(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三相の電機子巻線を有するステータおよび磁極対を有するロータを備えるセンサレスブラシレスモータの前記電機子巻線の三相の端子に、パルス幅変調方式によりデューティ比を可変に制御した電源電圧を供給するインバータ回路と、
指令されたデューティ比、または指令されたモータ回転数に相当するデューティ比のパルス幅変調信号を生成するPWM生成回路と、
前記パルス幅変調信号の特定位相で動作し、前記電源回路から前記電源電圧が供給されない非通電時間帯に前記端子に誘起される誘起電圧を検知し、前記誘起電圧に基づいて前記ロータの回転位置を検出する位置検出回路と、
前記位置検出回路で検出した前記ロータの前記回転位置に基づいて各相の前記端子に前記電源電圧を供給する通電時間帯を設定し、前記通電時間帯および前記パルス幅変調信号に基づく通電制御信号を前記インバータ回路に送出するインバータ制御回路と、を備える前記センサレスブラシレスモータの駆動装置であって、
前記PWM生成回路は、通常時に用いる前記パルス幅変調周波数である常用PWM周波数、前記常用PWM周波数よりも小さな低回転時PWM周波数、および、前記常用PWM周波数よりも大きな高回転時PWM周波数を有し、
前記指令されたデューティ比、前記指令されたモータ回転数、検出されたデューティ比、および検出されたモータ回転数のうちの1パラメータに関し、前記常用PWM周波数を用いているときの前記ロータの低回転時の回転位置の検出限界に基づき低回転移行閾値が設定されるとともに、前記常用PWM周波数を用いているときの前記ロータの高回転時の回転位置の検出誤差に基づき高回転移行閾値が設定されており、
前記PWM生成回路は、
前記常用PWM周波数を用いているときに、前記1パラメータが前記低回転移行閾値以下に減少すると、前記常用PWM周波数から前記低回転時PWM周波数に切り替えて、前記低回転時PWM周波数を維持しながら前記パルス幅変調信号を生成し、かつ、
前記1パラメータが前記高回転移行閾値以上に増加すると、前記常用PWM周波数から前記高回転時PWM周波数に切り替えて、前記高回転時PWM周波数を維持しながら前記パルス幅変調信号を生成することを特徴とするセンサレスブラシレスモータの駆動装置。
【背景技術】
【0002】
直流ブラシレスモータの一方式として、コスト低減のためにロータの回転位置を検出するセンサを省略したセンサレス方式のモータが実用化されている。このセンサレスブラシレスモータでは、ステータの電機子巻線の端子に非通電時間帯に誘起される誘起電圧を検知することでロータの磁極対との相対的な回転位置関係を検出する位置検出回路が設けられる。検出した回転位置に基づいて、電源制御回路は電機子巻線に電源電圧を供給する通電時間帯を設定する。電源回路は、設定された通電時間帯にしたがい電機子巻線に電源電圧を供給して通電する回路であり、インバータ回路により構成されるのが一般的である。三相の電機子巻線を有するモータでは、ロータの回転位置に応じて電気角の120°ピッチで通電相を順次切り替える駆動方式が多用され、120°を越えて複数相への通電をオーバーラップさせることも行われている。また、出力トルクを調整するために、PWM生成回路で生成したパルス幅変調信号(PWM信号、以降パルス幅変調をPWMと略記)に基づいて、電源電圧のデューティ比を可変に制御する場合が多い。
【0003】
上述の位置検出回路が検知する誘起電圧は、非通電時間帯の電機子巻線にロータの磁極対からの磁束が鎖交することで発生する。したがって、誘起電圧は、電機子巻線とロータとの相対回転位置関係に依存して変化し、回転位置を検出する指標となり得る。ただし、誘起電圧が発生する相は、通電相の切り替えとともに順次切り替わってゆく。この誘起電圧を検知する回路方式として、三相合成方式および三相独立方式の2方式が従来から用いられている。どちらの方式においても、比較器を用いて誘起電圧を基準電圧と比較し、比較結果の変化タイミングを以ってロータの基準回転位置とするのが一般的になっている。基準電圧としては、電源電圧の半分の中間レベル値や、Y結線された電機子巻線の中性点電圧が用いられる。
【0004】
センサレスブラシレスモータにおけるこの種の駆動装置の技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のブラシレスモータの制御方法およびその装置は、交流電源を整流手段および倍電圧手段で倍電圧整流し、得られた直流電圧をPWMチョッピング駆動されたインバータ手段でスイッチングしてブラシレスモータに印加するものである。そして、少なくともブラシレスモータの起動および低回転時には倍電圧手段を倍電圧なしに切り替える一方、PWMチョッピングのデューティを所定に変えるようにしている。これにより、倍電圧なしモードでのPWMチョッピングのデューティのオン時間幅を長くして、位置検出を確実に行うことができる、とされている。
【0005】
また、特許文献2に開示される直流ブラシレスモータの速度制御装置は、速度検出装置を備え通電幅を変えて速度を調節するPWM制御装置において、速度に応じてPWM周波数を自動的に変化させて制御を行うことを特徴としている。これにより、PWM周波数を速度に応じて自動的、連続的に変化させることが可能となり、低速から高速までの広範囲にわたって安定した速度制御特性を得ることができる、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、センサレスブラシレスモータでは、ロータを低回転にするときにPWM制御のデューティ比を小さく制御するので、端子に発生する誘起電圧の時間幅もオンデューティ期間に一致して短くなる。このため、位置検出回路の比較器の比較結果の出力も間欠的な波形となる。一方、位置検出回路で比較器の出力を読み取るタイミングは、通常はPWM生成回路で生成したPWM信号の立ち下がり位相、すなわちオンデューティ期間の終了時とされている。その理由は、インバータ制御回路およびインバータ回路は伝達遅延時間を有するので、伝達遅延時間分だけ遅れた比較器におけるオンデューティ期間に発生する出力変化を読み取るのに好適だからである。したがって、低回転時にデューティ比が極端に減少してオンデューティ期間が伝達遅延時間よりも小さくなると、もはや位置検出はできなくなり、低回転制御が困難となる。なぜなら、比較器におけるオンデューティ期間の全体が、PWM信号の立ち下がり位相よりも後まで遅延してしまい、実質的に位置検出回路で比較器の出力を読み取るタイミングがなくなるからである。
【0008】
上述の低回転時に回転位置検出が困難となる問題点に対して、特許文献1で低回転時に倍電圧なしモードとしてPWMチョッピングのデューティのオン時間幅を長くする技術は効果を有する。しかしながら、特許文献1の技術は交流電源を必須として倍電圧手段を用いるため、バッテリや直流電源装置で駆動するセンサレスブラシレスモータには適用できない。
【0009】
また、ロータを高回転にするときにはPWM制御のデューティ比を大きく制御するので、比較器の出力変化と読み取りタイミングとがずれる問題点は解消されるが、別の問題点が発生する。つまり、高回転域まで一定のPWM周波数を用いるとPWM1周期当りの回転角度量が増大するため、PWM信号の特定位相で動作する位置検出方式では回転位置検出の遅延による誤差が増加する。極端な場合には、PWM1周期当りの回転角度量に近い検出誤差が生じ得る。高回転時に回転位置検出誤差が増加する問題点に対して、特許文献1の技術は効果を有さず、高回転制御が困難となる。
【0010】
これに対し、特許文献2の速度制御装置は、速度検出装置を備え、検出した速度に応じてPWM周波数を自動的、連続的に変化させるので、上述の低回転側および高回転側の両方の問題点に対して効果を有する。しかしながら、速度検出装置は回転位置センサに類するものであり、また、PWM周波数の自動連続変化を実現する回路は複雑である。したがって、特許文献2の速度制御装置は高価となり、コスト低減を志向したセンサレスブラシレスモータの駆動装置には不向きである。
【0011】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、コストの増加を抑制しつつ低回転から高回転までの広い領域で回転位置を高精度に検出して良好な駆動制御を行え、従来よりもワイドレンジに対応した駆動制御を可能としたセンサレスブラシレスモータの駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する請求項1に係るセンサレスブラシレスモータの駆動装置の発明は、三相の電機子巻線を有するステータおよび磁極対を有するロータを備えるセンサレスブラシレスモータの前記電機子巻線の三相の端子に、パルス幅変調方式によりデューティ比を可変に制御した電源電圧を供給するインバータ回路と、指令されたデューティ比、または指令されたモータ回転数に相当するデューティ比のパルス幅変調信号を生成するPWM生成回路と、前記パルス幅変調信号の特定位相で動作し、前記電源回路から前記電源電圧が供給されない非通電時間帯に前記端子に誘起される誘起電圧を検知し、前記誘起電圧に基づいて前記ロータの回転位置を検出する位置検出回路と、前記位置検出回路で検出した前記ロータの前記回転位置に基づいて各相の前記端子に前記電源電圧を供給する通電時間帯を設定し、前記通電時間帯および前記パルス幅変調信号に基づく通電制御信号を前記インバータ回路に送出するインバータ制御回路と、を備える前記センサレスブラシレスモータの駆動装置であって、前記PWM生成回路は、
通常時に用いる前記パルス幅変調周波数である常用PWM周波数、前記常用PWM周波数よりも小さな低回転時PWM周波数、および、前記常用PWM周波数よりも大きな高回転時PWM周波数を有し、前記指令されたデューティ比、前記指令されたモータ回転数、検出されたデューティ比、および検出されたモータ回転数のうちの1パラメータ
に関し、前記常用PWM周波数を用いているときの前記ロータの低回転時の回転位置の検出限界に基づき低回転移行閾値が設定されるとともに、前記常用PWM周波数を用いているときの前記ロータの高回転時の回転位置の検出誤差に基づき高回転移行閾値が設定されており、前記PWM生成回路は、前記常用PWM周波数を用いているときに、前記1パラメータが前記低回転移行閾値以下に減少すると、前記常用PWM周波数から前記低回転時PWM周波数に切り替えて、前記低回転時PWM周波数を維持しながら前記パルス幅変調信号を生成し、かつ、前記1パラメータが前記高回転移行閾値以上に増加すると、前記常用PWM周波数から前記高回転時PWM周波数に切り替えて、前記高回転時PWM周波数を維持しながら前記パルス幅変調信号を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記PWM生成回路は、
分周回路の分周比を変更することにより、常用PWM周波数の(1/k)倍の低回転時PWM周波数、および常用PWM周波数のm倍の高回転時PWM周波数を実現することを特徴とする(ただし、k、mは2以上の整数)。
【0014】
請求項3に係る発明は、
請求項1または2において、前記1パラメータに関して、前記低回転移行閾値よりも大きな低回転解消閾値が設定されており、前記PWM生成回路は、前記低回転時PWM周波数を用いているときに前記1パラメータが低回転解消閾値以上に増加すると前記常用PWM周波数に切り替えることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、
前記1パラメータに関して、前記高回転移行閾値よりも小さな高回転解消閾値が設定されており、前記PWM生成回路は、前記高回転時PWM周波数を用いているときに前記1パラメータが高回転解消閾値以下に減少すると前記常用PWM周波数に切り替えることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれか一項において、前記PWM生成回路の前記パルス幅変調信号の立ち下がり位相は前記電源電圧の立ち下がりタイミングを制御し、前記位置検出回路は、前記PWM生成回路の前記パルス幅変調信号の立ち下がり位相で動作することを特徴とする。
【0018】
本明細書では、PWM周波数の1周期内で電源電圧を供給する時間幅をオンデューティ期間と称し、電気角の概ね120°程度にわたる多数のオンデューティ期間で特定の相に継続的に電源電圧を供給する時間幅を通電時間帯と称する。通常、オンデューティ期間は通電時間帯よりも桁違いに短い。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るセンサレスブラシレスモータの駆動装置の発明では、指令されたデューティ比、指令されたモータ回転数、検出されたデューティ比、および検出されたモータ回転数のうちの1パラメータ
に関し、ロータの回転位置の低回転時の検出限界、および高回転時の検出誤差に基づいて低回転移行閾値および高回転移行閾値が設定されている。そして、PWM生成回路は、常用PWM周波数を用いているときに、前記1パラメータが低回転移行閾値以下に減少すると低回転時PWM周波数に切り替えて、低回転時PWM周波数を維持し、前記1パラメータが高回転移行閾値以上に増加すると高回転時PWM周波数に切り替えて、高回転時PWM周波数を維持する。これにより、低回転時にデューティ比が小さくなってもPWM周波数が減少して1周期が長くなるので、オンデューティ期間はあまり変化せず、伝達遅延時間に影響されずに位置検出回路で比較器の出力を読み取るタイミングが得られる。したがって、低回転領域で回転位置を高精度に検出して良好に駆動制御を行え、また従来よりも低い回転数までの駆動制御が可能となる。一方、高回転時にはPWM周波数が増加して1周期が短くなるので、位置検出回路で比較器の出力を読み取る頻度が増加し、回転位置検出の遅延が抑制される。したがって、高回転領域で回転位置を高精度に検出して良好に駆動制御を行え、また従来よりも高い回転数までの駆動制御が可能となる。
【0020】
請求項2に係る発明では、PWM生成回路は、
分周回路の分周比を変更することにより、常用PWM周波数の(1/k)倍の低回転時PWM周波数、および常用PWM周波数のm倍の高回転時PWM周波数を実現する。したがって、分周回路を用いた3段階切り替えであるので回路は複雑化せず、従来と比較してコストの増加が抑制される。
また、従来の下限の概ね(1/k)倍のデューティ比までの低回転駆動制御が可能となる。
【0021】
請求項3に係る発明では、PWM周波数を常用と低回転時の間で切り替えるときに、低回転移行閾値を低回転解消閾値よりも小さく設定してヒステリシスを設けている。これにより、常用と低回転時の境界領域付近の回転数でロータが回転しているときに、PWM周波数を頻繁に切り替え制御することがなくなる。
【0023】
請求項4に係る発明では、PWM周波数を常用と高回転時の間で切り替えるときに、高回転移行閾値を高回転解消閾値よりも大きく設定してヒステリシスを設けている。これにより、常用と高回転時の境界領域付近の回転数でロータが回転しているときに、PWM周波数を頻繁に切り替え制御することがなくなる。
【0024】
請求項5に係る発明では、PWM生成回路のパルス幅変調信号(PWM信号)の立ち下がり位相は電源電圧の立ち下がりタイミングを制御し、位置検出回路はパルス幅変調信号の立ち下がり位相で動作する。これにより、位置検出回路はPWM信号に対して伝達遅延時間を有する誘起電圧から回転位置を確実に検出でき、PWM生成回路でPWM周波数を切り替える作用との相乗効果により、駆動制御可能な回転数範囲を最大限にワイドレンジ化できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置の構成および作用について、
図1〜
図5を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置1の全体装置構成を説明する図である。駆動装置1は、PWM方式により電源電圧のデューティ比を可変とするインバータ回路2を用いてセンサレスブラシレスモータ9を駆動する装置である。
【0027】
センサレスブラシレスモータ9は、Δ結線された三相の電機子巻線92、93、94を有するステータ91、および図略の磁極対を有するロータを備え、ロータの回転位置を検出するセンサを備えていない。ステータ91には、U相端子95U、V相端子95V、およびW相端子95Wが設けられている。U相端子95UとV相端子95Vの間にはUV間電機子巻線92が接続され、同様に、V相端子95VとW相端子95Wの間にはVW間電機子巻線93、W相端子95WとU相端子95Uの間にはWU間電機子巻線94が接続されている。本第1実施形態では、ステータ91の電機子巻線92、93、94の極数、およびロータの磁極対の数量に特別な制約はない。
【0028】
駆動装置1は、インバータ回路2、位置検出回路3、インバータ制御回路4、通電相切替設定回路41、PWM生成回路5、および回転数設定回路51により構成されている。インバータ回路2の入力端子21および接地端子Eには図略の直流電源装置が接続されており、電源電圧Vccが供給されるようになっている。
【0029】
インバータ回路2は、三相ブリッジ回路で構成されている。
図1に例示されているU相で詳述すると、入力端子21と接地端子Eとの間に、U相電源側スイッチング素子22UとU相接地側スイッチング素子23Uとが直列接続され、両素子22U、23U間にU相出力端子24Uが設けられている。V相およびW相の構成も同様である。各スイッチング素子22U、23Uには、例えば電界効果トランジスタ(FET)を用いることができ、通電制御信号SCにより導通状態および遮断状態に切り替え制御できるように構成する。各相出力端子24Uはそれぞれ、電源線25U、25V、25Wによりステータ91の各相端子95U、95V、95Wに接続されている。
【0030】
インバータ回路2の各スイッチング素子22U、23Uの開閉制御により、ステータ91の各相端子95U、95V、95Wは3つの状態をとる。この3つの状態は各相で同様であるので、U相端子95を例に説明する。U相端子95Uは、U相電源側スイッチング素子22Uが導通状態でU相接地側スイッチング素子23Uが遮断状態のとき電源電圧Vccに拘束され、U相電源側スイッチング素子22Uが遮断状態でU相接地側スイッチング素子23Uが導通状態のときゼロ電圧に拘束され、U相電源側スイッチング素子22Uおよび接地側スイッチング素子23Uがともに遮断状態のときハイインピダンス状態になる。
【0031】
ハイインピダンス状態のU相端子95Uには、誘起電圧が誘起される。このU相誘起電圧は、U相端子95Uに接続されたUV間電機子巻線92およびWU間電機子巻線94にロータの磁極対からの磁束が鎖交することで発生する。したがって、U相誘起電圧は、UV間およびWU間電機子巻線92、94とロータとの相対回転位置関係に依存して変化し、回転位置を検出する指標となり得る。なお、U相電源側スイッチング素子22UおよびU相接地側スイッチング素子23Uがともに導通状態になる制御は禁止されて、電源電圧短絡故障が防止されている。
【0032】
位置検出回路3は、三相の合成抵抗31U、31V、31W、比較器34、および位置検出部37で構成されている。三相の合成抵抗31U、31V、31Wは、抵抗値Rが互いに等しく、それぞれ各相の電源線25U、25V、25Wと共通の合成点32との間に接続されている。つまり、三相の合成抵抗31U、31V、31WはY結線され、合成点32はY結線中性点になっている。合成点32には、ステータ91の各相端子95U、95V、95Wの誘起電圧を合成した合成電圧Vmixが発生する。合成点32は、比較器34の正側入力端子+に接続されて、合成電圧Vmixが入力される。
【0033】
一方、比較器34の負側入力端子−には、直流電源装置の電源電圧Vccを等しい抵抗値rで半分に分圧した中間レベル値VM(=Vcc/2)が基準電圧として入力されている。比較器34は、正側入力端子+に入力された合成電圧Vmixを負側入力端子−の中間レベル値VMと大小比較して位置信号SXを出力する。つまり、比較器34の出力端子35で、合成電圧Vmixが中間レベル値VMよりも小さいと位置信号SXはローレベルLとなり、合成電圧Vmixが中間レベル値VM以上になると位置信号SXはハイレベルHになる。比較器34の出力端子35は、位置検出部37および回転数設定回路51に接続されて、位置信号SXが入力される。
【0034】
位置検出部37は、後に波形例を参考にして詳述するように、PWM信号SPの立ち下がり位相で動作する。位置検出部37は、比較器34から出力される位置信号SXを入力とし、ローレベルLとハイレベルHの変化タイミングを以ってロータの基準回転位置を検出する。
【0035】
回転数設定回路51は、PWM生成回路5の一部を構成している。回転数設定回路51には、外部から回転数指令値Nrが指令入力される。回転数設定回路51は、モータ9に駆動される負荷の特性に基づいて、回転数指令値Nrに相当するデューティ比指令値Arを設定する。
図2は、モータ9に駆動される負荷の特性グラフを例示するとともに、PWM周波数の切替え制御に用いる閾値を説明する図である。図中の横軸は、モータ9に印加される電源電圧のデューティ比Aで、縦軸は負荷を駆動する回転数Nである。図示される右上がりの特性グラフは、デューティ比Aの増加すなわち電源電圧の実効値の増加に伴って回転数Nが増加することを示している。
図2の特性グラフは、予め回転数設定回路51の内部に記憶されている。したがって、回転数設定回路51は、回転数指令値Nrからデューティ比指令値Arを求め、この2つの指令値Nr、ArをPWM生成回路5に送出することができる。
【0036】
なお、回転数設定回路51には位置検出回路3から位置信号SXが入力されており、回転数設定回路51は回転数検出値Nmを求めることができる。そして、回転数指令値Nrと回転数検出値Nmとが異なる場合に、回転数設定回路51は、回転数検出値Nmが回転数指令値Nrに近づくように適正なデューティ比指令値Arを求めるようにすることもできる。
【0037】
PWM生成回路5は、矩形波のPWM信号SPを生成する回路であり、3段階のPWM周波数が切替え可能となっている。すなわち、通常回転時に用いる常用PWM周波数fN、常用PWM周波数fNよりも小さな低回転時PWM周波数fL、および常用PWM周波数fNよりも大きな高回転時PWM周波数fHの切替えが可能となっている。PWM周波数は、例えば水晶発振器が作り出す高周波基準周波数を分周回路で分周することにより生成でき、分周比を変更することで容易に3段階に切り替えることができる。
【0038】
ここで、
図2に示される負荷の特性グラフ上には、PWM周波数の切替え制御を行うために4点の閾値点P1〜P4が設定されている。各閾値点P1〜P4は回転数Nまたはデューティ比Aを用いて設定することができ、第1実施形態では回転数Nを用いて次のように設定されている。すなわち、
図2に示されるように、回転数の小さい側から順番に、低回転移行閾値N1(閾値点P1)、低回転解消閾値N2
(閾値点P2)、高回転解消閾値N3
(閾値点P3)、および高回転移行閾値N4
(閾値点P4)が設定されている。各閾値N1〜N4(閾値点P1〜P4)は、後述する低回転時および高回転時の位置検出の作用が効果的となるように適宜定められる。
【0039】
PWM生成回路5は、
図3のPWM周波数制御フローに基づき、回転数指令値Nrをパラメータとして、
図2の閾値N1〜N4(閾値点P1〜P4)でPWM周波数を切り替えて用いる。
図3で、回転数指令値Nrが低回転解消閾値N2と高回転解消閾値N3の間の値であるとき、PWM生成回路5は、通常モードMNで常用PWM周波数fNを用いる。次にステップS1で、回転数指令値Nrを一定時間間隔で受け取り更新する。次にステップS2で、最新の回転数指令値Nrが低回転移行閾値N1以下であるか否か判定し、条件が満たされると低回転モードMLに移行して低回転時PWM周波数fLに切り替える。条件が満たされないときは、ステップS3に進む。次にステップS3で、回転数指令値Nrが高回転移行閾値N4以上であるか否か判定し、条件が満たされると高回転モードMHに移行して高回転時PWM周波数fHに切り替える。ステップS2およびステップS3の条件が満たされないときは、通常モードMNを維持して常用PWM周波数fNを用いながら、ステップS1からステップS3を繰返す。
【0040】
PWM生成回路5は、低回転モードMLで低回転時PWM周波数fLを用いながら、ステップS4で回転数指令値Nrを一定時間間隔で受け取り更新する。次にステップS5で、最新の回転数指令値Nrが低回転解消閾値N2以上であるか否か判定し、条件が満たされると通常モードMNに移行して常用PWM周波数fNに切り替える。条件が満たされないときは、低回転モードMLを維持する。また、PWM生成回路5は、高回転モードMHで高回転時PWM周波数fHを用いながら、ステップS6で回転数指令値Nrを一定時間間隔で受け取り更新する。次にステップS7で、最新の回転数指令値Nrが高回転解消閾値N3以下であるか否か判定し、条件が満たされると通常モードMNに移行して常用PWM周波数fNに切り替える。条件が満たされないときは、高回転モードMHを維持する。
【0041】
結局、PWM生成回路5は、回転数指令値Nrが低回転移行閾値N1以下であると低回転時PWM周波数fLを用い、回転数指令値Nrが低回転解消閾値N2と高回転解消閾値N3の間であると常用PWM周波数fNを用い、回転数指令値Nrが高回転移行閾値N4以上であると高回転時PWM周波数fHを用いる。また、PWM生成回路5は、回転数指令値Nrが低回転移行閾値N1と低回転解消閾値N2の間にあるときには、直前に用いていた低回転時PWM周波数fLまたは常用PWM周波数fNを維持し、回転数指令値Nrが高回転解消閾値N3と高回転移行閾値N4の間にあるときには、直前に用いていた常用PWM周波数fNまたは高回転時PWM周波数fHを維持する。PWM生成回路5は、いずれかのPWM周波数(fN、fL、またはfH)を用い、デューティ比指令値Arを満たす矩形波のPWM信号SPを生成し、インバータ制御回路4に送出する。
【0042】
通電相切替設定回路41は、インバータ制御回路4の一部を構成している。通電相切替設定回路41は、位置検出回路3の位置検出部37で検出したロータの基準回転位置の信号に基づいて、電気角の120°ピッチで各相端子95U、95V、95Wの通電相切替タイミングを設定し、インバータ制御回路4に送出する。
【0043】
インバータ制御回路4は、PWM生成回路5からPWM信号SPを取得し、通電相切替設定回路41から通電相切替タイミングを取得する。インバータ制御回路4は、取得した信号にしたがい、インバータ回路2の各相のスイッチング素子22U、23Uを開閉制御する通電制御信号SCを設定して送出する。これにより、各相端子95U、95V、95Wの通電時間帯およびオンデューティ期間が制御される。
【0044】
次に、上述のように構成された第1実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置1の作用について、低回転時と高回転時に分けて説明する。
図4は、第1実施形態の駆動装置1で、低回転時に位置検出回路3の位置信号SXがローレベルLからハイレベルHに変化するときの検出可否を説明する波形図である。
図4の(A)は低回転時に常用PWM周波数fNが用いられたときの検出限界を示し、(B)は低回転時に低回転時PWM周波数fLを用いれば十分検出可能であることを示し、(C)は更なる低回転時に低回転時PWM周波数fLが用いられたときの検出限界を示している。(A)〜(C)でそれぞれ、上段はPWM信号SPの波形、中段は位置信号SXの波形、下段はロータ回転位置を示し、横軸は共通の時間軸である。
図4の(A)〜(C)に示されるPWM信号SPは負論理であり、ローレベルがオンデューティ期間で、電源電圧Vccがいずれかの相端子95U、95V、95Wに印加されるようになっている。
【0045】
図4の(A)では低回転時に常用PWM周波数fNが用いられており、PWM信号SPの周期T1、オンデューティ期間T2であり、デューティ比AL1=(T2/T1)である。位置検出回路3は、PWM信号SPの特定位相のうちの立ち下がり位相(負論理の波形では立ち上がり位相)すなわちオンデューティ期間T2の終了時刻t11、t12、t13(図中に下向き矢印で示す)で動作して位置信号SXを読み取るようになっている。また、位置信号SXは、PWM信号SPよりも伝達遅延時間ΔTだけ遅れたオンデューティ期間にのみ出力される。伝達遅延時間ΔTは、インバータ制御回路4やインバータ回路2および比較器34などで生じる電気信号の遅れであり、回路構成によって定まる概ね一定の時間である。一方、ロータ回転位置は、時刻tAで基準回転位置を通過している。このため、位置信号SXは、時刻tA以降のオンデューティ期間にハイレベルHとなる。
【0046】
ここで、
図4の(A)に示されるように、位置検出回路3が位置信号SXを読み取る時刻t13は、位置信号SXのハイレベルH期間の概ね始点に一致している。したがって、オンデューティ期間T2をさらに短縮してデューティ比AL1を小さく制御すると、もはや位置検出はできなくなる。なぜなら、位置信号SXにおけるオンデューティ期間の全体が、時刻t13よりも後まで遅延してしまい、読み取るタイミングがなくなるからである。つまり、(A)は、常用PWM周波数fNが用いられたときにオンデューティ期間T2が伝達遅延時間ΔTに概ね一致する検出限界を示し、これ以上オンデューティ期間T2を短縮する低回転制御は困難である。これは、一定のPWM周波数fNを用いる従来の駆動装置の検出限界でもある。
【0047】
第1実施形態では、回転数が減少して
図4の(A)の検出限界に達する以前にPWM周波数を低回転時PWM周波数fLに切り替える。例えば、低回転時PWM周波数fLを常用PWM周波数fNの半分としておくと、PWM信号SPの周期T3は2倍になる(T3=2×T1)。したがって、(B)に示されるように、オンデューティ期間T4も2倍にすることで(T4=2×T2)、(1)と同じデューティ比AL1が得られ、同じ電源電圧実効値で同じ回転数が得られる。これにより、位置信号SXにおけるオンデューティ期間の長さも2倍となる。このため、位置検出回路3が位置信号SXを読み取る時刻t21(図中に下向き矢印で示す)は位置信号SXのハイレベルH期間の中間付近となり、十分に読み取り可能である。
【0048】
また、低回転時PWM周波数fLを用いたときには、
図4の(C)に示されるように、PWM信号SPの周期T3(=2×T1)で、オンデューティ期間T5が伝達遅延時間ΔT(≒T2)に概ね一致したときが検出限界となる。このときのデューティ比AL2は、AL2=(T5/T3)≒AL1×(1/2)となり、従来よりも低い回転数までの駆動制御が可能となる。以上の説明からわかるように、低回転時PWM周波数fLを常用PWM周波数fNの(1/k)倍とすれば、概ね(1/k)倍のデューティ比Aまでの低回転駆動制御が可能となる。
【0049】
次に、
図5は、第1実施形態の駆動装置1で、高回転時に位置検出回路3の位置信号SXを読み取る際の遅延による位置検出誤差を説明する波形図である。
図5の(A)は高回転時に常用PWM周波数fNが用いられたときの位置検出誤差を示し、(B)は高回転時に高回転時PWM周波数fHを用いれば位置検出誤差が低減されることを示している。(A)および(B)でそれぞれ、上段はPWM信号SPの波形、中段は位置信号SXの波形、下段はロータ回転位置を示し、横軸は共通の時間軸である。
図5においても、
図4と同様にPWM信号SPは負論理であり、ローレベルがオンデューティ期間で、電源電圧Vccがいずれかの相端子95U、95V、95Wに印加されるようになっている。
【0050】
図5の(A)では高回転時に常用PWM周波数fNが用いられており、PWM信号SPの周期T1、オンデューティ期間T6であり、デューティ比AH1=(T6/T1)である。位置検出回路3は、PWM信号SPのオンデューティ期間T6の終了時刻t11、t12、t13(図中に下向き矢印で示す)で動作して位置信号SXを読み取るようになっている。また、位置信号SXは、PWM信号SPよりも伝達遅延時間ΔTだけ遅れたオンデューティ期間にのみ出力される。一方、ロータ回転位置は、時刻tBで基準回転位置を通過している。このため、位置信号SXは、時刻tB以降のオンデューティ期間にハイレベルHとなる。
【0051】
ここで、
図5の(A)に示されるように、位置検出回路3は、時刻t11およびt12で位置信号SXのローレベルLを検出し、時刻t13で位置信号SXのハイレベルHを検出する。したがって、位置検出回路3は、時刻t13でロータが基準回転位置に達したことを検出するが、時刻tBからの遅延に起因して、回転位置の位置検出誤差ER1が発生する。位置検出誤差ER1は、回転数が高いほど大きくなり、高回転時の駆動制御を困難にする。
【0052】
第1実施形態では、回転数が増加して誤差ER1が駆動制御を困難にする以前にPWM周波数を高回転時PWM周波数fHに切り替える。例えば、高回転時PWM周波数fHを常用PWM周波数fNの2倍としておくと、PWM信号SPの周期T7は半分になる(T7=T1/2)。したがって、(B)に示されるように、オンデューティ期間T8も半分にすることで(T8=T6/2)、(A)と同じデューティ比AH1が得られ、同じ電源電圧実効値で同じ回転数が得られる。これにより、位置検出回路3で位置信号SXを読み取る頻度が倍増し、位置信号SXの変化を読み取る時刻t21の時刻tBからの遅延が減少する。このため、遅延に起因する位置検出誤差ER2が(A)よりも低減される。したがって、高回転領域で回転位置を高精度に検出して良好に駆動制御を行え、また従来よりも高い回転数までの駆動制御が可能となる。
【0053】
上述のように、第1実施形態の駆動装置1では、低回転領域および高回転領域の両方で回転位置を高精度に検出して良好に駆動制御を行えるので、従来よりも回転数範囲を拡げて最大限にワイドレンジ化できる。また、PWM周波数は、常用、低回転時、および高回転時の3段階切り替えであり、例えば前述した分周回路の分周比を変更することで容易に実現できるので、従来と比較してコストの増加が抑制される。さらに、PWM周波数を切り替えるときの低回転移行閾値N1と低回転解消閾値N2との間、および高回転移行閾値N4と高回転解消閾値N3との間にヒステリシスを設けている。これにより、PWM周波数SPを切り替える境界領域付近の回転数でロータが回転しているときに、PWM周波数SPを頻繁に切り替え制御することがなくなる。
【0054】
次に、デューティ比検出値AmをパラメータとしてPWM周波数を切り替える第2実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図6は、第2実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置10の全体装置構成を説明する図である。
図6を
図1と比較すればわかるように、第2実施形態では、次の2点が第1実施形態と異なる。すなわち、回転数設定回路51に替えてデューティ比設定回路52が設けられている。また、インバータ制御回路4で通電制御信号SCのデューティ比検出値Amが求められ、PWM生成回路50にフィードバックされている。
【0055】
デューティ比設定回路52は、PWM生成回路5の一部を構成している。デューティ比設定回路52には、外部からデューティ比指令値Arが指令入力され、PWM生成回路50に形態を変換したデューティ比指令値Arを出力する。
【0056】
PWM生成回路50は、矩形波のPWM信号SPを生成する回路であり、常用、低回転時および高回転時の3段階のPWM周波数fN、fL、fHが切替え可能となっている。ここで、
図2に示される閾値点P1〜P4は、デューティ比Aを用いて設定されている。すなわちデューティ比Aの小さい側から順番に、低回転移行閾値A1(閾値点P1)、低回転解消閾値A2
(閾値点P2)、高回転解消閾値A3
(閾値点P3)、および高回転移行閾値A4
(閾値点P4)が設定されている。
【0057】
PWM生成回路50は、
図7のPWM周波数制御フローに基づき、デューティ比検出値Amをパラメータとして、閾値A1〜A4(閾値点P1〜P4)でPWM周波数を切り替えて用いる。
図7のPWM周波数制御フローは、
図3のフローに類似しているので、簡略に説明する。PWM生成回路50は、通常モードMNで常用PWM周波数fNを用いつつ、ステップS11でデューティ比検出値Amを更新する。次にステップS12で、デューティ比検出値Amが低回転移行閾値A1以下であると低回転モードMLに移行して低回転時PWM周波数fLに切り替え、またステップS13で、デューティ比検出値Amが高回転移行閾値A4以上であると高回転モードMHに移行して高回転時PWM周波数fHに切り替える。ステップS12およびステップS13の条件が満たされないときは、通常モードMNを維持して常用PWM周波数fNを用いながら、ステップS1からステップS3を繰返す。
【0058】
PWM生成回路50は、低回転モードMLで低回転時PWM周波数fLを用いながら、ステップS14およびステップS15でデューティ比検出値Amが低回転解消閾値A2以上であると通常モードMNに移行して常用PWM周波数fNに切り替える。また、条件が満たされないときは、低回転モードMLを維持する。PWM生成回路50は、高回転モードMHで高回転時PWM周波数fHを用いながら、ステップS16およびステップS17でデューティ比検出値Amが高回転解消閾値A3以下であると通常モードMNに移行して常用PWM周波数fNに切り替える。また、条件が満たされないときは、高回転モードMHを維持する。
【0059】
上述のようにPWM周波数を切替え制御することで、第1実施形態と同様の効果、すなわち
図4および
図5で説明した低回転時および高回転時の位置検出の作用が生じる。また、従来よりも回転数範囲を拡げて最大限にワイドレンジ化できる効果も同様である。
【0060】
次に、モータ90の電機子巻線92A〜94Aの結線方式および位置検出回路30の比較器34の基準電圧が異なる第3実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置について説明する。
図8は、第3実施形態のセンサレスブラシレスモータの駆動装置11の全体装置構成を説明する図である。図示されるように、第3実施形態では、三相の電機子巻線92A〜94AはY結線とされている。すなわち、U相端子95Uと中性点95Nの間にU相電機子巻線92Aが接続され、同様に、V相端子95Vと中性点95Nの間にV相電機子巻線93A、W相端子95Wと中性点95Nの間にW相電機子巻線94Aが接続されている。そして、中性点95Nがモータ90の外部に引き出されて、比較器34の負側入力端子−に接続されている。つまり、電機子巻線のY結線の中性点電圧VNが、比較器34の基準電圧となっている。第3実施形態のその他の部分の構成は、第1実施形態と同じである。
【0061】
第3実施形態で、例えば、U相端子95Uがハイインピダンス状態、V相端子95Vがゼロ電圧拘束状態、W相端子95WがPWM制御状態であると、電源電圧VccがW相端子95WとV相端子95Vの間に供給される。つまり、W相電機子巻線94AおよびV相電機子巻線93Aが通電され、中性点95Nに発生する中性点電圧VNは電源電圧Vccの半分、すなわち中間レベル値VMに一致する。したがって、第3実施形態の駆動装置11の駆動動作は第1実施形態と概ね同じになり、効果も同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
さらに、
図6に示される第2実施形態の全体装置構成で、Δ結線のモータ9をY結線のモータ90に置き換えて、中性点電圧VNを比較器34の基準電圧とすることもできる。
【0063】
なお、PWM周波数切替えのパラメータとしては、説明した回転数指令値Nrおよびデューティ比検出値Amの他に、回転数検出値Nmまたはデューティ比指令値Arを用いることもできる。また、各実施形態でPWM周波数は3段階としたが、4段階以上として小刻みに切り替えることも可能である。逆に、常用と低回転時の2段階のみ、あるいは常用と高回転時の2段階のみとしてもワイドレンジ化の効果が生じる。本発明は、その他様々な応用や変形が可能である。