特許第5771940号(P5771940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771940
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】速度制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   G01M17/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-232490(P2010-232490)
(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公開番号】特開2012-88064(P2012-88064A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−174597(JP,A)
【文献】 特開2005−033889(JP,A)
【文献】 特開2005−031877(JP,A)
【文献】 特開平08−076856(JP,A)
【文献】 特開2004−019725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00−17/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度指令と速度検出器により検出されたシャシーダイナモメータの検出速度信号との偏差信号に基づいてトルク電流指令を演算し、算出されたトルク電流指令により電流制御部、インバータを介してシャシーダイナモメータを制御するものにおいて、
前記速度指令を入力して距離信号に変換する設定速度/距離変換部と、
前記速度検出器として角度位置検出が可能な速度検出器を用い、この速度検出器により検出された距離信号を微分して検出速度信号に変換する距離/検出速度変換部と、
前記設定速度/距離変換部により変換された距離信号と前記速度検出器によって検出された距離信号の差を入力して距離信号の差に基づく差速度指令を生成する同期化処理部と、
前記速度指令と距離/検出速度変換部により変換された検出信号との偏差信号と、前記同期化処理部からの差速度指令をそれぞれ入力し、前記偏差信号と差速度指令に基づいてPID演算を実行して補償電流指令を生成し、この補償電流指令を前記トルク電流指令に加算する差速度制御部を備えたことを特徴とした速度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度制御装置に係わり、特に、速度指令と一致する距離走行を可能とした過渡追従式の速度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャシーダイナモメータ、エンジンベンチシステム、ドライブトレーン用試験、及び一般のモータ試験では、加速,減速による過渡追従試験が行われる。
例えば、シャシーダイナモメータやエンジンベンチシステム等では、ダイナモメータによる速度制御が行われている。
図4はシャシーダイナモメータにおける速度制御装置を示したものである。
1は速度指令部で、加速・走行・減速などの速度指令Vsetが出力される。速度指令Vsetは、減算部6において速度検出器5により検出された検出速度信号Vdetが減算され、その偏差信号はPIDコントローラからなる速度制御部2に入力される。速度制御部2では入力された信号に基づいてトルク電流指令を生成し、電流制御部3を介してシャシーダイナモメータ4を制御する。シャシーダイナモメータ4の速度は速度検出器5により検出して減算部6へフィードバックし、速度を一定にしてエンジンや車両の挙動を安定にして計測を実行している。
【0003】
なお、ダイナモメータシステムにおける制御装置としては、特許文献1などが公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−108802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両やエンジンの評価試験では、評価時間を短縮する目的で加減速制御中に計測評価が行われている。
図4で示す従来の速度制御装置ではPIDコントローラを採用し、速度指令部1により設定された速度指令Vsetと検出速度信号Vdetとが一致するような制御をしている。しかし、PIDコントローラによる速度制御では加減速運転中に制御遅れが発生して速度指令と実速度との間に偏差が生じ、この偏差が所定時間後に0となるような制御方式となっている。なお、制御遅れを防止しようとするとハンチング現象が発生するなどの問題が生じる。
【0006】
特に、PIDコントローラによる速度制御をダイナモメータシステムに適用して評価試験を行場合、加減速運転中の制御遅れは走行の距離差として現れ、被試験車両やエンジンに対する加減速運転時における燃費や排ガス悪化を招き、計測評価精度が悪くなっている。
【0007】
そこで、本発明が目的とするとこは、過渡運転でも速度偏差の生じない速度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、速度指令と速度検出器により検出されたシャシーダイナモメータの検出速度信号との偏差信号に基づいてトルク電流指令を演算し、算出されたトルク電流指令により電流制御部、インバータを介してシャシーダイナモメータを制御するものにおいて、
前記速度指令を入力して距離信号に変換する設定速度/距離変換部と、
前記速度検出器として角度位置検出が可能な速度検出器を用い、この速度検出器により検出された距離信号を微分して検出速度信号に変換する距離/検出速度変換部と、
前記設定速度/距離変換部により変換された距離信号と前記速度検出器によって検出された距離信号の差を入力して距離信号の差に基づく差速度指令を生成する同期化処理部と、
前記速度指令と距離/検出速度変換部により変換された検出信号との偏差信号と、前記同期化処理部からの差速度指令をそれぞれ入力し、前記偏差信号と差速度指令に基づいてPID演算を実行して補償電流指令を生成し、この補償電流指令を前記トルク電流指令に加算する差速度制御部を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、速度指令と検出速度信号の差信号制御をマイナーループに持ち、メジャーループに、速度指令を積分した距離(位置指令と、検出距離信号との差分を比例ゲインでつき合わせて位置を一致させ、この位置信号を補償電流指令としてトルク電流指令に加算するものである。これにより、過渡運転時での速度偏差が防止できる。また、速度制御で走行距離が指令と一致することでエネルギーが安定する。したがって、燃費排ガス試験において速度制御でエネルギーを一致させることができ、計測評価時の精度が向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態を示す構成図。
図2】本発明の他の実施形態を示す構成図。
図3】説明用の速度特性図で、(a)は従来の特性図、(b)は本発明の特製図、(c)は距離挙動ず。
図4】従来の速度制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施例を示す構成図で、図4と同一、若しくは相当する部分に同一符号を付している。10は設定速度/距離変換部で、速度指令部1より出力された速度指令Vsetを積分することで距離信号に変換する。11は検出速度/距離変換部で、この変換部11はパルスピックアップよりなる速度検出部5で検出された検出速度信号Vdetを入力し、積分することで距離(位置)信号に変換する。12は同期化処理部で、変換部10,11により変換された距離信号の偏差を入力し、積分特性を有した関数に変換して差速度指令とし差速度制御部13に出力する。
【0012】
速度指令Vsetと検出速度信号Vdetは減算部14にも印加され、この減算部14によって速度の偏差信号が求められて差速度制御部13に入力される。差速度制御部13は、入力された偏差信号と差速度指令をもとにPID演算を実行し、補償電流指令を生成して加算部15に出力する。
なお、シャシーダイナモメータ4は、図示省略されているが、動力計とこの動力計に連結されたローラやインバータ等を備えている。
【0013】
以上のように構成された実施例1の動作について説明する。
速度指令部1による速度指令Vsetに基づき速度制御部2はトルク電流指令を演算して電流制御部3に出力する。電流制御部3は、トルク電流指令に対応したトルク制御指令を演算してインバータを介して動力計を制御する。
本発明に使用される速度検出器5としては、回転数検出や角度位置検出を可能とする何れの速度検出器でもよいが、ここではパルスピックアップが用いられ、パルスピックアップはパルスのエッジ部を検出してパルス数をカウントすることで回転角度を検出しシャシーダイナモメータ4の速度を検出する。検出速度信号Vdetは減算部6へフィードバックされて速度指令Vsetとの偏差が求められ、偏差信号が0となるような制御が実行される。
【0014】
一方、速度指令Vsetは設定速度/距離変換部10にも入力されて位置信号に変換され、また、検出速度信号Vdetは検出速度/距離変換部11に入力されて位置信号に変換される。両者の変換位置信号は、減算部において速度制御系の制御遅れに基づく位置の差信号として算出され同期化処理部12に入力される。
同期化処理部12では、位置の偏差信号を所定の関数変換に基づく差速度指令として差速度制御部13に出力する。差速度制御部13は、入力された偏差信号と差速度指令をもとにPID演算を実行して補償電流指令を生成し、加算部15においてトルク電流指令と加算される。これにより、電流制御部3で演算されるトルク制御指令は、加減速運転中に生じる速度と位置(距離)の差が補償された指令値となる。
したがって、過渡運転時での速度偏差が防止できる。また、速度制御で走行距離が指令と一致することでエネルギーが安定し、シャシーダイナモメータ4のローラ上に搭載した車両の加減速評価試験時の精度が向上するものである。
【0015】
図3はシャシーダイナモメータの速度制御時における説明のための挙動図で、(a)図は図4で示す従来の速度制御装置における追従性を示したものである。線aは速度指令値、線bは検出速度信号を示したもので、加速・減速にそれぞれ遅れが発生して結果的に走行距離差を発生している。(b)図は、走行距離の差分に対する速度差の補償を行った本発明による速度特性図で、速度指令値と検出速度信号とが略一致している。(c)図は、本発明による挙動説明図で、時刻t1からの加速時には遅れを有しながら立ち上がるが、差速度制御部13からの補償電流指令がトルク電流指令に加算されて補償されることから時刻t2時には一致する。また、時刻t4からの減速時でも、同様にして減速当初に遅れは生じるが時刻t5時には走行距離と速度の誤差はなく両者は一致する。
【0016】
図2は第2の実施例を示したもので、図1との相違点は速度検出器としてロータリエンコーダやレゾルバのように角度位置検出が可能な速度検出器5aを用いたことである。この実施例では、ローリエンコーダとしてアブソルュートエンコーダを用いた場合である。アブソルュートエンコーダ5aを用いた場合、角度位置検出が可能なことから図1の検出速度/距離変換器11の代わりとして、距離/検出速度変換器16が用いられる。距離/検出速度変換器16は、検出した距離信号を微分することで速度信号に変換する。他は図1と同様である。
【0017】
速度検出器5aによって検出された距離(位置)信号Ldetと、設定速度/距離変換器10によって変換された距離指令Lsetとの距離信号の偏差分は、同期化処理部12において差速度信号に生成されて差速度制御部13に入力される。
また、速度検出器5aによって検出された距離信号Ldetは距離/検出速度変換器16に入力されて速度検出値Vdetに変換され、減算部14において速度指令Vsetとの偏差信号が求められ、差速度制御部13に入力される。差速度制御部13では、入力された偏差信号と差速度信号をもとにPID演算を実行して補償電流指令を生成し、加算部15においてトルク電流指令と加算される。これにより、電流制御部3で演算されるトルク制御指令は、加減速運転中に生じる速度と位置(距離)の差が補償された指令値となる。
【0018】
したがって、この実施例も過渡運転時での速度偏差が防止できる。また、速度制御で走行距離が指令と一致することでエネルギーが安定し、シャシーダイナモメータ4のローラ上に搭載した車両の加減速評価試験時の精度が向上するものである。
【符号の説明】
【0019】
1… 速度指令部
2… 速度制御部
3… 電流制御部
4… シャシーダイナモメータ
5… 速度検出器
12…同期化処理部
13…差速度制御部
10…設定速度/距離変換部
11…検出速度/距離変換部
16…距離/検出速度変換部
図1
図2
図3
図4