【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明では、累進屈折力レンズの前駆体である外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクの外面に対してブロックピースを固定する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するために前記セミフィニッシュトブランクと前記ブロックピースの間に配置されるブロックリングであって、前記
ブロックリングはセミフィニッシュトブランク支持部として中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置
に前記透孔を包囲する畝部を有し、加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件がそれぞれ異なる一群の前記セミフィニッシュトブランクを前記畝部上に載置させる際に、前記畝部上面形状が以下のa)〜c)の条件となるように設計
し、その設計において取得した設計データに基づいて前記畝部の所定の基準面をベースとして前記セミフィニッシュトブランク支持部を加工するようにしたことをその要旨とする。
a)前記畝部上面の周方向において、前記畝部の横断面方向における全幅のすべてを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させずに当該幅方向の一部のみを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる
b)前記畝部上面と交錯する前記粘着性接着材料の充填口を有する場合に前記充填口を除く前記畝部上面の全周において前記畝部を一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる。但し、前記畝部上面に前記セミフィニッシュトブランクが支持されることを前提として周方向に一部当接しない部分があってもよい
c)b)において前記畝部上面と一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面との間に一部当接しない部分がある場合にはその部分における間隔を前記粘着性接着材料が漏れ出さない程度とする
。
【0007】
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は立体曲面であることをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項2に記載の発明の構成に加え、前記立体曲面は一群の前記セミフィニッシュトブランクから選択された所定の前記セミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は複数の前記セミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計されることをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りにマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りの180度対向した2方向にマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項7の発明では請求項2〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形によって前記ブロックリングの径方向における前記畝部上面の形状は、前記セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成されることをその要旨とする。
また、請求項8の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記曲線は前記セミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線となることをその要旨とする。
【0008】
また、請求項9の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記畝部
の設計データのデフォルト値として仮の設計データを与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態を
コンピュータ装置を用いて前記a)〜c)の少なくとも1つの条件との関係でシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項10の発明では請求項9に記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに前記畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにしたことをその要旨とする。
また、請求項11の発明では請求項10に記載の発明の構成に加え、前記重みは前記畝部の全周に対する前記セミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて前記各セミフィニッシュトブランクごとに求められることをその要旨とする。
また、請求項12の発明では請求項10又は11に記載の発明の構成に加え、前記重みは最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定されることをその要旨とする。
また、請求項13の発明では請求項9〜12のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことをその要旨とする。
また、請求項14の発明では請求項9〜13のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては前記畝部上面に重複配置される前記セミフィニッシュトブランクの外面の間隔を前記畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させるようにしたことをその要旨とする。
【0009】
上記のような構成では、ブロックピースを固定するために外面累進ブランクをブロックリングの畝部上面(外面累進ブランクが当接する載置面)に載置してブロックリングに包囲される内部空間に粘着性接着材料を充填する際に、より多くの種類の外面累進ブランクをその材料が漏れ出すことなく載置させることが可能となる。
ここに、本発明ではより多くの外面累進ブランクに対応できるために上記のように畝部を設計する際にa)〜c)の条件が与えられている。これら条件は要するに特定の外面累進ブランクに畝部の上面を完全に密着させることがないように設計し、たとえ多少の隙間が空いていてもそれが粘着性接着材料が漏れ出さない程度の許容できる隙間であれば構わないような畝部の上面形状として、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させるようにしたものである。
a)は畝部上面においてはある所定の幅が与えられているが、載置される外面累進ブランクの外面とはこの幅方向のすべてで当接するのではなく、畝部上面の周方向において当接しない部分を有するように設計することを意味する。すなわち
図26(a)〜(d)に示すように、外面累進ブランクBは畝部の横断面方向(径方向)での当接位置は
図25(a)のように全幅すべてで当接する場合だけでなく、
図26(b)〜(d)のように一部で当接する場合があり、なおかつ当接位置はこれら図に示すように幅方向の内寄り〜外寄りと自由に設定される。これによって以下のb)c)設計をする際の裕度を与えることができる。
b)は基本的に畝部上面の全周において畝部を一群の外面累進ブランクの外面に当接させるが、一部当接しない部分があっても外面累進ブランクが支持され、その部分における隙間がc)のように粘着性接着材料が漏れ出さない程度であればよいということである。基本的には全周囲に渡って外面累進ブランクの外面側と畝部上面とが接することで粘着性接着材料が漏れ出さないわけであるが、接していなくともそれが非常に狭い間隔であれば粘着性接着材料が漏れ出さないため、許容範囲の隙間であれば外面累進ブランクが支持される限りは隙間があいてもよいという設計思想である。
【0010】
畝部を設計する際にはまったく0からその形状を構築するのではなく、所定の基準面をベースとしてその形状を変形させていくものである。所定の基準面としては立体曲面であることが好ましく、更に立体曲面は当該ブロックリングを使用する一群のセミフィニッシュトブランクから選択された既存の所定のセミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることが好ましい。つまり、当該ブロックリングを使用する予定の外面累進ブランク、例えば加入やカーブの中間的な性質の外面累進ブランクを選択し、その外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をベースに変形させていくことが好ましい。つまり、基本的に畝部形状は外面累進ブランクの外面がなるべく隙間なく載置されることから自ずと外面累進ブランクの外面の形状に近い形状であることは間違いないわけであるから、これを変形の出発点とすれば変形量もそれほど大きく設定する必要がないため計算上も都合がよく、設計作業が大きく軽減されることとなる。
また、上記のように既存の所定のセミフィニッシュトブランクの形状をそのまま基準面とするだけでなく、複数のセミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計することも可能である。このような形状をベースとするほうが、
このとき選択される複数のセミフィニッシュトブランクは比較的中間的な特徴を備えたものであることが、その後の大きな変形を行わずにすむため、好ましい。
【0011】
また、変形はこのような所定の外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をまず畝部のベース形状として、その畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える、つまり畝部の外周寄りをベース形状に対してより低くなるように変形させるものであることが好ましい。畝部の外周は全周にサグを与えても必要な方向にのみサグを与えてよい。たとえば180度対向する2方向にサグを同等に与えることが考えられる。このように畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える理由は次の通りである。
基本的に外面累進ブランクが載置される畝部の上面は、その外面累進ブランクとまったく同じカーブ形状をベースと考えると
図27(a)のように接することとなる。さて、これを基準としてカーブが浅くなっていくと考えた場合に外面累進ブランクは
図27(b)のように畝部の外寄りで当接するようになる。この際にベースよりも小さい加入度のブランクを載置すると、当接面はリングの上下方向であり、左右方向には許容以上の隙間が生じてしまう可能性がある。一方、ベースよりも大きい加入度のブランクを載置した場合、当接面はリングの左右方向であり、上下方向に許容以上の隙間が空いてしまう可能性がある。そのため、
図26(c)のように畝部上面の外寄りの高さを抑制することでブランク全体をより畝部方向に接近させて当接部分を多くしたり隙間をより狭くするというものである。サグ量を与える際の断面線形状は
図26(c)のように与えない内周寄りとは段差なく接続されなおかつ上凸となるように偶関数を用いることが好ましい。
外面累進ブランクは加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件が異なれば異なる外面累進ブランクとなるが、レンズカーブは素材屈折率によって曲率が変わるため、素材屈折率が異なれば自動的に相互にレンズカーブが違う外面累進ブランクである。このように基材屈折率が異なる基材から作製される場合であっても共通したブロックリングが使用できるように畝部を設計することが好ましい。
【0012】
また、畝部の形状に変形を加える場合には、ブロックリングの径方向における畝部上面の形状を、セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成することが好ましい。これによってブロックリングの畝部上面の形状について内側から外側にかけて変形させることができ、変形の自由度が増すこととなる。また、外面累進ブランクを畝部上面にセットした際に径方向における隙間が多い場合の対応にも好適である。曲線としては例えばセミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線とすることができる。基本的に正規分布曲線は左右対称なつりがね状の曲線となるが、必ずしも左右対称でなくともよい。
【0013】
また、実際の畝部の設計手法としてはコンピュータの計算によって畝部の形状の設計データを得ることで実現されるが、その際に設計データについて仮の設計値を与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにすることが好ましい。
また、シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにすることが好ましい。これによって、繰り返しシミュレーションを行う際に、好適な畝部の形状とするまでの収束速度が速くなる。また、各セミフィニッシュトブランクの形状特性を考慮した最適な畝部形状を設計することは可能となる。
ここに重みとしては例えば畝部の全周に対するセミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて各セミフィニッシュトブランクごとに求めることが想定される。
また、重みとして最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定するものが想定される。
また、シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことが挙げられる。
また、シミュレーションとして畝部上面に重複配置されるセミフィニッシュトブランクの外面の間隔を畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させ、この表示に基づいて行うことが挙げられる。