特許第5772099号(P5772099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5772099
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】遮断弁装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/02 20060101AFI20150813BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20150813BHJP
   B60G 21/067 20060101ALI20150813BHJP
   B60G 21/055 20060101ALI20150813BHJP
   F16F 1/16 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
   F15B1/02 Z
   F16K17/06 A
   B60G21/067
   B60G21/055
   F16F1/16
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-57111(P2011-57111)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-193781(P2012-193781A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084124
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 一眞
(72)【発明者】
【氏名】水越 英雄
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−341685(JP,A)
【文献】 特開2004−268888(JP,A)
【文献】 特開2006−111057(JP,A)
【文献】 特開2007−069837(JP,A)
【文献】 実開昭62−114669(JP,U)
【文献】 特開昭57−144353(JP,A)
【文献】 実開昭49−019322(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/02
F16K 17/04
B60G 21/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた流体回路に介装され該閉じた流体回路内の流体を所定圧に維持するアキュムレータに対し、常時は遮断状態とし、外部流体供給源によって当該閉じた流体回路内に流体を充填するときに強制的に連通状態とする遮断弁装置であって、当該遮断状態において前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間連通状態とされる遮断弁装置。
【請求項2】
前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間に介装され両者間の連通を断続制御する制御弁装置を備えた流体制御装置に供され、前記制御弁装置をバイパスし、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとを連通するバイパス流路を有し、前記遮断弁装置が、前記バイパス流路を閉塞するように着座可能に配置する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するばね部材とを備え、該ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持し、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記弁体が前記ばね部材の付勢力に抗して離座し、前記バイパス流路連通状態とされることを特徴とする請求項1記載の遮断弁装置。
【請求項3】
前記ばね部材を収容すると共に、前記弁体を摺動可能に支持し、前記ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項2記載の遮断弁装置。
【請求項4】
車両前方の車輪に両端を支持すると共に車体に支持する前輪側スタビライザバーと、該前輪側スタビライザバーの左右一方側に一端を支持する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する前輪側シリンダと、車両後方の車輪に両端を支持すると共に前記車体に支持する後輪側スタビライザバーと、該後輪側スタビライザバーの左右一方側に一端を支持する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する後輪側シリンダと、前記前輪側シリンダの車両上方側の圧力室と前記後輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する上方側連通路の閉じた流体回路と、前記前輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記後輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する下方側連通路の閉じた流体回路と、該下方側連通路と前記上方側連通路との間に介装し両者間の連通を断続制御する制御弁装置と、前記前輪側シリンダ及び前記後輪側シリンダに収容される流体を所定圧に維持するアキュムレータを備えたスタビライザ制御装置に供され、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間に介装され、常時は遮断状態とし、外部流体供給源によって前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路から前記アキュムレータ側に前記流体を充填するときには強制的に連通状態とする遮断弁装置であって、当該遮断状態において前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間連通状態とされる遮断弁装置。
【請求項5】
前記スタビライザ制御装置が、前記制御弁装置をバイパスして前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとを連通するバイパス流路を備え、該バイパス流路を閉塞するように着座可能に配置する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するばね部材とを備え、該ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持し、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記弁体が前記ばね部材の付勢力に抗して離座し、前記バイパス流路連通状態とされることを特徴とする請求項4記載の遮断弁装置。
【請求項6】
前記ばね部材を収容すると共に、前記弁体を摺動可能に支持し、前記ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項5記載の遮断弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じた流体回路に介装され該流体回路内の流体を所定圧に維持するアキュムレータに対し、常時は遮断状態とし、当該流体回路内に流体を充填するときに連通状態とする遮断弁装置に関し、特に、車両前後の左右の車輪間に支持されるスタビライザバーによって車両のローリング運動を抑制し得るスタビライザ制御装置に好適な遮断弁装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車両のローリング運動を抑制する装置としては、一般的に、車両の左右車輪間にトーションバーが配設されたスタビライザ制御装置が知られており、トーションバーはスタビライザバーと呼ばれている。これによれば左右車輪間のサスペンションストロークに相対的な変位差が発生したときにねじりばねとして作用し、車両のローリング運動を抑制することができ、下記の特許文献1には、一般的なスタビライザ制御装置の構成が開示されている。この装置は、流体を所定圧に維持するアキュムレータは備えているが、流体圧力源を備えておらず、閉じた流体回路で構成されているので、この流体回路への流体充填時に連通状態とする常閉の遮断弁装置(例えば本願の図3乃至図5にCVで示す)が配設されている。また、これとは別に、流体制御用の弁装置MVとして所謂メカニカルバルブが用いられている。同様に、下記の特許文献2にも、メカニカルバルブで構成された制御弁装置100が開示されている。
【0003】
上記のようにメカニカルバルブで構成された弁装置においては、弁体の前後差圧(例えばシリンダ内の圧力とアキュムレータ内の圧力の差圧)に応じて受動的に作動するものであり、装置内の流体圧が限度圧を超えないように調整する必要がある。このため、シリンダ内の圧力がアキュムレータ内の圧力より所定圧以上大となったときには、連通状態とするリリーフ弁(例えば本願の図3及び図4にRVで示し、これについては後述する)が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−274597号公報
【特許文献2】特開2006−341685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1及び2を含む一般的なスタビライザ制御装置等の流体制御装置においては、何れもリリーフ弁及び遮断弁が夫々独立して設けられており、例えば、本願の図3に示すように、リリーフ弁(RV)は制御弁装置(MV)に対し併設され、大型となっている。特に、異常時のリリーフ機能のみに供されるリリーフ弁が弁装置全体で占める割合が大きく、装置全体の小型化、低コスト化を困難としている。
【0006】
そこで、本発明は、スタビライザ制御装置等における閉じた流体回路に介装され該流体回路内の流体を所定圧に維持するアキュムレータに対し、常時は遮断状態とし、当該流体回路内に流体を充填するときに連通状態とする遮断弁装置に関し、当該流体回路への流体充填時に連通状態とする遮断弁として機能すると共に、リリーフ弁として機能する小型且つ安価な構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、閉じた流体回路に介装され該閉じた流体回路内の流体を所定圧に維持するアキュムレータに対し、常時は遮断状態とし、外部流体供給源によって当該閉じた流体回路内に流体を充填するときに強制的に連通状態とする遮断弁装置であって、当該遮断状態において前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間連通状態とされるように構成したものである。
【0008】
例えば、前記遮断弁装置は、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間に介装され両者間の連通を断続制御する制御弁装置を備えた流体制御装置に供され、前記制御弁装置をバイパスし、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとを連通するバイパス流路を有し、前記遮断弁装置は、前記バイパス流路を閉塞するように着座可能に配置する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するばね部材とを備えたものとし、該ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持し、前記アキュムレータに対して分離される側の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記弁体が前記ばね部材の付勢力に抗して離座し、前記バイパス流路連通状態とされるように構成し得る。
【0009】
上記の遮断弁装置において、前記ばね部材を収容すると共に、前記弁体を摺動可能に支持し、前記ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持する保持部材を備えたものとするとよい。
【0010】
また、車両前方の車輪に両端を支持すると共に車体に支持する前輪側スタビライザバーと、該前輪側スタビライザバーの左右一方側に一端を支持する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する前輪側シリンダと、車両後方の車輪に両端を支持すると共に前記車体に支持する後輪側スタビライザバーと、該後輪側スタビライザバーの左右一方側に一端を支持する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する後輪側シリンダと、前記前輪側シリンダの車両上方側の圧力室と前記後輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する上方側連通路の閉じた流体回路と、前記前輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記後輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する下方側連通路の閉じた流体回路と、該下方側連通路と前記上方側連通路との間に介装し両者間の連通を断続制御する制御弁装置と、前記前輪側シリンダ及び前記後輪側シリンダに収容される流体を所定圧に維持するアキュムレータを備えたスタビライザ制御装置に供され、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間に介装され、常時は遮断状態とし、外部流体供給源によって前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路から前記アキュムレータ側に前記流体を充填するときには強制的に連通状態とする遮断弁装置であって、当該遮断状態において前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとの間連通状態とされる遮断弁装置を構成するとよい。
【0011】
更に、前記スタビライザ制御装置が、前記制御弁装置をバイパスして前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路と前記アキュムレータとを連通するバイパス流路を備え、該バイパス流路を閉塞するように着座可能に配置する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するばね部材とを備え、該ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持し、前記上方側連通路及び前記下方側連通路の少なくとも一方の前記閉じた流体回路内の流体圧が前記アキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、前記弁体が前記ばね部材の付勢力に抗して離座し、前記バイパス流路連通状態とされるように構成するとよい。
【0012】
更に、前記ばね部材を収容すると共に、前記弁体を摺動可能に支持し、前記ばね部材によって前記弁体が着座方向に付勢された状態で保持する保持部材を備えたものとするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明の遮断弁装置においては、閉じた流体回路に介装され該閉じた流体回路内の流体を所定圧に維持するアキュムレータに対し、常時は遮断状態とし、外部流体供給源によって当該閉じた流体回路内に流体を充填するときに強制的に連通状態とし、当該遮断状態においてアキュムレータに対して分離される側の閉じた流体回路内の流体圧がアキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、アキュムレータに対して分離される側の閉じた流体回路とアキュムレータとの間連通状態とされるように構成されており、従来のリリーフ弁が一体的に構成されたものとなるので、従来装置に比し、小型且つ安価な装置とすることができる。
【0014】
特に、上記の遮断弁装置は、バイパス流路を閉塞するように着座可能に配置する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するばね部材とを備えたものとし、上方側連通路及び下方側連通路の少なくとも一方の閉じた流体回路内の流体圧がアキュムレータ側の流体圧より所定圧以上大となったときには、弁体がばね部材の付勢力に抗して離座するように構成すれば、小型軽量化が可能となる。更に、保持部材を備えたものとし、この保持部材にばね部材を収容すると共に、弁体を摺動可能に支持し、ばね部材によって弁体が着座方向に付勢された状態で保持するように構成すれば、簡単な構造で一層の小型軽量化が可能となる。
【0015】
特に、スタビライザ制御装置内に構成される閉じた流体回路に介装される遮断弁装置においては、遮断弁とリリーフ弁が一体的に配設されているので、スタビライザ制御装置全体として一層の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における遮断弁装置を含む部材の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に供される遮断弁装置の拡大断面図である。
図3】従来のリリーフ弁及び遮断弁を含む部材の断面図である。
図4】従来のスタビライザ制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】従来のスタビライザ制御装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。先ず、一般的なスタビライザ制御装置及びこれに供される従来の遮断弁及びリリーフ弁の構成について、図3乃至図5を参照して説明する。図5において、車両の左右前方の車輪FL及びFRに前輪側スタビライザバーFSの両端が支持され、その中間部が左右2箇所の支持部でマウントFM1及びFM2を介して車体(図示せず)に支持される。本実施形態においては、これらの支持部の一つである左側のマウントFM1と車体との間に前輪側シリンダFCが介装されている。同様に、車両の左右後方の車輪RL及びRRに後輪側スタビライザバーRSの両端が支持され、その中間部が左右2箇所の支持部でマウントRM1及びRM2を介して車体(図示せず)に支持される。そして、前輪側シリンダFCと同じ左側のマウントRM1と車体との間に後輪側シリンダRCが介装されている。これら前輪側シリンダFC及び後輪側シリンダRCは制御弁装置(メカニカルコントロールバルブ)MVに連通接続され、制御弁装置MVはアキュムレータACCに連通接続されている。更に、上方側連通路UP及び下方側連通路LPの各々には遮断弁CV及び充填弁FVが配設されており、これらは外部流体供給源(図示せず)による流体充填に供される。
【0018】
上記の前輪側シリンダFC、後輪側シリンダRC及び制御弁装置MVを含む構成と相互の接続関係を図4に示し、制御弁装置MVを含む具体的な構造を図3に示している。図4において、前輪側シリンダFCは、前輪側スタビライザバーFSに(図5のマウントFM1を介して)一端を支持する第1のピストンP1、及び第1のピストンP1を介して車両上方側の圧力室U1及び車両下方側の圧力室L1を形成し車体(図示せず)に支持する第1のハウジングH1を有する。同様に、後輪側シリンダRCは、後輪側スタビライザバーRSに(図5のマウントRM1を介して)一端を支持する第2のピストンP2、及び第2のピストンP2を介して車両上方側の圧力室U2及び車両下方側の圧力室L2を形成し車体(図示せず)に支持する第2のハウジングH2を有する。そして、車両上方側の圧力室U1と圧力室U2が上方側連通路UPによって連通接続されると共に、車両下方側の圧力室L1と圧力室L2が下方側連通路LPによって連通接続され、閉じた流体回路が構成されている。
【0019】
上方側連通路UPと下方側連通路LPとの間にはリリーフ弁RVが介装されており、常時は両者間が遮断状態とされているが、上方側連通路UP及び下方側連通路LP側の圧力がアキュムレータACC(連通路AB)側の圧力より所定圧以上大となったときには、連通状態とされるように構成されている。また、制御弁装置MVは、上方側連通路UPと下方側連通路LPとの間の連通を断続制御するものであるが、これについては後述する。
【0020】
更に、図4に示すように、リリーフ弁RV及び制御弁装置MVをバイパスして上方側連通路UP及び下方側連通路LPとアキュムレータACCの連通路ABとを連通接続するバイパス流路BU及びBLが設けられており、これらのバイパス流路BU及びBLは、図3に示す制御弁装置MV及びリリーフ弁RVの環状流路BM及びBRを含む。そして、バイパス流路BU及びBLの夫々に、遮断弁(カットバルブ)CVが介装されている。この遮断弁CVは、常時は遮断状態とされており、外部流体供給源(図示せず)による流体充填時、例えば上方側連通路UP及び下方側連通路LP側からバイパス流路BU又はBL及び連通路ABを介してアキュムレータACCに流体が充填されるときには連通状態とされる。尚、ブリーダBDは上記の流体充填時に流体回路内の空気を排出するものであり、圧力センサPは流体回路内の圧力を検出するものである。
【0021】
次に、上記の制御弁装置MVについて説明すると、図3に示す中立位置にあるときには、制御弁装置MVを介して上方側連通路UP(圧力室U1及び圧力室U2)、下方側連通路LP(圧力室L1及び圧力室L2)及びアキュムレータACCが連通しており、所定の圧力に加圧された流体が充填されている。即ち、図3は車両上方側の圧力室U1及び圧力室U2内の圧力(Puとする)、車両下方側の圧力室L1及び圧力室L2内の圧力(Plとする)、及びアキュムレータACC内の圧力(Paとする)が等しいときの状態(Pu=Pa=Pl)である。
【0022】
この状態から、車両上方側の圧力室U1及び圧力室U2内の圧力が高圧側となり、Pu>Pa>Plの関係となると、上方側連通路UP(圧力室U1及び圧力室U2)、下方側連通路LP(圧力室L1及び圧力室L2)及びアキュムレータACCの相互の連通が遮断される。逆に、車両下方側の圧力室L1及び圧力室L2内の圧力が高圧側となってPu<Pa<Plの関係となると、制御弁装置MVによって上方側連通路UP(圧力室U1及び圧力室U2)、下方側連通路LP(圧力室L1及び圧力室L2)及びアキュムレータACCの相互の連通が遮断される。このように、上方側連通路UP内の圧力と下方側連通路LP内の圧力が異なるときには制御弁装置MVによって上方側連通路UP、下方側連通路LP及びアキュムレータACCの相互の連通が遮断される。而して、車両が旋回するときには、上方側連通路UP内の圧力と下方側連通路LP内の圧力が異なる状態となり、制御弁装置MVによって上方側連通路UP、下方側連通路LP及びアキュムレータACCの相互の連通が遮断され、上方側連通路UP及び下方側連通路LP内の流体移動が生じないので、前輪側スタビライザバーFSと後輪側スタビライザバーRSは夫々所期のスタビライザ機能を発揮し、車体のローリング運動を抑制することができる。
【0023】
これに対し、車両(図示せず)が直進走行状態にあって、路面に対し実質的に平行に上下動する場合には、上方側連通路UP、下方側連通路LP及びアキュムレータACCが制御弁装置MVを介して連通し、流体が自由に移動し得る状態となり、流体の熱膨張及び熱収縮はアキュムレータACCで適切に吸収される。このとき、前輪側スタビライザバーFS及び後輪側スタビライザバーRSは前輪側シリンダFC及び後輪側シリンダRCに拘束されることなく、スタビライザ機能を発揮しない。また、悪路走行時に車両の前後で前輪側シリンダFC及び後輪側シリンダRCのピストンP1及びP2の上下移動が異なるときには、上方側連通路UP及び下方側連通路LP内を流体が移動するので前輪側スタビライザバーFS及び後輪側スタビライザバーRSはスタビライザ機能を発揮することなく、各車輪に対し大きなストロークが確保される。
【0024】
一方、本実施形態は図1に示すように構成され、流体制御装置として図3と同様のスタビライザ制御装置に適用されるが、図3に示すリリーフ弁RVを備えておらず、遮断弁CVに代えて、図2に示すように構成された一対の遮断弁装置10が、図1に示すように、制御弁装置MVと共に単一のハウジングHS内に配設されている。遮断弁装置10は何れも、ハウジングHSに螺着される本体部10bと、これと一体的に形成された筒状の保持部材11を有し、この保持部材11内に弁体12及びコイルスプリングのばね部材13が収容され、バイパス流路BU又はBLを閉塞するように弁体12が着座可能に配置されている。そして、ばね部材13の付勢力は、車両上方側の圧力室U1及び圧力室U2内の圧力(Pu)又は車両下方側の圧力室L1及び圧力室L2内の圧力(Pl)とアキュムレータACC内の圧力(Pa)との差圧(Pu−Pa)又は(Pl−Pa)が所定圧(Kp)以上となったときに、弁体12がバイパス流路BU又はBLから離座する値に設定されている。
【0025】
而して、通常時は、図1及び図2に示すように、ばね部材13によって弁体12が着座方向に付勢されており、遮断弁装置10は遮断状態とされている。そして、外部流体供給源(図示せず)による流体充填時には、遮断弁装置10の本体部10bが回転操作されて、弁体12がバイパス流路BU又はBLから離座し、上方側連通路UP又は下方側連通路LPとアキュムレータACCが連通状態とされるので、上方側連通路UP及び下方側連通路LP側からバイパス流路BU又はBLを介してアキュムレータACCに流体が充填される。更に、遮断弁装置10が図1及び図2に示す遮断状態にある場合において、上方側連通路UP又は下方側連通路LP側の流体圧がアキュムレータACC(連通路AB)側の流体圧より所定圧以上大となったときには、弁体12がばね部材13の付勢力に抗してバイパス流路BU又はBLから離座し連通状態とされる。従って、この場合には遮断弁装置10はリリーフ弁として機能する。換言すれば、本実施形態においては、図3に示すリリーフ弁RVが存在せず、遮断弁装置10にリリーフ弁が一体的に構成されたものとなるので、図3に示す構成と図1に示す構成とを対比すれば明らかなように、従来装置に比し、大幅な小型軽量化が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
FS 前輪側スタビライザバー
RS 後輪側スタビライザバー
FC 前輪側シリンダ
RC 後輪側シリンダ
H1,H2 ハウジング
UP 上方側連通路
LP 下方側連通路
ACC アキュムレータ
MV 制御弁装置
RV リリーフ弁
CV 遮断弁
HS ハウジング
BU,BL バイパス流路
10 遮断弁装置
10b 本体部
11 保持部材
12 弁体
13 ばね部材
図1
図2
図3
図4
図5