【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは断りのない限り「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
【0056】
1.全光線透過率及びヘーズ
日本電色工業株式会社製ヘーズ測定器「NDH−2000」を用いて、JIS−K−7136に準拠して測定した。
フィルムの巻き方向を垂直方向及び水平方向にそれぞれ上記測定器の試料台に固定して測定し、それぞれ3回の測定で得られた測定値の平均値を用い、さらに両方向の測定値の平均値を求めて表示した。該対応をするのは、フィルムの巻き方向を垂直方向及び水平方向により平行光線透過率が大きく変わることがあるためである。
なお、接着層が片面に積層されたサンプルについては、接着層側より入光して測定をした。接着層が両面に積層され、かつ両面の表面粗さに差がある場合は、表面粗さが小さい方の面より入光して測定した。
【0057】
2.透過光の主拡散方向の拡散度
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。
透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角になる角度)、受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルター:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)、SENSITIVITY:950、HIGH VOLTON:600及び変角間隔0.1度の条件で、−90度から+90まで受光器を移動させて測定することにより得た、透過光の変角光度曲線のピーク立ち上がり角度とピークの終了の角度との間の角度の度数を求めた(
図1参照)。ピークの立ち上がり及び終了の角度は、これらの部分を10倍のルーペで観察して、ピークの線が消えた最先端の角度をそれぞれの角度とした。
なお、受光器を移動させる面を赤道面と定義した。
上記角度をフィルムの巻き方向が試料固定台の上下方向と平行方向及び水平方向になるように固定して測定し、該角度の大きい方の値を拡散度とした。
なお、接着層が片面に積層されたサンプルについては、接着層側より入光して測定した。接着層が両面に積層され、かつ両面の表面粗さに差がある場合は、表面粗さが小さい方の面より入光して測定した。
拡散度の大きい方のフィルム方向を主拡散方向とした。
測定に際しては、試料の測定の前に、きもと株式会社製の光拡散フィルムであるライトアップフィルム(商品登録)100DX2フィルムをフィルムの巻き方向が試料固定台の上下方向と平行方向になり、かつ拡散層側が出光側になるように試料固定台に固定して、上記と同じ条件で変角光度測定を実施した。この測定において、変角光度曲線のピークトップの高さがフルスケールに対して、80%を超えるか、あるいは70%未満であった場合は、この値がフルスケールに対して70〜80%になるようにSENSITIVITYあるいはHIGH VOLTONダイヤルの数値の微調整を行った。
【0058】
3.光の変曲度
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。
透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角の角度)、受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルター:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)及び変角間隔0.1度の条件で測定し、透過光のピークトップが、チャートの40〜90%になるようにSENSITIVITYやHIGH VOLTONの設定を変更して測定することにより得た透過光のピークの高さ(H0)と、光線入射角を60°(赤道線面上の角度)に変更する以外は、上記条件と同じ条件で測定した時の透過光のピークの角度0度における高さ(H60)とを求めた。この方法で求めたH60とH0を用いて下記式で変曲度を求めた。
図2参照。
光の変曲度=H60/H0×100(%)
なお、受光器を移動させる面を赤道面と定義した。
光の変曲度は、主拡散方向において測定して求めた。
【0059】
4.光拡散フィルムと基材との接着力
熱プレス機の固定台の上に、厚みが3mmの表面が平滑で透明なアクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト)をセットし、そのアクリル板上に試料を置き、さらに、その上に厚みが3mm(硬度HsA50°)のシリコーンゴムシートを敷き、表面温度が180℃に設定された加圧用の圧子により、上記のシリコーンゴムシートの上より押さえ付けて、49N/cm
2の圧力で30秒間押し圧をした。加熱圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置し、東洋精機社製「テンシロン」(UTM−IIIL)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を接着力とした。
接着力の判定は、以下の基準で実施した。
接着力が0.1N/15mm以上:良
接着力が0.1N/15mm未満:不良
【0060】
5.熱可塑性樹脂のメルトフローレート
JIS−K−7210 A法に準拠して、2.16kgfの条件で測定した。
【0061】
6.正面輝度
実施例1〜5及び比較例1〜5、参考例1の光拡散フィルムをバックライトユニットに貼り合せたものをそれぞれ実施例6〜10及び比較例6〜10、参考例2とし、それらの正面輝度を測定した。測定方法は各実施例、比較例、参考例に記載したとおりである。
【0062】
7.出光パターンの消失性
正面輝度測定における開口部をバックライトが点灯させた状態で肉眼観察し、以下の基準で判定した。
導光板のメッシュが全く見えない:良
導光板のメッシュがかすかに見える:やや不良
導光板のメッシュがはっきり見える:不良
【0063】
(実施例1)
2台の溶融押し出し機を用い、第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部とからなる光拡散層を形成し、第2の押し出し機にて、接着性樹脂としてマレイン化ポリプロピレン系樹脂((アドマー(TM)QF551 三井化学社製 メルトフローレート:5.7(190℃))からなる接着層が光拡散層の両面を形成するように、Tダイ方式にて溶融共押出し後、鏡面の冷却ロールで冷却することにより、光拡散層の両面に接着層が積層された総厚み400μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。層厚み構成(接着層/光拡散層/接着層)は40/320/40(μm)であった。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れ、かつ接着性にも優れていた。
【0064】
(比較例1)
実施例1の方法において、第2の押し出し機にて形成する接着層の樹脂を、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れているが、接着性に劣っていた。
【0065】
(実施例2)
実施例1の方法において、光拡散フィルムの総厚みを175μmに変更し、層厚み構成を25/125/25(μm)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れ、かつ接着性にも優れていた。
【0066】
(比較例2)
実施例2の方法において、第2の押し出し機にて形成する接着層の樹脂を、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れているが、接着性に劣っていた。
【0067】
(実施例3)
実施例1の方法において、第1の押し出し機にて形成する光拡散層の樹脂を、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6015 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:0.41(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))50質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れ、かつ接着性にも優れていた。
【0068】
(比較例3)
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6015 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:0.41(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))50質量部を池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、梨地加工した冷却ロール(Ra=0.55)で冷却することにより、厚み400μmの光拡散フィルムを得た。上記冷却ロールの反対面は表面に離型処理をした(Ra=1.0)押さえロールを用いた。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れているが、接着性に劣っていた。
【0069】
(実施例4)
実施例3の方法において、光拡散フィルムの総厚みを200μmに変更し、層厚み構成を20/160/20(μm)に変更する以外は、実施例3と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れ、かつ接着性にも優れていた。
【0070】
(比較例4)
比較例3の方法において、光拡散フィルムの総厚みを200μmに変更し、層厚み構成を20/160/20(μm)に変更する以外は、比較例3と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れているが、接着性に劣っていた。
【0071】
(
参考例1)
実施例1の方法において、光拡散層の樹脂配合を、ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)65質量部にエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15メルトフローレート:26(230℃))35質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用して延伸温度118℃で4.5倍に延伸し、引き続きその片面にコロナ処理をして厚み200μmの光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れ、かつ接着性にも優れていた。
【0072】
(比較例5)
参考例1の方法において、第2の押出し機にて形成する接着層の樹脂をポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QF551 三井化学社製 メルトフローレート:5.7(190℃))から、ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)に変更する以外は、
参考例1と同様の方法で、光拡散フィルムを得た。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた光拡散フィルムは、光拡散特性に優れているが、接着性に劣っていた。
【0073】
(実施例6〜10及び比較例6〜10)
長径側(横方向)の両側に冷陰極管がそれぞれ3本ずつ設けられた19インチの導光板タイプ(白色反射フィルム使用でメッシュタイプ)のバックライトユニットの出射光側のアクリル板上のほぼ中央部に40mm×60mm角(60mm側が横方向)の評価サンプルを設置し、その表面にシリコーンゴムシートをおいて、そのシリコーンゴムシートの表面より、表面温度が約180℃の平板状の加熱治具で、約1分間押さえつけて貼着して、30mm×50mm角(50mm側が横方向)の切り抜き部分を設けた黒色の遮光紙を切り抜き部分の中心が評価サンプルの中心部になるように設置して、暗室で輝度を測定した。黒色の遮光紙はバックライトユニットの全体が覆われる大きさとして固定して光が漏れないようにして測定した。
また、バックライトユニットは水平に設置して測定した。
輝度は(株)トプコンテクノハウス社製のトプコン分光放射計SR−3Aを用いて、測定角度2度で、バックライトユニット表面との距離が40cmで評価用サンプルの中心が直下になる位置で測定した。
測定は、評価用サンプルの主拡散方向が冷陰極管の長手方向と直交方向になるように設置して行った。
実施例1〜
4、参考例1及び比較例1〜5の光拡散フィルムを評価サンプルとして使用して得られた結果をそれぞれ実施例6〜10及び比較例6〜10とし、表2に示す。
【0074】
実施例1〜
4及び参考例1の光拡散フィルムは、アクリル板表面に接着層により接着され、アクリル板と光拡散フィルムの間の空気が排除され、該界面の屈折率差が僅かになるために、正面輝度が高かった。また、変曲度や拡散度の光学特性が好ましい範囲にあるので、出光パターンの消失性にも優れている。
一方、比較例1〜5の光拡散フィルムは、アクリル板と光拡散フィルムの接着力が弱く、両材料間の空気が排除されないために、両部材間の界面の屈折率に大きな差が生じ、実施例1〜
4及び参考例1の光拡散フィルムに比べて、正面輝度が著しく劣っていた。
【0075】
また、導光板を80℃のオーブンに入れて240時間、加温静置した。
寸法安定性の評価において、加温前と同じ寸法と形状を保っているものは優れており、良とした。また加温処理によりカールあるいは寸法の縮小がみられたものは劣るとし、不良とした。結果を表2に示す。
実施例1〜
4及び参考例1で得られた光拡散フィルムは変形せずに、加温前と同じ寸法と形状を保っていたが、比較例1〜5で得られた光拡散フィルムは、加温処理により、光拡散フィルムがカールし、かつ寸法が縮小した。
【0076】
(参考例
2)
2台の溶融押し出し機を用い、第1の押し出し機にて、ポリプロピレン樹脂WF836DG3(住友化学社製、住友ノーブレン)100質量部を溶融して基層Aを形成し、第2の押し出し機にて、ポリプロピレン樹脂WF836DG3(住友化学社製、住友ノーブレン)17質量部とプロピレン・エチレン共重合体 HF3101C(日本ポリプロ社製)83質量部を溶融混合して光拡散層Bを形成し、ダイス内にて基層Aと光拡散層Bが積層されるように、Tダイ方式にて溶融共押出し後、20℃のキャスティングロールで冷却することにより未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用して延伸温度120℃で4.8倍に延伸し、引き続いてテンタ―式延伸機により、165℃で加熱後、155℃の延伸温度で横方向に9倍延伸した。次いで166℃で熱固定を行って、基層A/光拡散層Bの厚み構成がそれぞれ22.2/2.8(μm)の光拡散フィルムを得た。巻き取り直前において基層A表面にコロナ処理を行った。
得られた光拡散フィルムの特性を表1に示す。また、得られた光拡散フィルムを使用して実施例6〜10及び比較例6〜10と同様にして正面輝度、寸法安定性、及び出光パターン消失性を測定した。その結果を表2に示す。
本参考例の光拡散フィルムは、接着層がないので寸法安定性に劣っていた。また、変曲度や拡散度が低いので、高輝度が得られないことが示される。また、出光パターンの消失性も劣っていた。
【0077】
(参考例
3)
長径側(横方向)の両側に冷陰極管がそれぞれ3本ずつ設けられた19インチの導光板タイプ(白色反射フィルム使用でメッシュタイプ)のバックライトユニットの出射光側のアクリル板上のほぼ中央部に40mm×60mm角(60mm側が横方向)の参考例2で得られた光拡散フィルムをアクリル系の光学用粘着テープ(両面セパレートフィルムタイプ)で貼り付けて、30mm×50mm角(50mm側が横方向)の切り抜き部分を設けた黒色の遮光紙を切り抜き部分の中心が評価サンプルの中心部になるように設置して、暗室で輝度を測定した。黒色の遮光紙はバックライトユニットの全体が覆われる大きさとして固定して光が漏れないようにして測定した。
また、バックライトユニットは水平に設置して測定した。
輝度は(株)トプコンテクノハウス社製のトプコン分光放射計SR−3Aを用いて、測定角度2度で、バックライトユニット表面との距離が40cmで評価用サンプルの中心が直下になる位置で測定した。
測定は、評価用サンプルの主拡散方向が冷陰極管の長手方向と直交方向になるように設置して行った。
なお、貼り合わせは、光拡散フィルムのA層側が粘着テープ側になるようにして行った。
また、実施例6〜10及び比較例6〜10と同様にして寸法安定性及び出光パターン消失性を測定した。その結果を表2に示す。
本参考例の光拡散フィルムは、実施例1〜
4及び参考例1で得られた光拡散フィルムに比べて変曲度や拡散度が低いので、実施例1〜
4及び参考例1で得られた光拡散フィルムとは異なり、貼り合わせによる輝度向上効果が小さいことが示された。また、出光パターンの消失性も劣っていた。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】