特許第5771691号(P5771691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771691
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】履物を保形する方法
(51)【国際特許分類】
   A43D 21/00 20060101AFI20150813BHJP
   A43D 25/06 20060101ALI20150813BHJP
   A43D 86/00 20060101ALI20150813BHJP
   A43B 9/02 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   A43B10/00 101D
   A43B10/00 101C
   A43B9/02
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-523248(P2013-523248)
(86)(22)【出願日】2011年8月1日
(65)【公表番号】特表2013-532574(P2013-532574A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】US2011046138
(87)【国際公開番号】WO2012018731
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】12/848,352
(32)【優先日】2010年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314006455
【氏名又は名称】ナイキ イノヴェイト シーヴィー
(74)【代理人】
【識別番号】100071238
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恒久
(72)【発明者】
【氏名】ハファ ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ファリス ブライアン エヌ
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−506176(JP,A)
【文献】 特表平11−507560(JP,A)
【文献】 スイス国特許発明第116795(CH,A)
【文献】 独国特許発明第423304(DE,C2)
【文献】 米国特許第1003463(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0154256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物を製造する方法において、
履物の、低位周縁を有するアッパーの少なくとも一部を組み立てるステップと、
上記アッパーから元々は独立して形成された保形エレメントを用意するステップであって、(a)第1のストリップ、(b)第1のストリップから分離した第2のストリップ、および(c)第1のストリップと第2のストリップを貫通している少なくとも1つのストランド、を含む保形エレメントを用意するステップと、
上記アッパーに上記保形エレメントを固定するステップであって、(a)上記低位周縁に隣接するアッパーの外側方に第1のストリップを継ぎ合わせるステップと、(b)上記低位周縁に隣接するアッパーの内側方に第2のストリップを継ぎ合わせるステップと、をさらに含み、(c)上記少なくとも1つのストランドが、上記アッパーの外側方と上記アッパーの内側方との間に延在するように、第1のストリップと第2のストリップに通されていることを特徴とする、固定するステップと、
上記少なくとも1つのストランドを緊張させるステップと、
上記履物のソール構造体を上記アッパーに継ぎ合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
上記保形エレメントを上記アッパーに固定するステップは、上記アッパーの踵領域から前足領域まで第1のストリップと第2のストリップとを延在させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ストランドを緊張させるステップは、上記アッパーのほぼ全長に亘って、第1のストリップと第2のストリップとを互いに接近させるように引っ張ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記ソール構造体を上記アッパーに継ぎ合わせるステップは、上記低位周縁、第1のストリップおよび第2のストリップに、上記ソール構造体を結合させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1のストリップ、第2のストリップおよび上記少なくとも1つのストリップがワンピースのエレメントとなるように、単一ニット構成の保形エレメントを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記保形エレメントを形成するステップは、往復編み工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記ストランドを第1のストリップと第2のストリップを交互に通して第1のストリップと第2のストリップとの間にW字形の構成を形成することで、上記保形エレメントを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記ソール構造体に関連するアウトソールを上記アッパーに継ぎ合わせるステップの後、上記保形エレメントから上記ストランドを取り除くステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
足の形状を有する靴型を覆うように上記アッパーを配置するステップをさらに含み、
上記ストランドを緊張させるステップは、上記靴型の周りに上記アッパーを締め付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
履物を製造する方法において、
履物の、低位周縁を有するアッパーの少なくとも一部を、靴型を覆うように配置するステップと、
上記アッパーから元々は独立して形成された保形エレメントを用意するステップであって、(a)第1のストリップ、(b)第1のストリップから分離した第2のストリップ、および(c)第1のストリップと第2のストリップを貫通している少なくとも1つのストランド、を含む保形エレメントを用意するステップと、
上記靴型を覆うようにアッパーを配置するステップの後に、上記アッパーに上記保形エレメントを固定するステップであって、(a)上記低位周縁に隣接するアッパーの外側方に第1のストリップを継ぎ合わせるステップと、(b)上記低位周縁に隣接するアッパーの内側方に第2のストリップを継ぎ合わせるステップと、をさらに含み、(c)上記少なくとも1つのストランドが、上記アッパーの外側方と上記アッパーの内側方との間に延在するように、第1のストリップと第2のストリップを貫通して第1のストリップと第2のストリップとの間でW字形の構成を形成していることを特徴とする、固定するステップと、
上記靴型の周りに上記アッパーを締め付けるように、上記ストランドを緊張させるステップと、
上記履物のソール構造体を上記アッパーに継ぎ合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
上記保形エレメントを上記アッパーに固定するステップは、上記アッパーの踵領域から前足領域まで第1のストリップと第2のストリップとを延在させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記ストランドを緊張させるステップは、上記アッパーのほぼ全長に亘って、第1のストリップと第2のストリップとを互いに接近させるように引っ張ることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1のストリップ、第2のストリップおよび上記少なくとも1つのストリップがワンピースのエレメントとなるように、単一ニット構成の保形エレメントを形成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記保形エレメントを形成するステップは、往復編み工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記ストランドを第1のストリップと第2のストリップとに交互に通すことで、上記保形エレメントを形成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
上記ソール構造体に関連するアウトソールを上記アッパーに継ぎ合わせるステップの後、上記保形エレメントから上記ストランドを取り除くステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
履物を製造する方法において、
(a)一対の織物ストリップと、(b)上記織物ストリップを通って上記織物ストリップ間にW字形の構成を形成する少なくとも1つのストランドと、を有する単一ニット構成の保形エレメントを形成するステップであって、上記一対の織物ストリップと、上記少なくとも1つのストランドとがワンピースのエレメントとしてなる単一ニット構成の保形エレメントを形成するステップと、
靴型を覆うように上記履物のアッパーの少なくとも一部を配置するステップであって、該アッパーは上記保形エレメントとは別個に形成されている、配置するステップと、
上記靴型に上記アッパーが配置された後に、上記アッパーに上記保形エレメントを固定するステップと、
上記靴型の周りに上記アッパーを締め付けるように、上記ストランドを緊張させるステップと、
上記履物のソール構造体を上記アッパーに継ぎ合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項18】
上記保形エレメントを形成するステップは、往復編み工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記アッパーに上記保形エレメントを固定するステップは、上記アッパーの低位周縁の両側方に上記織物ストリップを継ぎ合わせることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記アッパーに上記保形エレメントを固定するステップは、上記アッパーの踵領域から前足領域まで上記ストリップを延在させることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記ストランドを緊張させるステップは、上記アッパーのほぼ全長に亘って、上記織物ストリップを互いに接近させるように引っ張ることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記ソール構造体を上記アッパーに継ぎ合わせるステップは、上記アッパーと上記織物ストリップとに上記ソール構造体を結合させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
上記ソール構造体に関連するアウトソールを上記アッパーに継ぎ合わせるステップの後、上記保形エレメントから上記ストランドを取り除くステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物を保形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
履物は、一般に、アッパーとソール構造体との2つの主要な要素を有する。このうち、アッパーは、足を快適かつ確実に受けるために履物内に空洞をつくるように縫い付けられ或いは一体に結合される様々な材料エレメント(例えば、織物、ポリマシート、発泡体層、皮革、合成革)から形成され得る。ソール構造体は、アッパーの低位部に固定され、概ね足と地面との間に位置する。運動靴の型式を含む多くの履物において、ソール構造体は、中敷き、ポリマ発泡体製のミッドソール、およびゴム製のアウトソールを含むことが多い。
【0003】
履物を製造する一般の方法においては、保形(ラスティング、つり込み)工程が施される。詳しくは、アッパーの半分以上が、足の概形を有する靴型(ラスト)の周囲に形成されかつ配置される。その後、このアッパーを靴型の周囲に締め付けるために様々な方法が用いられ、これにより、アッパー内の空洞に足の概形がつくられる。靴型の周囲に運動靴のアッパーを締め付けるために、例えば、シュトローベル材料が、足の裏に対応する靴型の領域に亘って拡がるように、アッパーの低位周辺に固定されることが多い。その後、アッパーの低位周辺とシュトローベル材料とにソール構造体が固定されると、製造がほぼ完了する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
履物を製造する方法についての多くの態様やバリエーションを以下に説明する。履物を製造する方法が、履物の、低位周縁を有するアッパーの少なくとも一部を組み立てるステップと、(a)低位周縁に隣接するアッパーの外側方に継ぎ合わされる第1のストリップと、(b)低位周縁に隣接するアッパーの内側方に継ぎ合される第2のストリップと、(c)第1のストリップと第2のストリップを通って延びている少なくとも1つのストランドと、を有する保形エレメントをアッパーに固定するステップと、ストランドを緊張させるステップと、履物のソール構造体をアッパーに継ぎ合わせるステップと、を含む。
【0005】
さらには、履物を製造する方法が、履物の、低位周縁を有するアッパーの少なくとも一部を、靴型を覆うように配置するステップと、(a)低位周縁に隣接するアッパーの外側方に継ぎ合わされる第1のストリップと、(b)低位周縁に隣接するアッパーの内側方に継ぎ合わされる第2のストリップと、(c)第1のストリップと第2のストリップを通って第1のストリップと第2のストリップとの間にW字形の構成を形成する少なくとも1つのストランドと、を有する保形エレメントをアッパーに固定するステップと、靴型の周りにアッパーを締め付けるように、ストランドを緊張させるステップと、履物のソール構造体をアッパーに継ぎ合わせるステップと、を含む。
【0006】
さらには、履物を製造する方法が、(a)一対の織物ストリップと、(b)織物ストリップを通って織物ストリップ間にW字形の構成を形成する少なくとも1つのストランドと、を有する単一ニット構成の保形エレメントを形成するステップと、靴型を覆うように履物のアッパーの少なくとも一部を配置するステップと、アッパーに保形エレメントを固定するステップと、靴型の周りにアッパーを締め付けるように、ストランドを緊張させるステップと、履物のソール構造体をアッパーに継ぎ合わせるステップと、を含む。
【0007】
さらには、履物を製造する方法が、足を受ける内部空洞を画定する編物構成要素を形成するステップであって、一対の両側方を有するとともに、この両側方を通ってこの両側方の間にW字形の構成を形成する少なくとも1つのストランドを有する編物構成要素を形成するステップと、靴型を覆うように編物構成要素を配置するステップと、靴型の周りに編物構成要素を締め付けるように、ストランドを緊張させるステップと、履物のソール構造体を編物構成要素に継ぎ合わせるステップと、を含む。
【0008】
本発明の態様を特徴づける新規性を有する利点および特徴は、添付の特許請求の範囲とともに詳細に示される。この新規性を有する利点および特徴をさらによく理解するために、本発明に関係する様々な構成および概念を説明かつ表示している以下の詳細な説明と添付の図面とを参照されたい。
【0009】
添付の図面を参照しつつ読むことにより、上記の概要と以下の詳細な説明がさらによく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】履物の斜視図。
図2】履物の分解斜視図。
図3】履物の外側方を示す立面図。
図4】履物の内側方を示す立面図。
図5A図3および図4における分断線5Aに沿って切り出された履物の断面図
図5B図3および図4における分断線5Bに沿って切り出された履物の断面図
図6】履物の保形エレメントの斜視図。
図7】保形エレメントの平面図。
図8A図7における分断線8Aに沿って切り出された保形エレメントの断面図。
図8B図7における分断線8Bに沿って切り出された保形エレメントの断面図。
図9A】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9B】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9C】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9D】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9E】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9F】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9G】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図9H】履物の製造プロセスを示す斜視図。
図10A】製造プロセスを示す図であって、図9Aにおける分断線10Aに沿って切り出された断面図。
図10B】製造プロセスを示す図であって、図9Bにおける分断線10Bに沿って切り出された断面図。
図10C】製造プロセスを示す図であって、図9Cにおける分断線10Cに沿って切り出された断面図。
図10D】製造プロセスを示す図であって、図9Dにおける分断線10Dに沿って切り出された断面図。
図10E】製造プロセスを示す図であって、図9Eにおける分断線10Eに沿って切り出された断面図。
図10F】製造プロセスを示す図であって、図9Fにおける分断線10Fに沿って切り出された断面図。
図10G】製造プロセスを示す図であって、図9Gにおける分断線10Gに沿って切り出された断面図。
図11A】物品のさらなる構成を示す図であって、図2に対応する斜視図。
図11B】物品のさらなる構成を示す図であって、図2に対応する斜視図。
図11C】物品のさらなる構成を示す図であって、図2に対応する斜視図。
図12A】物品のさらなる構成を示す図であって、図5Aに対応する断面図。
図12B】物品のさらなる構成を示す図であって、図5Aに対応する断面図。
図12C】物品のさらなる構成を示す図であって、図5Aに対応する断面図。
図13A】保形エレメントのさらなる構成を示す図であって、図7に対応する平面図。
図13B】保形エレメントのさらなる構成を示す図であって、図7に対応する平面図。
図13C】保形エレメントのさらなる構成を示す図であって、図7に対応する平面図。
図14】編物構成要素の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明および添付の図面は、履物10の様々な構成並びに履物10の製造方法を開示する。ランニングに適するように構成された履物に即して、履物10に関係する概念を詳細に説明するが、以下の詳細な説明は、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、サッカーシューズ、テニスシューズおよびウォーキングシューズなどの広範囲の運動靴に適用され得る。加えて、履物10に関するこの概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよびブーツなどの、一般に運動靴とは見做されていない靴の種類にも適用され得る。従って、履物10に関するこの概念は、様々な履物構成並びにその履物構成を製造する方法に適用され得る。
【0012】
履物構成の概要
【0013】
図1図5Bには、ソール構造体20とアッパー30を有する履物10が示されている。図3および図4に示されるように、便宜上、履物10は、前足領域11、中足領域12および踵領域13の3つの領域に分けられている。履物10はまた、外側方14と内側方15を含む。前足領域11は、概して、つま先と、中足骨と指骨とをつなぐ関節と、に対応する履物10の部分を含む。中足領域12は、概して、足の土踏まずの領域に対応する履物10の部分を含む。踵領域13は、概して、踵骨を含む足の後部に対応する。外側方14と内側方15は、領域11〜13の各々を貫いて延在し、履物10の両側方に対応している。領域11〜13と側方部14〜15は、履物10の厳密な領域の境界を定めることを意図するものではなく、以下の説明をする便宜上、履物10のおおよその領域を示すことを意図するものである。領域11〜13や側方部14〜15に分ける概念は、履物10全体について適用されるだけでなく、ソール構造体20、アッパー30および履物の個々のエレメントについても適用される。
【0014】
ソール構造体20は、アッパー30に固定されていて、履物10が履かれているときに足と地面との間に延在する。ソール構造体20の主要なエレメントは、ミッドソール21とアウトソール22である。ミッドソール21は、アッパー30の低位領域に固定されていて、歩行中、ランニング中或いは他の歩行活動中に、足と地面との間で圧縮されたときに地面からの反力を緩和する(すなわちクッションの役目をする)圧縮性ポリマ発泡体エレメント(例えば、ポリウレタン、エチルビニルアセテート発泡体)から形成され得る。さらなる構成においては、ミッドソール21は、力をさらに緩和して、安定性を向上させ或いは足の動きに影響を与える、プレート、モデレータ、流体で充填されたチャンバ、保形エレメントまたはモーションコントロール部材を含んでなる場合もあれば、流体で充填されたチャンバから主に形成されている場合もある。アウトソール22は、ミッドソール21の底面に固定されていて、静止摩擦力を生じさせる凹凸を有する耐摩耗性ゴム材料から形成され得る。中敷き23もまた、アッパー30内に配置され、足の裏の下に延在するように位置決めされ得る。ソール構造体20のこの構成は、アッパー30と継ぎ合わされて使用されるソール構造体の一例を示しているが、ソール構造体20の様々な他の従来構成または非従来構成が利用され得る。従って、ソール構造体20の構成や特徴部、或いはアッパー30とともに使われる種々のソール構造の構成や特徴部は、著しく変化し得る。
【0015】
アッパー30は、ソール構造体20に足を受けて固定するための、履物10内の空洞を画定する。この空洞は、足を受け入れる形状に形成されており、足の外側方と内側方に沿って、足の上下を覆い、踵を包み込むように延びている。この空洞へのアクセスは、少なくとも踵領域13に配置された足首部の開口31を通してなされる。靴紐32が、アッパー30内の様々な穴または他の靴紐受けエレメント(例えば、Dリング、フック)を貫通していることで、ユーザの足のプロポーションを受け入れるようにユーザ自身がアッパー30の寸法を変えることができるようになっている。特には、靴紐32があることで、ユーザは、足の周りでアッパー30を締め付けることができるとともに、アッパー30を緩めることで、空洞から(つまり、足首部の開口31を通して)足を出し入れし易くできる。アッパー30はまた、内部空洞と靴紐32との間に延在する舌革33を有する。加えて、例えば、アッパー30は、踵領域13に配置され踵の動きを制限するヒールカウンタを組み込んでいる場合もあれば、前足領域11に配置され耐摩耗性を与える耐摩耗性トウガードを組み込んでいる場合もある。
【0016】
アッパー30の様々な部分が、履物10内に空洞を形成するように、縫い合わされるか結合される複数の材料エレメント(例えば、織物、ポリマシート、発泡体層、皮革、合成革)のうちの1つまたは複数から形成され得る。ソール構造体20に隣接する、アッパー30の低位領域ないし底位周辺(すなわち、ミッドソール21の上面)が、周縁34を画定する。以下に詳細に説明するように、履物10の製造(例えば、保形プロセス)で利用される保形エレメント40の少なくとも一部が、低位領域、低位周辺ないし周縁34に隣接して固定され或いは配置される。
【0017】
保形エレメントの構成
【0018】
図6図8Bに示されている保形エレメント40は、一対のストリップ41(例えば、第1のストリップおよび第2のストリップ)とストランド42とを含む。ストリップ41は、概ね互いに離間しており、ストランド42は、ストリップ41の各々を交互に通って、これらのストリップ41間にW字形の構成を形成する。すなわち、ストランド42は、一方のストリップ41(例えば、第1のストリップ)を通ってから他方のストリップ41(例えば、第2のストリップ)を通ることを繰り返し、ストリップ41の各々を交互に通過する。こうして、ストランド42の一部がストリップ41間にW字形の構成を構成している(ストリップ41間にジグザグ形または波形の構成を形成するとも言える)。
【0019】
ストリップ41は、概ね互いに平行に位置決めされているが、履物10に組み込まれている場合には、周縁34の等高線つまり形状に沿って曲がっている場合もある。図6を参照すると、ストリップ41の一つの、長さ43、幅44および厚さ45が画定されている。概して、長さ43は、幅44と厚さ45のいずれよりも著しく長い。そのうえ、幅44は厚さ45よりも長い。この構成を有することで、ストリップ41の各々が概ね長方形で平坦な態様となる。ストランド42はストリップ41の各々を通って延びている。ストリップ41は、例えばポリマシートから形成されている場合、ストランド42が通る孔ないし他の穴を画定し得る。ストリップ41が例えば織物から形成されている場合、ストランド42は、互いに隣接する糸の間を通過し得る。
【0020】
保形エレメント40の様々な構成要素をつくるために様々な材料が使用され得る。ストリップ41は、例えば、織物、ポリマシート、皮革、合成革またはこれらの材料の組合せ(例えば、織物に結合された熱可塑性ポリマシート)から形成されている。ストランド42は、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミド繊維やメタアラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマ、銅、アルミニウムやスチールから製造された、様々な、フィラメント、繊維、糸、より糸、ケーブルまたはロープから形成される。従って、保形エレメント40(すなわち、ストリップ41とストランド42の各々)に用いられる材料や材料の組合せは、著しく変わることがある。
【0021】
保形エレメント40の様々な構成が様々な材料から形成され得るが、保形エレメント40は、往復編み(緯編み)などの編み工程で、ワンピースのエレメントとして形成されることもある。特には、保形エレメント40は、往復編み工程で、単一ニット構成に形成され得る。往復編みする替わりに、機織りで、つまり横糸を挿入しつつ縦編みすることで、保形エレメント40が形成されてもよい。本明細書中においては、保形エレメント40などの編物構成要素が、編み工程でワンピースのニットエレメントとして実質的に構成されている場合に「単一ニット構成」に形成されているものとする。すなわち、編み工程は、保形エレメントの様々な特徴部や構造体(すなわち、ストリップ41とストランド42)を実質的に形成かつ構築する。単一ニット構成の保形エレメント40を形成する工程の多くの例においては、(a)ストリップ41の各々を形成すること、(b)ストリップ41の各々にストランド42を繰り返し交互に通すこと、のために編み機が使用される。すなわち、単一ニット構成の保形エレメント40を形成するのに利用される編み工程は、概して、(a)ストリップ41を画定する一連のスティッチを形成するために1つまたは複数の糸を機械操作することと、(b)ストリップ41にストランド42を通すことと、を含む。
【0022】
単一ニット構成の保形エレメント40を形成することは、様々な利点をもたらす。例えば、保形エレメント40は、編み機で機械操作される糸から効率良く製造される。すなわち、編み機は、糸の構成要素から保形エレメントl40を製造するように自動化され得る。そのうえ、ストリップ41、ストリップ41の様々な領域、およびストランド42をつくるための特定の糸が選択され、編み工程を経て配置される。加えて、編み工程は、比較的長いストリップ41とストランド42を形成するためにも利用され、その後、この比較的長いストリップ41とストランド42から、様々な履物(履物10を含む)用の個々の保形エレメント40が切り出される場合もある。さらなる例として、単一の編み機を利用することで、様々な特性を有する様々な保形エレメント40を形成することができる。すなわち、例えば、長さ43、幅44、厚さ45、ストリップ41間の空間、ストランド42の位置、およびストリップ41とストランド42に使われる糸を、編み工程にて変更を加えることで変えることができる。従って、編み工程を用いて単一ニット構成の保形エレメント40を形成することは、ストリップ41とストランド42とを別々に形成してから組み立てるよりも有利となり得る。
【0023】
編み工程において、保形エレメント40に様々な種類の糸を組み込むことができる。ストリップ41とストランド42は同じ糸または同じ種類の糸から形成され得るが、ストリップ41とストランド42はまた、様々な特性を有する別々の糸から形成される場合もある。ストリップ41とストランド42を形成する糸としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン、綿、毛糸および絹がある。糸は、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸である場合もあれば、様々な材料から各々が形成された別々のフィラメントを含む場合もある。さらには、糸は、複数の異なる材料から各々が形成されたフィラメントを含む場合もある。また、様々な程度の捻れ度や縮れ度並びに様々なデニールを有する糸が、ストリップ41とストランド42をつくるのに使用され得る。糸の材料は、また、熱硬化したときに所望の形状を保つように選択され得る。従って、様々な種類の糸や糸材料が、保形エレメント40の構成要素に組み込まれ得る。
【0024】
上述した種々の糸材料が、ストランド42をつくるのに使用され得る。しかし、以下に詳細に説明するように、ストランド42は、履物10の製造工程で締め付けられるか或いは緊張させられ得る。そのため、製造プロセスでは、比較的非伸張性の糸からストランド42を形成することが有利であろう。従って、ストランド42は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド(例えば、パラアラミド繊維やメタアラミド繊維)、超高分子量のポリエチレン材料、液晶ポリマ材料、銅、アルミニウムおよびスチールから製造された、様々な、フィラメント、繊維、糸、より糸、ケーブルまたはロープから形成され得る。従って、ストランド42は、様々な材料から様々な構成を有するように形成され得る。
【0025】
上記の説明に基づいて、保形エレメント40は、アッパー30の低位領域、低位周辺または周縁34に隣接して固定されるか或いは配置される。保形エレメント40は、概して、ストリップ41とストランド42を含む。ストリップ41が概ね互いに離間して設けられている一方で、ストランド42は、ストリップ41の各々を交互に通って、これらのストリップ41間に、W字形の構成、ジグザグ形の構成または波形の構成を形成する。保形エレメント40は、ストリップ41とストランド42とが別々に形成されてから組み立てられてもよいし、往復編みなどの編み工程によって、単一ニット構成として形成されてもよい。さらには、保形エレメント40に特定の特性を与えるために、ストリップ41とストランド42に使用される材料(例えば、保形エレメント40を形成する糸の材料)を変えることができる。
【0026】
製造プロセス
【0027】
履物10を製造するために様々な技術が利用され得る。保形エレメント40を利用する製造プロセスの例を、図9A〜9Hおよび図10A〜10Gを参照して以下に説明する。図9Aには、製造プロセスの初期の段階が示され、履物10の様々な別個のエレメント(例えば、ソール構造体20の一部、アッパー30の一部および保形エレメント40の一部)が靴型50に隣接して配置されている。この段階において、様々な材料エレメント(例えば、織物、ポリマシート、発泡体層、皮革、合成革)を縫い合わせること或いは結合させることで、アッパー30が概ね組み立てられる。図9Aにおいて上方を向いているアッパー30の低位領域が、周縁34を画定している。
【0028】
靴型50は、従来の靴型構成を有し得るとともに、足と足首の一部との概形を有し得る。図9Aにおいて配向されている通り、足の裏に対応する靴型50の部分は上方を向いており、足の甲に対応する靴型50の部分は下方を向いており、つま先に対応する靴型50の部分は左上を向いており、踵に対応する靴型50の部分は右下を向いている。図10Aを参照すると、足の前足領域に対応する靴型50の部分から切り出された断面図が示されている。靴型50は、硬質な構成を有するものとして示されているが、この靴型50の全体的な形状を変化させる複数の可動エレメントから形成されている場合もある。
【0029】
図9Bおよび図10Bに示されるように、アッパー30はここでは、靴型50を覆うように配置されていて、靴型50の領域を覆っている。特には、アッパー30は、足の外側方と内側方、足の甲および足の踵領域に対応する靴型50の部分を覆う。しかし、足の裏に対応する靴型50の部分については、製造工程のこの段階においては、露出している。すなわち、周縁34は、アッパー30に孔つまり開口を形成しており、この孔つまり開口から、足の裏に対応する靴型50の部分が露出している。
【0030】
図9Cおよび図10Cに示されるように、アッパー30が靴型50を覆うように配置されると、保形エレメント40は、アッパー30の低位領域に隣接して位置する。そして、図9Dおよび図10Dに示されるように、保形エレメント40は、周縁34を形成するアッパー30の低位領域に固定される。保形エレメント40をアッパー30の低位領域と継ぎ合わせるのに様々な方法があるが、縫い合わせ、熱接合、接着またはこれらの組み合わせの方法がそれぞれ用いられるとよい。さらには、(a)一方のストリップ41が前足領域11から踵領域13までアッパー30の外側方14に継ぎ合わされ、(b)他方のストリップ41が前足領域11から踵領域13までアッパー30の内側方15に継ぎ合わされるように、保形エレメント40がアッパー30の低位領域に固定される。追加事項として、(a)各ストリップ41の一部分がアッパー30の表面を押し付けているとともに、(b)各ストリップ41の他の部分が周縁34から外方へ延在するように、ストリップ41は周縁34にオーバラップして示されているが、様々な他の構成が利用され得る。
【0031】
製造工程のこの段階において、アッパー30は、比較的ゆるく靴型50を覆うように延在している。例えば、図10Dを参照すると、アッパー30が靴型50を覆って比較的ゆるくフィットする構成であるため、アッパー30と靴型50との間に多少のギャップが形成されている。しかし、図9Eおよび図10Eに示されるように、靴型50の周りにアッパー30を締め付けるために、ストランド42が引っ張られるか或いは緊張させられる。ストランド42が緊張させられることにより、アッパー30が靴型50の表面に押し付けられるように引っ張られて靴型50の形状になる。すなわち、ストランド42を緊張させることにより、アッパー30内の空洞が足の形状となるようにする。ストランド42がストリップ41を通って延びていて、ストリップ41を通って動くことつまり摺動することができる場合、ストランド42を緊張させることはまた、アッパー30のほぼ全長に亘ってストリップ41を互いに接近させる効果を有する。従って、ストランド42を緊張させることの効果としては、概して、(a)靴型50の周りにアッパー30を締め付ける効果と、(b)ストリップ41を互いに接近させるように引っ張る効果と、がある。
【0032】
ストランド42による締め付けに続いて、図9Fおよび図10Fに示されるように、ソール構造体20が、保形エレメント40とアッパー30の低位領域とに隣接して配置される。そして、図9Gおよび図10Gに示されるように、ソール構造体20は、保形エレメント40とアッパー30の低位領域とに固定される。保形エレメント40とアッパー30の低位領域とにソール構造体20を継ぎ合わせるのに様々な方法があるが、縫い合わせ、熱接合、接着またはこれらの方法の組合せを用いるとよい。図9Hに示されるように、ソール構造体20が固定された後、靴型50から履物10を出すことができる。選択的に、ストランド42も履物10の足首部の開口31から取り外され得る。すなわち、ストランド42は、ストリップ41からずらされて、アッパー30によって形成された(元は靴型50が配置されていた)空洞から取り外され得る。そして、アッパー30によって形成された空洞内に中敷き23が配置されると、履物10の製造がほぼ完了する。
【0033】
上記の説明に基づいて、靴型50を覆うようにアッパー30の少なくとも一部分を配置することを概して含む工程を経て、履物10が製造され得る。単一ニット構成を有するように編まれるなどして予め形成されていた保形エレメント40が、アッパー30に固定される。詳しくは、(a)一方のストリップ41が前足領域11から踵領域13までアッパー30の外側方14に継ぎ合わされるとともに、(b)他方のストリップ41が前足領域11から踵領域13までアッパー30の内側方15に継ぎ合わされる。そして、靴型50の周りにアッパー30を締め付けるようにストランド42が緊張させられると、保形エレメント40とアッパー30の一方または両方にソール構造体20が継ぎ合わされる。
【0034】
さらなる構成
【0035】
保形エレメント40を含む履物10の態様および履物の製造工程は、様々になされ得る。例えば、図2を参照すると、保形エレメント40は、ストリップ41の端部領域が継ぎ合わされておらず互いに離間している構成を有する。代替的に、図11Aは、端部領域どうしが継ぎ合わされている構成を示す。図2の構成もまた、履物10のほぼ全長に亘って延在する単一の構成要素としての保形エレメント40を示す。しかし、いくつかの構成においては、履物10の互いに異なる領域に別個の保形エレメント40が配置され得る。例えば、図11Bは、領域11〜13の各々に3つの別個の保形エレメント40が配置される構成を示す。保形エレメント40を使用することの利点の一つは、製造工程からシュトローベル靴下を排除できて、それでも履物をつくれることにある。保形エレメント40は有効にシュトローベル靴下の代わりになるものであるが、いくつかの製造工程においては、履物10の少なくとも一部に類似の構造物を使うことがある。例えば、図11Cを参照すると、前足領域11には保形エレメント40が配置されているが、領域12と領域13にはシュトローベル靴下51が延在している。
【0036】
図5A図10Dおよび図10Eを参照すると、(a)各ストリップ41の一部がアッパー30の表面を押し付けるとともに、(b)各ストリップ41の残部が周縁34から外側へ延在するように、ストリップ41は、周縁34にオーバラップして示されている。周縁34に対して保形エレメント40の配置は様々になされ得る。さらなる構成においては、(a)図12Aに示されるようにストリップ41のほぼすべてがアッパー30の表面を押し付けるように位置し、(b)図12Bに示されるようにストリップ41がアッパー30の裏面に隣接して位置し、(c)図12Cに示されるようにストリップ41の縁部が周縁34に継ぎ合わされるように、ストリップ41がアッパー30に固定され得る。図12A図12Cにおいては、ストランド42が示されていないが、ストランド42は、製造工程の後半の段階で取り除かれる場合もあることに留意されたい。すなわち、ストリップ41がアッパー30に継ぎ合わされているときの態様は様々であり得る。
【0037】
保形エレメント40に関係する多くの態様も様々であり得る。例えば、図13Aを参照すると、2つのストランド42がストリップ41の各々を通ってこれらのストリップ41間で交差している。他の例としては、図13Bに示されているように、ストリップ41の長さに亘って複数のストランド42が配置されている。この構成の利点は、製造工程において、複数のストランド42が互いに独立して緊張可能なことである。ストランド42に関連するバリエーションに加え、ストリップ41も上述した構成と異なることがある。例えば、図13Cは、ストリップ41の長さに亘って幅44が変化する構成を示している。特には、幅44は、ストリップ41の中央領域では比較的小さいが、端部領域では拡がっている。従って、保形エレメント40の特徴部および構成は様々になされ得る。
【0038】
編物構成要素
【0039】
図14に示されている編物構成要素60は、アッパー30または他のアッパーの半分以上を形成し得る。編物構成要素60は、アッパー30に組み込まれているときには、外側方14と内側方15に沿って領域11〜13の各々を貫くように延在し、前足領域11を覆うとともに踵領域13を包み込んでいる。加えて、編物構成要素60は、アッパー30の内面と反対側の外面の両方を形成し得る。こうして、編物構成要素60は、アッパー30内の空洞の少なくとも一部を画定する。
【0040】
編物構成要素60は様々なチューブ61を含み、このチューブ61内に、靴紐ストランド62が配置されている。すなわち、編物構成要素60は、2008年12月18日に米国特許商標庁に出願された米国特許出願第12/338,726号明細書(発明の名称「Article of Footwear Having An Upper Incorporating A Knitted Component」)に開示されている編物構成要素と同様の構成を有するものであり、この米国特許出願は本願の参照となる。加えて、編物構成要素60は、該編物構成要素60の両側方つまり低位周縁を交互に通って、この両側方間つまり低位周縁間にW字形の構成を形成するストランド63を含む。こうして、ストランド63の一部が、構成要素60の両側方間つまり低位周縁間にW字形の構成を形成する(ジグザグ形の構成または波形の構成を形成するとも言える)。
【0041】
編物構成要素60を組み込む履物10または他の履物を製造する工程において、編物構成要素60の表面を引っ張って靴型に押し付けるように、ストランド63が緊張させられ得る。従って、ストランド42を有する場合と同様に、ストランド63は、履物10の保形工程において、編物構成要素60を靴型50の形状にするために使用され得る。すなわち、ストランド63を緊張させることにより、履物の形状にするように編物構成要素60内に空洞を生じさせる。ストランド63が編物構成要素60の両側方つまり両側の低位周縁に亘って延在しこれら両側方つまり両側の低位周縁に亘って動くことつまり摺動することができる場合、ストランド63を緊張させることはまた、編物構成要素60のほぼ全長に亘って両側方つまり両側の低位周縁を互いに接近させるように引っ張る効果がある。従って、ストランド63を緊張させることの効果としては、概して、(a)靴型の周りに編物構造体60を締め付ける効果と、(b)編物構造体60の両側方つまり両側の低位周縁を互いに接近させるように引っ張る効果と、がある。ソール構造体は、張力を受けると、編物構成要素60に固定され、この編物構成要素60からストランド63を取り除くことができる。
【0042】
単一ニット構成を与える往復編み工程を含む様々な製造プロセスが、編物構成要素60を形成するために用いられ得る。編物構成要素60は、往復編み工程で形成される場合、往復編み機によって概ね行われる単一の操作で、チューブ61、靴紐ストランド62、およびストランド63を含むように形成されるが、手縫いも可能である。編物構成要素60を製造するのに往復編み工程を用いることの利点の一つとして、往復編み工程を通じて編物構成要素60に様々な特徴部が与えられることがある。すなわち、往復編み工程は、例えば、(a)編物構成要素60の別々の領域に様々な特性を与える様々な編物の種類と、(b)織物構成要素60の別々の領域に様々な特性を与える様々な糸の種類と、(c)チューブ61を形成するようにオーバラップしている編物層と、(d)チューブ61内に配されているストランド62などの材料と、(e)編物構成要素60の両側方つまり低位周縁を交互に通るストランド63と、を有するように編物構成要素60を形成することができる。そのように、往復編み工程を用いることで、履物10に有利な様々な特徴および構造的特徴部を有するように編物構成要素60を実質的に形成することができる。
【0043】
添付の図面に示される様々な構成を参照して、本発明を開示したが、この開示の目的は、本発明に関係する様々な特徴部および概念の実施例を提示することであり、本発明の範囲を制限することではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって確定される本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変形や変更がなされ得ることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14