【0025】
そして、上記の第1成分の(200)面のX線回折強度をI
1、第2成分の(101)面のX線回折強度をI
2とすると、I
1は、立方晶窒化硼素焼結体において立方晶窒化硼素粒子を除く全成分のX線回折強度中最大であり、かつ0.01≦I
2/I
1≦0.1を満たすことを特徴とする。このような特定のX線回折強度比で、第1成分と第2成分とを含有することにより、第1成分と第2成分との組成のバランスが良好なものとなり、耐熱性と耐欠損性とを大幅に向上させることができる。上記のX線回折強度は、0.02≦I
2/I
1≦0.05であることがより好ましい。I
2/I
1が0.01未満であると、cBN粒子同士の結合力を高めることができず、耐欠損性が低下する。一方、I
2/I
1が0.1を超えると、耐摩耗性に優れるTiCの含有量が相対的に低下するとともに、耐摩耗性に劣るTiB
2およびAlB
2の含有量が増加し、cBN焼結体の耐摩耗性が大幅に低下する。ちなみに、第2成分を構成するTiB
2とAlB
2とは、そのX線回折におけるピーク波長が極めて近似している。このため、第2成分の(101)面のX線回折強度I
2は、TiB
2に由来するものか、AlB
2に由来するものかを特定しにくいが、いずれに由来するものであっても差し支えない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
以下のようにして、cBN焼結体工具を作製した。まず、平均粒子径3μmのcBN粒子の表面に、RFスパッタリングPVD装置を用いて、TiAlからなる金属層を被覆した。上記のスパッタリングの条件は、2kW/hの電力で、アルゴンガスを14.0ccmで流しながら、チャンバの回転数を18Hzとして、8時間半行なうことにより、cBN粒子の表面に対する質量比が、15質量%となるように被覆した。
【0038】
そして、その金属層の最表面に、極薄膜のTiAlNからなる保護層を被覆した。かかる保護層の被覆条件は、14.0ccmのアルゴンガスと、7.0ccmの窒素ガスとを流しながら、上記の金属層の成膜と同一の電力およびチャンバの回転数で30分間成膜した。
【0039】
次に、平均粒子径1μmのTiC粉末と平均粒子径4μmのAl粉末とを粉砕して、これらを質量比で、TiC:Al=95:5となるように混合し、真空中で1200℃、30分間熱処理して化合物を得た。この化合物を直径6mmの超硬合金製ボールメディアを用いてボールミル粉砕法により均一に粉砕し、結合相を構成する原料粉末を得た。
【0040】
次に、表1の「cBN含有率」に示す組成となるように、金属層で被覆したcBN粒子と、結合相を構成する原料粉末とを配合し、直径3mmの窒化硼素製ボールメディアを用いてボールミル混合法により均一に混合した。そして、これらの混合粉末を超硬合金製支持板に積層して、Mo製カプセルに充填後、超高圧装置を用いて、圧力5.5GPa、温度1400℃で30分間焼結することにより、cBN焼結体を得た。
【0041】
<実施例2〜7、比較例1〜4>
実施例1のcBN焼結体工具に対し、cBN含有率、金属層の被覆量、および結合相を構成する原料粉末の組成および質量比を表1のように変えたことが異なる他は、実施例1と同様の方法により実施例2〜7、比較例1〜4のcBN焼結体工具を作製した。特に、金属相の被覆量においては、後述する表1の「I
2/I
1」に示す値となるように、その質量比を調整した。たとえば、実施例2においては、cBN焼結体に含まれるcBN粒子の体積比率を60体積%とし、cBN粒子の表面を被覆する金属層の被覆量を10質量%とし、残部の結合相を構成する原料粉末を97質量%のTiCと3質量%のAlとにしたことを示す。なお、実施例2のcBN焼結体工具に対し、金属層を被覆していないcBN粒子を用いたことを除いては、実施例2と同一の方法によって、比較例3のcBN焼結体工具を作製した。
【0042】
<実施例8>
以下のようにして、cBN焼結体工具を作製した。まず、平均粒子径2μmのcBN粒子に対し、RFスパッタリングPVD装置を用いて、15質量%のTiAlからなる金属層を被覆した。次に、平均粒子径1.5μmのTiC粉末と平均粒子径3μmのAl粉末とを質量比で、TiC:Al=95:5となるように混合し、真空中で1200℃、30分間熱処理して化合物を得た。この化合物を直径6mmの超硬合金製ボールメディアを用いてボールミル粉砕法により均一に粉砕し、結合相を構成する原料粉末を得た。
【0043】
次に、表1の「cBN含有率」に示す組成となるように、金属層で被覆したcBN粒子と、被覆していないcBN粒子と、結合相を構成する原料粉末とを質量比で、12:50:38となるように配合し、直径3mmの窒化硼素製ボールメディアを用いてボールミル混合法により均一に混合した。そして、これらの混合粉末を超硬合金製支持板に積層して、Mo製カプセルに充填後、超高圧装置を用いて、圧力5.5GPa、温度1400℃で30分間焼結することにより、cBN焼結体を得た。
【0044】
<実施例9〜12>
実施例8のcBN焼結体工具に対し、金属層で被覆したcBN粒子と、被覆していないcBN粒子との混合比を表2のように変えたことが異なる他は、実施例8と同様の方法により実施例9〜12のcBN焼結体工具を作製した。このようにcBN粒子の混合比を変えることにより、後述の表3の「第2成分含有率」および「占有率」に示すように、実施例9〜12のcBN焼結体の第2成分の体積比および占有率が調整された。
【0045】
このようにして作製された各実施例のcBN焼結体工具は、立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体を少なくとも刃先に有するものであって、立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素粒子を40〜70体積%含み、該結合相は、第1成分と第2成分とを含み、第1成分は、TiCであり、第2成分は、TiB
2およびAlB
2のいずれか一方または両方であり、第1成分の(200)面のX線回折強度をI
1、第2成分の(101)面のX線回折強度をI
2とする場合、I
1は、立方晶窒化硼素焼結体において立方晶窒化硼素粒子を除く全成分のX線回折強度中最大であり、かつ0.01≦I
2/I
1≦0.1を満たすものである。
【0046】
<比較例5>
市販されているcBN焼結体(製品名:BX930(株式会社タンガロイ製))を用いた。
【0047】
<比較例6>
市販されているcBN焼結体(製品名:MB710(三菱マテリアル株式会社製))を用いた。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
<cBN焼結体の評価>
各実施例および各比較例のcBN焼結体に対し、「X線回折強度の比I
2/I
1」、「cBN含有率」、「占有率」、および「cBN焼結体を構成する化合物」を以下のようにして算出した。
【0052】
(X線回折強度の比I
2/I
1)
各実施例および各比較例のcBN焼結体に対し、X線回折装置(製品名:SmartLab−2D−PILATUS(株式会社リガク製))を用いて、X線回折測定を行なうことにより、第1成分の(200)面のX線回折強度I
1、および第2成分の(101)面のX線回折強度I
2を測定した。そして、これらの比I
2/I
1を表1および表3の「I
2/I
1」の欄に示した。
【0053】
(cBN含有率)
表1および表3の「cBN含有率」は、cBN焼結体に含まれるcBN粒子の体積比を示すものであり、以下のようにして算出した。まず、各実施例および各比較例で作製されたcBN焼結体を鏡面研磨し、任意の領域のcBN焼結体組織を電子顕微鏡にて5000倍で反射電子像を撮影したところ、黒色領域と灰色領域と白色領域が観察された。その観察画像を付属のEDX(エネルギー分散型X線分析)で観察することにより、黒色領域はcBN粒子、灰色領域と白色領域は結合相であることを推定した。
【0054】
次に、上記で撮影された5000倍の写真に対し画像処理ソフトを用いて2値化処理を施し、同写真のcBN粒子が占める領域(黒色領域)の合計面積を算出し、その写真中のcBN焼結体に占める黒色領域の割合の百分率を、cBN粒子の体積%として表1および表3に記載した。
【0055】
(占有率)
表3の「占有率」は、立方晶窒化硼素粒子の表面に占める第2成分の割合を示すものであり、上記と同様の方法で撮影した10000倍の観察画像を用いて、以下のように算出した。まず、1μm以上の粒子径のcBN粒子を20個選定し、その外周の総和を算出した。次に、cBN粒子の外周のうち、第2成分と接触している部分の長さの総和を算出した。そして、第2成分と接触している部分の長さの総和を、cBN粒子の外周の総和で除することにより、cBN粒子の表面に占める第2成分の占有率(%)を算出した。この結果を表3に示す。
【0056】
ちなみに、上記の10000倍の観察画像において、cBN粒子の体積比が高いcBN焼結体は、1枚の観察画像で10個以上のcBN粒子が観察され、cBN粒子の体積比が低いcBN焼結体は、1枚の観察画像から5個以下のcBN粒子が観察されたが、いずれの実施例および比較例においても一律に20個の1μm以上の粒子径のcBN粒子を対象に占有率を算出できるように、複数枚の観察画像を準備した。
【0057】
(cBN焼結体を構成する化合物)
各実施例および各比較例のcBN焼結体を構成する化合物は、cBN焼結体を鏡面研磨した面の任意の領域を電子顕微鏡にて50000倍で写真撮影し、付属のEDXにより、各種元素の重なり状態とX線回折測定の化合物同定結果に基づいて推定した。このようにして測定したEDXの組成分析の結果を表1および表3の「cBN焼結体を構成する化合物」の欄に示した。
【0058】
<切削試験>
超硬合金製の基材として、形状がISO CNMA120408である超硬合金(K10相当)を準備し、その刃先に各実施例および各比較例の立方晶窒化硼素焼結体(形状:頂角が80°でありそれを挟む両辺が各2.5mmの二等辺三角形を底面とする厚みが2mmの三角柱状のもの)を、Ti−Zr−Cuからなるロウ材を用いることにより接合した。
【0059】
実施例1〜7および比較例1〜4においては、下記の切削試験1の条件で損傷幅が0.2mmを超えるまで切削加工を行なった。また、実施例8〜12および比較例5、6においては、下記の切削試験2の条件で損傷幅が0.2mmを超えるまで切削加工を行なった。そして、切削試験1および2のいずれにおいても、損傷幅が0.2mmを超えた時点を工具寿命とし、それまでの切削距離(km)を表1および表3の「工具寿命」の欄に示した。なお、損傷幅とは、摩耗幅または欠損幅を意味し、その長さが長いものほど、工具寿命が長いことを示している。また、工具寿命に至ったときの損傷形態(「摩耗」または「欠損」のいずれか)を表1および表3の「損傷形態」の欄に示した。
【0060】
(切削試験1)
被削材 :FCD450(硬度:160HB、外周部にV溝が付いた丸棒の外形切削)
切削条件:切削速度 Vc=400m/min.
送り量 f=0.2mm/rev.
切り込み量 a
p=0.2mm
湿式切削
(切削試験2)
被削材 :FCD700(硬度:260HB、外周部にV溝が付いた丸棒の外形切削)
切削条件:切削速度 Vc=400m/min.
送り量 f=0.2mm/rev.
切り込み量 a
p=0.2mm
湿式切削
表1および表3の「工具寿命」の結果から明らかなように、実施例1〜12の本発明に係る立方晶窒化硼素焼結体工具は、比較例1〜6の立方晶窒化硼素焼結体工具に比し、工具寿命を長寿命化したものであることが明らかである。
【0061】
実施例1〜12において、工具寿命が向上した理由は、主として第1成分の(200)面のX線回折強度I
1、および第2成分の(101)面のX線回折強度I
2との比I
2/I
1が0.01以上0.1以下であったことにより、耐熱性および耐欠損性を高度に両立したことによるものと考えられる。
【0062】
比較例1のcBN焼結体が欠損によって損傷した理由は、cBN粒子の含有率が本発明の規定する下限値(30体積%)を大幅に下回る10体積%であったことによるものと考えられる。比較例2において、工具寿命が短かった理由は、cBN粒子の含有率が本発明の規定する上限値(70体積%)を上回る85体積%であったことによるものと考えられる。
【0063】
比較例3において、欠損によって損傷した理由は、X線回折強度の回折ピーク比I
2/I
1が本発明の規定する下限値(0.01)を下回る0であったことによるものと考えられる。また、比較例4において、工具寿命が短かった理由は、X線回折強度の回折ピーク比I
2/I
1が本発明の規定する上限値(0.1)を上回る0.42であったことによるものと考えられる。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0065】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。