特許第5771801号(P5771801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771801
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】タブレット鍛造方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/02 20060101AFI20150813BHJP
   B21J 5/06 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   B21J5/02 C
   B21J5/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-112422(P2014-112422)
(22)【出願日】2014年5月30日
【審査請求日】2014年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
(73)【特許権者】
【識別番号】514137827
【氏名又は名称】株式会社秦野精密
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】牟禮 雄二
(72)【発明者】
【氏名】淵脇 健二
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−183449(JP,A)
【文献】 特開2006−122924(JP,A)
【文献】 特開2001−105086(JP,A)
【文献】 特開2004−202576(JP,A)
【文献】 特開平09−216033(JP,A)
【文献】 特開昭63−313624(JP,A)
【文献】 特開2007−275925(JP,A)
【文献】 特開昭58−044942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/00−13/14
B21J 17/00−19/04
B21K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブレット状素材を用いて鍛造品を成形するタブレット鍛造方法であり、
幅狭の薄板コイル鋼材をせん断して完成品の板厚に対応した厚さで、角部を有するタブレット状素材を得るせん断加工工程と、
鍛造品を成形するためのパンチを有する上型と、前記上型に対向して配置される前記鍛造品を成形するためのカウンターパンチを有する下型との間で、前記タブレット状素材の板厚面に正対する方向から前記タブレット状素材を圧縮加工し、鍛造品を成形するタブレット鍛造工程と、
タブレット鍛造工程で成形された鍛造品の平面に正対する方向から静水圧応力下でシェービング加工するシェービング加工工程とを含み、
前記タブレット鍛造工程では、
前記パンチと前記カウンターパンチの被加工材料と接触する側の端面であり、 前記パンチまたは前記カウンターパンチとの突き合わせ端面の一方において、 前記突き合わせ端面からの高さを0.5〜1mm程度だけ短くし、圧縮加工終了時に前記パンチと前記カウンターパンチの突き合わせ面に隙間を形成することで前記隙間により前記成形された鍛造品に出っ張り部を成形し、
かつ前記タブレット鍛造工程では、前記成形された鍛造品に前記タブレット状素材の角部が線状残痕として残存し、
前記シェービング加工工程では、
前記成形された鍛造品の出っ張り部と、前記鍛造品に残存する前記タブレット状素材の角部に相当する線状残痕を、鍛造品の板厚側の曲面と共にシェービング加工することを特徴とするタブレット鍛造方法。
【請求項2】
前記上型は、上型ケースの空洞部にパンチホルダーと前記パンチを配置し、
前記下型は、カウンターパンチホルダーを補助リングの空洞部に配置後、前記カウンターパンチホルダーの空洞部に前記カウンターパンチを動作可能に配置した上で前記補助リングを下型ケースに配置し、
前記隙間が形成される様に前記パンチと前記カウンターパンチの間で前記タブレット素材を圧縮加工する時に、前記カウンターパンチホルダーに前記タブレット状素材の周囲が囲まれて密閉状態であることを特徴とする請求項1に記載のタブレット鍛造方法
【請求項3】
前記タブレット状素材は、前記板厚面以外の平面の形状が、角部を少なくとも3つ以上有する形状であることを特徴とすることを特徴とする請求項に記載のタブレット鍛造方法。
【請求項4】
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載のタブレット鍛造方法を用いて製造されたことを特徴とする鍛造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の厚さを有するタブレット状素材を用いて鍛造品を成形するタブレット鍛造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から機械・自動車部品などを製造するための加工方法として、板金プレス加工によって製品を得る加工方法(特許文献1)や、鍛造加工によって製品を得る加工方法(特許文献2)などが用いられている。
【0003】
この板金プレス加工方法は、例えば図15に示すように、幅広の薄板コイル鋼材100を引き出してプレス機械110によりファインブランキング加工などで精密打ち抜き加工を行い、同時に複数個の製品120を得ている。
【0004】
また、鍛造加工方法は、例えば図16に示すように、円柱のコイル鋼材200を引き出して所定長さにせん断し、所定長さにせん断された円柱の素材201を用い、この円柱の素材201をつぶし鍛造、密閉鍛造し、さらに打ち抜き・バリ取り鍛造し、製品220を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−254735号公報
【特許文献2】特開2000−24746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような板金プレス加工方法では、一般に材料のさん幅(材料長手方向の打ち抜いた隣り合う加工品間の材料余白および打ち抜いた加工品と材料幅方向端部間の材料余白)は、材料長手方向に対して材料板厚の1.5倍以上、材料幅方向に対して材料板厚の1.0倍以上を必要とする。もし、必要なさん幅を確保できない場合は、製品の破断面が著しくなり、割れが発生するなど良品を得ることができないためある程度の余白を確保する必要があり、材料歩留まりが低下する。このように、高精度で、高い品質の製品を作るためには、「さん幅」がどうしても必要であり、材料歩留まりを上げることができず、ファインブランキング加工で廃棄する材料が多く、加工コストを下げることが困難であった。また、鍛造加工方法では、通常、円柱素材から加工を始めるのが常識であり、工程数が多く、しかもバリが多く生じ廃棄材料も多くなるなどの問題がある。
【0007】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし加工コストを軽減することが可能なタブレット鍛造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項に記載の発明は、タブレット状素材を用いて鍛造品を成形するタブレット鍛造方法であり、
幅狭の薄板コイル鋼材をせん断して完成品の板厚に対応した厚さで、角部を有するタブレット状素材を得るせん断加工工程と、
鍛造品を成形するためのパンチを有する上型と、前記上型に対向して配置される前記鍛造品を成形するためのカウンターパンチを有する下型との間で、前記タブレット状素材の板厚面に正対する方向から前記タブレット状素材を圧縮加工し、鍛造品を成形するタブレット鍛造工程と、
タブレット鍛造工程で成形された鍛造品の平面に正対する方向から静水圧応力下でシェービング加工するシェービング加工工程とを含み、
前記タブレット鍛造工程では、
前記パンチと前記カウンターパンチの被加工材料と接触する側の端面であり、前記パンチまたは前記カウンターパンチとの突き合わせ端面の一方において、前記突き合わせ端面からの高さを0.5〜1mm程度だけ短くし、圧縮加工終了時に前記パンチと前記カウンターパンチの突き合わせ面に隙間を形成することで前記隙間により前記成形された鍛造品に出っ張り部を成形し、かつ前記タブレット鍛造工程では、前記成形された鍛造品に前記タブレット状素材の角部が線状残痕として残存し、
前記シェービング加工工程では、
前記成形された鍛造品の出っ張り部と、前記鍛造品に残存する前記タブレット状素材の角部に相当する線状残痕を、鍛造品の板厚側の曲面と共にシェービング加工することを特徴とするタブレット鍛造方法である。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記上型は、上型ケースの空洞部にパンチホルダーと前記パンチを配置し、
前記下型は、カウンターパンチホルダーを補助リングの空洞部に配置後、前記カウンターパンチホルダーの空洞部に前記カウンターパンチを動作可能に配置した上で前記補助リングを下型ケースに配置し、
前記隙間が形成される様に前記パンチと前記カウンターパンチの間で前記タブレット素材を圧縮加工する時に、前記カウンターパンチホルダーに前記タブレット状素材の周囲が囲まれて密閉状態であることを特徴とする請求項1に記載のタブレット鍛造方法である。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記タブレット状素材は、
前記板厚面以外の平面の形状が、角部を少なくとも3つ以上有する形状であることを特徴とすることを特徴とする請求項に記載のタブレット鍛造方法である。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項乃至請求項3のいずれか1項に記載のタブレット鍛造方法を用いて製造されたことを特徴とする鍛造品である。
【発明の効果】
【0018】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0019】
請求項1乃至請求項4に記載の発明では、幅狭の薄板コイル鋼材をせん断して完成品の板厚に対応した厚さで、角部を有するタブレット状素材を得るせん断加工工程と、鍛造品を成形するためのパンチを有する上型と、上型に対向して配置される鍛造品を成形するためのカウンターパンチを有する下型との間で、タブレット状素材の板厚面に正対する方向からタブレット状素材を圧縮加工し、鍛造品を成形するタブレット鍛造工程と、タブレット鍛造工程で成形された鍛造品の平面に正対する方向から静水圧応力下でシェービング加工するシェービング加工工程とを含み、タブレット鍛造工程では、パンチとカウンターパンチの被加工材料と接触する側の端面であり、パンチまたはカウンターパンチとの突き合わせ端面の一方において、突き合わせ端面からの高さを0.5〜1mm程度だけ短くし、圧縮加工終了時にパンチとカウンターパンチの突き合わせ面に隙間を形成することで隙間により成形された鍛造品に出っ張り部を成形し、かつタブレット鍛造工程では、成形された鍛造品にタブレット状素材の角部が線状残痕として残存し、シェービング加工工程では、成形された鍛造品の出っ張り部と、鍛造品に残存するタブレット状素材の角部に相当する線状残痕を、鍛造品の板厚側の曲面と共にシェービング加工することで、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし、抜き孔がある製品の加工コストを軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】タブレット鍛造の製造工程全体を説明する図である。
図2】タブレット鍛造とシェービング加工の組合せ製造工程全体を説明する図である。
図3】タブレット鍛造工程の上型と下型の斜視図である。
図4】パンチとカウンターパンチを示す斜視図である。
図5】パンチとカウンターパンチ及びカウンターパンチホルダーの組み付けを示す斜視図である。
図6】タブレット鍛造金型の動作を示す断面図である。
図7】シェービング工程の上型と下型の斜視図である。
図8】シェービングパンチとシェービングダイス及びシェービングカウンターパンチの配置を示す斜視図である。
図9】シェービングパンチとシェービングダイス及びカウンターパンチの組み付けを示す断面図である。
図10】シェービング金型の動作を示す断面図である。
図11】タブレット鍛造方法の被加工材料の向きと支持機構の例を示す工程図である。
図12】タブレット鍛造の応用例を示す図である。
図13】タブレット鍛造の他の応用例を示す図である。
図14】加工コストの軽減を説明する図である。
図15】従来の板金プレス加工方法を示す図である。
図16】従来の鍛造加工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明のタブレット鍛造方法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。この実施の形態では、鍛造品として、自動車に用いられる部品であるが、これに限定されず産業機械などに用いられる部品も同様である。
【0030】
(第1発明のタブレット鍛造方法)
この実施の形態のタブレット鍛造方法を、図1に基づいて説明する。図1はタブレット鍛造の製造工程全体を説明する図である。このタブレット鍛造方法は、タブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形する鍛造方法であり、タブレット状素材1は、完成品の板厚に対応した厚さを有する長方形の鋼材素材を用いている。完成品の板厚に対応した厚さは、完成品の板厚とほぼ同じ厚さであり、金型へ挿入するためのクリアランス分だけタブレット状素材1の板厚が小さいと言う意味である。また、長方形の鋼材素材を用いているが、長方形に限定されず、完成品の板厚とほぼ同じ厚さを有する鋼材素材でさえあれば円形、楕円形、多角形など多様な形状であってもよい。この発明のタブレット鍛造方法は、タブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形する鍛造方法である。
【0031】
このタブレット鍛造方法は、せん断加工工程A1と、タブレット鍛造工程A2とを含む。せん断加工工程A1は、幅狭の薄板コイル鋼材9をせん断して完成品の板厚に対応した厚さを有する長方形のタブレット状素材1を得る。タブレット鍛造工程A2は、タブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工し、完成品としての鍛造品2を成形する。
【0032】
このタブレット鍛造方法では、抜き孔が無く、完成品の輪郭に対する寸法公差が精度を要求しないものに対して適用可能で、せん断加工工程A1と、タブレット鍛造工程A2とを含むことで、せん断加工工程A1によってタブレット状素材1を得て、このタブレット状素材1を用いてタブレット鍛造工程A2で鍛造品2を成形する構成であり、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし、加工コストを軽減することが可能である。このように、タブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形するタブレット鍛造方法を用いることで、製造された鍛造品2は安価となる。
【0033】
(第2発明のタブレット鍛造方法)
この実施の形態のタブレット鍛造方法を、図2に基づいて説明する。図2はタブレット鍛造とシェービング加工の組合せ製造工程全体を説明する図である。このタブレット鍛造方法は、第1発明のタブレット鍛造方法と同様に、タブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形する鍛造方法であり、同様に幅狭の薄板コイル鋼材9をせん断して完成品の板厚に対応した厚さを有する長方形のタブレット状素材1を得るせん断加工工程A1と、タブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工し、鍛造品2を成形するタブレット鍛造工程A2とを含み、さらにタブレット鍛造工程A2で成形された鍛造品2の平面に正対する方向から静水圧応力下でシェービング加工するシェービング加工工程A3とを含み、シェービング加工することによって完成品3を得る。
【0034】
シェービング加工とは、通常、プレス機械により薄板鋼材をせん断(打ち抜き)した切り口面を薄く削り、非常に精度の高い切り口面を得る方法であり、削り量は材料板厚の3〜10%程度である。1回のシェービング加工では良好な面が得られず、この場合には2回加工することがあり、断面をわずかに削って滑らかにする。
【0035】
この実施の形態のタブレット鍛造方法では、完成品の輪郭に対する寸法公差が高精度を要求するものに対して適用可能で、せん断加工工程A1と、タブレット鍛造工程A2と、シェービング加工工程A3とを含むことで、せん断加工工程A1によってタブレット状素材1を得て、このタブレット状素材1を用いてタブレット鍛造工程A2で鍛造品2を成形し、シェービング加工工程A3により抜き孔がある製品にする構成であり、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし、抜き孔がある製品の加工コストを軽減することが可能である。このように、タブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形するタブレット鍛造方法とシェービング加工を併用することで、抜き孔がある完成品3の製品を高精度で、かつ安価に製造できる。
【0036】
第1発明及び第2発明のタブレット鍛造方法のタブレット鍛造工程A1において、タブレット鍛造金型を用いて鍛造品を成形し、第2発明のタブレット鍛造方法のシェービング加工工程A3において、シェービング金型を用いて鍛造品の完成品を成形する。以下、タブレット鍛造金型及びシェービング金型について説明する。
【0037】
(タブレット鍛造金型)
この実施の形態のタブレット鍛造金型を、図3乃至図6に基づいて説明する。図3はタブレット鍛造工程の上型と下型の斜視図、図4はパンチとカウンターパンチを示す斜視図、図5はパンチとカウンターパンチ及びカウンターパンチホルダーの組み付けを示す斜視図、図6はタブレット鍛造金型の動作を示す断面図である。
【0038】
この実施の形態のタブレット鍛造金型10は、図3に示すように、完成品の板厚に対応した厚さを有する長方形のタブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形する鍛造金型であり、上型20と下型30とを備えている。上型20は、タブレット鍛造の上型ケース21の空洞部にパンチホルダー22とパンチ23を配置した構成であり、下型30は、カウンターパンチホルダー33を補助リング32の空洞部に圧入し、カウンターパンチホルダー33の空洞部にカウンターパンチ34を摺動可能に配置した上でそれらをケース31の空洞部に配置した構成であり、図6に示すように、加圧、離型を行う。
【0039】
図6において、タブレット鍛造金型10の加圧、離型の動作を説明する。カウンターパンチ34の成形部34aにタブレット状素材1を設置し、プレス機械によりパンチ23を降下するように動作させて加圧可能な状態にし、カウンターパンチ34の成形部34aとパンチ23の成形部23aにより加圧する。加圧後は、パンチ23を離脱させ、その後カウンターパンチ34をプレス機械のノックアウト機構(図示せず)によりプレス加圧方向とは逆方向へノックアウトすることにより鍛造品2の離型を行う。タブレット状素材1は、カウンターパンチホルダー33、カウンターパンチ34の成形部34a及びパンチ23の成形部23aにより形成される閉空洞内で加圧され、この空洞の形状を変えることで種々の部品へも展開が可能である。カウンターパンチ34(またはパンチ23)の被加工材料と接触する側の端面であり、パンチ23(またはカウンターパンチ34)との突き合わせ面の一方において、同体端面からの高さを0.5〜1mm程度だけ短くすることでパンチ23とカウンターパンチ34の突き合わせ時(タブレット鍛造の終了時)に隙間Kが成形され、この隙間Kによって完全密閉状態を避けて金型破壊を回避する。
【0040】
このタブレット鍛造金型10では、図3及び図4に示すように、タブレット鍛造の上型20は、鍛造品2を成形するためのパンチ23を有し、タブレット鍛造の下型30は、上型20に対向して配置される鍛造品2を成形するためのカウンターパンチ34を有し、カウンターパンチホルダー33、パンチ23の成形部23a及びカウンターパンチ34の成形部34aにより形成される閉空間中でプレス機械のスライド(図示せず)に取り付けたパンチ23をスライドを降下させることでタブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工し、鍛造品2を成形する。
【0041】
このように、完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形する鍛造金型であり、パンチ23の成形部23aとカウンターパンチ34の成形部34aの間で、タブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工し、鍛造品2を成形することで、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし加工コストを軽減することが可能である。
【0042】
(シェービング金型)
この実施の形態のシェービング金型を、図7乃至図10に基づいて説明する。図7はシェービング工程の上型と下型の斜視図、図8はシェービングパンチ52とシェービングダイス62及びシェービングカウンターパンチ63の配置を示す斜視図、図9はシェービングパンチ52とシェービングダイス62及びカウンターパンチ63の組み付けを示す断面図、図10はシェービング金型の動作を示す断面図である。この実施の形態のシェービング金型40は、完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材1を用いて成形された鍛造品2に静水圧応力下でシェービング加工を行う金型であり、上型50と下型60とを備えている。上型50は、図7及び図8に示すように、ケース51にシェービングパンチパンチ52を配置した構成であり、下型60は、ケース61にシェービングダイス62及びシェービングカウンターパンチ63を配置し、シェービングカウンターパンチ63をシェービングダイス62の空洞部で摺動可能にした構成であり、図10に示すように、シェービングのための加圧と、完成品3の離型を行う。
【0043】
図9及び図10において、シェービング金型40の加圧、離型の動作を説明する。シェービングカウンターパンチ63の下方にはノックアウト(図示せず)が設けられ、シェービングカウンターパンチ63上に鍛造品2を設置し、プレス機械のスライドに取り付けたシェービングパンチ52を、スライドを降下させることで動作させて加圧可能な状態にし、シェービングパンチ52と下方から背圧を付加したシェービングダイス63とで鍛造品2を挟んだまま同時に降下することで加圧し、静水圧応力下でシェービング加工を行う。加圧後は、シェービングパンチ52を離脱させ、その後プレス機械のノックアウト機能(図示せず)によりシェービングダイス63を上方にノックアウトしてシェービング加工された完成品3の離型を行う。
【0044】
このシェービング金型40では、図9に示すように、シェービングダイス62の成形孔62aとシェービングパンチ52の外周との間に、クリアランスPが設けられている。このクリアランスPは5μmに設定され、このクリアランスPはできる限り小さいことが好ましい。シェービングダイス62には、成形孔62aの周りに凹み部62bが形成されており、この凹み部62bに静水圧応力下でシェービング加工を行うことによって生じるスクラップSが収納され、高精度の加工ができ、かつ加工コストを軽減することが可能である。なお、シェービング量Qは、0.2mm程度である。
【0045】
(タブレット鍛造方法の実施例)
このタブレット鍛造方法の実施例を、図11乃至図14に基づいて説明する。図11はタブレット鍛造方法の被加工材料の向きと支持機構の例の概略を示す工程図、図12及び図13はタブレット鍛造の応用例を示す図、図14は加工コストの軽減を説明する図である。
【0046】
このタブレット鍛造方法は、まず、図11に示すように、幅狭の薄板コイル鋼材をせん断して完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材1を得る。次に、パーツフィーダーA70及びパーツフィーダーB71を用いてこのタブレット状素材1の姿勢を90度回転させ、タブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工できるようにする。次に、タブレット鍛造によってタブレット状素材1を圧縮加工し、鍛造品2を成形する。最後に、パーツフィーダーC80及びパーツフィーダーD81を用いてこの鍛造品2の姿勢を90度回転させ、タブレット鍛造で成形された鍛造品2の平面に正対する方向から静水圧応力下でシェービング加工することで、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし、抜き孔がある高精度な完成品3の加工コストを軽減することが可能である。
【0047】
このように、タブレット鍛造方法を用いて製造された鍛造品は、高精度で、かつ安価であり、図12に示すように、自動車の可変容積型ターボチャージャーの部品Bであるアーム90に適用される。アーム90は、耐熱ステンレス製であり、揺動中心の孔部90aと、摺動部90bを有し、孔部90aを揺動中心とし、摺動部90bで揺動する。
【0048】
また、タブレット鍛造方法を用いて製造された鍛造品は、図13に示すように、自動車の座席背もたれ角度調整機構Cの部品であるポール100に適用される。ポール100は、噛み合い、固定する歯部100aと、スライド面の摺動部100bと、固定、開放機能を有するカム部100cを有し、歯部100aの噛み合い位置によって座席背もたれの角度を調整する。
【0049】
このタブレット鍛造方法を用いて、例えば自動車の可変容積型ターボチャージャーの部品Bであるアーム90を製造するには、図14に示すように、生産コストとして、加工費・管理費と材料費が必要となる。従来の鍛造方法では、材料費の内スクラップの部分が大半を占めているが、この発明のタブレット鍛造方法では、材料費の内スクラップの部分を大幅に削減でき、結果として加工コストの大幅な削減が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材を用いて鍛造品を成形するタブレット鍛造方法に適用でき、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし高精度な加工品を低コストで製造することが可能である。


【符号の説明】
【0051】
A1 せん断加工工程
A2 タブレット鍛造工程
A3 シェービング加工工程
P クリアランス
K 隙間
1 タブレット状素材
2 鍛造品
3 完成品
9 幅狭の薄板コイル鋼材
10 タブレット鍛造金型
20 タブレット鍛造の上型
21 タブレット鍛造の上型ケース
22 パンチホルダー
23 パンチ
23a パンチの成形部
30 タブレット鍛造の下型
31 タブレット鍛造の下型ケース
32 補助リング
33 カウンターパンチホルダー
34 カウンターパンチ
34a カウンターパンチの成形部
40 シェービング金型
50 シェービング加工の上型
51 シェービング加工の上型ケース
52 シェービングパンチ
60 シェービング加工の下型
61 シェービング加工の下型ケース
62 シェービングダイス
63 シェービングカウンターパンチ
70 パーツフィーダーA
71 パーツフィーダーB
80 パーツフィーダーC
81 パーツフィーダーD
S シェービングスクラップ
90 アーム
90a アームの孔部
90b アームの摺動部
【要約】      (修正有)
【課題】薄板部品の塑性加工において、少ない工程数で、しかも廃棄材料を減らし加工コストを軽減することが可能である。
【解決手段】完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材1を用いて鍛造品2を成形するタブレット鍛造方法であり、幅狭の薄板コイル鋼材をせん断して完成品の板厚に対応した厚さを有するタブレット状素材1を得るせん断加工工程A1と、タブレット状素材1の板厚面に正対する方向から圧縮加工し、鍛造品2を成形するタブレット鍛造工程A2とを含む。
【選択図】図1
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