特許第5771725号(P5771725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許5771725-DC−DCコンバータ 図000002
  • 特許5771725-DC−DCコンバータ 図000003
  • 特許5771725-DC−DCコンバータ 図000004
  • 特許5771725-DC−DCコンバータ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771725
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】DC−DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   H02M3/28 Y
   H02M3/28 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-106904(P2014-106904)
(22)【出願日】2014年5月23日
(62)【分割の表示】特願2012-153746(P2012-153746)の分割
【原出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-147295(P2014-147295A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 正道
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−050160(JP,A)
【文献】 特開2009−254118(JP,A)
【文献】 特開2002−208521(JP,A)
【文献】 特開2002−165453(JP,A)
【文献】 特開2004−304906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル(21)及び二次コイル(22)を備えたトランス(2)と、
上記二次コイル(22)に接続された整流回路部(3)と、
該整流回路部(3)に接続されたチョークコイル(12)と、
上記トランス(2)、上記整流回路部(3)及び上記チョークコイル(12)を搭載するベースプレート(4)とを有するDC−DCコンバータ(1)であって、
上記整流回路部(3)と上記チョークコイル(12)とは、上記ベースプレート(4)の法線方向に並ぶように積層された積層体(13)を構成しており、
上記トランス(2)と上記整流回路部(3)とを繋ぐ第1バスバー(141)と、上記整流回路部(3)と上記チョークコイル(12)とを繋ぐ第2バスバー(142)とは、上記積層体(13)を挟んで互いに反対側に配置されており、
上記チョークコイル(12)は、磁性体からなるコアを有することを特徴とするDC−DCコンバータ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のDC−DCコンバータ(1)において、上記チョークコイル(12)の出力側に接続された第3バスバー(143)と、上記第2バスバー(142)とは、上記積層体(13)における同じ側から引き出されており、上記第1バスバー(141)と、上記第2バスバー(142)および上記第3バスバー(143)とは、上記積層体(13)を挟んで互いに反対側に配置されていることを特徴とするDC−DCコンバータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスと整流回路部とこれらを搭載するベースプレートとを有するDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータにおいて、トランスの二次コイルには、出力電流を整流する整流回路部が接続されている。この整流回路部から放射される電磁ノイズが、DC−DCコンバータにおける他の電子部品や、DC−DCコンバータの周囲の部品に対して影響を与えることを防ぐために、整流回路部(ダイオードモジュール)を覆うように導体(接地用ブスバー)を配置したDC−DCコンバータが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の構成において、上記導体は銅製である。つまり、上記導体は、ブスバーであって、その主の役割は大電流を流すことであるため、導電率が高い銅が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−324839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成において、整流回路部を覆う銅は非磁性体であるため、高周波の電磁ノイズを遮蔽する効果はあっても、比較的低周波の電磁ノイズを遮蔽する効果が小さいという問題がある。したがって、整流回路部を覆うようにブスバーを配置した構成では、整流回路部から放射される電磁ノイズのうち、比較的低周波の電磁ノイズを遮蔽することが困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、整流回路部から放射される電磁ノイズのうち、比較的低周波の電磁ノイズを抑制することができるDC−DCコンバータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一次コイル及び二次コイルを備えたトランスと、
上記二次コイルに接続された整流回路部と、
該整流回路部に接続されたチョークコイルと、
上記トランス、上記整流回路部及び上記チョークコイルを搭載するベースプレートとを有するDC−DCコンバータであって、
上記整流回路部と上記チョークコイルとは、上記ベースプレートの法線方向に並ぶように積層された積層体を構成しており、
上記トランスと上記整流回路部とを繋ぐ第1バスバーと、上記整流回路部と上記チョークコイルとを繋ぐ第2バスバーとは、上記積層体を挟んで互いに反対側に配置されており、
上記チョークコイルは、磁性体からなるコアを有することを特徴とするDC−DCコンバータにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記DC−DCコンバータにおいては、上記チョークコイルが、上記整流回路部に対して、上記ベースプレートの法線方向に並ぶように積層配置されている。これにより、上記整流回路部からベースプレートの法線方向へ放射される電磁ノイズを、上記チョークコイルによって遮蔽することができる。特に、チョークコイルのコアは、比較的低周波のノイズを遮蔽することができる。それゆえ、上記チョークコイルが整流回路部に積層配置されていることにより、比較的低周波の電磁ノイズが、DC−DCコンバータにおける他の部品やDC−DCコンバータの周囲の部品に対して影響を与えることを抑制することができる。
【0008】
以上のごとく、本発明によれば、整流回路部から放射される電磁ノイズのうち、比較的低周波の電磁ノイズを抑制することができるDC−DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、DC−DCコンバータの一部の断面説明図。
図2】実施例1における、積層方向から見た整流回路部と台座の説明図。
図3】実施例1における、DC−DCコンバータの回路図。
図4】実施例1における、トランスを含めたDC−DCコンバータの一部の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記チョークコイルのコアは、上記整流回路部の全体を覆うように形成されていることが好ましいが、少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。また、上記チョークコイルのコアは、例えばフェライト、鉄等からなり、その形状は特に限定されるものではない。
【0011】
また、上記ベースプレートは導体からなることが好ましい。この場合には、上記ベースプレート側から上記整流回路部の電磁ノイズが放射されることをも抑制することができる。これにより、DC−DCコンバータに対してベースプレート側に隣接する部品に、電磁ノイズが影響することをも防ぐことができる。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
上記DC−DCコンバータの実施例につき、図1図4を用いて説明する。
本例のDC−DCコンバータ1は、図1図3図4に示すごとく、一次コイル21及び二次コイル22を備えたトランス2と、二次コイル22に接続された整流回路部3と、トランス2及び整流回路部3を搭載するベースプレート4とを有する。
【0013】
また、図1に示すごとく、DC−DCコンバータ1は、整流回路部3をベースプレート4と反対側から覆うように配置された磁性体5と、ベースプレート4に固定されると共に磁性体5を整流回路部3側から支承する台座6とを備えている。
台座6は、導体からなると共に、図2に示すごとく、ベースプレート4と整流回路部3と磁性体5との積層方向から見て環状となる形状を有する。
【0014】
磁性体5は、コンバータ回路の一部を構成する磁気部品のコアであり、後述するチョークコイル12のコアである。このチョークコイル12のコアである磁性体5は、フェライトからなる。磁性体5は、ベースプレート4と反対側から整流回路部3の全体を覆うように配置されている。つまり、整流回路部3とチョークコイル12とは、ベースプレート4の法線方向に並ぶように積層された積層体13を構成している。
【0015】
また、ベースプレート4は導体からなる。本例においては、ベースプレート4は、例えばアルミニウム等の金属からなり、DC−DCコンバータ1の構成部品を収容するケースの一部を構成している。すなわち、例えば、アルミニウム製のケースの底板部として、上記ベースプレート4が構成されている。そして、ベースプレート4に設けられた支承部41に台座6が固定されている。
【0016】
台座6は、ベースプレート4と接続されて接地されている。ベースプレート4は、主面方向から見たとき、図2に示すごとく、長方形の外周輪郭62及び内周輪郭61を有する環状形状となっている。例えば、台座6は、長方形の金属板の内側を長方形にくり抜くことにより形成されている。また、図1に示すごとく、台座6の外周部には、屈曲部63を設けてある。これにより、台座6が支承する磁性体5(チョークコイル12)に対する台座6の耐荷重強度を向上させている。なお、屈曲部63は、台座6の外周輪郭62の全周にわたって形成されていることが好ましい。
【0017】
整流回路部3は、図3に示すごとく、複数のダイオード31からなる。そして、整流回路部3は、複数のダイオード31を樹脂封止してモジュール化したダイオードモジュールを構成している。このダイオードモジュールである整流回路部3は、略直方体形状を有し、図1図4に示すごとく、その最も面積の広い面である一対の主面32のうちの一方をベースプレート4に接触させた状態で、ベースプレート4に搭載されている。整流回路部3は、熱伝導性を有する接着剤を介在させて、ベースプレート4に搭載されていてもよい。
【0018】
また、ダイオードモジュール(整流回路部3)中において、複数のダイオード31は、主面32と平行な方向に並んで配置されている。そして、ダイオードモジュールの2本の入力側端子(アノード側端子)が、トランス2の二次コイル22と接続されることにより、ダイオードモジュールの中に、整流回路部3の主面32に略平行な一つの電流ループが形成される。この電流ループから、主面32と直交する方向、すなわち上記積層方向に、電磁ノイズが放射されることとなる。
【0019】
また、図4に示すごとく、トランス2も、ベースプレート4に搭載されている。そして、トランス2におけるセンタータップ221は、ベースプレート4に設けたボス42に接触すると共に締結されている。これにより、トランス2の放熱性を高めることもできる。
【0020】
また、トランス2と上記整流回路部3とを繋ぐ第1バスバー141と、整流回路部3とチョークコイル12とを繋ぐ第2バスバー142とは、積層体13を挟んで互いに反対側に配置されている。また、チョークコイル12の出力側に接続された第3バスバー143と、第2バスバー142とは、積層体13における同じ側から引き出されている。そして、第1バスバー141と、第2バスバー142および第3バスバー143とは、積層体13を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0021】
整流回路部3は、図2に示すごとく、積層方向から見たとき、台座6における環状形状の内周輪郭61の内側に納まっている。台座6の内周輪郭61は、整流回路部3(ダイオードモジュール)の外形よりも大きく形成され、積層方向から見た状態において、内周輪郭61の内側に、整流回路部3が配置された状態となっている。
ただし、台座6の内周輪郭61と整流回路部3の外形との大小関係や位置関係は、特にこれに限定されるものではない。また、台座6の形状は、環状であれば、特に限定されるものではなく、円環状、楕円環状、その他の形状とすることもできる。
【0022】
DC−DCコンバータ1は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、入力側電源7としての駆動用バッテリーの電圧を降圧して、出力側電源としての補機用バッテリーを充電できるよう構成することができる。そして、図3に示すごとく、DC−DCコンバータ1は、入力側電源7から入力される直流電力を交流に変換するスイッチング回路部11を有し、スイッチング回路部11がトランス2の一次コイル21に接続されている。また、トランス2の二次コイル22側に接続された整流回路部3は、一対のダイオード31を備えている。本例のDC−DCコンバータ1は、ハーフブリッジ型であり、二次コイル22のセンタータップ221は、ベースプレート4に電気的に接続されて、接地されている。
【0023】
また、整流回路部3の出力側にはチョークコイル12が接続されている。これにより、出力電圧を平滑化して、出力線を介してノイズ電流が漏洩することを防いでいる。そして、本例においては、このチョークコイル12のコアが、整流回路部3を覆うように配置された磁性体5である。
【0024】
なお、DC−DCコンバータ1は、特にハーフブリッジ型に限らず、フルブリッジ型、フォワード型等とすることもでき、これに応じて、整流回路部3におけるダイオード31の配線等も種々の形を採り得る。また、本例においては、ダイオード整流型のDC−DCコンバータを示したが、同期整流型のDC−DCコンバータとすることもでき、この場合、整流回路部3は、ダイオード31に代えて例えばMOSFETによって構成することができる。
【0025】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記DC−DCコンバータ1においては、磁性体5が、整流回路部3をベースプレート4と反対側から覆うように配置されている。これにより、整流回路部3からベースプレート4と反対側へ放射される電磁ノイズを、磁性体5によって遮蔽することができる。特に、磁性体5は、比較的低周波のノイズを遮蔽することができる。それゆえ、磁性体5が整流回路部3を覆うように配置されていることにより、比較的低周波の電磁ノイズが、DC−DCコンバータ1における他の部品やDC−DCコンバータ1の周囲の部品に対して影響を与えることを抑制することができる。
【0026】
また、DC−DCコンバータ1は、磁性体5を整流回路部3側から支承する台座6を備えている。それゆえ、台座6は、整流回路部3に対して、ベースプレート4と反対側に配置されることとなる。そして、台座6は導体からなる。これにより、整流回路部3から放射される電磁ノイズを、台座6によって遮蔽することができる。つまり、整流回路部3から放射される磁束(放射磁束)が導体からなる台座6と鎖交することにより、台座6に、放射磁束を打ち消す方向に渦電流が流れる。これにより、整流回路部3から放射される電磁ノイズを抑制することができる。
【0027】
しかも、台座6には磁性体5が搭載されているため、台座6に流れる渦電流による磁束の発生が促進される。それゆえ、より効果的に放射磁束を打ち消すことができる。
また、台座6は、積層方向から見て環状に形成されている。そのため、放射磁束が鎖交したときに生じる渦電流は、この環状の台座6に沿って環状に流れる。それゆえ、環状形状の内側部分がくり抜かれた形状となっている分、台座6の面積が小さくなっても、電磁ノイズの遮蔽効果は特に低下しない。その一方で、環状とすることにより、台座6を軽量化することができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0028】
また、上記のような渦電流による電磁ノイズの低減を行うことができるため、台座6による遮蔽効果は、比較的高周波のノイズに対して特に有効となる。すなわち、DC−DCコンバータ1においては、整流回路部3から放射される電磁ノイズのうち、比較的高周波の成分を台座6によって抑制し、比較的低周波の成分を磁性体5によって抑制することができる。それゆえ、DC−DCコンバータ1においては、整流回路部3からベースプレート4と反対側へ向かって放射される電磁ノイズを広い周波数域にわたって抑制することができる。
【0029】
また、磁性体5は、コンバータ回路の一部を構成する磁気部品であるチョークコイル12のコアである。それゆえ、電磁ノイズを遮蔽するために新たに磁性体5を追加する必要がない。それゆえ、部品点数を低減して、低コストのDC−DCコンバータ1を得ることができる。
【0030】
また、ベースプレート4は導体からなるため、ベースプレート4側から整流回路部3の電磁ノイズが放射されることをも抑制することができる。これにより、DC−DCコンバータ1に対してベースプレート4側に隣接する部品に、電磁ノイズが影響することをも防ぐことができる。
【0031】
また、台座6は、ベースプレート4と接続されて接地されている。そのため、台座6及びベースプレート4の電位が安定し、これらによる電磁ノイズ遮蔽効果を高くすることができる。
【0032】
また、積層方向から見たとき、整流回路部3は、台座6における環状形状の内周輪郭61の内側に納まっている。そのため、台座6による電磁ノイズの遮蔽効果の低減を抑制しつつ、台座6の軽量化、低コスト化を実現することができる。つまり、この場合には、整流回路部3から生じる磁束の大部分を、台座6における内周輪郭61の内側に通すことができる。これにより、この磁束による渦電流を効率的に台座6に生じさせることができ、電磁ノイズの遮蔽効果を効率的に得ることができる。その一方で、台座6の体積を小さくして、その軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0033】
以上のごとく、本例によれば、整流回路部から放射される電磁ノイズを広い周波数域にわたって抑制することができるDC−DCコンバータを提供することができる。
【0034】
(参考例)
本例は、整流回路部3をベースプレート4と反対側から覆うように配置される磁性体5として、トランス2のコアを用いた例である。
ベースプレート4と整流回路部3と台座6とトランス2との位置関係等は、実施例1の図1に示したベースプレート4と整流回路部3と台座6とチョークコイル12との位置関係等と略同様である。つまり、図1において、チョークコイル12をトランス2に置き換えた構成が、本例の構成となる。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 DC−DCコンバータ
12 チョークコイル
2 トランス
3 整流回路部
4 ベースプレート
5 磁性体
6 台座
13 積層体
141 第1バスバー
142 第2バスバー
図1
図2
図3
図4