(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771714
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置
(51)【国際特許分類】
B63B 11/04 20060101AFI20150813BHJP
B63J 2/02 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
B63B11/04 Z
B63J2/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-54866(P2014-54866)
(22)【出願日】2014年3月18日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】三好 泰介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄作
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−038828(JP,A)
【文献】
特開2009−179500(JP,A)
【文献】
特開2002−234487(JP,A)
【文献】
特開2000−103395(JP,A)
【文献】
特開昭56−002284(JP,A)
【文献】
特開昭54−053491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 11/04
B63B 43/08
B63J 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属状態のアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びこれに反応するアルカリ金属イオンを含むセメントコンクリート細骨材を使用するコンクリート製固定バラストが船底の閉囲されたタンク内に収容して搭載される船舶において、前記固定バラストが搭載される前記閉囲されたタンクに船外に開放する空気抜き管を設けたことを特徴とする船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項2】
細骨材として粗粒ダストを使用することを特徴とする請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項3】
前記固定バラスト区画には、圧縮空気又は加圧窒素ガスを送り込む換気用送気口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項4】
前記空気抜き管には、所定のセット圧以上で空気を船外に排出する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項5】
前記逆止弁のセット圧が大気圧に対して0.02kg/cm2以上であることを特徴とする請求項4に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項6】
前記固定バラスト区画には、当該固定バラスト区画の内圧及び/又は内部気体の水素ガス濃度又は酸素濃度の検査が可能な圧力計座付サンプリング弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【請求項7】
前記固定バラスト区画には、当該固定バラスト区画の内圧及び/又は内部気体の水素ガス濃度又は酸素濃度を常時検知する検出器を設け、当該検出器出力に応じて当該固定バラスト区画内への圧縮空気又は窒素ガスの送り込みを制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、特に、自動車運搬船は、小型乗用車(RT43L:業界用語)、大型乗用車(STcar)およびRV(Recreational Vehicle)車ならびに所定の車両甲板に大型バスおよび特殊なダンプトラックなどをドライブオン(Drive−on=自走積込)し、積荷貨物の重心制御により姿勢制御を行い輸送している。このような自動車運搬船で運搬する車両は、船舶で輸送する貨物の内、非常に軽い(見掛け比重が小さい)ものであり、例えば、水は1[m
3]=1000[kg]に対し、中型乗用車は1台当たりの重量が1000[kg]であるが、積荷容積からいうと約15〜17[m
3]を必要とする。よって、1[m
3]当たりに約60〜70[kg]程度の貨物となり、自動車運搬船は、タンカーなどと比べ大きな貨物容積を必要とする船舶であるといえる。
【0003】
このように自動車運搬船は、大きな貨物容積を必要とする船舶であり、このことは、船の長さL、船の幅Bおよび船の深さDの適正な寸法により、貨物容積が決まることを意味している。また、自動車運搬船のバラスト航海時に効率的な運航をするために使用していた水バラストのかわりに重量コンクリートを用いた固定バラストを搭載する船も現れてきている。
【0004】
固定バラストに関する技術として、例えば、本願出願人は、既に、特開2004-161254号公報に開示の発明を提案している。
当該特開2004-161254号公報に開示の発明は、発明名称「自動車専用運搬船およびそのバラストの制御方法」に係り、「水バラストを使わなくとも、輸送能力の向上に伴ない、通常の航海であれば、充分な喫水が確保でき、船舶の安全な航海ができ、人体に影響する環境保全とそれに絡む経済性などの向上を図ろうとすること」ことを目的とする発明解決課題において(同公報明細書段落番号0011参照)、「車両甲板を備えかつ船底部を水密区画で区分し、前記船底部に燃料および水バラストを積載可能にしてなる自動車運搬船において、前記船底部の所要の個所に、本船載貨重量の多くとも22%の重量からなる固定バラストを搭載し、満載航海およびバラスト航海時にノン水バラストで航海可能としてなる」構成とすることにより(同公報明細書特許請求の範囲請求項1等の記載参照)、「通常の積載航海およびバラスト航海時に復原性が確保でき、安全な航海ができる」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0013〜0017参照)。
【0005】
図4は、当該特開2004-161254号公報に
図1として記載される開示発明の第1の実施例に係る自動車専用運搬船を側面から略示した図である。
図4において、101は、自動車専用運搬船、102は、車両甲板(No.1〜No.13)、103は、ランプウェイ、104は、機関室、105は、固定バラスト、符号a,b,c,…,jは、水密区画である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)。
本願出願人が当該特開2004-161254号公報において提案し、その後建造した固定バラストを有する自動車専用運搬船においては、固定バラストとして重量コンクリートを使用し、当該固定バラストを閉囲されたタンク内に収容して搭載していた。
【0006】
図5は、自動車専用運搬船の船底の閉囲されたタンク内に収容して搭載される固定バラストを模式的に示す概略図である。
図5において、105は、前記固定バラスト、106は、前記水密区画a,b,c,…,jである閉囲タンク、107は、前記閉囲タンク106内に収容搭載された前記固定バラスト105の上方の気相部である。
【0007】
本願出願人が当該特開2004-161254号公報において提案した固定バラストを有する自動車専用運搬船は、提案後実際に建造され、就航したのであるが、就航後の数年を経たのちに船主から当該自動車専用運搬船の前記閉囲タンク106が膨張して損傷が発生するという連絡を受けた。
そこで、種々原因を検討しているうちに、本願出願人が当該特開2004-161254号公報において提案し、その後建造した固定バラストを有する自動車専用運搬船においては、固定バラストとして重量コンクリートを使用するものであることが判明し、さらに検討を重ねるうちに、前記固定バラスト105として使用されている重量コンクリートの細骨材中に含まれる金属Al、Znが、コンクリートによるアルカリ溶液と反応して水素ガスが発生し、この発生した水素ガスが前記閉囲タンク106の膨張及び損傷の原因であることが判明した。
【0008】
図6は、自動車専用運搬船の船底の前記閉囲タンク106内に搭載されるコンクリート製の前記固定バラスト105のコンクリート成分の粗粒ダスト中のAl、Zn等の金属類がコンクリートアルカリ溶液と反応し、水素ガスを発生させ、その圧力で前記閉囲タンク106を膨張させ、損傷を発生させる概略を模式的に示す図である。
図6において、105〜107は、前述した前記固定バラスト105、前記閉囲タンク106、気相部107であり、108は、タンク損傷箇所を示している。
ちなみに、本願出願人が当該特開2004-161254号公報において提案し、その後の建造当時においては、重量コンクリートからなる固定バラストから水素ガスが発生するなどということは全く不知であったため、固定バラスト区画である前記閉囲タンク106をそれまでのバラストタンクの例に倣い密閉としていたものである。
【0009】
本願出願人は、上記の知見から、重量コンクリート製の前記固定バラスト105を搭載する自動車専用運搬船においては、コンクリートによる固定バラストとして、粗粒ダストを使用することは避け、もし、仮に粗粒ダストを使用するコンクリートによる固定バラスト105の場合には、密閉する前記閉囲タンク106とするのではなく、むしろ開放型タンク内に搭載することとし、さらに、発生が避けられない水素ガスを船外に逃がす船舶における固定バラストの空気抜き装置を案出するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-161254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、上述した新しい知見に基づき、粗粒ダストを使用するコンクリート製固定バラストから発生する水素ガスによる固定バラスト区画の膨張および膨張後のクラック発生による水素漏れに伴う爆発の危険性をなくす船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、
金属状態のアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びこれに反応するアルカリ金属イオンを含むセメントコンクリート細骨材を使用するコンクリート製固定バラスト
が船底の閉囲されたタンク内に収容して搭載される船舶において、前記固定バラスト
が搭載
される
前記閉囲されたタンクに船外に開放する空気抜き管を設けたことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、細骨材として粗粒ダストを使用することを特徴とする。
そして、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、前記固定バラスト区画には、圧縮空気又は加圧窒素ガスを送り込む換気用送気口を設けたことを特徴とする。
さらに、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、前記空気抜き管には、所定のセット圧以上で空気を船外に排出する逆止弁を設けたことを特徴とする。
また、本願請求項5に係る発明は、前記請求項4に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、前記逆止弁のセット圧が大気圧に対して0.02kg/cm
2以上であることを特徴とする。
また、本願請求項6に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、前記固定バラスト区画には、当該固定バラスト区画の内圧及び/又は内部気体の水素ガス濃度又は酸素濃度の検査が可能な圧力計座付サンプリング弁を設けたことを特徴とする。
そして、本願請求項7に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置において、前記固定バラスト区画には、当該固定バラスト区画の内圧及び/又は内部気体の水素ガス濃度又は酸素濃度を常時検知する検出器を設け、当該検出器出力に応じて当該固定バラスト区画内への圧縮空気又は窒素ガスの送り込みを制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
(1)固定バラストから水素が発生しても船外へ排出することが可能となり、固定バラスト区画が膨張し、固定バラスト区画に損傷が発生する危険がなくなるという効果を有する。
(2)また、固定バラスト区画に損傷が発生するという危険がなくなることにより、固定バラスト区画から船内へ水素が漏れるという危険がなくなるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1bの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cの概略図である。
【
図4】
図4は、当該特開2004-161254号公報に
図1として記載される開示発明の第1の実施例に係る自動車専用運搬船を側面から略示した図である。
【
図5】
図5は、自動車専用運搬船の船底の閉囲されたタンク内に収容して搭載される固定バラストを模式的に示す概略図である。
【
図6】
図6は、自動車専用運搬船の船底の前記閉囲タンク106内に搭載される前記固定バラスト105のコンクリート成分の粗粒ダスト中のAl、Zn等の金属類がコンクリートアルカリ溶液と反応し、水素ガスを発生させ、その圧力で前記閉囲タンク106を膨張させ、損傷を発生させる概略を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
船舶の固定バラストとして使用される重量コンクリート製の固定バラストは、細骨材として粗粒ダストを使用するためにコンクリートのアルカリ骨材反応により水素ガスの発生が避けられない。ここに「粗粒ダスト」とは、製鉄所の転炉で発生する残滓をいい、粗粒ダストには、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)が金属状態にて数十〜数千ppm含まれており、このAlやZnにセメントコンクリート中のアルカリ金属イオンが反応し(いわゆる「アルカリ骨材反応」)、このため水素ガスが発生し、固定バラスト区画が膨張、破損するおそれがある。
【0017】
すなわち、発生する水素ガスは、一般的に空気中で4〜75vol%又は酸素中で4〜94vol%に達すると爆発の危険があることが知られている。このため、発生する水素ガスが酸素を含む空気と接触することは避けなければならない。
このため本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置では、以下の各実施例に示すように、大別すると、(1)自然換気により、又は(2)強制換気により、固定バラスト区画で発生する水素ガスを船外に排出されるようにしたものである。すなわち、前記固定バラスト区画に、船外に水素ガスを排出する空気抜き管を設けて換気を行わしめ、さらには、前記固定バラスト区画に強制的に空気や窒素ガスを送り込み、又は、逆流を防止して、発生する水素ガスを船内に滞留させることなく空気と共に外部に排出するようにして固定バラスト区画の膨張を避け、また、固定バラスト区画内で発生する濃度の高い水素ガスが酸素と接触するのを避けるようにしたものである。
【0018】
以下、図面に基づき、各実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
(自然換気の実施例)
図1は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aの概略図である。
図1において、符号1aは、本実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置、2は、自動車運搬船、3は、船側外板、4は、船底外板、5は、固定バラスト、6は、固定バラスト区画、7は、気相部であり、これら5〜7は、いずれも
図5、
図6において、前記固定バラスト105、前記閉囲タンク106及び前記気相部107として説明したものと同じものであり、9は、空気抜き管、10は、空気抜き管頭金物、11は、圧力計座付サンプリング弁、12は、換気用送気口、13は、喫水である。
【0020】
本実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aは、
図1から明らかなように、前記固定バラスト区画6に前記船側外板3近くにまで延設され、船外に発生する水素ガスを排出する前記空気抜き管9を設けたものである。そして、当該空気抜き管9は、前記固定バラスト区画6の天井開口部又はその近傍に設けられ、かつ、前記換気用送気口12は、前記固定バラスト区画6の前記気相部7の底部に設けられ、船外外気を取り込み可能に構成される。
【0021】
本実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aでは、発生する水素ガスは、前記固定バラスト区画6の前記気相部7の上部に滞留するが、前記固定バラスト区画6の天井部開口又はその近傍に前記空気抜き管9が設けられているので、空気より軽い水素ガスは、前記空気抜き管9及び前記空気抜き管頭金物10を通じて船外に排出される。
また、前記固定バラスト区画6の前記気相部7の底部付近には船外から外気を取り込み可能に構成される前記換気用送気口12が設けられているので、空気より軽い水素ガスが上昇して前記空気抜き管9を通って船外に排出されるに伴って当該換気用送気口12から外気が吸引され、前記気相部7の換気(自然換気)が達成される。
【実施例2】
【0022】
(強制換気1の実施例)
次に、前記固定バラスト区画6内を強制的に関する実施例2、実施例3について説明する。
図2は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1bの概略図である。
図2において、符号1bは、本実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置であり、その余の符号2〜7及び9〜13は、
図1に示す実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aと同じ自動車運搬船2、船側外板3、船底外板4、固定バラスト5、固定バラスト区画6、気相部7、空気抜き管9、空気抜き管頭金物10、圧力計座付サンプリング弁11、換気用送気口12、喫水13である。本実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1bでは、前記換気用送気口12に送風ファン8aが設けられる点で前記実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aと異なる。すなわち、本実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1bでは、前記換気用送気口12に空気を送り込む送風ファン8aを設け、常時又は所定時間間隔で駆動させ、前記固定バラスト区画6の前記気相部7を強制的に換気する。
【0023】
さらには、
図2に示すように、前記固定バラスト区画6内の雰囲気を確認するための前記圧力計座付サンプリング弁11を設け、当該確認結果により、水素ガス濃度が上述する空気中で4〜75vol%又は酸素中で4〜94vol%の範囲を超えたときに前記送風ファン8aを駆動するようにしてもよい。
【実施例3】
【0024】
(強制換気2の実施例)
図3は、本発明に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を実施するための実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cの概略図である。
図3において、符号は、実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1a、実施例2に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1bと同じであるが、前記空気抜き管9と前記固定バラスト区画6との間に逆止弁8bを設けている。
【0025】
本実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cでは、前記送風ファン8aから送風する前記換気用送気口12を設けると共に、前記固定バラスト区画6に船外に開放する前記空気抜き管9を設け、当該空気抜き管9に前記逆止弁8を設けるので、前記固定バラスト区画6から排出された水素ガスは当該固定バラスト区画6に逆流することがなくなる。
この場合にも、前記固定バラスト区画6内の雰囲気を確認するための前記圧力計座付サンプリング弁11を設け、水素ガス濃度に応じた送風ファン8aの駆動制御をするようにする。すなわち、本実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cでは、前記逆止弁8を設け、発生する水素ガスを送風された空気と共に船外に排出するようにすると共に、当該空気抜き管9から前記気相部7へ酸素と水素ガスが混在した空気が逆流することがないようにして、水素ガスが前記固定バラスト区画6内に滞留することや、酸素を含む空気と混ざり合うことが生じないようにした。つまり、この点からも本実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cでは、前記固定バラスト区画6の水素ガスの爆発雰囲気を回避することができ、前記固定バラスト区画6の膨張を避けることができる。したがって、逆流防止の圧力差は僅かな圧力差で充分である。
【0026】
なお、本実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cでは、前記送風ファン8aからの空気を送風するようにしたが、これは、前記換気用送気口12に接続されるコンプレッサー(図示外)で所定圧に加圧されたタンクまたはボンベ等に蓄えられ、当該加圧タンク又はボンベから常時または所定の時間間隔で送り込まれるようにしても良い。
また、本実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1cでは、前記逆止弁8bは、単なる逆流を防止するというよりも、当該逆止弁8のセット圧を大気圧(1気圧)に対し、常に約0.02kg/cm
2以上に設定するようにする一方、常時所定圧の圧縮空気が送り込まれるようにして、前記固定バラスト区画6内の内圧が前記セット圧を越えた場合に、所定圧に加圧された圧縮空気が前記換気用送気口12から送り込まれるようにしても良い。このセット値は、1百立米程度の前記バラスト区画6において、その5%程度の前記気相部7容積(およそ5立米程度)に対して、前記固定バラスト5から発生する水素の上昇圧力を利用する水素換気としては、大気圧(1気圧)に対し、少なくとも約0.02kg/cm
2以上となった場合に換気されるように設定されれば、無駄な空気が繰り込まれる必要もなく、水素換気上効率が良いものとなる。
【実施例4】
【0027】
(水素ガスと酸素の接触回避の実施例)
さらに、図示はしないが、本実施例4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1dとして、前記換気用送気口12に前述の圧縮された空気を送り込む所定圧のタンク又はボンベに替え、所定圧で窒素ガスが封入された窒素ボンベ(図示外)を接続し、当該窒素ボンベから窒素ガスを前記固定バラスト区画6に送り込むことにより、前記固定バラスト区画6内での水素ガスと酸素を含む空気との接触を避けるようにしても良い。すなわち、本実施例4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1dでは、前記固定バラスト区画6内に水素ガスが存在しても無酸素状態では引火や爆発の危険はないので、前記固定バラスト区画6内を強制的に無酸素状態とするようにしたものである。
【0028】
この場合、前記換気用送気口12は、常時「開」状態とし、前記逆止弁8のセット圧により窒素ガス流入を調節する。なお、窒素ガスは窒素ボンベの内圧がそのまま放出されるのではなく、所定の減圧装置を介在させて、所定の窒素ガス流入量が調節されるようにしても良いものである。つまり、前記固定バラスト5から水素ガスが発生しても、外部から常に窒素ガスが送り込まれるようにして、引火や爆発を防ぐと共に、前記固定バラスト区画6の前記気相部7の圧力上昇に対しては、常に内圧を維持するように設定された前記逆止弁8により、その上昇圧力をリリーフすることにより、前記固定バラスト区画6の膨張による損傷を防ぐようにしたものである。
【0029】
さらに、本実施例4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1dでは、前記窒素ボンベ(図示外)に接続される前記換気用送気口12常時は「閉」状態とし、前記固定バラスト区画6内の雰囲気を確認する前記圧力計座付サンプリング弁11を設け、当該圧力計座付サンプリング弁11から直接にサンプル気体を抜き出し、抜き出したサンプル気体の成分調査を行い、気体内の水素ガス濃度及び/又は酸素濃度割合が上記の空気中で4〜75vol%又は酸素中で4〜94vol%の範囲を超えるような場合には、常時は「閉」状態とする前記換気用送気口12を「開」状態として、接続される窒素ガスボンベ(図示外)から所定圧の圧縮空気又は窒素ガスを前記固定バラスト区画6に封入することにより、前記固定バラスト区画6の前記気相部7内に残っている水素ガスや酸素を含む空気を当該気相部7から船外に排出すると共に、前記気相部7を窒素ガスで満たし、水素ガスと酸素の接触を回避するようにしても良い。
【0030】
このようにすることにより、本実施例4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1dでは、前記固定バラスト5から水素ガスが発生しても前記気相部7に水素ガスがない又は酸素濃度が低い空気しか存在しない状態とし、船内に水素ガスが滞留することを避けることができることとなる(水素ガスと窒素ガスが混合しても爆発の恐れはない。)。
【0031】
なお、本実施例4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1dでは、上述するように、前記換気用送気口12を常時は「閉」状態とし、前記圧力計座付サンプリング弁11から作業員がサンプル気体を採取し、所定の検査を行った上で、水素ガス濃度が空気中で4〜75vol%、酸素中で4〜94vol%に達するような場合には、作業員が前記換気用送気口12を「開」状態として窒素ガスを前記固定バラスト区画6内に送り込むようにしてもよいが、これは、前記圧力計座付サンプリング弁11に替えて、水素ガス濃度及び/又は酸素濃度を常時検知する検出器をを設け、当該検出器出力に応じて前記換気用送気口12の開閉を制御するようにしても良い。これは、前記実施例2及び実施例3に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1b、1cでも同じく前記検出器を設け、検出器出力に応じて前記換気用送気口12の開閉を制御するようにしても良い。
【0032】
また、本実施例1ないし4に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置1aから1dでは、前記空気抜き管頭金物10は、船内の船側外板近傍の甲板上に設けられるが、これは、甲板上に限るものではなく、前記喫水13上部の前記船側外板3の適宜の位置に設けても良い。これは、水素ガスを外部に逃す前記空気抜き管9の距離を短くして、水素ガスが船舶内に残る距離を短くして、その分危険を回避するためである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、自動車運搬船のような船舶において、粗粒ダストを細骨材として使用する重量コンクリート製固定バラストを搭載する固定バラスト区画の空気抜き装置に利用される。
【符号の説明】
【0034】
1a、1b、1c、1d 本実施例1に係る船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置
2 自動車運搬船
3 船側外板
4 船底外板
5 固定バラスト
6 固定バラスト区画
7 気相部
8a 送風ファン
8b 逆止弁
9 空気抜き管
10 空気抜き管頭金物
11 圧力計座付サンプリング弁
12 換気用送気口
13 喫水
101 自動車専用運搬船
102 車両甲板(No.1〜No.13)
103 ランプウェイ
104 機関室
105 固定バラスト
106 閉囲タンク
107 気相部
108 タンク損傷箇所
a,b,c,…,j 水密区画
【要約】 (修正有)
【課題】粗粒ダストを使用するコンクリート製固定バラストから発生する水素による固定バラスト区画の膨張および膨張後のクラック発生による水素漏れに伴う爆発の危険性をなくす船舶の固定バラスト区画の空気抜き装置を提供する。
【解決手段】粗粒ダストを使用するコンクリート製固定バラスト5を有する船舶において、前記固定バラスト搭載する固定バラスト区画6に船外に開放する空気抜き管9を設けた。また、細骨材として粗粒ダストを使用することを特徴とする。
【選択図】
図1