特許第5771696号(P5771696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771696フロー式粒子分析器のための二重フィードバック真空流体工学
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771696
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】フロー式粒子分析器のための二重フィードバック真空流体工学
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   G01N15/14 A
   G01N15/14 E
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-536693(P2013-536693)
(86)(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公表番号】特表2014-503792(P2014-503792A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011057445
(87)【国際公開番号】WO2012058142
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デービッド バレーン
(72)【発明者】
【氏名】ピアス オー.ノートン
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−221988(JP,A)
【文献】 特表2009−529678(JP,A)
【文献】 特開昭60−140139(JP,A)
【文献】 特開2001−050887(JP,A)
【文献】 特開平10−197440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00〜15/14、21/00〜21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー式粒子分析器のための流体システムであって、
試料流体入口ポートおよびシース流体入口ポートおよび出口ポートおよびキュベットを有し、前記キュベットが入口端および出口端を有するキュベット通路を含み、前記入口端が前記試料入口ポートおよび前記シース流体入口ポートと流体連通状態にあり、前記出口端が前記出口ポートと流体連通状態にある流動セルと、
前記試料入口ポートと流体連通状態にあって、試料流体容器から粒子を含有する試料流体を供給するための試料流体ラインと、
前記シース流体入口ポートと流体連通状態にあって、シース流体リザーバーからシース流体を供給するためのシース流体ラインと、
前記出口ポートと流体連通状態にある出口ラインと、
制御可能な出力レベルを有し、前記出口ラインと真空連通状態にあって前記出口ラインを真空引きするように形成され、それによって前記流動セルを介して前記試料流体およびシース流体を吸引する真空ポンプと、
前記シース流体入口ポートから前記キュベット出口ポートまでの圧力低下を測定するように形成された第1のセンサーと、
この第1のセンサーによって測定された圧力低下に応じて前記真空ポンプの出力を調整するように形成された第1の制御フィードバック回路と、
前記キュベット出口ポートから大気圧までの圧力低下を測定するように形成された第2のセンサーと、
この第2のセンサーによって測定されて圧力低下に応じて前記真空ポンプの出力を調整するように形成された第2の制御フィードバック回路と
を具え、前記試料流体ラインまたは前記シース流体ラインが可変抵抗流体抵抗器を構成することを特徴とする流体システム。
【請求項2】
前記シース流体ラインが可変抵抗流体抵抗器を構成することを特徴とする請求項1に記載の流体システム。
【請求項3】
前記シース流体ラインと直列に配され、前記流動セルへの前記シース流体の流動を制御するように形成された第1の弁と、
前記出口ラインと直列に配され、前記流動セルの外への前記シース流体の流動を制御するように形成された第2の弁と、
これら第1および第2の弁を操作するように結合された弁コントローラーと
をさらに具えたことを特徴とする請求項2に記載の流体システム。
【請求項4】
前記可変抵抗流体抵抗器が複数の異なる抵抗レベルを与えるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体システム。
【請求項5】
前記可変抵抗流体抵抗器が複数の選択可能な流体通路を具えたことを特徴とする請求項4に記載の流体システム。
【請求項6】
前記可変抵抗流体抵抗器が前記選択可能な流体通路の区分を可能にするように形成された複数の弁をさらに具えたことを特徴とする請求項5に記載の流体システム。
【請求項7】
前記可変抵抗流体抵抗器が連続的な可変流体抵抗を与えるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の流体システム。
【請求項8】
前記可変抵抗流体抵抗器は、少なくとも部分的に圧縮可能または変形可能な材料で構成された導管と、この導管の外部に圧力を加えるための制御可能な手段とを具えたことを特徴とする請求項7に記載の流体システム。
【請求項9】
圧力を加えるための前記制御可能な手段が機械的圧力を加えるように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の流体システム。
【請求項10】
圧力を加えるための前記制御可能な手段が前記導管を取り囲む流体または気体を介することによって圧力を加えるように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の流体システム。
【請求項11】
前記試料流体ラインにおける流量を測定するように形成された流量計と、
この流量計および前記可変抵抗流体抵抗器を操作するように結合され、当該流量計によって測定された前記流量に応じて前記可変抵抗流体抵抗器の抵抗を自動的に調整するように形成されたコントローラーと
をさらに具えたことを特徴とする請求項7に記載の流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の粒子の分析のための機器およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメーターの如きフロー式粒子分析器はよく知られた分析器具であり、光散乱および蛍光の如き光学的パラメーターに基づき、またはインピーダンスのような電気的特性によって、粒子の特性評価を可能にする。フローサイトメーターにおいて、例えばフルイド・サスペンション法での分子や数珠状につながった分析物または個々の細胞の如き粒子は、一般的には1つ以上のレーザーからの励起光にこれらの粒子がさらされる検出領域を通過し、この粒子の光散乱および蛍光の特性が測定される。粒子または一般的にその構成成分は、検出を容易にするために蛍光染料で標識付けされ、スペクトル的に個別の蛍光染料を用いて異なる粒子や構成成分を標識付けすることにより、極めて多数の異なる粒子や構成成分を同時に検出することができる。一般的に、検出は、検出されるべき個々の染料のそれぞれに対応する極めて多数の光検出器を用いて行われる。フローサイトメーターおよび走査型サイトメーターの両方は、例えばBD Biosciences(カリフォルニア州 San Jose)から商業的に入手可能である。フローサイトメーターの説明は、Shapiro, 2003, Practical Flow Cytometry, 第4版(ニュージャージー州 Hoboken の John Wiley and Son Inc.)に与えられており、ここで引用された文献のすべては、参照することによってここに組み入れられる。
【0003】
典型的なフローサイトメーターにおいて、粒子を含有する試料流体は、試料流体と同軸の環状流を形成してそのまま検出領域を通過する粒子なしシース流体に囲まれており、これによって粒子なしシース流体により囲まれた流体の流れの中央に水力学的に集束した粒子を含有する試料流体の流れを作り出す。試料流体は検出領域を通るすべての流体の流れのほんの一部のみを形成するため、試料流体に対するシース流体の割合は一般的に高い。
【0004】
一般的に、フローサイトメーターシステムは圧力駆動流体工学を用いて構築されており、雰囲気圧よりも大きな圧力により試料流体およびシース流体が検出領域を含む流動セルに供給される。圧力駆動流体工学システムの流動セルを通る流量の変更は、流動セルへと送り込まれる試料管および/またはシース流体リザーバー内の圧力を変更することによって達成される。流動セルを通って流れるシース流体に対する試料流体の割合は、試料管およびシース流体リザーバー内の圧力レベルと、試料流体およびシース流体の通路抵抗の割合との両方によって支配される。
【0005】
代わりに、フローサイトメーターシステムは真空駆動流体工学を用いて構築されており、真空ポンプが流動セルの下流を真空引きすると共に試料流体およびシース流体が雰囲気圧に保持される。真空駆動流体工学システムの流動セルを通る流量の変更は、真空ポンプによって得られる真空状態を変更することによって達成され、流動セルを通って流れるシース流体に対する試料流体の割合は、試料流体およびシース流体の通路抵抗の割合によって支配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5395588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、圧力駆動流体工学システムの設計は、システムの高い圧力レベルに耐える配管や結合部および封止材を含む部品を必要とするため、真空駆動流体工学システムの設計よりも複雑である。これに対し、真空駆動フローサイトメトリーシステムにおいて、試料管およびシース流体供給リザーバーに対する流体結合の設計は、これが加圧可能な配管や結合部および封止材の使用を必要としないので、著しく単純化される。加圧試料管の排除は、自動チューブリフターおよびロボット試料ローダーの如き補助装置の設計をさらに容易にする。
【0008】
参照することによってここに組み入れられる特許文献1は、フローサイトメーターにて用いるための真空制御システムを記述する。このシステムは、開いた供給リザーバーからセル分析が行われる流動セルを介してシース流体を引き出し、流動セルの排液を開いた廃液リザーバーに排出する真空ポンプを含む。供給リザーバーから流動セルへと通じる導管を介して圧力低下が作り出され、この導管はまた、開いた試料容器から流動セルを通過する粒子(例えば細胞)懸濁液からなる試料をも吸引する。このシステムの流量は、流動セルの出口での真空レベルを監視することによって調整される。真空センサーに結合された制御回路は、真空ポンプモーターに加えられた電力を調整し、流動セルの出口でのあらかじめ設定された真空レベルを維持する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料流体およびシース流体の如き2つ以上の流体供給源がフローサイトメーターにおける如く分析の直前にこのシステムによって組み合わされるフロー式粒子分析器のための改良された真空駆動流体工学システムを提供する。
【0010】
本発明の真空駆動流体工学システムは、フローサイトメーターにて用いた場合、シース流体リザーバーからのシース流体と、試料管から粒子の分析が行われる流動セルを通して分析される粒子を含む試料流体とを得る真空状態を作り出す真空ポンプを含む。流動セルを出る試料流体およびシース流体の混合物である廃液がこのポンプを介して引かれ、廃液リザーバーに排出される。圧力センサー(圧力変換器)がここでは動圧低下と呼称される流動セルを横切る圧力低下を測定するために構成される。ここでは動圧制御フィードバック回路として呼称される第1の制御フィードバック回路が設けられ、測定された動圧低下に応じて真空ポンプを調節することにより動圧低下を調整することを可能にする。
【0011】
好ましい実施形態において、この真空駆動流体工学システムは、雰囲気圧に対して真空ポンプにより得られ、ここでは静圧低下と呼称される真空状態を測定するために構成された第2の圧力センサー(圧力変換器)をさらに含む。ここでは静止制御フィードバック回路として呼称される第2の制御フィードバック回路が設けられ、測定された静圧低下に応じて真空ポンプモーターを調節することにより静圧低下を調整することを可能にする。この制御回路は、真空ポンプモーターが動圧低下または静圧低下の何れかに応じて調節されることができるように、第1の動的制御フィードバック回路または第2の静止制御フィードバック回路の何れかの選択を可能にする。2つのフィードバック制御回路の作用は、さらに以下に記述される。
【0012】
真空ポンプは、ポンプモーターに供給された電力を調節することによってポンプにより得られる真空度を制御するように調節されることが好ましい。代わりに、真空ポンプを介して流体の流れを制限する1つ以上の調整可能な弁または他の流体抵抗器を用いて得られる真空度を制御するように、真空ポンプを調節することができる。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明の真空駆動流体工学システムは、シース流体リザーバーと流動セルとの間のシース流体通路に配された可変抵抗流体抵抗器をさらに含む。この可変抵抗流体抵抗器の抵抗を変更することにより、流動セルを通って引き込まれるシース流体と試料流体との相対的な割合を調節することができる。同様な意味合いで、シース流体通路の抵抗を変更することにより、流動セルを通る全体の流量を一定に維持しつつ試料流体の流量を調節することができる。
【0014】
代わりに、本発明の真空駆動流体工学システムは、試料流体管と流動セルとの間の試料流体通路に配された可変抵抗流体抵抗器をさらに含む。この試料流体通路中の可変抵抗流体抵抗器をシース流体通路中の可変抵抗流体抵抗器と関連付けて用いることも可能である。一般に、シース流体通路中の可変抵抗流体抵抗器を用いてシース流体に対する試料流体の割合を制御することが望ましい。典型的なフローサイトメーターにおいて、シース流体の流れは、試料流体の流れのざっと1000倍程度(典型的なシース流体の流量がざっと毎分数ミリリットル程度であり、典型的な試料流体の流量がざっと毎分数マイクロリットル程度である)であり、シース流体の流れを精密に制御することがより簡単である。
【0015】
本発明の真空駆動流体工学システムの利点は、流動セルを通る全体の流量を一定に維持しつつ試料流体の流量を調節することができるということである。全体の流量は、第1の圧力センサーによって測定されるような一定の動圧低下をもたらすように、真空ポンプの出力を調節する第1の(動的)フィードバック制御ループを用いて一定に保持される。これに対し、特許文献1に記述されたような如き真空駆動流体工学を利用する前述したフローサイトメーターは、単に静圧低下を測定してこれを制御するだけである。一定の静圧低下は、流動セルの上流の試料流路およびシース流体通路の流体抵抗が一定の場合に限り、一定の流量がキュベットを通ることをもたらす。静圧低下のみを監視する真空駆動流体システムにおける試料の割合の変更は、必要とされる静圧低下の大規模な再較正を必要としよう。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、可変抵抗流体抵抗器は複数の異なる抵抗レベルをもたらすように構成される。これは、代わりの選択可能な流体通路を与えることによって達成されることが好ましく、それぞれの流体通路は異なる流体抵抗を有する。これらの流体通路は、異なる長さや径を有する導管(例えば複数本の配管)であってよい。弁はシース流体通路に配されて複数の代わりの流体通路の中から望ましい流体通路の選択を可能にする。
【0017】
発明の代わりの実施形態において、可変抵抗流体抵抗器は連続的に可変である。好ましい実施形態において、シース流体通路は、少なくとも部分的に圧縮可能または変形可能なであって、全体がプラスチック配管の如き材料からなる1本の導管を含み、調整可能な圧力がこの配管の外側に加えられる。配管の外側に変更して加えられる圧力の調節は、配管の径および/または形状を変え、これによって流体通路の断面積を変更すると同時に配管の流体抵抗を変更する。
【0018】
連続的に可変の可変抵抗流体抵抗器は、機械的に圧縮される1本の配管からなるものであってよい。例えば、この配管は円柱状のポストを取り囲んで巻き付けられ、少なくとも一方が移動可能であって支柱に対して直交する面を有する板材の間で圧縮されることができる。代わりに、この連続的に可変の可変抵抗流体抵抗器は、調整可能な内圧を有する圧力チャンバーの内部を貫通する1本の配管からなるものであってよい。圧力チャンバーを圧縮空気供給源の如き調整可能な圧力供給源に結合するか、圧力チャンバーの大きさおよび/または形状を例えば機械的手段などによって変更することにより、圧力チャンバーの内圧を調節することができる。
【0019】
サーボ機構を用いた自動制御によって可変抵抗流体抵抗器の抵抗を調節し、抵抗の設定変更をもたらすことができる。
【0020】
このシステムを通る試料およびシース流体の流れを休止させることができ、例えばそれぞれの試料の分析後に新たな試料供給源への変更を可能にする。本システムにおいては、流動セルとポンプとの間の流体通路に配された弁を閉じることにより、流体の流れを休止させることができる。この弁を閉じている時、動圧低下がゼロに低下し、動圧低下とポンプとの間にある動的フィードバックループが停止し、静圧低下とポンプとの間にある静止フィードバックループが作動する。この静止フィードバックループは、休止している間、静圧低下を一定レベルに維持し、好ましくはこれをこのシステムが休止する前の走行時に(動的フィードバックループの制御によって)存在したこのシステムの静圧低下に維持することを可能にする。流動セルを通る流体の流れが再開した時、ポンプの制御が切り替えられて動的フィードバックループに戻り、システムを休止している間に可変抵抗流体抵抗器の抵抗レベルに対してなされたどのような変更にもかかわらず、流動セルを通り抜ける流れをこれがシステムを休止する前と同じであった割合で再確立すると共に維持することを可能にする。これらフィードバック制御回路の間のこの切り替えは、作動状態と休止状態との間を移行中の真空状態の大きな変動を排除すると同時に流動セルを通るすべての試料のための流量を一定に維持する。
【0021】
一定の流量が流動セルを通ること、すなわちより詳細にはセル分析が行われる流れの中でキュベットを通ることがマルチレーザーフローサイトメーターにおいて特に重要である。マルチレーザーフローサイトメーターは、粒子がキュベットを通って流れるようにこれらが通り抜ける多数の空間的に分離した検出領域を一般的に有する。同じ粒子からのすべての信号がこの粒子から来るものであることを確認することができるように、それぞれの検出領域にて検出された信号を適切に照合させるため、1つの検出領域から次への経過時間を決定しなければならない。一般的に2レーザーのシステムを用いる場合、第1の検出領域において第1のレーザーでの励起後に測定される信号は、第2の検出領域において第2のレーザーでの励起後に測定される信号の測定が完了するまで電子回路に保持され、次いでこれら2つの信号がさらなる分析のために相互に送信される。第1の信号の到着と第2の信号の到着との間の時間は、検出領域間の距離と流量とに依存した「レーザー遅れ」としてしばしば呼称される。同様に、3レーザー以上のマルチレーザーシステムにおいて、同じ粒子からの信号のそれぞれは、最後の信号が測定されるまで格納され、そして多数の信号がさらなる分析のために下流の電子機器へと送られる。本発明の真空駆動流体システムは、キュベットを通る流量を一定に維持することを可能にし、一定のレーザー遅れを保証し、同時に試料流量を変えることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】典型的なフローサイトメーターからの流動セルの構成部材の概略図を与える。図1における流動方向は、この紙面の上から下に向かっている。
図2】本発明の真空駆動流体システムの概略図を与える。図2における流動方向は、この紙面の下から上に向かっており、流動セル100が図1におけるその向きに対して逆方向に示されている。
図3】本発明の可変抵抗流体抵抗器の概略図を与える。この可変抵抗流体抵抗器は、個別の流体抵抗レベルをもたらす多数の弁を選択可能である。
図4a】本発明の連続的な可変抵抗流体抵抗器の概略図を与える。
図4b】本発明の連続的な可変抵抗流体抵抗器の概略図を与える。
図5】本発明の連続的な可変抵抗流体抵抗器の他の一実施形態の概略図を与える。
図6】試料流体ライン中の流量計により測定される試料流体の流量に応じて抵抗を調節するフィードバック回路の制御による連続的な可変抵抗流体抵抗器を有する本発明の真空駆動流体システムの別な一実施形態の構成部材の概略図を与える。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の定義が明瞭性のために与えられる。そうでないことが明記されている場合を除き、すべての用語がこの分野での一般的なものとして用いられる。ここで提示されたすべての文献は、前およびこの後の両方共に参照することによって、ここに組み入れられる。
【0024】
1つ以上の光検出器を通過した粒子を通過させることにより、流動流体の流れに浮遊した粒子を分析するあらゆる機器を参照するため、ここでは「フロー式粒子分析器」が用いられ、例えばフローサイトメーターや血液分析器および細胞カウンターを分析または選別することを含む。フロー式粒子分析器は少なくとも2つの流体供給源を含み、2つの流体が分析の直前にこのシステムによって組み合わせられる。例えば、本発明のフローサイトメーターは、シース流体によって水力学的に集束させられる試料流体に浮遊する粒子を分析する。
【0025】
シース流体は、水力学的な集束を達成するためにフローサイトメーターにおいて普通に実践されているような粒子を含有する試料流体を取り囲んで用いられる実質的に粒子を含まない流体を表す。
【0026】
圧力の測定に関連した用語「圧力センサー」,「圧力変換器」,「真空センサー」,「真空変換器」,「変換器」は、ここではすべて互いに交換可能に用いられる。
【0027】
ここで用いたような流体の「ライン」は、流体を輸送するための流体導管または通路を表す。一般的に、試料流体ラインおよびシース流体ラインは主に長い配管からなるけれども、これらのラインは弁および追加の流体抵抗器を含むことができる。
【0028】
圧力変換器
典型的な圧力センサーは、圧力または真空レベルに応じて撓んだ場合に比例した電圧を生成するダイヤフラム型の圧電抵抗材料を含む。適当な圧力センサーがこの分野において知られており、例えば Honeywell Corporation(ニュージャージー州 Morristown)から商業的に入手可能である。例えば Honeywell 26PC および 140PC シリーズの差圧真空センサーおよび Sensym SDX 圧力センサーを含む。
【0029】
可変抵抗流体抵抗器
好ましい実施形態において、本発明の真空駆動流体工学システムは、試料管と流動セルとの間の試料流体通路か、シース流体リザーバーと流動セルとの間のシース流体通路か、あるいはこれらの両方に配される可変抵抗流体抵抗器をさらに含む。以下に例示されるように、この可変抵抗流体抵抗器をシース流体通路に組み入れることが好ましい。可変抵抗流体抵抗器の抵抗を変更することにより、流動セルを通って引き込まれるシース流体と試料流体との相対的な割合を調節することができる。流動セルを通る全流量が一定に保持されるので、流動セルを通って引き込まれるシース流体および試料流体の相対的流量の調節はまた、流動セルを通る試料流体の流量をも制御する。
【0030】
可変抵抗流体抵抗器は、粘性支配の流体回路の残りの部分における圧力を釣り合わせることを容易にする粘性支配の絞りであることが好ましい。好ましい実施形態において、基本的に一定の内径を有する1本の配管または同様な導管を用いることにより、粘性支配の絞りが達成される。所定粘度の流体に関する抵抗力は、導管の長さおよび内部断面積に依存し、その長さは望ましい抵抗を与えるように選択される。これに対し、配管の一カ所のみを単に挟み付けるか、または(ニードル弁の如き)弁を用いた場合には流れの制限を与え、対流的な加速を結果として生ずる。これは可変抵抗をもたらすけれども、粘性支配のシステムにおいてはほとんど望ましくない。粘性に対する温度の影響のため、粘性支配の流体抵抗器を組み込んだシース流体ラインの抵抗の温度依存性は、試料流体ラインの抵抗の温度依存性と同じである。従って、試料流体ラインおよびシース流体ラインの抵抗の割合は、温度変化と同じままである。これに対し、挟み付けは対流的に支配されると共に抵抗が温度との相関関係ではないので、挟み付け型抵抗の使用は、通路抵抗の割合の変更を温度の変更と共に結果として生じよう。
【0031】
一般的に、導管は1本のガラスやプラスチックまたは鋼の配管からなる。種々の径の適当な配管が商業的に入手可能である。一般的に、望ましい流動抵抗を都合の良い長さの配管で達成できるようにその直径が選択され、そして流動抵抗に対するわずかな調整が配管の長さを修正することによってなされよう。配管の径および長さは、ここの手引きに従った用途に基づいて選択されよう。
【0032】
可変抵抗流体抵抗器は、複数の個別抵抗の設定間での選択を与えることができる。代わりに、可変抵抗流体抵抗器は、連続調整可能な抵抗を与えることができる。可変抵抗流体抵抗器の異なる例が以下および図面に記述される。
【0033】
好ましくは他の個別の流体抵抗レベルをもたらす可変抵抗流体抵抗器は、それぞれ異なる流体抵抗をもたらす多数の弁を選択可能な平行流体通路を与えることにより実現される。全体として、可変抵抗流体抵抗器の他の流体抵抗レベルの全体は、可変抵抗流体抵抗器を通って流れることができる代わりの内部流体通路を選択することによって達成される。
【0034】
連続可変抵抗をもたらす可変抵抗流体抵抗器は、1本のプラスチック配管の如き少なくとも部分的に圧縮可能または変形可能な1本の材料と、この配管の外側に調整可能な圧力を加えるための手段とを設けることによって、好ましくは実現される。圧縮されていない配管が望ましい最低レベルの抵抗を与えるように、配管が選択される。配管の外側に加えられた圧力の増大は配管の径および/または形状を変更し、これによって流体抵抗を増大させる。
【実施例1】
【0035】
図1
図1は、本発明の流体システムを用いて有用な典型的なフローサイトメーターの構成部材の概略図を描いている。流動セル100は、流動セルチャンバー106と、試料入口ポート108と、シース流体入口ポート110とを含む。試料入口ポート108およびシース流体入口ポート110は、粒子を含む流体試料および粒子なしシース流体を流動セルチャンバー106へとそれぞれ供給するようになっている。流動セルチャンバー106は、キュベット102を貫通するキュベット通路104に接合される開口に集束している。
【0036】
使用時に、分析される粒子を含む試料流体が試料入口ポート108を介して流動セル100へと導入され、粒子なしシース流体がシース流体入口ポート110を介して流動セルへと導入される。これらの流体は、キュベット通路104を通って廃物レセプタクル(図示せず)に向けて出る。流動セルは、シース流体が試料流体と同軸の環状流を形成するように設計され、流体が流動セルの収束通路を通って対流的に加速するので、これにより粒子なしシース流体にて囲まれた流体の流れの中央に粒子を含む試料流体の水力学的に集束した流れを作り出す。ここでは、シース流体と試料流体とからなる組み合わせの流体の流れを「試料流」または「フローストリーム」あるいは「粒子流」と呼称する。
【0037】
試料流内の粒子の光学的分析は、試料流を検出領域120にて1つ以上の励起光源からの励起光にさらし、検出領域120からの放射光を1つ以上の光検出器(図示せず)を用いて検出することによって行われる。キュベット102は、少なくとも一部が光学的に透明な材料から構成されて光の励起および検出を可能にする。図1は、2つの励起光源の使用を描いている。励起光源118は、レンズ116によって合焦される第1の光束を検出領域120内の第1の調査箇所にて試料流に対し発する。励起光源119は、レンズ116によって合焦される第2の光束を検出領域120内の第2の調査箇所にて試料流に対し発し、この第2の調査箇所は、ある距離122だけ第1の調査箇所の下流にある。第2の光束を調査箇所にて第1の光束と本質的に平行に向け直すため、反射鏡またはビームスプリッター117が用いられる。
【0038】
一般的に、それぞれ多数の励起光源に関し、多数の検出器(図示せず)が試料流の粒子から発せられる蛍光を検出するために存在し、それぞれの検出器は、規定した波長の範囲内の放射光を検出するように形成されている。加えて、追加の検出器が少なくとも1つの励起光源からの励起光を検出するために配され、これは励起光束に対して少ない角度で粒子により散乱される前方散乱光として呼称され、励起光束に対してほぼ直角に粒子により散乱される励起光は、側方散乱光として呼称される。フロー式粒子分析器にて用いるための適当な光検出器は、例えば光電子増倍管(PMT)やアバランシェフォトダイオード、フォトダイオードまたは他のあらゆる適当な光検出器具を含む。
【0039】
調査箇所の空間分離は、粒子が別々の異なる波長の励起光にそれぞれさらされることを可能にする。粒子がキュベット通路104を通って移動すると、これらは第1の調査箇所にて励起光源118からの励起光に最初にさらされる。次に、これらの粒子は第1の調査箇所を出てこれらが励起光源119からの励起光にさらされる第2の調査箇所へと移動する。これが第1の調査箇所から第2調査箇所へと移動するのに粒子がかかる時間は、ここでは「レーザー遅れ」として呼称される。
【0040】
このレーザー遅れは、第1の励起光にさらされた粒子の放射から得られる信号を第2の励起光にさらされた同じ粒子の放射からの信号と電子的に調和させるために用いられる重要なパラメーターであり、信号は同じ粒子が起源であるようにすべて取り扱われるようになっている。調査箇所間の所与の距離122に関するレーザー遅れは、キュベット通路104を通る流量に完全に依存する。少なくともこの理由のため、流動セルを通る流量を試料粒子の分析中には一定に維持すべきである。
【0041】
それぞれの調査箇所にて検出可能な試験粒子の試料を分析することによって、流動セルを通る流量を測定することができる。それぞれの粒子に関し、第1の励起光にさらされた粒子の放射から得られる信号と、第2の励起光にさらされた粒子の放射からの信号との間の時間が測定される。調査箇所間の距離122はこの機器の設計から知られているので、第1および第2の信号間の時間遅れは、検出領域120を通る流量の計算を可能にする。代わりに、規定した期間に亙って流動セルの下流の流体の累積を測定することにより、その流量を測定することができる。
【0042】
図2
図2は本発明の流体システムの構成部材の概略図を描いている。システムの真空度が真空ポンプ211によって創り出され、シース流体リザーバー202からのシース流体と、試料管201からの分析される粒子を含む試料流体とを流動セル100を通して引き込み、光学的分析が行われる(光学系を図示せず)。流動セルを出た試料流体およびシース流体の混合物である廃液が廃液リザーバー203へと排出される。
【0043】
一般的にダイヤフラム型ポンプである真空ポンプ211によって創り出される真空の脈動は、脈動減衰器としても呼称されるアキュムレーター255によって減衰される。このアキュムレーターは、真空ポンプの行程容積の何倍(例えば10倍から1000倍)もの内部容積を持つシールされたキャニスターであってよい。
【0044】
変換器231は、真空ポンプ211によって創り出される圧力低下を大気圧に対して測定する。この圧力低下をここでは「静圧低下」として呼称する。この静圧低下は、アキュムレーター255の内部から好ましくは測定され、安定した測定値が得られるようになっている。
【0045】
変換器231は通常、短い配管によってアキュムレーター255に結合され、この配管内の圧力がアキュムレーター内の圧力と等しくなっている。変換器231とアキュムレーター255とを接続する配管が変換器の近傍に配される空気抜き(例えば配管の内部を外気に接続する小径オリフィス)を含むことが望ましく、少量の空気がアキュムレーター内の真空によって引き込まれ、配管へと引き込まれてここを通ることを可能にする。配管を通る空気の流れが静圧低下の測定に対してほとんど影響を与えないように、この空気抜きを充分に小さくすべきである。オリフィス(変換器の近傍)からアキュムレーターの方に向けて配管を通るわずかな空気流は、アキュムレーターに存在するかも知れないどのような流体または泡が配管から変換器へと流入して測定値の精度に悪影響を与える可能性があることを阻止する。
【0046】
変換器232は、キュベット102を横切る圧力低下を測定する(流動セルの上流からアキュムレーター255まで測定される)。この圧力低下をここでは「動圧低下」として呼称される。所定の全体流量をキュベットに通すため、動圧低下は一定である。従って、真空ポンプ211の出力を調節して一定の動圧低下を与えることにより、キュベットを通る一定の全体流量を維持することができる。
【0047】
試料流体は、試料ライン220を通り、試料入口ポート108(図1に示す)を介して流動セル100へと引き込まれる。この試料通路の全体は流体抵抗R0を有する。
【0048】
シース流体は、可変抵抗流体抵抗器222を通り、シース流体入口ポート110(図1に示す)を介して流動セル100へと引き込まれる。好ましい一実施形態において、可変抵抗流体抵抗器の流体抵抗は、多数の別々な設定の流体抵抗に調整可能である。他の実施形態において、可変抵抗流体抵抗器の流体抵抗は、あらかじめ規定された範囲に亙って連続的に調整可能である。
【0049】
流動セル100へと引き込まれる試料流体とシース流体との相対的な割合は、試料ラインの流体抵抗R0と、可変抵抗流体抵抗器222の流体抵抗との割合に依存する。従って、可変抵抗流体抵抗器222の流動抵抗を調整することにより、シース流体に対する試料流体の割合を制御することができる。動圧低下を一定に維持することにより流動セルを通る全体の流量が一定に保持される場合、可変抵抗流体抵抗器222の有効な流体抵抗のそれぞれ低減は、試料流体の割合の減少およびシース流体の割合の増加を結果として生ずる。従って、可変抵抗流体抵抗器222の全体の流体抵抗を適切に調節することにより、一定の流量を流動セルに通しつつ望ましい試料の割合を選択することができる。
【0050】
弁253は、流動セルを通る流れを完全に止めることを可能にする。休止は、例えばそれぞれ試料の分析の後に新たな試料供給源に変更することを可能にする。本システムにおいて、流動セルとポンプとの間の流体通路に配された弁を閉じることにより、流体の流動を休止させることができる。この弁が閉じられている時、動圧低下はゼロまで低下し、この動圧低下とポンプとの間にある第1のフィードバックループが停止し、静圧低下とポンプとの間にある第2のフィードバックループが機能する。この第2のフィードバックループは、休止状態中の静圧低下を一定レベルに維持し、好ましくはこのシステムを休止する前の運転状態の間(第1のフィードバックループの制御を受けている間)にこのシステムに存在した静圧低下を維持することを可能にする。流動セルを通る流体の流動が再開すると、ポンプの制御が元の第1のフィードバックループへと切り替えられ、試料流量の変更後であっても流動セルを横切る一定の流れを維持することを可能にする。これらフィードバック制御回路間のこの切り替えは、運転状態と休止状態との間の移行中における真空度の大きな変動を排除すると共にすべての試料が一定の割合で流動セルを通ることを維持する。
【0051】
弁251は、シース流体の流れを完全に止めることを可能にする。弁251は、シース流体の流れを一時的に止めるため、また試料ライン220に対する試料管201の結合に追随する試料流体の流量を一時的に増大して(「増幅して」)試料流体を流動セル100に引き込むために要する時間を短くするために用いられる。試料流体が流動セルに達すると、弁251が開かれ、シース流体の流れが水力学的に集束した流れを作り、試料およびシース流体の流量が分析のための望ましい割合へと戻る。弁251および253は、相互に協調して好ましくは自動制御を受け、前記弁251を開く前に弁253があらかじめ設定された時間だけ開かれ、弁251を開く前の前記流動セルに創り出された真空度を可能にしよう。
【0052】
切り替え手段263を持つコントローラー261は、一定の動圧低下を与える真空ポンプ211の出力の調節と、一定の静圧低下を与える真空ポンプ211の出力の調節との間の切り替えを制御する。一定の動的低下を維持するため、コントローラーは変換器232により測定された動圧低下を記憶された望ましい動圧低下PDと比較する。この望ましい動圧低下PDは、流動セルを通る望ましい流量をもたらす動圧低下として、機器のセットアップ中に決定される。一定の静圧低下を維持するため、コントローラーは、変換器231によって測定された動圧低下を記憶された望ましい静圧低下PSと比較する。この望ましい静圧低下PSは、流動セルを通る望ましい流量で作動する機器に対応する測定された静圧低下であり、これは可変抵抗流体抵抗器の選択された設定に依存する。可変抵抗流体抵抗器のあらかじめ規定した抵抗の設定にそれぞれ対応する多数の望ましい静圧低下PSの値を記憶させておくことができる。代わりに、システムの休止直前に望ましい静圧低下PSを記憶させ、このシステムを休止する直前に作用していた可変抵抗流体抵抗器の同じ抵抗設定にてシステムを再起動させることができる。
【0053】
好ましくは、圧力低下フィードバック回路(コントローラー261を経由する)と弁251および253との自動制御が相互に協調してもたらされよう。
【0054】
フローセンサー235は試料ライン220に配されて試料流体の流量の直接的な測定をもたらす。毎分ナノリットルに至るまでの測定範囲を持つ適当な高精度の液体フローセンサーおよび液体流量計は、例えば Sensirion Inc.(カリフォルニア州 Westlake Village)から商業的に入手可能である。フローセンサー235は必須ではないが、流通システムのセットアップを容易にする。機器のセットアップ(システムの較正)中に可変抵抗流体抵抗器222の流体抵抗が調整されて試料流体に対するシース流体の望ましい割合を与え、フローセンサーは結果として生ずる試料流体の流量を独自に測定することをもたらす。代わりに、周知の濃度の試験粒子を含む試料を分析することによる如き、他の手段によって試料流体の流量を測定することができる。試験粒子の検出割合を測定することによって、試料ライン220における流量を推定することができる。
【0055】
図6を参照して以下に記述されるように、機器の較正中に試料流体の望ましい流量を得るため、可変抵抗流体抵抗器222の流体抵抗の調整を自動化させることができる。
【0056】
図3
図3は、個々に異なるレベルの流体抵抗を提供するように設計した可変抵抗流体抵抗器の一実施形態の概略図を描いている。この可変抵抗流体抵抗器内には、異なる流体抵抗をそれぞれもたらす多数の平行な流体通路があり、全体として可変抵抗流体抵抗器の他の全体の流体抵抗レベルは、この可変抵抗流体抵抗器を通して流すために使用することができる他の内部流体通路を選択することによって達成される。
【0057】
可変抵抗流体抵抗器320は、流体抵抗R1およびR2およびR2をそれぞれ与える内部流体通路321および322および323を含む。シース流体の流れに用いることができるこれら3つの平行な流体通路のどれを選択するかは、流体通路322を通る流れを制御する2方向弁355と、流体通路323を通る流れを制御する2方向弁356とによって制御される。流体通路321はシース流体を流すために常に開いている。可変抵抗流体抵抗器320の最大抵抗は、両方の弁356および355を閉じることにより選択される単一の流体通路321を通る流れによって与えられる。これら弁の一方または他方あるいは両方を開き、流体通路321と平行な少なくとも1つの流体通路を与えると、可変抵抗流体抵抗器320を通る全体の流体抵抗を減少させる。
【0058】
可変抵抗流体抵抗器320は3つの内部流体通路を含むけれども、規定した流体抵抗をそれぞれ持った多数の異なる平行な流体通路と、これら流体通路の選択を可能にするための弁とを用い、本質的に任意の数の個別レベルの流体抵抗を達成することができることは明確であろう。一般に、一連の平行なN個の抵抗を有する回路の等価抵抗は、以下のように、構成する平行通路の抵抗値に関係する。
【0059】
【数1】
【0060】
ここでRは回路の等価抵抗であり、それぞれRiは平行な通路Iの抵抗であり、合計はN個の平行な通路の全体に亙っている。
【0061】
弁356および355により規定される追加の流体通路のそれぞれに関し、内部流体通路321および322および323が分岐する箇所から、これら内部流体通路が再び接続する箇所まで、平行な回路を通る可変抵抗流体抵抗器320の等価抵抗を以下の表に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
可変抵抗流体抵抗器320の有効流体抵抗をそれぞれ低減することは、流動セルを通る試料流体の流れに対するシース流体の割合の増加を結果としてもたらす。流動セルを通る全体の流量が一定の動圧低下を維持することにより一定に保持されている場合、可変抵抗流体抵抗器320の有効流動抵抗のそれぞれの低減は、試料流体の流量の減少を結果として生ずる。従って、可変抵抗流体抵抗器の全体の流体抵抗を適切に調節することによって、望ましい試料流量を選択することができ、同時に流動セルを通る一定流量を維持する。
【0064】
シース流体リザーバー202から流動セル100(図2に示す)までの全体のシース流体通路は、抵抗R4を有するシース流体ライン324と、可変抵抗流体抵抗器320と、抵抗R5を有するシース流体ライン325とを含む。シース流体通路の全体の抵抗は、これら3つの部品の抵抗の合計、すなわちR4+R5+可変抵抗流体抵抗器320の抵抗である。一般的に、可変抵抗流体抵抗器320は、シース流体通路の全体の抵抗の大部分を与えよう。
【0065】
図4
図4aおよび図4bは、抵抗が連続的に可変である可変抵抗流体抵抗器の他の一実施形態の2つの概略図面を描いている。この実施形態において、流体抵抗の調節は、配管の長さを圧縮し、これによって内径を変更することにより達成される。
【0066】
シース流体ライン421は、臑動ポンプ配管の如き圧縮可能な配管である。シース流体ライン421の一部は、中央支柱464の周りに巻き付けられ、円筒状のベースハウジング460内に配されている。ベースハウジングの穴は、配管がつぶされることなくベースハウジングに入ると共に出ることを可能にする。円形の上板464がベースハウジングの上端開口の内側に配され、シース流体ライン421のコイルを収容する円筒状のキャビティーを形成するようになっている。上板462は、中央支柱464が上板を貫通して延在することを可能にする穴を含み、上板462がベースハウジングへと下方に滑動することができるようになっている。中央支柱の上端にはねじ山が切られ、ナット466がこの中央支柱の上端にねじ止めされている。ナットをねじ込むと、上板462がシース流体ライン421のコイルの上端を押し付けてシース流体ラインを圧縮し、その流体抵抗を増大させる。
【0067】
シース流体ライン421の流体抵抗は、連続的に可変であってナット466により加えられる力によって制御され、抵抗の変更に関して正確な制御が可能である。配管の径およびコイルの巻き数は、特定の用途に必要とされる範囲と制御とをもたらすように選択されよう。シース流体の流動通路は極めて単純であり、清掃のために容易に洗い流すことができ、細胞や粒子を捕捉する可能性がある内端縁や他の構造物を有していない。
【0068】
流体抵抗の遠隔制御をもたらすため、可変抵抗流体抵抗器の流体抵抗の調節を自動化させることができることは明らかであろう。
【0069】
図5
図5は、抵抗が連続的に可変である可変抵抗流体抵抗器の他の一実施形態の概略図を描いている。シース流体ライン521は、臑動ポンプ配管の如き圧縮可能な配管である。このシース流体ライン521は、入口ポート525を通る圧力による気体または流体で満たされるシールされた加圧タンク522を貫通する。タンク内の圧力変更がシース流体ラインを圧縮して流体抵抗を変更する。
【0070】
流体抵抗の遠隔制御をもたらすため、可変抵抗流体抵抗器の流体抵抗の調節を自動化させることができることは明らかであろう。
【0071】
図6
図6は、システム較正中に事前選択した試料流体の流量を取得するため、試料流体の流量を自動的に調整する自動化したフィードバック制御回路を描いている。連続的に可変の可変抵抗流体抵抗器622は、サーボ機構を用いた流体抵抗の調節を可能にするように形成されている。適当な可変抵抗流体抵抗器の例が図4に描かれているように、ナット466はサーボモーターを用いて調整されるか、または図5に描かれているように、サーボモーターの制御により圧力供給源を調節する。コントローラー661は、フローセンサー235によって測定された流量を記憶した望ましい流量FRと比較し、測定された流量がこの望ましい流量FRと合致するまで可変抵抗流体抵抗器622の流体抵抗を調節する。
【0072】
システム較正
一般に、本発明の真空駆動流体工学を含むフロー式粒子分析器の初期較正は、以下のステップを用いて行われることが好ましい。
【0073】
A.可変流体抵抗器の抵抗は、都合の良いあらゆる設定で設定される。流動セルを通る望ましい流量を維持するために必要とされる動圧低下は、連続的な可変流体抵抗の抵抗値に依存しないので、このステップにて用いられる抵抗の設定は重要ではない。
【0074】
B.流動セルを通る望ましい流量が得られそうな動圧低下を決定する。この動圧低下の値はフィードバック制御システム内に記憶され、一定の動圧低下を維持するために用いられる。
【0075】
C.望ましい試料流量を与えるために可変抵抗流体抵抗器が調整され、同時に動圧低下を維持する。この試料流量は、上述したように、試料流体ラインと直列の流量計によって測定されることが望ましい。個別の値の可変抵抗流体抵抗器を用いた実施形態において、望ましい試料流量のそれぞれを取得するためのそれぞれ個別の抵抗レベルに対する調整はステップ(C)にてなされる。好ましくは、それぞれの試料流量に対応する静圧低下は、このシステムの休止および再起動の際に使用するために記憶される。
【0076】
例えば、図3に描いたような個々の値の可変流体抵抗器を用いた場合、この可変抵抗流体抵抗器は、内部の流体通路321および322および323のための名目的に長い長さを持つ配管で最初に形成される。ステップ(C)における調整は、最初に閉じた弁356および355を用いて行われ、シース流体が流体通路321のみを通って移動するようになっている。これはシース流体に対する最も高い抵抗レベルを与え、これはシース流体に対する試料流体の最も高い割合、つまり試料流体の最多流量に対応する。流体通路321が例えば配管の長さを変更することにより、動圧低下を維持しつつ望ましい「高い」試料流量を得るように調整される。次に、シース流体が流体通路321および322を通って並列に移動するように、弁356を開く。これはシース流体に対して減少した抵抗レベルを与え、これは減少した試料流体の流量に対応する。流体通路322は、動圧低下を維持しつつ望ましい「中位」の試料流量を与えるように調整される。次に、シース流体が流体通路321および322および323を通って並列に流れるように、弁355を開く。これはシース流体に対してさらに減少した抵抗レベルを与え、これはさらに減少した試料の流体流量に対応する。流体通路323は、動圧低下を維持しつつ望ましい「低い」試料流量を与えるように調整される。上述したセットアップが3つの個別の流体抵抗レベルの設定を記述しているけれども、2つの弁の存在は、個別の流体の抵抗レベルを4つまで可能にすることが明白であろう。
【0077】
連続的に可変の可変抵抗流体抵抗器を用いた実施形態において、望ましい試料流量が好ましくは自動化された制御により得られるまで、動圧低下を維持しつつ抵抗レベルが調整される。例えば、連続的な個別の値と、可変抵抗流体抵抗器と、図6に描いたような制御フィードバック回路とを用い、望ましい流量が得られるまで、測定された試料流量に応じて抵抗が自動的に調節される。
【0078】
システムの休止および再起動
本発明の一形態は、フロー式流体分析器の真空駆動流体システムを休止するための改良された方法にあり、これは運転状態と休止状態との間の切り替え時に真空ポンプの出力レベルを一定に維持することを容易にする。弁253を閉じることによって、流動セルを通る流体の流れを止める(すなわち、システムを休止する)ことができる。ポンプ211によって引き込まれる真空の変動を回避するため、真空ポンプの制御が好ましくは静圧フィードバックループへと自動的に切り替えられ、静圧低下をこの流れを休止する直前に存在していた一定値に維持する。システムが休止すると、このシステムを稼働しつつ望ましい動圧低下を維持するために必要とされる真空ポンプの出力レベルを、対応する静圧低下(このシステムを休止する直前に測定される)に維持するために必要とされる出力レベルと等しくすべきである。この流動を休止する直前の静圧低下は、上述したような機器の較正時か、あるいは弁253を閉じる前の静圧低下を測定することにより、決定される。
【0079】
システムを再起動するために弁253が開かれ、真空ポンプ211が流動セルを通って真空を引き込むことを可能にする。真空ポンプの制御が好ましくは自動的に動圧フィードバックループへと切り替えられ、ポンプに対する出力が調整されて動圧低下をセットアップの際に決定した値に維持し、流動セルを通る望ましい流量を与える。
【0080】
このシステムは、試料管の交換を可能にするために定期的に休止されよう。再起動時には、新しい試料管からの試料流体が流動セルに達する前に試料流体ラインを通って引き込まれることが必要である。試料流体ラインが新たな試料管からの試料流体で満たされるまで試料の初期の流れを加速する(押し上げる)ことが望ましい。試料流体の最大流量は、弁251を閉じてシース流体の流れを絶つことにより達成される。システムを再起動させる場合、弁251を開く前に流動セル内に真空を得ることができるようにするため、この弁251を開く前に試料流体ラインの流量および容積に基づいてあらかじめ設定した時間だけ弁253を開き、これによって弁251を開く前に試料ラインを通って流動セルへと試料流体を引き込む。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6