(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の制御方法によれば、減速中において車両用発電機の発電電圧が上昇されており減速エネルギを効率よく電力に変換してバッテリに供給することができる。しかしながら、車両においては、走行中においても効率よくバッテリに電力を供給することが求められている。特に、走行中においてはエンジンの燃費性能を確保しつつ車両用発電機を駆動させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、エンジンの燃費性能を確保しつつより効率よくバッテリに電力を供給することのできる車両用発電機の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、エンジンの駆動軸に接続されて当該エンジンにより駆動されることでバッテリを充電する車両用発電機の制御方法であって、前記バッテリに流れる電流を検出し、エンジンへの燃料供給が停止している場合には、前記車両用発電機の発電出力を最大とする一方、エンジンへの燃料供給が実施されている場合には、前記検出されたバッテリに流れる電流が前記エンジンの負荷とバッテリの残量とに応じて予め設定された目標値となるように前記車両用発電機の発電出力を制御
するとともに、エンジンの負荷が低く、かつ、バッテリの残量が高い第1運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに流れる電流が放電電流となるように設定し、前記第1運転領域よりもエンジンの負荷が高い側およびバッテリの残量が少ない側に設定された第2運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに電流が流れなくなるように設定し、前記第2運転領域よりもエンジンの負荷が高い側およびバッテリの残量が少ない側に設定された第3運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに流れる電流が充電電流となるように設定し、エンジンへの燃料供給が停止している場合には、前記バッテリに流れる電流が充電電流となり、かつ、当該電流が前記第3運転領域においてバッテリに流れる電流よりも大きい電流となるように前記車両用発電機の発電出力を制御することを特徴とする車両用発電機の制御方法を提供する(請求項1)。
【0009】
この方法では、エンジンの燃費性能がより高い高負荷領域ほど発電機の発電出力が高められており、所定の発電出力を得るためにエンジンで消費される燃料量を少なく抑えることができる。しかも、エンジンへの燃料供給が停止している状態ではエンジンの負荷は低いが、この燃料供給停止時において、車両用発電機の発電出力を最大としており、車輪からエンジンに加えられる減速エネルギを効率よく車両用発電機にて電力に変換することができる。このように、この方法によれば、エンジンの燃費性能を維持しつつ車両用発電機によりバッテリに効率よく電力を供給することができる。
【0011】
しかも、この方法によれば、バッテリに流れる電流すなわち車両用発電機からバッテリへ供給される電流とバッテリから各種電気機器に供給される電流との差が好適な状態に制御されてバッテリの充放電状態がより適切な状態とされるため、バッテリに効率よく電力を供給しつつバッテリの劣化を抑制することができる。
特に、この方法では、第2運転領域においてバッテリに電流が流れないよう、すなわち、車両用発電機からバッテリに流れる電流とバッテリから電機機器に流れる電流とが等しくなるよう制御されており、バッテリの充放電回数を減らすことができる。そのため、バッテリの劣化をより確実に抑えることができる。
【0013】
さらに、この方法では、燃費性能の高い高負荷領域およびより早期にバッテリを充電する必要のあるバッテリ残量の少ない第3運転領域ではバッテリに流れる電流を充電電流としてバッテリから電機機器に流出する電力よりも高い電力をバッテリに供給する一方、それ以外の第1運転領域および第2運転領域ではバッテリへの電力供給量を小さく抑えており、バッテリ残量を適切な量に維持しつつ効率よくバッテリを充電させることができる。
【0016】
また、本発明は、エンジンの駆動軸に接続されて当該エンジンにより駆動されることでバッテリを充電する車両用発電機の発電制御装置であって、エンジンへの燃料供給が停止しているかどうかを判断する燃料供給状況判断手段と、エンジンの負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、前記車両用発電機の発電出力を制御する発電電圧制御手段とを備え、前記発電電圧制御手段は、エンジンへの燃料供給が停止している場合には、前記車両用発電機の発電出力を最大とする一方、エンジンへの燃料供給が実施されている場合には、前記検出されたバッテリに流れる電流が前記エンジンの負荷とバッテリの残量とに応じて予め設定された目標値となるように前記車両用発電機の発電出力を制御
するとともに、エンジンの負荷が低く、かつ、バッテリの残量が高い第1運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに流れる電流が放電電流となるように設定し、前記第1運転領域よりもエンジンの負荷が高い側およびバッテリの残量が少ない側に設定された第2運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに電流が流れなくなるように設定し、前記第2運転領域よりもエンジンの負荷が高い側およびバッテリの残量が少ない側に設定された第3運転領域では、前記発電出力の目標値を、前記バッテリに流れる電流が充電電流となるように設定し、エンジンへの燃料供給が停止している場合には、前記バッテリに流れる電流が充電電流となり、かつ、当該電流が前記第3運転領域においてバッテリに流れる電流よりも大きい電流となるように前記車両用発電機の発電出力を制御することを特徴とする車両用発電機の発電制御装置を提供する(請求項
2)。
【0017】
この装置によれば、エンジンの燃費性能がより高い高負荷領域ほど発電機の発電出力が高められており、所定の発電出力を得るためにエンジンで消費される燃料量を少なく抑えることができるとともに、エンジンへの燃料供給停止時には車両用発電機の発電出力が最
大とされており、減速エネルギを効率よく電力に変換することができ、車両の燃費性能を維持しつつバッテリに効率よく電力を供給することができる。
特に、この装置では、第2運転領域においてバッテリに流れる電流が0となるようにして、バッテリに電流が流れないよう、すなわち、車両用発電機からバッテリに流れる電流とバッテリから電機機器に流れる電流とが等しくなるよう制御されており、バッテリの充放電回数を減らすことができる。そのため、バッテリの劣化をより確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、エンジンの燃費性能を確保しつつより効率よくバッテリに電力を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用発電機の制御装置を含む車両の電力系統を概略的に示した図である。
【0022】
図1に示すように、車両には、燃料供給を受けて駆動するエンジン14と、発電機(車両用発電機)10と、バッテリ16と、CU(コントロールユニット)18と、バッテリ監視装置12とが設けられている。
【0023】
前記発電機10は、エンジン14のクランクシャフト(駆動軸)15にベルト12を介して連結されている。この発電機10は、エンジン14に駆動される、すなわち、前記エンジン14のクランクシャフト15が回転するのに伴って回転することで、電力を発生させて前記バッテリ16に電力を供給する。バッテリ16には、種々の電気機器で構成される電気負荷22a〜22cが接続されており、これら電気負荷22a〜22cはバッテリ16から電流の供給を受けて作動する。
【0024】
前記CU18は、エンジン14や発電機10を制御するためものである。このCU18は、アクセルペダルの踏込量に応じてエンジン14に所定量の燃料を供給する制御等を行う。例えば、アクセルペダルの踏込量が0になるとエンジン14への燃料供給を停止させる。また、このCU18は、後述するように、エンジン14の運転状態およびバッテリ16の残量に応じて発電機10の発電出力を変更する。このように、このCU18は発電電圧制御手段として機能する。CU18には、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル踏込量センサ50およびエンジン14の回転数を検出するエンジン回転数センサ52等の検出値が入力されている。
【0025】
前記バッテリ監視装置12は、バッテリ16の充放電状態等を監視するためのものである。このバッテリ監視装置12は、バッテリ16の電圧を検出する電圧センサ30と、バッテリ16の温度を検出する温度センサ32と、バッテリ16に流れる電流を検出する電流センサ34と、電流センサ34で検出された電流値に基づいてバッテリ16の残量であるSOCを検出するSOC検出部36と、各センサにより検出された値や前記SOC検出部36で検出されたSOCの値を記憶する記憶部38とを有している。
【0026】
前記電圧センサ30や温度センサ32は、バッテリ16の劣化を判定する理由などの目的で使用される。劣化の判定は、前記CU18が行う。このCU18は、記憶部38に記憶されている電圧センサ30や温度センサ32での検出値に基づいて、バッテリ16の劣化の進み具合や劣化の程度を確認し、その確認結果に基づいてバッテリ16の劣化判定を実行する。
【0027】
前記SOC検出部36では、例えば、前記電流センサ30により検出されたバッテリ16に流れる電流に基づいてSOCが検出される。具体的には、このSOC検出部35では、電流センサ34が所定量を超える電流の変化を検出したときに、この変化直前の電流値と前回の変化時からの経過時間とに基づいてバッテリ16での消費電力が算出される。そして、前回の変化時に記憶部38に記憶されたSOCの値と前記算出した消費電力とに基づいて現在のSOCの値が検出される。このSOC検出部36で検出されたSOCの値は、前記CU18に送信され、CU18における発電機10の制御に利用される。
【0028】
次に、前記CU18で実施される発電機10の制御方法の
参考例について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0029】
本方法では、発電機10は、その発電電圧が、前記SOC検出部36で検出された現在のSOCの値およびエンジン14の負荷に応じて予め設定された値となるように制御されるとともに、エンジン14への燃料供給が停止されている場合には、その発電電圧が最大電圧となるように制御される。
【0030】
前記CU18には、
図2に示されるマップが記憶されている。このマップは、発電機10の発電電圧の設定値を示したものであり、横軸はSOC、縦軸はエンジン14の負荷である。このマップには、SOCおよびエンジン14の負荷に応じてA1〜A4の領域が区画されており、領域A1〜A4毎に発電機10の発電電圧が設定されている。前記CU18は、エンジン14に燃料が供給されている場合に、現在の運転領域が前記領域A1〜A4のいずれの領域であるかを判定して、発電機10の発電電圧をその領域に対して設定された値に変更する。
【0031】
前記領域A1は、SOCの値が予め設定された基準値X1より小さい領域である。この基準値X1は、例えば80%(バッテリ16の満充電状態に対する割合)である。この領域A1では、発電機10の発電電圧Vregは最大電圧Vmaxに設定されている。この最大電圧Vmaxは、例えば14.8Vである。
【0032】
前記領域A2は、SOCが前記基準値X1以上かつ予め設定された基準値X2未満である領域と、SOCが基準値X1以上であってエンジン14の負荷が予め設定された基準値Y1より高い高負荷領域とを含む領域である。前記基準値X2は例えば90%であり、Y1は例えば50%(全負荷に対する割合)である。この領域A2では、発電機10の発電電圧Vregは標準電圧Vstdに設定されている。この標準電圧Vstdは前記最大電圧Vmaxよりも小さい値であり、例えば13.8Vである。
【0033】
前記領域A3は、SOCが前記基準値X2以上かつ予め設定された基準値X3未満である領域と、SOCが基準値X2以上であってエンジン14の負荷が予め設定された基準値Y2以上かつ前記基準値Y1未満の中負荷領域とを含む領域である。前記基準値X3は前記基準値X2よりも大きい値であり例えば95%であり、Y2は前記基準値Y1よりも小さい値であり例えば20%である。この領域A3では、発電機10の発電電圧Vregは低電圧Vlowに設定されている。この低電圧Vlowは前記標準電圧Vstdよりも小さい値であり、例えば12.5Vである。
【0034】
前記領域A4は、SOCが前記基準値X3以上でエンジン14の負荷が前記基準値Y2未満の低負荷領域である。この領域A4では、発電機10の発電電圧Vregは最低電圧V0に設定されている。この最低電圧V0は前記低電圧Vlowよりも小さい値であり、
この参考例では、11Vに設定されており、この領域A4では発電機10による発電が停止される。
【0035】
前記発電機10の発電電圧の変更手順を
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、CU18は、ステップS1において、前記SOC検出部36で検出された現在のSOCの値を読み込む。次に、ステップS2において、前記アクセル踏込量センサ50で検出されたアクセルペダルの踏込量に基づいてエンジン14の負荷を検出する。このように、CU18は、請求項におけるエンジン負荷検出手段として機能する。
【0037】
次に、CU18は、ステップS3において、エンジン14への燃料供給が停止されているかどうかを判定する。このように、CU18は、請求項における燃料供給状況判定手段としても機能する。このステップS3での判定がYESの場合、すなわち、エンジン14への燃料供給が停止されている場合には、ステップS5に進み、発電機10の発電電圧Vregを最大電圧Vmaxに設定する。
【0038】
車両の減速時であってエンジン14への燃料供給が停止されている場合は、車輪からエンジン14に逆駆動トルクが加えられる。そこで、本方法では、この逆駆動トルクにより発電機10を最大電圧で発電させることで、減速エネルギを無駄なく利用する。
【0039】
前記ステップS3での判定がNOの場合であってエンジン14に燃料供給がなされている場合には、ステップS4に進み、SOCの値が基準値X1より小さいかどうか、すなわち、現在の運転領域が前記領域A1であるかどうかを判定する。
【0040】
SOCの値が基準値X1より小さい領域A1は早急にバッテリ16を充電する必要がある領域である。そこで、ステップS4でYESと判定されて現在の運転領域が領域A1である場合には、ステップS5に進み、発電機10の発電電圧Vregを最大電圧Vmaxとして、発電機10によりバッテリ16を急速に充電する。
【0041】
前記ステップS4での判定がNOの場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、SOCが基準値X2より小さいかどうかを判定する。このステップS4での判定がYESの場合はステップS15に進む。また、前記ステップS13においてNOと判定された場合であっても、その後に進むステップS14においてエンジン14の負荷が基準値Y1よりも高いと判定された場合にはステップS15に進む。このように、SOCが基準値X1以上X2未満である場合およびエンジン14の負荷がY1より高い場合であって、現在の運転領域が前記領域A2にある場合には、ステップS15に進む。
【0042】
ステップS15では、発電機10の発電電圧を前記標準電圧Vstdに設定する。この標準電圧Vstdは、前述のように、中・低負荷領域A3,A4に対して設定された発電電圧Vlow、V0よりも高い値に設定されている。ここで、エンジン14の燃費性能は高負荷ほど高い。そのため、高負荷領域では、発電機10を駆動するためにエンジン14で消費される燃料量を小さく抑えて効率よく発電機10を駆動させることができる。従って、この高負荷領域A2において発電機10の発電電圧を比較的高い標準電圧Vstdとすることで、燃料性能を高く維持しつつ発電機10により効率よくバッテリ16に電力を供給することができる。また、この標準電圧Vstdはバッテリ16を十分に充電可能な程度に高い値に設定されている。従って、SOCが基準値X2未満の比較的小さい領域A2においても発電機10によりバッテリ16が適切に充電される。
【0043】
一方、前記ステップS14においてNOと判定された場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、SOCが基準値X3より小さいかどうかを判定する。このステップS4での判定がYESの場合はステップS25に進む。また、前記ステップS23においてNOと判定された場合であっても、その後に進むステップS24においてエンジン14の基準値Y2よりも高いと判定された場合にはステップS25に進む。このように、SOCが基準値X2以上X3未満である場合およびエンジン14の負荷がY2以上Y1未満の場合であって、現在の運転領域が前記領域A3にある場合には、ステップS25に進む。
【0044】
ステップS25では、発電機10の発電電圧を前記低電圧Vlowに設定する。前述のように、中負荷領域では、エンジン14の燃費性能は十分に高くない。そこで、この中負荷領域A3では、発電機10の発電電圧を比較的低い低電圧Vlowとすることで、エンジン14の燃費性能の悪化を抑制する。また、領域A3はSOCが比較的多い領域である。従って、この領域A3では、発電機10の発電電圧を低くしても、バッテリ16の残量を適切な状態に維持することができる。
【0045】
一方、前記ステップS24においてNOと判定された場合、すなわち、SOCが基準値X3以上である場合およびエンジン14の負荷がY2未満の場合であって、現在の運転領域が前記領域A4にある場合には、ステップS30に進む。
【0046】
ステップS30では、発電機10の発電電圧を最低電圧V0とする。前述のように、この最低電圧V0は0に設定されており、ステップS30では発電機10による発電が停止される。この低負荷領域では、エンジン14の燃費性能が低い。そこで、この低負荷領域A4では、発電機10の発電を停止させてエンジン14の燃費性能の悪化を抑制する。また、この領域A4はSOCが十分に多い領域である。従って、この領域A4では、発電機10の発電を停止してもバッテリ16の残量が適切な状態に維持することができる。
【0047】
このように、本方法では、CU18により、検出された現在のSOCの値が小さくなるほど発電機10の発電電圧が高められるとともにエンジン14の負荷が高くなるほど発電機10の発電電圧が高められており、SOCを好適な状態に維持することができるとともに、燃費性能の高い高負荷領域に集中して発電機10を駆動させることで効率よくバッテリ16に電力を供給することができる。しかも、エンジン14への燃料供給が停止している場合には、発電機10の発電電圧を最大電圧としており、減速エネルギを無駄なく電力に変換することができる。
【0048】
なお、前記発電機10の発電電圧を変更する具体的方法としては、発電機10に設けられたレギュレータ内のフィールドコイルに流す電流を変更する方法が挙げられる。
【0049】
本方法を用いた車両の走行時における発電機10の発電電圧Vregの変化を
図4のタイムチャートに示す。この
図4には、発電機10の発電電圧Vregとともに、車速とエンジン14の負荷とを表している。なお、ここでは、SOCが十分に高い値に維持されており、エンジン14の負荷の変化のみに応じて発電機10の発電電圧が変化する場合について示す。
【0050】
時刻t1において車両は走行を開始する。走行開始後、加速されることにより、時刻t2までの間、エンジン14の負荷は基準値Y1以上の高い値となる。すなわち、運転領域は前記領域A2となる。これに伴い、発電機10の発電電圧Vregは前記標準電圧Vstdに制御され、効率よく発電機10が駆動される。車速がある程度高くなり定速走行に移るとエンジン14の負荷は低下し、時刻t2からt3までの間、エンジン14の運転領域は中負荷領域すなわちエンジン14の負荷が基準値Y2以上Y1未満の領域A3内となる。これに伴い、発電機10の発電電圧Vregは前記低電圧Vlowに制御される。そして、時刻t3から後、車両が減速を開始してエンジン14への燃料供給が停止されると発電機10の発電電圧は最大電圧Vmaxとされ、減速エネルギが電力に効率よく変換される。ここで、エンジン14の回転数が所定値以下まで低下すると、エンジン14への燃料供給が再開される。この状態では、エンジン14の負荷は非常に小さく前記基準値Y2未満であり運転領域は前記領域A4となる。従って、時刻t4からt5までの減速あるいはアイドル運転中は、発電機10の発電は停止されて燃費性能の悪化が抑制される。
【0051】
時刻t5から時刻t6までの間は、エンジン14は停止されており、これに伴い発電機10の駆動も停止している。その後、車両の走行が開始すると、前記時刻t1からt5と同様に発電機10は駆動される。すなわち、時刻t6から時刻t7までの加速時であってエンジン14の負荷が高い状態では発電機10の発電電圧Vregは前記標準電圧Vstdに制御され、時刻t7からt8までの間であってエンジン14の負荷が中負荷領域となる状態では発電機10の発電電圧Vregは前記低電圧Vlowに制御され、時刻t8から時刻t9までの燃料停止時には発電機10の発電電圧Vregは前記最大電圧Vmaxに制御される。そして、時刻t9からt10までの減速あるいはアイドル運転時であってエンジン14の負荷が低い状態では発電機10の発電が停止される。
【0052】
次に、前記CU18で実施される
本発明に係る前記発電機10の制御方法
の実施形態について、
図5および
図6を用いて説明する。
【0053】
こ
の実施形態に係る制御方法では、前記
参考例と同様に、エンジン14への燃料供給が停止した場合および検出されたSOCの値が前記基準値X1よりも小さい場合にはその発電電圧が最大となるように発電機10が制御される。一方、その他の運転条件では、バッテリ16に流れる電流がSOCおよびエンジン負荷に応じて予め設定された目標値となるように発電機10の発電電圧が制御される。前記バッテリ16に流れる電流とは、発電機10からバッテリ16に供給される電流(以下、供給電流という)とバッテリ16から各電気負荷22a〜22cに流れる電流(以下、消費電流という)との差であり、ここでは、前記供給電流と消費電流とが等しくバッテリ16に流れる電流が0となる状態に対して、前記供給電流よりも消費電流の方が小さくバッテリ16に流れる電流が充電電流となる状態をバッテリ16にプラス側の電流が流れているとし、前記供給電流よりも消費電流の方が大きくバッテリ16に流れる電流が放電電流となる状態をバッテリ16にマイナス側の電流が流れているとする。なお、こ
の実施形態に係る方法を用いる装置では、前記バッテリ16に流れる電流を検出する電流センサ34の代わりに、前記供給電流を検出する供給電流センサ34aと、前記消費電流を検出する消費電流センサ34bとを設ける。
【0054】
前記CU18には、
図5に示されるマップが記憶されている。このマップは、前記バッテリ16に流れる電流の目標値を示したものであり、横軸はSOC、縦軸はエンジン14の負荷である。このマップには、SOCおよびエンジン14の負荷に応じてB1〜B5の領域が区画されている。これらの領域のうちSOCが前記基準値X1より小さい領域B1では、
参考例と同様に、発電機10の発電電圧が最大電圧とされる。一方、領域B2〜B5では、領域毎にバッテリ16に流れる電流の目標値が設定されており、前記CU18は、現在のエンジン14の負荷および前記SOC検出部36で検出されたSOCの値に応じて、現在の運転領域が領域B2〜B5のいずれの領域であるかを判定し、バッテリ16に流れる電流がその運転領域に応じて設定された目標値となるように発電機10の発電出力、具体的には、発電電圧を変更する。
【0055】
前記領域B2(請求項における第3運転領域)は、SOCの値が前記基準値X1以上の領域のうち、SOCの値が大きくなるほど高負荷側に向かうラインL1よりもSOCが小さく、かつ、エンジン14の負荷が高い領域である。この領域B2では、エンジン14の負荷が高く発電機10を効率よく発電させることができる。また、バッテリ16を比較的早期に充電させる必要がある。そこで、この領域B2では、バッテリ16に流れる電流の目標値を0より大きい値(例えば30A)とし、バッテリ16に流れる電流が充電電流となりバッテリ16が充電されるように発電機10の発電出力を制御する。
【0056】
前記領域B3(請求項における第2運転領域)は、前記ラインL1と、このラインL1よりもSOCが大きい側およびエンジン14の負荷が低い側に設定されてラインL1と同様にSOCの値が大きくなるほど高負荷側に向かうラインL2との間の領域であり、領域B2よりもSOCが大きくエンジン14の負荷が低い領域である。この領域B3では、エンジン14の負荷が十分に高くなく発電機10の駆動効率が高くない。また、SOCが比較的大きくバッテリ16を早期に充電させる必要がない。そこで、この領域B3では、バッテリ16に流れる電流の目標値を0とし、バッテリ16に電流が流れないように発電機10の発電出力を制御する。すなわち、前記消費電流と発電電流とを同一とし、バッテリ16が充放電されないようにする。
【0057】
前記領域B4(請求項における第1運転領域)は、前記ラインL2と、このラインL2よりもSOCが大きい側およびエンジン14の負荷が低い側に設定されてラインL2と同様にSOCの値が大きくなるほど高負荷側に向かうラインL3との間の領域であり、領域B3よりもSOCが大きくエンジン14の負荷が低い領域である。この領域B3では、エンジン14の負荷が低く発電機10の駆動効率が低い。また、SOCが十分に大きい。そこで、この領域B3では、バッテリ16に流れる電流の目標値を0より小さい値(例えば−10A)とし、バッテリ16に流れる電流が放電電流となりバッテリ16から放電されるように発電機10の発電出力を制御する。
【0058】
前記領域B5は、前記ラインL3よりもSOCが大きくエンジン14の負荷が低い領域である。この領域B5では、エンジン14の負荷が低く発電機10の駆動効率が低い。また、SOCが十分に大きいため発電機10の発電を停止してもバッテリ16から各電機負荷に十分な電力を供給することができる。そこで、この領域B5では、発電機10の発電を停止させて、エンジン14の燃費性能の悪化を抑制する。なお、発電機10の発電停止に伴い、バッテリ16に流れる電流は放電電流となる。
【0059】
CU18における発電機10の具体的な制御手順を
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
まず、ステップS101およびステップS102において、CU18は、
参考例におけるステップS1およびステップS2と同様に前記SOC検出部28で検出された現在のSOCの値を読み込むとともに、前記アクセル踏込量センサ50で検出されたアクセルペダルの踏込量に基づいてエンジン14の負荷を検出する。
【0061】
次に、ステップS103において、前記供給電流センサ34aで検出された供給電流すなわち発電機10からバッテリ16に供給されている電流と、消費電流センサ34aで検出された消費電流すなわちバッテリ16から各電気負荷22a〜22cに供給されている電流と、前記電圧センサ50で検出された現在のバッテリ16の電圧を読み込む。
【0062】
次に、ステップS104において、エンジン14への燃料供給が停止されているかどうかを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、エンジン14への燃料供給が停止されている場合には、ステップS106に進む。一方、前記ステップS104での判定がNOの場合であってエンジン14に燃料供給がなされている場合には、ステップS105に進み、前記検出されたSOCの値が予め設定された基準値X1より小さいかどうか、すなわち、現在の運転領域が前記領域B1であるかどうかを判定する。そして、この判定がYESの場合にも、ステップS106に進む。
【0063】
ステップS106では、発電機10の発電電圧を最大電圧Vmaxに設定する。これにより、バッテリ16を急速に充電してバッテリ16の残量を適切な状態に維持する。また、減速エネルギを効率よく電力に変換する。
【0064】
次に、ステップS107で、前記電圧センサ50により検出された現在のバッテリ16の電圧が前記発電機10の発電電圧の目標値である最大電圧より大きいかどうかを判定する。この判定がYESの場合は、バッテリ16が過充電されないように、ステップS109にて発電機10の発電電圧を最大電圧よりも低い電圧とする。一方、この判定がNOの場合は、ステップS110にて発電機10の発電電圧を最大電圧とする。
【0065】
一方、前記ステップS105での判定がNOの場合には、ステップS121に進む。ステップS121では、現在のSOCとエンジン14の負荷とに応じて
図5に示すマップからバッテリ16に流れる電流の目標値を索引する。すなわち、現在の運転領域が前記領域B2〜B5のいずれであるかを判定して、その領域に応じた目標値を読み込む。
【0066】
次に、ステップS122にて、前記索引されたバッテリ16に流れる電流の目標値と前記ステップS103で検出された消費電流との差から、供給電流すなわち発電機10からバッテリ16に供給する電流の目標値を算出する。例えば、運転領域が前記領域B3であってバッテリ16に流れる電流の目標値が0の場合は、供給電流の目標値は消費電流の値となる。また、運転領域が前記領域B2であってバッテリ16に流れる電流の目標値が0より大きい場合は、供給電流の目標値は消費電流よりも大きい値となる。一方、運転領域が前記領域B4であってバッテリ16に流れる電流の目標値が0より小さい場合は、供給電流の目標値は消費電流よりも小さい値となる。
【0067】
次に、ステップS123にて、前記供給電流が前記ステップS122で算出された目標値となるような発電機10の発電電圧のベース値を算出する。具体的には、CU18には、供給電流に応じた発電電圧が予めマップで記憶されており、このマップから前記ベース値が索引される。
【0068】
ここで、発電機10の発電電圧を前記ベース値に設定すれば、供給電流ひいてはバッテリ16に流れる電流はそれぞれ目標値付近となる。しかしながら、本実施形態では、より精度良くこれら電流を目標値に近づけるために、ステップS124〜S126においてフィードバック制御を行なう。
【0069】
すなわち、ステップS124にて、現在の供給電流がその目標値よりも大きいかどうかを判定する。そして、この判定がYESの場合には、ステップS125にて発電機10の発電電圧の補正量を減量する。一方、この判定がNOの場合には、ステップS126にて発電機10の発電電圧の補正量を増量する。そして、ステップS127にて、前記ベース値をこの補正量で補正した値、具体的には、ベース値に補正量を足した値を発電機10の発電電圧に設定する。これにより、前記供給電流ひいてはバッテリ16に流れる電流はそれぞれ目標値に制御され、各運転領域に応じて適切な状態に制御される。
【0070】
なお、本実施形態では、さらに、ステップS127の次にステップS128にて前記ステップS103で検出されたバッテリ16の電圧が予め設定された上限値より大きいかどうかを判定する。この判定がYESの場合は、バッテリ16が過充電となるおそれがあるため、ステップS129にて前記発電機10の発電電圧を所定量減量する。
【0071】
このように、
本実施形態に係る方法では、
参考例と同様に、SOCの値が小さくなるほど供給電流が大きくされるとともにエンジン14の負荷が高くなるほど供給電流が高められており、SOCを好適な状態に維持することができるとともに、効率よくバッテリ16に電力を供給することができる。しかも、この方法では、バッテリ16に流れる電流が領域毎に好適な値に制御されるため、バッテリ16の充放電の変化が小さく抑えられてバッテリ16の劣化を抑制することができる。特に、領域B3では、バッテリ16に電流が流れないように制御されており、バッテリ16の充放電が停止されることでバッテリ16の劣化がより一層抑制される。
【0072】
本実施形態に係る方法を用いた車両の走行時におけるバッテリ16に流れる電流および発電機10の発電電圧の変化を
図7のタイムチャートに示す。この
図7には、車速とエンジン14の負荷とSOCを合わせて表している。
【0073】
時刻t11において車両は走行を開始する。走行開始後、加速されることにより、時刻t12までの間は、エンジン14の負荷は高く運転領域は前記領域B2になる。これに伴い、発電機10はバッテリ16に流れる電流が充電電流となるように発電電圧を高めて効率よくバッテリ16を充電する。車速がある程度高くなり定速走行に移ると、エンジン14の負荷は低下し、時刻t12からt13までの間、エンジン14の運転領域は中負荷領域B4に移行する。これに伴い、発電機10はバッテリ16に流れる電流が放電電流となるように発電電圧を小さくする。時刻t13から後、車両が減速を開始しエンジン14への燃料供給が停止されると発電機10の発電電圧は最大電圧とされ、減速エネルギが電力に効率よく変換される。そして、エンジン14の回転数が所定値以下まで低下した時刻t14からt15までの間は、エンジン14の負荷が十分に小さく運転領域は領域B5に移行するため発電機10の発電は停止される。このとき、バッテリ16からは各電気負荷に電流が流れるためバッテリ16に流れる電流は放電電流となる。
【0074】
時刻t15から時刻t16までの間は、エンジン14は停止されており、これに伴い発電機10の駆動も停止している。そのため、この期間はバッテリ16に流れる電流は放電電流となる。その後、車両の走行が開始すると、前記t11からt15とほぼ同様に発電機10は駆動される。すなわち、時刻t16から時刻t17までの加速時であってエンジン14の負荷が高い状態ではバッテリ16に流れる電流は充電電流とされ、時刻t17からt18までの間であってエンジン14の負荷が中負荷領域となる状態ではバッテリ16に流れる電流は放電電流とされ、時刻t18からの燃料停止時には発電機10の発電電圧は最大電圧に制御されてバッテリ16に流れる電流は充電電流となる。
【0075】
ここで、時刻t18からの最大電圧による充電によりSOCが100%すなわちバッテリ16が満充電となると(時刻t19)、バッテリ16には電流は流れず、バッテリ16に流れる電流は0となる。その後、時刻t20において燃料供給が再開されてアイドル運転となると、発電機10の発電は停止される。
【0076】
ここで、前記
参考例において発電機10の発電電圧の設定値を決定する指標およ
び実施形態においてバッテリ16に流れる電流の目標値を決定する指標、すなわち、
図3および
図5の縦軸としてエンジン14の負荷に代えて発電機10の発電燃費率を用いてもよい。この発電燃費率は、エンジン14の燃費率×発電機10の発電効率で算出される値であり、エンジン14の負荷が高くなるほど高くなる。
【0077】
具体的には、
図3および
図5のマップの縦軸を発電機10の発電燃費率としたマップをCU18に記憶させておく。また、前記エンジン14の燃費率は、エンジン14の回転数とエンジン14の負荷とで決定される値であるため、これらエンジン14の回転数とエンジン14の負荷とのマップでエンジン14の燃費率をCU18に記憶させておく。また、発電機10の発電効率は、発電機10の回転数ひいてはエンジン14の回転数で決定される値であるため、このエンジン14の回転数のマップで発電機10の発電機効率をCU18に記憶させておく。そして、エンジン回転数とエンジン14の負荷とに応じてこれらマップからエンジン14の燃費率および発電機10の発電効率を索引して、前記発電機10の発電燃費率を算出し、この発電機10の発電燃費率に応じて設定された発電機10の発電電圧の設定値あるいはバッテリ16に流れる電流の目標値のマップから、この設定値あるいは目標値を索引する。
【0078】
また、前記基準値X1、標準電圧等の具体的な値は前記に限らない。