特許第5771790号(P5771790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771790
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】無機微粒子スラリー
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/20 20060101AFI20150813BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20150813BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20150813BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20150813BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150813BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20150813BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20150813BHJP
   C01F 17/00 20060101ALI20150813BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20150813BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20150813BHJP
   C03C 17/25 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H01J9/20 D
   C09D17/00
   H01J61/35 L
   B32B5/16
   B32B9/00 A
   C01G9/02 Z
   C01F11/18 G
   C01F17/00 G
   C01F7/02 D
   C01B33/18 E
   C03C17/25 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-245859(P2012-245859)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-96231(P2014-96231A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2013年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】大濱 徹
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−292947(JP,A)
【文献】 特開2007−115642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/20−9/236
H01J 61/30−61/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)を含有してなることを特徴とする無機微粒子スラリー。

{R-(OX)ni-}Q (1)

Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OX)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20〜100の整数である。
【請求項2】
無機微粒子(A)が気相法によって製造されたシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子である請求項1に記載の無機微粒子スラリー。
【請求項3】
無機微粒子(A)の個数平均一次粒子径が7〜30nmである請求項1又は2に記載の無機微粒子スラリー。
【請求項4】
蛍光灯保護膜形成用である請求項1〜3のいずれかに記載の無機微粒子スラリー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された無機微粒子スラリーをガラス管の内面に塗布・乾燥・焼成して得られることを特徴とする蛍光灯。
【請求項6】
ガラス管の内面に請求項1〜4のいずれかに記載された無機微粒子スラリーを塗布し、乾燥後、加熱してポリビニルアルコール(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)を熱分解させて、無機微粒子(A)からなる保護膜を形成する工程を含むことを特徴とする蛍光灯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミナ粒子又はシリカ粒子を含む無機微粒子スラリーを塗布し、保護膜をガラス管に積層することで、ガラス管からのナトリウムの遊離を抑制し、水銀とのアマルガム形成を抑制して長寿命化をはかった蛍光灯(特許文献1、及び2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−226988号公報
【特許文献2】特開2011−071027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の無機微粒子スラリーは均一な塗膜を形成することが容易ではなく、蛍光灯の内面に塗布される保護層に用いた場合、塗りムラが発生し、蛍光灯の明るさのムラの原因となることがある。また、塗りムラがある場合、均一な保護膜が形成できないため、十分な保護性能を発揮できず、蛍光灯の寿命が短くなる傾向がある。
【0005】
本発明の目的は、容易に均一な塗膜を形成することができる無機微粒子スラリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無機微粒子スラリーは、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)を含有してなることを要旨とする。
【0007】

{R-(OX)ni-}Q (1)
【0008】
Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OX)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20〜100の整数である。
【0009】
本発明の蛍光灯は、上記の無機微粒子スラリーをガラス管の内面に塗布・乾燥したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無機微粒子スラリーは、均一な塗膜を容易に形成できる。
【0011】
本発明の蛍光灯は、上記の無機微粒子スラリーを塗布するので、均一な保護層を有し、明るさにムラがなく、外観と寿命が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<無機微粒子(A)>
無機微粒子(A)としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子及びこれら混合物が含まれる。
【0013】
シリカ微粒子としては、非晶質合成シリカ(沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、気相法シリカ、熔融法シリカ)、結晶性合成シリカ及び天然シリカが含まれる。また、アルミナ微粒子としては、気相法アルミナ及び焼成法アルミナが含まれる。これらのシリカ微粒子及びアルミナ微粒子は、以下に例示する商品{粉末状又は無機微粒子が水に分散した分散液の形態で}が挙げられる。
【0014】
<沈殿法シリカ>
Nipsilシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、Sipernatシリーズ{エボニック デグサ ジャパン株式会社、「Sipernat」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、Carplexシリーズ{DSL.ジャパン株式会社、「Carplex」はDSL.ジャパン株式会社の登録商標である。}、FINESILシリーズ{株式会社トクヤマ、「FINESIL」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、TOKUSILシリーズ{株式会社トクヤマ、「TOKUSIL」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、Zeosilシリーズ{ローディア社、「Zeosil」はロディア シミ の登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社、「MIZUKASIL」は水沢化学工業株式会社の登録商標である。}等。
【0015】
<ゲル法シリカ>
Carplexシリーズ、SYLYSIAシリーズ{富士シリシア株式会社、「SYLYSIA」は有限会社ワイ・ケイ・エフ の登録商標である。}、Nipgelシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipgel」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社、「MIZUKASIL」は水沢化学工業株式会社の登録商標である。}等。
【0016】
<気相法シリカ>
Aerosilシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社、「Aerosil」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、Reolosilシリーズ{株式会社トクヤマ、「Reorosil」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、Cab−O−Silシリーズ{キャボット社、「Cab−O−Sil」はキャボットコーポレーションの登録商標である。}、WACKER HDKシリーズ{旭化成ワッカー(株)、「WACKER」はワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフトの登録商標である。}等。
【0017】
<溶融法シリカ>
Admafineシリーズ{アドマテックス社、「Admafine」は株式会社アドマテックスの登録商標である。}、Fuselexシリーズ{株式会社龍森}、デンカ溶融シリカシリーズ{電気化学工業株式会社}等。
【0018】
<結晶性合成シリカ>
CRYSTALITEシリーズ{株式会社龍森、「CRYSTALITE」は株式会社龍森の登録商標である。}、Imsilシリーズ{UNIMIN社、「Imsil」はユニミン スペシャルティ ミネラルズ インコーポレーテッドの登録商標である。 }等。
【0019】
<天然シリカ>
ミズカエースシリーズ{水沢化学工業株式会社}等。
【0020】
<シリカ分散液>
カタロイド−Sシリーズ{触媒化成工業(株)、「カタロイド」は同社の登録商標である。}、クォートロンシリーズ{扶桑化学工業(株)、「クォートロン」は同社の登録商標である。}及びスノーテックスシリーズ{日産化学工業(株)}等。
【0021】
<気相法アルミナ>
Aeroxide Alシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社、「Aeroxide」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}及びSpectrAlシリーズ{キャボット社}等。
【0022】
<焼成法アルミナ>
高純度アルミナAKPシリーズ{住友化学株式会社}、アルミナAシリーズ{日本軽金属株式会社}、タイミクロンシリーズ{大明化学(株)製}及びDISPALシリーズ{Sasol社「DISPAL」は同社の登録商標である。}等。
【0023】
<アルミナ分散液>
カタロイド−Aシリーズ{触媒化成工業(株)製}及びアルミナゾルシリーズ{日産化学工業(株)製}等。
【0024】
無機微粒子(A)としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子及びこれら混合物以外に、次の無機微粒子等も使用できる。
金属酸化物微粒子{二酸化チタン(TiO)、二酸化クロム(CrO)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe)、四酸化三鉄(Fe)、二酸化コバルト(CoO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化スズ(VI)(SnO)、チタン酸バリウム(BaOTi)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、クロム酸アンモニウム((NHCr)又はチタン酸アンモニウム((NHTiO)等からなる微粒子等};金属水酸化物微粒子(水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムからなる微粒子等);炭酸塩微粒子(炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムからなる微粒子等);層状鉱物微粒子{カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト及びサボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライト、ハイドロタルサイト又は層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト及びケニヤアイト等)からなる微粒子等)};並びにこれらの微粒子及び/又はシリカ微粒子、アルミナ微粒子の混合微粒子。
【0025】
無機微粒子(A)の個数平均一次粒子径(nm)は、7〜3が好ましく、さらに好ましく7〜20である。この範囲であると、塗膜の均一性がさらに容易となり好ましい。個数平均一次粒子径は、JIS Z8901−2006「試験用粉体及び試験用粒子」5.44粒子経分布(c)顕微鏡法に準拠し、振掛け法によって準備した試料を透過型電子顕微鏡で5万〜100万倍に拡大して観察した画像から100個以上の粒子を観察して算出される円相当径の算術平均値である。
【0026】
無機物粒子(A)の形状としては特に限定はされないが、針状形状が好ましいが、球状や回転楕円体状(紡錘状)、多面体状又は不定形状等の形状であってもよい。
【0027】
<ポリビニルアルコール(B1)>
ポリビニルアルコール(B1)としては、完全ケン化型ポリビニルアルコール(B11)、部分ケン化型ポリビニルアルコール(B12)、カチオン変性ポリビニルアルコール(B13)、アニオン変性ポリビニルアルコール(B14)及びノニオン変性ポリビニルアルコール(B15)が含まれる。
【0028】
完全ケン化型ポリビニルアルコールとは、ケン化度が98モル%以上100モル%以下であるポリビニルアルコールを意味する。部分ケン化ポリビニルアルコールとは、ケン化度が70モル%以上98モル%未満であるポリビニルアルコールを意味する。カチオン変性ポリビニルアルコールとは、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニオ基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。アニオン変性ポリビニルアルコールとは、カルボキシ基やスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。ノニオン変性ポリビニルアルコールとは、メルカプト基やケト基(カルボニル基)を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を必要によりケン化して得られる構造のポリマーを意味する。
【0029】
完全ケン化型ポリビニルアルコール(B11)及び部分ケン化型ポリビニルアルコール(B12)としては、公知のもの(たとえば、特開2006−28233号公報)等が使用できる。カチオン変性ポリビニルアルコール(B13)としては、公知のもの(たとえば、特開平10−119423号公報)等が使用できる。アニオン変性ポリビニルアルコール(B14)としては、公知のもの(たとえば、特開平1−206088号公報、特開昭61−237681号、特開昭63−307979号公報及び特開平7−285265号公報)等が使用できる。ノニオン変性ポリビニルアルコール(B15)としては、公知のもの(たとえば、特開平7−9758号公報及び特開平8−25795号公報)等が使用できる。
【0030】
これらのポリビニルアルコールのうち、塗膜の均一性の観点から、部分ケン化型ポリビニルアルコール(B12)が好ましく、さらに好ましくはケン化度が70〜96モル%の部分ケン化型ポリビニルアルコール、特に好ましくはケン化度が80〜89モル%の部分ケン化型ポリビニルアルコールである。
【0031】
なお、ケン化度は、JIS K6726−1994「ポリビニルアルコール試験法 3.5ケン化度」に準拠して測定される。
【0032】
ポリビニルアルコール(B1)の平均重合度は、300〜5000が好ましく、さらに好ましくは500〜2000である。この範囲であると、塗膜の均一性が更に良好となり好ましい。
【0033】
なお、平均重合度は、JIS K6726−1994「ポリビニルアルコール試験法 3.7平均重合度」に準拠して測定される。
【0034】
<ポリオキシアルキレン化合物(B2)>
一般式(1)において、非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(スクロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオースが含まれる。
これらのうち、塗膜の均一性の観点から、蔗糖、トレハロース、ラフィノース及びメレチトースが好ましい。
【0035】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OX)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合が含まれる。
【0036】
ni個のOXは、同じでも異なっていてもよく、また、m個の(OX)niは同じでも異なってもよい。(OX)ni内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限ない。
【0037】
Rのうち、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル及びiso−ブチル等が挙げられる。Rのうち、メチル、エチル及び水素原子が好ましい。なお、m個のRは同じでも異なっていてもよい。
【0038】
m個のRの中に、アルキル基を含む場合、すべてのRのうち、水素原子の数は、mが4のとき0〜3が好ましく、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1であり、mが3のとき、0〜2が好ましく、さらに好ましくは0又は1であり、mが2のとき、0又は1が好ましい。
【0039】
niは、0〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜98の整数である。この範囲であると塗膜の均一性がさらに良好となる。
【0040】
mは、2〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは3である。この範囲であると塗膜の均一性がさらに良好となる。このmは、非還元性の二又は三糖類の1級水酸基の数に対応する。
【0041】
iは、1〜mの整数を表し、m個のniは同じ値でも異なった値でもよいが少なくとも1つのniは1以上である。すなわち、たとえば、m=4のとき、niは、n1、n2、n3、n4であることを意味し、これらの全てが同じでも異なっていてもよい。
【0042】
OXの総数(Σni×m)は、20〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは35〜85の整数である。この範囲であると塗膜の均一性がさらに良好となる。
【0043】
ポリオキシアルキレン化合物(B2)としては、たとえば、国際特許出願パンフレットWO2004/101103(再公表2004−101103号公報)に記載されたポリオキシアルキレン化合物等が好ましく例示できる。
【0044】
ポリオキシアルキレン化合物(B2)としては、ポリオキシアルキレン化合物(B2)とジイソシアネートとの反応物(B2’)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)とジグリシジルエーテルとの反応物(B2’’)を用いることができる。
【0045】
反応物(B2’)としては、特開2004−224945号公報に記載されたポリオキシアルキレン化合物等が挙げられる。また、反応物(B2’’)としては、特開2005−170965号公報に記載されたポリオキシアルキレン化合物等が挙げられる。
【0046】
<アミノアルコール(塩)(C)>
アミノアルコール(塩)(C)とは、アミノアルコール(C1)及び/又はアミノアルコール塩(C2)を意味する。
【0047】
アミノアルコール(C1)としては、炭素数2〜9のアルカノールアミンが含まれ、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0048】
アミノアルコール塩(C2)としては、アミノアルコール(C1)と無機酸又は有機酸{炭素数1〜10のカルボン酸、炭素数1〜7のスルホン酸、エチレン性不飽和酸の(共)重合体等}との塩等が挙げられる。
【0049】
無機酸としては、塩酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、亜臭素酸及び硫酸等が挙げられる。
【0050】
炭素数1〜10のカルボン酸としては、炭素数1〜4のモノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタンカルボン酸及びアクリル酸等)、炭素数2〜5のジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸及びグルタル酸等)及び炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸及びアスコルビン酸等)及び炭素数7〜10の芳香族カルボン酸(安息香酸、メチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸等)等が挙げられる。
【0051】
炭素数1〜7のスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0052】
エチレン性不飽和酸の(共)重合体としては、エチレン性不飽和酸を必須構成単量体としてなる(共)重合体である。
エチレン性不飽和酸としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル及びエチレン性不飽和スルホン酸が含まれる。
【0053】
エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。
【0054】
エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの分子内無水物等が挙げられる。
【0055】
エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、エチレン性不飽和ジカルボン酸と(ポリ)オキシアルキレンアルコール又は脂肪族アルコールとのモノエステルが含まれる。
【0056】
(ポリ)オキシアルキレンアルコールとしては、アルキレン(炭素数2〜4)グリコール、アルキレン(炭素数2〜4)グリコールのモノアルキル(炭素数1〜18)エーテル、ポリ(n=2〜90)オキシアルキレン(炭素数2〜4)グリコール及びポリ(n=2〜90)オキシアルキレン(炭素数2〜4)グリコールのモノアルキル(炭素数1〜18)エーテル等が挙げられる。
【0057】
脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜4の低級アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等)等が挙げられる。
【0058】
エチレン性不飽和酸の(共)重合体がエチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルを構成単位としてなる(共)重合体である場合、エチレン性不飽和ジカルボン酸の(共)重合体をエステル化して得てもよいし、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルを構成単位として(共)重合して得てもよい。
【0059】
エチレン性不飽和スルホン酸としては、スチレンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
エチレン性不飽和酸と共重合できる共重合単量体としては、エチレン性不飽和酸と共重合できれば特に制限はなく、芳香族ビニル単量体(スチレン、α−メチルスチレン、m−若しくはp−ビニルトルエン及びこれらの混合物等)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル{(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチル等}、オレフィン(エチレン、プロピレン、イソブチレン、オクチレン及びノナデシレン等)、エチレン性不飽和ニトリル{(メタ)アクリロニトリル及びシアノプロペン等}及びエチレン性不飽和アミド{(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドン等}が含まれる。
【0061】
共重合単量体を構成単位として含む場合、共重合単量体単位の含有量(モル%)は、エチレン性不飽和酸単位のモル数に基づいて、10〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90である。
【0062】
エチレン性不飽和酸の(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜100,000が好ましく、さらに好ましくは4,000〜20,000である。
重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリエチレグリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる(測定条件の一例として、カラム:東ソー株式会社製TSKgel GuardColumnSWXL、G4000SWXL及びG2000SWXLを直列に連結したもの等、カラム温度:40℃、溶離液:0.1−MPBのリン酸水素二ナトリウム水溶液:0.1−MPBリン酸二水素ナトリウム水溶液=1:1(モル比)、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液で測定できる。)。
【0063】
アミノアルコール塩(C2)は、アミノアルコール(C1)と無機酸又は有機酸とを混合し、中和反応させることにより容易に得られる。また、有機酸がエチレン性不飽和酸の(共)重合体である場合、アミノアルコール(C1)とエチレン性不飽和酸とを混合し、中和反応させてから(共)重合してもよいし、エチレン性不飽和酸の(共)重合体とアミノアルコール(C1)とを混合し、中和反応させてもよい。
【0064】
アミノアルコール(塩)(C)として、アミノアルコール(C1)及びアミノアルコール塩(C2)の両方を含んでいてもよく、この場合、それぞれのアミノアルコールが同じであってもよいし、異なっていてもよい。アミノアルコール(C1)及びアミノアルコール塩(C2)の両方を含む場合、アミノアルコール(C1)の含有量(重量%)は、アミノアルコール(C1)とアミノアルコール塩(C2)との合計重量に基づいて、5〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90である。また、この場合、アミノアルコール塩(C2)の含有量(重量%)は、アミノアルコール(C1)とアミノアルコール塩(C2)との合計重量に基づいて、5〜95が好ましく、さらに好ましくは10〜50である。
【0065】
<水(D)>
水(D)は、イオン交換水、蒸留水、超純水、水道水、工業用水及びこれらの混合物等が使用できる。
水(D)としては、上記の水以外に、水と水性溶媒{モノオール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等)、ポリオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビット及びソルビタン等)、グリコールエーテル(メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール及びブチルカルビトール等)、グリコールエステル(メチルセロソルブアセテート及びセロソルブアセテート等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、その他の極性溶媒(ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホオキシド等)及びこれらの混合物等}とを混合した水溶液も使用できる。
水と水性溶媒との水溶液の場合、水性溶媒の含有量(重量%)は、水及び水性溶媒の合計重量に基づいて、1〜80が好ましく、さらに好ましくは3〜60、特に好ましくは5〜50である。
【0066】
無機微粒子(A)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)の合計重量に基づいて、2〜40が好ましく、さらに好ましくは5〜20である。この範囲であると、無機微粒子(A)の分散がさらに良好となり、特に無機微粒子スラリーの保管安定性がさらに良好となり、さらに長期間均一な塗膜が得られる。
【0067】
ポリビニルアルコール(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)の含有量は、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)の合計重量に基づいて、0.05〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2である。この範囲であると、無機微粒子(A)の分散がさらに良好となり、特に無機微粒子スラリーの保管安定性がさらに良好となり、さらに長期間均一な塗膜が得られる。
【0068】
アミノアルコール(塩)(C)の含有量は、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)の合計重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5である。この範囲であると、無機微粒子(A)の分散がさらに良好となり、特に無機微粒子スラリーの保管安定性がさらに良好となり、さらに長期間均一な塗膜が得られる。
【0069】
水(D)の含有量(重量%)は、無機微粒子(A)の重量に基づいて、100〜5000が好ましく、さらに好ましくは250〜500である。この範囲であると、無機微粒子(A)の分散がさらに良好となり、特に無機微粒子スラリーの保管安定性がさらに良好となり、さらに長期間均一な塗膜が得られる。
【0070】
本発明の無機微粒子スラリーには、その目的に応じて公知の添加剤{以下の各種の色素(色剤)、樹脂等}を含有させることができる。
(1)着色剤(分散染料、酸性染料、直接染料、塩基性染料、各種有機又は無機着色顔料等)
(2)水性樹脂(アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アクリル変成アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−メラミン共縮合物等)
(3)増粘剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等)
(4)紫外線吸収剤
(5)酸化防止剤
(6)防かび剤
(7)消泡剤
(8)乾燥防止剤
(9)耐水性付与剤
(10)増粘剤
(11)ハジキ防止剤
(12)その他界面活性剤
【0071】
添加剤を含有する場合、これらの添加量(重量%)は特に限定されないが、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)の合計重量に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは1〜30である。
【0072】
本発明の無機微粒子スラリーの製造方法としては、無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)、並びに必要に応じて添加剤を均一混合できれば制限はないが、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(塩)(C)及び水(D)を均一混合して水溶液を得た後、この水溶液と無機微粒子(A)及び必要に応じて添加剤とを均一混合して無機微粒子スラリーを得ることが好ましい。
【0073】
本発明の無機微粒子スラリーにアミノアルコール塩(C2)を含む場合、アミノアルコール塩(C2)は、アミノアルコール塩の形態で、無機微粒子(A)等と均一混合してもよく、または、アミノアルコール(C1)及び有機酸又は無機酸と、無機微粒子(A)等とを均一混合して、無機微粒子(A)等との混合物中でアミノアルコール塩を形成させてもよい。
【0074】
ポリビニルアルコール(B1)、ポリオキシアルキレン化合物(B2)及びアミノアルコール(塩)(C)は、水溶液の形態で混合することができる。このとき、水溶液に含まれる水は、本発明の無機微粒子スラリーの構成成分の一つである水(D)の一部又は全部を構成する。
【0075】
均一混合にも特に制限はなく、一般に使用される分散機を使用でき、ペイントシェーカー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ディスパーミル等の分散機の他、ボールミル、サンドミル等の媒体撹拌型分散機、ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練分散機等を使用できる。
【0076】
均一混合温度は特に制限ないが、10〜50℃が好ましく、さらに好ましくは20〜45℃、特に好ましくは25〜35℃である。
【0077】
均一混合時間は特に制限ないが、0.5時間〜24時間が好ましく、さらに好ましくは1時間〜12時間である。この範囲であると得られる塗膜の均一性がさらに良好となる。
【0078】
本発明の無機微粒子スラリーの粘度は特に制約はないが、一般に低粘度であることが好ましく、25℃の回転粘度として、さらに好ましくは0.5〜800mPa・s、特に好ましくは1〜500mPa・sである。回転粘度は、JIS R1652:2003(ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計)に準拠して測定される。
【0079】
本発明の無機微粒子スラリーのpHは一般に無機微粒子(A)の種類に応じて選択されるが、特に無機微粒子(A)としてシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を用いる場合には、得られる塗膜の均一性の観点から、そのpHは6〜11であることが好ましく、さらに好ましくは7〜10である。なお、pHを無機微粒子(A)の種類に応じて調整する際、本発明の無機微粒子スラリーの性能を阻害しない範囲で公知のpH調整剤等を添加してもよい。pHは、JIS K0802−1996年に準拠して、銀/塩化銀電極を用いたガラス電極式pH測定機{たとえば、株式会社堀場製作所のカスタニーLAB pHメーター}により、測定温度を25℃として測定される。
【0080】
本発明の無機微粒子スラリーは、被塗布基材上に塗布して塗布膜を形成し、続いて、加熱・乾燥することにより、均一な塗膜を形成できる。被塗布基材としては、樹脂フィルム(シートを含む意味である){ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネート等からなる合成樹脂フィルム、及びこれらの金属蒸着フィルム、合成樹脂フィルムで紙を被覆した樹脂被覆紙、無機物の充填又は微細な発泡により不透明化されたフィルムからなる合成紙等}、ガラス板、ガラス管、金属板、布及び皮革等が挙げられる。特に、本発明の無機微粒子スラリーを蛍光灯の保護膜形成用として用いる場合、被塗布基材として蛍光灯の仕様に適合したガラス管を用いることが好ましい。
【0081】
本発明の無機微粒子スラリーを、被塗布基材に塗布して塗膜を形成する前に、被塗布基材の塗膜を形成する面に、塗膜と被塗布基材との密着性を向上させる目的で、予め被塗布基材の表面を親水化処理する工程を追加してもよい。特に、被塗布基材として樹脂被覆紙、樹脂フィルム又は合成紙を用いる場合、その表面にコロナ放電処理すること、あるいはゼラチン等によるアンダーコート層を設けることが好ましい。
【0082】
本発明の無機微粒子スラリーは、被塗布基材に塗布した後、乾燥することで塗膜を形成し、さらに耐熱性の被塗布基材(ガラス等)に塗膜を形成した場合には、必要に応じて塗膜を焼成して用いることができる。
【0083】
支持体に形成される乾燥後の塗膜の膜厚(μm)は、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜5である。この範囲であると、塗膜の均一性と外観がさらに良好となる。
【0084】
本発明の無機微粒子スラリーを支持体に塗布して塗膜を形成する場合、本発明の無機微粒子スラリーを、ディップコーター法、スプレーコーター法、フローコーター法、ダイコーター法、ロールコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、バーコーター法又はスピンコーター法等の公知の塗工方法を用いて塗布できる。特にガラス管等の円筒状被塗布基材の内面に塗布する場合には、ディップコーター法、スプレーコーター法(円筒状被塗布基材の内側にスプレーノズルを差し込んで吹き付ける方法等)、フローコーター法(円筒状被塗布基材の内側に無機微粒子スラリーを流しこむか、またはシャワーリングする方法等)の他、円筒状被塗布基材内部に無機微粒子スラリーを吸い上げて塗布する方法(吸い上げ工法)等が好ましく用いられる。
【0085】
塗布後の乾燥は、スラリーに含まれる水(D)及び必要により含まれる水性溶媒が揮発する条件であればよく、加熱だけでも熱風又は常温の風を吹き付ける方法でもよい。乾燥条件のうち、30〜150℃の加熱を0.5〜30分間行うことが好ましく、さらに好ましくは50〜95℃の加熱を4〜10分間行うことである。
【0086】
塗膜を焼成して用いる場合、焼成の温度は、塗膜に含まれるポリビニルアルコール(B1)及び/又は一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)、並びにアミノアルコール(塩)(C)が熱分解する温度であればよく、大気雰囲気下であっても大気又は酸素を吹き込んで行ってもよい。焼成条件のうち、大気又は酸素を吹き込みながら200〜800℃の加熱を1〜30分間行うことが好ましく、さらに好ましくは大気又は酸素を吹き込みながら300〜700℃の加熱を2〜20分間行うことである。
【0087】
本発明の無機微粒子スラリーを蛍光灯の保護膜を形成するために用いる場合、ガラス管内面に無機微粒子スラリーを上記の方法で塗布・乾燥して塗膜を形成した後、続いて上記の方法で焼成することで保護膜を形成することができる。
また、蛍光灯は保護膜の上に蛍光体を含むスラリーを塗布・乾燥・焼成することで)及び/又はした蛍光体層を有するが、本発明の無機微粒子スラリーによる塗膜の焼成は、蛍光体層を塗布する前に(蛍光体層の焼成とは別に)行ってもよく、蛍光体層を形成してから蛍光体層の焼成と共に行ってもよい。
【0088】
なお、本発明の無機微粒子スラリーを塗布する場合、塗工方法に適合した粘度を得る目的や乾燥後の塗膜の膜厚を得る目的で無機微粒子スラリーに所定量の水(D)を追加、希釈して塗布を行ってもよい。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に言及しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味し、POはプロピレンオキサイドを、EOはエチレンオキサイドを、BOはブチレンオキサイドを意味する。
【0090】
製造例7〜9で製造したアミノアルコール塩の重量平均分子量は以下の装置・条件にて測定した。
(重量平均分子量)
機 種:Waters LCM1
検 出 器:Waters 410示差屈折検出器
解析ソフト:Waters Millenium Ver.2.18
溶 離 液:0.1−MPBのリン酸水素二ナトリウム水溶液:0.1−MPBリン酸二水素ナトリウム水溶液=1:1(モル比)
溶離液流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度 :0.4%溶離液溶液
カ ラ ム:東ソー株式会社製 TSKgel GuardColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質 :ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
【0091】
製造例6〜9において、乾燥重量の測定は、JIS K0067−1992 化学製品の減量及び残分試験方法 4.1乾燥減量試験、4.1.4(1)「第1法 大気圧下で加熱乾燥する方法」に準拠して乾燥温度130±3℃にて行った。
【0092】
実施例1〜10、比較例1〜2において、無機微粒子スラリーの粘度測定は、東機産業株式会社製、BM型粘度計を用い、25±3℃の室内に製造後12時間静置した無機微粒子スラリーについて、JIS R1652:2003(ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計)に準拠して測定温度25℃で行った。
【0093】
実施例1〜10、比較例1〜2において、無機微粒子スラリーのpH測定は、株式会社堀場製作所のカスタニーLAB pHメーターを用い、JIS K0802−1996年に準拠して測定温度25℃で行った。
【0094】
<ポリオキシアルキレン化合物(B2)の製造>
<製造例1>
加熱、攪拌、冷却、滴下、加圧及び減圧の可能な反応容器にスクロース(蔗糖){台糖(株)製}342部(1モル)及びジメチルホルムアミド(DMF){試薬特級、和光純薬工業(株)製、以下同じ}3000部を均一混合した後、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作(加圧窒素置換)を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にて754部(13モル部)のPOを4時間かけて滴下した後、同温度にて30分間攪拌を続けて残存するPOを反応させた。続いて、130℃まで加熱した後、同温度にて0.01〜0.1MPaの減圧下1時間脱水した後、同減圧下で2948部(67モル部)のEOを100〜120℃にて2時間で滴下した。次いで360部(5モル部)のBOを100〜120℃にて6時間で滴下し、さらに4時間同温度に保ち残存するアルキレンオキサイドを反応させた。次いで90℃にてイオン交換水85部を加えた後、アルカリ吸着剤{キョーワード700、協和化学工業(株)製、「キョウワード」は同社の登録商標である。}170部を加え、同温度にて1時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してアルカリ吸着剤を取り除き、さらに0.01〜0.1MPaの減圧下、120℃にて1時間脱水して、ポリオキシアルキレン化合物(B21)(蔗糖PO13モル/EO67モル/BO5モル付加物)を得た。
【0095】
<製造例2>
「2948部(67モル部)のEO」を「1188部(27モル部)のEO」に変更したこと及び「360部(5モル部)のBO」を「3480部(60モル部)のPO」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(B22)(蔗糖/PO13モル/EO27モル/PO60モル付加物)を得た。
【0096】
<製造例3>
製造例1と同様な反応容器に、ラフィノース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}504部(1モル部)、及びN−メチルピロリドン{試薬特級、和光純薬工業(株)製、以下同じ}3000部を均一混合した後、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作(加圧窒素置換)を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にて2030部(35モル部)のPOを4時間かけて滴下した後、同温度にて30分間攪拌を続けて残存するPOを反応させた。次いで120℃まで加熱し、同温度に保持しながら0.01〜0.1MPaの減圧下にてDMFを留去し、次いで90℃に冷却し、イオン交換水20部を加えた後、アルカリ吸着剤100部を加え、同温度にて1時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してアルカリ吸着剤を取り除き、さらに0.01〜0.02MPaの減圧下120℃にて1時間脱水して、ポリオキシアルキレン化合物(B23)(ラフィノース/PO35モル付加物)を得た。
【0097】
<製造例4>
「ラフィノース504部(1モル部)」を「メレチトース{試薬特級、東京化成工業(株)製}504部(1モル部)」に変更したこと、「N−メチルピロリドン3000部」を「ジメチルホルムアミド(DMF)2500部」に変更したこと及び「4350部(75モル部)のPO」を「1160部(20モル部)のPO」に変更したこと以外、製造例3と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(B24)(メレチトース/PO20モル付加物)を得た。
【0098】
<製造例5>
製造例1と同様な反応容器に蔗糖342部(1モル部)、ジメチルホルムアミド(DMF)1000部を投入した後、製造例3と同様の方法で加圧窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて220部(5モル部)のEOを3時間かけて滴下した後、同温度にて30分間攪拌を続けて残存するEOを反応させた。次いで110℃に昇温した後、この温度にて2610部(45モル部)のPOを5時間かけて滴下し、さらに同温度にて4時間攪拌を続けて残存するPOを反応させた。その後120℃にまで昇温した後、同温度に保持しながら0.01〜0.1MPaの減圧下にてDMFを留去し、次いで50℃以下に冷却してから水酸化ナトリウム{試薬特級、シグマアルドリッチジャパン社(株)製}112部を加えた。続いて、減圧下(0.01〜0.1MPa)で撹拌をしながら80℃に昇温し、同温度にてメチルクロライド{試薬特級、シグマ社(株)製}126.3部(2.5モル部)を4時間かけて滴下した。さらに3時間同温度にて攪拌を続けた後に40℃まで冷却した。得られた反応混合物のうち500部を分液ロートに採り、イオン交換水500部とn−ヘキサン{試薬特級、シグマ社(株)製}500部を加えて振とうした後、静置して、水相とn−ヘキサン相に分離した。得られたn−ヘキサン相から100℃、0.01〜0.1MPaの減圧下にてn−ヘキサンを留去し、次いで製造例1と同様にして50部のアルカリ吸着剤にて処理してポリオキシアルキレン化合物(B25)(蔗糖/EO5モル/PO45モル/メチルクロライド2.5モル)を得た。
【0099】
<アミノアルコール塩(C2)の製造>
<製造例6>
攪拌の可能な容器に50%乳酸水溶液(武蔵野化学株式会社製)360部を加え、氷浴にて冷却した。続いて撹拌下で40℃以下を保ちながらアミノアルコール(C11){トリエタノールアミン、和光純薬工業株式会社製、JIS試薬特級、以下同じ}149部を投入して中和反応を行い、アミノアルコール塩(C21)(トリエタノールアミン乳酸塩)を乾燥重量で64%含む水溶液を得た。
【0100】
<製造例7>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器に、イオン交換水200部及びイソプロピルアルコール300部を投入し、撹拌下、アクリル酸300部及び40%過硫酸アンモニウム水溶液100部をそれぞれ別々の滴下ラインから3時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は65〜100℃を保った。滴下終了後、3時間90〜100℃に保った後、150部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃に冷却しポリアクリル酸を50%含む水溶液を得た。続いて、このポリアクリル酸水溶液145部を別の容器に移し、これを撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々にアミノアルコール(C12)(ジエタノールアミン、和光純薬工業株式会社製、試薬特級、以下同じ)105部を投入して、アミノアルコール塩(C22)(ポリアクリル酸ジエタノールアミン塩)を乾燥重量で71%含む水溶液を得た。重量平均分子量は、20,000であった。
【0101】
<製造例8>
滴下ライン、還流管、撹拌装置及び温度計付きの反応容器にメチルエチルケトン200部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(スチレン:無水マレイン酸=1:1(モル比)、重量平均分子量:5000)[Sartomer製、SAM−1000]202部及びメトキシポリ(n=45)エチレングリコール[日油株式会社製、ユニオックス M−2000]594部を投入し、窒素ガス通気下で撹拌しながら60〜80℃で3時間加熱した。続いて、密閉下で80〜100℃まで加熱し、80〜100℃を維持しながら徐々に圧力を抜きながらメチルエチルケトンを留去し、同時にイオン交換水200部を滴下ラインから投入した(イオン交換水の滴下速度の制御は行わなかった)。メチルエチルケトンの留去が無くなった後に30℃まで冷却した。留去したメチルエチルケトンの合計重量は200部であった。続いて撹拌下でアミノアルコール(C13)(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、和光純薬株式会社製、試薬特級、以下同じ)151部を40℃以上にならないように徐々に滴下した。続いて、イオン交換水を加えて乾燥重量が40%となるように濃度を調整して、アミノアルコール塩(C23){マレイン酸2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(35モル%)−マレイン酸モノメトキシポリ(n=45)エチレングリコール2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(15モル%)−スチレン(50モル%)共重合体}を40%含む水溶液を得た。重量平均分子量は、6,000であった。
【0102】
<製造例9>
製造例7と同様の耐圧反応容器にイオン交換水500部、イソプロピルアルコール200部及び2−メルカプトエタノール3部を投入し、密閉下で撹拌しながら80〜100℃に加熱した。続いて、80〜100℃を保ったまま撹拌しながら、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル[ブレンマーAE−90、日油(株)製]1000部の混合モノマーと、40%過硫酸アンモニウム水溶液100部とをそれぞれ別々の滴下ラインから一定速度で2時間かけて滴下した。滴下終了後、密閉下で95〜100℃で3時間維持した。続いて、95〜100℃を維持しながら、徐々に圧力を抜きながら95〜100℃を維持したままイオン交換水150部を滴下した。続いて95〜100℃を維持したまま減圧にしてイソプロピルアルコールを留去した。イソプロピルアルコールの留去が無くなった後に30℃まで冷却した。留去したイソプロピルアルコールの合計重量は200部であった。続いて撹拌下で2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール62部を40℃以上にならないように徐々に滴下した。続いて、イオン交換水を加えて乾燥重量が40%となるように濃度を調整してアミノアルコール塩(C24)[アクリル酸2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(10.8モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン;2モル)エステル(89.2モル%)共重合体]を40%含む水溶液を得た。重量平均分子量は、4,000であった。
【0103】
<無機微粒子スラリーの製造>
<実施例1〜10、比較例1〜3>
無機微粒子(A)、ポリビニルアルコール(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)、アミノアルコール(C1)及び/又はアミノアルコール塩(C2)、水(D)、及びモノカルボン酸(S)、湿潤分散剤(W)を表1に記載した配合量(部)で、3軸遊星型ミキサ(浅田鉄工(株)製、プラネタリDESPA)に仕込み、25〜30℃に保持し、分散機の攪拌機の出力を80パーセントに固定して3時間攪拌し、本発明の無機微粒子スラリー(S1〜10)、並びに比較用無機微粒子スラリー(HS1〜3)を得た。本発明の無機微粒子スラリー(S1〜10)、及び比較用無機微粒子スラリー(HS1〜3)の物性値(粘度、pH)を表1に記載した。なお、使用した各成分は以下の通りである。
【0104】
<無機微粒子(A)>
無機微粒子(A1);気相法アルミナ微粒子、個数平均一次粒径13nm(商品名:AeroxideAlu−C、日本アエロジル(株)製)
無機微粒子(A2);気相法シリカ、個数平均一次粒径7nm(商品名:Aerosil300、日本アエロジル(株))
無機微粒子(A3);気相法シリカ、個数平均一次粒径30nm(商品名:Aerosil50、日本アエロジル(株)製)
無機微粒子(A4);気相法シリカ、個数平均一次粒径20nm(商品名:Aerosil90、日本アエロジル(株))
無機微粒子(A5);炭酸カルシウム、個数平均一次粒径0.5μm(商品名:Brilliant15、白石工業(株)製)
無機微粒子(A6);沈殿法シリカ、個数平均一次粒径2μm(商品名:NipsilSS20、東ソー・シリカ(株)製)
無機微粒子(A7);酸化イットリウム(試薬、メルク(株)製)
無機微粒子(A8);酸化亜鉛(試薬、メルク(株)製)
【0105】
<ポリビニルアルコール(B1)>
ポリビニルアルコール(B11);部分ケン化ポバール、ケン化度80%、重合度500(J−POVAL JL−05、日本酢ビポバール(株)製)
ポリビニルアルコール(B12);部分ケン化ポバール、ケン化度96%、重合度5000(J−POVAL JP−50、日本酢ビポバール(株)製)
ポリビニルアルコール(B13);完全ケン化ポバール、ケン化度99%、重合度300(J−POVAL JF−03、日本酢ビポバール(株)製)
ポリビニルアルコール(B14);部分ケン化ポバール、ケン化度70%、重合度500(J−POVAL JR−05、日本酢ビポバール(株)製)
ポリビニルアルコール(B15);部分ケン化ポバール、ケン化度89%、重合度2000(J−POVAL JP−20、日本酢ビポバール(株)製)
【0106】
<ポリオキシアルキレン化合物(B2)>
ポリオキシアルキレン化合物(B21);製造例1で得た蔗糖PO13モル/EO67モル/BO5モル付加物
ポリオキシアルキレン化合物(B22);製造例2で得た蔗糖/PO13モル/EO27モル/PO60モル付加物
ポリオキシアルキレン化合物(B23);製造例3で得たラフィノース/PO35モル付加物
ポリオキシアルキレン化合物(B24);製造例4で得たメレチトース/PO20モル付加物
ポリオキシアルキレン化合物(B25);製造例5で得た蔗糖/EO5モル/PO45モル/メチルクロライド2.5モル
【0107】
<アミノアルコール(C1)>
アミノアルコール(C11);トリエタノールアミン(和光純薬工業(株)製、JIS試薬特級)
アミノアルコール(C12);ジエタノールアミン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)
アミノアルコール(C13);2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)
【0108】
<アミノアルコール塩(C2)>
アミノアルコール塩(C21);製造例6で得たトリエタノールアミン乳酸塩(64%水溶液で使用する)
アミノアルコール塩(C22);製造例7で得たポリアクリル酸ジエタノールアミン塩(重量平均分子量20,000)(71%水溶液で使用する)
アミノアルコール塩(C23);製造例8で得たマレイン酸2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(35モル%)−マレイン酸モノメトキシポリ(n=45)エチレングリコール2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(15モル%)−スチレン(50モル%)共重合体(重量平均分子量6,000)(40%水溶液で使用する)
アミノアルコール塩(C24);製造例9で得たアクリル酸2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(10.8モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン;2モル)エステル(89.2モル%)共重合体(重量平均分子量4,000)(40%水溶液で使用する)
アミノアルコール塩(C25);エタノールアミン塩酸塩(昭和化学(株)製)
【0109】
<モノカルボン酸(K)>
酢酸(和光純薬工業(株)製、試薬特級)
【0110】
<湿潤分散剤(W)>
湿潤分散剤(W1);SNディスパーサント5034(ポリカルボン酸ナトリウム塩 40%水溶液、サンノプコ(株)製)
湿潤分散剤(W2);ノプコウエットSN−20T(非イオン系界面活性剤、サンノプコ(株)製)
【0111】
【表1】


(C1)/(C1+C2)は、アミノアルコール(C1)及びアミノアルコール塩(C2)の両方を含む場合のアミノアルコール(C1)の含有量(%)である。
【0112】
<ガラス管への塗布及び蛍光管の作製>
<実施例11>
実施例1の無機微粒子スラリー(S1)に水を加えて均一混合して25℃に
おける浮ひょう法による比重が1.03になるようにして希釈液を調製した後、蛍光灯メーカーから入手した蛍光灯用ガラス管(内径16mm、長さ40cm)の内面に吸い上げ塗工法を用いて、約25℃で無機微粒子スラリー希釈液を塗布した。次いで、この塗布膜を大気中、90℃にて10分、エアブローしながら乾燥して塗布済みガラス管(G1)を作製した。乾燥後の塗膜の膜厚は、1μmであった。次いで、この塗膜上に蛍光体層を形成し、800℃にて30分間、焼成を行った。その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、本発明の蛍光灯(L1)を作製した。蛍光体層としては、赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の混合物を用いた。
なお、浮ひょう法による比重は、JIS K0061:2001 化学製品の密度及び比重測定方法 7.液体の密度及び比重の測定方法 7.1浮ひょう法に準じて測定した。
【0113】
<実施例12〜20、比較例4〜6>
無機微粒子スラリー(S1)を実施例2〜10で得た無機微粒子スラリー(S2〜10)、又は比較例1、2で得た比較用無機微粒子スラリー(HS1〜3)のいずれかに変更したこと以外、実施例11と同様にして、塗布済みガラス管(G2〜10)、及び比較用ガラス管(HG1〜3)、並びに本発明の蛍光灯(L2〜10)及び比較用蛍光灯(HL1〜3)を作製した。
【0114】
<評価>
実施例及び比較例で作製した塗布済みガラス管(G1〜10、HG1〜3)の塗膜の外観及び蛍光灯(L1〜10、HL1〜3)の保護作用の評価を行い、表2に記載した。
【0115】
<塗膜の外観>
塗膜の外観は、塗布済みのガラス管をそれぞれ20本作製し、これらのガラス管の外観を以下の評価基準で目視評価した。
[評価基準]
◎:20本全てのガラス管にムラが無く均一である。
○:1〜9本のガラス管にムラがある。
△:10〜15本のガラス管にムラがある。
×:16〜20本のガラス管にムラがある。
【0116】
<蛍光灯の保護作用>
保護作用は、蛍光灯をそれぞれ20本作製し、これらの蛍光灯の点灯直後の初期の明るさ(初期値)と2000時間連続点灯した後の明るさ(2000時間値)を測定し、初期値の平均値に対する2000時間値の平均値の百分率を算出することで評価した。なお、良好な保護作用が発揮できていれば、連続点灯による明るさの低下が抑えられることから、光束維持率の値は100%に近い値となる。上記の蛍光灯の明るさは、JIS C7617−2:2009「直管蛍光ランプ−第2部:性能仕様」1.5.6光学的特性、及び1.5.7光束維持率に記載の方法で測定した。
【0117】
【表2】
【0118】
表2から明らかなように、本発明の無機微粒子スラリーを用いると、比較用の無機微粒子スラリーを用いた場合に比べ、その塗膜の外観に優れていた(塗膜にムラが無く、均一性に優れる。)。また、本発明の無機微粒子スラリーを用いた蛍光灯は比較用の無機微粒子スラリーを用いた蛍光灯に比べて連続点灯による明るさの低下が無く、良好な保護作用を発揮した。