特許第5771762号(P5771762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771762
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】水底自噴メタンガスの採取方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/01 20060101AFI20150813BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   E21B43/01
   E21B43/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-24374(P2015-24374)
(22)【出願日】2015年2月10日
【審査請求日】2015年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506409192
【氏名又は名称】成井 信
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】成井 信
(72)【発明者】
【氏名】山口 明人
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0118754(US,A1)
【文献】 特開2014−043680(JP,A)
【文献】 特開平10−121448(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0146546(US,A1)
【文献】 特開昭53−058402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/00
E21B 43/01
E21C 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕集ガス導出用パイプが連通され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を、メタンガスが自噴している水底のメタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガスの採取方法において、
前記捕集容器は筒状の胴部を有し、該胴部は下端が解放され上端が閉じられた逆さカップ状をなし、該胴部内をガス捕集空洞部とし、
且つ前記捕集容器には、内部の空気容積を変化させることによって浮力を調整するようにした浮力調整用空洞部を有する浮力調整装置と、該捕集容器を水中にて移動させる推進装置とを、該捕集容器に対して固定した配置に備え、
前記捕集ガス導出用パイプとして可撓性のある材料を使用し、該捕集ガス導出用パイプの先端を、前記内筒内のガス捕集空間の上部に連通させて前記捕集容器に連結し、
該捕集容器を前記浮力調整用空洞部内への注排水によって浮力を調整しつつ、前記推進装置を作動させて水底のメタンガス自噴箇所を覆う位置に沈め、前記自噴メタンガスを前記ガス捕集空間内に取り込み捕集ガス導出用パイプを通じて船上に導出させることを特徴とする水底自噴メタンガスの採取方法。
【請求項2】
前記捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部を前記ガス捕集空間とし、
前記外筒と内筒の間の空間を、前記浮力調整装置を構成する浮力調整用空洞部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整する請求項1に記載の水底自噴メタンガスの採取方法。
【請求項3】
前記捕集容器の胴部の上端を天井板により閉鎖することによって該捕集容器内に下側が解放した前記ガス捕集空間を形成し、該天井板を逆さ漏斗状に形成し、その上端部に捕集ガス導出用パイプを連通させた請求項1又は2に記載の水底自噴メタンガスの採取方法。
【請求項4】
前記推進装置は、回転軸心を水平方向に向けた水平移動用スクリューと、回転軸心を上下方向に向けた上下移動スクリューとを有する請求項1〜3の何れか1に記載の水底自噴メタンガスの採取方法。
【請求項5】
前記推進装置には、水平移動方向を規制する垂直方向舵及び上下移動方向を規制する水平方向舵を備え、前記捕集容器の沈降設置の際の移動方向をコントロールする請求項4に記載の水底自噴メタンガスの採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水底面から自噴しているメタンガスを採取する水底自噴メタンガスの採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水底地盤の表層や地盤内に存在しているメタンハイドレート(
Methane hydrate)からのメタンガスの採取技術の開発がなされている。
【0003】
メタンハイドレートは、水分子に閉じ込められたメタンガスが、海底地盤表面や地盤中の各種の深さで条件が揃うと水と共に凍り、氷塊となって存在するものであり、このメタンハイドレートの安定条件、即ち安定化を維持するための温度及び圧力の条件を崩すことによって氷塊からメタンガスを分離して取り出すことができる。
【0004】
しかし、1000m〜300mもの深さの水底面を掘削し、水底地盤表面や地盤内の深さ1000mもの深さに存在するメタンハイドレートを不安定化させるメタンガスの採掘は、他の化石燃料の代替とするには採掘コストがかかり過ぎ、実現化が困難な状況となっている。
【0005】
一方、メタンハイドレートの埋蔵個所には、水底の地表からメタンガスが噴出し、高さ数百mにも達するメタンガス気泡の上昇柱(メタンプルーム)が発生していることが知られている。
【0006】
このメタンプルームは、海底表面の特殊な地形、即ち直径数百mの円形の窪地周囲のいわば外輪山状の盛り上がり部分の頂部から噴出していることが知られている。
【0007】
この水底から自噴しているメタンプルームは、水中を上昇している間に徐々に水中に溶け込み、水面に達する以前に気泡が消滅している。
【0008】
このメタンプルームの気泡を水底面付近で捕集し、パイプを通して水面上の船舶に導き、ガスタンクに注入するようにした水底自噴メタンガスの採取方法が開発されている(例えば特許文献1)。この技術は、水面上の作業船より剛性のあるパイプを順次連結しながら垂下させ、その先端に傘状の捕捉器を固定しておき、これをメタンガス噴出口上に位置させ、捕捉器内に上昇してくるメタンガスを捕捉し、パイプを通して作業船上に導き、所定の加圧タンク内に加圧注入しようとする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−201875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のメタンプルームからのガス捕集技術では、水面上の作業船から水底面のメタンガスが噴出している個所まで剛性のある鋼管を垂下する必要があり、通常メタンプルームの水深は300mから1000m以上もの深さにあるため、捕集器を予定の位置まで到達させるための作業に困難を伴う。
【0011】
近年においては、水底面上の一定の位置に船舶を停止させ、数千mの海底地盤に数千mものボーリングを行う技術や数千mもの水底で作業を行う無人の潜水艇が存在しているが、これらは極めて高精度で高性能の技術を結集したものであり、その使用コストが多大となり、メタンプルームからのガス採取に使用するのでは、捕集したメタンガスが既存の化石燃料に比べて高価なものとなり、採算が取れないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、低コストで水底のメタンプルームからのガス捕集が可能な水底自噴メタンガスの採取方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、捕集ガス導出用パイプが連通され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を、メタンガスが自噴している水底のメタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガスの採取方法において、前記捕集容器は筒状の胴部を有し、該胴部は下端が解放され上端が閉じられた逆さカップ状をなし、該胴部内をガス捕集空洞部とし、且つ前記捕集容器には、内部の空気容積を変化させることによって浮力を調整するようにした浮力調整用空洞部を有する浮力調整装置と、該捕集容器を水中にて移動させる推進装置とを該捕集容器に対して固定した配置に備え、前記捕集ガス導出用パイプとして可撓性のある材料を使用し、該捕集ガス導出用パイプの先端を、前記内筒内のガス捕集空間の上部に連通させて前記捕集容器に連結し、該捕集容器を前記浮力調整用空洞部内への注排水によって浮力を調整しつつ、前記推進装置を作動させて水底のメタンガス自噴箇所を覆う位置に沈め、前記自噴メタンガスを前記ガス捕集空間内に取り込み捕集ガス導出用パイプを通じて船上に導出させることにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部を前記ガス捕集空間とし、前記外筒と内筒の間の空間を、前記浮力調整装置を構成する浮力調整用空洞部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整することにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記捕集容器の胴部の上端を天井板により閉鎖することによって該捕集容器内に下側が解放した前記ガス捕集空間を形成し、該天井板を逆さ漏斗状に形成し、その上端部に捕集ガス導出用パイプを連通させたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1の構成に加え、前記推進装置は、回転軸心を水平方向に向けた水平移動用スクリューと、回転軸心を上下方向に向けた上下移動スクリューとを有することにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記推進装置には、水平移動方向を規制する垂直方向舵及び上下移動方向を規制する水平方向舵を備え、前記捕集容器の沈降設置の際の移動方向をコントロールすることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明は請求項1のように、捕集ガス導出用パイプが連通され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を、メタンガスが自噴している水底のメタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガスの採取方法において、前記捕集容器は筒状の胴部を有し、該胴部は下端が解放され上端が閉じられた逆さカップ状をなし、該胴部内をガス捕集空洞部とし、且つ前記捕集容器には、内部の空気容積を変化させることによって浮力を調整するようにした浮力調整用空洞部を有する浮力調整装置と、該捕集容器を水中にて移動させる推進装置とを該捕集容器に対して固定した配置に備え、前記捕集ガス導出用パイプとして可撓性のある材料を使用し、該捕集ガス導出用パイプの先端を、前記内筒内のガス捕集空間の上部に連通させて前記捕集容器に連結し、該捕集容器を前記浮力調整用空洞部内への注排水によって浮力を調整しつつ、前記推進装置を作動させて水底のメタンガス自噴箇所を覆う位置に沈め、前記自噴メタンガスを前記ガス捕集空間内に取り込み捕集ガス導出用パイプを通じて船上に導出させるようにすることにより、捕集容器を支援船とは別に独自の推進装置によって垂直、水平移動させつつ沈降されるものであるため、従来の鋼管の下に捕集器を固定して所定位置に降下させるものに比べ、潮流がある場所においても高度な操船技術を要することなく捕集容器のみを所定の位置に沈設することができる。
【0019】
また、使用する捕集容器は、水底のメタンブルームが発生している噴出口を覆うのみで良いため、大きさは沈設操作に便利な適宜の大きさとすることができ、しかも鋼製の逆さカップ状をした簡易なもので良いため、設備費が少なくて済み、広範にガス噴出口が存在している場合は、使用する捕集容器の数を多くすることによって容易に対応でき、従来の化石燃料の採掘に比べた場合のコスト的な不利が解消される。
【0020】
本発明は請求項2のように、捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部を前記ガス捕集空間とし、前記外筒と内筒の間の空間を、前記浮力調整装置を構成する浮力調整用空洞部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整するようにしたことにより、従来の鋼殻ケーソンの技術を利用することができ、捕集容器製造のための技術的困難さはなく、信頼性の高い浮力調整機能付きの捕集容器が容易に製造できる。
【0021】
本発明は請求項3のように、捕集容器の胴部の上端を天井板により閉鎖することによって該捕集容器内に下側が解放した前記ガス捕集空間を形成し、該天井板を逆さ漏斗状に形成し、その上端部に捕集ガス導出用パイプを連通させることにより、捕集容器内に上昇したガスの導出が効率よくなされる。
【0022】
本発明は請求項4のように推進装置を、回転軸心を水平方向に向けた水平移動用スクリューと、回転軸心を上下方向に向けた上下移動スクリューとを有するものを使用することにより、水平移動を独自に行うことができ、沈降速度を高くでき、ホバーリングが容易となり、所定位置への沈設作業が効率よくできる。
【0023】
本発明は請求項5のように推進装置には、水平移動方向を規制する垂直方向舵及び上下移動方向を規制する水平方向舵を備え、前記捕集容器の沈降設置の際の移動方向をコントロールすることにより、水中での移動が容易かつ正確になされうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明方法における捕集容器沈設の概略を示しており、捕集容器沈設途中の状態を示す側面図である。
図2】同上の捕集容器沈設後の状態を示す側面図である。
図3】同上の捕集容器の一例を示す縦断面図である。
図4】同平面図である。
図5】本発明方法に使用する推進装置の他の例を示すものであり、(a)(b)は、スクリュー軸の角度を変化させた状態の部分正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を、実施例の図面に基づいて説明する。
【0026】
本発明に係る水底自噴メタンガスの採取方法は、図1に示すように海底に噴出しているメタンプルームaをソナーや海底探査潜水艇を使用して探査し、ガス採取に適切な噴出口bを選び、その近くに音波発信装置(超音波ソナー)を置いておく。
【0027】
また、メタンプルームaは、水底面の噴出口b付近では気泡となって柱状に上昇しているが、上昇するにしたがってガスが水に吸収されて気泡が小さくなり、水底から300m程度に達すると全てが水に溶け込んで気泡は消滅する。従ってメタンプルームからのメタンガスの捕集は、ガスが噴出している水底面において、ガスが水に溶け込む以前に行うことが最も効率的である。
【0028】
この方法では、直径が10m程度から数10m程度、高さが直径と同程度の逆さカップ状をした鋼製の捕集容器Aを使用する。これを例えば船舶やケーソン製造用のドック、進水設備を備えた陸上のケーソン製作ヤードで製作し、自らの浮力を利用して海上を曳航する。尚捕集容器Aの大きさによっては、作業船に搭載して移動させ、沈設域付近で水面上に吊り降ろして浮上させてもよい。
【0029】
この捕集容器Aを支援船B上よりコントロールして所望のメタンプルームaの噴出口bの周囲上方を覆う配置に沈設する。尚、沈設後の姿勢は噴出しているガスが捕集容器A内に捕集できる姿勢であればよく、水底面に不陸や傾斜があったとしても、これに沿った傾きで沈設されればよい。
【0030】
捕集容器Aの沈設は、予め沈設位置として設置した音波発信装置からの音波を目標にして行う。沈降は捕集容器A自体に備えた浮力調整機能及び水平及び上下方向の推進装置によって行う。沈設に際しては、捕集したガスを水上に送る捕集ガス導出用パイプCの先端を捕集容器Aの内部空間上端部に連通させた状態で固定し、捕集ガス導出用パイプCを沈設支援船B上から繰り出しつつ、捕集容器A自身の機能によって、沈降しつつ所定の位置に水平移動させて沈設する。
【0031】
沈設後には、捕集容器A内に捕集された自然噴出しているガスを捕集ガス導出用パイプCを通して沈設支援船B上に導出させ、所定の圧力容器内に加圧状態で蓄蔵し、所定の量に達する毎に、ガス運搬船に移して陸上の貯蔵所に移す。
【0032】
次に、メタンプルームaを捕集する捕集容器Aの具体例について説明する。
【0033】
この捕集容器Aは、筒状をした中空の胴部2を有し、その下端が解放され上端が天井板3により閉鎖された逆さカップ状に形成されている。胴部2は下端側の直径が上端側より広いテーパ筒状をしている。
【0034】
胴部2の大きさは、水底面から噴出しているメタンプルームの大きさにもよるが、製造及び沈設作業の経済性を考慮すると直径十数メートルで、高さが直径と同高さ程度が好ましい。
【0035】
胴部2は鋼板性の外筒2aと内筒2bとによる2重壁構造となっており、両筒2a,2b間にスペーサを介在させて、所定の間隔を維持させている。この2重壁間に、浮力調整用空洞部4が形成されており、内部空洞の容積を調整することによって、浮力を調整するようになっている。また、2重壁構造は、水圧に対する補強の役目をも受け持つ。
【0036】
尚、この浮力調整用空洞部4は、胴部2の上半部に、その週方向に複数設け、各浮力調整用空洞部4、4......の浮力を個別に調整することによって捕集容器A全体の姿勢を制御するようにしている。
【0037】
浮力調整用空洞部4内への注水は、底部の注排水バルブ20を開くとともに上部の排気バルブ21を開くことにより、注水・排気することによって浮力を減少させる。また、浮力の増加は、排気バルブ21を閉じ、底部の注排水バルブ20を開き高圧空気を充填した空気ボンベ22から空気を注入し、注入された空気容積分の水を排出することによって行う。
【0038】
胴部2の上端には、鋼材を使用した桁材による格子状の天端補強構6が、天端内を閉じる配置に一体化され、その下側に天井板3が固定され、該天井板3により胴部2の上端を気密に閉鎖している。この天井板3によって上端が閉じられた内筒2b内がガス捕集空洞部8となっている。
【0039】
この天井板3は、図3に示すように中央部分を高くした逆さ漏斗状に形成され、その中央部分に排気口7が形成され、該排気口7に捕集ガス導出用パイプCが連結されている。
【0040】
この捕集ガス導出用パイプCには、電源コード及びコントロール用コード等の所望の電線(umbilical cable、図示せず)を埋設しており、前述したバルブの開閉用等の各種電動装置の電源を供給するとともにこれらをコントロールする信号を沈設支援船Bから送ることができるようになっている。尚、上記の各種伝動機器のコントロールは、無線装置によって行わせるようにしてもよい。
【0041】
捕集容器Aには、沈降及び水平移動のための推進装置が装備されている。この推進装置として、一対の水平移動スクリュー11,11及び上下移動スクリュー12,12とを使用し、それぞれ図示しないが電動モータにて駆動されるようになっている。
【0042】
水平移動スクリュー11,11は、胴部2の外周面の対称な位置に回転軸を水平方向に向けて取り付けられ、その後方に方向舵13を有している。この方向舵の角度をパルスモータ等の駆動器によって必要な向きに変換することによって推進方向を調整することができるようになっている。
【0043】
また、水平移動スクリュー11,11の回転速度及び正逆回転のコントロールができるようになっており、回転方向を変化させることによって捕集容器A全体の向きを変更させることもできる。
【0044】
上下移動スクリュー12,12は、胴部2の外周にあって前述した水平移動スクリュー11,11とは、胴部週方向に90度ずらせた位置に設置され、回転軸を上下方向に向け、胴部2の外側に突設させた構造となっており、電動モータにて駆動されるようになっている。この上下移動スクリュー12,12は、回転速度及び正逆回転のコントロールができるようになっており、沈降速度、上昇速度を調整することができるようになっている。
【0045】
胴部2の下部外周にはライト付カメラ14が複数設置され、このカメラを通じて水底を船上にて監視できるようになっている。
【0046】
尚、この例では、捕集容器Aに設置した機器類の動力源を捕集ガス導出用パイプCに沿わせた電源コードを通じて船上から供給するようにしているが、電源にリチューム電池を使用し、無線コントロールにより各機器を作動させるようにしてもよい。
【0047】
この捕集容器Aの沈降作業は、浮力調整用空洞部4の浮力を調整して水面上に浮かべ、捕集ガス導出用パイプCを沈設支援船B上から繰り出しつつ浮力調整用空洞部4内に注水して浮力を減じることによって沈降させる。
【0048】
沈降中の捕集容器Aの位置は、捕集容器Aに取り付けた水深計(図示せず)からのデータ及び沈設支援船Bに備えたソナーによって確認し、水平移動スクリュー11によって潮流によって目標位置からずれないようにコントロールしながら沈降させる。また浮力調整による沈降させるとともに上下移動スクリュー12によって沈降速度をコントロールする。また着底時の沈降速度の減速や着底直前にホバーリングさせ、水平移動スクリュー11による水平位置の微調整を行う。
【0049】
これらの位置調整作業は水中カメラからのデータを沈設支援船B上で視認しつつ捕集容器Aに備えた各種機器を操作し、所定の位置に沈設させる。
【0050】
また、図には示してないが、無人の潜水艇を沈設の支援に使用し、沈降状態や水底面の状態などの画像情報を沈設支援船B上に送り、これを目視しつつ作業を進めてもよい。
【0051】
更に、最終沈設位置への移動は、メタンプルームaの真上から外れた水平位置の水底面近くへ捕集容器Aを降下させることにより、ガスが捕集容器A内に入り、捕集ガス導出用パイプCを通って船上まで上昇するのを防止し、水底面近くで捕集容器Aを水平移動させてメタンプルームa上にかぶせるようにすることが好ましい。
【0052】
メタンプルームa上に移動させることによって、ガスが捕集容器A内に入り、その上端部内にガスが溜まることになるが、その時のガスの浮力によって捕集容器Aが浮き上がらないように、捕集ガス導出用パイプCの上端を開け、ガスによって押し上げられる該捕集ガス導出用パイプC内の水を排出させ、水の排出が終わった後に排出されるガスを、沈設支援船B上の貯留タンクに収容する。
【0053】
上述した装置では、捕集容器Aの沈降位置をコントロールする推進装置として、水平方向、垂直方向の推進力を持つ2種類のスクリューを使用したが、この他、図5に示すように、スクリュー15の回転軸の軸心16方向を、水平軸17を中心にして360度旋回させることができる推進装置を捕集容器Aの左右対称位置に2基設置し、これによって捕集容器Aの沈降方向をコントロールさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
A 捕集容器
B 沈設支援船
C 捕集ガス導出用パイプ
a メタンプルーム
b 噴出口
2 胴部
2a 外筒
2b 内筒
3 天井板
4 浮力調整用空洞部
6 天端補強構
7 排気口
8 ガス捕集空洞部
11 水平移動スクリュー
12 上下移動スクリュー
13 方向舵
14 ライト付カメラ
15 スクリュー
16 軸心
17 水平軸
20 注排水バルブ
21 排気バルブ
22 空気ボンベ
【要約】
【課題】低コストで水底のメタンプルームからのガス捕集が可能な水底自噴メタンガスの採取方法の提供。
【解決手段】下端が解放され上端が閉じられた逆さカップ状をした筒状の胴部を有し、胴部内をガス捕集空洞部とした捕集容器を使用し、これに浮力調整装置と、水中を移動するための推進装置とを備え、この捕集容器に捕集ガス導出用パイプの先端を連通させて連結し、浮力調整装置によって捕集容器の浮力を調整しつつ、推進装置を作動させて、水底のメタンガス噴出口を覆う位置に沈め、捕集容器内に噴出したメタンガスを、捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5