(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771813
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】粉末化粧料展示用見本
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
A45D33/00 650Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-133171(P2011-133171)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-276(P2013-276A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【審査官】
平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−058528(JP,A)
【文献】
特開2006−198217(JP,A)
【文献】
特開2010−131198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中皿に収容される粉末化粧料展示用見本であって、
シート状の発泡材と、
前記発泡材の片面に塗布された粘着剤と、
前記粘着剤に付着する粉末化粧料と、を具備し、
前記発泡材は、厚さが3〜7mm、見かけ密度が0.024〜0.05g/cm2、タイプAデュロメータ硬さが15〜39であり、
前記粘着剤は、厚さが0.05〜0.15mmであることを特徴とする粉末化粧料展示用見本。
【請求項2】
前記発泡材は、独立気泡架橋ポリエチレンより成ることを特徴とする請求項1記載の粉末化粧料展示用見本。
【請求項3】
前記粉末化粧料は、油分を含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の粉末化粧料展示用見本。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料展示用見本に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末化粧料の店頭用見本は、展示用として用意されているものはなく、金属や樹脂製の中皿に粉末化粧料を充填してプレスしこの中皿を容器にセットした現品(実際の商品)を店頭用見本として展示していた。
【0003】
しかしながら、上記店頭用見本にあっては、不特定多数の人の指が粉末化粧料に触れることから、粉末が飛散して陳列什器(見本台)の粉汚れが発生し商品の印象が悪くなる虞があると共に、長期間の展示に伴い粉末化粧料が減少し当初の商品の外観が損なわれる虞がある。
【0004】
ここで、薄い合成樹脂フィルムや台紙上に接着剤を介して少量の粉末化粧料を貼着し概ね1回使用のお試し用として試供する試供品(サンプル)として、以下の特許文献に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2927536号公報
【特許文献2】特開平9−20616号公報
【特許文献3】特公平5−18805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載のものを始めとした試供品を店頭用見本とした場合には、現品に対して外観、質感(触り心地や付け心地)が大きく相違し、購買意欲が削がれるといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、現品と比べて遜色のない外観、質感が得られ、且つ、指で粉末化粧料を擦ったときに粉が飛散する粉飛びが極力抑えられると共に数回指で粉末化粧料を擦った後に指に粉が付着する粉離れが極力抑えられ、その結果、陳列什器の粉汚れが極力抑えられ、且つ、長期間展示していても当初の外観が維持され、且つ、外観、質感が損なわれない程度に数回の実使用に耐えられ、且つ、製造コストが低減され、加えて、容易且つ高いレフィル性(詰め替え性)を有する、店頭用見本を始めとした粉末化粧料展示用見本を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による粉末化粧料展示用見本は、
中皿に収容される粉末化粧料展示用見本であって、シート状の発泡材と、発泡材の片面に塗布された粘着剤と、粘着剤に付着する粉末化粧料と、を具備し、発泡材は、厚さが3〜7mm、見かけ密度が0.024〜0.05g/cm2、タイプAデュロメータ硬さが15〜39であり、粘着剤は、厚さが0.05〜0.15mmであることを特徴としている。
【0009】
このような粉末化粧料展示用見本によれば、発泡材の片面に粘着剤を介して粉末化粧料が付着し、表面の粉末化粧料が視認されるため、現品と比べて遜色ない外観が得られると共に、この粉末化粧料を有する発泡材を中皿に入れることで表面の粉末化粧料のみが視認されるため、一層現品と比べて遜色ない外観が得られる。また、粉末化粧料を粘着剤を介して発泡材に付着させるため、発泡材による弾力性が生じ、プレスをすることで中に空気が入り弾力性を有する適度に柔らかい質感を有する現品と遜色ない質感(触り心地)が得られる。また、発泡材の見かけ密度が0.024〜0.05g/cm
2、タイプAデュロメータ硬さが15〜39であるため、柔らかすぎず硬すぎず適度で現品と比べても遜色のない質感が得られる。また、粘着剤と接している粉末化粧料は指で擦られても剥離し難く、且つ、粉末化粧料が指で擦られると発泡材が弾力性によりへこみ剥離力が軽減されて粉末化粧料が一層剥離し難くなるため、粉飛び及び粉離れが極力抑えられて陳列什器の粉汚れが極力抑えられると共に長期間展示していても当初の外観が維持され、且つ、外観、質感が損なわれない程度に数回の実使用に耐えることができる。また、発泡材の厚さを3mm以上としているため、3mmより薄く発泡材をスライスし難い、という製造上の問題はなく、且つ、7mm以下としているため、最大深さが約7〜8mmの中皿に綺麗且つきちんと収容される。また、粘着剤の厚さを0.05mm以上としているため、0.05mmより薄く発泡材の凹凸により粘着剤の表面が平滑にならず粉末化粧料が波打ってしまい外観が損なわれてしまう、という問題はなく、且つ、0.15mm以下としているため、現状の塗工設備ではこれより厚い粘着剤を形成し難い、という問題はなく容易に形成できる。また、使用する粉末化粧料の量が少なくされると共にプレス工程がなくされ且つ製造が容易とされるため、製造コストが低減される。さらにまた、数回指で粉末化粧料が擦られたら、その都度中皿に対して交換すれば良く、容易且つ高いレフィル性を有する。
【0010】
ここで、発泡材は、独立気泡架橋ポリエチレンより成ると、柔らかすぎず硬すぎず適度で現品と比べても遜色のない質感を容易に得ることができる。
【0011】
また、粉末化粧料は、油分を含有していると、発色が良く且つ肌へのくっつきが良い。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、現品と比べて遜色のない外観、質感を呈し、且つ、陳列什器の粉汚れを極力抑えることができ、且つ、長期間展示していても当初の外観を維持でき、且つ、外観、質感を損なわない程度に数回の実使用に耐えることができ、且つ、製造コストを低減でき、加えて、容易且つ高いレフィル性を有する粉末化粧料展示用見本を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粉末化粧料展示用見本を備えたコンパクト容器を示す斜視図である。
【
図2】
図1中の粉末化粧料展示用見本及び中皿を示す一部破断斜視図である。
【
図3】粉末化粧料展示用見本に用いられる発泡材の見かけ密度とタイプAデュロメータ硬さとの関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、粉末化粧料展示用見本を備えたコンパクト容器を示す斜視図、
図2は、粉末化粧料展示用見本及び中皿を示す一部破断斜視図であり、この実施形態の粉末化粧料展示用見本は、ここでは、アイシャドウの展示用見本である。
【0015】
図1に示すように、コンパクト容器100は、複数(ここでは4個)の収容凹部1aを上面に備えた容器本体1と、この容器本体1に上下方向に回動自在に枢着され当該容器本体1の上面を開閉する蓋体2と、を具備している。容器本体1の収容凹部1aには、粉末化粧料展示用見本(以下展示用見本と呼ぶ)3を収容した中皿4が交換自在にセットされる。これら容器本体1、蓋体2及び中皿4の構成は現品と同様である。
【0016】
展示用見本3は、中皿4に対して交換可能に収容されている。そして、ここでは、4色の色違いの展示用見本3が個々の中皿4に収容されている。
【0017】
展示用見本3は、
図2に示すように、シート状の発泡材3aと、この発泡材3aの片面(表面)に塗布された粘着剤3bと、この粘着剤3bに付着する粉末化粧料3cと、を備えた3層構造に構成されている。
【0018】
発泡材3aは、ここでは、独立気泡架橋ポリエチレンより成り、厚さが3〜7mmとされている。
【0019】
粘着剤3bは、傾斜式ボールタック法(J.Dow法とも称す)に基づく以下の粘着性を有するものが用いられている。この粘着性は、具体的には、傾斜角30°の傾斜板上に粘着面を備えた三角形の装置の頂上から、直径1/32〜1インチまでの鋼球を転がし、粘着面で停止したボールナンバーで表示するものであり、本実施形態の粘着剤3bは、ボールナンバー14〜32の粘着性を有している。そして、この粘着剤3bの厚さは、0.05〜0.15mmとされている。
【0020】
粉末化粧料3cはアイシャドウであり、油分を所定に含有している。この粉末化粧料3cの厚さは、厚すぎて指で擦ってボロボロ剥離する、ということがない厚さで、且つ、薄すぎて下地である発泡材3aが見えてしまう、ということがない厚さである。
【0021】
なお、ここでは、特に好ましいとして、粉末化粧料3cをヘラで塗って伸ばして付着させているが、他の方法で粘着剤3aに付着させるようにしても良い。
【0022】
このような構成を有する展示用見本3によれば、発泡材3aの片面に粘着剤3bを介して粉末化粧料3cが付着し、表面の粉末化粧料3cが視認されるため、現品と比べて遜色ない外観を得ることができると共に、この粉末化粧料3cを有する発泡材3aを中皿4に入れることで表面の粉末化粧料3cのみが視認されるため、一層現品と比べて遜色ない外観を得ることができる。
【0023】
また、粉末化粧料3cを粘着剤3bを介して発泡材3aに付着させるため、発泡材3aによる弾力性が生じ、プレスをすることで中に空気が入り弾力性を有する適度に柔らかい質感を有する現品と遜色ない質感(触り心地)を得ることができる。なお、従来技術のように薄い合成樹脂フィルムや台紙等の基材上に粉末化粧料を付着させると、弾力性がなく硬い質感となる。また、厚くても硬い基材の上に粘着剤を介して粉末化粧料を付着させると、硬い質感で質感が損なわれてしまう。
【0024】
ここで、発泡材の見かけ密度とタイプAデュロメータ硬さとの関係と、官能評価との関係について説明する。
図3は、発泡材の見かけ密度とタイプAデュロメータ硬さとの関係を示す線図であり、ここでは、発泡材は独立気泡架橋ポリエチレンより成る。本発明者の実験によると、適正範囲Xで示すように、発泡材の見かけ密度が0.024〜0.05g/cm
2、タイプAデュロメータ硬さが15〜39であると、柔らかすぎず硬すぎず適度で現品と比べても遜色のない質感(官能評価)を得ることができ、特に、見かけ密度が0.033g/cm
2、タイプAデュロメータ硬さが25であると、現品とほぼ同じ質感が得ることができた。なお、柔らかすぎると表面が波打ってしまい外観が損なわれてしまう。
【0025】
また、本実施形態の展示用見本3によれば、粘着剤3bと接している粉末化粧料3cは指で擦られても剥離し難く、且つ、粉末化粧料3cが指で擦られると発泡材3aが弾力性によりへこみ剥離力が軽減されて粉末化粧料3cが一層剥離し難くなるため、粉飛び及び粉離れが極力抑えられて陳列什器の粉汚れを極力抑えることができると共に長期間展示していても当初の外観を維持でき、且つ、外観、質感を損なわない程度に数回(1、2回)の実使用に耐えることができる。なお、従来技術のように薄い合成樹脂フィルムや台紙等の基材や、硬い基材の上に粘着剤を介して粉末化粧料を付着させた場合には、粉末化粧料を指で擦ると基材がへこまないことから粉末化粧料が容易に剥離してしまい、粉汚れが発生しやすく、且つ、下地である基材が露出し外観が損なわれてしまう。
【0026】
また、発泡材3aの厚さを3mm以上としているため、3mmより薄く発泡材をスライスし難い、という製造上の問題はなく、且つ、7mm以下としているため、最大深さが約7〜8mmの中皿に綺麗且つきちんと収容できる。
【0027】
また、粘着剤3bの厚さを0.05mm以上としているため、0.05mmより薄く発泡材3aの凹凸により粘着剤3bの表面が平滑にならず粉末化粧料3cが波打ってしまい外観が損なわれてしまう、という問題はなく、且つ、0.15mm以下としているため、現状の塗工設備ではこれより厚い粘着剤を形成し難い、という問題はなく容易に形成できる。
【0028】
また、使用する粉末化粧料3cの量が少なくされると共にプレス工程がなくされ且つ製造が容易とされるため、製造コストを低減できる。
【0029】
また、数回指で粉末化粧料3cが擦られたら、その都度展示用見本3を中皿4に対して交換すれば良く、容易且つ高いレフィル性を有するものとすることができる。
【0030】
また、発泡材3aは独立気泡架橋ポリエチレンより成るため、柔らかすぎず硬すぎず適度で現品と比べても遜色のない質感を容易に得ることができる。なお、発泡材3aが連続気泡架橋ポリエチレンより成ると、柔らかすぎて所望の質感を得ることができない。
【0031】
また、粉末化粧料3cは油分を含有しているため、発色が良く且つ肌へのくっつきが良い。なお、粉末化粧料3cが油分を含有していない場合には、発色が悪く且つ肌へのくっつきが悪い。
【0032】
さらにまた、粘着剤3bは、ボールナンバー14〜32の粘着性を有しているため、最適に粉末化粧料3cを付着できる。なお、ボールナンバー14〜32の粘着性を有する粘着剤であれば、どのような粘着剤を用いても良いが、例えば、アクリル系の粘着剤やエポキシ系の粘着剤を用いるのが好ましい。なお、ボールナンバーが14より小さいと、粘着力が弱すぎる。
【0033】
加えて、本実施形態にあっては、発泡材3aが有する凹凸に粘着剤3bが入り込んで粉末化粧料3cが押え付けられた状態とされ、密着性の向上が図られている。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、展示用見本3をアイシャドウとしたが、例えば、ファンデーション、チークパウダー等を展示用見本とする場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
3…粉末化粧料展示用見本、3a…発泡材、3b…粘着剤、3c…粉末化粧料、4…中皿、100…コンパクト容器。