特許第5771864号(P5771864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771864患者のグルコース代謝に関する少なくとも1つの特性値を求める方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771864
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】患者のグルコース代謝に関する少なくとも1つの特性値を求める方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/66 20060101AFI20150813BHJP
   A61M 1/14 20060101ALI20150813BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20150813BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20150813BHJP
   A61B 5/145 20060101ALN20150813BHJP
【FI】
   G01N33/66 D
   A61M1/14 523
   A61M1/14 517
   A61M1/34 500
   A61M1/36 565
   A61M1/14 530
   A61M1/14 535
   !A61B5/14 310
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-532504(P2010-532504)
(86)(22)【出願日】2008年11月11日
(65)【公表番号】特表2011-503561(P2011-503561A)
(43)【公表日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】EP2008009501
(87)【国際公開番号】WO2009062661
(87)【国際公開日】20090522
【審査請求日】2011年11月8日
(31)【優先権主張番号】102007053752.4
(32)【優先日】2007年11月12日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】シュルト, エルケ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー, カルステン
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−092300(JP,A)
【文献】 特表2008−512202(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/029293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換液側及び/又は透析液側を備える透析装置を用いて患者(3)の体外透析治療中に、前記患者(3)のグルコース代謝に関する少なくとも1つの特性値を求める装置であって、
グルコース及びインシュリンからなる物質のグループの少なくとも1つの物質の濃度を測定する手段を備える装置において、
グルコース代謝の検査のために、前記グループの少なくとも1つの物質を前記透析液側(7)に体外で付加する手段(31)と、
前記グループの少なくとも1つの物質の体外付加の後、透析フィルタ(11)を横切るグルコースの移動量を求める手段と、
前記少なくとも1つの特性値の決定において、前記透析フィルタ(11)を横切るグルコースの移動量を反映して計算する手段と
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記手段(31)が、グルコース代謝の検査のために、さらに、前記グループの少なくとも1つの物質を前記置換液側(17a、17v)に体外で付加する手段であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記測定されたグルコース濃度を反映して前記透析液のグルコース濃度を変化させる手段
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの特性値の決定において、前記変化を反映して計算する手段
を特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項5】
グルコース及び/又はインシュリンの付加を行うステップ、及び/又は、グルコース濃度及び/又はインシュリン濃度を測定するステップを自動的に実施する手段
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの求められた特性値を出力及び/又は記憶する手段
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置を備える血液治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の糖分の代謝に関する少なくとも1つの特性値を求めるための、請求項1及び2のプリアンブルによる方法に関する。本発明は、更に、請求項9及び10のプリアンブルに対応する装置、並びに請求項19による治療装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、請求項17のプリアンブルによる、透析用の透析液の組成を定める方法、及び請求項18に対応する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、グルコース代謝及び、特に、高血糖値の治療が、高血糖値の結果として生じる病気の重大性のため、又特に、健康保障制度に対する膨大な関連費用のために、当局者の注意を益々集めるようになってきた。グルコース代謝が未だ完全には分かっていないことを考慮すれば、最近も又スペインのバルセロナにおける2007年6月21〜24日のXLIV ERA−EDTAの際のGiessaufらによる会議資料「Glucose Uptake and Elimination Following an Intra−Dialytic Glucose Load」にあるように、今日現在に至るまでグルコース代謝の将来に向けた科学的調査の新たな研究プロトコルが定期的に公刊されていることは驚くべきことではない。
【0004】
顕性糖尿病の診断は、現在は比較的簡単な方式で可能である。より困難を呈するのは、グルコース耐性異常は伴うが、まだ臨床的には顕在化していない初期段階の糖尿病を更に同定することである。
【0005】
経験から、個人のグルコース耐性及び/又はインシュリン抵抗性を判定する方法は分かっている。これらの方法は、グルコース恒常性異常(「空腹時グルコース異常」)又は糖尿病それぞれの同定及び識別に役立つ。このためには、当人の血液パラメータが最初に求められる。一方で測定された血液パラメータ値に、他方でその測定値に複合的に影響を与え得る状況全体に基づき、医師は、グルコース恒常性異常が存在する可能性を診断することができる。
【0006】
この種の診断において無視してはならない状況には、特に、血糖値を測った時、患者は空腹であったか又は食後であったか、検査目的でグルコースを投与してからどの位時間が経ったか、患者が熱を出していないか、患者が過去2、3日に亘って最小限の量の炭水化物しか摂取していないか、患者が投薬治療中であるかなどが含まれる。
【0007】
薬物を摂取している場合、特に、血糖レベルに影響する傾向のある薬物が関連する。そのような薬物には、例えば、コルチコイド、避妊薬、経口糖尿病薬が含まれる。しかし、又、例えば内性インシュリン以外にインシュリンが投与されていないかも医師によって明らかにされる必要がある。医師による処方箋によらないこの種の摂取が、はっきりした減量願望のある人にはよく見られる。最後に、病的グルコース耐性を診断するとき医師が考慮すべき状況には、インシュリンの生成又は分泌に影響する病気も含まれる。
【0008】
グルコースの経口摂取後のグルコース耐性検査の実施に必要な血液採取を、不愉快に感じる患者もある。
【0009】
糖尿病患者は、一般に、各人の糖分代謝に由来する透析患者でもあるので、国際公開第98/19592号パンフレットでは、1つの透析過程中に透析装置を用いて血液グルコース又は血糖レベルの測定を実施することを提案している。患者の血管へのアクセスは、いずれにしても、透析治療のために既に設置されているので、この目的のために別途血液を採取する必要なしに、国際公開第98/19592号パンフレットに記載の方法によってその時点の血糖値を求めることが可能である。
【0010】
しかし、血糖値が異常値との境界上にあると測定されることのある病的グルコース恒常性は、国際公開第98/19592号パンフレットに記載されている方法では同定することができない。治療する血液の成分を修正することになる、且つそうすることを意図する透析を実施すると、その上、血糖の測定に悪影響を与え、血液グルコース測定値を不正確にすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者の糖分代謝を検査し、特に患者の血糖値に関する特性値を求める改良された方法、並びにそれに対応する装置を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、請求項1又は2の特徴を組み合わせて有する方法によって達成される。
【0013】
従って、本発明によれば、患者のグルコース又は糖分代謝に関する少なくとも1つの特性値若しくはパラメータ値、又はパラメータパターンを求めることができる方法が提案される。その方法は、患者の血液の体外治療中に血糖及び/又はインシュリンを体外で付加すること、並びに、グルコース濃度及び/又はインシュリン濃度を体外で測定することを含む。
【0014】
本発明によれば、糖分代謝を評価する特性値は、血糖濃度、インシュリン濃度、上記濃度の時間経過による推移、並びに、患者の糖分代謝、特に患者の病理的状態に関連する所見を当業者が得るのに適したあらゆるその他の特性値であると理解される。
【0015】
本発明によれば、糖分代謝又はグルコース代謝は、一般に、炭水化物代謝であると理解される。従って、本発明は、糖分としてのグルコースの投与にも測定にも限定されるべきではない。患者が、例えば、糖尿病患者であるか否か、又は病的グルコース耐性を示しているか否かの所見にその血液濃度が本発明の脈絡で関係するあらゆる他の糖分も、本発明の特許出願に使用される用語、糖分又はグルコース代謝に同等に包含される。これは、以後、グルコース及び糖分の表現の同義語の使用に拘わりなく適用される。
【0016】
本発明においては、グルコース及び/又はインシュリンの体外付加は、患者の血液の体外治療に使用される機器内にそれらを付加することと見なされる。この機器には、特に、体外循環部の動脈及び静脈導管(複数可)が含まれる。この用語、機器には、透析装置に加えて、血液の体外治療用の他の装置、例えば心肺装置が更に包含される。従って、本発明によるグルコース又はインシュリンの付加は、透析の目的以外の目的を果たす体外血液治療中に行うこともできる。同じことが、測定ステップにも当て嵌まる。透析の場合には、例えば血液透析、血液濾過、又は血液透析濾過透析に拘わらず、機器は、透析液、又は、置換が行われる場合には置換液、並びに透析に用いられる装置の他のあらゆる導管及び構成要素を更に備える。
【0017】
本発明によれば、用語「体外」は、グルコース及び/又はインシュリンの投与に関しては非経口投与を意味する。これは、手作業では注射器によって、自動的には注入ポンプ又は灌流器によって、本発明によれば、特に、導管及び配管システムを備える血液治療用の全装置を含む既存の血管アクセスの中に行われる。
【0018】
グルコース及び/又はインシュリン濃度の測定に関しては、表現「体外」は、本発明に関しては、アクセスを独立に設置することを必要とせずに、並行して行われる血液治療のための既存の血管アクセスを要する測定と見なされ、その血管アクセスには、本発明によれば、やはり、特に、血液治療用の静脈又は動脈導管又は配管システムが含まれる。例えば、血液に接触せずに光学的方法を用いて患者の皮膚を通す非侵襲的測定、及び同様な透析液中の濃度の測定も又、本発明においては、体外であると見なされることが明確に指摘される。
【0019】
グルコース濃度の測定は、患者の体外治療中の所定の時間毎に、例えば、透析治療の開始時点に、周期的に、又は使用者の必要性に基づいて行うことができる。但し、その測定を連続的に行うこともできる。
【0020】
体外を流れる患者の血液中のグルコース及び/又はインシュリン濃度を測定した場合、これは患者の血液中の濃度を求めたことになる。しかし、本発明によれば、「グルコース濃度及び/又はインシュリン濃度を測定する」との表現は更に、例えば、フィルタを通過するグルコースの量、又は、透析液中に存在する血糖の量がそれによって変化するグルコースの量を測定することと見なされる。血糖及びインシュリンのそのような「量」は、一般に、濃度という用語でも表現することができ、従って本発明が量及び濃度の両方の測定を包含することは、これ以上の説明を全く要せずに当業者には理解可能であろう。
【0021】
グルコース濃度及びインシュリン濃度の測定は、体外血液循環機構中の1つ又は複数のセンサを用いて行うことができる。患者の透析治療において、グルコースは、透析治療に通常存在するフィルタを通過することができるので、透析液側で(別の測定に加えて、又は単独で)測定を実施することも更に可能である。
【0022】
患者の血糖濃度、特に血糖レベルの測定に関し、様々な方法を考えることができる。これらには、酵素法、吸収などの光学的方法、偏光又は分光、浸透作用の変化の測定、伝導率の変化の測定、並びに、当業者に周知の他の方法が含まれる。
【0023】
本発明によれば、「測定」も又、例えば血液治療用の装置の構成要素を介して体外で血液を採取し、採取したサンプルを対応する試験所に送ることと見なされる。試験所は外部にあってもよい。但し、試験所は、血液治療用の装置内に設けることもでき、又は、患者を治療する場所で血液治療装置と協働することもできる。
【0024】
本発明の方法は、特に、グルコースの体外、従って非経口投与、及びその結果消化管を回避することにより、存在する可能性のあるグルコース耐性異常の同定を、動態、及び存在する可能性のある消化器官のグルコース摂取異常とは無関係に、従ってより正確に行うことが可能になることを特徴とする。
【0025】
但し、血液の体外治療用に既に存在するアクセスを使用することによって(そのためには1つだけのアクセスでも十分である)、有利に非経口のグルコース耐性検査の実施とは対照的に、静脈内アクセスを別個に設置する必要はない。従って、本発明の方法は、より優しく、とりわけ、患者にとってより不愉快でない。更に、追加のアクセスを配置する必要がないので、有利には、感染症の危険性が低減する。
【0026】
本発明の方法の別の利点は、グルコース耐性検査に必要な測定を、いずれにしても、治療を行うのと並行して行うことができることである。従って、患者は、本発明の方法を実施するために特別の時間を取る必要はない。むしろ、これは、患者が、病院若しくは診療所内、又は、自家透析の場合には治療ユニット上のいずれかで、体外血液治療の実施のためにいずれにしても使う時間の中で行われる。
【0027】
本発明の方法は、一方で、いわばついでに行うことができ、患者の側に追加の時間又は努力を必要とせず、更に、付加的な不便を全く伴わないので、グルコース代謝を検査することに対してかなりの患者がもつ抵抗感の程度は、本発明の方法を適用する方が通常の方法を適用するのよりも、比較にならないほど小さい。
【0028】
従って、特性値を測定するために使用される本発明の方法を用いることにより、担当医師による患者の説得を必要とし、又患者にとって予約を取るのが困難なことがしばしばある従来の実施事例よりも早期に、グルコース耐性異常を明瞭に判定することができる。従って、高血糖によってもたらされることが知られている(追従)疾患の発生を防止し、若しくは少なくとも遅らせるために、その後の血糖摂取の低減の早期開始、及びその後の血糖レベルの早期低減を行うことが、有利には、本発明の方法を使用することによってやはり可能になる。
【0029】
血中グルコース濃度、又はグルコース付加の体外付加量の均衡状態での変化をもとに、本方法は、その時点の血液体積の測定又は決定、並びに簡単な再循環量の測定を更に可能にし、それは、体外血液治療の正確な実施の監視のためにいつも関心事である。
【0030】
本発明の方法は、有利には、最初に記述したように、インシュリンの病的分泌を伴う内分泌異常の検査にも用いることができることに留意すべきである。
【0031】
本発明の有利な発展形態が、それぞれの従属請求項の主題である。
【0032】
それにより、好ましい実施形態では、透析液中の糖分又はグルコースの濃度、即ち、透析液用液体を調製するとき患者の治療のために前記透析液用液体に通常添加するグルコースを、測定されたグルコース濃度、特に測定された血糖レベルに基づいて変化させることが提案される。そのような変化は、連続的に、又は特定の時間毎に行われる。
【0033】
この変化によって、その変化が透析液のグルコース濃度を血液のグルコース濃度に適合させるように行われた場合、透析フィルタを横切る血糖の移動は、有利には、最小限に抑えられ、又は防止されさえする。従って、グルコースの体外投与後の血糖の増加量を正確に、即ち、血液から透析フィルタを通って透析液へのグルコースの移動によって測定結果が損なわれることなく、決定することができる。別の表現を用いれば、透析液のグルコース濃度が血中グルコース濃度に一致させられている。
【0034】
耐性検査の後、但し、必要であれば早くもその実施中にでも、対応する調節、即ちグルコースを低下させるような変化により、グルコースの投与後に血糖レベルを標準的値に素早く戻す効果を、他方で、発揮することもできる。更に、有利には、所定の最大血糖値に達することもないことを保証することができる。これによって、本発明によれば、有利には、高血糖症が予防される。
【0035】
本発明の方法の別の好ましい実施形態で提供されているように、フィルタを通るグルコースの移動を回避するための透析液のグルコース濃度の変化を考慮して、又はそれに基づいて、少なくとも1つの特性値を求めることができる。このようにして、血糖レベルを体外で測定する手順が、少なくとも部分的に省略、又は有利には簡略化することができる。
【0036】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、血糖の体外付加後に血糖が透析フィルタを通って移動することができ、生じた移動量の測定値を求めることができるようになっている。少なくとも1つの特性値を、濾過手段を通るグルコースの移動量を反映して、又はそれに基づいて求めることができる。
【0037】
有利には、この技法は、一方で、その決定に有害な血糖の移動が計算手段によって相殺され、又は反映されるので、所望の特性値のより正確で正しい決定が行うことができることを特徴とする。更に、本発明の方法のこの実施形態は又、他の実施形態について記述されるような装置側での透析液の濃度の調節を必要としないことを特徴とする。特性値を求めるとき、フィルタを通る既知のグルコースの移動量を用いて、測定されたグルコース濃度に計算上反映し、又はそれを「修正」すればむしろ十分である。
【0038】
後者は、本発明の方法を実施するための装置について、機器に関して簡略化し、従って、必要な製造費用を低減する結果になる。その装置は更に、稼動及び維持費をより以上に低減する結果になり、関連費用及び必要な時間量を低減する。
【0039】
本発明による、上記の方法の更に別の好ましい実施形態は、透析液側、又は、置換液が供給される場合には置換液側で、糖分及び/又はインシュリンを体外付加することを実現する。糖分及び/又はインシュリンの付加は、透析液側及び/又は置換液側で、部分的に又は全部を行うことができる。これは、特に、技術的複雑さを必要とせず、全く簡単な構造を可能にし、従って費用の節減に寄与する。この場合、動脈側又は静脈側への付加部の配置を必要としないのも利点である。従って、有利には、グルコース及び/又はインシュリンの付加のために体外血液循環機構に接続することを省略することができる。これは、感染症、及び血液循環機構からの漏洩を防止することに寄与する。グルコース及び/又はインシュリンを透析液側で付加することにより、更に有利には、より正確な付加の制御が可能になる。該付加は更に、血液側で付加する場合より、例えば注入ポンプを用いて、特に同等な技術的複雑さで、より連続的に行うことができる。付加は、専用の手段を用いて行うことができる。この手段は、患者の治療に使用される透析液を生成し付加する手段に加えて用いることができる。その手段は、グルコース代謝の検査のために供することができる。その手段は、透析を受ける患者の治療に対して、特別に、同時に用いないようにすることができる。それにも拘わらず、該手段は、相乗効果を得、技術上の付加的複雑性を回避するなどのために、透析を受ける患者の治療のために透析液を生成し、及び/又は透析液にグルコースを付加する手段に、機能的及び/又は構造的に接続することができる。このように、グルコース代謝を検査するために、グルコース及び/又はインシュリンを付加する手段を(閉又は開ループ)制御によって実現することができ、透析液へのグルコースの付加とは別の、グルコース又はインシュリンの付加を行うことができる。(閉又は開ループ)制御は、グルコースを使用して透析液を生成する従来の手段の一部であってもよい。代謝の検査のためのグルコースの付加は、大量瞬時投与の形態で行うことができる。それは又、少なくとも一時的に、透析液へのグルコースを増加させて付加する形で行うこともできる。
【0040】
本発明による別の好ましい実施形態によれば、方法が、本発明の方法の少なくとも1つのステップを自動的に実施することを含む。このステップは、特に、グルコース及び/又はインシュリンを付加することでもよい。他方で、それは又、グルコース濃度及び/又はインシュリン濃度をそれぞれ適切な手段を用いて計測することに関連することができる。
【0041】
この場合の利点には、特に、担当医師の作業量が軽減されること、グルコース耐性検査の実施において、例えば、耐性試験を実施中の個々のステップ又は測定の時間間隔の監視が正確になることによって、精度の向上が達成されることが挙げられる。別の利点は、検査条件の正確な再現性にある。
【0042】
本発明の方法の上記の実施形態のそれぞれにおいて、本発明の方法は、求めた少なくとも1つの特性値を出力し、若しくは表示し、及び/又は記憶することを含むことができる。出力に際し、測定によって得られた情報は、紙面又はモニタ上のグラフ(例えば曲線表示として)で、又は数値の形で利用者に提供される。他の装置へのデータの伝送(いわゆる「遠隔モニタリング」)が更に行われる。記憶は、特に、後の文書化、並びに、以前に行った又は以後に行う測定及び他の検査の別の試験結果と比較するのに役立つ。それは、通常の記憶媒体を用いて行うことができる。
【0043】
本発明の目的は、更に、請求項9の特徴による少なくとも1つの特性値を求める装置を介して達成される。有利な発展形態が、従属請求項の主題である。請求項1及びその従属請求項による本発明の方法によって達成することができる全ての利点は、請求項9及びそれに付随する従属請求項による装置によって不足なくやはり達成される。従って、繰返しを避けるために、上記で説明された利点が明確に参照される。
【0044】
本発明は、更に、透析液の成分を定める改良された方法、並びにそれに対応する装置を提示することを目的とする。
【0045】
本発明のこの目的は、請求項17の特徴を有する方法を介して達成される。
【0046】
その結果、本発明によれば、患者の透析治療用の透析液の成分を定めるために、透析過程中に血中グルコースレベルを求めることが提案される。この測定は、上記の記述に従って体外で行うことができるが、静脈で行うこともできる。更に、透析液に付加すべきグルコースの量が、求められた血中グルコースレベルに基づいて調節される。このように、少なくとも透析治療が継続している間、理想的な血糖の調節が可能になる。これによって、グルコース不足のための血糖値の低下を回避し、患者を安定化させることが可能になる。
【0047】
本発明のこの方法は又、体外血液治療の際に患者にグルコースを付加する場合にはいつでも用いることができることを明確に留意されたい。従って、本方法は、透析を受ける患者の治療にこれを適用することに限定されない。
【0048】
本発明のこの目的は又、請求項18の特徴を有する装置を介して達成される。これにより請求項17による本発明の方法によるのと同じ利点を得ることができるので、繰返しを避けるため上記の説明がもう一度参照される。
【0049】
本発明の目的は、血液治療装置、特に、上記の利点をそれぞれが有する請求項18の諸特徴による透析装置を介して更に達成される。
【0050】
本発明の目的は、請求項19による血液治療装置を介して更に達成される。更に、この血液治療装置は、従来の血液治療装置、特に周知の透析装置であってもよい。
【0051】
次いで、本発明が、以下の例を用いてより詳細に例示的に説明される。
【0052】
即ち、透析過程中、又は他の任意の体外血液治療中に、特定の量のグルコース、例えば0.5グラム/体重キログラムが、所定の時間枠、例えば2分以内に体外循環部の静脈分枝を経由して患者に付加され得る。これによれは、アクセスを別個に設ける必要がなく、それにも拘わらず、耐性検査を、既知のそれぞれの利点の下に、非経口で実施することができる。
【0053】
グルコース耐性の評価のための特性値は、血糖値曲線の推移から計算することができる。これは、例えば、k=ln2/T1/2*100から得られるk値でもよく、T1/2はグルコースの半減時間を示す。医師にとってやはり重要である、最初に挙げた他のあらゆる影響因子を評価した後、1.2より大きいkの値は、ここでは、正常なグルコース耐性を指示するとすることができ、1.0より小さいkの値は、グルコース耐性異常を指示するとすることができる。
【0054】
代替形態としては、特定の値、例えば基本値に到達する迄に経過した時間を求め、後に医師によって評価することができる。これは、体表面1m当たり15グラムのグルコースを注入後、糖尿病患者では、80分を超える時間になり得、健康な人では、40〜70分になる(DerotによるivGTT)。グルコース動態に加えて、血液中のインシュリンレベルを測定し、評価することができる。インシュリン濃度の測定は、任意選択的に、機械装置側で行い、又は試験所で利用者によって測定することができる。本発明の方法を実施するために用いられる装置は、事前に設定した時間間隔毎にサンプル採取の信号を利用者に発し、或いは自立的又は自動的に測定を行うことができる。
【0055】
グルコースの短時間の大量投与の代わりに、体外循環部及び/又は透析液を介して時間を掛けるグルコースの注入も同様に行うことができ、グルコース及び/又はインシュリン値も同時に測定することができることに留意されたい。
【0056】
本発明が、より詳細に図面を用いて更に説明される。その図面では、同じ参照番号は、同様又は同一の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明による、グルコース及び/又はインシュリン用の付加点を備える体外血液循環機構の簡略概略図である。
図2】付加手段を有する、図1の血液循環機構の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、患者3を治療するための体外血液循環機構1を概略的に簡略化して示しており、血液循環機構1は、体外循環部5、並びに略式に示された透析液回路7を備える。体外循環部5及び透析液回路7は共に透析器9に流入し、そこから再び流出する。透析器9は、血液室13と透析液室15との間に配設され、濾過機能を果たす透析器膜11を備える。
【0059】
体外循環部5は、動脈分枝5aと静脈分枝5vとを備える。透析液回路7は、透析液供給用の分枝7iと透析液排出用の分枝7oとを備える。
【0060】
図1の血液循環機構1では、体外血液循環機構の動脈側で分枝5aに入る略式に示された置換液供給部、又は前希釈液導管17aと、同様に略式に示された、体外循環部5の静脈分枝5vに合流する置換液供給部、又は後希釈液導管17vとを更に備える。置換液供給部17a及び17vは、任意選択であり、標準的に設けられてはいない。
【0061】
図1に書き込まれている矢印はそれぞれ、それが付された分枝又は導管中のそれぞれの流れの方向を示している。
【0062】
図1では、グルコース及び/又はインシュリンを注入するための5つの候補点が更に記入されている。これらの点は21、23、25、27、及び29として示されている。点21では、グルコース又はインシュリンを透析液に付加することができ、点23では同物質を透析器9の上流で体外循環部5に付加することができ、点25では透析器9の下流で体外血液循環機構5に付加することができる。点27では、該物質が、動脈側の置換液供給部に付加され、点29では静脈側の置換液供給部に付加される。そのような付加は、1つ又は複数のそれぞれの手段(図示せず)を用いて行われる。
【0063】
図2図1の血液循環機構を示す。図2は、グルコース代謝検査のために体外回路にグルコースを付加することができる手段31を更に示している。図2での付加位置は、単に、可能な付加位置の1つである。
【0064】
図2は更に、従来技術で知られている、患者3を治療するためにグルコースを透析液用液体又は透析液に付加する手段33を示す。手段31と手段33とは適切な方式で互いに接続することができる。1つの手段で、手段31及び手段33両方の機能を果たすことを考えることもできる。このためには、その手段は適切な方式で用意されなければならない。
【0065】
本発明は、従って先ず、患者の血液の体外治療中、特に透析治療中に実施される次のステップ、すなわち、グルコース及び/又はインシュリンを体外で付加するステップと、グルコース濃度及び/又はインシュリン濃度を体外で測定するステップとを含む、患者のグルコース代謝に関する少なくとも1つの特性値を求める方法を提案する。本発明は更に、それに対応する装置を提示する。本発明によれば、患者の体外血液治療用の透析液の成分を定める方法が更に提案され、その方法は、透析過程中に患者の血液中のグルコースレベルを求めるステップと、求められたグルコースレベルに基づいて、透析液又は血液に付加すべきグルコース量を調節するステップとを含む。このために、それに対応する装置が提示される。更に、血液治療装置が提案される。
図1
図2