対して旋回可能に支持し,旋回スクロール4が駆動軸8の軸線に対し所定の旋回半径をもって旋回動作するのを補償するものである。
【0030】
駆動軸8の基端側に設けられた冷却ファン28は、電動モータによって駆動軸8が回転駆動されて圧縮機運転する場合には回転軸8と一体で回転し、ケーシング2内の固定スクロール3、旋回スクロール4に冷却風を供給する。
【0031】
ここで、
図2を用いて、冷却ファン28により発生した冷却風の流れについて説明する。
【0032】
ファンダクト16は固定スクロール3と旋回スクロール4の外径側に形成され、冷却ファン28が回転して発生する冷却風を,固定スクロール3と旋回スクロール4の外径側から固定スクロール3と旋回スクロール4に導風するものである。冷却風は,ファンダクト16に設けられた突起により固定スクロール3と旋回スクロール4に分流される。
【0033】
ケーシング2と固定スクロール3、旋回スクロール4との間の空間とファンダクト16とによって冷却風通路が形成され、固定スクロール3、旋回スクロール4に冷却風が供給される。冷却風通路は、ファンダクト16と、固定スクロール側冷却風通路20と、旋回スクロール側冷却風通路21と、側面側冷却風通路を含む。固定スクロール側冷却風通路20は、固定スクロール3の鏡板3Aの背面とケーシング2との間に形成される。旋回スクロール側冷却風通路21は、旋回スクロール4の鏡板4Aの背面側(旋回スクロール4の鏡板4Aの背面とケーシング2との間)に形成される。側面側冷却風通路は固定スクロール3、旋回スクロール4の側面側に形成される。
【0034】
固定スクロール側に供給される冷却風は,
図2中の矢印で示すように固定スクロール3の鏡板3Aの背面とケーシング2との間に形成され、例えば、固定スクロール鏡板3Aの背面側と冷却フィンカバー19と固定側冷却フィン17で構成される固定スクロール側冷却風通路20を通り本体外部へ排出される。同様に旋回スクロール側に供給される冷却風は,旋回スクロール側冷却風通路21を通る。さらに旋回スクロール側冷却風通路21は,鏡板4A背面と背面プレート4Eで構成され,旋回側冷却フィン間を冷却風が通る冷却フィン側冷却風通路21Aと,背面プレート4Eとケーシング2で構成される背面プレート側冷却風通路21Bに分岐されたのち,本体外部へ排出される。固定スクロール3と旋回スクロール4との側面に供給される冷却風は、側面側冷却風通路を通り本体外部に排出される。
【0035】
固定スクロール3の背面側に設けられた複数本の固定側冷却フィン17は、
図3に示すように、板体3Aの背面上にそれぞれ所定の間隔をもって立設され、
図3に示すように、固定スクロール3の径方向(左右方向)一端側から他端側に向けて互いに平行に直線状に延びている。これにより、冷却風の流れを妨げない構成となっている。
【0036】
固定スクロール3の背面側に取り付けられた冷却フィンカバー19は、
図4に示すように、固定側冷却フィン17の全体を取り囲むことにより、固定スクロール3の背面との間に後述する固定スクロール側冷却風通路20を形成している。さらに、冷却フィンカバー16の左右方向(径方向)一側には固定スクロール側冷却風通路20の入口となる固定スクロール側流入口20Aが形成され、左右方向他側には固定スクロール側冷却風通路20の出口となる固定スクロール側流出口20Bが形成されている。また、冷却フィンカバー19の中心側には吐出配管14を挿通する穴19Aが形成されている。
【0037】
旋回スクロール4の背面側に設けられた複数本の旋回側冷却フィン18は、板体4Aの背面上にそれぞれ所定の間隔をもって立設され、旋回スクロール4の径方向(左右方向)一端側から他端側に向けて互いに平行に直線状に延びている。
【0038】
このように、旋回側冷却フィン18の向きと固定側冷却フィン17の向きを同方向としたので、同一方向の冷却風の流れで効率的に冷却可能である。
【0039】
本実施例では、旋回側冷却フィン18の向きと固定側冷却フィン17に効率よく冷却風を供給するため、固定スクロール3及び旋回スクロール4の外径側に設けられたファンダクト16を介して、側面側から固定スクロール3及び旋回スクロール4に冷却ファン28によって発生する冷却風を供給したが、固定スクロール3及び旋回スクロール4に冷却風が供給できる構成であれば例えば、ファンダクト16を設けずに固定スクロール3の背面側または旋回スクロール4の背面側から冷却風を供給してもよい。
【0040】
ここで、
図5を用いて、旋回クロール側導電ブラシ24A、駆動軸側ブラシ24Bを設けることによる旋回軸受11の白層剥離の防止について説明する。
【0041】
旋回軸受11の白層剥離の原因について説明する。旋回軸受11の白層剥離は、静電気の帯電により水素イオンが軸受鋼へ浸入することにより脆弱層を形成しその脆弱層から剥離が発生すること原因とされている。静電気の帯電は、旋回スクロール4に対して駆動軸8が絶縁されていると生じる。
【0042】
旋回軸受11の白層剥離防止のためには,圧縮機運転中に軸受内の潤滑剤によって絶縁状態となる旋回スクロール4と駆動軸8との帯電防止をする必要がある。本実施例では、旋回スクロール4と駆動軸8との帯電防止のため、旋回スクロール側導電ブラシ24Aと、駆動軸側導電ブラシ24Bを設けた。
【0043】
図5に示す旋回クロール側導電ブラシ24Aは,ケーシング2に勘合されるホルダ25A内に収容され,同じくホルダ25A内に収容されたばね26Aにより,旋回スクロール4の背面プレート4Eに設けられた摺動プレート27の摺動面に押し付けられて摺動する。これにより、旋回スクロール4と、ケーシング2、固定スクロール3とが電気的に導通する。また、駆動軸側ブラシ24Bは、ケーシング2に勘合されるホルダ25B内に収容され,同じくホルダ25A内に収容されたばね26Bにより,駆動軸8上の摺動面に押し付けられて摺動する。これにより、ケーシング2と駆動軸8とが電気的に導通する。以上より、旋回クロール側導電ブラシ24Aと駆動軸側ブラシ24Bを設けることにより、旋回スクロール4と駆動軸8とが導通状態となり、旋回スクロール4を駆動軸8に対して支持する旋回軸受11の白層剥離を防止することができる。
【0044】
なお、旋回クロール側導電ブラシ24Aのホルダ25Aは上記の通り、ケーシング2に勘合されているがケーシング2と旋回スクロール4とが電気的に導通する構造であれば上記の構造に限定されず、例えば、旋回スクロール4に勘合されるホルダ25Aを設け、ケーシング2側に摺動プレート27を設けてもよい。駆動軸側ブラシ24Bについても同様で、旋回スクロール4と駆動軸8とが電気的に導通する構造であれば、上記の構造に限定されるものではない。
【0045】
より具体的には、旋回スクロール側導電ブラシ24Aを介して,ケーシング2と旋回スクロール4と組合されて状態で旋回スクロール4のボス部4Cに勘合されるコロ11Bと外輪11Cを同電位とする。また、駆動軸側ブラシ24Bを介して、ケーシング2と駆動軸8に勘合された内輪11Aを同電位にする。これらによって,旋回スクロール4と駆動軸8とを同電位とし、帯電を防ぎ,旋回軸受11の白層剥離を防止する。
【0046】
なお、例えば、軸受29、30に導通剤(カーボン等)を含む潤滑剤を使用した場合は、旋回スクロール4と駆動軸8とが同電位となるので、駆動軸側ブラシ24Bは不要である。また、自転防止機構15に導通剤(カーボン等)を含む潤滑剤を使用した場合は、ケーシング2と旋回スクロール4とが同電位となるので、旋回クロール側導電ブラシ24Aは不要となる。従って、旋回軸受11の白層剥離を防止するためには、旋回クロール側導電ブラシ24A、駆動軸側ブラシ24Bは必ずしも両方必要なわけではないが、本実施例においては、少なくともいずれか一方を用いた場合について説明する。
【0047】
ここで、旋回スクロール4に旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部を設ける場合,その設置場所は冷却風通路内となる。この場合、冷却風により摩耗粉が飛散し,フェイスシール23の摺動面に侵入する可能性がある。
【0048】
旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部は,旋回スクロール側導電ブラシ24Aの耐摩耗性向上のため,研摩等の加工にて表面粗さを小さく仕上げている。そのため摺動部で発生する旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摩耗粉は非常に微細な粒子となり,鏡板4Aのフェイスシール23の摺動部などのアルマイト処理面の凹凸に入り込んで,フェイスシール23を想定以上に摩耗させてフェイスシール23の寿命を著しく短縮する原因となる。
【0049】
フェイスシール23が限界摩耗量に達すると,冷却風に含まれるダスト等が圧縮室内に侵入し,チップシール22の摩耗をも加速させる。チップシール22が限界摩耗量に達すると,シール性が低下して圧縮室内で再圧縮が増大し,圧縮室を形成する固定スクロール3や旋回スクロール4の温度が著しく上昇し,熱変形からラップ部3B,4Bが接触して破損に至る。
【0050】
このように,旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摩耗粉により,通常のメンテナンス時間より非常に短い時間で,フェイスシール23,チップシール22が限界摩耗量に達し,圧縮機が破損する恐れがある。
【0051】
そこで、本実施例では、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面をフェイスシール23に冷却ファン28によって発生した冷却風が供給される位置を除いた位置に配置する。これにより、冷却風により旋回スクロール側導電ブラシ24Aと摺動プレート27の摺動により発生する摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減することができる。
【0052】
ここで、
図6−
図11を用いて、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面を設ける位置について説明する。
【0053】
図6は、フェイスシール23の周辺を拡大した水平断面図である。
図6で示すように、フェイスシール23は、旋回スクロール4の鏡板4Aと,固定スクロール3の支持部3Cとの間に設けられ、ハウジング3Dに覆われている、冷却風通路のうち、側面側冷却風通路からの冷却風が固定スクロール3のハウジング3Dと旋回スクロール4の鏡板4Aとの隙間31からフェイスシール23へ供給される可能性がある。
【0054】
そこで、本実施例では、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部を,旋回スクロール4の鏡板4Aより
図6中右側にある背面側(旋回スクロール側冷却風通路21)に設ける。即ち、
図7のD−D断面である
図8に示すように,旋回スクロール4の鏡板4Aの背面側に設けられた背面プレート4Eに摺動プレート27を設ける。摺動プレート27で発生する摩耗粉を鏡板4Aの背面側で旋回スクロール側冷却風通路21Aを通る冷却風により飛散させる。これにより、ブラシ摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減できる。
【0055】
また、本発明の変形例1では、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部を,側面側冷却風通路の
図9に示す固定スクロール3の鏡板3Aの中心線よりも下流側であって、旋回スクロール4の鏡板4Aの中心線Cよりも下流側に設ける。これにより、冷却風は一方向に流れ、逆流しないため、ブラシ摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減できる。
【0056】
また、本発明の変形例2では、
図10,11で示すように,旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部を固定スクロール3および旋回スクロール4よりも下流側(固定スクロール側冷却風通路20、旋回スクロール側冷却風通路21、側面側冷却風通路が合流する面よりも下流側)に設ける。これにより、冷却風は一方向に流れ、逆流しないため、摩耗粉は冷却風で飛散し,圧縮機内部に入ることがなく、ブラシ摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減できる。
【0057】
また、本発明の変形例3では、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動部を,
図12中A面に示すようにファンダクト16内の固定スクロール3の支持部3Cと,ケーシング2を締結するフランジ面より冷却風下流側、または、固定スクロール側冷却風通路20内に設ける。これにより、ブラシ摩耗粉は固定スクロール側冷却風通路20内に飛散するため,旋回スクロール側冷却風通路21への侵入を防ぎ,ブラシ摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減できる。
【0058】
本実施例、変形例1−3のいずれの場合においても,旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面から発生する摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減しながらも,旋回スクロール側導電ブラシ24Aと摺動プレート27との摺動面は、冷却風通路内に設けているため、摺動により発生する摩擦熱を効果的に冷却することができる。一方、フェイスシール23へ冷却風が供給される位置でなければ、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面から発生する摩耗粉のフェイスシール23への侵入を低減できるため、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面は必ずしも冷却風通路内に設けなくてもよい。例えば、冷却フィンカバー19よりも固定スクロール2から離れた位置(冷却風通路外)に旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面を設けてもよい。この場合、旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面には冷却風が供給されないため、仮に冷却風が冷却風通路内で逆流しても旋回スクロール側導電ブラシ24Aの摺動面から発生する摩耗粉のフェイスシール23への侵入することはない。また、旋回スクロール側導電ブラシ24A自体を冷却風通路内に配置すれば、摺動により発生する摩擦熱を効果的に冷却することができる。
【0059】
ここで、
図13を用いて、駆動軸側スクロール側導電ブラシ24Bの摺動面を設ける位置について説明する。
【0060】
本実施例では、駆動軸8とケーシング2とを同電位とする駆動軸側導電ブラシ24Bの摺動面を,フェイスシール23に冷却ファン28によって発生した冷却風が供給される位置を除いた位置に配置する。例えば、
図13に示すように駆動軸8とケーシング2と、駆動軸8を回転可能に支持する複数の軸受29,30との間に形成された密閉空間に駆動軸側導電ブラシ24Bの摺動面を設ける。これにより,摩耗粉の外部への飛散を防ぎ,冷却風吸込口からファンダクト16に摩耗粉が吸引され旋回スクロール4の鏡板面のフェイスシール23へ侵入することを防止することができる。
【0061】
ここで、軸受29,30をグリース潤滑する場合に軸受29,30にはグリース漏れを防止するオイルシールが設けられている。メンテナンス時等に圧縮機本体1を立てる(駆動軸8を鉛直方向に向ける)場合、駆動軸8とケーシング2と、複数の軸受29,30との間に形成された密閉空間にたまった駆動軸側導電ブラシ24Bの摺動により発生した摩耗粉が軸受29,30へ向けて移動し、メンテナンス後の再運転時に軸受29,30に設けられたオイルシールとケーシング2、駆動軸8との隙間から軸受29,30に侵入し、軸受29,30の寿命を著しく低下するおそれがある。そこで、メンテナンス時において、駆動軸8を回転可能に支持する複数の軸受29,30との間に形成された密閉空間から摩耗粉を除去する駆動軸側導電ブラシ24Bの摩耗粉除去用のメンテナンス口を設けてもよい。これにより、圧縮機本体1のメンテナンス時には、メンテナンス口を開けてメンテナンス口から摩耗粉を除去すれば、軸受29,30の寿命の低下を抑制できる。また、圧縮機本体1の運転時にはメンテナンス口を塞ぐことにより、駆動軸8とケーシング2と、複数の軸受29,30とで囲まれた空間を密閉空間とし、冷却ファン23により発生した冷却風によって摩耗粉がフェイスシール23へ侵入するのを防止しつつ、旋回軸受11の白層剥離を防止することができる。
【0062】
メンテナンス口の形状は穴形状として、圧縮機本体の運転時には例えば、ゴムキャップ等で塞いでおく。また、穴にメネジを取り付け、ボルト等で塞いでもよい。さらに開閉できる扉などでメンテナンス口を構成し、開口部を大きくすればより摩耗粉除去の作業が容易になる。
【0063】
さらにケーシング2に取り付けられ、駆動軸側導電ブラシ24Bを保持するホルダ25Bは、冷却風吸込口近傍にあり、冷却風が供給される位置にあることから,駆動軸側導電ブラシ24Bと駆動軸8との摺動により発生する摩擦熱を,ホルダ25Bを介して冷却することができる。
【0064】
以上よりこれまで以上の高回転・高負荷の圧縮機運転においても,旋回スクロール側導電ブラシ24A、駆動軸側スクロール側導電ブラシ24Bによって旋回スクロール4と駆動軸8との帯電を防ぎ,旋回軸受11の白層剥離を防止しつつ,フェイスシール23の信頼性が確保できる。また本体外径寸法を大きく変えることなく,旋回軸受11の信頼性を向上させる構造とすることができる。
【0065】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。