特許第5772091号(P5772091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5772091画素ずらし表示装置、画素ずらし表示方法、画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772091
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】画素ずらし表示装置、画素ずらし表示方法、画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20150813BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20150813BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   H04N5/74 A
   G03B21/00 E
   G03B21/14 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-54195(P2011-54195)
(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公開番号】特開2012-191496(P2012-191496A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕治
【審査官】 佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−029779(JP,A)
【文献】 特開2006−047414(JP,A)
【文献】 特開2006−011073(JP,A)
【文献】 特開2008−224751(JP,A)
【文献】 特開2008−040355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像の強度に応じて、光を偏光変調して射出する液晶表示素子と、
前記表示画像の切り替えの開始に応じて、前記液晶表示素子からの光の偏光方向をその光軸の周りで90°ずつ変化させる第1の偏光変換素子と、
前記第1の偏光変換素子からの光をその偏光方向に応じて射出時の光路をずらす複屈折素子と、
前記表示画像の切り替えの完了に応じて、前記複屈折素子からの光の偏光方向をその光軸の周りで、第1の偏光変換素子が設定した偏光方向から90°ずつ変化させる第2の偏光変換素子と、
前記第2の偏光変換素子からの光に対して、その偏光方向が、前記第1の偏光変換素子で設定可能な2つの偏光方向のうち、一方の偏光方向の光のみを射出する偏光素子と、
前記偏光素子からの光を投影面に向かって拡大投影する投影光学系と
を備えることを特徴とする画素ずらし表示装置。
【請求項2】
前記偏光素子の入射面は、前記入射面から反射した光が再び前記入射面に入射しないように、前記第2の偏光変換素子からの光の進行方向に対して、傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の画素ずらし表示装置。
【請求項3】
前記偏光素子はワイヤグリッドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画素ずらし表示装置。
【請求項4】
表示画像の強度に応じて、光を偏光変調して射出し、第1の偏光方向回転として、前記表示画像の切り替えの開始に応じて、前記光の偏光方向をその光軸の周りで90°ずつ変化させ、
複屈折素子を用いて前記光の光路をその偏光方向に応じてずらし、
光路をずらした前記光に対して、その偏光方向が、前記第1の偏光方向回転によって設定可能な2つの偏光方向のうち、一方の偏光方向の光のみを射出し、
前記射出した光を投影面に向かって拡大投影する画素ずらし表示方法であって、
第2の偏光方向回転として、前記表示画像の切り替えの完了に応じて、光路をずらした前記光の偏光方向をその光軸の周りで、前記第1の偏光方向回転によって設定した偏光方向から90°ずつ変化させることを特徴とする画素ずらし表示方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な画像を表示するための画素ずらし表示装置、画素ずらし表示方法、及び画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高精細な画像を表示する方式の一つとして、画素ずらし表示方式が知られている。この方式では、画像が更新する度に、投影面(表示面)での画像を交互に所定の距離だけずらして表示することで、一画像を構成する画素数で、それ以上の画素数からなる高精細な映像を視覚的に得ることが出来る。
【0003】
ところが、この方式を液晶表示素子に適用した場合、液晶表示素子の応答特性が不足しているために、画像の更新タイミングにおいて更新前の画像と更新後の画像とが重なる、所謂クロストークが生じる。例えば、60Hz映像信号を画素ずらし表示する場合、液晶駆動は120Hzとなるため、画素表示期間は約8.4msとなり、交互に所定の距離だけずらされた2枚の異なる画像を約8.4msずつ時間順次に表示する必要がある。一方、液晶表示素子の応答特性の指標である立上り時間及び立下り時間は、ネマチック液晶の場合で、約4msである。すなわち、8.4msの表示期間のうち、4msの期間クロストークが発生する可能性を有する。その結果、ずらさない画像の各画素と、ずらした画像の各画素同士が繋がって見える現象が起こり、画像間の分離特性の低下や解像度の劣化が生じて、画素ずらしの本来の目的である高精細表示の障害になる。
【0004】
このような問題に対して、特開2005−57457号公報(特許文献1)はクロストークを抑制する手法を提案している。この手法では、画像の更新期間で照明光を遮光する制御を行うことで、クロストークを排除している。この制御には、光インテグレータ出力光の遮光手段として機械的なシャッタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−57457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機械的なシャッタを用いる特許文献1の構成では、表示装置内に熱的な対策も考慮した広い空間を確保する必要があり、必然的に装置が大型化し、製造コストが増加してしまう。
【0007】
このような問題を鑑み、本発明は、製造コストを削減でき、簡素な構造でクロストークによる影響を視認させない画素ずらし表示装置、画素ずらし表示方法、及び画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は画素ずらし表示装置であって、表示画像の強度に応じて、光を偏光変調して射出する液晶表示素子と、前記表示画像の切り替えの開始に応じて、前記液晶表示素子からの光の偏光方向をその光軸の周りで90°ずつ変化させる第1の偏光変換素子と、前記第1の偏光変換素子からの光をその偏光方向に応じて射出時の光路をずらす複屈折素子と、前記表示画像の切り替えの完了に応じて、前記複屈折素子からの光の偏光方向をその光軸の周りで、第1の偏光変換素子が設定した偏光方向から90°ずつ変化させる第2の偏光変換素子と、前記第2の偏光変換素子からの光に対して、その偏光方向が、前記第1の偏光変換素子で設定可能な2つの偏光方向のうち、一方の偏光方向の光のみを射出する偏光素子と、前記偏光素子からの光を投影面に向かって拡大投影する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記偏光素子の入射面は、前記入射面から反射した光が再び前記入射面に入射しないように、前記第2の偏光変換素子からの光の進行方向に対して、傾斜していることが好ましい。
【0010】
前記偏光素子はワイヤグリッドであることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様は、表示画像の強度に応じて、光を偏光変調して射出し、第1の偏光方向回転として、前記表示画像の切り替えの開始に応じて、前記光の偏光方向をその光軸の周りで90°ずつ変化させ、複屈折素子を用いて前記光の光路をその偏光方向に応じてずらし、光路をずらした前記光に対して、その偏光方向が、前記第1の偏光方向回転によって設定可能な2つの偏光方向のうち、一方の偏光方向の光のみを射出し、前記射出した光を投影面に向かって拡大投影する画素ずらし表示方法であって、第2の偏光方向回転として、前記表示画像の切り替えの完了に応じて、光路をずらした前記光の偏光方向をその光軸の周りで、前記第1の偏光方向回転によって設定した偏光方向から90°ずつ変化させることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様に係る画素ずらし表示装置を備える投射型表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示画像の更新毎に、投影面への画像の投影が中止されるため、投影面は所謂黒表示となる。そのため、視聴者に対して、映像上における更新時のクロストークの影響を視認させることがなく、高精細な映像を提供できる。また、上記の画素ずらし表示装置は簡単な構成であるため、それを用いた投射型表示装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置を搭載した投射型表示装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置の動作を説明するための模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置の動作を時系列で示したタイミングチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置の変形例である。
図6】本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置における不要光の光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る画素ずらし表示装置について図面を参照して説明する。本実施形態の画素ずらし表示装置は、図1に示す例えばプロジェクタなどの投射型表示装置30に搭載される。
【0016】
図1は本実施形態の画素ずらし表示装置1を搭載した投射型表示装置30の概略構成図である。この投射型表示装置30の例において、画素ずらし表示装置1は個別の光路から入射する赤、緑、青の3つの光を1本の光路に射出する色合成プリズム(クロスダイクロイックプリズム)18の光出口側に設けられる。
【0017】
図1に示すように、投射型表示装置30は、光源11と、光源11からの光が進行する側に設けられたインテグレータ12及び偏光合成素子13と、を備える。
【0018】
光源11は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。光源11から発した白色光は、直進または回転放物面を有するリフレクタ11aにより反射されて、インテグレータ12に概略平行光として入射する。
【0019】
インテグレータ12は、第1のインテグレータ12a及び第2のインテグレータ12bから構成され、入射した白色光の強度を空間的に均一化させる。偏光合成素子13は、短冊状に並列に配列されて平板状に構成された複数の偏光ビームスプリッタと位相差板からなる光学素子であり、ランダムに偏光している入射した光の偏光方向を一定の偏光方向に揃えて射出させる。本実施形態では、偏光合成素子13は入射したランダムなに偏光をP波に変換する。別の形態として、偏光合成素子13が入射光をS波に揃え、その後、ローテータ(図示せず)等を用いてS波をP波に変換してもよい。
【0020】
投射型表示装置30は、更に、クロス型ダイクロイックミラー14を備える。クロス型ダイクロイックミラー14は、偏光合成素子13からの白色光を、青色の成分を含む光Bと、黄色の成分を含む光Yに分離し、それぞれを別の光路に射出する。
【0021】
クロス型ダイクロイックミラー14を経た青色の光Bは、ダイクロイックミラー15による反射を経て、偏光ビームスプリッタ(PBS)としてのワイヤグリッド16に入射する。なお、ダイクロイックミラー15はアルミ蒸着膜等で形成された周知のミラーでもよい。ワイヤグリッド16はP波を透過しS波を反射させる。クロス型ダイクロイックミラー14からの光BはP波なので、ワイヤグリッド16を透過し、青色用液晶表示素子17に入射する。青色用液晶表示素子17は、入射した光Bの偏光成分(即ちP波成分)を表示画像の青色成分の強度に応じてS波に変調しつつ、この入射光をワイヤグリッド16に向けて反射する。青色用液晶表示素子17からの反射光は、ワイヤグリッド16にてS波成分のみが反射されて色合成プリズム18に入射する。
【0022】
一方、クロス型ダイクロイックミラー14を経た黄色の光Yは、ダイクロイックミラー19を経て、更にダイクロイックミラー20に入射する。なお、ダイクロイックミラー19はアルミ蒸着膜等で形成された周知のミラーでもよい。
【0023】
ダイクロイックミラー20では黄色の光Yが緑色の光Gと赤色の光Rとに分離され、緑色の光Gは反射し、赤色の光Rは透過する。その後の光G及び光Rの光路上には、図1に示すように、PBSとしてのワイヤグリッド21及び緑色用液晶表示素子22、PBSとしてのワイヤグリッド23及び赤色用液晶表示素子24がそれぞれ設置されており、これらの機能は、光Bに対して用いたワイヤグリッド16及び青色用液晶表示素子17と同様である。従って、緑色の光Gについては、緑色用液晶表示素子22による偏光変調によって得られたS波成分のみが色合成プリズム18に入射し、赤色の光Rについては、赤色用液晶表示素子24による偏光変調によって得られたS波成分のみが色合成プリズム18に入射することになる。
【0024】
なお、色合成プリズム18に至るまでの各光学素子の選定、及び配置は図1に限定されず、適宜変更可能である。また、液晶表示素子17、22、24は、何れも反射型に限られず、透過型でもよい。
【0025】
色合成プリズム18は、各側面及び背面から入射された光B、G、Rを合成し、その光を前面から射出させる。色合成プリズム18から射出された光は、画素ずらし表示装置1の画素ずらしユニット2を経て、投影光学系としての投影レンズ7に入射する。投影レンズ7は、入射された照明光を、図示しないスクリーンに向けて投影し、結像させ、画像表示を行う。
【0026】
図2は、画素ずらし表示装置1の概略構成図である。画素ずらし表示装置1は、上述の液晶表示素子17、22、24と、光学素子の集合体である画素ずらしユニット2と、偏光制御ドライバ8と、シャッタ制御ドライバ9とを備える。
【0027】
画素ずらしユニット2は、1/2波長板31と、偏光角回転素子(第1の偏光変換素子)3と、偏光角回転素子3の後段に設けられる複屈折素子4と、複屈折素子4の後段に設けられるシャッタ素子(第2の偏光変換素子)5と、シャッタ素子5の後段に設けられる偏光子(偏光板)6とを備える。各光学素子3、4、5、6は積層構造として構成してもよく、透明ガラス等により形成された部材によって支持された構成でもよい。色合成プリズム18からの光は偏光角回転素子3から入射し、偏光素子6から射出して、投影光学系としての投影レンズ7に入射する。
【0028】
1/2波長板31は、入射するS波の光の偏光方向を45°回転させるために、1/2波長板31の光軸(進相軸または遅相軸)Tを入射光(S波)の偏光方向に対して光の進行方向(即ち光軸)の周りで22.5°傾けて設置される。1/2波長板31を射出した光は、図3のように、光の進行方向から見て入射光の偏光方向に対し、右45°に偏光している。
【0029】
偏光角回転素子3は、入射光の偏光角(偏光方向)をその光軸の周りで90°回転させることにより、右45°方向の偏光を左45°方向の偏光に変換する。以下の説明の便宜上、右45°方向の偏光をR波と、左45°方向の偏光をL波と称する。この変換は、液晶表示素子17、22、24における表示画像の更新の度に、偏光制御ドライバ8の出力電圧(出力信号)に基づいて実施される。本実施形態ではこのような旋光機能を持つ光学素子として、例えばネマチック液晶などにより構成された透過型の液晶パネルが用いられる。
【0030】
複屈折素子4は、複屈折を生じる物質(例えば水晶)で形成された光学素子であり、入射するR波、L波の偏光方向に応じて射出時の光路をずらす。また、複屈折素子4は、光ローパスフィルタ(OLPF)でもある。液晶表示素子17、22、24の画素ピッチをGとすると、本実施形態の複屈折素子4は、R波とL波での光路間シフト量が約(√2/2)Gとなるように形成されている。
【0031】
シャッタ素子5は、偏光角回転素子3と同様の構成であり、シャッタ制御ドライバ9による印加電圧に応じて入射光の偏光角を、その光軸の周りで90°回転させることにより、R波をL波に(又はL波をR波に)変換する。
【0032】
偏光子6は、偏光角回転素子3によって設定される2つの偏光方向の光のうち、一方の偏光方向の光のみを選択して射出し、他方の偏光方向の光を破棄する。偏光素子6は透過型、反射型の何れでもよい。本実施形態の偏光素子6は、例えばワイヤグリッドであり、R波のみを通過させ、且つ、L波を遮断するように配置している。
【0033】
投影レンズ5は偏光子6からの光を投影面28向かって拡大投影する。投影レンズ5は既知のレンズを用いて構成されたものでよい。そのため、詳細な説明は割愛する。
【0034】
本実施形態の画素ずらし表示装置1の動作について説明する。
【0035】
図3は画素ずらし表示装置1の動作を説明するための模式図であり、図4は、この動作を時系列で示したタイミングチャートである。
【0036】
本実施形態では、1フレームの画像(元画像と称する)から、或いは前後する複数フレームの元画像から、1枚の元画像の表示期間内に、画素ずらしを行わない画像と画素ずらしを行う画像の2枚の画像(以下、これらをサブフレーム画像と称する)を生成する。また、これらのサブフレーム画像は投射型表示装置で生成せず、外部から投射型表示装置に供給する構成としてもよい。例えば図4に示すように、時刻t0から時刻t4までの期間に元画像Aの表示が割り当てられ、時刻t4から時刻t8までは元画像Bの表示が割り当てられている。従って、この例では、元画像Aの期間内に、画素ずらしを行わないサブフレーム画像A(1)が最初に投影面に投影され、その次に画素ずらしを行うサブフレーム画像A(2)が投影される。その後、元画像Bの表示期間内に、画素ずらしを行わないサブフレーム画像B(1)が投影され、その次に画素ずらしを行うサブフレーム画像B(2)が投影される。以後、このようなサブフレーム画像の更新・表示が繰り返される。
【0037】
この一連の画像表示について詳細に説明する。まず、時刻t0において、サブフレーム画像A(1)が投影面28に投影開始されたとする。画像表示光27は元来、液晶表示素子17(22、24)によって偏光変調され、ワイヤグリッド16(21、23)を反射した光である。従って、この光はS波に偏光しており、図3に示すように、1/2波長板31の出口では右45°傾いた状態で偏光角回転素子3に入射している。
【0038】
時刻t0において、偏光制御ドライバ8の出力は電圧ロー状態(オフ)である。従って、偏光角回転素子3では画像表示光27の偏光方向は回転せず、偏光角回転素子3をそのまま透過し、複屈折素子4に入射する。複屈折素子4ではこの偏光状態(即ちR波)に応じた屈折が起こる。画像表示光27は複屈折素子4による屈折を受けた後、さらに直進して、シャッタ素子5に入射する。
【0039】
時刻t0において、シャッタ制御ドライバ9の出力は電圧ハイ状態(オン)である。従って、シャッタ素子5においても偏光方向は回転し、R波の画像表示光27はシャッタ素子5を透過してL波となる。換言すれば、シャッタ素子5はR波の光をL波に変換させる(これを便宜上、R‐L変換と称する)。シャッタ素子5を透過した画像表示光27は、その後、偏光子6に入射する。上述の通り、本実施形態の偏光子6はR波を透過するように配置されているので、画像表示光27は偏光子6を透過できない。その結果、投影面28にはサブフレーム画像A(1)が投影されない。液晶表示素子17、22、24の応答特性が原因にて、サブフレーム画像A(1)の立ち上がり時点で、両画像上での同位置の画素の軌跡重なり(クロストーク)が時刻t0から時刻t1までの期間生じるが、その間は画像が表示されない。
【0040】
時刻t1では、シャッタ制御ドライバ9の出力を電圧ロー状態(オフ)とする。R波の画像表示光27はシャッタ素子5を透過してもR波のままである。(これを便宜上、R‐R変換と称する)。シャッタ素子5を透過した画像表示光27は、その後、偏光子6に入射する。上述の通り、本実施形態の偏光子6はR波を透過するように配置されているので、画像表示光27は偏光子6を透過できる。
【0041】
次に、サブフレーム画像A(2)の表示を考える。本実施形態において、サブフレーム画像A(2)は、画素ずらしを行った上で投影面に投影させる。従って、理想的には、時刻t2にサブフレーム画像A(2)の画像表示光27をL波に変換し、複屈折素子4において光路を約(√2/2)Gだけシフトさせ、その後、再び画像表示光27をR波に変換すればよい。ところが、液晶表示素子17、22、24の応答特性が原因にて、サブフレーム画像A(2)の立ち上がり時点で、両画像上での同位置の画素の軌跡重なり(クロストーク)が生じる。そこで、クロストークが発生している期間中は投影面28への投影を停止して、このクロストークを視覚的に排除する。
【0042】
具体的には次の処理を行う。液晶表示素子17、22、24がサブフレーム画像A(2)の表示を開始する時刻t2には偏光制御ドライバ8の出力を電圧ハイ状態(オン)とする。従って、偏光角回転素子3では画像表示光27の偏光方向が回転し、複屈折素子4に入射する。複屈折素子4ではこの偏光状態(即ちL波)に応じた屈折が起こる。画像表示光27は複屈折素子4による屈折を受けて光路が約(√2/2)Gだけシフトされ、さらに直進して、シャッタ素子5に入射する。
【0043】
シャッタ制御ドライバ9の出力は電圧ロー状態(オフ)のままにしておく。すると、シャッタ素子5は画像表示光27の偏光方向(L波)をそのまま保つ(便宜上、L‐L変換と称する)。L波である画像表示光27は偏光子6によって進行が遮断されるので、その結果、投影面28へのサブフレーム画像A(2)の投影が停止する。
【0044】
その後、クロストークが消滅する(即ち、液晶表示素子17、22、24での表示画像がサブフレーム画像A(1)からサブフレーム画像A(2)に完全に切り替わる)時刻をt3とすると、時刻t3にて、シャッタ制御ドライバ9を電圧ロー状態(オフ)から電圧ハイ状態(オン)に切り替える。従って、シャッタ素子5は偏光方向の回転操作を実行する(これを便宜上L‐R変換と称する)。R波になった画像表示光27は偏光素子6を透過できる。その結果、複屈折素子4による画素ずらしが行われた状態で、サブフレーム画像A(2)が投影面28に投影される。
【0045】
サブフレーム画像A(2)からサブフレーム画像B(1)へ切り替える場合にも、時刻t0から時刻t1までの操作と同様の操作を行う。即ち、液晶表示素子17、22、24がサブフレーム画像A(2)の表示を開始する時刻をt4、クロストークが消滅する時刻をt5とすると、時刻t4から時刻t5までの期間はシャッタ制御ドライバ9の出力を電圧ハイ状態(オン)に保ち、時刻t5にシャッタ制御ドライバ9の出力を電圧ハイ状態(オン)から電圧ロー状態(オフ)に切り替える。時刻t4から時刻t5までの期間は、シャッタ素子5の透過光はL波のままで偏光子6によって遮断される。次に、時刻t5においてL波からR波への回転操作が開始されるので、R波の画像表示光27はそのままシャッタ素子5を透過し、偏光子6によって遮断されない。結果的に、投影面28へのサブフレーム画像A(2)の投影が開始される。つまり、時刻t4から時刻t5までの期間における偏光角回転素子3及びシャッタ素子5の状態は、時刻t0から時刻t1までの期間における状態と同一である。
【0046】
また、時刻t6から時刻t8の期間では、時刻t2からt4の期間と同様の動作を繰り返す。
【0047】
以上の動作によって、サブフレーム画像の投影が切り替わる時点で、その投影が一端停止される。従って、この間に生じる画像のクロストークを視聴者は視認することがなく、高精細な画素ずらし画像を表示することが可能になる。
【0048】
なお、上述した画素ずらし表示装置1の偏光素子6は、図5に示すようにシャッタ素子5からの光の進行方向に対して、所定の角度θだけ傾けて配置することが好ましい。
【0049】
偏光素子6の入射面を光の進行方向に対して垂直に配置した場合、この入射面によって反射した不要な光(P波)が、これまでの光路を逆行することで、偏光素子6への再入射を繰り返す可能性がある。この場合、この不要光は偏光角回転素子3等によって、S波の成分を有するので、この成分の光が偏光素子6を透過するとゴースト像が発生してしまう。
【0050】
そこで、偏光素子6の入射面で反射した光が、再びこの入射面に入射しないように、シャッタ素子5からの光の進行方向に対して角度θに傾ける。これによって、図6(a)〜6(c)に示すように、青、緑、赤の各色の不要光29の、偏光素子6への再入射を防止し、ゴースト像の発生を抑制する。
【0051】
この場合、偏光素子6としてワイヤグリッドを用いるのが更に好適である。ワイヤグリッドは、一般的に、光の入射角に対する偏光特性の依存性が低く、傾斜させてもP波の遮断特性を維持しやすい。更に、吸収型の偏光素子と比較して、不要光の吸収で生じる発熱も抑制することができる。
【0052】
なお、偏光素子6の傾斜角θは、画素ずらしユニット2を搭載する画像表示装置内の光学系の配置により適宜変更され、本実施形態に適用される画像表示装置の光学系は各図に示したものに限られない。
【0053】
このように、本実施形態の画素ずらし表示装置及び画素ずらし表示方法によれば、表示画像の更新毎に、投影面への画像の投影が中止されるため、投影面は所謂黒表示となる。そのため、視聴者に対して、画像の更新時のクロストークによる影響を視認させることがなく、高精細な映像を提供できる。また、上述の通り、本実施形態の画素ずらし表示装置は簡単な構成であるため、低コストで提供できる。
【0054】
さらに、画素ずらしユニットにおいて偏光素子を傾けて配置した場合は、反射した不要光の偏光素子への再入射を抑制できるので、ゴースト像を抑制して画素表示の信頼性を向上させることが可能である。
【0055】
【符号の説明】
【0056】
1…画素ずらし表示装置、2…画素ずらしユニット、3…偏光角回転素子(第1の偏光変換素子)、4…複屈折素子、5…シャッタ素子(第2の偏光変換素子)、6…偏光子、7…投影レンズ(投影光学系)、8…偏光制御ドライバ、9…シャッタ制御ドライバ、11…光源、12…インテグレータ、13…偏光合成素子、14…クロス型ダイクロイックミラー、15、19、20…ダイクロイックミラー、18…色合成プリズム、16、21、23…ワイヤグリッド、17、22、24…液晶表示素子、29…不要光、30…投射型表示装置、31…1/2波長板
図1
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図6