【課題を解決するための手段】
【0008】
提案される本発明により、マルチビームアクティブアンテナに付随する上述の問題すべてを解決することが可能になる。
【0009】
マルチビームの計算によるビームフォーミングに基づくアンテナタイプの送信および/または受信のためのシステムは、RF(無線周波数)信号の送信および/または受信が可能な放射素子のアレイを備える。計算によるビームフォーミング機能は、送信の場合および受信の場合に均等にうまく適用される。受信の場合、ビームは、放射素子群によって受信されたRF信号から得られ、場合により、周波数変換およびフィルタリングの後に、ベースバンド、IF、または直接RFにおいてデジタル化されたデータの複素線形結合によって形成される。送信の場合、ビームは、デジタル/アナログ変換の前、場合により、周波数変換の前に、生成されるべきビームの、ベースバンド、IF、または直接RFにおけるデジタル信号の複素線形結合によって、放射素子のための励起信号を生成することによって形成される。
【0010】
より具体的には、本発明は、アクティブアンテナタイプのRF信号の送信および/または受信のためのシステム用の、少なくとも1つのデジタル信号からのデータを処理するための装置であって、複数の放射素子を備え、複数の合成器を使用する計算によって少なくとも1本のビームを形成することが可能な、装置に関する。このため、データ処理装置は、少なくとも2組の合成器アレイと、少なくとも1つのベクトル変換器と、1つの逆変換器とを備える。
【0011】
ベクトル変換器は、入力チャネルと、少なくとも2つの出力チャネルとを備え、出力チャネル側の留数計算の少なくとも2つのコンポーネントによって、入力チャネル側に存在するデジタル信号からベクトル表示のデータへと、整数のデジタルデータを変換することが可能であり、1つの出力チャネルを、それぞれのコンポーネント専用にする。
【0012】
逆変換器は、少なくとも2つの入力チャネルと、1つの出力チャネルとを備え、出力チャネル側の整数のデジタルデータへと、入力チャネル側に存在する留数計算の少なくとも2つのコンポーネントによって定義されるベクトル表示のデータを変換することが可能であり、1つの入力チャネルを、それぞれのコンポーネント専用とする。
【0013】
ベクトル変換器および逆変換器は、合成器アレイの両側に片方ずつ配置され、合成器アレイは、留数計算において前記コンポーネントを並行して処理するよう配置され、受信モードではビームを形成し、または、送信モードではアンテナの放射素子の励起信号を生成する。合成器アレイごとに、留数計算の固有のコンポーネントに付随する処理演算を行う。
【0014】
ベクトル表示のいずれか1つのモードによれば、留数計算の第1のコンポーネントは、第1のダイナミックに対する整数形式で表され、留数計算の第2のコンポーネントは、第2のダイナミックに対する整数形式で表される。ベクトル変換器の入力側に存在する整数デジタルデータは、mに等しいダイナミックに対する整数形式で表され、整数形式で表された留数計算のコンポーネントのダイナミックは、厳密にm未満である。
【0015】
留数計算では、整数値はベクトルによって表され、算術処理演算はベクトル化され、コンポーネントまたは計算平面ごとに独立して実行される。従来の方法でnビットの整数(暗黙的に、モジュロ2
n)に対して演算を実行する代わりに、r個の整数コンポーネント(それぞれ、モジュロm
1、m
2..m
r)に対して並行して計算を実行する。モジュラスベース{m
1、m
2..m
r}の選択では、次の2つの条件を満たさなければならない。一方は、モジュライm
iは互いに素でなければならないという条件であり、他方は、nビットの整数ダイナミックを表すよう、すべてのモジュライの積は2
nより大きくなければならないという条件である。それぞれの計算平面(i)では、モジュロm
i(1つの整数)を用いて処理演算を実行し、固有のダイナミックm
iは2
nをはるかに下回るものである。留数計算の数値のベクトル化表示のためのシステムは、一般に「留数システム」(RNS)とも呼ばれる。
【0016】
有利には、合成器アレイは、第2のコンポーネントとは独立して、第1のコンポーネントを処理する。
【0017】
有利には、装置は、ビームの形成のために、ベクトル変換器から得られる留数計算のコンポーネントの数と等しい数の独立した合成器アレイを備える。
【0018】
DBF機能は、留数計算の処理演算を実行するよう選択された、基部の次元ほど多くの各ビームに対する独立した合成器アレイ(少なくとも2組)を備える。したがって、ファンクショナル平面上において、受信の場合に、r個のコンポーネントを備えた留数計算において、i個の放射素子からN本のビームを生成するアンテナは、((N×r組のアレイ)×i)個の合成器を組み込み、i個のベクトル変換器(1:r)およびN個の逆変換器(r:1)を伴うことになる。各機能は、各ビームに必要な帯域幅に対応するスループットを処理するよう次元決定される。しかし、当業者は、物理資源の使用を機能上の必要性に適合させ、複雑性を最適化することができる。
【0019】
本発明の第1の変形形態によれば、装置は、第1および第2のコンポーネントを処理することが可能なベクトル変換器、逆変換器ならびに合成器アレイを集積する、少なくとも1種の実装手段を備える。表記「〜種の実装手段」は、FPGAもしくはASIC回路などの任意のタイプの電子コンポーネント、または、電子回路基板を形成する電子コンポーネントセットもしくは複数の回路基板を備えたサブ機器部品を意味することを理解すべきである。
【0020】
本発明の第2の変形形態によれば、よりモジュール的で広帯域DBF要件に適したものとして、装置は、少なくとも3種の実装手段を備える。第1の実装手段は、合成器アレイの集積専用のものであり、第2の実装手段は、ベクトル変換器の集積専用のものであり、第3の実装手段は、逆変換器の集積専用のものである。この実装により、複雑性および消費量を最適化することが可能になり、これらの3つの機能の次元決定は特異的である。そこで、異なる実装手段(回路基板/回路)のインターフェース(入力および/または出力)は、留数計算において、データの符号化および留数計算のコンポーネントの異なるダイナミクスによって特定することができる。
【0021】
一変形形態によれば、DBF機能は、全く同一の帯域幅にすべてのビームを形成するか、または、別の帯域幅にビームを形成する。後者の例として、より効果的な変形形態では、装置は、デジタル信号処理手段、特に、狭帯域デジタル信号を多重化するための手段および/または広帯域デジタル信号を逆多重化するための手段も備え、合成器アレイおよび前記処理手段によって形成されるデータ処理連鎖において、合成器アレイの上流または下流に配置することができる。
【0022】
ベクトル変換器は、これらのデジタル信号処理手段の上流に配置することができ、逆変換器は、デジタル信号処理手段の下流に配置することができ、デジタル信号処理手段は、留数計算でもデータを処理する。しかし、DBF機能は、ベクトル化表示でのデータを処理する唯一の手段でもあり得、ベクトル変換器は、DBF機能の直上流に配置され、逆変換器は、DBF機能の直下流に配置される。
【0023】
こうして、DBF機能は、受信側では周波数デマルチプレクサまたはフィルタバンクの下流、および、送信側では周波数マルチプレクサの上流それぞれの、異なる帯域幅でビームを形成することができる。有利には、ハードウェア資源および電力消費量は、唯一、考慮される信号を処理することを目的として結集される(方向と関連する周波数チャネル)。有利には、個別の合成器アレイは、周波数デマルチプレクサまたは周波数マルチプレクサの個別の周波数帯に対応するスループットを処理するよう次元決定され、複雑性および消費量を最適化する。こうして、合成器アレイは、RNSコンポーネントによる、ビームによる、放射素子による、個別の周波数帯による4つの次元に関して組み立てられる。
【0024】
複数の放射素子を備え、n個の放射素子から少なくとも2本のビームを形成することが可能なアンテナ用の装置の変形形態によれば、少なくとも1つの放射素子は、前記ビームの形成において共通であり、前記ビームにおいて共通な前記放射素子から得られたデジタル信号データの同じコンポーネントを処理する合成器は、全く同一の電子コンポーネントに実装される。
【0025】
レンズまたは反射鏡を備えたDBFアンテナ、例えば、AFRタイプのアンテナの場合は、DRAの場合とは異なり、すべての放射素子が必ずしも各ビームの形成に貢献しているわけではない。受信側では、一般に、任意の放射素子が隣接ビームセットの形成に貢献し、対称的に、送信側では、任意のビームが隣接放射素子セットの励起に貢献する。有利には、この種のアンテナの場合、インターフェースをプールすることによって、すなわち、入力として同じデータを共有する処理演算を合成することによって、留数計算におけるDBFの組込みは、各計算平面に対する複雑性が低減されるため(表面積およびインターフェースにおけるスループットの観点から)、各ASIC/FPGA回路に対してより多くの処理演算を集積することを可能にし、その結果、消費量および全体的な複雑性が低減される。
【0026】
一変形形態によれば、デジタル装置/回路基板/合成器アレイタイプの回路は、計算平面のサブセット用に合成器を組み込む。有利には、このオプションにより、装置、電子回路基板およびASIC/FPGAコンポーネントレベルで、インターフェースにおけるスループットに関する制約を緩和することが可能になる。
【0027】
一変形形態によれば、装置/回路基板/合成器アレイタイプのデジタル回路は、すべての計算平面上に合成器を組み込む。有利には、DBFのすべての合成器アレイは、全く同一種の装置(全く同一種のASIC/FPGAにさえ)に組み込み、開発および生産コストを最適化することができる。
【0028】
ベクトル変換器および逆変換器によって引き起こされるさらなる複雑性にもかかわらず、このベクトル化表示は、広帯域DBF機能に対して特に有利であり、大多数の乗算器を伴い、高スループットで演算する。実際には、並列処理により、各計算平面のダイナミックを低減した状態で、複雑性が低減された複数の計算平面に対する算術処理演算を加速することが可能になり、各計算平面の処理機能のインターフェースにおけるスループットもまた低減される。インターフェース(ダイナミックとともに低減されたファンクショナルスループット)の平面上の組込み粒度は、個別の処理演算(低減されたダイナミクスでの演算)の論理的複雑性の平面上の組込み粒度と同程度に大幅に強化され、これにより、ASICおよび/またはFPGAコンポーネントの集積容量のより良い開発が可能になり、その結果、DBF機能の組込みの複雑性が低減する。また、DBF機能の消費量および処理速度も、個別の演算子(加算器、乗算器)のダイナミックの低減により強化される。
【0029】
一変形形態によれば、ベクトル変換器、逆変換器および合成器は、FPGAタイプのコンポーネントを用いて設計される。実際には、個別の計算機能の組込み粒度の縮小により、ASICよりも低い集積容量を示すFPGAの使用が可能になる。
【0030】
本発明によるDBF機能の実装は、ビーム、放射素子および広帯域の観点から要求される要件の場合、従来の技法と比較して、多くの利点を提供する。
【0031】
独立した計算平面によって処理演算を細分化する際の第1の利点は、個別の合成器機能それぞれのインターフェースにおけるスループットの大幅な低減であり、これは一般に、ハードウェアアーキテクチャの有効性を制限する要因となる。
【0032】
第2の利点は、第1の利点を拡大したものであり、表面積の観点から、および、消費量の観点から、ならびに、インターフェースの観点から、個別の合成器機能の組込み粒度の縮小であり、ハードウェア資源のより有効な利用、複雑性および全体的な消費量の低減が可能になる。
【0033】
第3の利点は、第2の利点と関連付けられ、計算平面による新たなモジュール性次元の導入であり、より優れた設計の柔軟性およびモジュール性のため、ビームによる、放射素子による、個別の周波数帯による次元を補足する。例えば、特定の計算平面(モジュロ13など)上でDBF処理演算を実行するASICは、全体的な計算ダイナミックを別のDBFアンテナ用に変更しなければならない場合は再利用することができる。
【0034】
第4の利点もまた、第2の利点から得られるもので、コストを削減するため、それほど高性能ではないマイクロエレクトロニクス技術、集積容量の低いFPGAもしくはASIC、処理速度の低いFPGAもしくはASICを使用する可能性である。
【0035】
第5の利点は、計算平面によるダイナミックの低減および算術演算子の簡素化に固有のもので、重要な動作周波数の増強と関連する消費量の低減である。
【0036】
第6の利点は、第1の利点と関連付けられ、DBF AFRアンテナまたはレンズを備えたアンテナの場合に、全く同一セットの入力に関する処理演算用のインターフェースをプールすることによって、各集積回路に対して、より多くのDBF処理演算を集積することを可能にする。
【0037】
したがって、本発明により、搭載用に対して求められた目的を達成することが可能になる。
【0038】
本発明は、非限定的な例として提供される以下の説明を読み進め、添付図面を参照することによって、より良く理解され、他の利点が明らかとなろう。