特許第5772048号(P5772048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772048
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】浴槽洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20150813BHJP
【FI】
   A47K3/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-35396(P2011-35396)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-170614(P2012-170614A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰成
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−328124(JP,A)
【文献】 特開2009−162460(JP,A)
【文献】 特開平11−299671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄水を噴射させることにより洗浄する浴槽洗浄装置であって、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出手段と、
前記洗浄ノズルからの洗浄水の吐出流量を変更調整する流量調整手段と、
前記水位検出手段により得られる入浴時の喫水面水位の高低如何に応じて前記流量調整手段による吐出流量を変更調整した上で、前記洗浄ノズルから洗浄水を噴射させる洗浄制御手段と
を備え
前記洗浄制御手段は、前記水位検出手段により得られた入浴時の喫水面水位の変動履歴の内の最も高水位の値に対応する上側の喫水線位置に対し前記洗浄水が噴射されるよう、前記流量調整手段による吐出流量を変更調整するように構成されている、
ことを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項2】
請求項に記載の浴槽洗浄装置であって、
前記洗浄制御手段は、前記水位検出手段により得られた入浴時の喫水面水位の変動履歴の内の最も低水位の値に対応する下側の喫水線位置に対しても前記洗浄水が噴射されるよう、前記流量調整手段による吐出流量を変更調整した上で、前記下側の喫水線位置に対する洗浄の噴射を併せて実行するように構成されている、浴槽洗浄装置。
【請求項3】
請求項に記載の浴槽洗浄装置であって、
前記洗浄制御手段は、前記下側の喫水線位置に対する洗浄を実行した後に、前記上側の喫水線位置に対する洗浄を実行するように構成されている、浴槽洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれかに記載の浴槽洗浄装置であって、
前記洗浄水として加熱後の湯又は非加熱の水を供給するように付設される一方、前記浴槽と浴槽内の湯水と連通可能な管路によって互いに接続される熱源機を備え、
前記熱源機は、前記管路内に作用する前記浴槽内からの水圧に基づいて前記浴槽内の水位を検出する水位検出手段を備えている、浴槽洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の内壁面等に対し洗浄水を噴射させて内壁面等に付着したゴミや湯あか等を自動洗浄するための浴槽洗浄装置に関し、特に最も汚れの付着した部位を自動判定し、かかる部位を重点的に洗浄し得るようにする技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽洗浄装置として、浴槽に洗浄ノズルを設置し、この洗浄ノズルに対し洗浄用の洗浄水を供給することにより浴槽の内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄水を噴射させ、これにより浴槽の内壁面を洗浄するものが知られている。このような浴槽洗浄装置において、例えば特許文献1では、洗浄水を所定の流量に制御するために、洗剤混合部よりも上流側位置に水量調整弁又は定流量弁を介装することが提案されている。そして、このような水量調整弁等の流量制御手段を備えることで、給湯器側での流量制御が不要となって上水を直接に利用することができ、あるいは、洗浄に適した濃度の洗浄水を浴槽の内壁面の全面にわたり噴射したり、喫水線近傍に向けて噴射したりすることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−299671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴槽の汚れは、入浴者が入浴した状態における上昇水面(喫水面)と、浴槽の内壁面とが接触する喫水線近傍に付着し易いため、この部位を狙って洗浄水を噴射するようにすればよいと考えられる。ところが、浴槽に入浴する入浴者は特定の一人だけとは限らず、1回の湯張り後に複数人が繰り返し入浴することもあり、さらに、その入浴者(例えば親と子)の体重等も様々であるため、喫水線は一定ではない。このため、洗浄水を噴射させる狙いの位置として、入浴時の喫水線になるであろうと通常想定される想定上の喫水線位置を設定し、この想定上の喫水線位置に洗浄水を噴射するように設計することが考えられる。
【0005】
しかしながら、このようにすると、想定上の喫水線位置と、実際の喫水線位置との相違に起因して、自動洗浄を実行させても、汚れが落ちなかったり、たとえ落ちたとしても汚れがまだら模様となって残ったりするおそれが考えられる。
【0006】
すなわち、実際の喫水線位置が想定上の喫水線位置よりもかなり高いと、汚れはそのまま残留するおそれがあったり、逆に、実際の喫水線位置が想定上の喫水線位置よりもかなり低いと、洗浄水の垂れ落ちにより汚れがまだら模様となって残るおそれがあったりすることが考えられる。例えば、図9に示すように、実際の喫水線位置Kが想定上の喫水線位置(洗浄水Wの噴射位置)Fよりもかなり低いときには、想定上の喫水線位置Fに対し噴射された洗浄水が浴槽Bの内壁面に沿って流れ落ちるに従ってまとまるようになる。このため、実際の喫水線位置Kに付着した帯状の汚れGの内、まとまった洗浄水流下部R,R,…が流下する部分の汚れは洗い流されるものの、それ以外の部分g,g,…は汚れが付着したまま残ることになる。この結果、前記の部分g,g,…がまだら模様となって汚れたまま残るおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汚れが最も付着するであろうと考えられる実際の喫水線位置を実際の入浴状況に対応して自動判定し、実際の喫水線位置を重点的に洗浄し得るようにすることで、浴槽内の洗浄を確実に行い得る浴槽洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明では、浴槽の内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄水を噴射させることにより洗浄する浴槽洗浄装置を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記浴槽内の水位を検出する水位検出手段と、前記洗浄ノズルからの洗浄水の吐出流量を変更調整する流量調整手段と、前記水位検出手段により得られる入浴時の喫水面水位の高低如何に応じて前記流量調整手段による吐出流量を変更調整した上で、前記洗浄ノズルから洗浄水を噴射させる洗浄制御手段とを備えることとする
【0010】
加えて、本発明では、洗浄制御手段として、前記水位検出手段により得られた入浴時の喫水面水位の変動履歴の内の最も高水位の値に対応する上側の喫水線位置に対し前記洗浄水が噴射されるよう、前記流量調整手段による吐出流量を変更調整する構成とすることとした(請求項)。本発明の場合、実際の入浴状況に応じて得られた喫水面水位に基づいて、洗浄ノズルからの洗浄水の吐出流量を変更調整しているため、その喫水面水位に対応する喫水線位置に対し洗浄水を噴射させて洗浄することが可能となる。かかる喫水線位置に入浴後の汚れが最も付着することになるため、実際の入浴状況に応じて付着した汚れを確実に洗浄して除去することが可能となる。加えて、色々な入浴者が入浴したとしても、最も体積の大きい入浴者の入浴により喫水面水位が最高に上昇したときの喫水線位置に最も汚れが付着することになる。このため、このような上側の喫水線位置に対し洗浄ノズルからの洗浄水を噴射させることで、その汚れを確実に洗浄して除去し得ることになる。
【0011】
前記発明の浴槽洗浄装置において、洗浄制御手段として、前記水位検出手段により得られた入浴時の喫水面水位の変動履歴の内の最も低水位の値に対応する下側の喫水線位置に対しても前記洗浄水が噴射されるよう、前記流量調整手段による吐出流量を変更調整した上で、前記下側の喫水線位置に対する洗浄の噴射を併せて実行する構成とすることができる(請求項)。このようにすることにより、入浴者がたとえ複数人いたとしても、喫水面水位の最も低水位の値に対応する下側の喫水線位置と、最も高水位の値に対応する上側の喫水線位置との双方に対し洗浄水を噴射させて洗浄することが可能となる。このため、実際の入浴状況に応じて浴槽の内壁面に付着してしまうことになる汚れの全てを、的確に洗浄して洗い流すことが可能となる。
【0012】
又、前記発明の浴槽洗浄装置において、洗浄制御手段として、前記下側の喫水線位置に対する洗浄を実行した後に、前記上側の喫水線位置に対する洗浄を実行する構成とすることができる(請求項)。このようにすることにより、下側の喫水線位置にある汚れがまず洗い流された後に、上側の喫水線位置にある汚れが洗い流されることになる。このため、従来、洗浄水が噴射される狙い位置よりも下位に汚れがまだら模様になって残るような現象が確実に防止される。
【0013】
以上の発明の浴槽洗浄装置において、前記洗浄水として加熱後の湯又は非加熱の水を供給するように付設される一方、前記浴槽と浴槽内の湯水と連通可能な管路によって互いに接続される熱源機を備えることとし、前記熱源機が、前記管路内に作用する前記浴槽内からの水圧に基づいて前記浴槽内の水位を検出する水位検出手段を備えるようにすることができる(請求項)。このようにすることにより、喫水面水位を検出する水位検出手段として、前記熱源機が備える水位検出手段を用いることが可能となる。このため、浴槽に対し水位センサ等を特別に設置することなく、熱源機側との連係により効率よく喫水面水位の検出を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の浴槽洗浄装置によれば、実際の入浴状況に応じて得られた喫水面水位に基づいて、洗浄ノズルからの洗浄水の吐出流量を変更調整しているため、その喫水面水位に対応する実際の喫水線位置に対し洗浄水を噴射させて洗浄することができる。そして、かかる喫水線位置に入浴後の汚れが最も付着することになるため、実際の入浴状況に応じて付着した汚れを確実に洗浄して除去することができるようになる。
【0015】
加えて、色々な入浴者が入浴したとしても、最も体積の大きい入浴者の入浴により喫水面水位が最高に上昇したときの喫水線位置に最も汚れが付着することになるため、このような上側の喫水線位置に対し洗浄ノズルからの洗浄水を噴射させることで、その汚れを確実に洗浄して除去することができるようになる。
【0016】
請求項によれば、入浴者がたとえ複数人いたとしても、喫水面水位の最も低水位の値に対応する下側の喫水線位置と、最も高水位の値に対応する上側の喫水線位置との双方に対し洗浄水を噴射させて洗浄することができ、実際の入浴状況に応じて浴槽の内壁面に付着してしまうことになる汚れの全てを、的確に洗浄して洗い流すことができるようになる。
【0017】
請求項によれば、下側の喫水線位置にある汚れがまず洗い流された後に、上側の喫水線位置にある汚れが洗い流されることになるため、従来、洗浄水が噴射される狙い位置よりも下位に汚れがまだら模様になって残るような現象を確実に防止することができるようになる。
【0018】
請求項によれば、喫水面水位を検出する水位検出手段として、前記熱源機が備える水位検出手段を用いることができ、浴槽に対し水位センサ等を特別に設置することなく、熱源機側のとの連係により効率よく喫水面水位の検出を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の浴槽洗浄装置の実施形態を適用した風呂システムを示す模式図である。
図2】実施形態における浴槽洗浄制御に係る部分のブロック構成図である。
図3】喫水面水位と洗浄水の吐出流量との関係テーブルの例を示す説明図である。
図4】熱源機側での喫水面水位取得処理に係る制御フローチャートの前半部である。
図5図4の制御フローチャートの後半部である。
図6】浴槽洗浄装置側での洗浄制御に係る制御フローチャートである。
図7図7(a)は湯張りが完了し非入浴での基準水位の状態を示す断面説明図であり、図7(b)は入浴者が入浴して水位が上昇した状態を示す断面説明図である。
図8図8(a)は入浴終了後の排水途中であって循環口まで水位降下した状態を示す断面説明図であり、図8(b)は喫水面水位データの上限値・下限値のそれぞれの喫水線近傍に対し洗浄水を噴射する洗浄処理の状況を示す断面説明図である。
図9】実際の喫水線が想定上の喫水線よりも下位にある場合に生じるおそれのある、まだら模様の汚れの発生状況を示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に本発明の実施形態に係る浴槽洗浄装置を適用した風呂システムを示す。同図において、符号1は浴室を区画形成する浴室壁又は浴室を含む建物の壁であり、壁1の内側に浴槽2及び浴槽洗浄ユニット3が配設される一方、壁1の外側に熱源機(例えば給湯器付き風呂釜)4が配設されている。なお、図1は配管等のつながりを示すものであり、上下関係を特定するものではない。
【0022】
熱源機4は、給湯機能、湯張り機能及び追い焚き機能を備えた複合熱源機であり、図1には熱源機4として1缶2水式に構成されたものを例示している。すなわち、熱源機4は、風呂熱交換器41と給湯熱交換器42とが1つの缶体内に配設されて共通の熱源である燃焼バーナ43により熱交換加熱されるように構成されている。以下、熱源機4について先に概略説明した上で、浴槽2の側の構成について詳細に説明する。
【0023】
前記熱源機4は、水道水等の給水を給水路に受けて給湯熱交換器42において燃焼バーナ43の燃焼熱との熱交換加熱により所定温度まで加熱した湯を給湯路44に出湯させ、この給湯路44を通して台所や洗面所等の各所の給湯栓45や浴槽洗浄ユニット3に給湯するようになっている。又、熱源機4は追い焚き機能を実現するための戻り路46及び往き路47からなる追い焚き循環路48を備え、浴槽2内に湯張りされた浴槽湯水を図示省略の循環ポンプの作動により風呂熱交換器41との間に循環させて、所定温度まで追い焚き加熱し得るようになっている。さらに、前記の熱源機4内において給湯路44から分岐した注湯路を通して追い焚き循環路48に注湯を受け、この注湯を追い焚き循環路48を通して浴槽2に注湯することにより浴槽2に対する湯張りが行われるようになっている。その際、熱源機4内において追い焚き循環路48に介装された圧力検知式の水位センサ49により浴槽2内の水位を検出して、その水位検出値を熱源機コントローラ5に出力するようになっている。前記の水位センサ49は、浴槽2内の湯水と連通された密閉状態の追い焚き循環路48内の水圧を検出することで、浴槽2内の水位を測定・検知するようになっている。
【0024】
以上の給湯、追い焚き及び湯張りの各運転は台所リモコン51等により入力設定される設定出湯温度や湯張り温度等の設定情報に基づいて熱源機コントローラ5による作動制御によって実現されるようになっている。例えば、給湯制御部52による給湯制御は、給湯栓45が開かれたり浴槽洗浄ユニット3の注湯電磁弁30が開かれたりして所定の作動流量以上の入水が検知されると、燃焼バーナ43を燃焼作動させて給水路からの入水を加熱し、所定温度の湯を給湯路44に出湯させるようになっている。又、湯張り制御が開始されると、前記注湯路を開作動させる一方、燃焼バーナ43を燃焼作動させて給水路からの入水を加熱し、所定温度の湯を給湯路44,注湯路,追い焚き循環路48を通して浴槽2まで注湯することにより湯張りされるようになっている。その際、風呂自動処理の場合には、この湯張りの後に、さらに所定の沸き上がり温度まで昇温させて維持させる追い焚き制御が循環ポンプ(図示省略)及び燃焼バーナ43をそれぞれ作動させることにより行われるようになっている。
【0025】
浴室に設置された浴槽2には、その側壁の最下端近傍位置に循環アダプタ21が設置され、底壁には自動開閉駆動制御式の排水栓22及び後述の洗浄ノズル24が設置され、上面側のフランジ壁には開閉駆動機構23及び後述の洗剤タンク27が設置されている。前記の循環アダプタ21には追い焚き循環路48の戻り路46及び往き路47がそれぞれ接続され、循環アダプタ21を介して浴槽2内の浴槽湯水が戻り路46に吸引される一方、往き路47から浴槽2内に吐出されるようになっている。又、排水栓22は開閉駆動機構23から開閉駆動力の伝達を受けて開閉作動されるようになっており、この開閉駆動機構23にはその作動状態(排水栓22が開状態か閉状態か)の如何を検出する排水栓状態検出センサ(図示省略)が設置され、これからの出力信号に基づき開閉駆動機構23が作動制御されるようになっている。排水栓22が開かれると、浴槽2内の湯水が浴室底部に排出され、続いて浴室の排水口から排水されることになる。
【0026】
浴槽洗浄ユニット3は、浴槽2の内壁面等を対象にして洗浄処理するために設置されるものである。浴槽洗浄ユニット3は、前記の浴槽2の底壁に設置された洗浄ノズル24と、この洗浄ノズル24に洗浄水を供給する洗浄配管25と、洗浄配管25の上流端において洗剤を混入させる洗剤混入部26と、この洗剤混入部26に供給するための洗剤を貯留する前記の洗剤タンク27と、洗剤タンク27からの洗剤の供給・停止の切換を行う洗剤電磁弁28と、前記の洗浄配管25の上流端に対し洗浄用の湯又は水(以下「湯水」という)が供給されるよう給湯路44を連通させる注湯配管29と、注湯配管29に介装されて給湯路44からの湯水を供給するか否かの切換を行う注湯電磁弁30と、その供給流量を検出する流量センサ31と、この流量センサ31と連係して供給流量を変更調整するための水量サーボ弁により構成された流量調整手段としての流量調整弁32とを備えて構成されている。又、注湯配管29には、洗剤混入部26と注湯電磁弁30との間に逆止弁・縁切り弁セットが介装されている。図例の逆止弁・縁切り弁セットは上下流両側位置の逆止弁33,33に挟まれた状態で2つの縁切り弁34,34を介装させて構成している。これらは、一次側である熱源機4側が停電や故障等の原因により低圧状態(負圧状態)に万一陥ったとしても、浴槽2側から熱源機4側に逆流しないように遮断するために介装されるものである。なお、図1の符号35はフィルタである。ここで、「洗浄水」という場合は、洗剤が混入された湯水の他に、洗剤を含まないすすぎ洗浄用の湯水も含むものである。
【0027】
前記洗浄ノズル24は浴槽2の底壁を貫通して設置され先端開口(上面開口)から浴槽2の内壁面等に向けて所定範囲の広がりをもって洗浄水を噴出するようになっている。なお、洗浄ノズル24として、図例では1つのみを図示しているが、浴槽2のサイズや洗浄対象の浴槽等に応じて2以上のものを所定配置にて設置することができ、その場合には洗浄配管25から他の洗浄ノズルに向けて第2・第3の洗浄配管を分岐させればよい。
【0028】
洗剤混入部26はベンチュリ管により構成されている。洗剤混入部26は、洗剤電磁弁28を開作動(例えば所定時間ずつ間欠的に開作動)させることにより洗剤タンク27から供給される所定量の洗剤が、洗剤混入部26において洗浄水の通過に伴い発生する負圧吸引作用により洗浄水中に吸い込まれて混合されるようになっている。そして、洗剤電磁弁28を開弁状態にさせている開弁時間の長短によって、1回の洗浄に対する洗剤供給量の調整が可能となっている。なお、前記洗剤タンク27には洗剤の液位を検知するフロートスイッチが設置されており、所定の液位まで低下したことを検知して後述の洗浄コントローラ6に出力するようになっている。
【0029】
前記の浴槽洗浄ユニット3の各作動要素28,30,32や、浴槽2の洗浄に係る作動要素22,23は、洗浄制御手段としての洗浄コントローラ6によって作動制御されるようになっている。この洗浄コントローラ6には洗浄運転用の洗浄リモコン61が接続される一方、洗浄コントローラ6(図2も併せて参照)は熱源機コントローラ5と双方向通信可能に接続されている。そして、ユーザが洗浄リモコン61を用いて洗浄の実行を入力操作(例えば洗浄スイッチのON操作)することにより、洗浄コントローラ6は熱源機コントローラ5と連係して浴槽等を対象にした浴槽洗浄制御を実行するようになっている。なお、熱源機コントローラ5には、台所リモコン51に加えて浴室リモコン62が接続されており、この浴室リモコン62により湯張りや追い焚き運転の入力操作をし得るようになっている。又、前記の浴槽洗浄制御の実行は、風呂自動スイッチ等のON操作により風呂湯張り等の前段階において自動的に開始されるようにしても、あるいは、ユーザ設定等により入浴終了後の排水スイッチ等のON操作により排水処理後の所定のタイミングで自動的に開始されるようにしてもよい。
【0030】
次に、前記洗浄コントローラ6により実行される浴槽洗浄制御について詳細に説明する。なお、以下では、浴槽洗浄制御は洗浄スイッチのON操作により開始されるものとして説明する。浴槽洗浄制御は、前段階の喫水面水位データ取得処理と、喫水面水位データ取得処理により取得された喫水面水位データLa,Lbに基づき実行される浴槽洗浄処理とを有している。熱源機コントローラ5は、給湯制御部52、風呂制御部53及び喫水面水位取得処理部54を備え、洗浄コントローラ6は、浴槽洗浄処理を実行する洗浄制御部63と、予め登録された吐出流量テーブル64とを備えている。吐出流量テーブル64は、図3に例示するように、喫水面水位の高低と、その喫水面水位の喫水線位置まで洗浄ノズル24からの噴射により洗浄水を到達させるための洗浄水の吐出流量との関係について、予め試験等により得たものを関係テーブルのデータ形式に整理したものである。つまり、吐出流量テーブル64により割り出された吐出流量を流量調整弁32により設定することで、洗浄ノズル24から噴射(吐出)される洗浄水がその吐出流量に対応する喫水面水位の喫水線位置まで到達することになる。喫水面水位取得処理部54により喫水面水位データ取得処理(図4図5に例示)が実行され、洗浄制御部63により喫水面水位データLa,Lbに基づき吐出流量テーブル64から割り出された吐出流量による洗浄水噴射(図6に例示)が実行されることになる。
【0031】
以下、図4図5を参照しつつ、前段階の喫水面水位データ取得処理について説明する。この喫水面水位データ取得処理は、湯張り完了から入浴が終了して排水されるまでの間に得られる水位センサ49からの水位検出値に基づいて行われる。まず、湯張りが完了したことを確認した上で(ステップS11でYES)、喫水面水位データLa,Lbをリセットする(ステップS12)。湯張り完了は、熱源機コントローラ5の風呂制御部53からの出力信号、つまり入力設定された基準湯張り水位Ls(図7(a)参照)までの湯張りが完了した旨の出力信号を受けて判定する。喫水面水位データLa,Lbのリセットは、前回までに取得されて記録されていた値をリセットするものである。単なるリセット(La,Lb=0)に代えて、所定の基準水位値を記録するようにしてもよい。ここで、Laは喫水面水位データの下限値を表し、Lbは喫水面水位データの上限値を表す。
【0032】
次に、水位センサ49からの水位検出値Lを取り込み(ステップS13)、その水位検出値Lの変化に基づいて入浴者が入浴したか否かの判定を行う(ステップS14)。この判定は、水位検出値Lの前回検出値から今回検出値までの間で設定値以上の急激な水位上昇があれば入浴者が入浴したと判定し、そうでなければ入浴はないと判定する。入浴があれば(ステップS14でYES)、その入浴は今回の湯張り後で初回のものか否かを判定し(ステップS15)、初回であれば(ステップS15でYES)、その急激な水位上昇後の水位Lup1の値を喫水面水位データLa,Lbにそれぞれ設定・更新し(ステップS16)、続いて、ステップS13での新たな水位検出値Lの取り込み、ステップS14の判定を繰り返す。例えば図7(b)に示すように入浴者Pが入浴したことによって水位がLsからLup1に上昇すれば、そのLup1をひとまず喫水面水位データLa,Lbの双方に設定する。
【0033】
2回目以降のステップS14における入浴したか否かの判定は、同じ人でも2回目の入浴であったり、あるいは、異なる人が同じ湯張り状態の浴槽2に入浴したりする場合を想定している。従って、2回目以降の入浴が無ければ(ステップS14でNO)、喫水面水位データの下限値La,上限値Lbは共に同じ値となる。2回目の入浴があれば(ステップS14でYES,ステップS15でNO)、もしも、今回の水位検出値Lが前回の水位Lup1よりも低ければ、その水位検出値Lを下限値Laに設定・更新し、逆に、もしも、今回の水位検出値Lが前回の水位Lup1よりも高ければ、その水位検出値Lを上限値Lbに設定・更新する(ステップS17)。例えば、2回目の入浴者P(例えば子供)が1回目の入浴者P(例えば父親)よりも小さければ、今回の水位上昇後の水位は1回目の水位Lup1よりも低くなるため、その水位の値を下限値Laに設定して更新する。逆に、2回目の入浴者P(例えば父親)が1回目の入浴者P(例えば子供)よりも大きければ、今回の水位上昇後の水位は1回目の水位Lup1よりも高くなるため、その水位の値を上限値Lbに設定して更新する。
【0034】
次に、水位検出値Lに基づいて一定速度の連続した水位降下があったか否かの判定(ステップS18)、もしも該当する水位降下があれば(ステップS18でYES)、その水位降下は循環アダプタ21の循環口を下回ったか否かの判定(ステップS19)、もしも図8(a)に示すように基準水位Lsから水位降下してその水位が循環アダプタ21の循環口を下回っていれば(ステップS19でYES)、下回ってから設定時間が経過したか否かの判定(ステップS20)を順に実行し、もしも設定時間が経過していれば(ステップS20でYES)、その時点で喫水面水位データの下限値La及び上限値Lbに格納されているデータを洗浄コントローラ6に送出し(ステップS21)、次の湯張り完了まで待機する(ステップS11でNO)。水位降下が前記の循環アダプタ21の循環口を下回れば、もはや水位センサ49による水位検出は不能となるため、排水栓22から完全に排水されるのに要する時間値が設定されている前記の設定時間の経過を待った上で、浴槽2から完全に排水されたものと判定するようにしている。
【0035】
逆に、ステップS18で該当する水位降下が無ければ(ステップS18でNO)、水位降下はあったがまだ循環口を下回ってはいなければ(ステップS19でNO)、あるいは、循環口を下回ったもののまだ設定時間が経過していなければ(ステップS20でNO)、いずれもステップS13に戻って、水位検出(ステップS13)、入浴したか否かの判定(ステップS14)、喫水面水位データの更新(ステップS17)を繰り返す。以上で、今回の湯張り状態での喫水面水位データ取得処理が完了する。
【0036】
次に、熱源機コントローラ5から送出された喫水面水位データLa,Lbに基づき洗浄コントローラ6により実行される浴槽洗浄処理について説明する。前提として、洗浄リモコン61の洗浄スイッチがユーザによりONされて洗浄指令に係る信号が出力されると浴槽洗浄制御が開始される。
【0037】
まず、基本的な浴槽洗浄処理の一例について簡単に説明すると、洗剤混入部26において洗剤を混入した洗浄水を洗浄ノズル24から噴出させて浴槽内等を洗浄する浴槽洗浄モードと、この後に洗剤を混入させない洗浄水を洗浄ノズル24から噴出させるすすぎ洗浄モードとを行う。例えば、まず、開閉駆動機構23を開作動させることにより排水栓22を開変換し、排水栓22が開状態のままで設定時間(例えば10分間)だけ待機することにより、浴槽2内に残水が有ったとしてもその残水が排水されて空になるまで待つ。次に、注湯電磁弁30を開切換制御した上で洗剤電磁弁28を開切換することで、熱源機コントローラ5を介して燃焼バーナ43が燃焼作動され、給湯路44及び注湯配管29を通して湯を洗浄配管25に給湯する。この給湯が洗剤混入部26を通過する際に、開状態の洗剤電磁弁28を通して供給された洗剤が負圧吸引作用により給湯に混入・混合され、これにより、洗剤が混入された洗浄水が洗浄ノズル24から浴槽2内に噴出されて洗浄が行われることになる。所定時間又は所定流量分の洗浄を継続させた後、前記洗剤電磁弁28を閉切換させることで、以後、洗剤を含まない清浄な湯水だけの洗浄水によりすすぎ洗浄モードが実行されることになる。このすすぎ洗浄モードによるすすぎ洗浄を所定時間又は所定流量分だけ実行した後、注湯電磁弁30を閉切換えするなどして洗浄水の噴射を停止し、排水に要する設定時間の経過を待って前記の排水栓22を閉変換させて終了する。以上で1サイクル(1回)の洗浄が完了する。
【0038】
洗浄リモコン61では、強力・通常・簡易の洗浄メニューの内からユーザの意思により選択設定が可能となっており、「強力」が選択設定されると前記の浴槽洗浄もモードと、すすぎ洗浄モードとからなる洗浄サイクルが例えば4回繰り返され、初期設定の「通常」であると例えば3回繰り返され、「簡易」が選択設定されると例えば2回繰り返されるように繰り返し回数が設定されるようになっている。なお、このような浴槽洗浄処理は、ユーザの洗浄リモコン61に対する入力操作に基づき行われるため、その処理の実行は風呂使用の前段階か後段階か、あるいは、風呂使用が行われても浴槽洗浄処理を実行しないか、等はユーザの選択に委ねられる。
【0039】
次に、前記の洗浄サイクルにおいて洗浄水の吐出流量の変更調整を行うという本実施形態の特徴的な浴槽洗浄処理について、図6を参照しつつ説明する。まず、熱源機コントローラ5から喫水面水位データLa,Lbの各値を受信していることを確認した上で(ステップS31でYES)、その受信している喫水面水位データの下限値La,上限値Lbに対応する吐出流量Qx,Qyを吐出流量テーブル64(図3参照)から割り出す(ステップS32)。割り出された吐出流量Qx,Qyは、図8(b)に示すように、例えば吐出流量Qx(例えば4L/分)で洗浄水を洗浄ノズル24から噴射させると、その噴射された洗浄水が前記下限値Laに相当する喫水線位置の内壁面に到達することになり、吐出流量Qy(例えば6L/分)で洗浄水を洗浄ノズル24から噴射させると、その噴射された洗浄水が前記下限値Lbに相当する喫水線位置の内壁面に到達することになる、流量値を表す。
【0040】
そして、現在設定されている洗浄サイクルの繰り返し回数が初回であれば(ステップS33でYES)、吐出流量が(Qx−0.5)L/分〜(Qx+0.5)L/分の範囲になるように流量調整弁32の開度を変更調整して、前述の浴槽洗浄モードと、すすぎ洗浄モードとを実行する(ステップS34)。つまり、まず先に、喫水面水位データの下限値Laに相当する下側位置の喫水線近傍に対する洗浄を実行する。そして、この間、吐出流量が前記の(Qx−0.5)L/分〜(Qx+0.5)L/分の範囲にあることをチェックし(ステップS35でYES)、万一、前記範囲を外れていれば(ステップS35でNO)、機器故障が疑われるため、エラー処理を実行する。エラー処理としては、例えば、全ての作動を強制的に停止させ、例えば洗浄リモコン61等のリモコンに対しエラー表示、警告灯の点灯・点滅、警告音の吹鳴等の処理を行う。
【0041】
初回のサイクルが終了すれば、次に、選択されている洗浄メニュー(強力,通常又は簡易)で設定されている繰り返し回数に満たないため(ステップS36でNO)、ステップS33での判定に戻り、2回目以降であるため(ステップS33でNO)、次に、吐出流量が(Qy−0.5)L/分〜(Qy+0.5)L/分の範囲になるように流量調整弁32の開度を変更調整して、前述の浴槽洗浄モードと、すすぎ洗浄モードとを実行する(ステップS37)。つまり、2回目以降は、喫水面水位データの上限値Lbに相当する上側位置の喫水線近傍に対する洗浄を実行する。この場合も、前述と同様に、吐出流量が前記の(Qy−0.5)L/分〜(Qy+0.5)L/分の範囲にあることをチェックし(ステップS38でYES)、万一、前記範囲を外れていれば(ステップS38でNO)、機器故障が疑われるため、前述と同様のエラー処理を実行する。そして、これらを設定されている繰り返し回数が完了するまで実行し(ステップS36でNO)、繰り返し回数だけ洗浄を実行し終えれば(ステップS36でYES)、以後の付随する処理(例えば、経過時間の待機や、排水栓22の閉切換)を実行する。
【0042】
以上の浴槽洗浄処理の場合、実際の入浴状況に応じて得られた喫水面水位データに基づいて、その喫水面水位データに対応する喫水線位置に対し洗浄水を噴射させて洗浄することができる。かかる喫水線位置に入浴後の汚れが最も付着することになるため、その汚れを確実に洗浄して除去することができるようになる。しかも、入浴者がたとえ複数人いたとしても、喫水面水位データとして下限値La,上限値Lbの各値を取得し、上下各喫水線位置の双方に対し洗浄水を噴射させて洗浄することができる。このため、実際の入浴状況に応じて浴槽2の内壁面に付着してしまうことになる汚れの全てを、的確に洗浄して洗い流すことができる。その際、下側の喫水線位置に対する洗浄を先に実行し、その後で上側の喫水線位置に対する洗浄を実行するようにしているため、下位にある汚れがまだら模様になって残るような現象(図9参照)を確実に防止することができる。さらに、喫水面水位データを取得するのに、熱源機4に内蔵されている水位センサ49を用いているため、浴槽2に対し水位センサ等を特別に設置することなく、熱源機コントローラ5との連係により効率よく喫水面水位データの取得処理を行うことができる。
【0043】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記洗浄ノズル24の設置位置は浴槽2の底壁に限らず、例えば底壁近傍位置の側壁等であってもよく、又、熱源機4として、1缶2水式に限らず、2缶2水式等の種々の構成のものを用いた場合にも本発明を適用することができる。さらに、水位検出のために熱源機4に内蔵された水位センサ49を用いた例を示したが、これに限らず、浴槽2等に水位センサ又は水位計等の水位検出手段を設置し、これを用いるようにしてもよい。又、前記実施形態では吐出流量テーブル64を予め記憶登録しているが、これに限らず、喫水面水位データLa,Lbと吐出流量Qx,Qyとの関係式を定め、取得した喫水面水位データLa,Lbの値から前記関係式を用いて演算処理により吐出流量Qx,Qyを割り出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2 浴槽
3 浴槽洗浄ユニット
4 熱源機
5 熱源機コントローラ
6 洗浄コントローラ(洗浄制御手段)
24 洗浄ノズル
32 流量調整弁(流量調整手段)
48 追い焚き循環路(浴槽内の湯水と連通可能な管路)
49 水位センサ(水位検出手段)
54 喫水面水位データ取得処理部
64 吐出流量テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9