【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0089】
<実施例1>
カンゾウ属植物からのmRNA調製とcDNAライブラリー作製(1)
独立行政法人医薬基盤研究所の薬用植物資源研究センター北海道研究部(北海道名寄市)において圃場栽培されていた7年生の
G. uralensisのストロンを6月に採取した。RNA抽出試薬RNAwiz
TM(Ambion社)を用いて添付のプロトコルに従い、トータルRNAを調製した。得られたトータルRNAからmRNAを調製し、ベクターキャッピング法 (Kato, S. et al., DNA Res., 12, 53-62, 2005)によってcDNA合成を行った。cDNA断片をプラスミドベクターpGCAPzf3(Tsugane, T. et al., Plant Biotechnology., 22, 161-165, 2005)に組み込み、cDNAライブラリーを構築した。
【0090】
<実施例2>
カンゾウ属植物からのmRNA調製とcDNAライブラリー作製(2)
独立行政法人医薬基盤研究所の薬用植物資源研究センター筑波研究部(茨城県つくば市)において圃場栽培されていた定植後4年以上経過したと考えられる
G. uralensisのストロンを10月に採取した。RNA抽出試薬TRIzol(登録商標)(Invitrogen社)及び精製カラムRNeasy(登録商標)(Quiagen社)を用いて添付のプロトコルに従い、トータルRNAを調製した。得られたトータルRNAからmRNAを調製し、オリゴキャップ法(Murayama, K. et al., Gene, 138, 171-174, 1994、及び、Suzuki, Y. et al., Gene, 200, 149-156)によりcDNA合成を行った。cDNA断片をプラスミドベクターpCMVFL3に組み込み、cDNAライブラリーを構築した。
【0091】
<実施例3>
シークエンス解析(1)
実施例1で得られたcDNAライブラリーで大腸菌株DH12S(Invitrogen社)あるいはDH10B T1ファージレジスタント(Invitrogen社)を形質転換し、得られた約30,000個のシングルコロニーをピックアップし、384枚のプレート上に植菌した。コロニーPCRでシークエンス反応の鋳型にするDNAを増幅し、エタノール沈殿による精製を行った。それを鋳型にして、Applied Biosystems社のBigDye ver3.1を用いて、各cDNA断片の5’末端側から、シークエンス反応を行った。エタノール沈殿による精製後、Applied Biosystems社の3730xl DNA Analyzerを用いて塩基配列の解析を行った。
【0092】
<実施例4>
シークエンス解析(2)
実施例2で得られたcDNAライブラリーで大腸菌株DH5αを形質転換し、得られた約26,000個のシングルコロニーをピックアップし、384枚のプレート上に植菌した。コロニーPCRでシークエンス反応の鋳型にするDNAを増幅し、エタノール沈殿による精製を行った。それを鋳型にして、Applied Biosystems社のBigDye ver3.1を用いて、各cDNA断片の5’末端側から、シークエンス反応を行った。エタノール沈殿による精製後、Applied Biosystems社の3730xl DNA Analyzer を用いて塩基配列の解析を行った。
【0093】
<実施例5>
EST(Expression Sequence Tag)のクラスタリング
実施例3で得られた約30,000個のESTデータと実施例4で得られた約26,000個のESTデータを1つのデータセットに統合し、PHRAPプログラム (http://www.phrap.org) を用いてクラスタリングを行った。その結果、10,372個のユニークなコンティグを得た。
【0094】
<実施例6>
相同性検索によるチトクロームP450遺伝子の抽出
実施例5で得られた10,372個のコンティグ配列をクエリとして、NCBI (National Center for Biotechnology Information) データベースに登録されている既知タンパク質に対するBLASTX検索 (Altschul, S.F. et al., Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402, 1997) を行った。チトクロームP450酸化酵素がβ-アミリン以降のグリチルリチン生合成経路に関与すると予測し、当該データベースに登録されている既知のチトクロームP450酸化酵素に高い相同性を示すコンティグを選抜した。選抜したコンティグを構成する複数のESTクローンから、最も長い5’末端領域を保持すると判定されるものについて、プラスミドDNAを調製し、クローン化された各cDNA断片(36個)の全長塩基配列を決定した。
【0095】
<実施例7>
遺伝子発現解析(候補遺伝子のスクリーニング)
実施例6で得られた36個のチトクロームP450遺伝子群からグリチルリチン生合成に関わる可能性が高い分子種を選抜するために、各チトクロームP450分子種が植物体のどの器官で発現しているのかをRT-PCR法により調べた。
【0096】
グリチルリチンを高蓄積する地下部組織(肥大根及びストロン)とグリチルリチンが検出されない地上部組織(葉及び茎)の計4種の異なる植物組織からトータルRNAを調製した。得られたトータルRNA 1μgを用いて、SMART RACE cDNA amplification kit (clontech社)を用いて添付のプロトコルに従い、ファーストストランドcDNA合成を行った。
【0097】
続いて、各チトクロームP450遺伝子に特異的にアニールするセンス及びアンチセンスプライマーを設計し、上記4種のファーストストランドcDNA 各2μlを鋳型として、Ex Taq
TM DNAポリメラーゼ(TaKaRa社)を用いて、25〜30サイクルのPCRを行った。得られたPCR断片をアガロースゲル電気泳動で分析した(
図1b)。根及びストロンでの発現が高いチトクロームP450分子種を選抜した。その中でトリテルペンを酸化する酵素活性が認められたチトクロームP450分子種(GuCYP72.1)について、以下の実施例を行った。
【0098】
<実施例8>
GuCYP72.1の全長コード領域の増幅及びエントリーベクターへのクローニング
GuCYP72.1の全長コード領域を含むプラスミドクローン(pGCAPzf3を用いて作製)を鋳型に、GuCYP72.1ポリペプチドのN末端とC末端に相当する箇所のオリゴDNAをプライマー(配列番号1及び2)として、Pfu-Turbo DNA Polymerase(Stratagene社)を使用して、アニール温度55℃で30サイクルのPCRを行った。配列番号1のプライマーには5’末端に4塩基(cacc)が付加されているが、これはpENTR
TM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクター(Invitrogen社)へのクローニングの際に必要となる。該PCRにより増幅されたDNA断片をpENTR
TM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクターにクローニングし、得られた4個の独立クローンについて塩基配列を決定した。これにより得られたポリヌクレオチドの塩基配列が配列番号3であり、またそれから推定されるポリペプチド配列が配列番号4である。
【0099】
<実施例9>
バキュロウイルス−昆虫細胞発現系による本発明のタンパク質発現ベクターの構築
実施例8において作製した、配列番号3に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とデスティネーションベクターpDEST
TM8(Invitrogen社)を混合し、塩基配列特異的な組換え反応(GATEWAY
TMattL×attR 反応)により、配列番号3に示すポリヌクレオチドをpDEST
TM8ベクターに移すことで、昆虫細胞発現用コンストラクトを構築した。塩化カルシウム法によって、得られたコンストラクトで大腸菌株DH10Bac(Invitrogen社)を形質転換した。添付のプロトコルに従い、形質転換体コロニーからBacmid DNA(初代組換えバキュロウイルス)を調製した。
【0100】
<実施例10>
バキュロウイルス−昆虫細胞発現系による本発明のタンパク質の発現
常法(Invitrogen社、Bac-to-Bac Baculovirus Expression System、カタログ番号10359016)を用いて、添付のプロトコルに従い、実施例9で調製したBacmid DNAを昆虫細胞(Spodoptera frugiperda 9)に感染・増殖させ、純化した高力価ウイルス液(力価=約1×10
8pfu/ml)を調製した。1.0×10
6個の昆虫細胞を3mlのGrace's Insect Cell Culture Medium (GIBCO BRL社)に懸濁し、30μlの高力価ウイルス液を加え、室温で30分間インキュベートした。50mlのGrace's Insect Cell Culture Medium(終濃度100μMのアミノレブリン酸、終濃度10%のウシ胎仔血清、終濃度100μMのクエン酸鉄、終濃度0.1%のPluronic F68を添加したもの)を加えた後、300ml容フラスコに移し、27℃、150rpmで96時間培養した。
【0101】
<実施例11>
昆虫細胞からのミクロソーム画分の調製
実施例10で得られた昆虫細胞培養液50mlを2,330
g、4℃で5分間遠心し、昆虫細胞を回収した。昆虫細胞を氷冷したリン酸バッファで3回洗浄した後、5mlの50mMリン酸−カリウムバッファ(pH7.2、1mM EDTA、1mM DTT、20% Glycerolを含む)に懸濁した。BRANSON SONIFER 250(BRANSON社)を用いて、細胞を超音波破砕した後、2,330
g、4℃で20分間遠心分離を行った。上清を回収し、100,000
g、4℃で1時間遠心分離し、得られたペレット(ミクロソーム画分)を2mlの50mMリン酸−カリウムバッファ(pH7.2、1mM EDTA、1mM DTT、20% glycerolを含む)に懸濁した。
【0102】
<実施例12>
基質トリテルペンの調製
実施例11で得られたミクロソーム画分の活性試験に用いる基質としてのトリテルペンは、
図2及び
図3に示す方法で合成した。
【0103】
(1)β-アミリン
オレアノール酸(SIGMA社)をトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、カルボン酸をメチルエステル体とし、水酸基をtert−ブチルジメチルシリル基として保護した。メチルエステルを還元してアルコールへと導き、メシルクロリドを作用させてメシルエステル体とした後、還元的置換反応によりメチル体へと導いた。このメチル体を脱保護してβ-アミリンを得た。構造は、
1H-NMR及び
13C-NMRスペクトルを解析して確定した。
【0104】
(2)11-オキソ-β-アミリン
β-アミリンの3位水酸基をテトラヒドロピラニル基で保護し、塩化ルテニウムとtert-ブチルヒドロペルオキシドを作用させて11位メチレン炭素をカルボニル基へと導いた。その後、脱保護を行い11-オキソ-β-アミリンを得た。構造は、
1H-NMR及び
13C-NMRスペクトルを解析して確定した。
【0105】
(3)11-デオキソグリチルレチン酸グリチルレチン酸(SIGMA社)に亜鉛と塩酸を作用させ11位のカルボニル基を還元し、11-デオキソグリチルレチン酸を得た。構造は、
1H-NMR及び
13C-NMRスペクトルを解析して確定した。
【0106】
(4)30-ヒドロキシ-β-アミリン
11-デオキソグリチルレチン酸にトリメチルシリルジアゾメタンを作用させ、カルボン酸をメチルエステル体へと導き、エステルを還元して30-ヒドロキシ-β-アミリンを得た。構造は、
1H-NMR及び
13C-NMRスペクトルを解析して確定した。
【0107】
(5)30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン
30-ヒドロキシ-β-アミリンの水酸基をテトラヒドロピラニル基として保護し、塩化ルテニウムとtert-ブチルヒドロペルオキシドを作用させ11位メチレン炭素をカルボニル基へと変換し、脱保護を行い、30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンを得た。構造は
1H-NMR及び
13C-NMRスペクトルを解析して確定した。
【0108】
<実施例13>
ミクロソーム画分を用いたin vitroアッセイ
実施例11で得られたミクロソーム画分50μlと、25μlの1Mリン酸−カリウムバッファ(pH7.2)、1μl(終濃度0.1unit/ml)の精製シロイヌナズナチトクロームP450還元酵素(Mizutani, M. and Ohta, D., Plant Physiol. 116, 357-367, 1998)、25μl(終濃度1mM)のNADPH、5μl(終濃度20μM)の反応基質(11-オキソ-β-アミリン)、394μlの滅菌水を混合した後、30℃、1,000rpmにて撹拌させながら2時間インキュベートした。
【0109】
<実施例14>
変換物の同定
実施例13で得られた反応溶液を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル区は、溶媒を乾燥除去した後、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱し、トリメチルシリルエーテル体に誘導体化してGC−MS分析の試料とした。GC−MSは、Automass (JEOL)−6890N(Agilent technologies社)を、カラムは、HP-5 column (J&W Scientific社;0.32mm×30m;0.25mm film thickness)を用いて変換物を分析した。変換物の同定は、実施例12で調製した基質トリテルペンを標品としてGCの保持時間ならびにMSスペクトルを比較することで決定した。
【0110】
ここで、配列番号4に示すポリペプチド(GuCYP72.1)を発現する昆虫細胞から調製したミクロソームを用いて酵素アッセイを行った結果、基質として与えた11-オキソ-β-アミリン(
図4、白抜矢頭A)が水酸化されたと考えられる3本のピーク(
図4、黒矢頭)が検出された。その中でBで示したピークの保持時間及びマススペクトルが、30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンと良く一致した。これらのピークは、空ベクターを導入した昆虫細胞に由来するミクロソーム画分(ネガティブコントロール)を用いた同様の実験では検出されなかった。
【0111】
以上の結果から、グリチルリチンの生合成に関与すると考えられる30位の水酸化反応に関与する酵素(GuCYP72.1)が初めて同定された(
図4)。
【0112】
<実施例15>
ミヤコグサβ-アミリン合成酵素(OSC1)遺伝子cDNAの酵母発現ベクターpYES3-ADH-OSC1の構築
マメ科のモデル植物としてEST及びゲノム解析が進んでいるミヤコグサ(Lotus japonicus)を用いて、β-アミリン合成酵素(OSC1)遺伝子の酵母発現ベクターを構築した。
【0113】
ミヤコグサOSC1遺伝子cDNA導入プラスミド(Sawai et al. (2006) Plant Sci 170: 247-257)をKpnI、XbaIで消化し、OSC1 cDNA領域を切り出した。pAUR123(TaKaRa社)も同様にKpnI、XbaIで消化し、DNA ligation Kit Ver. 2.1(TaKaRa社)で両者をライゲーションし、pAUR123-OSC1を得た。pAUR123-OSC1のPADH1からTADH1領域をAUR123-F(GGATGATCCACTAGTGGATCCTCTAGCTCCCTAACATGTAGGTGG:配列番号5)及びAUR123-R(TAATGCAGGGCCGCAGGATCCGTGTGGAAGAACGATTACAACAGG:配列番号6)の両プライマーを用いて、KOD-Plus-DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃20秒間→55℃40秒間→68℃90秒間)×20サイクルからなるPCRを行った。その後、68℃で2分間保温した。また、pYES3/CT(Invitrogen社)の1番から960番塩基(PGAL1からCYC1TT)を除く領域をYES3-F(TGCGGCCCTGCATTAATGAATCGGCCAACG:配列番号7)及びYES3-R(ACTAGTGGATCATCCCCACGCGCCCTGTAG:配列番号8)の両プライマーを用いてKOD-Plus- DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により前記と同様にPCRを行った。両PCR産物をIn-Fusion Dry-Down PCR Cloning Kit(clontech社)を用いて結合し、ミヤコグサOSC1酵母発現ベクターpYES3-ADH-OSC1を得た。
【0114】
<実施例16>
ミヤコグサチトクロームP450還元酵素を含む酵母発現ベクターpESC-LjCPR1の構築
ミヤコグサESTデータベース(かずさDNA研究所)を検索し、シロイヌナズナチトクロームP450還元酵素とアミノ酸レベルで70%以上の相同性を有する核酸配列を選抜した。全長コード領域を含むと思われるESTクローン(accession no. AV778635)をかずさDNA研究所より入手し、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzerを用いてDNA配列を決定した(以下、LjCPR1とする)。LjCPR1導入プラスミド(pBluescript SK (-))を鋳型にして、CPR-F(Not)(GGGCGGCCGCACTAGTATCGATGGAAGAATCAAGCTCCATGAAG:配列番号9)及びCPR-R(Pac)(TTAATTAATCACCATACATCACGCAAATAC:配列番号10)の両プライマーを用い、KOD-Plus- DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃20秒間→60℃40秒間→68℃120秒間)×15サイクルからなるPCRを行った。その後、68℃で2分間保温した。PCR産物をTAget Clone -Plus-(TOYOBO社)を用いて、pT7Blue T-vector(Novagen社)とライゲーションした。塩基配列を確認後、NotI、PacIで消化し、また酵母発現用ベクターpESC-LEU(Stratagene社)も同様にNotI, PacIで消化した。その後、DNA ligation Kit Ver. 2.1(TaKaRa社)を用いて両者をライゲーションし、LjCPR1の酵母発現ベクターpESC-LjCPR1を得た。
【0115】
<実施例17>
G. uralensis由来β-アミリン11位酸化酵素(CYP88D6)とLjCPR1の酵母における同時発現ベクターpELC88BNの構築
まず、本発明者らが
G. uralensisから以前に単離したβ-アミリン11位酸化酵素(CYP88D6)をコードする遺伝子(GenBank accession no. AB433179)を以下に示す方法により酵母発現ベクターであるpESC-LEU(Stratagene社)にクローニングした。
【0116】
pENTR
TM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクターにクローニングされたCYP88D6をコードするcDNAを鋳型として、88S1(CGCCGGATCCACCATGGAAGTACATTGGGTTTGCATGTCC:配列番号11)及び88AS4 Xba(GCCCTCTAGACTAAGCACATGAAACCTTTATCACCTTAGC:配列番号12)の両プライマーを用い、KOD-Plus-(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃15秒間→62℃40秒間→68℃90秒間)×25サイクルからなるPCRを行い、CYP88D6 cDNAを含むDNA断片を増幅した。PCR溶液を電気泳動し、約1.5kbの増幅断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System(Promega社)で精製した。制限酵素BamHI、XbaIで消化し、反応物をWizard SV Gel and PCR Clean-up System(Promega社)で精製した。一方、pESC-LEU(Stratagene社)を制限酵素BamHI、NheIで消化した。これらをDNA ligation Kit Ver2.1(TaKaRa社)を用いてライゲーションし、CYP88D6酵母発現ベクターであるpESC-CYP88D6を得た。
【0117】
次に、実施例16に示す方法により、制限酵素NotI、PacIを用いてLjCPR1のcDNAを含むDNA断片を調製した。得られたDNA断片を、制限酵素NotI、PacIで消化したpESC-CYP88D6にDNA ligation Kit Ver2.1(TaKaRa社)を用いて組み込むことで、CYP88D6とLjCPR1の酵母での同時発現ベクターpELC88BNを得た。
【0118】
<実施例18>
酵母でのGuCYP72.1発現ベクターの構築
実施例8において作製した、配列番号3に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とデスティネーションベクターpYES-DEST
TM52(Invitrogen社)を混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(GATEWAY
TM attL × attR反応)により、配列番号3で示すDNA断片をpYES-DEST
TM52に移し替えることで配列番号3に示す遺伝子の酵母発現ベクターpDEST52-GuCYP72.1を得た。
【0119】
<実施例19>
形質転換酵母の作製
酵母BJ2168株(ニッポンジーン社)(MATa prc1-407 prb1-1122 pep4-3 leu2 trp1 ura3-52 gal2)の形質転換は、Frozen-EZ Yeast Transformation II(Zymo Research社)を用いて行った。まず、酵母BJ2168株をpYES3-ADH-OSC1で形質転換した。次に、得られた形質転換酵母をpESC-LjCPR1及びpELC88BNのそれぞれで形質転換した。得られた2種の酵母株を、さらにpDEST52-GuCYP72.1、又は空ベクターに相当するpYES2(Invitrogen社)で形質転換した。
【0120】
<実施例20>
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1、pDEST52-GuCYP72.1)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1(ミヤコグサβ-アミリン合成酵素発現ベクター)、pESC-LjCPR1(ミヤコグサチトクロームP450還元酵素発現ベクター)、pDEST52-GuCYP72.1(
G. uralensis由来のβ-アミリン30位酸化酵素GuCYP72.1発現ベクター)の3つのベクターを保持する酵母を400mlのSC-Trp/Leu/Ura培地にて、28℃で135rpmの振とうにより2日間培養した。培養した酵母を3,000
gで10分間遠心して集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した400mlのSC-Trp/Leu/Ura-グルコース培地に懸濁した。その後、28℃、で135rpmの振とうにより2日間培養した。前記遠心処理によって集菌し、ペレットに凍結乾燥処理を行なった。得られたサンプルに5mlの酢酸エチルを加えて混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮した。pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1、pYES2(空ベクター)の3つのベクターを保持するコントロールの酵母についても同様に、培養、抽出を行なった。実施例14に記述した方法と同様に、酢酸エチル区は溶媒を乾燥除去した後、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱してトリメチルシリルエーテル体に誘導体化し、GC−MS分析の試料とした。変換物の同定は、実施例12で調製した基質トリテルペンを標品としてGCの保持時間ならびにMSスペクトルを比較することにより決定した。
【0121】
pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1、pDEST52-GuCYP72.1の3つのベクターを保持する酵母の抽出物(
図5:OSC1/LjCPR1/GuCYP72.1と示したGCチャート)からは、β-アミリン(白抜矢頭A)に加えて30-ヒドロキシ-β-アミリン(黒矢頭B)が検出された。一方、対照実験として行ったpYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1、pYES2の3つのベクターを保持する酵母の抽出物(
図5:OSC1/LjCPR1と示したGCチャート)からはβ-アミリン(白抜矢頭A)のみが検出され、30-ヒドロキシ-β-アミリンは検出されなかった。
【0122】
以上の結果から、本発明の遺伝子(GuCYP72.1)がコードする酵素は、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において生じるβ-アミリンの30位のメチレン炭素をヒドロキシル基に変換し、30-ヒドロキシ-β-アミリンを生成し得ることが判明した。
【0123】
<実施例21>
NMRによる30-ヒドロキシ-β-アミリンの同定
pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1、pDEST52-GuCYP72.1の3つのベクターを保持する酵母を400mlのSC-Trp/Leu/Ura培地(12本、計4.8L)にて28℃で125rpmの振とうにより、2日間培養した。培養した酵母を3,000
gで10分間遠心して集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した400mlのSC-Trp/Leu/Ura-グルコース培地(12本、計4.8L)に懸濁した。その後、28℃で125rpmの振とうにより2日間培養した。前記遠心処理によって集菌した後、ペレットに凍結乾燥処理を行なった。凍結乾燥した菌に100mlクロロホルムを加え、混合した後、クロロホルム抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。クロロホルム抽出物を減圧下で濃縮した。水100mlを加えたクロロホルム抽出物に、100ml酢酸エチルを加え、混合した後、酢酸エチル抽出物回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。その後、酢酸エチル抽出物をシリカゲルクロマトグラフィーで分画した。シリカゲルクロマトグラフィーはWako gel C-200(和光純薬工業)、2.8×40cmで行ない、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)を流し、溶出液を7mlずつ分画した。41〜51番フラクションを集めて溶媒除去し、シリカゲルTLCプレートLK6F 20×20cm(Whatman社)に付した。ヘキサン:酢酸エチル(1:1)で展開した後に、30-ヒドロキシ-β-アミリンと同じRf値のシリカゲルをかき取り、クロロホルムで溶出した。溶媒除去後、重クロロホルムに溶解し、日本電子社製(500MHz)NMRを用いて
1H−NMRスペクトルを測定した。この画分の
1H−NMRスペクトルは、実施例3で調製した標品の30-ヒドロキシ-β-アミリンと完全に一致した(CDCl3, 500 MHz:δ0.79(3H,s),0.83(3H,s),0.90(3H,s),0.94(3H,s),0.96(3H,s),1.00(3H,s),1.15(3H,s),3.22(1H,dd,J=4.6,11.5 Hz),3.48(1H,d,J=10.9 Hz),3.56(1H,d,J=10.9 Hz),5.19(1H,t,J=3.4 Hz))。
図6に結果を示す。
【0124】
<実施例22>
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pELC88BN、pDEST52-GuCYP72.1)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1(ミヤコグサβ-アミリン合成酵素発現ベクター)、pELC88BN(
G. uralensis由来のβ-アミリン11位酸化酵素CYP88D6とミヤコグサ由来のチトクロームP450還元酵素LjCPR1の同時発現ベクター)、pDEST52-GuCYP72.1(
G. uralensis由来のβ-アミリン30位酸化酵素GuCYP72.1発現ベクター)の3つのベクターを保持する酵母を実施例20に示した方法で培養し、抽出を行った。変換物の同定は実施例12で調製した基質トリテルペンを標品として、GCの保持時間並びにMSスペクトルを比較することにより決定した。
【0125】
その結果、pYES3-ADH-OSC1、pELC88BN、pDEST52-GuCYP72.1の3つのベクターを保持する酵母の抽出物(
図7:OSC1/LjCPR1/CYP88D6/GuCYP72.1と示したGCチャート)からは、β-アミリン(
図7:ピークA、
図8:化合物A)及び11-オキソ-β-アミリン(
図7:ピークB、
図8:化合物B)に加えて、30-ヒドロキシ-β-アミリン(
図7:ピークC、
図8:化合物C)、30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン(
図7:ピークD、
図8:化合物D)、グリチルレチン酸(
図7:ピークH、
図8:化合物H)及び20-エピ-グリチルレチン酸(
図7:ピークI)が検出された。また、構造は、確定されていないが、マススペクトルパターンから11-オキソ-β-アミリンが水酸化された化合物と推定されるピークE及びF、並びに化合物Dがさらに酸化された30位アルデヒド体と推定されるピークGが検出された。
【0126】
一方、コントロールであるpYES3-ADH-OSC1及びpELC88BNの2つのベクターのみを保持する酵母の抽出物(
図7:OSC1/LjCPR1/CYP88D6と示したGCチャート)からはβ-アミリン(ピークA)ならびに11-オキソ-β-アミリン(ピークB)は検出されたが、30-ヒドロキシ-β-アミリン、30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン、グリチルレチン酸及び20-エピ-グリチルレチン酸は、検出されなかった。
【0127】
以上の結果から、本発明の遺伝子(GuCYP72.1)がコードする酵素は、β-アミリン合成酵素(OSC1)及びβ-アミリン11位酸化酵素(CYP88D6)を同時発現する酵母において生じる11-オキソ-β-アミリンの30位のメチレン炭素をカルボキシル基に変換し、グリチルリチンの前駆物質(サポゲニン)であるグリチルレチン酸及びその異性体である20-エピ-グリチルレチン酸を生成し得ることが明らかになった。
【0128】
<実施例23>
G. glabraからの本発明のポリペプチドの単離
G. glabraにおいて、配列番号3で表される遺伝子と同等の機能を有すると推測される相同遺伝子(GgCYP72.1)をRT-PCR法により単離した。
【0129】
(独)医薬基盤研究所、薬用植物資源研究センター、北海道研究部(北海道名寄市)から分譲された
G. glabraのストロンからトータルRNAを調製した。得られたトータルRNA 1μgより、SMART RACE cDNA amplification kit (Clontech社)を用いて添付のプロトコルに従い、ファーストストランドcDNA合成を行った。配列番号1と2で示すヌクレオチドをプライマーとして、Pfu-Turbo DNA Polymerase(Stratagene社)を使用して、アニール温度55℃で30サイクルのPCRを行った。当該PCRにより増幅されたDNA断片をpENTR
TM/D-TOPO(エントリーベクター)にクローニングし、得られた4個の独立クローンについて増幅DNA断片の塩基配列を決定した。その結果得られた配列が、配列番号13であり、それから推定されるポリペプチド配列が、配列番号14である。配列番号14に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列に対して98.5%の同一性を有していた。
【0130】
<実施例24>
GuCYP72.1発現酵母への30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンの添加実験
最初に、酵母BJ2168株(ニッポンジーン社)をpESC-LjCPR1で形質転換した。次に、得られた形質転換酵母をpDEST52-GuCYP72.1又はエンプティベクターに相当するpYES2(Invitrogen社)で形質転換した。
【0131】
それぞれの形質転換酵母株を100mlのSC-Leu/Ura培地で28℃にて135rpmで振とうしながら2日間培養した。培養した酵母を3000gで10分間遠心することにより集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)及び2μMの30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンを添加した100mlのSC-Leu/Ura-グルコース培地に懸濁した後、28℃にて135rpmで2日間培養した。酵母培養液に酢酸エチルを加えて混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。酢酸エチル区は溶媒を乾燥除去した後、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱し、トリメチルシリルエーテル体に誘導体化しGC-MS分析の試料とした。
【0132】
30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンを添加した培地でpESC-LjCPR1及びpDEST52-GuCYP72.1の2つのベクターを保持する酵母を培養した場合の抽出物(
図9、GCチャート B)からは、30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン(点線矢印;
図8の化合物D)に加えて、グリチルレチン酸(ピーク2;
図8の化合物H)が検出された。また、構造は確定されないが、マススペクトルパターンから30位アルデヒド体と推定されるピーク1も検出された。一方、同酵母株を30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリンを添加しない培地で培養した場合(
図9、GCチャート A)では、いずれのピークも検出されなかった。
【0133】
また、pESC-LjCPR1及びpYES2(エンプティベクター)の2つのベクターを保持する酵母を30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン添加培地で培養した場合(
図9、GCチャート C)には30-ヒドロキシ-11-オキソ-β-アミリン(点線矢印)のみが検出され、ピーク2のグリチルレチン酸は検出されなかった。
【0134】
<実施例25>
NMRによるグリチルレチン酸の同定
400mlのSC-Leu/Ura培地(12本、計4.8L)に、pESC-LjCPR1、pDEST52-GuCYP72.1の2つのベクターを保持する酵母と30-ヒドロキシ-β-アミリンのエタノール溶液(0.9μg/ml)を添加した後、28℃、125rpmで振とうしながら2日間培養した。培養した酵母を3,000
gで10分間遠心して集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した400mlのSC-Leu/Ura-グルコース培地(12本、計4.8L)に懸濁した。その後、28℃で125rpmの振とうにより2日間培養した。培養液に400ml酢酸エチルを加えて混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーで分画した。シリカゲルクロマトグラフィーは、シリカゲル60N(関東化学)、3.0×15cmで行ない、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)を流し、溶出液を50mlずつ分画した。その後、5〜7番フラクションを集めて溶媒除去した。残渣をメタノールに溶解し、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋社)でろ過後、逆送HPLCのサンプルとし分取を行った(分取条件:カラム、PEGASIL ODS、25 cm×6 mm i.d.(センシュー科学); 移動相、アセトニトリル(0.1%酢酸); 流速, 1.5 ml/分; UV detector 248 nm)。5分から10分まで30秒ごとに分取し、3、4番フラクションを集めて溶媒除去した。残渣をシリカゲルTLCプレート(Merck社製、Silica gel 60 F
254 20×10cm)に付した。ヘキサン:酢酸エチル(1:1、0.5%酢酸)で展開した後に、グリチルレチン酸と同じRf値のシリカゲルをかき取り、酢酸エチル:クロロホルム(1:1)で溶出した。溶媒除去後、重クロロホルムに溶解し、日本電子社製(500MHz)NMRを用いて
1H−NMRスペクトルを測定した。この画分の
1H−NMRスペクトルは、標品のグリチルレチン酸と完全に一致した(CDCl3, 500 MHz:δ0.81(3H, s),0.83(3H, s),1.01(3H, s),1.13(3H,s),1.14(3H, s),1.23(3H, s),1.37(3H,s),2.34(1H,s),3.23(1H, dd, J=5.4, 10.9 Hz),5.69(1H, s))。
図10に結果を示す。
【0135】
<実施例26>
タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)のGuCYP72.1相同遺伝子の検索
本発明のオレアナン型トリテルペンの30位の炭素を酸化する活性を有する酵素が、カンゾウ属に限定されず、マメ科全般に存在することを検証するために、カンゾウ属と同じマメ科マメ亜科の植物に属し、かつカンゾウ属とは系統的に遠いウマゴヤシ属の植物、タルウマゴヤシ(
Medicago truncatula)を用いて以下の実験を行った。
【0136】
マメ科ウマゴヤシ属植物であるタルウマゴヤシは、グリチルリチンと同様にβ−アミリンを基本骨格に持つ複数のトリテルペノイドサポニンを生産することが知られている。タルウマゴヤシにおいて配列番号3で表されるGuCYP72.1遺伝子と類似した機能を有すると期待される相同遺伝子を探索した。相同性検索により、タルウマゴヤシの公開ESTデータベースDFCI Medicago Gene Index Release 8.0(http://compbio.dfci.harvard.edu/tgi/cgi-bin/tgi/gimain.pl?gudb=medicago)に登録されているTC(Tentative consensus = EST cloneの重複から推測したより長いcDNA配列)配列の中から、GuCYP72.1の全長コード領域と83%の塩基配列同一性を示すポリヌクレオチド配列、TC113088を見出した。
【0137】
<実施例27>
タルウマゴヤシのGuCYP72.1相同遺伝子の単離
タルウマゴヤシ、エコタイプR108-1を人工気象器内(23℃、日長16時間)で育成し、発芽後4週間目の植物の葉、茎、根からそれぞれトータルRNAを調製した。得られたトータルRNAを1μg用いて、SMART RACE cDNA amplification kit (Clontech社)を用いて添付のプロトコルに従いファーストストランドcDNA合成を行った。
【0138】
3種のファーストストランドcDNA各2μlを鋳型として、TC113088から推定されるポリペプチド(524アミノ酸)のN末端とC末端に相当する箇所のオリゴDNA、すなわち配列番号19(caccATGGAAGTGTTTATGTTTCCCACAGG)と配列番号20(TTACAGTTTATGCAAAATGATGCTTGCA)をプライマーに用い、アニール温度54℃でPCR(34サイクル、TOYOBO社製 KOD plus ver.2 polymeraseを使用)を行った。なお、pENTR
TM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクター(Invitrogen社)へのクローニングの際に必要であることから、配列番号19のプライマーには、5’末端に4塩基(cacc)が人工的に付加されている。PCRの結果、いずれのファーストストランドcDNAを鋳型に用いた場合にも、約1.6kbのDNA断片が同程度増幅された。茎由来のファーストストランドcDNAから増幅されたDNA断片をpENTR
TM/D-TOPOエントリーベクターにクローニングし、得られた4個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号17であり、それから推定されるポリペプチド配列は、配列番号18である。配列番号18は配列番号4に示すアミノ酸配列に対して75.5%の同一性を有していた。配列番号18に示すP450分子種を以下MtCYP72.1とする。
【0139】
<実施例28>
LjCPR1とMtCYP72.1の酵母同時発現ベクターpELC-MtCYP72.1の構築
実施例16において構築したpESC-LjCPR1を以下に示す方法によりGatewayテクノロジー対応発現ベクターに変換した。
【0140】
pAM-PAT-GWベクター(Max Planck InstituteのBekir Ulker博士とImre E. Somssich博士より贈与)を制限酵素
XhoI及び
SpeIで二重消化し、Gateway conversion cassette(Invitrogen社)を含むDNA断片を切り出した。得られたDNA断片を、pESC-LjCPR1を
SalIと
NheIの二重消化で得られる2つの断片のうち大きい断片と連結することによってpELC-MCS2-GWを構築した。pELC-MCS2-GWの構築には、大腸菌DB3.1株(Invitrogen社)を使用した。
【0141】
次に、実施例27で作製した、配列番号17に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とpELC-MCS2-GWとを混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(
attL x
attR反応)により、配列番号17で示すDNA断片をpELC-MCS2-GWに移し替えることでLjCPR1と配列番号17に示す遺伝子の同時発現ベクターpELC-MtCYP72.1を得た。
【0142】
<実施例29>
OSC1とMtCYP72.1を同時発現する形質転換酵母の作製
INVSc1株(Invitrogen社)(
MATa his3D1 leu2 trp1-289 ura3-52 MATAlpha his3D1 leu2 trp1-289 ura3-52)の形質転換は、Frozen-EZ Yeast Transformation II(Zymo Research社)を用いて行った。最初に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-OSC1で形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-MtCYP72.1あるいはコントロールとしてpESC-LjCPR1で形質転換した。
【0143】
<実施例30>
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pELC-MtCYP72.1)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1、pELC-MtCYP72.1の2つのベクターを保持する酵母を5mlのSC-Trp/Leu培地30℃、135rpm、1日間培養した。培養した酵母を3000g、10分間遠心することにより集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した10mlのSC-Trp/Leu-グルコース培地に懸濁し、30℃、135rpm、2日間培養した。酵母培養液に5mlの酢酸エチルを加え混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮した。pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母についても同様に、培養、抽出を行なった。実施例14に記述した方法と同じく、酢酸エチル区は溶媒を乾燥除去した後、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱し、トリメチルシリルエーテル体に誘導体化しGC-MS分析の試料とした。変換物の同定は実施例12で調製したトリテルペノイドを標品としてGCの保持時間ならびにMSスペクトルを比較することで決定した。
【0144】
pYES3-ADH-OSC1及びpELC-MtCYP72.1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(
図11a、OSC1/LjCPR1/MtCYP72.1と示したGCチャート)からは、β-アミリン(点線矢印;
図8の化合物A)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1とピーク2)が検出された。その内、ピーク1のマススペクトルは30-ヒドロキシ-β-アミリン(
図8の化合物C)のマススペクトルと非常に良く一致した(
図11b)。また、ピーク2のマススペクトルは11-デオキソグリチルレチン酸(
図8の化合物J)のマススペクトルと非常に良く一致した(
図11c)。これにより、ピーク1は、30-ヒドロキシ-β-アミリンに、ピーク2は、11-デオキソグリチルレチン酸にそれぞれ相当することが判明した。
【0145】
一方、pYES3-ADH-OSC1及びpESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(
図11a、OSC1/LjCPR1と示したGCチャート)からはβ−アミリン(点線矢印)は検出されたが、30-ヒドロキシ-β-アミリン(ピーク1)及び11-デオキソグリチルレチン酸(ピーク2)は検出されなかった。
【0146】
以上の結果から、MtCYP72.1は、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において生じるβ-アミリン(
図8、化合物A)の30位のメチレン炭素をカルボキシル基に変換し、11-デオキソグリチルレチン酸(
図8、化合物J)を生成し得ることが明らかとなった。