特許第5771842号(P5771842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771842充電制御装置の故障検出装置、および充電制御装置における故障検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771842
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】充電制御装置の故障検出装置、および充電制御装置における故障検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20150813BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150813BHJP
   H02J 7/02 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H01M10/44 Q
   H02J7/02 H
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2009-229702(P2009-229702)
(22)【出願日】2009年10月1日
(65)【公開番号】特開2011-78275(P2011-78275A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2012年3月14日
【審判番号】不服2014-9474(P2014-9474/J1)
【審判請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷 充宏
(72)【発明者】
【氏名】周藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】郭 中為
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 藤井 昇
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−266992(JP,A)
【文献】 特開平7−336905(JP,A)
【文献】 特開2007−236115(JP,A)
【文献】 特開2008−206250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置の故障検出装置であって、
前記セル電池ごとに前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス部と、
前記セル電池のそれぞれに対応させて設けられ、前記バイパス部の端子電圧を前記セル電池に対応させてそれぞれ検出する電圧検出部と、
前記検出された端子電圧であって、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を非導通から導通にする第1動作条件を満たすか否かを判定し、当該第1動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せず、一方、当該第1動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部の故障の判定を実施し、又は、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を導通から非導通にする第2動作条件を満たすか否かを判定し、当該第2動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第2動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部の故障の判定を実施するバイパス制御部と、
を備え、
前記セル電池と当該セル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路は、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池と当該他のセル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路から独立していて、
前記バイパス制御部は、
前記第1動作条件を満たすと判定した場合に、前記バイパス部を非導通から導通になるように制御して、当該制御の後に、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、又は、前記第2動作条件を満たすと判定した場合に、前記バイパス部を導通から非導通になるように制御して、当該制御の後に、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、
前記バイパス部の故障の判定において、何れかの前記制御の実施前の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧とが等しい場合に、前記バイパス部に故障が生じていると判定し、当該制御の実施前の前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の前記バイパス部の端子電圧とが等しくない場合に、前記バイパス部に故障が生じていないと判定し、
前記第1動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より大きいことを表す条件であり、
前記第2動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より小さいことを表す条件である
ことを特徴とする故障検出装置。
【請求項2】
前記各セル電池と該各セル電池に対応する各バイパス部とがそれぞれ電圧計測ラインにより接続され、該電圧計測ラインを通して前記バイパス部にバイパス電流が流れるときに、該バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンスとによる電圧降下が前記バイパス部の端子電圧に生じる場合において、
記バイパス制御部
前記インピーダンス回路を導通から非導通、または非導通から導通になるように制御した際に、前記電圧検出部で検出したバイパス部の端子電圧に前記電圧降下による電圧の変動が生じなかった場合は、前記バイパス部に故障が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項に記載の故障検出装置。
【請求項3】
直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置における故障検出方法であって、
インピーダンス回路を内部に有するバイパス部が前記セル電池ごとに前記セル電池に並列に設けられ、
前記セル電池のそれぞれに対応させて電圧検出部が設けられ、
前記セル電池と当該セル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路は、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池と当該他のセル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路から独立しており、
故障検出装置内の制御部により、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧であって、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を非導通から導通にする第1動作条件を満たすか否かを判定し、当該第1動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第1動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部を非導通から導通になるように制御して、又は、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を導通から非導通にする第2動作条件を満たすか否かを判定し、当該第2動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第2動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部を導通から非導通になるように制御するバイパス制御手順と、
前記電圧検出部によって前記バイパス部の端子電圧を前記セル電池に対応させてそれぞれ検出する電圧検出手順と、
前記インピーダンス回路を導通にした場合の前記バイパス部の端子電圧と、非導通にした場合の前記バイパス部の端子電圧とを基に、前記バイパス部の故障を検出する故障検出手順と、
が行われ、
前記バイパス制御手順において前記第1動作条件を満たすと判定し、前記バイパス部を非導通から導通になるように制御した後に、前記電圧検出手順を実施して、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、又は、前記バイパス制御手順において前記第2動作条件を満たすと判定し、前記バイパス部を導通から非導通になるように制御した後に、前記電圧検出手順を実施して、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、
前記故障検出手順において、
何れかの前記制御の実施前の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧とが等しい場合に、前記バイパス部に故障が生じていると判定し、当該制御の実施前の前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の前記バイパス部の端子電圧とが等しくない場合に、前記バイパス部に故障が生じていないと判定し、
前記第1動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より大きいことを表す条件であり、
前記第2動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より小さいことを表す条件である
ことを特徴とする故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセル電池(二次電池)が直列に接続された電池モジュールを一括で充電する充電制御装置に関し、特に、セル電池ごとに設けられ、各セル電池の電池容量の差によって生じる充電電圧のアンバランスをバランスさせるために使用されるバイパス部(バランス電流のバイパス部)の故障を容易に検出することができる、充電制御装置の故障検出装置、および充電制御装置における故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセル電池を直列に接続して構成される電池モジュールへの充電を制御する充電制御装置においては、各セル電池の電池電圧を検出(計測)し、セル電池間の充電電圧を調整してバランスがとれるように構成されている(例えば、特許文献1,2,3を参照)。
【0003】
直列に接続されたセル電池をバッテリ充電装置(定電圧直流電源装置または定電流直流電源装置)により一括充電を行う際に、セル電池の電池容量にアンバランス(不均衡)がある場合は、電池容量の小さなセル電池が先に満充電され、電池容量の大きなセル電池が充分に充電されることなく充電動作が完了する。すなわち、電池モジュールを全体として充分に充電できない状態のまま充電が停止されることになる。これを避けるため、充電の際に、各セル電池の電池電圧を検出し、セル電池の充電電圧にアンバランスが生じた場合に、セル電池に選択的に並列接続されるバイパス部(インピーダンス回路)を使用してセル電池の充電電圧を均等にする。
【0004】
図4は、従来の充電制御装置10Aの構成例を示す図である。図4において、セル電池1,2,・・・,nは、直列に接続された複数のセル電池であり、バッテリ充電装置(定電圧直流電源装置または定電流直流電源装置等)21から流れる充電電流Icにより一括で充電されるセル電池である。なお、バッテリ充電装置21から、セル電池1,2,・・・,nに充電を行う場合は、定電流充電(CC充電)を行う方法と、定電圧充電(CV充電)を行う方法と、充電初期において定電流充電(CC充電)を行ない、ある程度充電が進んだ状態において定電圧充電(CV充電)を行う方法など、種々の充電方法がある。
【0005】
図4に示す充電制御装置10Aにおいて、セル電池1,2,・・・,nの正(+)極側のそれぞれは、入力端子A1,A2,・・・,Anおよび電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanを通して、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,Enに接続される。また、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側のそれぞれは、入力端子B1,B2,・・・,Bnおよび電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbnを通して、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gnに接続される。
【0006】
この電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanには、それぞれ過電流保護用のヒューズF1,F2,・・・,Fnが挿入される。また、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nのそれぞれは、電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanおよび電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbnを通して、各セル電池1,2,・・・,nに並列に接続される。このバイパス部19−1,19−2,・・・,19−nは、半導体スイッチ等で構成されるバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnと、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnとの直列回路で構成される。
【0007】
電圧検出部13は、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出するための電圧検出部であり、各バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの両端の端子電圧Va1,Va2,・・・,Vanを計測することにより、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出している。
【0008】
このように図4に示す充電制御装置10Aにおいては、各セル電池1,2,・・・,nにそれぞれに対応して、電圧計測ラインやバイパス部等の同じ構成の回路が並列に複数設けられている。このため、以下の説明では、セル電池1に対応する回路の部分について説明するが、他のセル電池2,・・・,nに対応する回路についても同様である。
【0009】
セル電池1に対応する電圧計測ラインLa1の一端は、セル電池1の正(+)極側と端子A1を通して接続され、他端は、電圧計測ラインLa1のインピーダンス等価回路である計測ラインインピーダンス等価回路18−1を介して、バイパス部19−1の端子C1に接続されている。また、この端子C1は電圧検出部13の入力端子E1に接続されている。また、電圧計測ラインLb1の一端は、セル電池1の負(−)極側と端子B1を通して接続され、他端は、バイパス部19−1の端子D1に接続されている。また、この端子D1は電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0010】
電圧計測ラインLa1の計測ラインインピーダンス等価回路18−1は、過電流保護用のヒューズF1(内部抵抗rf1)と、電圧計測ラインLa1の配線経路(例えば、入力端子A1とバイパス部19−1の端子C1との間のプリント配線基板の配線パターン)のインピーダンス成分r1との直列回路で示される。
【0011】
また、バイパス部19−1は、バイパススイッチSW1と、バイパス抵抗R1との直列回路で構成される。そして、バイパス部19−1の一端(端子C1)は、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端に接続され、また、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。また、バイパス部19−1の他端(端子D1)は入力端子B1を通して、セル電池1の負(−)極側と接続され、また、電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0012】
そして、電圧検出部13は、セル電池1の電池電圧Vc1を検出するための電圧検出部であり、バイパス部19−1の両端の端子電圧Va1を計測することにより、セル電圧Vc1を検出している。
【0013】
上記構成において、セル電池1の充電動作中に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも大きい場合(あるいは、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnに比べて大きい場合)は、バイパススイッチSW1をON(導通)にし、セル電池1に流れる充電電流Icの一部をバイパス抵抗R1にバイパス電流Ib1としてバイパスさせ、セル電池1への充電速度を遅らせる。逆に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも小さい場合(あるいは、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnと比較して小さい場合)は、バイパススイッチSW1をOFF(非導通)にし、通常の充電を行う。
【0014】
以上、セル電池1に対応する回路の構成と動作について説明したが、他のセル電池2,・・・,nに対応する回路についても同様である。すなわち、電圧検出部13により、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出し、検出結果に応じて、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nを選択してON/OFF制御し、電池電圧(充電電圧)が高いセル電池に対してバイパス電流を流すようにする。これにより、バッテリ充電装置21によりセル電池1,2,・・・,nを一括充電する場合に、セル電池1,2,・・・,nの充電電圧にアンバランスが生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−245743号公報
【特許文献2】特開2002−291167号公報
【特許文献3】特開2001−178008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、複数のセル電池が直列に接続された電池モジュールを一括充電する充電制御装置10Aでは、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出し、この検出結果を基に、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nをON/OFF制御している。これにより、セル電池1,2,・・・,nの充電電圧が均等になるように制御している。
【0017】
しかしながら、従来の充電制御装置10Aおいて、バイパス部19−1内のバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnは、例えば、数A単位の電流の開閉を頻繁に行うことがある。このため、開閉に伴うサージ電圧、およびサージ電流により、バイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnが故障する可能性がある。このバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnが故障した場合、例えば、半導体スイッチの場合は、永久短絡故障、あるいは永久開放故障になる。また、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnはバイパス電流により発熱するため、抵抗体の断線による故障が発生する可能性もある。
【0018】
このように、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nが故障すると、バイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnをON/OFF制御しても、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nを制御できなくなる。すなわち、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nが故障すると、バイパス電流を全く流せなくなる状態になるか、または、バイパス電流が常時流れ続ける状態のいずれかの状態になる。このため、各セル電池1,2,・・・,nの充電電圧のバランスをとることができなくなる。このため、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nに故障が発生した場合は、これを検出することが重要な課題となる。
【0019】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、各セル電池に並列に選択的に接続されるバイパス部によりバイパス電流を流して、セル電池間の充電電圧のバランスをとる充電制御装置において、バイパス部の故障を容易に検出することができる充電制御装置の故障検出装置、および充電制御装置における故障検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の充電制御装置の故障検出装置は、 直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置の故障検出装置であって、前記セル電池ごとに前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス部と、前記セル電池のそれぞれに対応させて設けられ、前記バイパス部の端子電圧を前記セル電池に対応させてそれぞれ検出する電圧検出部と、前記検出された端子電圧であって、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を非導通から導通にする第1動作条件を満たすか否かを判定し、当該第1動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せず、一方、当該第1動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部の故障の判定を実施し、又は、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を導通から非導通にする第2動作条件を満たすか否かを判定し、当該第2動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第2動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部の故障の判定を実施するバイパス制御部と、を備え、前記セル電池と当該セル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路は、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池と当該他のセル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路から独立していて、前記バイパス制御部は、前記第1動作条件を満たすと判定した場合に、前記バイパス部を非導通から導通になるように制御して、当該制御の後に、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、又は、前記第2動作条件を満たすと判定した場合に、前記バイパス部を導通から非導通になるように制御して、当該制御の後に、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、前記バイパス部の故障の判定において、何れかの前記制御の実施前の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧とが等しい場合に、前記バイパス部に故障が生じていると判定し、当該制御の実施前の前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の前記バイパス部の端子電圧とが等しくない場合に、前記バイパス部に故障が生じていないと判定し、前記第1動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より大きいことを表す条件であり、前記第2動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より小さいことを表す条件であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記に記載の充電制御装置の故障検出装置において、前記各セル電池と該各セル電池に対応する各バイパス部とがそれぞれ電圧計測ラインにより接続され、該電圧計測ラインを通して前記バイパス部にバイパス電流が流れるときに、該バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンスとによる電圧降下が前記バイパス部の端子電圧に生じる場合において、記バイパス制御部、前記インピーダンス回路を導通から非導通、または非導通から導通になるように制御した際に、前記電圧検出部で検出したバイパス部の端子電圧に前記電圧降下による電圧の変動が生じなかった場合は、前記バイパス部に故障が発生していると判定することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の充電制御装置における故障検出方法は、直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置における故障検出方法であって、ンピーダンス回路を内部に有するバイパス部が前記セル電池ごとに前記セル電池に並列に設けられ前記セル電池のそれぞれに対応させて電圧検出部が設けられ、前記セル電池と当該セル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路は、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池と当該他のセル電池に対応する前記電圧検出部とを接続する経路から独立しており、故障検出装置内の制御部により、前記電圧検出部によって検出された端子電圧であって、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を非導通から導通にする第1動作条件を満たすか否かを判定し、当該第1動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第1動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部を非導通から導通になるように制御して、又は、前記セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、当該バイパス部を導通から非導通にする第2動作条件を満たすか否かを判定し、当該第2動作条件を満たさないと判定した場合には前記バイパス部の故障の判定を実施せずに、一方、当該第2動作条件を満たすと判定した場合に前記バイパス部を導通から非導通になるように制御するバイパス制御手順と、前記電圧検出部によって前記バイパス部の端子電圧を前記セル電池に対応させてそれぞれ検出する電圧検出手順と、前記インピーダンス回路を導通にした場合の前記バイパス部の端子電圧と、非導通にした場合の前記バイパス部の端子電圧とを基に、前記バイパス部の故障を検出する故障検出手順と、が行われ、前記バイパス制御手順において前記第1動作条件を満たすと判定し、前記バイパス部を非導通から導通になるように制御した後に、前記電圧検出手順を実施して、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、又は、前記バイパス制御手順において前記第2動作条件を満たすと判定し、前記バイパス部を導通から非導通になるように制御した後に、前記電圧検出手順を実施して、前記電圧検出部が当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧を検出し、前記故障検出手順において、何れかの前記制御の実施前の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧とが等しい場合に、前記バイパス部に故障が生じていると判定し、当該制御の実施前の前記バイパス部の端子電圧と当該制御の実施後の前記バイパス部の端子電圧とが等しくない場合に、前記バイパス部に故障が生じていないと判定し、前記第1動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より大きいことを表す条件であり、前記第2動作条件は、当該セル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧が、前記複数のセル電池のうち当該セル電池の他のセル電池に対応する前記バイパス部の端子電圧より小さいことを表す条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の充電制御装置の故障検出装置においては、バイパス部をOFF(非導通)からON(導通)、またはON(導通)からOFF(非導通)にした場合において、バイパス部の端子電圧の変化を電圧検出部により検出する。そして、故障検出部では、バイパス部をOFFからON、またはONからOFFに変化させたにも係わらず、電圧検出部により検出したバイパス部の端子電圧が変化しない場合は、バイパス部に故障が発生していると判定する。
これにより、バイパス部の故障(永久ON(導通)故障または永久OFF(非導通)故障)を、バイパス部の端子電圧の変化の有無により検出することができる。このため、バイパス部の故障を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係わる充電制御装置の構成を示す図である。
図2】故障検出動作について説明するための図である。
図3図1に示す充電制御装置における故障検出処理の流れを示すフローチャートである。
図4】従来の充電制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係わる充電制御装置の構成を示す図である。
【0029】
図1に示す本発明の充電制御装置10と、図4に示す従来の充電制御装置10Aとが構成上で異なる点は、図1に示す充電制御装置10において、制御部12と、バイパス制御部14と、故障検出部15と、端子電圧記録部16と、充電装置制御部17とを新たに追加した点である。他の構成は図3に示す充電制御装置10Aと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。また、図1においては、セル電池1に対してのみ、バイパス電流Ib1が流れている例を示している。
【0030】
また、図1において、符号11で囲む部分が、バイパス部19−1,19−2,・・・,19nの故障検出装置として機能する部分(本発明の特徴をなす部分)であり、後述する故障検出部15を中心にして、故障検出処理が行われる。
【0031】
図1において、セル電池1,2,・・・,nは、直列に接続されたn個の二次電池(セル電池)であり、バッテリ充電装置21から流れる充電電流Icにより一括で充電される電池モジュールである。
【0032】
このセル電池1,2,・・・,nの正(+)極側は、充電制御装置10の入力端子A1,A2,・・・,An(入力端子Aで総称される)にそれぞれ接続される。また、入力端子A1,A2,・・・,Anは電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lan(計測ラインインピーダンス等価回路18−1,18−2,・・・,18−nを含む)を通して、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,En(入力端子Eで総称される)に接続される。また、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側のそれぞれは、入力端子B1,B2,・・・,Bn(入力端子Bで総称される)および電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbn(電圧計測ラインLbで総称される)を通して、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gn(入力端子Gで総称される)に接続される。
【0033】
充電制御装置10は、各セル電池1,2,・・・,nへの充電を行う際に、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcn(セル電圧Vcで総称される)をそれぞれ検出し、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnにアンバランスが生じている場合に、このアンバランスを補正するために、補正対象となるセル電池1,2,・・・,nに対応するバイパス部19−1,19−2,・・・19−n(バイパス部19で総称される)のON(導通)/OFF(非導通)制御(バランス制御)を行う。
【0034】
また、充電制御装置10は、後述する充電装置制御部17によりバッテリ充電装置21の制御も行う。例えば、セル電池1,2,・・・,nへの一括充電の際に、それぞれのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを監視し、いずれかのセル電池1,2,・・・,nが満充電となった場合には、過充電になることを防ぐために、バッテリ充電装置21からセル電池1,2,・・・,nへの充電を停止させる。
【0035】
なお、図1に示す例においては、セル電池1,2,・・・,nから負荷に電力を供給する放電回路は、本発明に直接関係せず、また図面の見易さのために図示していないが、当然のこととして、セル電池1,2,・・・,nから負荷へ電力を供給する放電回路および放電制御装置(いずれも図示せず)を備えている。そして、例えば、セル電池1,2,・・・,nから負荷への放電動作中に、いずれかのセル電池の電池電圧が、所定の下限値(過放電を防ぐための閾値電圧)に達した場合には、セル電池1,2,・・・,nから負荷への放電を停止させるように構成されている。
【0036】
図1に示す本実施形態の充電制御装置10において、制御部12は、充電制御装置10内の各処理部の全体を統括して制御し、この充電制御装置10に要求される機能を実現するための制御部である。
【0037】
電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lan(電圧計測ラインLaで総称される)上の計測ラインインピーダンス等価回路18−1,18−2,・・・,18−n(計測ラインインピーダンス等価回路18で総称される)は、セル電池1,2,・・・,nのそれぞれに対応して設けられるヒューズF1,F2,・・・,Fn(内部抵抗rf1,rf2,・・・,rfn)と、配線経路(プリント配線基板上の配線パターン等)のインピーダンス成分r1,r2,・・・,rnとの直列回路で示される等価回路である。なお、ヒューズF1,F2,・・・,Fnは、ヒューズFで総称され、内部抵抗rf1,rf2,・・・,rfnは、内部抵抗rfで総称され、インピーダンス成分r1,r2,・・・,rnは、インピーダンス成分rで総称される。
【0038】
例えば、電圧計測ラインLa1上の計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端は、セル電池1の正(+)極側と入力端子A1を通して接続される。また、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の他端は、バイパス部19−1の一端(端子C1)と接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。この計測ラインインピーダンス等価回路18−1は、過電流保護用のヒューズF1(内部抵抗rf1)と、電圧計測ラインLa1の配線経路(例えば、入力端子A1とバイパス部19−1の端子C1との間のプリント配線基板上の配線パターン)のインピーダンス成分r1との直列回路で示される。
【0039】
なお、セル電池1の負(−)極側と入力端子Bを介して接続されるとともに、バイパス部19−1と接続端子D1で接続される電圧計測ラインLb1についても、配線パターンによるインピーダンス成分が存在するが、この電圧計測ラインLb1のインピーダンス成分については、電圧計測ラインLa1のインピーダンス成分r1に含めて考えることができる。
【0040】
バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nは、半導体スイッチ等で構成されるバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWn(バイパススイッチSWで総称される)と、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rn(バイパス抵抗Rで総称される)との直列回路で構成される。バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの一方の端子C1,C2,・・・,Cn(端子Cで総称される)は、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,Enに接続される。また、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの他方の端子D1,D2,・・・,Dn(端子Dで総称される)は、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gnに接続される。
【0041】
例えば、セル電池1に対応して設けられるバイパス部19−1は、バイパススイッチSW1と、バイパス抵抗R1との直列回路で構成される。このバイパス部19−1の一端(端子C1)は、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端に接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。また、バイパス部19−1の他端(端子D1)は、セル電池1の負(−)極側に繋がる入力端子Bに接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0042】
すなわち、各セル電池1,2,・・・,nに対応するバイパス部19の一端(端子C)は、計測ラインインピーダンス等価回路18の一端に接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子Eに接続される。また、バイパス部19の他端(端子D)は、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側に繋がる入力端子Bに接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子Gに接続されている。
【0043】
バイパス制御部14は、電圧検出部13から入力したセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcn(正確にはバイパス部19の端子C,D間の電圧)の信号を基に、それぞれのセル電池1,2,・・・,nごとに、バイパス部19におけるON(導通)またはOFF(非導通)動作の判定を行う。そして、この判定結果を基に、バイパス部19内のバイパススイッチSWのON(導通)/OFF(非導通)を制御する。すなわち、このバイパス制御部14では、セル電池間の電池容量のアンバランスによりセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnにアンバランスが生じている場合に、このアンバランスを補正するために、補正対象となるセル電池1,2,・・・,nに対応するそれぞれのバイパス部19内のバイパススイッチSWのON,OFF制御を行う。
【0044】
例えば、充電動作中に、セル電池1のセル電圧Vc1が、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnに比べて大きい場合は、バイパススイッチSW1をONにし、セル電池1に流れる充電電流Icの一部をバイパス電流Ib1としてバイパス抵抗R1にバイパスさせ、セル電池1の充電速度を遅らせる。逆に、セル電池1のセル電圧Vc1が、他のセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnに比較して小さい場合は、バイパススイッチSW1をOFF(非導通)にする。
【0045】
なお、図1に示す例では、バイパススイッチSW1のみがONし、バイパススイッチSW2,・・・,SWnがOFFしている例を示している。このため、バイパス電流Ib1のみがバイパス部19−1に流れ、バイパス部19−2,・・・,19−nには、バイパス電流Ib2,・・・,Ibn(図示せず)流れていない状態を示している。なお、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nのそれぞれに流れるバイパス電流Ib1,Ib2,・・・,Ibnは、バイパス電流Ibで総称される。
【0046】
電圧検出部13は、セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出するために、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの両端の端子電圧Va1,Va2,・・・,Va3(Vaで総称される)を、入力端子E,Gから入力して検出(計測)する。そして、検出した端子電圧Vaを端子電圧記録部16に記録する。
【0047】
この電圧検出部13では、例えば、セル電池1のセル電圧Vc1をバイパス部19−1の端子電圧(C1,D1間)により計測する。このため、バイパス部19−1にバイパス電流Ib1が流れる場合には、電圧計測ラインLa1の計測ラインインピーダンス等価回路18−1で示されるヒューズF1(内部抵抗rf1)とインピーダンス成分r1により、バイパス電流Ib1により電圧降下ΔVr1「ΔVr1=(rf1+r1)×Ib1」が生じる。
【0048】
すなわち、バイパス部19−1内のバイパススイッチSW1のON・OFF状態に応じて、電圧検出部13で検出されるセル電圧Va1が、電圧降下ΔVr1だけ変化することになる。したがって、セル電池1のセル電圧Vc1を検出する場合、通常は、バイパススイッチSW1がOFFの状態で計測する。すなわちバイパス電流Ib1が流れず(Ib=0)、電圧計測ラインLa1による電圧降下が生じない状態(ΔVr1=0)で検出(計測)したセル電圧Va1をセル電圧Vc1とする。
【0049】
故障検出部15は、バイパス部19における故障の発生を検出するための処理部である。この故障検出部15では、バイパス部19内のバイパススイッチSWがOFFからONに制御される場合、および、バイパススイッチSWがONからOFFに制御される場合において、バイパススイッチSWがONまたはOFFに制御される前後の端子電圧(バイパス部19の端子電圧)Vaの変化を基に、バイパス部19における故障の発生を検出する。
【0050】
例えば、バイパス制御部14によりバイパススイッチSWがOFFからONに制御される場合において、バイパススイッチSWのOFFの制御状態におけるセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vaと、ONの制御状態におけるセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Va´とを比較する。そして、「Va=Va´」の場合、すなわち、バイパススイッチSWをOFFからONにしても、バイパス部19の端子電圧が変化しない場合は、バイパス部19において故障が発生していると判定する。
【0051】
また、逆に、バイパス制御部14によりバイパススイッチSWがONからOFFに制御される場合において、バイパススイッチSWのONの制御状態におけるセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vaと、OFFの制御状態におけるセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Va´とを比較する。そして、「Va=Va´」の場合、すなわち、バイパススイッチSWをONからOFFにしても、バイパス部19の端子電圧が変化しない場合は、バイパス部19において故障が発生していると判定する。
【0052】
例えば、図2(A)に示すように、バイパス部19−1のバイパススイッチSW1がONの状態においては、バイパス部19−1にバイパス電流Ib1が流れる。このため、バイパス部19−1の端端子電圧(端子C1,D1間)の電圧Va1は、セル電池1の電圧をVc1とすると、電圧計測ラインLa1においてバイパス電流Ib1による電圧降下ΔVr1が生じ、端子電圧Va1は、「Va1=Vc1−ΔVr1」となる。
【0053】
また、図2(B)に示すように、バイパス部19−1のバイパススイッチSW1がOFFの状態においては、バイパス部19−1のバイパス電流Ib1が流れない。このため、バイパス部19−1の端端子電圧(端子C1,D1間)の電圧Va1は、セル電池1の電圧をVc1とすると、電圧計測ラインLa1において電圧降下ΔVr1が生じず(ΔVr1=0)、端子電圧Va1は「Va1´=Vc1」となる。
【0054】
このように、バイパス部19−1が正常に作動する場合は、スイッチSW1をONにした場合の端子電圧Va1と、スイッチSW1をOFFにした場合の端子電圧Va1´とは異なる電圧値(電圧降下ΔVr1の分だけ異なる電圧値)となり、「Va1≠Va1´」となる。すなわち、スイッチSW1をONからOFFにした場合に、端子電圧Va1が変化するときは、バイパス部19−1が正常にON/OFF動作していると判定できる。
【0055】
一方、バイパス部19−1が故障しており、スイッチSW1をOFFにしても、そのままバイパス電流Ibが流れる続ける場合は、端子電圧Va1は変化しない。すなわち、スイッチSW1をONからOFFにしても、端子電圧Va1が変化しないときは、バイパス部19−1に故障が発生していると判定できる。
【0056】
このように、バイパス部19−1のスイッチSW1をONからOFFに変化させた場合に、端子電圧Va1が変化するかどうかを検出することで、バイパス部19−1に故障が発生しているか否かを判定できる。
【0057】
また、同様に、バイパス部19−1のスイッチSW1をOFFにした状態(図2(B)に示す状態)から、スイッチSW1をONにする状態(図2(A)に示す状態)に変化させた場合に、端子電圧Va1が変化するかどうかを検出することで、バイパス部19−1に故障が発生しているか否かを判定できる。
【0058】
以上説明したように、バイパス制御部14により、バイパス部19のON/OFF制御(バランス制御)を行った際に、電圧検出部13で検出した端子電圧Vaに変化(電圧降下ΔVr分による電圧の変動)が生じなかった場合は、バイパス部19に故障(異常)が発生していると判定する。これにより、バイパス部19の故障を容易に判定することができる。
【0059】
なお、この充電制御装置10には、セル電池に対する充電制御動作を指示するための入力装置(例えば、押しボタンスイッチ等の操作スイッチ)や、充電状態(例えば、各セル電池の充電電圧)およびバイパス部19における故障発生情報等を表示するための表示装置や、充電状態およびバイパス部19における故障発生情報等を通信により外部に出力するための通信装置(いずれも表示せず)が設備されているものとする。
【0060】
また、図3は、本発明の充電制御装置における処理の流れを示すフローチャートであり、上述した充電制御装置10におけるバイパス部19に対する故障検出処理の流れをフローチャートで示したものである。
【0061】
図3(A)は、バイパス部19内のバイパススイッチSWをOFFからONに制御する場合の、バイパス部19の故障判定処理の流れを示し、図3(B)は、バイパス部19をONからOFFに制御する場合の、バイパス部19の故障判定処理の流れを示している。なお、以下で説明する故障判定処理は、制御部12を中心にして行われるものであり、この制御部12からの制御指令により、電圧検出部13、バイパス制御部14、および故障検出部15が制御されることにより、故障判定処理が実行される。
【0062】
最初に、図3(A)に示すフローチャートを参照して、バイパススイッチSWをOFFからONに制御する場合の故障判定処理の流れについて説明する。
【0063】
まず、セル電池1,2,・・・、nのうちのセル電池m(m=1〜n)のバイパス部19−mがOFFの状態にあるとする(ステップS11)。この状態において、電圧検出部13により、セル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vamを検出する(ステップS12)。そして、電圧検出部13は、このセル電圧Vamを端子電圧記録部16に記録する。
【0064】
次に、バイパス制御部14は、セル電池mに対応するバイパス部19−mの動作条件(OFFからON)を満たすかどうか判定する(ステップS13)。例えば、セル電池mのセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vamが、予め設定される閾値電圧と比べて高い場合(あるいは、他のセル電池のセル電圧に比べて高い場合)は(ステップS13:Yes)、セル電池mに対応するバイパス部19−mのバイパススイッチSWmをONにすることを判定し、ステップS14に移行する。
【0065】
一方、ステップS13において、バイパス制御部14が、バイパス部19−mの動作条件を満たさない判定した場合は(ステップS13:No)、故障検出部15は、バイパス部19−mの故障判定は行わずに、故障検出処理を終了する。
【0066】
そして、ステップS13において、バイパス部19−mの動作条件(OFFからON)を満たすと判定された場合は、バイパス制御部14により、バイパス部19−mをONにし(ステップS14)、電圧検出部13は、バイパス部19−mをONにしたときのセル電池mのセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vam´を検出する(ステップS15)。
【0067】
次に、故障検出部15は、バイパス部19−mをONにしたときのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vam´と、端子電圧記録部16に記録されたバイパス部19−mがOFFのときのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vamとが等しいか否かを判定する(ステップS16)。
【0068】
そして、故障検出部15は、バイパス部19−mをOFFにしたときのセル電圧Vamと、ONにしたときのセル電圧Vam´とが等しい場合(Vam=Vam´)は(ステップS16:Yes)、バイパス部19−mが故障と判定する(ステップS17)。一方、故障検出部15は、セル電圧Vamとセル電圧Vam´とが等しくない場合(Vam≠Vam´)は(ステップS16:No)、バイパス部19−1mが正常であると判定し、制御部12が、バイパス部の故障検出処理を終了する。
【0069】
次に、図3(B)に示すフローチャートを参照して、バイパススイッチSWをONからOFFに制御する場合の、故障検出処理の流れについて説明する。
【0070】
まず、セル電池1,2,・・・、nのうちのセル電池m(m=1〜n)のバイパス部19−mがONの状態にあるとする(ステップS21)。この状態において、電圧検出部13により、セル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vamを検出する(ステップS22)。そして、電圧検出部13は、このセル電圧Vamを端子電圧記録部16に記録する。
【0071】
次に、バイパス制御部14は、セル電池mに対応するバイパス部19−mの動作条件(ONからOFF)を満たすかどうか判定する(ステップS23)。例えば、セル電池mのセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vamが、予め設定される閾値電圧と比べて低い場合(あるいは、他のセル電池のセル電圧に比べて低い場合)は(ステップS23:Yes)、セル電池mに対応するバイパス部19−mのバイパススイッチSWmをOFFにすることを判定し、ステップS24に移行する。
【0072】
一方、ステップS23において、バイパス制御部14が、バイパス部19−mの動作条件を満たさない判定した場合は(ステップS23:No)、故障検出部15は、バイパス部19−mの故障判定は行わずに、故障検出処理を終了する。
【0073】
そして、ステップS23において、バイパス部19−mの動作条件(ONからOFF)を満たすと判定された場合は、バイパス制御部14は、バイパス部19−mをOFFにし(ステップS24)、電圧検出部13は、バイパス部19−mをONにしたときのセル電池mのセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vam´を検出する(ステップS25)。
【0074】
次に、故障検出部15は、バイパス部19−mをOFFにしたときのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vam´と、端子電圧記録部16に保存したバイパス部19−mがONのときのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vamとが等しいか否かを判定する(ステップS26)。
【0075】
そして、故障検出部15は、バイパス部19−mがONのときのセル電圧Vamと、OFFにしたときのセル電圧Vam´とが等しい場合(Vam=Vam´)は(ステップS26:Yes)、バイパス部19−mが故障していると判定する(ステップS27)。一方、故障検出部15は、セル電圧Vamとセル電圧Vam´とが等しくない場合(Vam≠Vam´)は(ステップS26:No)、バイパス部19−1mは正常であると判定し、制御部12は、バイパス部19−mの故障検出処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、充電制御装置10では、セル電池1,2,・・・,nに並列に接続されるバイパス部19をONからOFFに制御する場合、または、バイパス部19をOFFからONに制御する場合において、バイパス部19の端子電圧Vaの変化の状態を検出して、故障の判定を行う。これにより、バイパス部19の故障検出を容易に行うことができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、図1に示す充電制御装置10内の制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、故障検出部15、および充電装置制御部17における機能は、専用のハードウェア(例えば、ゲートアレイ等のロジックIC)を使用して実現することができる。また、充電制御装置10内にCPU(マイクロコンピュータやDSP等の中央演算処理装置)を含むコンピュータシステムを設け、制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、故障検出部15、および充電装置制御部17における処理に関する一連の処理の過程を、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させておき、このプログラムをCPUが読み出して実行することによって、上記処理を行うことができる。すなわち、制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、故障検出部15、および充電装置制御部17における各処理は、CPUが上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより実現することができる。
【0078】
また、本発明の電圧検出部は電圧検出部13が相当する。また、本発明のバイパス制御部はバイパス制御部14が相当する。また、本発明の故障検出部は故障検出部15が相当する。また、本発明のバイパス部は、バイパス部19が相当し、バイパス部の端子電圧は端子電圧Vaが相当する。また、本発明のインピーダンス回路はバイパス抵抗Rが相当する。また、本発明の電圧計測ラインは電圧計測ラインLaが相当し、電圧計測ラインのインピーダンスは、過電流保護用のヒューズF(内部抵抗rf)と配線経路のインピーダンス成分rとの直列回路(rf+r)が相当し、バイパス電流はバイパス電流Ibが相当し、電圧降下は電圧降下値ΔVr(ΔVr=(rf+r)×Ib)が相当する。
【0079】
そして、図1に示す充電制御装置は、バイパス部19が、セル電池1,2,・・・、nごとに並列に設けられたインピーダンス回路(バイパス抵抗R)を選択的に導通または非導通にする。また、電圧検出部13は、バイパス部19の端子電圧Vaを検出する。そして、故障検出部15は、インピーダンス回路(バイパス抵抗R)を導通にした場合のバイパス部19の端子電圧Vaと、非導通にした場合のバイパス部19の端子電圧Vaとを基に、バイパス部19の故障を検出する。
これにより、バイパス部19の故障(永久ON故障または永久OFF故障)を、バイパス部19の端子電圧の変化の有無により検出することができる。このため、バイパス部19における故障の発生を容易に検出することができる。
なお、また、電圧検出部13による各セル電池の閉路端子電圧の検出は、予め定められた順序に従って行うこととしてもよく、或いは、ランダムに行うこととしてもよい。また、バイパス部19によって行われるインピーダンス回路(バイパス抵抗R)の導通または非導通の切り換えは、電圧検出部13による閉路端子電圧の検出に応じて行うほかに任意のタイミングで行うことができる。
【0080】
また、充電制御装置10においては、バイパス制御部14が、各バイパス部19内のインピーダンス回路(バイパス抵抗R)を選択的に導通または非導通に制御する。また、電圧検出部13は、バイパス制御部14によりインピーダンス回路(バイパス抵抗R)が導通になるように制御された場合のバイパス部19の端子電圧Vaと、非導通になるように制御された場合のバイパス部の端子電圧Vaとを検出し、故障検出部15は、インピーダンス回路(バイパス抵抗R)が導通になるように制御された場合のバイパス部19の端子電圧Vaと、非導通に制御になるように制御された場合のバイパス部19の端子電圧Vaとを基に、バイパス部19の故障を検出する。
これにより、バイパス部19の故障(永久ON故障または永久OFF故障)を、バイパス部19の端子電圧の変化の有無により検出することができる。このため、バイパス部19における故障の発生を容易に検出することができる。
【0081】
また、充電制御装置10においては、各セル電池1,2,・・・、nと該各セル電池に対応する各バイパス部19とが電圧計測ラインLaにより接続され、該電圧計測ラインLaを通してバイパス部19にバイパス電流Ibが流れるときに、該バイパス電流Ibと電圧計測ラインLaのインピーダンス(rf+r)とによる電圧降下(ΔVr)がバイパス部19の端子電圧Vaに生じる場合において、故障検出部15は、バイパス制御部14により、インピーダンス回路(バイパス抵抗R)を導通から非導通、または非導通から導通になるように制御した際に、電圧検出部13で検出したバイパス部19の端子電圧Vaに電圧降下(ΔVr)による電圧の変動が生じなかった場合は、バイパス部19に故障が発生していると判定する。
これにより、バイパス部19の故障(永久ON故障または永久OFF故障)を、バイパス部19の端子電圧が、計測ラインLaの電圧降下ΔVrにより変化するかどうかを検出して判定することができる。このため、バイパス部19における故障の発生を容易に検出することができる。
【0082】
また、故障検出部15は、バイパス制御部14によりバイパス部19のインピーダンス回路(バイパス抵抗R)を非導通から導通に制御した場合において、非導通時のバイパス部19の端子電圧Vaと、導通時のバイパス部19の端子電圧Vaとが一致または略一致する場合に、当該バイパス部19に故障が発生していると判定する。
これにより、バイパス部19における故障の発生を容易に検出することができる。
【0083】
また、故障検出部15は、バイパス制御部14によりバイパス部19のインピーダンス回路(バイパス抵抗R)を導通から非導通に制御した場合において、導通時のバイパス部19の端子電圧Vaと、非導通時のバイパス部19の端子電圧Vaとが一致または略一致する場合に、当該バイパス部19に故障が発生していると判定する。
これにより、バイパス部19における故障の発生を容易に検出することができる。
【0084】
なお、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nおけるバイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnは、純抵抗に代えて、所望のインピーダンスを有する構成とすることもできる。また、電流制限を行う定電流回路とすることもできる。また、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnは、バイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnの有する内部抵抗とすることもできる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の充電制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1,2,・・・,n セル電池
10,10A 充電制御装置
11 故障検出装置として機能する部分
12 制御部
13 電圧検出部
14 バイパス制御部
15 故障検出部
16 端子電圧記録部
17 充電装置制御部
18−1,18−2,・・・,18−n 計測ラインインピーダンス等価回路
19−1,19−2,・・・,19−n バイパス部
R1,R2,・・・,Rn バイパス抵抗(インピーダンス回路)
21 バッテリ充電装置
La1,La2,・・・,Lan 電圧計測ライン
Lb1,Lb2,・・・,Lbn 電圧計測ライン
SW1,SW2,・・・,SWn バイパス部のバイパススイッチ
Ib1,Ib2,・・・,Ibn バイパス電流
Vc1,Vc2,・・・,Vcn セル電圧
Va1,Va2,・・・,Van セル電圧(バイパス部の端子電圧)
図1
図2
図3
図4