(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバ裸線の浮揚量を測定し、前記浮揚量の測定値に基づいて、前記方向変換器への前記流体の導入流量を調整することで前記レイノルズ数を制御することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。
前記方向変換器内に、前記入線部および前記出線部における前記吹出し口に連通する狭隘部が形成されることによって、前記入線部および前記出線部において前記流体が前記吹出し口から吹出す際の圧力損失が、前記その他の部分における前記圧力損失に比べて大きくされ、これによって、前記入線部および前記出線部における前記流体のレイノルズ数を、前記その他の部分における前記流体のレイノルズ数より高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ素線の製造方法。
前記入線部および前記出線部における前記吹出し口の幅が、前記その他の部分における前記吹出し口の幅より小さくされることによって、前記入線部および前記出線部における前記流体のレイノルズ数が、前記その他の部分における前記流体のレイノルズ数より高くされることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造装置。
前記方向変換器内に、前記入線部および前記出線部における前記吹出し口に連通する狭隘部が形成されることによって、前記入線部および前記出線部において前記流体が前記吹出し口から吹出す際の圧力損失が、前記その他の部分における前記圧力損失に比べて大きくされ、これによって、前記入線部および前記出線部における前記流体のレイノルズ数が、前記その他の部分における前記流体のレイノルズ数より高くされることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る光ファイバ素線の製造装置の第1実施形態である製造装置1Aの概略構成を示す模式図である。
製造装置1Aは、紡糸部10と、方向変換器20(20A,20B)と、位置センサ80と、コーティング部30と、硬化部40と、制御部90と、を備えている。
2aは、光ファイバ母材2の加熱溶融されている縮径部(ネックダウン)先端部である。
【0013】
紡糸部10は、加熱炉11を備えており、加熱炉11によって光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸することによって光ファイバ裸線3を形成する。
【0014】
方向変換器20は、光ファイバ裸線3の方向を変換する。この製造装置1Aでは2つの方向変換器20が用いられる。これらの方向変換器20を、線引き方向の上流側から下流側に、それぞれ第1および第2方向変換器20A,20Bという。
2つの方向変換器20のうち第1方向変換器20Aは、光ファイバ母材2から鉛直下向きに引き出された光ファイバ裸線3の方向を水平方向に変換する。第2方向変換器20Bは、光ファイバ裸線3の方向を水平から鉛直下向きに変換する。
【0015】
コーティング部30は、光ファイバ裸線3の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して被覆層とすることによって光ファイバ素線中間体4を得る。
樹脂コーティングは、例えば2層コーティングであり、内側にヤング率の低い一次被覆層用の材料を塗布し、外側にヤング率の高い二次被覆層用の材料が塗布される。使用される材料は、例えば紫外線硬化樹脂である。
コーティング部30は、一次被覆層と二次被覆層を別々に塗布する構成であってもよいし、一次被覆層と二次被覆層を同時に塗布する構成であってもよい。
【0016】
硬化部40は、1または複数のUVランプ40aを備え、光ファイバ素線中間体4の被覆層を硬化して光ファイバ素線5を形成する。硬化部40は、例えば、光ファイバ素線中間体4が通過する空間を挟んで設けられた複数対のUVランプ40aを有する。
【0017】
位置センサ80としては、例えばレーザ方式の位置センサを使用できる。位置センサ80は、光ファイバ裸線3の位置を検出することができる。位置センサ80は、光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて、第2方向変換器20Bにおける光ファイバ裸線3の浮揚量を測定できる。
位置センサ80は、検出した光ファイバ裸線3の位置に関する情報に基づいて検出信号を制御部90に出力する。
なお、図示しないが、第1方向変換器20A用の位置センサを第1方向変換器20Aと第2方向変換器20Bとの間の位置に設けることもできる。
この位置センサは、光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて、第1方向変換器20Aにおける光ファイバ裸線3の浮揚量を測定できる。
この位置センサも、検出した光ファイバ裸線3の位置に関する情報に基づいて検出信号を制御部90に出力する。
【0018】
制御部90は、検出信号に基づいて、方向変換器20A,20Bへの流体の導入流量を調整することで、方向変換器20A,20Bにおけるレイノルズ数(Re数)を制御することができる。制御部90は、例えば、方向変換器20A,20Bへの流体の導入路に設けられた開閉弁の開度を調節することによって流体の導入流量を制御することができる。
【0019】
光ファイバ素線5は、プーリー50によって向きを変えられ、引取り部60により引き取られ、巻取り手段70により巻き取られる。
引取り部60は、例えば引取りキャプスタンであり、ここで線引き速度が決定される。線引き速度は例えば1500m/min以上である。
巻取り手段70は、光ファイバ素線5を巻き取る巻取りボビンである。
光ファイバ母材2の外径は例えば100mm以上であり、1つの光ファイバ母材2から作製される光ファイバ素線5の長さは例えば数千kmである。
【0020】
まず、方向について定義する。
図1に示すように、方向変換器20Aにより方向変換される前の光ファイバ裸線3の直線状のパスライン(第一の経路L1)と、方向変換器20Aにより90°の方向変換がされた後の光ファイバ裸線3の直線状のパスライン(第二の経路L2)とを含む面をP1という。X方向は、面P1内において第二の経路L2に沿う方向であり、Y方向は、面P1に垂直な方向である。
【0021】
光ファイバ母材2は鉛直下向きに吊り下げた状態とされ、光ファイバ母材2から引き出された光ファイバ裸線3の方向は鉛直下方である。そのため、第1方向変換器20Aの設置には、鉛直方向に沿う第一の経路L1と水平方向に沿う第二の経路L2とを含む面P1に垂直な方向(Y方向)の設置位置の精度が重要である。
Y方向の位置決め精度が重要なのは、
図2に示すように、光ファイバ裸線3は方向変換器20のガイド溝21の内側面21cと接触すると強度が低下するおそれがあるため、内側面21cから確実に離間させる必要があるからである。
【0022】
製造装置1Aでは、第2方向変換器20Bによって、光ファイバ裸線3を鉛直方向に沿う第三の経路L3に変換するため、第2方向変換器20Bの設置には、第二の経路L2と第三の経路L3を含む面P1に垂直な方向(Y方向)の設置位置の精度が要求される。
樹脂コーティングは鉛直下向きの光ファイバ裸線に対して行われるのが一般的であるため、コーティング部30に導入される経路L3と、方向変換前の経路L2とを含む面に垂直な方向であるY方向の設置精度は重要である。
なお、樹脂コーティングが施される光ファイバ裸線の方向は鉛直下向きに限らない。当該方向が第二の経路に沿う方向であっても、コーティング自体が可能であれば問題ない。
【0023】
以下、方向変換器20の詳しい構造について説明する。
図3(a)に示す方向変換器201は、方向変換器20の第1の例であって、光ファイバ裸線3の向きを90°変換することができる。このため、方向変換器201は、
図1に示す方向変換器20A,20Bとして使用できる。
方向変換器201は、平面視4分円形とされ、外周面20aに全周長にわたってガイド溝21が形成されている。方向変換器201は、中心軸方向をY方向に一致させるとともに、径方向D1(
図2参照)を面P1(
図1参照)に沿う方向に向けた姿勢で設置される。ここでは、平面視円弧形の外周面20aに沿う方向を周方向という。
【0024】
ガイド溝21の底部には、ガイド溝21に沿って配線された光ファイバ裸線3を浮揚させる流体(空気など)の吹出し口22がガイド溝21に沿って形成されている。吹出し口22は、ガイド溝21の全長にわたって形成されている。
【0025】
図2に示すように、方向変換器201は、方向変換器201の内部に確保された空間(流体溜部25)内の流体(例えば空気)を、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出できるように構成されている。
方向変換器201は、例えば、流体を外部から流体溜部25に導入し、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出させるように構成することができる。
【0026】
ガイド溝21は、径方向外方に行くほど内側面21c,21cの間隔(Y方向寸法)が徐々に大きくなるように、径方向D1に対して傾斜して形成されていることが好ましい。2つの内側面21c,21cは、径方向D1に対する傾斜角度θ1が互いに等しいことが好ましい。
【0027】
方向変換器20A〜20Cでは、流体溜部25内の流体(例えば空気)を、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出することによって、光ファイバ裸線3を浮揚させることができる。詳細には、放出された空気により、ガイド溝21の深部21dと浅部21eとの圧力差が大きくなるため、光ファイバ裸線3に、径方向外方の力が作用することによって、光ファイバ裸線3は浮揚する。
【0028】
この際、条件によっては、光ファイバ裸線3の径方向外側にはカルマン渦が生じる。このカルマン渦が生じると、圧力変動が生じ、光ファイバ裸線3が振動し、この振動により光ファイバ裸線3が内側面21cに接触する可能性がある。
光ファイバ裸線3は、ガイド溝21の内側面21cと接触すると、強度が低下するおそれがあるため、内側面21cから確実に離間させる必要がある。
このため、カルマン渦はなくすか、光ファイバ裸線3の振動を抑えられるほど小さくする必要がある。
【0029】
方向変換器201では、カルマン渦を小さくするために、流体が光ファイバ裸線3に接触する直前のRe数が規定される。
Re数は、流れの層流、乱流を示す指標であり、Re数を小さくするほど層流となり、カルマン渦が生じにくくなる。逆に、Re数を大きくするほど、乱流になりカルマン渦が発生しやすくなる。
Re数は、方向変換器201の周方向に一定である必要はなく、必要に応じて、周方向の位置が異なる部分領域ごとに最適化してもよい。これにより、光ファイバ裸線3の振動を小さくできる。
【0030】
Re数は、方向変換器における光ファイバ裸線3の入線部(光ファイバ裸線3がガイド溝に入る箇所を含む部分)および出線部(光ファイバ裸線3がガイド溝から出る箇所を含む部分)における値を最適化することが望ましい。これによって、光ファイバ裸線3の浮揚安定性を高めることができる。
【0031】
図3(a)に示すように、方向変換器201では、光ファイバ裸線3は4分円形のガイド溝21の一端21aから入り、他端21bから出ることによって90°の方向変換がなされる。
光ファイバ裸線3が入線する入線部23はガイド溝21の一端21aを含む部分であり、光ファイバ裸線3が出線する出線部24はガイド溝21の他端21bを含む部分である。
【0032】
図3(b)は、吹出し口22を展開した図である。この図に示すように、吹出し口22は、ガイド溝21の所定の長さ範囲にわたって一定の幅(Y方向寸法)を有する中間部分26と、吹出し口22の一端22aを含む一端部分27と、吹出し口22の他端22bを含む他端部分28とを有する。
一端部分27は、中間部分26の一端からガイド溝21の一端21aに向けて幅が狭くなりつつガイド溝21に沿って延在する。他端部分28は、中間部分26の他端からガイド溝21の他端21bに向けて幅が狭くなりつつガイド溝21に沿って延在する。
吹出し口22の一端22aはガイド溝21の一端21aに達し、他端22bは他端21bに達している。
【0033】
一端および他端部分27,28は、例えば10〜30°に相当する周方向範囲の部分である。
図3(a)に示す方向変換器201では、一端部分27は、90°の範囲のうち、0°の位置を始端とし、10〜30°の位置を終端とする範囲としてよい。また、他端部分28は、90°の範囲のうち、60〜80°の位置を始端とし、90°を終端とする範囲としてよい。この例では、一端および他端部分27,28は、それぞれ全体の11.1〜33.3%に相当する周方向範囲の部分である。
図5(a)に示す方向変換器203は、一端部分37は、180°の範囲のうち、0°の位置を始端とし、20〜30°の位置を終端とする範囲としてよい。また、他端部分38は、180°の範囲のうち、150〜160°の位置を始端とし、180°を終端とする範囲としてよい。この例では、一端および他端部分37,38は、それぞれ全体の11.1〜16.7%に相当する周方向範囲の部分である。
【0034】
一端および他端部分27,28は、一端21aおよび他端21bに近い範囲では流速を速くするのが難しいため、一端21aおよび他端21bを含む部分を除外してもよい。
図8に示す例では、一端部分27は、一端21aを含む範囲(
図8において例えば0°以上5°未満の範囲)を除いた部分としてよい。また、他端部分28は、他端21bを含む範囲(
図8において例えば85°を越え90°以下の範囲)を除いた部分としてよい。
すなわち、一端部分27は、90°の範囲のうち、5°の位置を始端とし、10〜30°の位置を終端とする範囲としてよい。また、他端部分28は、90°の範囲のうち、60〜80°の位置を始端とし、85°を終端とする範囲としてよい。
この例では、一端および他端部分27,28は、それぞれ全体の5.5〜27.8%に相当する周方向範囲である。
【0035】
図9に示す例では、一端部分37は、一端31aを含む範囲(
図9において例えば0°以上10°未満の範囲)を除いた部分としてよい。また、他端部分38は、他端31bを含む範囲(
図9において例えば170°を越え180°以下の範囲)を除いた部分としてよい。
すなわち、一端部分37は、180°の範囲のうち、10°の位置を始端とし、20〜30°の位置を終端とする範囲としてよい。また、他端部分38は、180°の範囲のうち、150〜160°の位置を始端とし、170°を終端とする範囲としてよい。
この例では、一端および他端部分37,38は、それぞれ全体の5.5〜11.1%に相当する周方向範囲である。
【0036】
一端および他端部分27,28の最小幅と、中間部分26の幅との差は、その他の設計にも依存するため一概には決定できないが、少なくとも数μm〜数十μmオーダーとなる。
一端および他端部分27,28の最小幅と中間部分26の幅との差は、例えば2μm〜10μmとすることができる。前記差を前記範囲とすることによって、一端および他端部分27,28での流体の吹出し流速を確保し、かつ、中間部分26での吹出し流速に対する一端および他端部分27,28の吹出し流速の比率を高くすることができる。
一端および他端部分27,28の最大幅と、中間部分26の幅とは互いに等しいことが好ましい。
【0037】
一端および他端部分27,28の最小幅は、中間部分26の幅に対して70〜98%とすることができる。一端および他端部分27,28の最小幅は、中間部分26の幅に対して80〜95%とするのが好ましく、85〜90%とするのがさらに好ましい。
中間部分26の幅に対する一端および他端部分27,28の最小幅の比率を前記範囲とすることによって、一端および他端部分27,28での流体の吹出し流速を確保し、かつ、中間部分26での吹出し流速に対する一端および他端部分27,28の吹出し流速の比率を高くすることができる。
なお、
図3(b)に示す一端および他端部分27,28および中間部分26は、両側縁が直線状とされているが、一端21aおよび他端21bに向けて幅が狭くなる形状であれば、両側縁が曲線状であってもよい。
【0038】
図3(a)および
図3(b)に示す方向変換器201は、一端および他端部分27,28の幅(例えば平均幅または最小幅)が狭いため、吹出し口22は、ガイド溝21の両端部である入線部23および出線部24において幅が狭くなる。
このため、入線部23および出線部24では、その他の部分(この例では入線部23と出線部24との間の部分。すなわち中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べて、流体が吹出し口22から吹出す際の圧力損失が大きくなることから、入線部23および出線部24における吹出し流速は、前記その他の部分における流体の最低流速より速くなる。
なお、入線部23および出線部24における流体の吹出し流速は、中間部分26における流体の平均流速(または最高流速)より速くてもよい。
中間部分26における流体の流速と比較するべき、入線部23および出線部24における流体の流速は、平均値または最高値とすることができる。
入線部23および出線部24においては、流体の吹出し流速が速くなるため、他の部分(この例では中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べてRe数が大きくなる。
【0039】
図4に示す方向変換器202は、方向変換器201の変形例であって、平面視4分の3円形とされている。以下、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
方向変換器202は、
図3(a)に示す方向変換器201と同じ構造の本体部29aの入線側および出線側に、それぞれ本体部29aと同じ構造の補助部29b,29cが連設された構造とされている。
方向変換器202は、光ファイバ裸線3が入線部23から本体部29aのガイド溝21に入り、本体部29aで方向が90°変換された後、出線部24を通って出線するため、基本的な機能は方向変換器201と同じである。
方向変換器201,202は、光ファイバ裸線3の向きを90°変換することができるため、
図1に示す方向変換器20A,20Bとして使用できる。
【0040】
図5(a)に示す方向変換器203は、方向変換器20の第2の例であって、光ファイバ裸線3の向きを180°変換することができる。方向変換器203は、平面視半円形とされ、外周面20aに全周長にわたってガイド溝31が形成されている。
ガイド溝31の底部には、光ファイバ裸線3を浮揚させる流体(空気など)の吹出し口32がガイド溝31に沿って形成されている。吹出し口32は、ガイド溝31の全長にわたって形成されている。
方向変換器203は、流体溜部35から吹出し口32を通してガイド溝31内に流体を放出できるように構成されている。
方向変換器203では、光ファイバ裸線3は半円形のガイド溝31の一端31aから入り、他端31bから出ることによって180°方向変換される。入線部33はガイド溝31の一端31aを含む部分であり、出線部34はガイド溝31の他端31bを含む部分である。
ガイド溝31の断面形状はガイド溝21の断面形状(
図2参照)と同じである。
【0041】
図5(b)に示すように、吹出し口32は、ガイド溝31の所定の長さ範囲にわたって一定の幅(Y方向寸法)を有する中間部分36と、吹出し口32の一端32aを含む一端部分37と、吹出し口32の他端32bを含む他端部分38とを有する。
一端部分37は、中間部分36の一端からガイド溝31の一端31aに向けて幅が狭くなりつつガイド溝31に沿って延在する。他端部分38は、中間部分36の他端からガイド溝31の一端31aに向けて幅が狭くなりつつガイド溝31に沿って延在する。
吹出し口32の一端32aはガイド溝31の一端31aに達し、他端32bは他端31bに達している。
【0042】
一端および他端部分37,38の幅(例えば平均幅または最小幅)が狭いため、吹出し口32は、ガイド溝31の両端部である入線部33および出線部34において幅が狭くなる。
このため、これら入線部33および出線部34では、吹出し口32からの流体の吹出し流速は、その他の部分(中間部分36)における流体の最低流速より速くなる。
入線部33および出線部34における流体の吹出し流速は、中間部分36における流体の平均流速(または最高流速)より速くてもよい。
入線部33および出線部34においては、流体の吹出し流速が速くなるため、他の部分(この例では中間部分36に相当する長さ範囲の部分)に比べてRe数が大きくなる。
【0043】
図6に示す方向変換器204は、方向変換器203の変形例であって、平面視4分の3円形とされている。
方向変換器204は、
図5(a)に示す方向変換器203と同じ構造の本体部39aの入線側および出線側に、それぞれ本体部39aと同じ断面構造を有する平面視8分の1円形の補助部39b,39cが連設された構造とされている。
方向変換器204は、光ファイバ裸線3が入線部33から本体部39aのガイド溝31に入り、本体部39aで方向が180°変換された後、出線部34を通って出線するため、基本的な機能は方向変換器203と同じである。
【0044】
次に、製造装置1Aを用いた場合を例として、本発明の光ファイバ素線の製造方法の第1実施形態を説明する。
(紡糸工程)
紡糸部10において、光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する。
【0045】
(方向変換器による方向変換)
光ファイバ母材2から鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ裸線3は、第1方向変換器20Aにおける90°の方向変換により、水平(第二の経路L2)に向けられる。
光ファイバ裸線3は、第2方向変換器20Bにおける90°の方向変換により、鉛直下向き(第三の経路L3)となる。
【0046】
方向変換器20A,20Bでは、流体溜部25内の流体(例えば空気)を、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出することによって、光ファイバ裸線3を浮揚させることができる。詳細には、放出された空気により、ガイド溝21の深部21dと浅部21eとの圧力差が大きくなるため、光ファイバ裸線3に、径方向外方の力が作用することによって、光ファイバ裸線3は浮揚する。
【0047】
位置センサ80は、検出した光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて検出信号を制御部90に出力する。
制御部90は、検出信号に基づいて、方向変換器20A,20Bへの流体の導入流量を制御する。制御部90は、例えば、方向変換器20A,20Bへの流体の導入路に設けられた開閉弁の開度を調節することによって流体の導入流量を制御することができる。
詳しくは、制御部90は、光ファイバ裸線3の浮揚量が大きくなると、流体の導入流量を低くする。これによって、方向変換器20A,20BにおけるRe数が低くなる。制御部90は、光ファイバ裸線3の浮揚量が小さくなると、流体の導入流量を高くする。これによって、方向変換器20A,20BにおけるRe数が高くなる。
制御方法としては、PID制御などのフィードバック制御が好ましい。これにより、流体の導入流量の制御を応答性よく行うことができる。
【0048】
なお、第1方向変換器20A用の位置センサを第1方向変換器20Aと第2方向変換器20Bとの間の位置に設けることもできる。その場合には、この位置センサで得られた光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて、第1方向変換器20Aにおける光ファイバ裸線3の浮揚量を測定し、その測定値に基づいて制御部90が第1方向変換器20AのRe数を制御することができる。
この場合には、第2方向変換器20BにおけるRe数の制御は、位置センサ80で得られた光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて行う。すなわち、位置センサ80で得られた情報に基づいて第2方向変換器20Bにおける光ファイバ裸線3の浮揚量を測定し、測定値に基づいて、制御部90が第2方向変換器20BのRe数を制御する。
【0049】
(コーティング工程)
コーティング部30において、光ファイバ裸線3の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して被覆層とすることによって光ファイバ素線中間体4を得る。
【0050】
(硬化工程)
硬化部40において、UVランプ40aの照射などにより、光ファイバ素線中間体4の被覆層を硬化して光ファイバ素線5を形成する。
【0051】
光ファイバ素線5は、プーリー50、引取り部60を経て巻取り手段70により巻き取られる。
【0052】
図2に示すように、ガイド溝21内における光ファイバ裸線3の浮揚量は、流体の流速に依存する。
ガイド溝21の内側面21c,21cは、径方向外方に行くほど幅が拡大するように傾斜している。そのため、光ファイバ裸線3の浮揚量が増加すると、光ファイバ裸線3と内側面21cとの隙間が大きくなり、光ファイバ裸線3と内側面21cとの接触は起こりにくくなるとも考えられる。
【0053】
しかし、実際には、光ファイバ裸線3の浮揚量が増加すると、内側面21cとの接触が原因と推定される光ファイバ裸線3の強度低下が起きることがあった。
本願発明者は、この現象の原因および解決策を求めて検討を重ねた結果、次のことを新たに見出した。
【0054】
ガイド溝21内において、光ファイバ裸線3の直前の流体流のRe数を1200〜3500とすることによって、光ファイバ裸線3の浮揚の安定化を図ることができる。
Re数が3500より大きくなると、流体流の光ファイバ裸線3後方にできるカルマン渦の影響と考えられる圧力変動から光ファイバ裸線3の浮揚量の変動(光ファイバ裸線3の時間的な振動や浮揚量のゆらぎ)が生じる。
その浮揚量の変動によって、ある頻度で光ファイバ裸線3が内側面21c,21cに接触するため、光ファイバ素線5に接触による強度低下が生じるおそれがある。
【0055】
図7は、浮揚位置変動の例を示す図である。
浮揚量は、
図1に示す光ファイバ素線の製造装置1Aを用い、方向変換器20Bとコーティング部30との間の位置(第三の経路L3)に設置した位置センサ80によって、光ファイバ裸線3の位置データを取得した。
図7より、X方向成分の浮揚位置が、Y方向成分と比較して時間経過により大きく変動していることがわかる。Y方向位置は安定しているように見えるが、浮揚位置変動が±10μm程度である。通常、光ファイバ裸線3とガイド溝21の内側面21cとの隙間は数十μmであるから、Y方向の浮揚位置変動も小さい変動ではない。
【0056】
Re数が1200未満になると、流体流は層流に近くなるが、流体流速が低く、光ファイバ裸線3の浮揚量が十分に得られない。そのため、線引張力の変動によって、光ファイバ裸線3の浮揚位置がガイド溝21の深さ方向に移行し、内側面21cと接触する結果、光ファイバ裸線3の強度が低下する。
これに対し、流体流のRe数を1200〜3500の範囲にすると、光ファイバ裸線3の一定量の浮揚量を確保でき、さらに、時間的な浮揚量の安定性が得られ、製品に重大な欠陥を生じさせることなく線引きすることができる。
【0057】
方向変換器20のRe数は、以下のように算出することができる。
[Re数]=[使用気体密度、kg/m
3]×[流体流速、m/sec]×[代表長さ、m]/[使用気体粘度、Pa・s]
ここで、代表長さについては、内側面21c,21cの傾斜は非常に小さいことから、内側面21c,21cを互いに平行とみなして、2つの平板間の代表長さを用いる。
なお、Re数は、浮揚量の安定化のための指標として導入したものであるため、厳密性は問わず、上位指標を使用した。つまり、2つの平板間の距離をd[m]とした場合、代表長さは2d[m]とする。
また、流体流速[m/sec]は、光ファイバ裸線3の旋回位置のガイド溝21の底側の位置を測定位置とした。例えば、[流体流位置]=[旋回半径(光ファイバ裸線3の中心位置)]−[光ファイバ裸線3の半径]とした。なお、ファイバ裸線3の外径は例えば125μmである。
この位置でのガイド溝21の断面積[m
2]を算出し、方向変換器20への流体の導入流量[m
3/sec]に基づいて、[流体流速、m/sec]=[導入流量、m
3/sec]/[流体断面積、m
2]に基づいて、流体流速を算出する。
なお、使用気体密度と、使用気体粘度は、使用する気体の使用する温度(一般には常温であり、約20℃とする)での数値を使用する。
【0058】
方向変換器の具体的な構造は、例えば、特許第5571958号公報に記載の構造、または特開昭62‐003037号公報に記載の構造を採用できる。なお、方向変換器20の構造はこれら2つの構造に特に限定されることなく、その他の構造を採用してもよい。
例えば、特許5571958号公報に示される非接触保持機構を使用する場合、光ファイバ裸線3を、方向変換器において旋回半径62.5mmで90°方向変換させる。ガイド溝21の幅(浮揚状態の光ファイバ裸線3の最内周位置におけるガイド溝21の幅)は145μmである。光ファイバ裸線3の直径は125μmである。方向変換器に対する流体(空気)の導入量は100L/minである。
なお、旋回半径は、流体流速と線引張力との関係で決まる。ここでは、特定の方向変換器の構造、製造条件のもとでの、ある一定の線引張力の場合の旋回半径である。
【0059】
[流体流位置]=62.5×10
−3−62.5×10
−6=0.0624375m
[流体断面積]=2×π×[流体流位置]×90/360×溝幅=1.42211×10
−5m
[流体流速]=[導入流量]/[流体断面積]=100×10
−3/60/[流体断面積]≒117.2m/sec
[空気密度(20℃)]=1.205kg/m
3
[空気粘度(20℃)]=1.822×10
−5Pa・s
[代表長さ]=[溝幅]×2=145×10
−6×2=0.00029m
[Re数]≒2248
このRe数は1200〜3500の範囲に入っているため、安定している条件と判断できる。
【0060】
また、流体流のRe数は、方向変換器20の周方向の全体(吹出し口の全体)において均一である必要はなく、必要に応じて、周方向の位置が異なる部分領域ごとに最適化してもよい。
例えば方向変換器20への光ファイバ裸線3の入線および出線位置は、光ファイバ裸線3と流体流との接触界面である。なお、接触界面とは、光ファイバ裸線3が流体流と接触している部分と接触していない部分の界面である。
【0061】
さらに、製造装置1Aにおける光ファイバ固定端と方向変換器20との位置ズレ(芯ずれ)を多少なりとも流体流で補正する必要があるため、入線位置および出線位置を除く定常部での浮揚量の安定性を得るための条件に加えて、位置ずれを補正するための条件を加味する必要がある。
例えば、
図1において、光ファイバ母材2の加熱溶融されている縮径部(ネックダウン)先端部2a、コーティング部30、引取り部60、プーリー50、および巻取り手段70は、光ファイバが径方向に移動できないため、光ファイバが横揺れする際に固定端となり得る。
【0062】
方向変換器20は、光ファイバ裸線3のパスラインの位置ずれの補正のためには、入線部23および出線部24における浮揚量を大きくするのが望ましい。
そのため、
図8に示すように、Re数は、カルマン渦の影響のない範囲で、大きい数値に調整する。つまり、Re数は、少なくとも2500〜3500の範囲とすることが好ましい。
これにより、光ファイバ裸線3の振動を小さくできるだけでなく、方向変換器20の入線部23および出線部24における浮揚安定性を得ることができる。また、入線部23および出線部24における位置補正許容範囲を大きく確保することができる。よって、光ファイバ裸線3が内側面21c,21cに接触することによる光ファイバ裸線3の強度低下を抑制できる。
【0063】
入線部23および出線部24における浮揚量を大きくするには、その他の部分(この例では入線部23と出線部24との間の部分。すなわち中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べて、Re数を大きくすればよい。
図3(a)および
図3(b)に示す方向変換器201は、一端および他端部分27,28の幅(例えば平均幅または最小幅)が狭いため、吹出し口22は、ガイド溝21の両端部である入線部23および出線部24において幅が狭くなる。
このため、入線部23および出線部24では、その他の部分(この例では入線部23と出線部24との間の部分。すなわち中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べて、流体が吹出し口22から吹出す際の圧力損失が大きくなることから、入線部23および出線部24における吹出し流速は、前記その他の部分における流体の最低流速より速くなる。
入線部23および出線部24における流体の吹出し流速は、中間部分26における流体の平均流速(または最高流速)より速くてもよい。
これによって、入線部23および出線部24におけるRe数を、他の部分(この例では中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べて大きくすることができる。
【0064】
このように、入線部23および出線部24では流体の流速が速くなるため、ガイド溝21の深部21d(
図2参照)と浅部21eとの圧力差が大きくなることから、ベルヌーイの効果により、光ファイバ裸線3を浮揚させる方向(径方向外方)の力が大きくなる。また、粘性を考慮したナビエストークスの定理により、光ファイバ裸線3をガイド溝21の中央(Y方向の中央)に寄せる効果が増加する。このため、パスライン位置のずれは補正される。
また、入線部23および出線部24で光ファイバ裸線3の浮揚量が大きくなるため、ガイド溝21の内側面21cと光ファイバ裸線3との隙間が広がり、パスライン位置のずれに対する許容量が増加する。
このため、方向変換器20の設置位置精度に関する要求を緩和できる。例えば、設置位置要求精度をμmオーダーから0.5mmオーダー(数百μmオーダー)とすることができ、少なくとも数百倍の精度要求の緩和が可能となる。
従って、方向変換器20の設置作業を容易にするとともに、光ファイバ裸線3がガイド溝21の内側面21cに接触することによる傷つきを防止し、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができる。
【0065】
さらに、入線部23、出線部24および中間部分26における流体吹出し流速を調整できるため、中間部分26における光ファイバ裸線3の浮揚のための流体吹出し流速を確保することができる。また、入線部23および出線部24におけるパスライン位置調整および光ファイバ裸線3の浮揚量調整のために十分な流体吹出し流速を設定することができる。よって、流体の無駄な使用をなくし、ランニングコストの低減が可能となる。
【0066】
X方向に関する方向変換器20A,20Bの設置位置の調整については、Y方向と同じ精度は必要ない。X方向については、Re数を例えば1200〜3500の範囲内で調整することで光ファイバ裸線の浮揚位置を微調整することができるためである。
よって、X方向については、少なくとも流体吹出し流速の調整により光ファイバ裸線3の安定浮揚量を確保できる範囲内であれば、設置精度はY方向と比較して低くても構わない。すなわち、X方向位置の調整のため流体吹出し流速を低くしてRe数を小さくした結果、光ファイバ裸線3が浮揚しない状態になるのを回避できればよい。
【0067】
図8は、光ファイバ裸線3の向きを90°変換する方向変換器201(
図3参照)における周方向のRe数分布を示す図である。
図9は、光ファイバ裸線3の向きを180°変換する方向変換器203(
図5参照)における周方向のRe数分布を示す図である。これらの測定には関西テック社製の風速計SAV−26Aを使用したが、風速計は特に限定されない。流体(空気)の方向変換器201への導入量は、風速計の測定上限を超えないように適宜調整した。ここでは、測定した風速分布を元に、実際の流体導入量とした場合のRe数算出位置での風速に換算し、Re数分布に変換した。
【0068】
図8に示すように、光ファイバ裸線3の向きを90°変換する方向変換器201(
図3参照)では、測定は周方向に5°ごとに複数の位置で行った。この例では、0°の位置が入線位置であり、90°の位置が出線位置である。
この図に示すように、入線および出線位置に近い位置(10°および80°の位置)でRe数が最大となっており、入線および出線位置から離れた位置(35°および55°の位置)でRe数が極小になっている。
10°の位置におけるRe数は、方向変換器201(
図3参照)における入線部23の流体吹出しRe数の最高値である。80°の位置における風速は、方向変換器201における出線部24の流体吹出しRe数の最高値である。
35°および55°の位置におけるRe数は、方向変換器201における中間部分26の流体吹出しRe数の最低値である。
入線部23および出線部24における吹出しRe数(最高値)は、中間部分26における吹出しRe数の最低値の約1.8倍である。
【0069】
図9に示すように、光ファイバ裸線3の向きを180°変換する方向変換器203(
図5参照)では、測定は周方向に10°ごとに複数の位置で行った。この例では、0°の位置が入線位置であり、180°の位置が出線位置である。
この図に示すように、入線および出線位置に近い位置(20°および160°の位置)でRe数が最大となっており、入線および出線位置から離れた位置(70°の位置)でRe数が極小になっている。
20°の位置におけるRe数は、方向変換器203(
図5参照)における入線部33の流体吹出しRe数の最高値である。160°の位置におけるRe数は、方向変換器203における出線部34の流体吹出しRe数の最高値である。
70°の位置におけるRe数は、方向変換器203における中間部分36の流体吹出しRe数の最低値である。
入線部33および出線部34における吹出しRe数(最高値)は、中間部分36における吹出しRe数の最低値の約1.8倍である。
【0070】
以下、実際にRe数を複数の周方向領域ごとに異なるように設定する具体的な方法について説明する。
(1)吹出し口22の幅の調整によるRe数の調整
図3(a)および
図3(b)に示す方向変換器201は、一端および他端部分27,28の幅(例えば平均幅または最小幅)が狭いため、吹出し口22は、ガイド溝21の両端部である入線部23および出線部24において幅が狭くなる。
このため、入線部23および出線部24では、その他の部分(この例では入線部23と出線部24との間の部分。すなわち中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べて、流体が吹出し口22から吹出す際の圧力損失が大きくなることから、入線部23および出線部24における吹出し流速は、前記その他の部分における流体の最低流速より速くなる。
図8に示すように、入線部23および出線部24においては、流体の吹出し流速が速くなるため、他の部分(この例では中間部分26に相当する長さ範囲の部分)に比べてRe数が大きくなる。
【0071】
(2)複数の内部空間を設けることによるRe数の調整
図10に示す方向変換器205は、方向変換器20の第3の例であって、光ファイバ裸線3の向きを180°変換することができる。方向変換器205は、平面視半円形とされ、流体溜部45から吹出し口42を通してガイド溝31内に流体を放出できるように構成されている。
吹出し口42の形状は特に限定されないが、例えばガイド溝31の長さ方向にわたって一定の幅であってよい。
流体溜部45は、隔壁41によって第1流体溜部45A(第1空間)と、第2流体溜部45B(第2空間)とに区画されている。
第1流体溜部45Aは、吹出し口42の一端および他端部分47,48に連通し、第2流体溜部45Bは吹出し口42の中間部分46に連通している。
方向変換器205の側面には、第1流体溜部45Aに流体を供給する第1供給口43Aと、第2流体溜部45Bに流体を供給する第2供給口43Bとが形成されている。
【0072】
方向変換器205では、供給口43A,43Bを通して流体溜部45A,45Bに供給する流体の流量を調整することによって、流体溜部45A,45Bの内部圧力を互いに独立に設定できる。このため、一端および他端部分47,48における流体の吹出し流速と、中間部分46における流体の吹出し流速とを互いに独立に設定できる。
このため、入線部33および出線部34における流体の吹出し流速を、その他の周方向部分(中間部分46)における流体の最低吹出し流速より速くなるように設定することができる。
入線部33および出線部34においては、流体の吹出し流速が速くなるため、その他の周方向部分(中間部分46)に比べてRe数が大きくなる。
【0073】
図11に示す方向変換器206は、方向変換器20の第4の例であって、光ファイバ裸線3の向きを180°変換することができる。方向変換器206は、平面視半円形とされ、流体溜部55から吹出し口52を通してガイド溝31内に流体を放出できるように構成されている。
流体溜部55は、隔壁51A,51Bによって第1〜第3流体溜部55A〜55Cに区画されている。
第1流体溜部55A(第1空間)は、吹出し口52の一端部分57に連通し、第2流体溜部55B(第2空間)は吹出し口52の中間部分56に連通し、第3流体溜部55C(第3空間)は、吹出し口52の他端部分58に連通している。
方向変換器206の側面には、第1流体溜部55Aに流体を供給する第1供給口53Aと、第2流体溜部55Bに流体を供給する第2供給口53Bと、第3流体溜部55Cに流体を供給する第3供給口53Cと、が形成されている。
【0074】
方向変換器206では、供給口53A〜53Cを通して流体溜部55A〜55Cに供給する流体の流量を調整することによって、一端および他端部分57,58における流体の吹出し流速と、中間部分56における流体の吹出し流速とを互いに独立に設定できる。
このため、入線部33および出線部34における流体の吹出し流速を、その他の周方向部分(中間部分56)における流体の最低吹出し流速より速くなるように設定することができる。
入線部33および出線部34においては、流体の吹出し流速が速くなるため、その他の周方向部分(中間部分56)に比べてRe数が大きくなる。
【0075】
(3)狭隘部を設けることによるRe数の調整
図12に示す方向変換器207は、方向変換器20の第5の例であって、光ファイバ裸線3の向きを90°変換することができる。
方向変換器207は、平面視4分円形とされ、流体溜部65から吹出し口62を通してガイド溝61内に流体を放出できるように構成されている。
図13(a)に示すように、吹出し口62の一端および他端部分67,68に連通する周方向範囲には、流体溜部65とガイド溝61との間に、流体溜部65より幅が狭い狭隘部69,69が形成されている。
図13(b)に示すように、吹出し口62の中間部分66に連通する周方向範囲には、狭隘部69は形成されていない。
このため、一端および他端部分67,68に相当する周方向範囲では、中間部分66に相当する周方向範囲に比べて流体が吹出す際の圧力損失が大きくなる。
【0076】
この方向変換器207では、一端および他端部分67,68に相当する範囲に狭隘部69,69が形成されているため、入線部23および出線部24では、吹出し口62からの流体の吹出し流速が、その他の部分(中間部分66)における流体の最低流速より速くなる。
入線部23および出線部24においては、流体の吹出し流速が速くなるため、その他の周方向部分(中間部分26)に比べてRe数が大きくなる。
【0077】
図14は、本発明に係る光ファイバ素線の製造装置の第2実施形態である製造装置1Bの概略構成を示す模式図である。
3つの方向変換器20(20A,20C,20D)を有する点で、
図1に示す製造装置1Aと異なる。以下、本発明の光ファイバ素線の製造方法の第2実施形態を説明する。
製造装置1Bでは、光ファイバ母材2から鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ裸線3は、第1方向変換器20Aにおける90°の方向変換により、水平(第二の経路L2)に向けられる。
光ファイバ裸線3は、第2方向変換器20Cにおける180°の方向変換により、第二の経路L2とは反対の方向(第三の経路L4)に向けられ、第3方向変換器20Dにおける90°の方向変換により、鉛直下向き(第四の経路L5)となる。
光ファイバ裸線3は、コーティング部30において樹脂コーティングが施され、被覆層が硬化部40において硬化されることによって光ファイバ素線5となる。
光ファイバ素線5は、プーリー50、引取り部60を経て、巻取り手段70により巻き取られる。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
図1に示す製造装置1Aを用意した。
方向変換器20A,20Bとしては、
図3に示す方向変換器201を用いた。ガイド溝21の幅は深さ方向に均一とした。
旋回半径は約62.5mmとした。ガイド溝21の幅(浮揚状態の光ファイバ裸線3の最内周位置におけるガイド溝21の幅)は145μmである。
方向変換器20A,20BのRe数(計算値)は約2248であった。
方向変換器20A,20Bに導入される流体は空気であり、その温度は室温(約24℃)とした。
空気の導入流量は、方向変換器20A,20Bについてそれぞれ100リットル/分とした。
第1方向変換器20Aは、光ファイバ裸線3の温度が約1000℃となる位置に設けた。
方向変換器20A,20Bの設置の際には、レーザー芯出し器によりμmオーダーの精度で芯出し(パスラインの位置調整)を行った。
【0079】
紡糸部10において光ファイバ母材2を溶融紡糸して光ファイバ裸線3(外径125μm)を得た。線引速度、線引張力には一般的な条件(線引速度30m/秒、線引張力約150gf)を採用した。
光ファイバ母材2から鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ裸線3は、第1方向変換器20Aによって水平(第二の経路L2)に方向変換し、次いで、第2方向変換器20Bによって鉛直下向き(第三の経路L3)に方向変換した。第二の経路L2の長さは約1mとした。
コーティング部30において、光ファイバ裸線3に紫外線硬化樹脂のコーティングを施し、硬化部40においてUVランプ40aにより紫外線を照射して被覆層を硬化させて光ファイバ素線5を得た。
光ファイバ素線5は、プーリー50、引取り部60を経て、巻取り手段70により巻き取った。
同じ光ファイバ母材2からの光ファイバ素線5の製造中に、方向変換器20A,20Bへの空気の供給量を減らし、Re数(計算値)が1200になるように調整した。
同じ光ファイバ母材2からの光ファイバ素線5の製造中に、方向変換器20A,20Bへの空気の供給量を増やし、Re数(計算値)が3500になるように調整した。
【0080】
この製造方法では、いずれの条件においても、方向変換器20A,20Bによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができたことが確認された。
【0081】
[実施例2]
図1の製造装置1Aにおいて、位置センサ80および制御部90を用いて方向変換器20A、20Bへの流体の導入流量を制御した。
すなわち、位置センサ80によって、光ファイバ裸線3の位置情報(第2方向変換器20Bにおける浮揚量)を得て、検出信号を制御部90に出力し、制御部90によって方向変換器20A、20Bへの流体の導入流量を制御した。
制御方法としては、PID制御を採用した。その他の条件は実施例1に準じて光ファイバ素線5を製造した。
光ファイバ素線5の製造中、線速変動が最大で±50m/min発生し、また、線引張力変動も最大で±25gf発生した。
しかし、方向変換器20A,20Bにおいて、Re数が1200〜3500の範囲内で空気の流量制御を行ったため、光ファイバ裸線3の浮揚量は±0.05mmであり、安定していた。
【0082】
この製造方法では、方向変換器20A,20Bによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができたことが確認された。
【0083】
[実施例3]
図1に示す製造装置1Aにおいて、方向変換器20A,20Bに、
図8のRe数プロファイルを有する方向変換器201を用いた。吹出し口22の中間部分26の幅は50μmであり、一端および他端部分27,28の最小幅は45μmである。
図2に示すように、ガイド溝21の内側面21cの、径方向D1に対する傾斜角度θ1は0.5°とした。旋回半径は約62.5mmとした。
入線部23および出線部24を除く部分(中間部分26に相当する部分)でのRe数は2200であり、入線部23および出線部24でのRe数は2500であった。入線部23および出線部24は端部から30°に相当する周方向範囲の部分である。
方向変換器20A,20Bの設置の際には、光ファイバ裸線3に代えて外径0.5mmの糸を使用し、目視により芯出し(パスラインの位置調整)を行った。
【0084】
この製造方法では、方向変換器20A,20Bによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができたことが確認された。
【0085】
[実施例4]
図14に示す製造装置1Bを用いて、以下のようにして光ファイバ素線5を製造した。
第1および第3方向変換器20A,20Dとしては、実施例1で用いたものと同じ仕様の方向変換器201を用いた。
第2方向変換器20Cとしては、
図10に示す方向変換器205を用いた。
入線部33および出線部34の設定Re数は3000とした。中間部分46に相当する範囲の設定Re数は1800とした。
方向変換器20A,20Bの設置の際には、光ファイバ裸線3に代えて外径0.5mmの糸を使用し、目視により芯出し(パスラインの位置調整)を行った。
【0086】
この製造方法では、方向変換器20A,20C,20Dによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができたことが確認された。
【0087】
[実施例5]
図1に示す製造装置1Aにおいて、方向変換器20A,20Bに、方向変換器201に代えて、
図12および
図13に示す方向変換器207を用いること以外は実施例1と同様にして光ファイバ素線5を製造した。
入線部23および出線部24の設定Re数は3500とした。中間部分26に相当する範囲の設定Re数は3000とした。
方向変換器20A,20Bの設置の際には、光ファイバ裸線3に代えて外径0.5mmの糸を使用し、目視により芯出し(パスラインの位置調整)を行った。
【0088】
この製造方法では、方向変換器20A,20Bによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留で光ファイバ素線5を製造することができたことが確認された。
【0089】
[比較例1]
図1に示す製造装置1Aを用いて、Re数を4000にすること以外は実施例1と同様にして光ファイバ素線5を製造した。
光ファイバ素線5の製造において、
図7に示すような光ファイバ裸線3の浮揚位置の変動が見られた。
【0090】
この製造方法では、光ファイバ裸線3がガイド溝の内側面に接触したことが原因と考えられる断線が発生したため、製造歩留まりが良好とはいえなかった。
【0091】
[比較例2]
図1に示す製造装置1Aを用いて、Re数を1000にすること以外は実施例1と同様にして光ファイバ素線5を製造した。
光ファイバ素線5の製造において、
図7に示すような光ファイバ裸線3の浮揚位置の変動が見られた。
【0092】
この製造方法では、光ファイバ裸線3がガイド溝の内側面に接触したことが原因と考えられる断線が発生したため、製造歩留まりが良好とはいえなかった。
【0093】
以上、本発明の光ファイバ素線の製造方法及び製造装置について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【解決手段】光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する紡糸工程と、光ファイバ裸線3の外周に樹脂からなる被覆層を設けるコーティング工程と、被覆層を硬化させて光ファイバ素線を得る硬化工程とを有する光ファイバ素線の製造方法を提供する。紡糸工程からコーティング工程までのいずれかの位置で、光ファイバ裸線3の方向を方向変換器201によって変換する。方向変換器201は、光ファイバ裸線3を案内するガイド溝21を有する。ガイド溝21内には、光ファイバ裸線3を浮揚させる流体の吹出し口22がガイド溝21に沿って形成されている。流体を吹出し口22からガイド溝21内に導入して光ファイバ裸線3を浮揚させ、その際、流体のレイノルズ数を1200〜3500の範囲とする。