特許第5771743号(P5771743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771743定抵抗・大変形のアンカーケーブルおよび定抵抗装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771743
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】定抵抗・大変形のアンカーケーブルおよび定抵抗装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20150813BHJP
   E21D 20/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   E02D17/20 106
   E21D20/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-515020(P2014-515020)
(86)(22)【出願日】2011年6月13日
(65)【公表番号】特表2014-517174(P2014-517174A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】CN2011075640
(87)【国際公開番号】WO2012171155
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】512059981
【氏名又は名称】中国砿業大学(北京)
【氏名又は名称原語表記】China University of Mining and Technology,Beijing
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】何 ▲満▼潮
(72)【発明者】
【氏名】陶 志▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 斌
(72)【発明者】
【氏名】▲楊暁傑▼
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第2044285(CN,Y)
【文献】 特開2000−160558(JP,A)
【文献】 実開平01−098233(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 5/22〜 5/80
E21D 20/00〜21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル、定着具、支持板およびクリップを備え、前記ケーブルの上端が前記クリップによって前記定着具と前記支持板に固定される定抵抗・大変形のアンカーケーブルであって;
定抵抗装置を更に備え;
前記定抵抗装置は、スリーブと定抵抗体を備え、前記スリーブは直管構造を有し、前記定抵抗体は錐台構造を有し、前記定抵抗体の下端面の直径が前記定抵抗体の上端面の直径より大きく;
前記スリーブの内径が前記定抵抗体の下端面の直径より小さく、前記スリーブの内壁の下部には楔形部が設けられ、前記定抵抗体は前記楔形部に設けられ;
前記定抵抗体が前記スリーブ内を移動するとき、前記定抵抗体の形状が変化せずに、前記スリーブが塑性変形することにより定抵抗を発生するように、前記定抵抗体の強度が前記スリーブの強度より大きく;
前記ケーブルの下端が前記定抵抗体に固定され
前記スリーブの上端に滑り防止バッフルが固定され、前記ケーブルは前記滑り防止バッフルを貫通する、ことを特徴とする定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項2】
前記定抵抗体には複数の貫通孔が設けられ、前記貫通孔は錐台構造を有し、前記貫通孔の軸線は前記定抵抗体の軸線に平行であり、
前記ケーブルの下端は、前記クリップによって前記貫通孔の中に固定されることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項3】
前記スリーブの内壁の上部に仕切板が固定され、前記ケーブルは前記仕切板を貫通し、また、前記仕切板の上方の前記スリーブ内には防水防食材料が充填されることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項4】
前記定抵抗体の下端面は、前記貫通孔の中の前記クリップの脱落を防止するようにバッフルにより覆われることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項5】
前記バッフルには複数の第一孔が設けられ、前記ケーブルの下端がそれぞれ前記バッフルの第一孔を通ることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項6】
前記スリーブの下端には密封のためのガイドヘッドが設けられることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項7】
前記バッフルの中心には一つの第二孔が設けられ、一つのボルトが前記第二孔を貫通して、前記バッフルを前記定抵抗体の下端面に固定することを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項8】
前記ケーブルの上端には、前記ケーブルの応力状況を検出するための力学センサーが設けられ、
前記力学センサーは前記定着具と前記支持板との間に設けられることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項9】
前記ガイドヘッドの上端面に凹部が設けられることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項10】
前記防水防食材料は、パラフィン、アスファルト、及びグリースの混合材料であることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【請求項11】
前記ガイドヘッドの先端は、錐形、または、平坦な頂部を有する錐台であることを特徴とする請求項に記載の定抵抗・大変形のアンカーケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟岩斜面の安定性を監視し、又は早期警報することや地震発生断層(活断層)の活動性を監視することに適用される新たな材料に関し、特に定抵抗(恒阻)・大変形(大変形)のアンカーケーブルおよび定抵抗装置に関し、大変形破壊を起こす軟岩斜面における補強、監視及び早期警報を行う技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
20世紀の50年代以来、プレストレス技術の向上と、アンカー固定についての理論、設計方法および規格基準の段階的な整備と、アンカーケーブルの防食技術の継続的な進歩に伴い、プレストレス・アンカーケーブルは急速に発展している。現在では、岩石に使用されるプレストレス・アンカーケーブル一本当たりの支持力が16MNにも達している(ドイツ)。プレストレス・アンカーケーブルは、構造及び種類が様々であり、また、応用レベルの向上につれて改善されつつある。プレストレス・アンカー固定技術は、岩や土の補強工事が必要な各分野に広く応用され、数多くの工事がなされ実践経験が蓄積されてきた。
【0003】
しかしながら、軟岩斜面と活動性断層(活断層)の監視及び早期警告に係る分野では、従来のプレストレス・アンカーケーブルを力学伝送装置として使用するとき、問題が存在する。たとえば、すべり面における(滑り面と断層面の間の)滑り力がプレストレス・アンカーケーブル材料の強度を超えると、アンカーケーブルが破断し、力学信号伝送システムが破壊され、監視システム全体の失効という事態を発生し、地すべりの全過程を連続的に監視することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アンカーケーブルの強度だけに依存することにより、滑り力がプレストレス・アンカーケーブル材料の強度を超えると、アンカーケーブルが失効するという従来のアンカーケーブルの問題を解決するために、定抵抗・大変形のアンカーケーブルおよび定抵抗装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を実現するために、本発明により提供される定抵抗・大変形のアンカーケーブルが備える定抵抗装置は、ケーブルを固定接続するための定抵抗体とスリーブとを備え、前記スリーブは直管構造を有し、前記定抵抗体は錐台構造を有し、また、前記定抵抗体の下端面の直径はその上端面の直径より大きく;
前記スリーブの内径は前記定抵抗体の下端面の直径より小さく、前記スリーブの内壁の下部には楔形部が設けられ、前記定抵抗体は前記楔形部に設けられ;
前記定抵抗体が前記スリーブ内を移動するとき、前記定抵抗体の形状が変化せずに、前記スリーブが塑性変形することにより定抵抗を発生させるため、前記定抵抗体の強度が前記スリーブの強度より大きい定抵抗装置である。
【0006】
前記定抵抗装置の好ましい態様の一つにおいて、前記定抵抗体には複数の貫通孔が設けられ、前記貫通孔は錐台構造を有し、且つ前記貫通孔の軸線が前記定抵抗体の軸線に平行である。
【0007】
上述の目的を実現するため、本発明により提供される定抵抗・大変形のアンカーケーブルは、ケーブル、定着具、支持板(載荷板)およびクリップを備え、前記ケーブルの上端がクリップによって前記定着具と前記支持板に固定される定抵抗・大変形のアンカーケーブルであって;
定抵抗装置を更に備え;
前記定抵抗装置は、スリーブと定抵抗体を備え、前記スリーブは直管構造を有し、前記定抵抗体は錐台構造を有し、前記定抵抗体の下端面の直径が前記定抵抗体の上端面の直径より大きく;
前記スリーブの内径が前記定抵抗体の下端面の直径より小さく、前記スリーブの内壁の下部には楔形部が設けられ、前記定抵抗体は前記楔形部に設けられ;
前記定抵抗体が前記スリーブ内を移動するとき、前記定抵抗体の形状が変化せずに、前記スリーブが塑性変形することにより定抵抗を発生するように、前記定抵抗体の強度が前記スリーブの強度より大きく;
前記ケーブルの下端が前記定抵抗体に固定される。
【0008】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルによれば、前記定抵抗体には複数の貫通孔が設けられ、前記貫通孔は錐台構造を有し、前記貫通孔の軸線は前記定抵抗体の軸線に平行であり、
前記ケーブルの下端は前記クリップによって前記貫通孔の中に固定される。
【0009】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記スリーブの上端に滑り防止バッフルが固定され、前記ケーブルは前記滑り防止バッフルを貫通する。
【0010】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記スリーブの内壁の上部に仕切板が固定され、前記ケーブルは前記仕切板を貫通し、また、前記仕切板の上方の前記スリーブ内に防水防食材料が充填される。
【0011】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記定抵抗体の下端面は、前記貫通孔の中の前記クリップの脱落を防止するようにバッフルにより覆われる。
【0012】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記バッフルには複数の第一孔が設けられ、前記ケーブルの下端がそれぞれ前記バッフルの第一孔を貫通する。
【0013】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記スリーブの下端には密封のためのガイドヘッドが設けられる。
【0014】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記バッフルの中心には一つの第二孔が設けられ、一つのボルトが前記第二孔を貫通して、前記バッフルを前記定抵抗体の下端面に固定する。
【0015】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記ケーブルの上端には、前記ケーブルの応力状況を監視するための力学センサーが設けられ、
前記力学センサーは前記定着具と前記支持板との間に設けられる。
【0016】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記ガイドヘッドの上端面に凹部が設けられる。
【0017】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記防水防食材料は、パラフィン、アスファルト、グリース、または、これら成分を一定の比率の組成で混合した混合材料である。
【0018】
前記定抵抗・大変形のアンカーケーブルの好ましい態様の一つにおいて、前記ガイドヘッドは、錐形、または、平坦な頂部を有する錐台である。
【0019】
本発明により提供される、軟岩斜面と活断層の活動性の監視に適用される定抵抗・大変形のアンカーケーブルは、地すべり災害の監視や地震断層活動性の監視の観点から、岩石のすべり発生中において、すべり力がケーブルの極限強度を超えることによってケーブルが破断してその監視機能を失うことはなく、定抵抗体がスリーブ内を滑ることによって余剰すべり力の破断効果に抵抗する。本装置は、設計構造が合理的であり、使いやすく、「抵抗しつつ滑り(抵抗中に譲りあり)、滑りつつ抵抗し(譲り中に抵抗あり)、定抵抗で破断防止可能」という力学特性を有し、地すべり災害や地震断層活動の全過程を監視及び早期警告することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の好ましい実施例に係るアンカーケーブルの断面を模式的に示す。
【0021】
図2図2は本発明の好ましい実施例に係るアンカーケーブルのスリーブの断面を模式的に示す。
【0022】
図3図3は本発明の好ましい実施例に係るアンカーケーブルの定抵抗体の底面を模式的に示す。
【0023】
図4図4図3のA−A線に沿った断面を模式的に示す。
【0024】
図5図5は本発明の好ましい実施例に係るアンカーケーブルのバッフルの構造を模式的に示す。
【0025】
図6図6は本発明の好ましい実施例に係るアンカーケーブルの仕切板の構造を模式的に示す。
【0026】
図7図7は本発明の好ましい実施例において設置されたアンカーケーブルの、地すべり発生前の状態を模式的に示す。
【0027】
図8図8は本発明の好ましい実施例において設置されたアンカーケーブルの、地すべり発生後の状態を模式的に示す。
【0028】
図9図9は本発明の好ましい実施例に係る変位−引張力の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記において、開示する発明を添付の図面を引用しつつ説明する。
【0030】
従来技術の問題や不十分な点を踏まえ、本発明は、定抵抗・大変形の制御理論とアンカー構造(体系)の基礎原理とに基づき、軟岩斜面と活断層の補強、監視及び早期警告を実現できる定抵抗・大変形のアンカーケーブルを提供する。ケーブルに作用する荷重が設計閾値を超えると、ケーブルの下端に設置された定抵抗体とスリーブにより形成される定抵抗装置は、スリーブ内での定抵抗体の滑りによって、余剰荷重が生じる破断効果に抵抗することにより、ケーブルの破断を妨げることができる。
【0031】
図1は本発明の好ましい実施例のアンカーケーブルの構造を模式的に示す。図1に示すように、本発明の実施例のアンカーケーブルは、主にガイドヘッド1、定抵抗体5、スリーブ8、ケーブル7、仕切板9、滑り防止バッフル11、仕切板9と滑り防止バッフル11との間に充填される防水材料10、支持板12、定着具13、およびケーブル7を定着具13と定抵抗体5とに固定するためのクリップ(夾片、クリップシート)4を備える。使用時には、図7図8に示すように、ケーブル7の上端がクリップ4によって定着具13に固定され、支持板12が別に設けたアンカーブロックと当接する。
【0032】
図1図2に示すように、本発明の実施例のスリーブ8は、直管構造を有し、その内壁の下部には定抵抗体5を収納するための楔形部801が設けられる。楔形部801の傾斜面とスリーブ8の内壁とは小さな角度Lを成す。図1図3図4に示すように、本発明の好ましい実施例の定抵抗体5は錐台構造を有し、且つ、定抵抗体5の下端面の直径Dがその上端面の直径dより大きい。スリーブ8の内径が定抵抗体5の下端面の直径Dより小さい。定抵抗体5の強度はスリーブ8の強度より大きく設定され、たとえば、定抵抗体5は45番炭素鋼(中国の分類基準による名称)であれば、スリーブ8は20番炭素鋼であってもよい。定抵抗体5とスリーブ8の材料、定抵抗体5の側壁と下端面の間の角度、定抵抗体5の長さ、定抵抗体5の上端面の直径dと下端面の直径D、スリーブ8の肉厚、定抵抗体5の下端面の直径Dとスリーブ8の内径の差などは、いずれも、定抵抗体5がスリーブ8内を滑るときの摩擦力に関連するので、必要に応じて具体的な選択を行う。使用時、図7図8に示すように、斜面が下方へ滑るとき、定抵抗体5がケーブル7に引っ張られてスリーブ内を滑り、その滑り摩擦力によって本発明の好ましい実施例の定抵抗の効果を確保することができる。ただし、定抵抗体5がスリーブ8内を移動するとき、定抵抗体5の形状が変化せずスリーブ8が塑性変形するように、定抵抗体5とスリーブ8のパラメーターを選択することが好ましい。たとえば、定抵抗体5の材料が45番炭素鋼で、定抵抗体5の上端面の直径が93mm、定抵抗体5の下端面の直径が96mm、定抵抗体5の長さが150mmであり、スリーブ8の材料が20番炭素鋼で、スリーブ8の内径が93mm、スリーブ8の肉厚が20mmである場合、定抵抗体5とスリーブ8の間の定抵抗が850KNである。
【0033】
定抵抗体5にケーブル7を効率的且つ容易に固定するために、本発明の好ましい実施例では、定抵抗体5には、ケーブル7を引き通すとともに、クリップ4を収容するための複数の貫通孔500が設けられる。図3図4に示すように、貫通孔500の上端開口部501が定抵抗体5の上端面に位置し、貫通孔500の下端開口部502が定抵抗体5の下端面に位置する。上端開口部501は下端開口部502よりも直径が小さい。図から分かるように、貫通孔500は錐台構造を有する。各貫通孔500の軸線が定抵抗体5の軸線と平行である。各ケーブル7の下端がそれぞれクリップ4によって貫通孔500内に固定される。本発明の好ましい実施例では、ケーブルは6本であり、定抵抗体5の貫通孔500も6個であり、貫通孔500は定抵抗体5の軸線を中心として定抵抗体5内に均一的に配置される。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じてケーブルの数、貫通孔の設置方式を適当変更してよい。
【0034】
定抵抗体5が材料欠陥や製造欠陥の原因でスリーブ8から外れること、または、定抵抗体5が正常的にスリーブ8から外れることを防止するために、溶接などによってスリーブ8の上端に滑り防止バッフル11が固定される。滑り防止バッフル11にはケーブルを貫通させるための孔が設けられる。この孔の軸線と定抵抗体5の貫通孔500の軸線は同一直線上にあることは好ましい。
【0035】
設置場所では、軟岩にアンカーケーブルを固定(定着)する前に、既にケーブル7をクリップ4によって定抵抗体5の貫通孔500の下部に固定する。しかし、アンカーケーブルを固定する途中、ケーブル7の往復滑りでクリップ4の脱落を発生する可能性がある。かかるクリップ4の脱落を避けるために、図1図5に示すように、定抵抗体5の下端面はバッフル3により覆われる。バッフル3の中心に一つの孔302が設けられる。ボルト2が孔302を通って定抵抗体5の下端面の孔503に固定されることにより、バッフル3を定抵抗体5の下端面に固定することができる。バッフル3の周縁に複数の孔301が各ケーブル7ごとに設けられる。ケーブル7の下端に、それぞれ孔301を通らせることによって、アンカーケーブルを固定する途中、クリップ4の緩みやケーブル7の余裕分が少なくなってケーブル7を貫通孔500に固定できなくなることを防止する。
【0036】
本発明の定抵抗・大変形のアンカーケーブルを固定する場合、泥水や地下水がスリーブ8に進入して定抵抗体5とスリーブ8の内壁を腐食し、定抵抗効果を実現できないことを防ぐために、図1図6に示すように、スリーブ8の内壁の上部には仕切板9が固定され、ケーブル7が仕切板9の孔901を貫通し、また、仕切板9、滑り防止バッフル11とスリーブの内壁で形成される空間には、例えばパラフィン、アスファルト、または、パラフィン、アスファルトおよびグリースが一定の比率で混合された混合物である防水防食材料が充填される。同様に、仕切板9のケーブル7が通る孔901の軸線と定抵抗体5の貫通孔500の軸線とは同一直線上にあることは好ましい。
【0037】
スリーブ8と定抵抗体5の腐食を防止するために、本発明の実施例では、スリーブ8の下端には密封のガイドヘッド1が設けられる。好ましくは、ガイドヘッド1の先端が、錐形、または、平坦な頂部を有する錐台であってもよい。そして、ガイドヘッド1の上端面に凹部(凹溝、凹状の内槽、くぼみ)が設けられる。錐形構造によってケーブルを固定するときの抵抗を減少できる。また、凹部によって重量を減少し、構造を簡単にし、また、バッフル3から伸び出したケーブル7を収容できる。
【0038】
ケーブル7の引っ張り力を経時的に測定するために、ケーブル7の上端の定着具13と支持板12の間には力学センサー(図示せず)が設けられる。
【0039】
図7に示すように、本発明の好ましい実施例では、地すべりの発生前に、定抵抗・大変形のアンカーケーブルを、潜在的なすべり土塊(滑り面)htを貫いて、相対的に安定である基盤(滑り床)hcに固定するようにする。図8に示すように、地すべりの発生中において、すべり力が本実施例の設計定抵抗(すなわち、定抵抗体5とスリーブ8の間の静止摩擦力)より小さいとき、主にケーブル7の材料変形によってすべり力の増加に抵抗し、すべり力が本実施例の設計定抵抗より大きいとき、定抵抗体5がスリーブ8内を滑り、スリーブ8の構造変形によってすべり力の増加に抵抗する。これにより、岩体や土塊の大変形によるケーブル7の破断を防止することができる。
【0040】
岩体や土塊に大変形破壊が発生する場合、その変形エネルギーがケーブル7にかかり、ケーブル7の軸方向の引っ張り力を生じる。ケーブル7の軸方向の引っ張り力がケーブルの設計定抵抗より小さいとき、摩擦抵抗力の作用で定抵抗体5とスリーブ8の間に相対的変位が発生しない。このとき、力学センサーで測った作用力はケーブル7の弾性変形範囲(弾性範囲)内の軸方向の引っ張り力である。ケーブル7の軸方向の引っ張り力がケーブル7の設計定抵抗以上であるとき、定抵抗体5がスリーブ8を滑る。このとき、力学センサーで測った作用力は主に定抵抗である。定抵抗はスリーブ8と定抵抗体5の間の摩擦力であるので、すべり発生中において、スリーブ8の内部欠陥を考慮しない場合、定抵抗は一定であり、力学センサーで測った力も一定である。測定したデータによって図9に示すような引張力−変位の曲線を描画することができる。c1は従来のプレストレス・アンカーケーブルの引張力-変位曲線で、c2は従来の非プレストレス・アンカーケーブルの引張力−変位曲線で、c3は本実施例のプレストレス・アンカーケーブルの引張力−変位曲線である。この曲線から本実施例において、変形に抵抗するためのエネルギーや変形を吸収するためのエネルギーを計算することができる。力学センサーによって従来のストレスアンカーケーブルの力学情報を採集したとしても、従来のストレスアンカーケーブルは定抵抗の特徴がないため、エネルギー吸収の特性がなく、地すべりの全過程の変形エネルギーを科学的に計算できない。そのため、地すべりが発生しても、変形エネルギーやすべり力の大きさは得られない。
【0041】
上記のように、本発明によれば、すべり岩体が安定状態から不安定状態へ、すべりに近い状態から臨界すべり状態へ変化するとき、アンカーケーブル(または岩体)に作用するすべり力が次第に増加する。このすべり力が設計定抵抗を超えると、定抵抗体は、岩体又は土塊の大変形によりアンカーケーブルに生ずる破断効果に抵抗するように滑る。監視の観点からみて、本発明は、岩石のすべり発生中において、すべり力がアンカーケーブルの極限強度を超えても、ケーブルが破断してその監視機能を失うことはなく、定抵抗体がスリーブ内を滑ることによって余剰すべり力による破断効果に抵抗する。これにより、地すべりの全過程を経時的に監視することができる。本装置は、「抵抗しつつ滑り(抵抗中に譲りあり)、滑りつつ抵抗し(譲り中に抵抗あり)、定抵抗で破断防止可能」という力学特性を有し、地すべり災害の全過程を監視し、また早期警告することができる。
【0042】
発明を詳細に描写して説明したが、上記の説明は例示的なものであって限定的なものではない。従って、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が実施可能であるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9