特許第5772092号(P5772092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772092
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】半導体製造方法および半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150813BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20150813BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20150813BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20150813BHJP
【FI】
   H01L21/304 622L
   H01L21/68 A
   B65G49/07 G
   B24B41/06 A
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-54332(P2011-54332)
(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公開番号】特開2012-191051(P2012-191051A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】織裳 陽子
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023433(JP,A)
【文献】 特開2009−290006(JP,A)
【文献】 特開2009−253244(JP,A)
【文献】 特開2009−094247(JP,A)
【文献】 特開2007−258206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 41/06
B65G 49/07
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルの吸着面に半導体ウエハのおもて面側を吸着する工程と、
前記半導体ウエハの裏面を、外周部にリング状の補強部が残るように内側領域を凹状に研削する工程と、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持して、前記チャックテーブルから搬送する搬送工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記搬送工程は、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持する前に、保持する箇所とは別の部分を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する押圧工程と、
前記チャックテーブルに陽圧を供給して、前記半導体ウエハのおもて面側の吸着を解除する吸着解除工程と、
前記押圧工程で前記保持する箇所とは別の部分を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって行った押圧を解除する押圧解除工程と、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持したまま、前記チャックテーブルから取り上げる取り上げ工程と、
からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記押圧工程で押圧する部分は、前記吸着解除工程で前記チャックテーブルに陽圧を供給した際に、前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハが局所的に変形しやすい部分であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記押圧工程は、
前記リング状の補強部を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する補強部押圧工程と、前記凹状の内側領域に、前記半導体ウエハを保持する部材を当接させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記補強部押圧工程は、
前記リング状の補強部に弾性部材を押し当てて、該弾性部材を前記リング状の補強部の形状に倣って弾性変形させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記取り上げ工程は、前記押圧解除工程に続いて、前記凹状の内側領域に、前記半導体ウエハを保持するために当接させていた部材に負圧を供給して、前記凹状の内側領域を吸着して行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記押圧工程は、
前記凹状の内側領域を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する内側領域押圧工程と、前記リング状の補強部を外周側から保持する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記内側領域押圧工程は、
前記凹状の内側領域と前記リング状の補強部の内周領域に弾性部材を押し当てて、該弾性部材を前記リング状の補強部の形状に倣って弾性変形させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
加工対象の半導体ウエハのおもて面を吸着するチャックテーブルと、
前記半導体ウエハの裏面を、外周部にリング状の補強部が残るように内側領域を凹状に研削する研削装置と、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持して、前記チャックテーブルから搬送する搬送装置とを有する半導体製造装置において、
前記搬送装置は、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持する箇所とは別の部分を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する押圧装置と、
前記チャックテーブルに陽圧を供給する陽圧供給装置と、
前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持して前記チャックテーブルから取り上げる取り上げ装置と、
からなることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体製造装置において、
前記押圧装置は、前記陽圧供給装置によって前記チャックテーブルに陽圧を供給した際に、前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハが局所的に変形しやすい部分を押圧するものであることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項10】
請求項8または9のいずれかに記載の半導体製造装置において、
前記押圧装置は、
前記リング状の補強部を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する補強部押圧機構と、前記凹状の内側領域で前記半導体ウエハを保持する保持機構を含むことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体製造装置において、
前記補強部押圧機構は、
前記リング状の補強部に接する部分を弾性部材で構成することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体製造装置において、
前記保持機構は、前記凹状の内側領域を吸着する吸着機構を含むことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項13】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記補強部押圧機構は、該補強部押圧機構を支持するスライド部を有し、該スライド部は、前記保持機構を支持する支持部を軸として動作可能に嵌装することにより、前記、補強部押圧機構と前記保持機構は、互いに独立して上下動作するものであることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項14】
請求項8または9のいずれかに記載の半導体製造装置において、
前記押圧装置は、
前記凹状の内側領域を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧する内側領域押圧機構と、前記リング状の補強部を外周側から保持する保持機構を含むことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体製造装置において、
前記内側領域押圧機構は、
前記凹状の内側領域と前記リング状の補強部の内周領域に接する部分を弾性部材で構成することを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体の製造方法ならびに半導体製造装置に関し、特に、電力変換装置などに使用されるパワー半導体などのデバイス厚が薄い半導体の製造方法および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などに代表されるパワー半導体では、特性の高性能化を図るため、パワー半導体を形成する半導体基板(ウエハ)の薄化が進められている。また、低コスト化を図るべく、1枚のウエハに形成するパワー半導体の個数を増やすためにウエハの直径を大きくすることが進められている。
【0003】
しかしながら、ウエハの厚さを薄くすると、ウエハの端部が欠けやすく、チッピングが生じやすくなる。また、ウエハの機械的強度が低下するため、割れや欠け、撓みが発生しやすくなるという問題がある。特に、ウエハの直径が大きくなるとこのような問題が顕著となる。ウエハの薄化,大型化を進めることで、ウエハの撓みが大きくなると、製造工程間でウエハの搬送が困難になったり、製造装置への設置が困難になるなどの問題もある。
【0004】
縦型のパワー半導体の製造工程では、ウエハの裏面にもイオン注入,熱処理(アニール),金属膜の形成、などの工程が必要となるが、上記の問題は、ウエハ裏面への製造工程を実施するのが困難になるなどの問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、ウエハ裏面の外周端部に薄化したウエハを補強するリング状の補強部を設けたウエハが提案されている。リング状の補強部を有するウエハは、ウエハの裏面の外周端部が、中央部よりも厚くなっている。このようなリング状の補強部を有するウエハを用いることで、ウエハの反りや撓みが大幅に緩和され、搬送工程においてウエハを取り扱う際に、ウエハの強度が大幅に向上し、ウエハの割れや欠けを軽減することができる。
【0006】
図12は上記のリング状の補強部を備えたウエハの形状を示す図である。図12(a)に示すウエハは、オリエンテーションフラット110を備えたウエハの外周端部にリング状の補強部111を形成したウエハである。
【0007】
図12(b)に示すウエハは、ノッチ120を備えたウエハの外周端部にリング状の補強部121を形成したウエハである。
いずれのウエハにおいても、リング状の補強部の内側が、半導体素子の形成領域となる。
【0008】
このようなリング状の補強部を有するウエハを作製する方法としては、ウエハの直径よりも小さい直径の研削部を備える研削装置を用い、ウエハ裏面の外周端部を残して、中央部を研削し薄くすることで、リブ部を形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0009】
図13は、リング状の補強部を有するウエハを作製する研削装置の従来例を示す図(要部断面図)である。
図13を用いてリング状の補強部を有するウエハの作製工程を説明する。研削装置の図示しないカセットにウエハ20をセットする。ウエハ20は、搬送ロボット等により位置合わせがなされた後、チャックテーブル10上に搬送され、チャックテーブルの吸着面12に載置される。チャックテーブル10は、図示しない真空系に接続されており、真空系からの負圧が印加されると吸着面12を介してウエハ20を吸着保持する(図13(a)。吸着面12は、例えば多孔質のセラミックなどで形成される。
【0010】
研削装置には、ウエハの直径より小さな直径の研削部133が設けられている。研削部133のウエハとの接触面には砥石が設けられている。研削部133が自身の回転軸を回転(自転)させながらその回転軸も回転(公転)させることにより、砥石でウエハの中央部分を研削(研削)していく。
【0011】
このようにウエハの中央部分のみを研削することにより、ウエハの外周端部は、研削装置に投入したときの厚さのまま、ウエハの中央部分のみが所望の薄さに加工された、ウエハ22(図13(b))が作製される。図12(c)にウエハの断面を示す。ウエハの外周端部にはリング状の補強部(リブ構造)122が形成されている。
【0012】
図14は、リング状の補強部を有するウエハを作製する研削装置の他の従来例を示す図(要部断面図)である。
図13に示した研削装置では、1種類の研削部133を用いたが、図14の研削装置は、砥粒の大きさが異なる研削部131,132を備えている。
【0013】
加工前の半導体ウエハ22(例えば8インチウエハ、厚さ725μm)は、図示しない搬送ロボット等により位置あわせがなされた後、チャックテーブル10に搬送され、吸着面12に吸着保持される。第1の研削工程では、図14(a)に示すように、砥粒の平均粒径が大きい砥石を備えた研削部131によって、ウエハ20の中央部分を研削する。このとき、ウエハ20の外周部を数mm(例えば1〜5mm)加工せずに、中央部分を所定の残し厚(例えば100〜150μm)まで研削加工を行う。ウエハの中央部分の厚さが所定の厚さに達したところで、第2の研削工程を行う。第2の研削工程では、研削部131に設けた砥石より砥粒の平均粒径が細かい砥石を備えた研削部132による研削を行う(図14(b))。図14(b)に示すように、第1の研削工程で作製されたウエハ裏面の凹部内周面よりも、直径を小さくした内周となるように、所定の厚さ(例えば60〜120μm)まで研削を行ってリング状の補強部を有するウエハ23を作製する。ここで、第2の研削工程で研削する内径を、第1の研削工程で作製した凹部の内径より小さくするのは、第2の研削加工の研削機による位置精度によるものである。第1の研削工程で作製したリング状の補強部の側壁に第2の研削工程で用いる研削部132が接触しないようにするためである。
【0014】
このようにウエハの中央部分のみを研削することにより、ウエハの外周端部は、研削装置に投入したときの厚さのまま、ウエハの中央部分のみが所望の薄さに加工された、ウエハ23(図14(c))が作製される。図12(d)にウエハの断面を示す。ウエハの外周端部にはリング状の補強部(リブ構造)123が形成されている。
【0015】
このように、外周端部にリング状の補強部が形成されたウエハは、洗浄乾燥のため次の工程に移すため、図13図14では図示していない搬送装置によってチャックテーブル10の吸着面12から取り上げられ、所定の搬送先に搬送される。
【0016】
ここで、リング状の補強部(リブ構造)が形成されたウエハを搬送する際、リング状の補強部の上面を真空吸着して搬送する構成が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007-173487号公報(要約等)
【特許文献2】特開2009-59763号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ウエハの外周端部にリング状の補強部を形成するために研削装置にて研削する場合、生産性を向上させるために、一般的に連続加工処理が行われる。
研削工程が完了し、リング状の補強部(リブ構造)が形成されたウエハは、チャックテーブルから取り除かれ、洗浄・乾燥など次の工程に移される。同時に、チャックテーブル上では、チャックテーブルの吸着面をブラシ等により洗浄し、次に研削するウエハ搬送され、吸着保持される。
【0019】
図15は、搬送装置の従来例を示す図である。図15(a)に示すように、研削工程が完了しリング状の補強部が形成されたウエハ22を搬送装置80によってチャックテーブル10から脱離させて次の工程へ搬送する。搬送装置80は、支持部82の先端に吸着部81を備え、図示しない真空系からの負圧を支持部82内の給排気系(図示せず)を介して吸着部81の表面に伝達する。図15の例では、同図(a)に示すように吸着部81がウエハの中央部分の薄化された領域に吸着している。吸着部81がウエハ22の薄化された領域に吸着した状態で支持部82を上昇させることにより、ウエハ22をチャックテーブル10から脱離させる。
【0020】
ところで、特許文献2に示されるように、リング状の補強部のみを吸着するようにしてもよいが、ウエハを取り上げて搬送できる程度に吸着するためには、吸着するリング状の補強部の上面が平坦であり、かつ所望の面積が必要となる。リング状の補強部の上面の平坦部の面積を大きくすると、ウエハの中央部分(素子形成領域)の面積が小さくなってしまう。
【0021】
図15のようにウエハの中央部分で吸着することで、ウエハを吸着するために必要な面積を確保することができ、確実に搬送することができる。
あるいは、図16(a)に示すように、研削工程が完了し、リング状の補強部が形成されたウエハ22の外周端部を、搬送装置90のアーム91の先端に設けた保持部92で保持(把持)するようにしてもよい。搬送装置90は、保持部92をウエハ22のリング状の補強部に対して接近させたり離間させたりできるように、アーム91が可動する。つまり、保持部92をウエハ22のリング状の補強部から離れた状態からリング状の補強部に徐々に近づけて、リング状の補強部を保持して、ウエハ22を保持する。そして、ウエハ22のリング状の補強部を保持したままアーム91を上昇させることで、ウエハ22をチャックテーブルから脱離させる。このようにすると、ウエハ22の薄化した部分に触れることなく、次の工程へ搬送することができる。
【0022】
ここで、研削工程の生産性を向上させるためには、連続加工処理が必要となる。すなわち、ウエハの搬送→設置→研削→搬送(取り上げ)→チャックテーブルの洗浄→次のウエハの搬送という一連の動作の時間を短縮する必要がある。特に、ウエハの研削完了後、ウエハを取り上げて次の工程へ搬送する工程では、取り上げに要する時間を短縮したいという課題と、ウエハを損傷しないように確実に取り上げたいという課題を同時にクリアする必要がある。
【0023】
しかしながら、図15,Eに示すチャックテーブル10上(吸着面12,13,14)には、研削工程でウエハ上に滴下する洗浄水や、チャックテーブル10の洗浄時の洗浄水が残存している。
【0024】
チャックテーブル10の吸着面12,13,14とウエハ22との間に洗浄水存在すると、その洗浄水の表面張力によって、ウエハ22は吸着面12,13,14に吸着されてしまう。また、リング状の補強部を形成する研削工程においては、吸着面12,13,14には、給排気路11を介して図示しない真空系から負圧が供給される。研削工程が行われた後は、チャックテーブル10の吸着面12,13,14に印加される負圧を解除する。しかしながら、負圧の印加を解除した後においても、前述の洗浄水が存在することにより、多孔質の吸着面12,13,14からの大気のリークが進まず、チャックテーブル10の吸着面12,13,14からウエハ22が離れないという現象が生じる。負圧の印加を解除した後、長時間(例えば10分程度)放置しておけば、吸着面12,13,14から大気のリークが進んでウエハ22は取り外しやすくなるが、ウエハの取り上げに要する時間を短縮したいという課題が解決できず、搬送の作業性に支障を来たす。
【0025】
ウエハ22が吸着面12,13,14に張り付いている状態で、これを無理に引き離そうとすると、薄化されて割れやすくなっているウエハ22が割れたりかけたりして、ウエハを損傷しないように確実に取り上げたいという課題が解決できない。
【0026】
そこで、負圧を解除した後、給排気路11からチャックテーブル10の吸着面12,13,14に対して水やエアーあるいはこれを混合したもの(図15(b)図16(b)の70,71)を供給し、ウエハ22の取り上げに要する時間を短縮することが行われる。つまり、チャックテーブル10の吸着面12,13,14から水やエアーあるいはこれを混合したもの(70,71)を吹き上げて、吸着面に陽圧を供給する。そして、ウエハ22をチャックテーブル10への吸着を解除し、チャックテーブル10から脱離させてから、搬送用の吸着装置(図15(b)の80,81、図16(b)の90,91)などにより、次の工程へ搬送される。
【0027】
しかしながら、図15(b)(c)、図16(b)に示すように、水やエアー70,71で吹き上げると、ウエハ22に変形が生じてしまう。特に研削時に砥石で削られてダメージが残っている箇所や曲率が変化する場所では、応力集中がおきやすい。例えば、図13(b)の符号223で示した箇所や、図14(c)の符号233で示した箇所などである。
【0028】
さらに、図15(b)(c)に示すように、ウエハ22の搬送装置80の吸着部81で押さえられている箇所(符号B)や、図16(b)に示すように、ウエハ22の厚さが変化する箇所(符号B)などで変形が生じる。
【0029】
図15(c)、図16(b)に矢印Aで示すように、ウエハ22が局所的に浮かび上がるように変形することで、ウエハ22の研削面にクラックが発生してしまう。 従って、本発明は、上述した従来技術による問題点を解決するため、ウエハを、チャックテーブルに吸着し研削を行った後、ウエハを安全、かつ確実に取り上げることのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明では、チャックテーブルの吸着面に半導体ウエハのおもて面側を吸着し、前記半導体ウエハの裏面を、外周部にリング状の補強部が残るように内側領域を凹状に研削してリング状の補強部が形成された半導体ウエハを前記チャックテーブルから搬送するにあたり、前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持する前に、保持する箇所とは別の部分を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって押圧し、前記チャックテーブルに陽圧を供給して、前記半導体ウエハのおもて面側の吸着を解除し、前記保持する箇所とは別の部分を前記半導体ウエハの裏面からおもて面に向かって行った押圧を解除した後、前記リング状の補強部が形成された半導体ウエハを保持したまま、前記チャックテーブルから取り上げるようにするものである。
【0031】
これにより、上記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ウエハを安全、かつ確実に取り上げることができる。また、所定の搬送先に円滑に搬送することができ、ウエハの割れ・欠けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態を示す図である。
図2図1に続く第1の実施形態を示す図である。
図3図2に続く第1の実施形態を示す図である。
図4】第1の実施形態のタイミングチャートである。
図5】第1の実施形態における搬送装置の要部を示す図であり、(a)は要部断面図、(b)は要部斜視図である。
図6】第1の実施形態における搬送装置の変形例を示す図である。
図7】第2の実施形態を示す図である。
図8図7に続く第2の実施形態を示す図である。
図9図8に続く第2の実施形態を示す図である。
図10】第2の実施形態のタイミングチャートである。
図11】第2の実施形態における搬送装置の変形例を示す図である。
図12】リング状の補強部を有するウエハを示す図である。
図13】リング状の補強部を有するウエハの製造工程を示す図である。
図14】リング状の補強部を有するウエハの製造工程を示す図である。
図15】従来の搬送装置を示す図である。
図16】従来の搬送装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図に沿って本発明を実施するための形態を説明する。
<第1の実施の形態>
図12に示すようなウエハの外周部にリング状の補強部を備えたウエハを形成する工程として、図13図14に示す方法がある。図12図13図14について重複する説明は省略する。
【0035】
図1図5は、この発明を適用する第1の実施形態を説明するための図である。なお、図4は、各部の圧力を示すタイミングチャートである。
図1(a)では、ウエハ22がチャックテーブル10の吸着面12に吸着されている。吸着面12は、ウエハ22を吸着させる面が平坦に加工された多孔質材である。チャックテーブル10は、給排気路11を介して図示しない真空系に接続されている。真空系から供給される負圧(符号60)が吸着面12に伝達し、ウエハ22を真空吸着し、図12図13図14で説明したように、ウエハ22の研削工程が完了した状態を示している。
【0036】
ウエハ22の次工程への搬送について、順を追って説明する。
図1(a)において、搬送装置40が、研削工程の完了したウエハ22の上部で待機する。搬送装置40は、取り上げ装置としての吸着機構30に加えて、押圧装置として、押圧パッド43と押圧パッド支持アーム42と押圧パッドスライド部41とから構成されている。
【0037】
ここで、補強部押圧機構としての押圧パッド43は、ウエハ22のリング状の補強部を押圧するものである。また、押圧パッド支持アーム42は押圧パッド43を支持するものであり、押圧パッドスライド部41には、押圧パッド43を吸着機構30とは独立させて上下動作できるように、押圧パッド支持アームが固定されている。
【0038】
この例では、押圧パッドには、弾性部材が用いられる。弾性部材は特に限定するものではないが、ウエハ22のリング状の補強部の形状に倣って弾性変形可能であることと、後述する吸着面12からのエアー等の吹き上げに抗する程度の剛性を有していることが望ましい。例えば、EVA樹脂などの発泡樹脂や、シリコンゴムなどで形成される。押圧パッドは、ウエハ22に形成されたリング状の補強部を覆うように、リング状に形成されていて、内周側、外周側ともにウエハ22に形成されたリング状の補強部の幅よりも大きく、リング状の補強部を覆う大きさである。押圧パッドの大きさ(幅)は、内周側、外周側ともにリング状の補強部よりもともに1mm以上大きくしておくと、若干の位置ずれがあっても、リング状の補強部を覆うことができる。また、押圧パッドの内側は、少なくとも、凹部の側壁は覆うのが望ましい。さらに、ウエハが図1(a)に示すように、図14のごとく2段階で研削加工したものである場合、第2の研削工程で生じる段差部も覆うようにするとよい。
【0039】
図1(a)において、吸着機構30の吸着部31は、支持部32(図2(b)に図示)に固定され、押圧パッド43とは独立して上下動作可能である。また、支持部32内には吸着部31の吸着面に通じる排気路(図示せず)を備えており、図示しない真空系に接続されて、吸着面にウエハ22を吸着・保持するための負圧が供給可能となっている。
【0040】
図1(a)に示す例では、吸着機構30の吸着部31のウエハへ接触面と、押圧パッドのウエハへ接触面は同一面上に位置している。図1(b)に示すように、吸着部31と押圧パッド43を降下させて、吸着部31はウエハ22の薄化された面に接し、押圧パッド43はウエハ22のリング状の補強部に押し当てられて弾性変形する。ここでは、吸着部31と押圧パッド43とが同時に下降する例で説明したが、吸着部31と押圧パッド43のどちらか一方が先に下降してもよい。
【0041】
図4(a)は、チャックテーブル10の吸着面に載置されたウエハ22に印加される圧力を示し、同図(b)は吸着部31からウエハ22に印加する圧力を示し、同図(c)は、押圧パッド43によってウエハ22に作用する圧力を示す。
【0042】
図1(b)の状態は、図4のt1に相当する。すなわち、図4(a)に示すようにチャックテーブル10の吸着面12には、負圧が供給されており、同図(b)に示すように吸着部31は図1(a)の状態から下降してウエハ22に到達しているものの、ウエハ22を吸着するための圧力(負圧)は供給されていない。押圧パッド43はウエハ22のリング状の補強部に到達した後、さらに弾性変形しながら押し当てられて、時刻t1において、リング状の補強部を所定の圧力で押圧している。
【0043】
続いて、図2(a)に進む。図2(a)では、給排気路11に供給されていた負圧が遮断され、ウエハ22をチャックテーブル10から取り外しやすくするためにチャックテーブル10の吸着面12に対して図示しない陽圧供給装置から陽圧70の印加が開始される。陽圧は、給排気路11から水,エアー,水とエアーを混合したものなどを供給することで与える(時刻t2)。
【0044】
このとき、リング状の補強部ならびにその周辺部は、押圧パッドによって、チャックテーブル側に押さえつけられており、吸着面12から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図15(c)に示したような局所的な浮き上がりが発生しない。局所的に浮き上がることがないので、研削時に砥石で削られてダメージが残っている箇所や曲率が変化する場所に応力が集中することがない。吸着面12に陽圧を印加した際にウエハ22にクラックが生じるなどの損傷を与えることがない。
【0045】
所定時間継続して陽圧70を印加した後、陽圧70の印加を停止する(時刻t3)。
続いて、図2(b)に進む。陽圧70の印加を停止した後、時刻t4のタイミングで押圧パッドスライド部41のみを上昇させる。支持部32は移動せず、吸着部31は移動しない。押圧パッドスライド部41の上昇により、押圧パッド43による押圧力も減少し、押圧パッド43がウエハ22のリング状の補強部から離れた時点で補強部への押圧力もゼロとなる。
【0046】
続いて、時刻t5のタイミングで、吸着部31に対し、支持部32内の排気路(図示せず)を介して負圧を供給し、吸着部31の吸着面をウエハ22の薄化した部分に吸着させる。
【0047】
このとき、チャックテーブル10の吸着面12には、図2(a)で説明したように、時刻t2〜t3の期間で陽圧70が印加され、ウエハ22の吸着面12への吸着が解除されている。そのため、吸着部31によってウエハ22を吸着した後、図3(a)に示すように、吸着部31を上昇させることによりウエハ22をチャックテーブル10から容易に取り上げることができる。吸着部31の上昇は、吸着部31が固定されている支持部32を上昇させて行う。
【0048】
続いて、吸着部31にウエハ22を吸着させた状態で、搬送装置40が水平方向へ移動を開始する(図3(b))。
上記の実施形態によれば、ウエハ22のチャックテーブル10への吸着を迅速に解除することができる。図4の時刻t2〜時刻t3は数秒(例えば3秒)程度であり、従来、ウエハに損傷を与えないよう、自然に吸着が解除されるまで10秒程度要していたものが、大幅に時間を短縮できる。そして、ウエハに損傷を与えずに取り上げることができ、次の工程へ迅速に送ることができる。
【0049】
図5は搬送装置40の要部を示す図であり、(a)は要部断面図、(b)は要部斜視図である。吸着部31は支持部32に固定されており、支持部32の内部には、吸着部31の吸着面に図示しない真空系からの負圧を供給するための排気路が設けられている。支持部32の外周には、押圧パッドスライド部41が支持部32とは独立させて上下動作できるように配置されている。押圧パッドスライド部41は、図示しない駆動部からの動力によって上下に動作する。図5(a),(b)では、押圧パッドスライド部41が上昇して、吸着部31の吸着面より、押圧パッド43のウエハ22への接触面が上に位置した状態を示している。つまり、支持部32と押圧パッドスライド部41は同軸に構成されているので、搬送装置40として、ウエハ22(チャックテーブル10)の上部へ移動し、また、チャックテーブル10の上部から他の位置へ移動する際には、吸着部31と押圧パッド43が一体に移動する。
【0050】
なお、図5には、押圧パッド支持板44を図示している。図1図3に示したように、押圧パッド43を押圧パッド支持アーム42にて直接支持するようにしてもよいが、押圧パッド支持アーム42に押圧パッド支持板44を固定し、押圧パッド支持板44に押圧パッド43を固定してもよい。押圧パッド支持板44は、押圧パッド43の上下動作の際、吸着部31に干渉しないような形状であり、例えば、図5(b)に示すように、中央部がくりぬかれた円板状をしている。このように、押圧パッド支持板44で押圧パッド43を支持することにより、発泡樹脂などの弾性部材で構成された押圧パッド43を確実に保持し、また、押圧力をウエハ22へ均等に印加することができる。
【0051】
図6は、第1実施形態の変形例を示す図である。
図6(a)は、図1(a)に示した搬送装置40の弾性部材で形成された押圧パッド43を、弾性変形しにくい押圧材45に変更したものである。押圧材45は、例えば、ポリカーボネート,ポリアミドなどのエンジニアリングプラスチックで成形されたものを用いてもよい。
【0052】
押圧材45は弾性変形しにくい材質を用いているので、ウエハ22のリング状の補強部へ押し当てた際に、補強部の形状に倣って変形することはない。しかしながら、リング状の補強部を押圧材45によって、チャックテーブル側に押さえつけているため、吸着面12から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図15(c)に示したような局所的な浮き上がりは発生しない。
【0053】
また、押圧材45自身に剛性があるので、押圧パッド支持アーム42への取り付けも容易である。
図6(b)は、図1(a)に示した搬送装置40の弾性部材で形成された押圧パッド43を、内部が中空の押圧チューブ47に変更したものである。押圧チューブ47は、ゴムなどの弾性部材で形成されたリング状チューブであり、内部に空気などが充填されている。図1(b)と同様に、ウエハ22のリング状の補強部へ押し付けることにより、弾性的に変形し、図5(b)に示すように、補強部の形状に倣って変形する。
【0054】
押圧チューブは内部を空気等で充填した状態で押圧パッド支持アーム42に取り付けてもよいし、押圧パッド支持アーム42に代えて、押圧チューブ47への給排気路を備えた押圧チューブ支持アーム46に取り付けてもよい。
【0055】
リング状の補強部を押圧チューブ47によってチャックテーブル側に押さえつけているため、吸着面12から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図15(c)に示したような局所的な浮き上がりは発生しない。
【0056】
また、押圧チューブ支持アーム46を用いることで、チューブ内の気圧を調整でき、補強部の形状に倣うように変形させる度合いと、押圧力とを調整することができる。
<第2の実施形態>
次に、図7図10を用いて、この発明の第2の実施形態を説明する。
【0057】
図7図10は、この発明を適用する第2の実施形態を説明するための図である。なお、図10は、各部の圧力を示すタイミングチャートである。
図7(a)では、ウエハ22がチャックテーブル10の吸着面13,14に吸着されている。吸着面13,14は、ウエハ22を吸着させる面が平坦に加工された多孔質材である。ウエハ22の外周部を吸着する吸着面13は、密度が密な多孔質材であり、給排気路11からの負圧をウエハ22の吸着面に伝えやすい構造となっている。密度が密な多孔質材であるため、吸着面13のウエハ22と接しない(ウエハ22で覆われない)外周部分が、露出していても、ここから、真空系(給排気路11)への外気のリークを最小限に抑えられるようになっている。
【0058】
ウエハ22の中央部分を吸着する吸着面14は、密度が粗な多孔質材であり、給排気路11からの負圧をウエハ22の吸着面に伝えやすい構造となっている。
チャックテーブル10は、給排気路11を介して図示しない真空系に接続されている。真空系から供給される負圧(符号60)が吸着面13,14に伝達し、ウエハ22を真空吸着し、図12図13図14で説明したように、ウエハ22の研削工程が完了した状態を示している。
【0059】
ウエハ22の次工程への搬送について、順を追って説明する。
図7(a)において、搬送装置50が、研削工程の完了したウエハ22の上部で待機する。搬送装置50は、ウエハ22のリング状の補強部を外周側から保持する保持機構としての保持部52、保持部52を支持する支持アーム51を備える。そして、さらに、保持部52とは独立させて上下動作し、ウエハ22の薄化された部分を押圧する内周領域押圧機構としての押圧パッド54と、これを支持する支持部53から構成されている。この例では、押圧パッドには、弾性部材が用いられる。弾性部材は特に限定するものではないが、ウエハ22の薄化された中央部分(内周領域)を押圧するとともに、リング状の補強部の形状に倣って弾性変形可能であることと、後述する吸着面12からのエアー等の吹き上げに抗する程度の剛性を有していることが望ましい。例えば、EVA樹脂などの発泡樹脂や、シリコンゴムなどで形成される。
【0060】
押圧パッド54は、ウエハ22の薄化された凹部とリング状の補強部の内周側を覆うように、円形に形成されている。つまり薄化された凹部より若干大きめに形成され、リング状の補強部の内側を覆う大きさである。押圧パッド54の直径は、リング状の補強部の内周側の端部の直径よりも1mm以上大きくしておくと、若干の位置ずれがあっても、リング状の補強部の内周側の段差を覆うことができる。また、押圧パッドは、ウエハ22の薄化された凹部の側壁(リング状の補強部の内周側)を覆うのがよい。ただ、少なくとも、薄化された凹部を抑えることができれば、後述するように、図16(b)のような局所的な浮き上がりを抑制することができる。
【0061】
さらに、ウエハが図7(a)に示すように、図14のごとく2段階で研削加工したものである場合、第2の研削工程で生じる段差部も覆うようにするとよい。
図7(a)において、保持部52は、ウエハ22の外周よりもさらに外側の位置で待機しており、支持部53に固定された押圧パッド54とは独立して上下動作可能である。図7(a)に示す例では、押圧パッド54も、ウエハ22の上部にて待機している。
【0062】
図7(b)に示すように、保持部52と押圧パッド54を降下させて、押圧パッド54はウエハ22の薄化された凹部に押し当てられて弾性変形する。ここでは、保持部52と押圧パッド54とが同時に下降する例で説明したが、保持部52と押圧パッド54のどちらか一方が先に下降してもよい。
【0063】
図10(a)は、チャックテーブル10の吸着面に載置されたウエハ22に印加される圧力を示し、同図(b)は保持部53がウエハ22の外周部(リング状の補強部)を保持している状況を示し、同図(c)は、押圧パッド54によってウエハ22に作用する圧力を示す。
【0064】
図7(b)の状態は、図10のt1に相当する。すなわち、図10(a)に示すようにチャックテーブル10の吸着面13,14には、負圧が供給されており、同図(b)に示すように保持部53は図7(a)の状態から下降してウエハ22と同じ高さに到達しているものの、ウエハ22を保持する位置への移動はしていない。押圧パッド54はウエハ22の薄化された凹部に到達した後、さらに弾性変形しながら押し当てられて、時刻t1において、薄化された凹部をリング状の補強部の一部を所定の圧力で押圧している。
【0065】
続いて、図8(a)に進む。図8(a)では、保持部52がウエハ22の外周から接近し、リング状の補強部を保持する。図8の例では、保持部52はリング状の補強部の上面と下面を保持するように構成している。リング状の補強部の上面を保持することで、後述する水,エアー等の噴出しによってがウエハ22の最外周部が浮き上がるのを防ぐことができる。また、リング状の補強部の下面を保持することで、後の工程でウエハ22を容易に取り上げることができる。
【0066】
次に、給排気路11に供給されていた負圧を遮断する。そして、ウエハ22をチャックテーブル10から取り外しやすくするためにチャックテーブル10の吸着面13,14に対して陽圧70の印加が開始される。陽圧は、給排気路11から水,エアー,水とエアーを混合したものなどを供給することで与える(図10、時刻t2)。
【0067】
このとき、ウエハ22の薄化された凹部とリング状の補強部との境界部分ならびにリング状の補強部の一部は、押圧パッドによって、チャックテーブル側に押さえつけられている。吸着部13,14から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図16(b)に示したような局所的な浮き上がりが発生しない。局所的に浮き上がることがないので、研削時に砥石で削られてダメージが残っている箇所や曲率が変化する場所に応力が集中することがない。吸着面13,14に陽圧を印加した際にウエハ22にクラックが生じるなどの損傷を与えることがない。所定時間継続して陽圧70を印加した後、陽圧70の印加を停止する(図10、時刻t3)。
【0068】
続いて、図8(b)に進む。陽圧70の印加を停止した後、図10の時刻t4のタイミングで押圧パッド54のみを上昇させる。保持部52は移動しない。押圧パッド54の上昇により、押圧パッド54による押圧力も減少し、押圧パッド54がウエハ22から離れた時点でウエハへの押圧力もゼロとなる。
【0069】
このとき、チャックテーブル10の吸着面12には、図8(a)で説明したように、時刻t2〜t3の期間で陽圧70が印加され、ウエハ22の吸着面13,14への吸着が解除されている。また、ウエハ22の外周(リンク状の補強部)は保持部52によって保持されている。よって、図9(a)に示すように、保持部52を上昇させることによりウエハ22をチャックテーブル10から容易に取り上げることができる。保持部52の上昇は、押圧パッド54が固定されている支持部53とともに上昇させて行う。このようにすることで、押圧パッド54が再びウエハ22に接触することはない。
【0070】
続いて、保持部52でウエハ22の外周(リンク状の補強部)を保持した状態のまま、搬送装置50が水平方向へ移動を開始する(図9(b))。
上記の実施形態によれば、ウエハ22のチャックテーブル10への吸着を迅速に解除することができる。図10の時刻t2〜時刻t3は数秒(例えば3秒)程度であり、従来、ウエハに損傷を与えないよう、自然に吸着が解除されるまで10秒程度要していたものが、大幅に時間を短縮できる。そして、ウエハに損傷を与えずに取り上げることができ、次の工程へ迅速に送ることができる。
【0071】
なお、図示は省略するが、図7に示した押圧パッド54を、図5に示した例と同様に、押圧パッド支持板をさらに備えて、押圧パッド支持板に押圧パッド54を固定してもよい。押圧パッド支持板を設ける場合は、押圧パッド54の上下動作の際、保持部52に干渉しないような形状であればよい。このように、押圧パッド支持板で押圧パッド54を支持することにより、発泡樹脂などの弾性部材で構成された押圧パッド54を確実に保持し、また、押圧力をウエハ22へ均等に印加することができる。
【0072】
図11は、第2実施形態の変形例を示す図である。
図11(a)は、図7(a)に示した搬送装置50の弾性部材で形成された押圧パッド43を、弾性変形しにくい押圧材55に変更したものである。押圧材55は、例えば、ポリカーボネート,ポリアミドなどのエンジニアリングプラスチックで成形されたものを用いてもよい。
【0073】
押圧材55は、ウエハ22の薄化された凹部にのみ押し当てるようにする。これは、押圧材55が弾性変形しにくい材質を用いているためであり、リング状の補強部の内周領域の段差部の形状に倣って変形しないためである。ウエハ22の薄化された凹部のみを押圧材55によって、チャックテーブル側に押さえつけているため、吸着面14から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図16(b)に示したような局所的な浮き上がりは発生しない。
【0074】
また、押圧材55自身に剛性があるので、支持部53への取り付けも容易である。
図11(b)は、図7(a)に示した搬送装置50の弾性部材で形成された押圧パッド54を、内部が中空の押圧バルーン57に変更したものである。押圧バルーン57は、ゴムなどの弾性部材で形成され、内部が中空の袋(バルーン)であり、内部に空気などが充填されている。図7(b)と同様に、ウエハ22のリング状の補強部へ押し付けることにより、弾性的に変形し、図11(b)に示すように、補強部の形状に倣って変形する。
【0075】
押圧バルーンは内部を空気等で充填した状態で支持部53に取り付けてもよいし、支持部53に代えて、押圧バルーン57への給排気路を備えた押圧バルーン支持部56に取り付けてもよい。
【0076】
ウエハ22の薄化された部分とリング状の補強部の一部を押圧バルーン57によってチャックテーブル側に押さえつけているため、吸着面13,14から、水,エアー,水とエアーを混合したものが噴出そうとしても、図16(b)に示したような局所的な浮き上がりは発生しない。
【0077】
また、押圧バルーン支持部56を用いることで、バルーン内の気圧を調整でき、補強部の形状に倣うように変形させる度合いと、押圧力とを調整することができる。
【符号の説明】
【0078】
10:チャックテーブル
11:給排気路
12,13,14:吸着面
20,22,23:ウエハ
30:吸着機構
40,50,80,90:搬送装置
31:吸着部
32:支持部
41:押圧パッドスライド部
42:押圧パッド支持アーム
43:押圧パッド
44:押圧パッド支持板
45:押圧材
46:押圧チューブ支持アーム
47:押圧チューブ
51:支持アーム
52:保持部
53:支持部
54:押圧パッド
55:押圧材
56:押圧バルーン支持部
57:押圧バルーン
70,71:水,エアー,水とエアーを混合したものなどによる陽圧
81:吸着部
82:支持部
91:アーム
92:保持部
110:オリエンテーションフラット
111,121,122,123:リング状の補強部
120:ノッチ
131,132,133:研削部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16