【実施例】
【0060】
(実施例1)
〈ヨード造影剤を用いた骨髄幹細胞の単離〉
実施例1では、ヨード造影剤としてイオヘキソールを使用し、単核球の分離を試みた。ヒト骨髄液の原液10mlに対して、10U/mlの医療用ヘパリンナトリウム(ノボ・ヘパリンナトリウム:持田製薬[注射用医薬品])を良く混合したものを分離原液として用いた。この骨髄液に医療用生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬[注射用医薬品])を10ml加えることにより、試料溶液としての幹細胞分離用骨髄液を調整した。遠心分離媒体は、医療用造影剤(オムニパーク350:第一三共株式会社[注射用医薬品])を18.68ml、医療用生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬[注射用医薬品])を51.76ml及び医療用蒸留水(大塚蒸留水:大塚製薬[注射用医薬品])を29.56ml混和することにより作成した。作成されたこの遠心分離媒体の比重は1.077、浸透圧(生理食塩液に対する比)は1.0、pHは7.4であった。
【0061】
10mlの遠心分離媒体の上に、液面を乱さないように緩徐に20mlの幹細胞分離用骨髄液を重層した。次いで、20℃において800gで20分間遠心分離を行うことにより、赤血球・顆粒球分画、比重遠心用分離薬剤層、単核球分画(骨髄幹細胞分画)、血小板・血漿分画の各分画に分離することができた。その後、単核球分画(骨髄幹細胞分画)を中心に6mlの骨髄幹細胞液を得た。
【0062】
上記の手法で得られた単核球を含む細胞液は、単核球回収率:約75%、単核球生存率:99%、CD34陽性細胞濃度:約3%、成熟顆粒球除去率:約97%、所要時間29分であった。
【0063】
〈フィコールを用いた骨髄幹細胞の単離〉
一方、対照群として、遠心分離媒体としてフィコールを使用して単核球の分離を試みた。脳梗塞患者に対する自己骨髄幹細胞移植の臨床試験[臨床試験ID番号:日本UMIN000001133、米国NCT01028794]と同様に、遠心分離媒体としてフィコール[GEHealthcare社製:Ficoll-Paque PREMIUM]を用い、その他の条件は上述の〈ヨード造影剤を用いた骨髄幹細胞の単離〉と同様とした。単核球を含む細胞液の分離を行った後、生理食塩水と遠心機を用い、2度洗浄を行うことによりフィコールの除去を行った。
【0064】
上記の手法で得られた単核球を含む細胞液は、単核球回収率:約52%、単核球生存率:98%、CD34陽性細胞濃度:約3%、成熟顆粒球除去率:約96%、所要時間75分であった。
【0065】
〈ヒドロキシルエチルデンプンを用いた骨髄幹細胞の単離〉
更に、対照群として、遠心分離媒体としてヒドロキシルエチルデンプンを使用し単核球の分離を試みた。ヒト骨髄液5mlをヘパリン混和の生理食塩水5mlと混和した。さらに、ヒドロキシルエチルデンプンを最終ヒドロキシルエチルデンプン濃度が1%となるように加え、得られた骨髄液を室温で40分間静置し、赤血球成分を沈降させ上清液を回収した。回収液を、濃縮機セルプロセッサーにセットし、脂肪分、骨片等の微小浮遊物を分離した。次いで、洗浄及び濃縮操作により、7mlの単核球を含む細胞液を得た。
【0066】
上記の手法で得られた単核球を含む細胞液は、単核球回収率:約70%、単核球生存率:98%、CD34陽性細胞濃度:約3%、成熟顆粒球除去率:約52%、所要時間63分であった。
【0067】
(実施例2)
実施例2では、ヒト幹細胞治療薬の効果判定に有効なSCID(SevereCombined Immunodeficiency=重症免疫不全)マウス脳梗塞モデル(左中大脳動脈M1遠位部閉塞モデル)を用いて、実施例1で得られた単核球を含む細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。他の手法との比較検討のため、(i)本発明で分離された細胞液投与群(以下、幹細胞群)、(ii)フィコールによる分離された細胞群(以下、フィコール群)、(iii)ヒドロキシルエチルデンプンにより分離された細胞群(以下、デンプン群)、(iv)生理食塩水投与群(以下、生食群)を設定した。
【0068】
各群6匹の脳梗塞モデルマウスに対し、脳梗塞作成2日後に5x10
5個の細胞(あるいは生理食塩水)を尾静脈より投与し、各細胞投与群の脳神経機能回復促進効果の検証を行った。神経機能回復の評価項目に関しては、細胞投与30日後の大脳皮質神経機能をオープンフィールドテスト(暗条件に対する反応性)で評価し、統計解析は一元配置分散分析法(ポストホックとして生食群を対照としたDunnett法)を用いて行った。オープンフィールドテストの実験装置は、天井部のない立方体のオープンフィールドボックスであった。側面及び床面は厚さ3mmの透明アクリル版製で、内寸は、床部が40×40cm、高さが30cmであった。実験室は防音されており、オープンフィールドボックスには、赤外線センサー(7×7で、床から2cmと4.5cm)がついており、下のセンサーで移動活動量を、上のセンサーで立ち上がり反応を30分間検出し、コンピューターで記録した。マウスは夜行性であり暗条件にすると移動活動量及び立ち上がり反応が通常では増加するが、脳梗塞に起因する大脳皮質機能障害によりその暗条件への反応が減弱・消失する。本試験では、暗条件への反応性を評価することにより脳梗塞後の皮質機能の回復の程度の評価を行った。
図5は、SCIDマウス脳虚血モデルにおける30分間の総活動量(移動活動量+立ち上がり反応)の暗条件に対する反応性(Responseto Darkness)の測定結果である。
図5に示すように、生食群と比し、幹細胞群及びフィコール群では有意な機能回復促進が観察されたが、デンプン群では有意な治療効果が観察されなかった。なお有意確率は5%であった。
【0069】
(実施例3)
実施例3では、ヒト幹細胞治療薬の効果判定に有効なSCID(重症免疫不全)マウス下肢虚血モデル(左大腿動脈閉塞モデル)を用いて、実施例1で得られた単核球を含む細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。他の手法との比較検討のため、(i)本発明で分離された細胞液投与群(以下、幹細胞群)、(ii)フィコールによる分離された細胞群(以下、フィコール群)、(iii)ヒドロキシルエチルデンプンにより分離された細胞群(以下、デンプン群)、(iv)生理食塩水投与群(以下、生食群)を設定した。
【0070】
各群6匹の下肢虚血モデルマウスに対し、下肢虚血作成直後に計1x10
6個の細胞(あるいは生理食塩水)を3か所の大腿部筋肉内に投与し、下肢虚血モデル作成30日後の救肢促進効果の検証を行った。虚血レベルは、0点:正常、1点:軽度の変色、2点:中等度から重度の変色、3点:壊死、4点:離断のようにして評価を行った。統計解析はクラスカル・ワーリス検定を用いて行った。
図6は、SCIDマウス下肢虚血モデルにおける救肢効果の測定結果である。
図6に示すように、生食群と比し、幹細胞群、フィコール群、デンプン群でそれぞれ有意な救肢効果が観察されたが、デンプン群との比較においても、幹細胞群でさらに有意な治療効果が観察された。なお有意確率は5%であった。
【0071】
(実施例4)
〈単核球分離管による骨髄幹細胞の単離〉
遠心分離媒体は、医療用造影剤(オムニパーク350:第一三共株式会社[注射用医薬品])を16.68ml、医療用生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬[注射用医薬品])を51.76ml及び医療用蒸留水(大塚蒸留水:大塚製薬[注射用医薬品])を29.56ml混和することにより作成した。作成された遠心分離媒体の比重は1.077、浸透圧(生理食塩液に対する比)は1.0、pHは7.4であった。そして単核球分離管は
図1に示したものと同様の構成とし、約10mlの遠心分離媒体を単核球分離管100の下チャンバ120に配置した。
【0072】
次に、ヒト骨髄液の原液10mlに対して、10U/mlの医療用ヘパリンナトリウム(ノボ・ヘパリンナトリウム:持田製薬[注射用医薬品])を良く混合したものを分離原液として用いた。この骨髄液に医療用生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬[注射用医薬品])を10ml加えることにより、試料溶液としての幹細胞分離用骨髄液を調整した。
【0073】
そして活栓を閉じた状態にし、注射器を用いて20mlの幹細胞分離用骨髄液を上チャンバ110に注入し、注入後に活栓を開放した。次いで、400gで40分間遠心分離を行い、遠心後に活栓を閉鎖した。その結果、下チャンバ120に赤血球・顆粒球分画及び遠心分離媒体、上チャンバ110には遠心分離媒体、単核球分画(骨髄幹細胞分画)及び血小板・血漿分画の2分画に分離することができた。上層を注射器で採取することにより、単核球分画(骨髄幹細胞分画)を含み、かつ成熟顆粒球をほとんど含まない単核球を含む細胞液を得た。
【0074】
上記の手法にて得られた単核球を含む細胞液は、単核球回収率:約80%、単核球生存率:99%、CD34陽性細胞濃度:約3%、成熟顆粒球除去率:約96%の特性を有するものであった。
【0075】
上記の手法で得られた単核球を含む細胞液の細菌汚染、真菌汚染に関する検討を行った。即ち、10%牛胎児血清入り細胞培養液、CDLP寒天培地及びサブロー寒天培地に各1mlの骨髄幹細胞液を混和あるいは塗布し、37℃で30日間培養を行ったが、細胞及び真菌の増殖は全く観察されなかった。
【0076】
〈脳梗塞動物モデルでの治療効果〉
SCIDマウス脳梗塞モデル(左中大脳動脈M1遠位部閉塞モデル)を用いて、上記の〈単核球分離管による骨髄幹細胞の単離〉で得られた単核球を含む細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。(i)本発明で分離された細胞液投与群(幹細胞群)、及び(ii)生理食塩水投与群(生食群)を設定した。各群6匹の脳梗塞モデルマウスに対し、脳梗塞作成2日後に5x10
5個の細胞(あるいは生理食塩水)を尾静脈より投与し、それぞれ投与群の脳神経機能回復促進効果の検証を行った。神経機能回復の評価項目に関しては、細胞投与30日後の大脳皮質神経機能をオープンフィールドテストで評価し、統計解析はt検定を用いて行った。
図7は、SCIDマウス脳虚血モデルにおける30分間の総活動量(移動活動量+立ち上がり反応)の暗条件に対する反応性の測定結果である。
図7に示すように、生食群と比し、幹細胞群では有意な機能回復促進が観察された。なお有意確率は5%であった。
【0077】
〈下肢虚血動物モデルでの治療効果〉
SCIDマウス下肢虚血モデル(左大腿動脈閉塞モデル)を用いて、上記の〈単核球分離管による骨髄幹細胞の単離〉で得られた骨髄幹細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。(i)本発明で分離された細胞液投与群(幹細胞群)、及び(ii)生理食塩水投与群(生食群)を設定した。各群6匹の下肢虚血モデルマウスに対し、下肢虚血作成直後に計1x10
6個の細胞(あるいは生理食塩水)を3か所の大腿部筋肉内に投与し、下肢虚血モデル作成30日後の救肢促進効果の検証を行った。虚血レベルは、0点:正常、1点:軽度の変色、2点:中等度から重度の変色、3点:壊死、4点:離断のようにして評価を行った。統計解析はマン・ホイットニ検定を用いて行った。
図8は、SCIDマウス下肢虚血モデルにおける救肢効果の測定結果である。
図8に示すように、生食群と比し、幹細胞群で有意な救肢効果が観察された。なお有意確率は5%であった。
【0078】
(実施例5)
〈単核球分離システムの準備〉
実施例5では、
図2に示した単核球分離システムを用いて単核球の単離を試みた。試料溶液バッグ210には予め、10mlの希釈用生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬)及び100単位のヘパリンナトリウム(ノボ・ヘパリンナトリウム)が収納された。また、遠心分離媒体として、造影剤(オムニパーク140:第一三共株式会社)を23.3ml、生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬)を25.9ml及び蒸留水(大塚蒸留水:大塚製薬)を0.8ml混和することにより作成した。作成された遠心分離媒体の比重は1.077、浸透圧(生理食塩液に対する比)は1.0、pHは7.4であった。この約10mlの遠心分離媒体を単核球分離管100の下チャンバ120に予め配置した。エア用バック220には、予め約10mlの無塵無菌空気を入れるとともに、30ml以上の拡張能を持たせた。全てのクランプは閉の状態とした。
【0079】
〈単核球分離システムによる骨髄幹細胞の単離〉
次に、ヒト骨髄液の原液10mlを注射器により試料溶液バッグ210に注入して、良く混和した。そして
図3に示したように、試料溶液バッグ210を点滴台350に懸架すると共に、単核球分離管100をチューブラックに立てた後、第1クランプ311及び第2クランプ321を開放した。全ての骨髄液が単核球分離管100に移動した後、第1クランプ311及び第2クランプ321を閉鎖し、ヒートシーラーにより第1チューブ310を閉鎖し、ヒートシーリングポイントの試料溶液バッグ210側で切断した。
【0080】
続いて、単核球分離管100の3方活栓130を試料溶液と遠心分離媒体とが接するように開放し、単核球分離管100と、単核球収納バッグ23及びエアバッグ220とを遠心機に懸架して、対側同士のバランスを取った。次いで、400gで40分間遠心分離を行い、遠心後に3方活栓130を閉鎖した。その結果、単核球分離管100の下チャンバ120には赤血球・顆粒球分画及び遠心分離媒体、上チャンバ110には遠心分離媒体、単核球分画(骨髄幹細胞分画)及び血小板・血漿分画の2分画に分離することができた。
【0081】
続いて、
図4に示したように、単核球分離管100を点滴台に懸架し、エアバック220とのクランプを開放するとともに、第1接続口131及び第3接続口133を連通するように三方活栓を開放し、全ての上チャンバ110にある液体を単核球収納バッグ230内に移動させた。続いて、ヒートシーラーにより第3チューブ330を閉鎖して、ヒートシーリングポイントの単核球分離管100側で切断した。
【0082】
その結果、単核球収納バッグ230内に、単核球分画(骨髄幹細胞分画)を含み、かつ成熟顆粒球をほとんど含まない骨髄幹細胞液を得ることができた。
【0083】
上記の手法にて得られた単核球を含む細胞液は、単核球回収率:約69%、単核球生存率:99%、CD34陽性細胞濃度:約3%、成熟顆粒球除去率:約96%の特性を有するものであった。
【0084】
上記の手法で得られた単核球を含む細胞液の細菌汚染、真菌汚染に関する検討を行った。即ち、10%牛胎児血清入り細胞培養液、CDLP寒天培地及びサブロー寒天培地に各1mlの細胞液を混和あるいは塗布し、37℃で30日間培養を行ったが、細胞及び真菌の増殖は全く観察されなかった。
【0085】
〈脳梗塞動物モデルでの治療効果〉
SCIDマウス脳梗塞モデル(左中大脳動脈M1遠位部閉塞モデル)を用いて、上記の〈単核球分離システムによる骨髄幹細胞の単離〉で得られた単核球を含む細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。(i)本発明で分離された細胞液投与群(幹細胞群)、及び(ii)生理食塩水投与群(生食群)を設定した。各群6匹の脳梗塞モデルマウスに対し、脳梗塞作成2日後に5x10
5個の細胞(あるいは生理食塩水)を尾静脈より投与し、それぞれ投与群の脳神経機能回復促進効果の検証を行った。神経機能回復の評価項目に関しては、細胞投与30日後の大脳皮質神経機能をオープンフィールドテストで評価し、統計解析はt検定を用いて行った。
図9は、SCIDマウス脳虚血モデルにおける30分間の総活動量(移動活動量+立ち上がり反応)の暗条件に対する反応性の測定結果である。
図9に示すように、生食群と比し、幹細胞群では有意な機能回復促進が観察された。なお有意確率は5%であった。
【0086】
〈下肢虚血動物モデルでの治療効果〉
SCIDマウス下肢虚血モデル(左大腿動脈閉塞モデル)を用いて、上記の〈単核球分離システムによる骨髄幹細胞の単離〉で得られた単核球を含む細胞液の治療薬剤としての効果の検討を行った。(i)本発明で分離された細胞液投与群(幹細胞群)、及び(ii)生理食塩水投与群(生食群)を設定した。各群6匹の下肢虚血モデルマウスに対し、下肢虚血作成直後に計1x10
6個の細胞(あるいは生理食塩水)を3か所の大腿部筋肉内に投与し、下肢虚血モデル作成30日後の救肢促進効果の検証を行った。虚血レベルは、0点:正常、1点:軽度の変色、2点:中等度から重度の変色、3点:壊死、4点:離断のようにして評価を行った。統計解析はマン・ホイットニ検定を用いて行った。
図10は、SCIDマウス下肢虚血モデルにおける救肢効果の測定結果である。
図10に示すように、生食群と比し、幹細胞群で有意な救肢効果が観察された。なお有意確率は5%であった。