特許第5771763号(P5771763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771763
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】水底自噴メタンガス捕集装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/01 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   E21B43/01
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-24376(P2015-24376)
(22)【出願日】2015年2月10日
【審査請求日】2015年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506409192
【氏名又は名称】成井 信
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】成井 信
(72)【発明者】
【氏名】山口 明人
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0118754(US,A1)
【文献】 特開2003−129527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0146546(US,A1)
【文献】 特開2014−043680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/00
E21B 43/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕集ガス導出用パイプが連通され、天端が閉鎖され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を有し、メタンガスが自噴している水底メタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガス捕集装置において、
前記捕集容器上端部内に前記捕集ガス導出用パイプに連通したガス導出口を連通させ、
且つ、前記捕集容器の前記ガス導出口より低い位置に、該捕集容器の内外に連通させた水位調整用排気孔を備え、
前記捕集容器の頂部内に水底メタンガス噴出口から噴出しているガスを貯留させるガス溜りを前記水位調整用排気孔より上側に形成させつつ該ガス溜り内のガスを前記ガス導出口より前記捕集ガス導出用パイプに送り出させるようにしたことを特徴としてなる水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項2】
前記捕集ガス導出用パイプからのガス導出量を調節する流量調整弁を備え、該流量調整弁を調整することにより、前記水底メタンガス噴出口から捕集容器内に捕集されたメタンガスによるガス溜りを形成させる請求項1に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項3】
前記捕集容器内には、前記ガス溜り下の水位を検出する水位検出手段を備え、前記流量調整弁の調整によって該水位が一定以下になるようにコントロールできるようにした請求項2に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項4】
前記水位調整用排気孔は、捕集容器の胴部に、その内外に連通させた開口である請求項1〜3の何れか1に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項5】
前記捕集容器を貫通させてその内部に挿入した排気用パイプの下端開口を前記水位調整用排気孔とし、かつ前記排気用パイプの下端の高さを上下に変動させる排気用パイプ下端高さ調整装置を備え、前記水位調整用排気孔である排気用パイプの下端開口高さを調節可能とした請求項1〜3に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項6】
前記捕集容器は、鋼製板材をもって筒状に形成した胴部を有し、該胴部の上端を閉鎖する天板をもって閉鎖し、自重によって水底沈設状態が維持されるようにした請求項1〜5の何れか1に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項7】
前記捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部をガス捕集空間とし、
前記外筒と内筒の間の空間を、浮力調整装置を構成する浮力調整用空胴部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整できるようにした請求項1〜6の何れか1に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【請求項8】
前記捕集容器に、自力で水中を航行可能な推進装置を備え、前記浮力調整装置により浮力を調整しつつ所定の沈設位置に移動可能とした請求項7に記載の水底自噴メタンガス捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水底面から自噴しているメタンガスを捕集するための水底自噴メタンガス捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水底地盤の表層や地盤内に存在しているメタンハイドレート(
Methane hydrate)からのメタンガスの採取技術の開発がなされている。
【0003】
メタンハイドレートは、水分子に閉じ込められたメタンガスが、海底地盤表面や地盤中の各種の深さで条件が揃うと水と共に凍り、氷塊となって存在するものであり、このメタンハイドレートの安定条件、即ち安定化を維持するための温度及び圧力の条件を崩すことによって氷塊からメタンガスを分離して取り出すことができる。
【0004】
しかし、1000m〜300mもの深さの水底面を掘削し、水底地盤表面や地盤内の深さ1000mもの深さに存在するメタンハイドレートを不安定化させるメタンガスの採掘は、他の化石燃料の代替とするには採掘コストがかかり過ぎ、実現化が困難な状況となっている。
【0005】
一方、メタンハイドレートの埋蔵個所には、水底の地表からメタンガスが噴出し、高さ数百mにも達するメタンガス気泡の上昇柱(メタンプルーム)が発生していることが知られている。
【0006】
このメタンプルームは、海底表面の特殊な地形、即ち直径数百mの円形の窪地周囲のいわば外輪山状の盛り上がり部分の頂部から噴出していることが知られている。
【0007】
この水底から自噴しているメタンプルームは、水中を上昇している間に徐々に水中に溶け込み、水面に達する以前に気泡が消滅している。
【0008】
このメタンプルームの気泡を水底面付近で捕集し、パイプを通して水面上の船舶に導き、ガスタンクに注入するようにした水底自噴メタンガスの採取方法が開発されている。この技術には、水面上の作業船より剛性のあるパイプを順次連結しながら垂下させ、その先端に傘状の捕捉器を固定しておき、これをメタンガス噴出口上に位置させ、捕捉器内に上昇してくるメタンガスを捕捉し、パイプを通して作業船上に導き、所定の加圧タンク内に加圧注入しようとするもの(特許文献1)がある。
【0009】
また、メタンハイドレートからのメタンガスを捕集するものとして、ドーム状のシートで水底表層のメタンハイドレートを覆い、その中に温水を供給することによって氷塊状のメタンハイドレートを不安定化させ、これによって発生するメタンガスをドーム状のシート内に捕集し、これを水上へ輸送管を通して送り出すようにしたもの(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−201875号公報
【特許文献2】特開2000−282775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1に示されているメタンプルームからのガス捕集技術では、水面上の作業船から水底面のメタンガスが噴出している個所まで剛性のある鋼管を垂下する必要があり、しかもガス捕集中においても捕捉器を、水上の船舶から鋼管を通じてガス自噴口上に保持させなければならない。しかし、通常メタンプルームの水深は300mから1000m以上もの深さにあるため、捕集器を予定の位置まで到達させ、しかもその位置で停止させて置く作業に困難を伴う。
【0012】
近年においては、水底面上の一定の位置に船舶を停止させ、数千mの海底地盤に数千mものボーリングを行う技術や数千mもの水底で作業を行う無人の潜水艇が開発されているが、これらは極めて高精度で高性能の技術を結集したものであり、その使用コストが多大となり、メタンプルームからのガス採取に使用するのでは、捕集したメタンガスが既存の化石燃料に比べて高価なものとなり、採算が取れないという問題がある。
【0013】
また、特許文献2に示されている方法は、水底のメタンハイドレートの表面をシートで覆いその中に温水を供給することによってメタンガスを氷塊から分離させ、これをドーム状のシート内に捕集しようとするものであり、自噴しているメタンハイドレートからのメタンガス捕集に使用するには、自噴ガスの状態や、海流の状況によって設置が困難となる場合が多いという問題がある。
【0014】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、水底への設置が容易であり、設置後において自噴ガス量の変動に追従して安全にガスの捕集・導出がなされる水底自噴メタンガス捕集装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した従来の問題を解決するための請求項1の発明は、捕集ガス導出用パイプが連通され、天端が閉鎖され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を有し、メタンガスが自噴している水底メタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガス捕集装置において、前記捕集容器上端部内に前記捕集ガス導出用パイプに連通したガス導出口を連通させ、且つ、前記捕集容器の前記ガス導出口より低い位置に、該捕集容器の内外に連通させた水位調整用排気孔を備え、前記捕集容器の頂部内に水底メタンガス噴出口から噴出しているガスを貯留させるガス溜りを前記水位調整用排気孔より上側に形成させつつ該ガス溜り内のガスを前記ガス導出口より前記捕集ガス導出用パイプに送り出させるようにしたことにある。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加え、捕集ガス導出用パイプからのガス導出量を調節する流量調整弁を備え、該流量調整弁を調整することにより、前記水底メタンガス噴出口から捕集容器内に捕集されたメタンガスによるガス溜りを形成させることにある。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加え、前記捕集容器内には、前記ガス溜り下の水位を検出する水位検出手段を備え、前記流量調整弁の調整によって該水位が一定以下になるようにコントロールできるようにしたことにある。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1の構成に加え、水位調整用排気孔は、捕集容器の胴部に、その内外に連通させた開口であることにある。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜3の何れか1の構成に加え、前記捕集容器を貫通させてその内部に挿入した排気用パイプの下端開口を前記水位調整用排気孔とし、かつ前記排気用パイプの下端の高さを上下に変動させる排気用パイプ下端高さ調整装置を備え、前記水位調整用排気孔である排気用パイプの下端開口高さを調節可能としたことにある。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1の構成に加え、捕集容器は、鋼製板材をもって筒状に形成した胴部を有し、該胴部の上端を閉鎖する天板をもって閉鎖し、自重によって水底沈設状態が維持されるようにしたことにある。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1の構成に加え、捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部をガス捕集空間とし、前記外筒と内筒の間の空間を、浮力調整装置を構成する浮力調整用空胴部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整できるようにしたことにある。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7の構成に加え、捕集容器に、自力で水中を航行可能な推進装置を備え、前記浮力調整装置により浮力を調整しつつ所定の沈設位置に移動可能としたことにある。
【発明の効果】
【0023】
本発明は請求項1のように、捕集ガス導出用パイプが連通され、天端が閉鎖され、下側が解放した逆さカップ状の捕集容器を有し、メタンガスが自噴している水底メタンガス噴出口を覆う配置に設置し、前記捕集容器内に噴出したメタンガスを、前記捕集ガス導出用パイプを通して船上に導出する水底自噴メタンガス捕集装置において、前記捕集容器上端部内に前記捕集ガス導出用パイプに連通したガス導出口を連通させ、且つ、前記捕集容器の前記ガス導出口より低い位置に、該捕集容器の内外に連通させた水位調整用排気孔を備え、前記捕集容器の頂部内に水底メタンガス噴出口から噴出しているガスを貯留させるガス溜りを前記水位調整用排気孔より上側に形成させつつ該ガス溜り内のガスを前記ガス導出口より前記捕集ガス導出用パイプに送り出させるようにしたことにより、捕集容器から捕集ガス導出用パイプへは、ガスのみが送り込まれることとなるため、メタン成分の水への溶け込みが少なく、濃度の高い状態のガスが採取され、ガス採取支援船上での水とメタンガス成分との分離工程を経ることなく貯留できることとなり、良質のガスが効率よく採取できる。
【0024】
本発明は、請求項2のように、捕集ガス導出用パイプからのガス導出量を調節する流量調整弁を備え、該流量調整弁を調整することにより、前記水底メタンガス噴出口から捕集容器内に捕集されたメタンガスによるガス溜りを形成させることにより、水底面から捕集容器に取り込まれたガスの全量を線状に送ることができ、採取効率が良い。
【0025】
本発明は、請求項3のように、捕集容器内には、前記ガス溜り下の水位を検出する水位検出手段を備え、前記流量調整弁の調整によって該水位が一定以下になるようにコントロールできるようにしたことにより、水底面からのガス噴出量に変動があっても、これに対応してガス溜りを常時一定以上の量に維持することができ、採取効率がよい。
【0026】
本発明は、請求項4のように、水位調整用排気孔は、捕集容器の胴部に、その内外に連通させた開口であることにより、排気孔の形成が容易であり、低コストで作成できる。
【0027】
本発明は、請求項5のように、前記捕集容器を貫通させてその内部に挿入した排気用パイプの下端開口を前記水位調整用排気孔とし、かつ前記排気用パイプの下端の高さを上下に変動させる排気用パイプ下端高さ調整装置を備え、前記水位調整用排気孔である排気用パイプの下端開口高さを調節可能としたことにより、ガス溜りが最大量となる時のガス量を変化させることができ、水底面からのガス噴出量の広い変動幅に対応できる。
【0028】
本発明は、請求項6のように、捕集容器は、鋼製板材をもって筒状に形成した胴部を有し、該胴部の上端を閉鎖する天板をもって閉鎖し、自重によって水底沈設状態が維持されるようにしたことにより、特別の係留設備を要せずに容易に水底での沈設状態を維持させることができる。
【0029】
本発明は、請求項7のように、捕集容器は、鋼製の外筒と内筒とをからなる2重筒状の胴部を有し、該内筒の内部をガス捕集空間とし、前記外筒と内筒の間の空間を、浮力調整装置を構成する浮力調整用空胴部とし、該空洞部内に注排水することによって前記捕集容器の浮力を調整できるようにしたことにより、捕集容器の強靭性を高めることができ、しかも浮力調整のためのタンクの設置が容易となる。
【0030】
本発明は、請求項8のように、捕集容器に、自力で水中を航行可能な推進装置を備え、前記浮力調整装置により浮力を調整しつつ所定の沈設位置に移動可能とすることにより、海流や風のある水面上でガス採取支援船を定位置に止めておくという高度の技術が不要となり、所定位置への沈設が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る水底噴出メタンガス捕集装置の第一実施例の概略構成を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る水底噴出メタンガス捕集装置の第二実施例の概略構成を示す縦断面図である。
図3】同上の装置における捕集容器の他の例を示す縦断面図である。
図4】同上の装置における捕集容器の更に他の例を示す縦断面図である。
図5】本発明にかかる水底噴出メタンガス捕集装置の捕集容器沈設方法の一例の側面図である。
図6】同捕集容器沈設方法の他の例の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態を、実施例の図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は本発明に係る水底自噴メタンガス捕集装置の第一実施例の概略構成を示している。図において符号Aは捕集容器を示している。この捕集容器Aは、筒状をした胴部1の天端が天井板2で閉鎖され、下端側を解放した逆さカップ状に成形されている。
【0034】
捕集容器Aの天井板2は、中央を高くした逆さ漏斗状に形成され、その頂部にガス導出口3が開口されている。このガス導出口3には、リモートコントロールによって開閉動作及び開き度調整される流量調整弁4が取り付けられ、その外側に捕集ガス導出用パイプ5の下端が固定されている。尚、流量調整弁4は、捕集容器Aではなく、ガス採取支援船B上に設けてもよい。
【0035】
捕集ガス導出用パイプ5は、水底における水圧と水面上の大気圧との差圧によっても変形しない耐圧性を有するとともに湾曲可能な可撓性耐圧ホースを使用する。
【0036】
また、このホースには前述した流量調整弁4の作動のための電源コードや後述する水位センサーに通じる電線や光ファイバー等の連繋ケーブル(umbilical cable)を沿わせて固定している。
【0037】
捕集容器Aの胴部1には、天井板2より所定の高さだけ低い位置に、複数の水位調整用排気孔6a,6b,6cが開口されている。この水位調整用排気孔6a,6b,6cは、その高さを順次違えて設置している。
【0038】
捕集容器A内には、最も高い位置の水位調整用排気孔6aより上側に、水位検出器7a,7b,7cが上下に位置を違えて設置されており、各水位検出器7a,7b,7cは、これが水没しているか否か、即ち、捕集容器A内に捕集されたガス溜り8にあるか、その下の水中にあるかを感知させるものである。
【0039】
最も上側の水位検出器7aは、ガス導出口3の近くに、最も下側の水位検出器7cは、最も上側の水位調整用排気孔6aの上側に近接した高さ位置に、中間の水位検出器7bは、上下の両水位検出器7a,7cの中間高さ位置に設置しておく。
【0040】
各水位検出器としては、水位の上下に伴って上下するフロートと該フロートの上下に伴って動作する磁石、該磁石の接近・離反によってオン・オフされる近接スイッチを用いた電気式水位検出器、或は上記近接スイッチに代えて、磁石が接近・離反することによって反射光の強さがかわるファラデー近接センサーと、このファラデー近接センサーに対する照射光と反射光を通す光ファイバーを使用した光水位検出器が使用できる。
【0041】
この水底自噴メタンガス捕集装置には、本例では、直径が10m程度から数10m程度、高さが直径と同程度の逆さカップ状をした鋼製の捕集容器Aを使用する。これを例えば船舶やケーソン製造用のドック、進水設備を備えた陸上のケーソン製作ヤードで製作し、浮力を利用して上端を水面上に出した状態で海上を曳航する。また、捕集容器Aの大きさによっては、作業船に搭載して移動させ、沈設域付近で水面上に吊り降ろして浮上させてもよい。
【0042】
曳航時の浮力は、後述する流量調整弁4を閉じ、捕集容器A内に空気溜りを作ることによってもよく、また、後述する二重筒状の胴部1の外筒1aと内筒1bとの間の空間の浮力を利用してもよい。
【0043】
この捕集容器Aを、ガス採取支援船B上よりコントロールして所望のメタンプルームaの噴出口bの周囲上方を覆う配置に沈設する。尚、沈設後の姿勢は噴出しているガスが捕集容器A内に捕集できる姿勢であればよく、水底面に不陸や傾斜があったとしても、これに沿った傾きで沈設されればよい。
【0044】
捕集容器Aの沈設は、予め沈設位置として設置した音波発信装置からの音波を目標にして行う。沈降は捕集容器A自体に備えた浮力調整機能及び水平及び上下方向の推進装置によって行う。沈設に際しては、捕集したガスをガス採取支援船B上に送る捕集ガス導出用パイプ5の先端を捕集容器Aの内部空間上端部に連通させた状態で固定し、捕集ガス導出用パイプ5を沈設支援船上から繰り出しつつ、捕集容器A自身の機能によって、沈降しつつ所定の位置に水平移動させて沈設する。
【0045】
このようにして捕集容器Aを所定位置に沈設することによって、自噴しているメタンガスは捕集容器A内に捕集される。この沈設当初においてガス導出口3の流量調整弁4は開いた状態としておく。これによって捕集ガス導出用パイプ5内には水が入り込み、浮力を問題とすることなく沈設できる。
【0046】
捕集容器Aを所定位置に沈設した後、捕集ガス導出用パイプ5の先端を沈設支援船からガス採取支援船Bに移動させ、ガス採取支援船Bの上のガス採取プラントに連結させる。
【0047】
水底から自噴しているガスは捕集容器A内に捕捉されるが、流量調整弁4を閉じておくことにより、捕捉されたガスは捕集容器Aの上端部内に溜まり、ガス溜り8ができる。このガス溜り8の大きさは、各水位検出器7a,7b,7cの状態によって把握できる。
【0048】
即ち、最も上側の水位検出器7aが水を感知している時は、ガス溜り8は殆どない状態であり、最も下側の水位検出器7cが水を感知していないときは、ガス溜り8の下の水面がそれより下にあることがわかる。この状態で流量調整弁4を開き、ガス溜り8のガスを排出させる。これによってガスは捕集ガス導出用パイプ5内の水を押し上げて上昇する。
【0049】
この時、各水位検出器7a〜7cの状態を観察し、水位が最上部の水位検出器7aより下にある状態、好ましくは、中間高さ位置と最下部高さ位置の水位検出器7b,7cとの間に水面がある状態が維持されるように流量調整弁4の開き度を調整する。このように調整することにより、捕集ガス導出用パイプ5内には水が入り込まない状態を維持し、ガスのみをガス採取支援船B上に導出させることができる。
【0050】
ガス採取支援船B上では、捕集ガス導出用パイプ5を通して搬送されてくるガスを所定の圧力容器内に加圧状態で蓄蔵し、所定の量に達する毎に、ガス運搬船に移して陸上の貯蔵所に移す。
【0051】
図2は本発明の第二実施例の概略構成を示している。尚、図1に示した第一実施例と同じ部分には同じ符号を付して重複説明を省略する。この例では、水位調整用排気孔6を、天井板2を貫通させて捕集容器A内に垂下させた排気用パイプ20をもって構成させている。即ち、この排気用パイプ20の下端が水位調整用排気孔6となっており、上端は捕集容器A上に解放されている。
【0052】
軸方向に移動可能に設置されており、上下駆動装置21によって軸方向に移動させることができるようになっている。上下駆動装置21の操作は、ガス採取支援船B上でコントロールできるようになっている。
【0053】
この排気用パイプ20は、前述した水位調整用排気孔6a,6b,6cに代わるものであり、排気用パイプ20の下端高さ位置が、ガス溜り8が最大時の水面となるようになっており、これよりガス溜り8が大きくなって水面が下がると排気用パイプ20を通して捕集容器A外に排出されるようになっている。
【0054】
また、排気用パイプ20の下端位置を変化させることによって、その下端の水位調整用排気孔6が上下に移動することとなり、排気用パイプ20を下側に移動させることにより、ガス溜り8の大きさを大きくでき、水底からのガス噴出量の変動幅が大きい場合でも、ガス溜り8を常時形成させて置くことが容易となる。
【0055】
尚、前記第一、第二の両実施例において、水位検出器7a〜7cを用いず、流量調整弁4による両量調整を、水底から捕集容器A内に取り込まれる噴出ガス量より少ない値に設定することにより、水位調整用排気孔6又は6a〜6cから常に余分な量のガスを排気させるようにしてもよい。この場合、ガス溜り8の下の水面は、図1図2に仮線で示す水位線22の高さに維持され、常時一定の量のガス溜り8が形成される。
【0056】
尚、上述した捕集容器Aの水底への沈設は、例えば図3に示すように、胴部1を外筒1aと内筒1bとによる2重筒状とし、その両筒間の上半部を浮力調整用空洞部10とし、その内部の注排水によって浮力を調整するようにするとともに、捕集容器Aの外側に、横向き軸及び上下向き軸のスクリュー11a,11bを備えた推進装置11を設置し、浮力調整用空洞部10による浮力調整と推進装置11による上下方向及び水平方向の推進力によって所定位置に沈降させる。
【0057】
また、浮力の調整は、図3のように胴部1を2重筒構造とすることなく、図4に示すように1重の鋼板筒により構成し、その捕集容器Aの上面又は側面に浮力調整用タンク12を固定して浮力調整するようにしてもよい。
【0058】
更に、図5に示すように1隻又は複数隻の沈設支援船Cを使用し、浮力調整機能を使用し又は使用せず、吊りワイヤー13を繰り出しつつ所定位置に沈めてもよい。
【0059】
更に図6に示すように、捕集容器Aを無人の潜水艇Dによって吊りさげて水底の所定位置に移動させる等、各種の方法が採用できる。
【符号の説明】
【0060】
A 捕集容器
B ガス採取支援船
C 沈設支援船
D 潜水艇
a メタンプルーム
b 噴出口
1 胴部
1a 外筒
1b 内筒
2 天井板
3 ガス導出口
4 流量調整弁
5 捕集ガス導出用パイプ
6,6a,6b,6c 水位調整用排気孔
7a,7b,7c 水位検出器
8 ガス溜り
10 浮力調整用空洞部
11 推進装置
11a,11b スクリュー
12 浮力調整用タンク
13 吊りワイヤー
20 排気用パイプ
21 上下駆動装置
22 水位線
【要約】
【課題】水底への設置が容易であり、設置後において自噴ガス量の変動に追従して安全にガスの捕集・導出がなされる水底自噴メタンガス捕集装置の提供。
【解決手段】メタンガスが自噴している水底メタンガス噴出口bを覆う配置に捕集容器設置し、噴出したメタンガスを捕集ガス導出用パイプ5を通してガス採取支援船B上に導出させる装置であり、捕集容器A上端部内に捕集ガス導出用パイプに連通したガス導出口3を連通させ、そのガス導出口3より低い位置に、捕集容器の内外に連通させた水位調整用排気孔6aを備え、捕集容器Aの頂部内に水底メタンガス噴出口から噴出しているガスを貯留させるガス溜り8を水位調整用排気孔6aより上側に形成させつつガス溜り8内のガスをガス導出口3より捕集ガス導出用パイプ5に送り出させる。
【選択図】図1
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図2
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図5
図6